JP2004244608A - 加水分解重縮合物溶液およびその製造方法、ならびにそれを用いた透明皮膜形成用組成物 - Google Patents

加水分解重縮合物溶液およびその製造方法、ならびにそれを用いた透明皮膜形成用組成物 Download PDF

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Masayuki Mitsuhayashi
正幸 三林
Atsushi Tanaka
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Abstract

【課題】加熱しないで乾燥によって透明な、耐久性の高い皮膜を基材表面に形成することができ、密閉しておけば常温でも長期的保存可能な加水分解重縮合物溶液を提供する。
【解決手段】10〜40℃の温度において24時間以内に硬化し、透明な皮膜を形成するアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物とアルコール、水からなる加水分解重縮合物溶液、あるいはアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物とアルコール、水からなる加水分解重縮合物溶液からなる皮膜形成用組成物を製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明な耐久性の高い皮膜を形成できるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物あるいはアルミニウムアルコキシドーチタニウムアルコキシドの共加水分解物とその製造方法およびこれに光触媒性粒子を配合した光触媒皮膜形成用組成物、それを用いた消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す有用な特性を持った複合部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート製品や鉄鋼製品の耐久性を向上させるために、表面に耐久性の高い皮膜を形成するシリコン、ジルコニウム、チタンなどの金属アルコキシドの加水分解物を使ったコーティング剤が用いられてきた(例えば特開平2−69375、特開昭62−36045など)。しかし、これらは加熱を要する、透明ではないといった問題があった。
【0003】
一方、光励起することにより強い酸化力を持った活性酸素類を生じる光触媒半導体がある。この活性酸素類の酸化作用、いわゆる光触媒作用はほとんどの有機物を分解することから、光触媒半導体は悪臭物質の分解、有機物汚染からの防止、抗菌といった分野で光触媒は利用されている。しかし、光触媒作用は光触媒半導体の表面で起きるため部材表面に光触媒半導体を配置する必要がある。通常簡便な方法として、光触媒半導体をバインダーと混合して部材に塗布する方法が行われている。しかしながら、バインダーとして有機高分子を用いると、バインダーが光触媒作用により酸化、分解されてしまうため、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの難分解性のバインダーを使用することが必要とされていた(特許2756474号、特許3027739号)。
ところが、これら樹脂バインダーに光触媒半導体粒子を配合して用いるときはバインダーが光触媒半導体の表面を被覆し、光触媒粒子への光や被分解物質の到達を妨害し、光触媒作用の効果を低減するという問題があった。また、加熱によって樹脂を硬化させる必要もあった。
【0004】
一方、特開平8−164334号には加水分解性のケイ素化合物を加水分解した比較的低分子量のアルキルシリケート縮合物をバインダーとする方法が開示されている。これは低温で硬化でき、光触媒作用の低減も少ない方法である。
しかし、この方法によればpH4以下あるいはアルカリ性で加水分解する必要があるために、酸性あるいはアルカリ性の光触媒性粒子の塗布溶液となり、さらに鉄やアルミニウムなど腐食しやすい基材には塗布方法を工夫しなければならなかった。さらに中性の酸化チタンゾルにはバインダーとして使用できない問題があった。
【0005】
また、特開平9−40872号には加水分解可能な有機金属化合物をバインダーとする方法が開示されている。しかし、これは加水分解の制御が十分でなく、酸化チタンゾルの凝集や保存安定性が低いという問題があった。
アルミニウムアルコキシドは、少ない触媒量で水により極めて簡単に加水分解されるため中性のゾルにすることができるが、そのままでは透明で耐久性の高い皮膜を形成することは困難であり、ポットライフも極めて短いものとなっていた。
これに対して特開平7−216552号には耐久性の高い被膜を形成する技術が開示されているが、劣化の原因となるカップリング剤の使用や、膜の硬化に加熱を必要とする問題があった。
さらに、光触媒のバインダーとしては、ポットライフが長く、光触媒により劣化されない、透明で安定性の高い皮膜を形成するバインダーを必要としていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安定で取り扱いやすい加水分解重縮合物、加熱しないで乾燥によって透明な、耐久性の高い皮膜を基材表面に形成することができ、密閉しておけば常温でも長期的保存可能な加水分解重縮合物溶液を提供するものであり、また該加水分解重縮合物溶液に光触媒半導体粒子を使用した光触媒皮膜形成用組成物及びそれによって作製される複合部材に関するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物とアルコール、水を含み、10〜40℃の温度において24時間以内に硬化して透明な皮膜を形成する加水分解重縮合物溶液。
【0008】
[2] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドおよび一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物とアルコール、水を含み、10〜40℃の温度において24時間以内に硬化して透明な皮膜を形成する加水分解重縮合物溶液。
[3] β―ジケトン類を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の加水分解重縮合物溶液。
【0009】
[4] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、水30モル以上およびアルコール類10〜20モルを配合して得られたアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液。
[5] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、チタニウムアルコキシド0.01〜0.5モル、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、水1〜20モル、およびアルコール類80〜140モルを配合して得られたアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液。
[6] β−ジケトンがアセチルアセトンであり、酸が酢酸、アルコールがメタノールである[3]乃至[5]のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
【0010】
[7] 動粘性率が1.5×10−6〜3.0×10−6/sである[4]に記載の加水分解重縮合物溶液。
[8] 動粘性率が0.5×10−6〜2.0×10−6/sである[5]に記載の加水分解重縮合物溶液。
【0011】
[9] 20℃の温度で密閉して保存した時に90日間動粘性率変化がなく、光触媒性粒子と混合しても凝集作用の起こらない[3]乃至[8]のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
[10] 加水分解重縮合物溶液を200℃で乾燥した後に得られる粉末のBET比表面積が100m/g以上である[3]乃至[9]のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
[11] 加水分解重縮合物溶液を40℃で乾燥させ、200nmの厚さの皮膜にしたとき、全光線透過率が95%以上、ヘイズ値が1%以下である[10]に記載の加水分解重縮合物溶液。
【0012】
[12] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、アルコール類10〜20モルを混合した溶液に、該アルミニウムアルコキシドを溶解し、次いで水30モル以上を添加して40℃〜70℃で加熱することを特徴とするアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液の製造方法。
[13] 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、アルコール類80〜140モル、水1〜20モルを混合した溶液に、該アルミニウムアルコキシドを添加し、次いで40℃〜70℃で加熱しながら一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシド0.01〜0.5モルを添加することを特徴とするアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液の製造方法。
【0013】
[14] [1]乃至[11]のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液に、光励起により消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す光触媒性粒子を配合した光触媒皮膜形成用組成物。
[15] 光触媒性粒子が固形分濃度として0.5質量%〜7質量%、一般式Al(OR)3で表されるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物が、Al換算で0.5質量%〜10質量%含有されている[14]に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
[16] 光触媒性粒子が固形分濃度として0.5質量%〜7質量%、アルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物が、Al換算で0.1質量%〜3質量%、TiO換算で0.1質量%〜1質量%含有されている[14]に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
[17] BET比表面積から求めた光触媒粒子の平均粒子径が、0.001〜0.1μmである[14]乃至[16]のいずれか1項に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
[18] 光触媒性粒子が二酸化チタン粒子および/または二酸化チタン表面に縮合リン酸塩を存在させた粒子の少なくとも1種を含む[14]乃至[17]のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
[19] 二酸化チタン粒子が、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶型を含む[18]に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
[20] アルコール類の含有量が30質量%以下である[14]乃至[19]のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
[21] pHが5〜8である[14]乃至[20]のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
【0014】
[22] アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液またはアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液に光触媒性粒子配合した光触媒皮膜形成用組成物より得られた、光励起により消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す皮膜を備えた複合部材。
[23] 光触媒性粒子が二酸化チタン粒子、二酸化チタン表面に縮合リン酸塩を存在させた粒子から選ばれた少なくとも1種である[22]に記載の複合部材。
[24] 二酸化チタン粒子が、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶型を含む[23]に記載の複合部材。
[25] 光励起により皮膜の水との接触角を10度以下とした後に、光を断って暗所に保持48時間保持した後に水との接触角が10度以下である[22]乃至[24]のいずれか1項に記載の複合部材。
【0015】
[26] 皮膜が、キセノンランプ式による促進暴露試験に5000時間暴露した後に、鉛筆引っ掻き値で2H以上である[22]乃至[25]のいずれか1項に記載の複合部材。
[27] 皮膜が、200nmの厚さの時の全光線透過率が90%以上であり、ヘイズ値が1%以下である[22]乃至[26]のいずれか1項に記載の複合部材。
[28] [22]乃至[27]のいずれか1項に記載の複合部材を含む建築物外壁材料、道路防音壁、建築物窓ガラス、ショーケースガラス、蛍光灯ガラス、ガードレール、脱臭機用フィルター、水処理用リアクター、室内用装飾タイル、水槽又は照明用かさ。
[29] [22]乃至[28]に記載の複合部材を含むハードコート層を備えた広告用看板、透明道路防音壁、屋外用透明樹脂建材又は照明用かさ。
を開発することにより上記の課題を解決した。
特にアルミニウムアルコキシドとチタニウムアルコキシドを共加水分解縮重合することにより皮膜の基材との接着強度が高くなることを見いだし、本発明を完成させた。
【0016】
【発明の実施の形態】
皮膜形成に用いる組成物には一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドを加水分解重縮合させたものあるいはアルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドを共加水分解重縮合させたものである。光触媒性の皮膜とする場合にはこの組成物がバインダーとなり光触媒粒子と混合され皮膜形成用組成物となる。
【0017】
一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドの式中のRは特に限定されないが、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルエステル基、アリル基などが例示でき、これらによって形成される炭素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでいても良い。炭素数は1乃至16、好ましくは1乃至8、より好ましくは1乃至4である。
一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドとして、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドなどが好ましいものとして例示できるが、最も好ましくはアルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリメトキシドである。
一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシドの式中のR’は特に限定されないが、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルキルエステル基、アリル基などが例示でき、これらによって形成される炭素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ等の結合を任意に含んでいても良い。炭素数は1乃至16、好ましくは1乃至8、より好ましくは1乃至4である。
一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシドが好ましいものとして例示できるが、最も好ましくはチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシドである。
これらのアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを加水分解する際には酸の共存が必要であり、無機酸、有機酸いずれも用いることができるが、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、より好ましくは硝酸がよい。有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸などがよく、最も好ましい酸は酢酸である。また、無機酸と有機酸を併用することもできる。
【0018】
一方で加水分解をある程度抑え、重合度を調整するためにβ−ジケトン類を添加することが必要である。また、β−ジケトン類は加水分解物と錯体を形成して安定させ沈殿の生成を防ぐ効果があるため、アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物およびアルミニウムアルコキシドーチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物の長期安定性にも寄与することができる。
β−ジケトン類としては特に限定されないが、アセチルアセトン,2、4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3、5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオンなどがよく、最も好ましくはアセチルアセトンである。
【0019】
アルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを加水分解させる際に水が必要であり、水道水、イオン交換水、蒸留水を用いることができるが、保存の不安定要因となる余分なイオン類を含んでいないイオン交換水、蒸留水が好ましい。
アルコール類は、アルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドの溶媒としてアルコキシドの濃度調整および加水分解量を制御するために必要であり、加水分解に必要な水との相溶性がある親水性有機溶媒のアルコール類を使用する。メタノール、エタノール、1―プロパノール、2―プロパノールあるいはこれらの混合された変性アルコールを使用することが好ましい。中でもメタノールが安定性の観点からより好ましい。
【0020】
以上の構成成分は皮膜の接着力、加水分解重縮合物溶液の安定性の点から重要である。アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物はその分散した溶液中にAl換算で0.5〜10質量%、好ましくは1質量%〜5質量%、より好ましくは2質量%〜4質量%である。アルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物はその分散した溶液中にそれぞれAl換算で0.5質量%〜10質量%(好ましくは1質量%〜5質量%、より好ましくは2質量%〜4質量%)、TiO換算で0.1質量%〜3質量%(好ましくは0.3質量%〜2.7質量%、より好ましくは0.5質量%〜2.5質量%)である。アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物がAl換算で0.5質量%より少なければ接着力を得るためより多くの溶液を必要として、組成物のその他の構成成分が少なくなる等の弊害を生じる。10質量%より多ければ溶液が不安定となり沈殿を生じ易くなる。またTiO換算で0.1質量%より少なければ共加水分解するアルミニウムアルコキシドの加水分解が進まず、3質量%より多いとこれも重合が進みすぎ沈殿を生じ易くなる。ここで、Al換算およびTiO換算とは便宜的に加水分解重縮合物中のAl量、Ti量をその酸化物でAl、TiOの形で表したものであり、Alはアルミニウムアルコキシドのモル数の1/2のモル数のAlが、TiOは、チタニウムアルコキシドのモル数のTiOが加水分解系縮合物中に含まれていることを示している。
【0021】
β−ジケトン類の必要量はアルミニウムアルコキシド1モル当たりに対して0.1モル〜3モル、好ましくは0.7〜2.9モル、より好ましくは1〜2.9モルである。0.1モルよりも少ないと安定性が悪くなり、3モルより多くなると皮膜の硬化に時間および高い温度が必要となるために好ましくない。
酸を共存させる場合にはアルミニウムアルコキシド1モル当たりに対して0.5モル〜2モルが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モルである。0.5モルより少ないと加水分解および重縮合が不十分となり接着性が悪く、2モルよりも多いと溶液のpHが5より低くなり好ましくない。
【0022】
水はアルミニウムアルコキシドを加水分解する場合とアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを共加水分解する場合とで異なる。
アルミニウムアルコキシドを加水分解する場合はアルミニウムアルコキシ1モル当たりに対して30モル以上であることが好ましく、より好ましくは40モル以上、さらに好ましくは50モル以上である。30モルより少ないと粉末状となったアルミニウムアルコキシドの溶解が不十分となり、その結果加水分解も不十分となるからである。アルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを共加水分解する場合は、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、水1〜20モルであることが好ましく、より好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは1〜10モルである。1モルより少ないと加水分解が進まず、また20モルより多いとポットライフが短くなるからである。
アルコール類もアルミニウムアルコキシドを加水分解する場合とアルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを共加水分解する場合とで異なる。アルミニウムアルコキシドを加水分解する場合はアルミニウムアルコキシド1モル当たり10モル〜20モルであることが好ましく、より好ましくは11モル〜19モルである。10モルより少ないと溶液の保存安定性が悪くなり、また20モルより多いと塗布作業の段階で環境への揮散量が多く好ましくない。アルミニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを共加水分解する場合は、アルミニウムアルコキシド1モルに対して、アルコール類80〜140モルであることが好ましく、さらに好ましくは80モル〜120モルである。80モルより少ないと重縮合が進みすぎ、接着強度の良好な溶液が得られず、140モルより多いと溶液中の加水分解重縮合物が少なくなり、実用的でなくなる。
【0023】
これらから加水分解重縮合物溶液を得るわけであるが、混合する順序は、全部を一度に混合しても何ら問題はないが、親水性有機溶媒のアルコールとβ―ジケトン、酸の混合物にアルミニウムアルコキシドを溶解してから水を添加することが望ましい。さらにチタニウムアルコキシドも共加水分解する場合は最後にチタニウムアルコキシドを添加することが必要である。このときにチタニウムアルコキシドをアルコール、β−ジケトン類、酸の混合物として入れても良い。
【0024】
混合後は、低揮発分の蒸散を防止するため還流しながら40℃〜70℃の温度で加熱反応させることが好ましい。反応温度が40℃より低いと、アルミニウムアルコキシドの溶解が不十分となり加水分解がうまく行われない。70℃より高いと加水分解が進みすぎ、ゾル状沈殿物を生じてしまう。また、加熱時間は20分〜2時間加熱することが好ましい。20分より短ければ、アルミニウムアルコキシドの加水分解、重縮合反応が不十分であり、2時間より長いと加水分解、重縮合が進みすぎ、接着強度が失われる。
このようにして得られた加水分解重縮合物の溶液を以下バインダー溶液と定義する。
【0025】
この時のバインダー溶液の動粘性率はアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液の場合は1.5×10−6〜3.0×10−6/s(好ましくは1.6×10−6〜3.0×10−6/s、より好ましくは1.6×10−6〜2.9×10−6/s)、アルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液の場合は0.5×10−6〜2.0×10−6/s(好ましくは0.7×10−6〜1.9×10−6/s、より好ましくは1.0×10−6〜1.8×10−6/s)に調整することが好ましい。それぞれ1.5×10−6/sあるいは0.5×10−6/sより低いと加水分解および重縮合が不十分である状態であり、それぞれ3.0×10−6/sあるいは2.0×10−6/sより高いと重縮合が進みすぎて不安定となり、沈殿を生じる結果となるからである。得られたアルミニウムアルコキシド重縮合物溶液(バインダー溶液)は、20℃の温度で密閉して保存した時に90日間動粘性率変化がなく、光触媒性粒子と混合しても凝集作用の起こらないバインダー溶液となる。
この溶液はそのままで基材としての鉄鋼の錆やコンクリートのひび割れを防ぐなどのような耐久性を付与することのできる透明皮膜形成組成物とすることができる。
【0026】
バインダー溶液を基材に塗布して乾燥(例えば10〜40℃)すれば透明な皮膜となる。このとき200nmの厚さで硬化させた膜の全光線透過率は95%以上とすることができる。95%より低ければ透明性が低くなり基材の意匠性が損なわれるので好ましくない。
【0027】
このバインダー溶液に光触媒性粒子を混合して光触媒皮膜形成組成物とすることができる。
用いられる光触媒性粒子とは、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化第二鉄、三酸化タングステン、三酸化二ビスマス、チタン酸ストロンチウム、二酸化チタン等の紫外光や可視光により励起され、伝導電子と正孔を生成しうる粒子であればよい。
中でも化学的に安定な二酸化チタンが好ましい。また、二酸化チタン表面に縮合リン酸塩を存在させた粒子も光触媒性粒子として用いることができる。好ましくはピロリン酸を表面に存在させた二酸化チタンが用いられる。表面に存在する形態としては、島状であっても群島状であっても、マスクメロン状であってもかまわない。
【0028】
二酸化チタンの結晶形態はルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型のいずれも用いることができ、これらの結晶が混合した粒子でも良い。ブルッカイト型を含む二酸化チタンが光触媒能も高く好ましい。中でも、ブルッカイト型結晶を有する二酸化チタンが、二酸化チタン全体の70wt%以上であるとさらに好ましい。
光触媒性粒子の一次粒子径は平均粒子径で0.001μm〜0.1μmが好ましい。さらに好ましくは0.001μm〜0.08μmが良い。0.1μmを越えると光触媒性皮膜の透明性が低下し、0.001μmより小さいと粒子の生産性が極端に低下するからである。ここで平均粒子径は一次粒子を真球と仮定してBET比表面積から求めた値である。
【0029】
バインダー溶液中のアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物あるいはアルミニウムアルコキシドーチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物は光触媒性粒子と同等かそれよりも小さい粒子であることが好ましい。そのため、バインダー溶液を200℃で乾燥した後に得られる粉末の比表面積が100m/g以上であることが好ましい。100m/gより小さいものであると接着力が低いばかりか、効率的な光触媒粒子の頭出しができにくく、光触媒能を低減させてしまうからである。
【0030】
上記の光触媒性粒子は、バインダー溶液に、必要に応じ親水性有機溶媒と水とを混合して光触媒皮膜形成用組成物とする。この光触媒皮膜形成用組成物中の光触媒性粒子固形分濃度は0.5質量%〜7質量%であることが好ましい。0.5質量%より少ないと塗布したときの光触媒性皮膜が薄くなり、光触媒効果が少なくなってしまう。また、その光触媒効果を得るためには塗布回数を多くしなければならないので不都合となる。逆に7質量%より多いと光触媒皮膜形成用組成物の保管時の安定性が悪くなり、可使時間が短くなってしまう。
【0031】
バインダー溶液に含まれるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物の光触媒皮膜形成用組成物中における含有量はAl換算で0.5質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜5質量%、さらに好ましくは2質量%〜4質量%である。アルミニウムアルコキシドーチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物の光触媒皮膜形成用組成物中における含有量はAl換算で0.1質量%〜3質量%(好ましくは0.5質量%〜2.5質量%)、TiO換算で0.1質量%〜1質量%(好ましくは0.2質量%〜0.8質量%)であることが好ましい。
アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物がAl換算で0.5質量%より少ないと光触媒粒子の基材への接着力が不足してしまう。10質量%を越えれば接着力は大きくなるが、光触媒能の低下がおこるからである。さらにアルミニウムアルコキシドーチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物がAl換算で0.1質量%、TiO換算で0.1質量%より少ないとこれも光触媒粒子の基材への接着力が不足してしまう。Al換算で3質量%、TiO換算で1質量%より多いと光触媒能の低下が起きてしまう。また、このときの光触媒性粒子と加水分解縮合物(Al換算)の質量比率は好ましくは14:1〜1:20となり、さらに好ましくは10:1〜1:10である。
【0032】
光触媒皮膜形成用組成物中の水はあらかじめ光触媒性粒子を水に分散させておいたものをそのまま使用することができる。このときの光触媒性粒子分散溶液はpHが5〜8であることが望ましい。さらに、塗布性を向上させるために水を適宜加えることもできる。
また、光触媒皮膜形成用組成物中の親水性有機溶媒量を10質量%以下に抑えても、光触媒性や接着力などの機能を十分発現することができる。但し、塗布性を向上させるためにさらに親水性有機溶媒を適宜加えることもできる。
【0033】
上記のように作製した光触媒皮膜形成用組成物のpHは5〜8の中性の組成物となり、塗布基材や塗布装置の材質の選択性が拡がる。また作業環境も良好となる。
さらに光触媒皮膜形成用組成物に塗布性の観点から界面活性剤を適宜添加することもできる。界面活性剤としては縮合リン酸塩、リグニンスルホン酸塩、カルボキシメチルセルローズ、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、非イオン性界面活性剤などが用いられる。好ましくはポリアクリル酸系の界面活性剤およびポリオキシエチレンアルキルエーテルがよい。
【0034】
本発明の光触媒皮膜形成用組成物を乾燥後で200nm厚みに塗布したときに、その皮膜の全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%より低いと皮膜の透明性が悪くなり、基材の透明性や意匠性が損なわれる。
本発明の複合部材は上記光触媒皮膜形成用組成物をその表面に塗布して得ることができる。
【0035】
塗布は、スピンコート、スプレーコート、フローコート、ディップコート、バーコートなどの一般的な方法で行うことができる。皮膜の厚みは透明性、皮膜強度などの点から0.01μm〜3μmが好ましく、さらに膜の干渉色を抑制するためには0.01μm〜0.3μm、好ましくは0.8μm〜3μmである。
【0036】
また、光触媒皮膜形成用組成物を塗布した後に10℃〜40℃の温度に24時間以上保持、硬化すればそのまま使用することができる。こうして得られた膜の鉛筆引っ掻き試験での硬度は2H以上となり、実用に耐えうる付着強度となる。ここでいう鉛筆引っ掻き試験はJIS K−5400による方法である。
さらに強固な光触媒性皮膜が必要なときは、塗布後40℃〜200℃の温度で5分〜24時間保持、硬化させて使用することもできる。保持温度が高いほど保持時間は短くてよい。このようにして得られた膜の鉛筆引っ掻き試験での硬度は4H以上のものが得られる。
【0037】
このようにして得られた光触媒性皮膜は、光励起により皮膜の水との接触角を10度以下とした後に光を断って、暗所に保持48時間保持した後に水との接触角が10度以下の皮膜を有する複合部材とすることができる。
本発明の皮膜は使用環境での耐久性も良好であり、キセノンランプ式の促進暴露試験を5000時間実施した後でも強度の劣化が起こらず、実用に適したものである。ここでいう促進暴露試験はJIS K−5600による方法である。
【0038】
基材は特に限定されないが、ガラス、金属、コンクリート、セラミックス、石材、石膏ボード、窯業ボードなどが挙げられる。また、プラスチックなどに塗布する場合は光触媒作用による劣化を防ぐために、無機系のハードコートがなされたプラスチックが採用される。無機系のハードコートとしてはシリカ系やチタニア系のハードコートが挙げられる。
【0039】
このような基材に塗布された複合部材は建築物外壁材料、道路防音壁、ガードレール、橋構造物、建築物窓ガラス、建築物用ガラス、ショーケースガラス、蛍光灯ガラス、広告用看板、透明道路防音壁、屋外用透明樹脂建材、脱臭機用フィルター、水処理用リアクター、室内用装飾タイル、水槽、流水路壁面、照明用かさなどに適用される。
【0040】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(光触媒性粒子)
あらかじめ計量したイオン交換水50Lを攪拌しながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15%の四塩化チタン水溶液(住友チタニウム株式会社)3.6kgを60分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけてpHを4にした。さらに限外濾過膜で濃縮して白色スラリーを得た。白色スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。この固形分(乾燥粉)をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。また、この二酸化チタンスラリーの平均一次粒子径をBET比表面積値から真球と仮定して計算して求めたところ0.04μmであった。
【0041】
(バインダー溶液)
還流冷却器を備えた反応容器にイオン交換水9Lとメタノール3Lとアセチルアセトン500gと酢酸500gとを入れて、攪拌しながら加熱して70℃に保持した。そこへアルミニウムトリイソプロポキシド1.2kgを添加して、2時間還流した。その後、攪拌下放冷して加水分解重縮合物溶液(バインダー溶液)とした。
【0042】
この溶液の動粘性率をキャノンフェンスケ型動粘度計(柴田化学機械製)で測定したところ2.1×10−6/sであった。また、pHは5であった。さらにこの溶液を3ヶ月20℃の室温で保管した後に動粘性率を測定したところ2.0×10−6/sと変わらず、沈殿物もなく、安定であった。
【0043】
この溶液をスライドガラス(松浪ガラス工業(株)製マイクロスライドガラスS7213)にスピンコート法で塗布して20℃の温度で24時間、乾燥、硬化させた。膜の厚みを接触式表面粗さ計((株)小坂研究所製サーフコーダSE−30D)で測定したところ0.2μmであった。スライドガラスとこのアルミニウム化合物の皮膜付きのスライドガラスの全光線透過率をヘイズメーター(東京電色製TC−HIIIDPK)で測定し、スライドガラスの全光線透過率を100%として皮膜付きのスライドガラスの全光線透過率を測定変換したところ、99%、ヘイズ値は0.1%であった。また、この溶液を200℃で乾燥して得られた加水分解重縮合物のBET比表面積を測定したところ120m/gであった。
【0044】
(光触媒性皮膜形成用組成物)
上記の二酸化チタンスラリー200gとイオン交換水500gとバインダー溶液300gとを混合して光触媒性皮膜形成用組成物とした。この組成物のpHは6であった。この組成物を前記スライドガラスに塗布して20℃の温度で24時間乾燥、硬化させた。この光触媒性皮膜の厚みを測定したところ200nmであった。そして、この光触媒性膜皮膜の全光線透過率をバインダー溶液と同様な方法で測定したところ91%、ヘイズ値は0.5%であった。また、鉛筆引っ掻き試験を行ったところ3Hであった。そしてこのスライドガラスのキセノンランプ式促進暴露試験を5000時間行った後に鉛筆引っ掻き試験を行ったところ3Hであった。親水性は、膜表面層上の水滴と膜表面層との接触角で評価した。評価手順は光触媒性膜皮膜に十分光を当てた後に、光の当たらない暗所に48時間保持して接触角を測定した。接触角は協和界面科学製接触角計CA−Dで測定した。その結果6度であった。
【0045】
[実施例2]
実施例1と同様にあらかじめ計量したイオン交換水50Lを攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15%の四塩化チタン水溶液(住友チタン株式会社製)3.6kgを60分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけてpHを4にした。
次に得られた二酸化チタンスラリーに0.1kgのピロリン酸ソーダ(太平化学産業(株)製、食添用)を添加して、分散するまで十分攪拌した。次に、あらかじめ計量した純水2000Lに塩化カルシウム((株)トクヤマ製、食添用)200gを添加して塩化カルシウム溶液をつくった。得られたピロリン酸ソーダを含んだ二酸化チタンスラリーと塩化カルシウム溶液を混合し、40℃で4時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。
【0046】
次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研(株)製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗し、光触媒粒子スラリーを得た。得られたスラリーの固形分濃度は10質量%であり、pHは8であった。また、光触媒粒子の平均一次粒子径は0.06μmであった。
上記の光触媒粒子と実施例1のバインダー溶液を用い、実施例1と同様に配合して光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。この組成物をスライドガラスに塗布して20℃の温度で24時間保持して硬化させた。
そして、この組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0047】
[実施例3]
実施例1と同様にあらかじめ計量したイオン交換水50Lを攪拌しながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15%の四塩化チタン水溶液(住友チタン株式会社製)3.6kgを60分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析機にかけてpHを4にした。
次に得られた二酸化チタンスラリーに0.1kgのピロリン酸ソーダを添加して分散するまで十分攪拌したのち、ロータリーフィルタープレスで濾過洗浄し、光触媒粒子スラリーを得た。得られたスラリーの固形分濃度は10質量%であり、pHは8であった。また、光触媒粒子の平均一次粒子径は0.02μmであった。
【0048】
上記の光触媒粒子と実施例1のバインダー溶液を用い、実施例1と同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。この組成物をスライドガラスに塗布して20℃の温度で24時間保持して硬化させた。
そして、この組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0049】
(光触媒能)
また、この光触媒性皮膜の触媒能を次の条件で調べた。
20センチ×20センチのガラス板に厚さが0.2μmになるように光触媒性皮膜を形成させた。この皮膜付きのガラス板を5L大きさのテドラ−バック(登録商標)に入れ、硫化水素が60ppmの濃度の乾燥空気とともに封入した。ブッラクライト(松下電器産業株式会社製ブラックライトブルー蛍光灯FL20SBL−B)で365nmの波長において0.5mW/cmの紫外線強度となるように皮膜付きガラス板に照射した。
1時間後の硫化水素濃度をガス検知管(株式会社ガステック製、No.4LL)で測定したところ検知されなかった。
【0050】
[実施例4]
還流冷却器を備えた反応容器にイオン交換水9Lとメタノール3Lとアセチルアセトン500gと酢酸300gとを入れて、攪拌しながら加熱して70℃に保持した。そこへアルミニウムトリイソプロポキシド0.8kgを添加して、2時間還流して、バインダー溶液を作製した。そして実施例1の光触媒性粒子を用いて同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。この組成物をスライドガラスに塗布して30℃の温度で24時間保持して硬化させ皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0051】
[実施例5]
還流冷却器を備えた反応容器にイオン交換水9Lとメタノール3Lとアセチルアセトン500gと酢酸500gとを入れて、攪拌しながら加熱して70℃に保持した。そこへアルミニウムトリメトキシド0.8kgを添加して、2時間還流して、バインダー溶液を作製した。そして実施例3の光触媒性粒子を用いて同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。この組成物をスライドガラスに塗布して30℃の温度で24時間保持して硬化させ皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0052】
[実施例6]
還流冷却器を備えた反応容器にイオン交換水9Lとメタノール3Lとアセチルアセトン500gと60%硝酸300gとを入れて、攪拌しながら加熱して70℃に保持した。そこへアルミニウムトリイソプロポキシド0.8kgを添加して、2時間還流して、バインダー溶液を作製した。そして実施例3の光触媒性粒子を用いて同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。そしてこの組成物をスライドガラスに塗布して40℃の温度で24時間保持して硬化させ皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0053】
[実施例7]
メタノールを4L,アルミニウムトリメトキシド0.8kgをアルミニウムトリイソプロポキシド1.6kgに変えた以外は実施例5と同様にして皮膜を得た。そしてこのバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0054】
[実施例8]
実施例5のアルミニウムトリメトキシド0.8kgをアルミニウムトリsecブトキシド1.6kgにメタノール3Lをブタノール6Lに変えた以外は実施例5と同様にして皮膜を得た。そしてこのバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0055】
[実施例9]
還流冷却器を備えた反応容器にメタノール1.5Lとアセチルアセトン70gとイオン交換水30gと60%硝酸10gと酢酸20gとを入れて、攪拌しながら加熱して40℃に保持した。そこへアルミニウムトリメトキシド50gを添加して、1時間還流してから、チタニウムテトライソプロポキシド20gを添加してさらに1時間還流してバインダー溶液を作製した。そして実施例3の光触媒性粒子を用いて同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。そしてこの組成物をスライドガラスに塗布して40℃の温度で24時間保持して硬化させ皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0056】
[実施例10]
還流冷却器を備えた反応容器にメタノール1.5Lとアセチルアセトン50gとイオン交換水30gと60%硝酸10gを入れて、攪拌しながら加熱して40℃に保持した。そこへアルミニウムトリイソプロポキシド80gを添加して、1時間還流してから、チタニウムテトライソプロポキシド20gと酢酸20gとアセチルアセトン20gを添加してさらに1時間環流してバインダー溶液を作製した。そして実施例3の光触媒性粒子を用いて同様に光触媒性皮膜形成用組成物を作製した。そしてこの組成物をスライドガラスに塗布して40℃の温度で24時間保持して硬化させ皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0057】
[実施例11]
実施例10のイオン交換水30gを120gにした以外は実施例10と同様にして皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0058】
[実施例12]
実施例10のアルミニウムトリイソプロポキシドをアルミニウムトリ−n−ブトキシドにした以外は実施例10と同様にして皮膜を得た。そして、このバインダー溶液、組成物、皮膜の特性を調べ、表1に示した。
【0059】
[比較例1]
還流冷却器を備えた反応容器にテトラエトキシシラン40gとメタノール200gを入れ混合して、加水分解を行うための水としてイオン交換水50gと酸触媒として60%硝酸1.5gを添加し、40℃に保温、5時間加水分解した。この加水分解液のpHを測定したところpH1.5であった。
実施例3に用いた二酸化チタンスラリー2gとイオン交換水3gと上記エチルシリケート加水分解バインダー液5gを混合したところ激しく凝集した。また、この混合液のpHは4であった。この混合液をガラス板に塗布して、全光線透過率を測定したところ55%であった。また、実施例3と同様に光触媒能を調べた1時間後の硫化水素濃度は35ppmであり、光触媒能に劣るものであった。さらに20℃で24時間乾燥した後の鉛筆引っ掻き試験での値はH以下であった。
【0060】
[比較例2]
還流冷却器を備えた容器にジルコニウムテトラブトキシド25g、イソプロピルアルコール5g、メタノール1gをとり、攪拌した。ここに実施例1で用いた二酸化チタンスラリー25gを加え攪拌した。この混合液のpHは6であったが、酸化チタンの凝集が起きていた。これをガラス板に塗布して全光線透過率を測定したところ41%であった。また、20℃で24時間乾燥した後に鉛筆引っ掻き試験を行ったところH以下であった。
【0061】
[比較例3〜6]
バインダー溶液の組成を表2にした以外は実施例1と同様にして皮膜を得て、これらを評価した。その結果を表3に示した。
【0062】
【表1】
Figure 2004244608
【0063】
【表2】
Figure 2004244608
【0064】
【表3】
Figure 2004244608
【0065】
【発明の効果】
本発明のアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液は、加熱しなくとも各種基材表面に透明で耐久性の高い皮膜を形成できるものであり、また密閉しておけば常温で長期間に亘り安定に保存可能である。
該溶液から得られる皮膜形成用組成物は、極めて安定であり、光触媒粒子などのバインダーとして有効に使用できる。
従って前記溶液に光触媒粒子を配合して光触媒性皮膜形成用組成物としたときは、硬度が高く、透明であり、光により殆ど劣化が認められず、光により光触媒粒子が励起され、消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す被膜が容易に得られるので、各種の基材表面への応用が可能である。

Claims (29)

  1. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物とアルコール、水を含み、10〜40℃の温度において24時間以内に硬化して透明な皮膜を形成する加水分解重縮合物溶液。
  2. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドおよび一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物とアルコール、水を含み、10〜40℃の温度において24時間以内に硬化して透明な皮膜を形成する加水分解重縮合物溶液。
  3. β―ジケトン類を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加水分解重縮合物溶液。
  4. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、水30モル以上およびアルコール類10〜20モルを配合して得られたアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液。
  5. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、チタニウムアルコキシド0.01〜0.5モル、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、水1〜20モル、およびアルコール類80〜140モルを配合して得られたアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液。
  6. β−ジケトンがアセチルアセトンであり、酸が酢酸、アルコールがメタノールである請求項3乃至5のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
  7. 動粘性率が1.5×10−6〜3.0×10−6/sである請求項4に記載の加水分解重縮合物溶液。
  8. 動粘性率が0.5×10−6〜2.0×10−6/sである請求項5に記載の加水分解重縮合物溶液。
  9. 20℃の温度で密閉して保存した時に90日間動粘性率変化がなく、光触媒性粒子と混合しても凝集作用の起こらない請求項1乃至8のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
  10. 加水分解重縮合物溶液を200℃で乾燥した後に得られる粉末のBET比表面積が100m/g以上である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
  11. 加水分解重縮合物溶液を40℃で乾燥させ、200nmの厚さの皮膜にしたとき、全光線透過率が95%以上、ヘイズ値が1%以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液。
  12. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、アルコール類10〜20モルを混合した溶液に、該アルミニウムアルコキシドを溶解し、次いで水30モル以上を添加して40℃〜70℃で加熱することを特徴とするアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液の製造方法。
  13. 一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド1モルに対して、β−ジケトン類0.1モル〜3モル、酸0.5〜2モル、アルコール類80〜140モル、水1〜20モルを混合した溶液に、該アルミニウムアルコキシドを添加し、次いで40℃〜70℃で加熱しながら一般式Ti(OR’)で表されるチタニウムアルコキシド0.01〜0.5モルを添加することを特徴とするアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液の製造方法。
  14. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の加水分解重縮合物溶液に、光励起により消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す光触媒性粒子を配合した光触媒皮膜形成用組成物。
  15. 光触媒性粒子が固形分濃度として0.5質量%〜7質量%、一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物が、Al換算で0.5質量%〜10質量%含有されている請求項14に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
  16. 光触媒性粒子が固形分濃度として0.5質量%〜7質量%、アルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物が、Al換算で0.1質量%〜3質量%、TiO換算で0.1質量%〜1質量%含有されている請求項14に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
  17. BET比表面積から求めた光触媒粒子の平均粒子径が、0.001〜0.1μmである請求項14乃至16のいずれか1項に記載の光触媒性皮膜形成用組成物。
  18. 光触媒性粒子が二酸化チタン粒子および二酸化チタン表面に縮合リン酸塩を存在させた粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項14乃至17のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
  19. 二酸化チタン粒子が、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶型を含む請求項18に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
  20. アルコール類の含有量が30質量%以下である請求項14乃至19のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
  21. pHが5〜8である請求項14乃至20のいずれか1項に記載の光触媒皮膜形成用組成物。
  22. アルミニウムアルコキシドの加水分解重縮合物溶液またはアルミニウムアルコキシド−チタニウムアルコキシドの共加水分解重縮合物溶液に光触媒性粒子を配合した光触媒皮膜形成用組成物より得られた、光励起により消臭、防汚、親水、抗菌性能を示す皮膜を備えた複合部材。
  23. 光触媒性粒子が二酸化チタン粒子および二酸化チタン表面に縮合リン酸塩を存在させた粒子より選ばれる少なくとも1種を含む請求項22に記載の複合部材。
  24. 二酸化チタン粒子が、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型からなる群より選ばれる少なくとも1種の結晶型を含む請求項23に記載の複合部材。
  25. 光励起により皮膜の水との接触角を10度以下とした後に、光を断って暗所に保持48時間保持した後に水との接触角が10度以下である請求項22乃至24のいずれか1項に記載の複合部材。
  26. 皮膜が、キセノンランプ式による促進暴露試験に5000時間暴露した後に、鉛筆引っ掻き値で2H以上である請求項22乃至25のいずれか1項に記載の複合部材。
  27. 皮膜が、200nmの厚さの時の全光線透過率が90%以上であり、ヘイズ値が1%以下である請求項22乃至26のいずれか1項に記載の複合部材。
  28. 請求項22乃至27のいずれか1項に記載の複合部材を含む建築物外壁材料、道路防音壁、建築物窓ガラス、ショーケースガラス、蛍光灯ガラス、ガードレール、脱臭機用フィルター、水処理用リアクター、室内用装飾タイル、水槽又は照明用かさ。
  29. 請求項22乃至28に記載の複合部材を含むハードコート層を備えた広告用看板、透明道路防音壁、屋外用透明樹脂建材又は照明用かさ。
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