JP2004244485A - 熱媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱媒体中に、粒径が400nm以下の非磁性帯の金属微粉末を加える。この金属微粉末は、Cu、Ag、Pdの一種以上からなる単体、合金、複合体のいずれかであると好ましい。これらの金属微粉末は、三塩化チタンを還元剤に用い、液相還元法によって作製されたものであると、最適である。加える金属微粉末量は、多いほど熱伝導性を大きくするが、使用時における粘度が1Pa・s以下で使用するのが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却装置や加熱装置に用いる熱媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱媒体は、冷却用にも加熱用にも、また一方を加熱し、他方を冷却する場合にも用いられる。一般には直接冷却と隔壁を有する間接冷却とがあり、一般には間接冷却に用いる、液体を媒体とする熱媒体に供する。
液体を媒体とする熱媒体には、冷蔵庫やエアコン等の熱媒体のように液体と気体の相変化を利用するものや、液体と個体の相変化を利用するものもある。
通常は熱媒体を循環させ、一方で対象物を冷却することにより、熱媒体が加熱され、それを他方で放冷するといった方法を取る。対象物を加熱する場合は、その逆をすればよい。また、液体の流動性を利用し、熱媒体を入れた槽に、加熱もしくは冷却したい対象物を容器に入れ浸漬することで処置する手段もある。
【0003】
従って、使用する熱媒体は、使用時には常に温度サイクルが負荷されるため、この温度サイクルに耐えうる特性が必須である。こうした熱媒体には、流動性がよく、即ち粘度が大きくない方が、ポンプ等で循環させるのに都合がよい。また、液体の温度差を利用するため、融点と沸点との温度間隔が大きいものほど好まれる。そして、高温側から吸熱し、低温側に放熱することから、熱伝導性が良いものを選ぶ。
【0004】
以上のような条件で、熱媒体は選択され、製造されてきたが、液体単独では熱伝導性に限界がある。ところが、最近では液体にマイクロカプセルを分散させ、そのマイクロカプセル中で相変化もしくは化学変化させることによる熱伝導性の向上を図ろうとする試みがある(特許文献1参照)。この方法は、カプセル中の物質が熱によりエンタルピ変化をするため、熱の出し入れを大きくすることが出来る。
また、同様にカプセル中に、温度変化による体積の膨張・収縮がマイナスになる物質を充填する例がある(特許文献2参照)。この手段は、温度変化による密度変化が通常の物質と異なり、温度上昇により収縮するため、密度大となる。その結果、カプセルは熱媒体の自然対流と逆の方向に移動することになり、意図する温度分布を形成することが出来る。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−156242号公報(0008)
【特許文献2】
特開2002−180037号公報(0010−0018、0026−0038)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した文献のような試みは何れも優れた技術であるが、カプセル中に使用する物質の特性は、ある温度範囲に限られるため、汎用性には不向きである。また、温度分布を形成する手段は、優れた方法であるが、利用分野が限られる。最近の地球温暖化等の話題から、より汎用的に利用され、コストもかからない経済的な熱交換を具体化するためには、さらなる手段を必要とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、平均粒径が400nm以下の非磁性体の金属微粉末と分散剤とを主成分とする熱媒体である。磁性体を利用する発明は磁性流体として多く存在するが、高熱伝導を目的とする熱媒体には、非磁性体を用いるのが得策である。高熱電導性を有する非磁性体の金属粉は、Ag、Pd、Cu等があげられる。また、これらの金属粉は、分散剤に混合したときに十分微小であれば、均一に混合された後、比重差による沈殿が少なく、安定した熱媒体を得る。
【0008】
金属微粉末を得るには、三塩化チタンを還元剤に用い、液相還元法によって作成されたものであるのが好ましい。この手段は後述する。
金属微粉末の割合は、分散剤に多く含ませるほど高熱電導性を有する熱媒体となるが、0.1体積%以上、65体積%以下の範囲で使用するのが好ましい。0.1体積%未満では、熱媒体中の金属粉同士の距離が離れるため、金属粉の高熱電導性の効果は大きくなく、金属粉を加えることによる熱容量が大きくなる程度の効果となる。また、65体積%を越えると、金属粉同士の接触による熱伝導性は非常に良くなるが、金属粉が近接する金属粉との2次凝集による集中が起こりやすく、好ましくない。
【0009】
本発明になる熱媒体を液体として使用する場合は、使用条件下で粘度が1Pa・s以下とするのが好ましい。使用する場合としたのは、熱媒体の粘度が温度により大幅に変化するからである。使用時において、粘度が1Pa・sを越えると、粘性により伝熱壁近傍の流れが層流となる領域が増え、熱伝達の抵抗となる。
【0010】
もちろん、通常の水や油を分散剤とした熱媒体としても使用できるが、原子炉等に用いられるナトリウム合金を分散剤としても、使用可能である。また、有機溶剤を用いるのも好ましい。有機溶剤を用いる場合は、高熱伝導の特性を生かすために、沸点が80℃以上の高沸点の溶剤を用い、広い温度範囲に適用するのがよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる平均粒径が400nm以下の、非磁性体の金属微粉末は、液相還元法、真空蒸着法、スパークエロージョン法、熱分解法、プラズマCVD法など種々の方法で得ることが出来る。しかし、分散剤に分散させ、沈殿しにくい状況を長期に保つには、粒径分布がシャープであるものが好ましい。本発明では、三価チタンを還元剤に用い、液相還元法を用いると好ましい。
その方法は、対象となる金属の無機酸酸化物と錯化剤と四塩化チタンを用意し、おのおの水溶液とする。四塩化チタン溶液はあらかじめ陰極電解処理により、一部を還元し、三価のチタンイオンを生成させておく。これらの水溶液を混合し、均一にしてからこの混合液にアンモニア水を加えpHを大きくする。その後撹拌しつつ数分乃至数十分後放置してから、遠心分離器により分離して所望の金属微粉末を得る。
【0012】
合金の微粉末とする場合は、対象とする金属の無機酸酸化物を用いれば良く、格別な手段を取る必要がない。又複合体とする場合は、一旦核となる金属を得た後、コートする金属の無機酸酸化物を用い、同様の操作を行い、pH調整した後、核となる金属微粉末を加えれば、コートする金属が核となる金属の周りに析出する。
使用する金属は非磁性であれば構わないが、好ましくは熱伝導率の大きいCu、Ag、Pd及びその合金の中から選択するのが良い。
【0013】
熱媒体中の金属微粉末比率は、流動性を必要とする観点からは少ない量が好ましいが、熱効率を必要とする観点からは多い量が好ましく、使用時の状況に応じて判断される。金属微粉末の量は、好ましくは熱媒体全体に対し、0.1体積%以上、65体積%以下である。0.1体積%未満では熱媒体中に存在する金属微粉末の量が少なすぎ、互いに接触する機会が少ないので、熱媒体としては金属微粉末を混入させた効果に乏しい。65体積%を越えると充填率が大きすぎ、液体としての流動性が低下する。
【0014】
熱媒体の流動性は、機械的に熱媒体を移動させる場合に重要になる。もちろん自然対流を用いた状況でも使用は可能であるが、効率的に好ましいものではない。機械的に移動させる手段は、ポンプやスクリューによる強制的な流れを作り、高温側で得た熱量を低温側で放出する。ここで熱媒体の粘度が大きいと、熱交換部分での熱媒体の流れが層流となり、熱伝達の抵抗となる。粘度が小さければ、流れが乱流となり、熱伝達の抵抗が大幅に減少する。従って使用時における熱媒体の粘度は小さいほど好ましいことになる。本発明では、使用温度で1Pa・s以下となるような使用状況を推奨する。
【0015】
使用する分散剤はナトリウム合金であっても使用できる。たとえば原子炉の冷却用に用いるナトリウム合金は、常温で液体であり、これらに金属微粉末を分散させることも可能である。ナトリウム合金の熱伝導率は、水や有機溶剤のような熱媒に比べ、遙かに大きい値である。しかし、ここに金属微粉末を加える本発明の熱媒体は、高熱伝導率の金属微粉末を用いることにより、熱伝導率を向上させると共に、熱容量をも大きくすることが出来る。
【0016】
通常使用する熱媒体は、水か有機溶剤である。水を分散剤に使用する場合は、金属微粉末の表面に酸化膜を発生しやすいので、金属微粉末の表面に防錆処理をするか、水に防錆剤を加えて使用するとよい。有機溶剤の場合は、吸水性のある溶剤や、酸化力のある溶剤でなければ、そのまま使用できる。本発明は、特に熱伝達の効率を大きくするために加える金属微粉末であるから、熱媒体としても大きな温度差の加熱/冷却に使用するのが効果的である。即ち分散剤には広い温度範囲で安定した液体であるものが好ましく用いられる。好ましくは沸点が80℃以上のものを用いると有効である。さらに好ましくは凝固点が0℃以下のものを選ぶとよい。
【0017】
【実施例】
以下に発明の効果を示す実施例をあげるが、本発明は応用領域の広いものであり、実施例により限定されるものではない。
(還元水溶液の準備)
四塩化チタンの20%塩酸酸性水溶液を用い、pH4に調整した。この水溶液を2槽式電解槽に入れ、陰イオン交換膜で仕切られた反対側には、硫酸ナトリウム水溶液(0.1mol/L)を入れた。四塩化チタン水溶液側を陰極にして3.5Vの直流で電解処理した。電流量換算により、陰極の四塩化チタンの60%が三価のチタンイオンに還元する時点で準備完了した。液のpHは1になった。
【0018】
(反応液の準備)
対象金属の塩化物もしくは硫酸化物を用意した。対象金属は表1に結果と共に示す。対象金属の代表としてここでは塩化銅を用いて説明する。
塩化銅とクエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウムの水溶液をそれぞれ作成した。これらを混合し、反応液を準備した。この反応液を50℃に加温し、あらかじめ50℃に加温しておいた前記還元液に混合し、これにpH調整剤としてアンモニア水を加え、溶液のpHを5.2とした。この時点で各成分の濃度は、三価、四価を含む塩化チタンが0.2mol/L、塩化銅が0.16mol/L、錯化剤のクエン酸三ナトリウムと酒石酸ナトリウムはそれぞれ0.15mol/Lになっている。
【0019】
(金属微粉末の作成)
液温を50℃に保ち、撹拌を継続して数分後、沈殿物の析出により撹拌を止め、沈殿物を濾過して取り出した。水洗後、非活性雰囲気中で乾燥し、銅微粉末を得た。得られた銅微粉末を電子顕微鏡で撮影し、寸法測定した結果、平均径が260nmのほぼ球状粒子であった。
以下、同様な液相還元法で金属微粉末を作成した。その時の条件及び結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
(伝熱特性調査)
表1に示す結果により得られた金属微粉末を用いて、熱媒体としての効果を観察した。
液状シリコーンゴムを用意し、これに金属微粉末が20体積%含む量を添加した。均一に混合した後、平板状に厚さ2mmのシートになるようにし乾燥した。得られたシートを用いて熱伝導率を計測した。熱伝導率計(京都電子工業株:QTM−500)で熱伝導率を計測した結果を表2に示す。この結果より、熱伝導率が大きい金属微粉末を用いれば、大きな熱伝達が可能になることがわかる。
【0022】
【表2】
【0023】
なお、本発明により作製される熱媒体は、加える金属微粉末が非常に細かいので、液体中でも安定性が良いが、長期間静止状態にすれば比重差による沈殿は避けられない。従って、安定性をより長持ちさせるためには、界面活性剤等の添加をしておいた方が好ましい。また、酸化されにくい金属であっても、形状が微粉であり、長期間の放置もしくは使用時に表面酸化による熱抵抗膜を形成する。これを防止するために、金属微粉末の表面に防錆処理を施すか、熱媒体自体に防錆剤を添加する等の手段を取るのが好ましい。
【0024】
【発明の効果】
本発明による熱媒体は、通常使用される熱媒体とは大幅に熱伝導性の大きい金属微粉末を含むため、熱伝導性が大幅に大きくなる。熱交換等に用いる用途であれば、効率よく熱交換できる。
Claims (7)
- 平均粒径が400nm以下の、非磁性体の金属微粉末と分散剤とを主成分とする熱媒体。
- 前記非磁性体の金属が、Tiよりイオン化傾向の低い金属の単体、合金、複合体のいずれかである請求項1に記載の熱媒体。
- 前記非磁性体の金属が、Cu,Ag,Pdの1種以上からなる単体、合金、複合体のいずれかである請求項2に記載の熱媒体。
- 前記金属微粉末は、三塩化チタンを還元剤に用い、液相還元法によって作成されたものである請求項1乃至3のいずれかに記載の熱媒体。
- 使用時における粘度が1Pa・s以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱媒体。
- 前記分散剤が、ナトリウム合金である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱媒体。
- 前記分散剤が、大気圧下で沸点が80℃以上を有する有機溶剤である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱媒体。
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