JP2004244292A - 減圧処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる減圧処理装置を提供する。
【解決手段】排気カップ100は、PDP200の背面板ガラス203への接触面においてほぼ全面に亘って開口する差動排気部102と、同じく本体101の角部103の近傍において接触面に開口する本排気部104と、角部103において本体101から下方に向けて突出して形成されたストッパ107を備え、排気カップ100が背面板ガラス203に装着される際に、ストッパ107は背面板ガラス203の角部における周縁に係合し、本排気部104は背面板ガラス203の角部において配設された封止部300を内包し、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うと共に、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿う。
【選択図】 図4
【解決手段】排気カップ100は、PDP200の背面板ガラス203への接触面においてほぼ全面に亘って開口する差動排気部102と、同じく本体101の角部103の近傍において接触面に開口する本排気部104と、角部103において本体101から下方に向けて突出して形成されたストッパ107を備え、排気カップ100が背面板ガラス203に装着される際に、ストッパ107は背面板ガラス203の角部における周縁に係合し、本排気部104は背面板ガラス203の角部において配設された封止部300を内包し、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うと共に、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿う。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧処置装置に関し、特に、複数の板ガラスと、該板ガラスの間に形成された減圧層とを有するガラスパネルの減圧処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、真空ガラス、例えば「スペーシア」(登録商標)やプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)等に好適な基本構造を有するガラスパネルとして、図7(a)及び(b)に示すような対向する2枚の板ガラス700,701と、該板ガラス700,701の間に形成される減圧層702と、該減圧層702の周縁をシールする低融点ガラスからなる周縁シール材703と、板ガラス700を貫通する穴に一端が埋め込まれ、該一端側において低融点ガラスからなるシール材704によって板ガラス700に溶着される排気管705とを備えるガラスパネル706が知られている。このガラスパネル706における減圧層702は、真空ガラスにおいては真空とされ、PDPにおいては減圧された後、キセノン(Xe)やネオン(Ne)等の希ガスが充填される。
【0003】
そして、このガラスパネル706は、ペアリングされた板ガラス700,701の周縁部に塗布された周縁シール材703と、板ガラス700及び排気管705の接合部に塗布されたシール材704とを焼成によって溶融して板ガラス700,701を接合し且つ排気管705を板ガラス700に溶着した後、排気管705を介して減圧層702を減圧し、さらに排気管705の他端を封じ切ることによって作製される。
【0004】
減圧層702の減圧の際には、排気管705の他端にニトリルゴム(NBR)等からなるO−リング707を介して減圧管708が接続される。減圧管708は、一端において径が拡大されて形成されたゲッタ室709を有する円管であり、その他端は不図示のターボ分子ポンプ(以下「TMP」という。)に接続され、ゲッタ室709内に非蒸発型ゲッタ710を有する(図7(b))。そして、ガラスパネル706及び減圧管708を不図示の炉内において所定温度まで加熱して減圧層702に存在する水分、有機物、油脂等をガス化させると共に、非蒸発型ゲッタ710を活性化し、その後、TMPを稼働させて上記ガス及び空気を減圧層702から除去して減圧層702を減圧すると共に、活性化された非蒸発型ゲッタ710によって減圧管708を流れる上記ガスを吸着して除去するが、O−リング707は高温に耐えることができないため、非蒸発型ゲッタ710を高温で活性化することができず、減圧層702の減圧の効率低下を招くという問題があり、特に、この効率低下により、減圧層702の減圧は長時間となるため、PDPにおいては蛍光体膜の劣化等を招くという問題があった。
【0005】
そして、近年、この長時間に亘る減圧層702の減圧を避けるため、O−リングを使用しない全金属製の排気装置が減圧層702の減圧に用いられるようになった。
【0006】
この全金属製の排気装置である排気カップ800は、図8(a)に示すように、ステンレスからなる円柱であって、その中心軸上を穿孔して形成された本排気部801と、該本排気部801と連通する金属製の本排気系802と、溝状の差動排気部803と、該差動排気部803と連通する金属製の差動排気系804と、本排気部801内に配設される横置きのコイル状のフィラメント805とを備え、図8(b)に示すように、本排気部801は、板ガラス700に接触する接触面においてそのほぼ中央に設けられ、差動排気部803は、同じく上記接触面において本排気部801を囲うように排気カップ800の中心軸と同心円上に設けられる。
【0007】
そして、減圧層702の減圧の際において、排気カップ800は、フィラメント805がガラスパネル706の排気管705に対向するように、板ガラス700上に装着される。このとき、差動排気部803は不図示のロータリーポンプ(以下「RP」という。)によって減圧されるので、排気カップ800は板ガラス700に吸着する(例えば、特許文献参照。)。
【0008】
この排気カップ800では、O−リングを使用しないため、非蒸発型ゲッタを高温で活性化することができ、減圧層702の減圧における効率を向上することができる。
【0009】
【特許文献】
特表2002−530184号公報(第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
通常、PDPとして使用されるガラスパネル706では、図9に示すように、板ガラス701における表示部900に対応して板ガラス700の内面に設けられたリブ(不図示)の形成範囲901に排気管705を配設することができないため、排気管705は板ガラス700における周縁部、特に角部に設けられる。したがって、排気管705から板ガラス700の端部までの距離は非常に短いものとなる。
【0011】
しかしながら、上述した排気カップ800は、その接触面において円形を呈するため、排気カップ800を排気管705が板ガラス700の角部に設けられたガラスパネル706に装着した場合、本排気部801及び差動排気部803が板ガラス700から脱落して排気カップ800を板ガラス700に吸着させることができず、当該ガラスパネル706において、安定して減圧層702を減圧することができないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる減圧処理装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の減圧処理装置は、複数の板ガラス、該複数の板ガラスの間に設けられた減圧層、及び前記板ガラスの周縁部に配設されて前記減圧層と連通する排気孔を有するガラスパネルの前記板ガラスに接触する接触面と、該接触面に開口し且つ前記排気孔と対向する減圧室とを備える減圧処理装置において、前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0015】
請求項2記載の減圧処理装置は、請求項1記載の減圧処理装置において、前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0017】
請求項3記載の減圧処理装置は、請求項1又は2記載の減圧処理装置において、前記減圧室の外側に設けられ且つ前記接触面に開口する他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の減圧処理装置によれば、減圧室の外側に設けられ且つ接触面に開口する他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、他の減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をより安定して行うことができる。
【0019】
請求項4記載の減圧処理装置は、請求項3記載の減圧処理装置において、前記他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をさらに安定して行うことができる。
【0021】
請求項5記載の減圧処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記ガラスパネルに装着される際に、前記板ガラスの周縁と係合する係合部を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の減圧処理装置によれば、ガラスパネルに装着される際に、板ガラスの周縁と係合する係合部を備えるので、ガラスパネルにおける当該減圧処理装置の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層の減圧の際に、減圧処理装置がずれることがないため、減圧層の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0023】
請求項6記載の減圧処理装置は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記接触面における前記他の減圧室の開口面積が500mm2以上であることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が500mm2以上であるので、当該減圧処理装置を板ガラスに確実に接触させる荷重を確保でき、減圧室のシールを安定して行うことができる。
【0025】
請求項7記載の減圧処理装置は、請求項6記載の減圧処理装置において、前記開口面積が2000mm2以上であることを特徴とする。
【0026】
請求項7記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が2000mm2以上であるので、板ガラスの接触面において面圧を従来の減圧処理装置より大きく確保することができ、減圧室のシールを従来の減圧処理装置より安定して行うことができる。
【0027】
請求項8記載の減圧処理装置は、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記他の減圧室の容積は2000mm3以上であることを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は2000mm3以上であるので、減圧室の減圧の際、外乱により他の減圧室と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、他の減圧室の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0029】
請求項9記載の減圧処理装置は、請求項8記載の減圧処理装置において、前記容積は5000mm3以上であることを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は5000mm3以上であるので、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、より排気効率を向上することができる。
【0031】
請求項10記載の減圧処理装置は、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記接触面において、前記他の減圧室は前記減圧室を囲む環状を呈し、前記減圧室の外周縁と前記他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であることを特徴とする。
【0032】
請求項10記載の減圧処理装置によれば、接触面において、他の減圧室は減圧室を囲む環状を呈し、減圧室の外周縁と他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であるので、板ガラスの接触面において所定の面圧を確保することができ、減圧室のシールをより安定して行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る減圧処理装置について図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線I−Iに沿う断面図である。
【0035】
図1において、排気カップ100は、直方体状の本体101と、後述するPDP200における背面板ガラス203への接触面にほぼその全面に亘って開口する差動排気部102と、同じく本体101の角部103の近傍において接触面に開口する本排気部104と、差動排気部102と連通する管状の差動排気系105と、本排気部104と連通する管状の本排気系106と、差動排気部102が開口する角部103において本体101から下方に向けて突出して形成されたストッパ107と、本排気部104内に配設される横置きのコイル状のフィラメント108とを備える。
【0036】
上記接触面において、本排気部104は角部103より所定の距離だけ離れた位置に開口するため、本排気部104の外周は差動排気部102に囲まれる。このとき、本排気部104の外周縁と差動排気部102の内周縁との距離(以下「シール幅」という。)は2.0mm以下、例えば0.5mmであり、差動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈する。
【0037】
また、上記接触面における差動排気部102の開口面積は500mm2以上であり、差動排気部102の容積は2000mm3以上である。
【0038】
差動排気系105は不図示のRPに接続される一方、本排気系106は不図示のTMPに接続され、差動排気系105及び本排気系106は、排気カップ100がPDP200に装着された際に、RP及びTMPの作動によって減圧される。
【0039】
本排気部104内に配設されたフィラメント108は、上記接触面から眺めたときに角部103の近傍に設けられ、接触面からの高さは約5mmである。
【0040】
ここで、排気カップ100の材質はステンレスであり、特に、0〜500℃の間において背面板ガラス203の膨張係数(8.5×10−6/℃)と排気カップ100の膨張係数との差の絶対値が20×10−6/℃以下となるステンレス、例えばSUS304等が用いられる。また、本排気系106及び差動排気系105の材質は金属であり、排気カップ100と同様ステンレスであるのが好ましい。
【0041】
次に、排気カップ100が装着されるPDPについて図面を参照しながら説明する。
【0042】
図2は、排気カップ100が装着されるガラスパネルとしてのPDPの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は部分断面図である。
【0043】
図2において、PDP200は、厚さが、例えば2.8mmの前面板ガラス201と、前面板ガラス201との間に減圧層202を形成すべく前面板ガラス201から、例えば0.1mmの間隔を隔てて配設され、厚さが、例えば2.8mmの背面板ガラス203とから成り、前面板ガラス201及び背面板ガラス203は、その外周縁において低融点ガラスフリットからなる封着部204により封着される。
【0044】
前面板ガラス201の内面上には、透明電極205a及び金属電極205bとから成る表示電極205がパターン形成され、該表示電極205を覆うように誘電体ガラス層206が積層され、誘電体ガラス層206上には、酸化マグネシウム(MgO)製誘電体保護層207が積層されている。
【0045】
また、背面板ガラス203の内面上には、後述する蛍光体212〜214の発光を制御するアドレス電極208が所定のピッチでパターン形成され、該アドレス電極208を覆うように誘電体ガラス層209が積層され、該誘電体ガラス層209上には、複数のチャンネル状放電空間210を画成する複数のガラス製リブ211がサンドブラスト法やブレード成型法によってパターン成形され、各放電空間210におけるリブ211の表面には、カラー表示をすべく赤色(R)の蛍光体212、緑色(G)の蛍光体213、及び青色(B)の蛍光体214が順に連続して塗布されている。
【0046】
リブ211は、その高さが、例えば0.1mmであり、前面板ガラス201と背面板ガラス203との間隔を約0.1mmに保持する。また、放電空間210には、希ガスが封入されている。希ガスは、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)を組成とする混合ガス系が用いられており、その封入圧力は約40〜70kPaの範囲に設定される。
【0047】
そして、蛍光体212〜214は、放電空間210への放電によって発生する波長の短い紫外線により励起発光する。
【0048】
図3は、図2(a)における背面板ガラス203の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図3(a)の線III−IIIに沿う断面図である。
【0049】
図3(a)及び図3(b)において、背面板ガラス203は、減圧層202に希ガスを封入する封止部300を有する。この封止部300は、図2(b)におけるリブ211が形成されるリブ形成範囲301の外側且つ封着部204の内側に形成された内径2mmの貫通孔302と、貫通孔302に内嵌された外径2mmのガラス管303と、ガラス管303と背面板ガラス203とを接合する低融点ガラス304とからなる。このとき、貫通孔302はリブ形成範囲301の外側且つ封着部204の内側に形成されるので、封止部300は背面板ガラス203の角部近傍に配設される。また、ガラス管303は、後述する減圧層202の減圧処理においてフィラメント108から加熱されることによってその先端が溶融されて封止される。
【0050】
図4は、図2のPDP200に装着された排気カップ100を示す図であり、(a)は排気カップ100を上方から眺めた平面図であり、(b)は図4(a)の線IV−IVに沿う断面図である。
【0051】
図4において、排気カップ100は、PDP200における背面板ガラス203の表面上に不図示のガスケットを介して装着される。このとき、排気カップ100のストッパ107は、背面板ガラス203の角部における周縁に係合することによって排気カップ100の角部103と背面板ガラス203の角部とを一致させて排気カップ100の背面板ガラス203に対する位置を定める。また、本排気部104は、接触面において角部103の近傍に配設されているので、背面板ガラス203の角部に配設された封止部300を内包し、フィラメント108は、上述したように本排気部104において角部103の近傍に設けられているので、封止部300のガラス管303の先端と対峙する。
【0052】
排気カップ100がPDP200に装着されると、差動排気部102及び本排気部104の開口部は背面板ガラス203によって塞がれて、差動排気部102及び本排気部104は密閉空間となる。上述したように接触面において本排気部104の外周は差動排気部102に囲まれると共に、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿い且つ本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状も背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うので、本排気部104と背面板ガラス203の角部近傍の周縁との間において差動排気部102によって密閉空間を形成することができる。
【0053】
そして、差動排気部102は、差動排気系105を介して接続されたRPの作動により減圧されて、排気カップ100と背面板ガラス203とを吸着する吸着力を発生する。
【0054】
次に、PDP200における減圧層202の減圧処理について説明する。
【0055】
図5は、図2のPDP200における減圧層202の減圧処理の工程図である。
【0056】
図5において、まず、背面板ガラス203上にスパッタリングやスクリーン印刷によってアドレス電極208,誘電体ガラス層209,リブ211及び蛍光体212〜214を形成すると共に、その角部において封止部300を形成する一方、前面板ガラス201上にスパッタリングによって表示電極205,誘電体ガラス層206及び誘電体保護層207を形成する。そして、前面板ガラス201と背面板ガラス203とを、誘電体保護層207とリブ211とが対向するようにペアリングし、ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203の全周縁に低融点ガラスフリット500を塗布すると共に、ガラス管303の周りに低融点ガラス304を塗布する(図5(a))。
【0057】
次いで、排気カップ100を、ストッパ107が背面板ガラス203の角部の周縁に係合するように、背面板ガラス203上に装着する。
【0058】
そして、RPを作動させて差動排気部102及び背面板ガラス203によって形成された密封空間の圧力を10〜103Paまで減圧し、排気カップ100を背面板ガラス203に吸着させる。このとき、排気カップ100の角部103と背面板ガラス203の角部とが一致し、封止部300が本排気部104に内包され、フィラメント108が封止部300のガラス管303の先端と対峙するのは上述した通りである(図5(b))。
【0059】
その後、ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203を、排気カップ100が装着されたまま、不図示の炉の内部で焼成して低融点ガラスフリット500及び低融点ガラス304を溶融させた後、当該ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203を冷却して低融点ガラスフリット500及び低融点ガラス304を凝固させることによって前面板ガラス201及び背面板ガラス203を封着すると共に、ガラス管303を背面板ガラス203に接合する(図5(c))。これにより、前面板ガラス201及び背面板ガラス203の間に減圧層202が形成されるが、上述した処理は大気中で実行されるので、減圧層202の圧力は大気圧である。
【0060】
次いで、炉内の温度を一定時間維持することによって減圧層202に存在する水分、有機物、油脂等をガス化させると共に、TMPを稼働させて当該ガス及び空気を本排気系106及び本排気部104を介して減圧層202から除去することによって減圧層202を減圧するベーキングを行い、減圧層202の圧力が約10−1〜10−2Paを下回ると、希ガスを本排気系106及び本排気部104を介して減圧層202へ充填し、減圧層202の圧力が約40〜70kPaを上回ると、PDP200の冷却を開始すると共に、フィラメント108に通電して、これを発熱させる。これにより、フィラメント108が対向するガラス管303の先端を溶融させて減圧層202を封止する(図5(d))。
【0061】
その後、RPの作動を停止して排気カップ100を背面板ガラス203から離脱させる。
【0062】
減圧層202の減圧処理において、RPは、排気カップ100が背面板ガラス203に装着された後、常に作動し、差動排気部102及び背面板ガラス203から形成される減圧空間を減圧することによって排気カップ100を背面板ガラス203に吸着させるだけでなく、外乱により排気カップ100と背面板ガラス203とが口開いた際に、差動排気部102へ侵入した空気を排出することによって本排気部104への空気の侵入を防止する。
【0063】
本発明の実施の形態に係る排気カップ100によれば、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うと共に、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状も背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うので、本排気部104と背面板ガラス203の角部近傍の周縁との間において差動排気部102によって密閉空間を形成することができ、封止部300が背面板ガラス203の周縁部に設けられたPDP200において、減圧層202の減圧を安定して行うことができる。
【0064】
差動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、必ずしも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈する必要はなく、当該動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍部分が接触する背面板ガラス203の周縁形状に沿う形状を呈していれば、上述した効果を奏することができるが、背面板ガラス203の開口面積を有効に利用できる観点から、特に直角が好ましい。
【0065】
上述した排気カップ100では、シール幅が0.5mm以下であり、背面板ガラス203の接触面において所定の面圧を容易に確保することができる。その結果、排気カップ100と背面板ガラス203とが口開きにくくなるため、本排気部104のシールをより安定して行うことができる。
【0066】
上述した排気カップ100では、接触面における差動排気部102の開口面積が500mm2以上であるので、当該排気カップ100を背面板ガラス203に確実に接触させる荷重を確保でき、上述した効果と同様に、背面板ガラス203の接触面において所定の面圧を容易に確保することができる。
【0067】
また、上述した排気カップ100では、差動排気部102の容積は2000mm3以上であるので、減圧層202の減圧の際、外乱により排気カップ100と背面板ガラス203とが口開き、差動排気部102と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、差動排気部102の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0068】
さらに、上述した排気カップ100では、PDP200に装着される際に、背面板ガラス203の周縁と係合するストッパ107を備えるので、PDP200における当該排気カップ100の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層202の減圧の際に、排気カップ100がずれることがないため、減圧層202の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0069】
また、上述したように、排気カップ100を背面板ガラス203に装着する際には、排気カップ100と背面板ガラス203との間にガスケットを挟んだが、当該ガスケットは必ずしも挟み込まれる必要はない。但し、排気カップ100においてはシール幅が0.5mmと狭小であるため、背面板ガラス203の表面に傷が付きやすくなる。この傷を防止する観点からは、排気カップ100と背面板ガラス203との間にガスケットを挟むのが好ましい。
【0070】
ここで、差動排気部102の接触面における開口面積は、2000mm2以上であるのがより好ましい。従来の排気カップ800における差動排気部803の開口面積は2000mm2であるが、これにより、差動排気部102が発生する吸着力の荷重を従来の排気カップ800よりも大きくすることができ、本排気部104のシールを従来の排気カップ800より安定して行うことができる。
【0071】
また、差動排気部102の容積は、5000mm3以上であるのがより好ましい。従来の排気カップ800における差動排気部803の容積は5000mm3であるが、これにより、外気の侵入圧力に対するバッファゾーンを従来の排気カップ800よりも大きくすることができ、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、従来の排気カップ800よりもコンダクタンスを大きくすることができ、より排気効率を向上することができる。
【0072】
上述したPDP200では、封止部300が背面板ガラス203の角部近傍に配設されたが、減圧層202の減圧効率向上のため、封止部300が背面板ガラス203の角部以外の周縁部において複数箇所設けられることもある。このような背面板ガラス203の角部以外の周縁部において設けられた封止部300を介して減圧層202を減圧するには、図6(a)及び(b)に示すように、排気カップ100がストッパ107を本体101の1辺にのみ有し、本排気部104が接触面における当該1辺の近傍において開口するのがより好ましい。これにより、排気カップ100は、背面板ガラス203の角部以外の周縁部において設けられた封止部300を介して減圧層202を減圧することができる。
【0073】
また、排気カップ100が装着されるガラスパネルは、上述したPDP200に限られず、減圧層202が真空にされた真空ガラスであってもよく、この他、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス、又は、冷蔵庫や保温装置等のような各種装置の扉や壁部等、種々の用途に使用されるガラスパネルであってもよい。
【0074】
また、ガラス管303に熱を与える熱源としては、フィラメント108だけでなく赤外線輻射ヒータ等を用いてもよい。
【0075】
上述した本実施の形態では、封着部204を形成する材料として低融点ガラスフリット500を使用する例を示したが、これに代えて、金属製の溶融ハンダを使用してもよい。
【0076】
前面板ガラス201,背面板ガラス203に使用される板ガラスとしては、フロートガラスに限られるものではなく、ガラスパネルの用途や目的に応じて、例えば、型板ガラス、表面処理により光拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入りガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、低反射ガラス、高透過ガラス、セラミック印刷ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラス、又は、これらの組み合わせ等、種々のガラスを適宜選択して使用することができる。
【0077】
ガラスの組成についても、ソーダ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ほう珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、各種結晶化ガラス等を使用することができ、前面板ガラス201,背面板ガラス203の厚みについても、適宜選択自由である。
【0078】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0079】
請求項2記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0080】
請求項3記載の減圧処理装置によれば、減圧室の外側に設けられ且つ接触面に開口する他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、他の減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をより安定して行うことができる。
【0081】
請求項4記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をさらに安定して行うことができる。
【0082】
請求項5記載の減圧処理装置によれば、ガラスパネルに装着される際に、板ガラスの周縁と係合する係合部を備えるので、ガラスパネルにおける当該減圧処理装置の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層の減圧の際に、減圧処理装置がずれることがないため、減圧層の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0083】
請求項6記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が500mm2以上であるので、当該減圧処理装置を板ガラスに確実に接触させる荷重を確保でき、減圧室のシールを安定して行うことができる。
【0084】
請求項7記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が2000mm2以上であるので、板ガラスの接触面において面圧を従来の減圧処理装置より大きく確保することができ、減圧室のシールを従来の減圧処理装置より安定して行うことができる。
【0085】
請求項8記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は2000mm3以上であるので、減圧室の減圧の際、外乱により他の減圧室と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、他の減圧室の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0086】
請求項9記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は5000mm3以上であるので、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、より排気効率を向上することができる。
【0087】
請求項10記載の減圧処理装置によれば、接触面において、他の減圧室は減圧室を囲む環状を呈し、減圧室の外周縁と他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であるので、板ガラスの接触面において所定の面圧を確保することができ、減圧室のシールをより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線I−Iに沿う断面図である。
【図2】排気カップ100が装着されるガラスパネルとしてのPDPの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は部分断面図である。
【図3】図3は、図2(a)における背面板ガラス203の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図3(a)の線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図2のPDP200に装着された排気カップ100を示す図であり、(a)は、排気カップ100を上方から眺めた平面図であり、(b)は図4の(a)の線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】図2のPDP200における減圧層202の減圧処理の工程図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線VI−VIに沿う断面図である。
【図7】従来のガラスパネルの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図8】従来の排気カップの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図である。
【図9】PDPとして使用されるガラスパネルの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
100,800 排気カップ
102,803 差動排気部
104,801 本排気部
107 ストッパ
108,805 フィラメント
200 PDP
203 背面板ガラス
300 封止部
303 ガラス管
700,701 板ガラス
705 排気管
706 ガラスパネル
707 O−リング
708 減圧管
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧処置装置に関し、特に、複数の板ガラスと、該板ガラスの間に形成された減圧層とを有するガラスパネルの減圧処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、真空ガラス、例えば「スペーシア」(登録商標)やプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)等に好適な基本構造を有するガラスパネルとして、図7(a)及び(b)に示すような対向する2枚の板ガラス700,701と、該板ガラス700,701の間に形成される減圧層702と、該減圧層702の周縁をシールする低融点ガラスからなる周縁シール材703と、板ガラス700を貫通する穴に一端が埋め込まれ、該一端側において低融点ガラスからなるシール材704によって板ガラス700に溶着される排気管705とを備えるガラスパネル706が知られている。このガラスパネル706における減圧層702は、真空ガラスにおいては真空とされ、PDPにおいては減圧された後、キセノン(Xe)やネオン(Ne)等の希ガスが充填される。
【0003】
そして、このガラスパネル706は、ペアリングされた板ガラス700,701の周縁部に塗布された周縁シール材703と、板ガラス700及び排気管705の接合部に塗布されたシール材704とを焼成によって溶融して板ガラス700,701を接合し且つ排気管705を板ガラス700に溶着した後、排気管705を介して減圧層702を減圧し、さらに排気管705の他端を封じ切ることによって作製される。
【0004】
減圧層702の減圧の際には、排気管705の他端にニトリルゴム(NBR)等からなるO−リング707を介して減圧管708が接続される。減圧管708は、一端において径が拡大されて形成されたゲッタ室709を有する円管であり、その他端は不図示のターボ分子ポンプ(以下「TMP」という。)に接続され、ゲッタ室709内に非蒸発型ゲッタ710を有する(図7(b))。そして、ガラスパネル706及び減圧管708を不図示の炉内において所定温度まで加熱して減圧層702に存在する水分、有機物、油脂等をガス化させると共に、非蒸発型ゲッタ710を活性化し、その後、TMPを稼働させて上記ガス及び空気を減圧層702から除去して減圧層702を減圧すると共に、活性化された非蒸発型ゲッタ710によって減圧管708を流れる上記ガスを吸着して除去するが、O−リング707は高温に耐えることができないため、非蒸発型ゲッタ710を高温で活性化することができず、減圧層702の減圧の効率低下を招くという問題があり、特に、この効率低下により、減圧層702の減圧は長時間となるため、PDPにおいては蛍光体膜の劣化等を招くという問題があった。
【0005】
そして、近年、この長時間に亘る減圧層702の減圧を避けるため、O−リングを使用しない全金属製の排気装置が減圧層702の減圧に用いられるようになった。
【0006】
この全金属製の排気装置である排気カップ800は、図8(a)に示すように、ステンレスからなる円柱であって、その中心軸上を穿孔して形成された本排気部801と、該本排気部801と連通する金属製の本排気系802と、溝状の差動排気部803と、該差動排気部803と連通する金属製の差動排気系804と、本排気部801内に配設される横置きのコイル状のフィラメント805とを備え、図8(b)に示すように、本排気部801は、板ガラス700に接触する接触面においてそのほぼ中央に設けられ、差動排気部803は、同じく上記接触面において本排気部801を囲うように排気カップ800の中心軸と同心円上に設けられる。
【0007】
そして、減圧層702の減圧の際において、排気カップ800は、フィラメント805がガラスパネル706の排気管705に対向するように、板ガラス700上に装着される。このとき、差動排気部803は不図示のロータリーポンプ(以下「RP」という。)によって減圧されるので、排気カップ800は板ガラス700に吸着する(例えば、特許文献参照。)。
【0008】
この排気カップ800では、O−リングを使用しないため、非蒸発型ゲッタを高温で活性化することができ、減圧層702の減圧における効率を向上することができる。
【0009】
【特許文献】
特表2002−530184号公報(第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
通常、PDPとして使用されるガラスパネル706では、図9に示すように、板ガラス701における表示部900に対応して板ガラス700の内面に設けられたリブ(不図示)の形成範囲901に排気管705を配設することができないため、排気管705は板ガラス700における周縁部、特に角部に設けられる。したがって、排気管705から板ガラス700の端部までの距離は非常に短いものとなる。
【0011】
しかしながら、上述した排気カップ800は、その接触面において円形を呈するため、排気カップ800を排気管705が板ガラス700の角部に設けられたガラスパネル706に装着した場合、本排気部801及び差動排気部803が板ガラス700から脱落して排気カップ800を板ガラス700に吸着させることができず、当該ガラスパネル706において、安定して減圧層702を減圧することができないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる減圧処理装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の減圧処理装置は、複数の板ガラス、該複数の板ガラスの間に設けられた減圧層、及び前記板ガラスの周縁部に配設されて前記減圧層と連通する排気孔を有するガラスパネルの前記板ガラスに接触する接触面と、該接触面に開口し且つ前記排気孔と対向する減圧室とを備える減圧処理装置において、前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0015】
請求項2記載の減圧処理装置は、請求項1記載の減圧処理装置において、前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0017】
請求項3記載の減圧処理装置は、請求項1又は2記載の減圧処理装置において、前記減圧室の外側に設けられ且つ前記接触面に開口する他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の減圧処理装置によれば、減圧室の外側に設けられ且つ接触面に開口する他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、他の減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をより安定して行うことができる。
【0019】
請求項4記載の減圧処理装置は、請求項3記載の減圧処理装置において、前記他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をさらに安定して行うことができる。
【0021】
請求項5記載の減圧処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記ガラスパネルに装着される際に、前記板ガラスの周縁と係合する係合部を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の減圧処理装置によれば、ガラスパネルに装着される際に、板ガラスの周縁と係合する係合部を備えるので、ガラスパネルにおける当該減圧処理装置の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層の減圧の際に、減圧処理装置がずれることがないため、減圧層の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0023】
請求項6記載の減圧処理装置は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記接触面における前記他の減圧室の開口面積が500mm2以上であることを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が500mm2以上であるので、当該減圧処理装置を板ガラスに確実に接触させる荷重を確保でき、減圧室のシールを安定して行うことができる。
【0025】
請求項7記載の減圧処理装置は、請求項6記載の減圧処理装置において、前記開口面積が2000mm2以上であることを特徴とする。
【0026】
請求項7記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が2000mm2以上であるので、板ガラスの接触面において面圧を従来の減圧処理装置より大きく確保することができ、減圧室のシールを従来の減圧処理装置より安定して行うことができる。
【0027】
請求項8記載の減圧処理装置は、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記他の減圧室の容積は2000mm3以上であることを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は2000mm3以上であるので、減圧室の減圧の際、外乱により他の減圧室と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、他の減圧室の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0029】
請求項9記載の減圧処理装置は、請求項8記載の減圧処理装置において、前記容積は5000mm3以上であることを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は5000mm3以上であるので、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、より排気効率を向上することができる。
【0031】
請求項10記載の減圧処理装置は、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の減圧処理装置において、前記接触面において、前記他の減圧室は前記減圧室を囲む環状を呈し、前記減圧室の外周縁と前記他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であることを特徴とする。
【0032】
請求項10記載の減圧処理装置によれば、接触面において、他の減圧室は減圧室を囲む環状を呈し、減圧室の外周縁と他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であるので、板ガラスの接触面において所定の面圧を確保することができ、減圧室のシールをより安定して行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る減圧処理装置について図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線I−Iに沿う断面図である。
【0035】
図1において、排気カップ100は、直方体状の本体101と、後述するPDP200における背面板ガラス203への接触面にほぼその全面に亘って開口する差動排気部102と、同じく本体101の角部103の近傍において接触面に開口する本排気部104と、差動排気部102と連通する管状の差動排気系105と、本排気部104と連通する管状の本排気系106と、差動排気部102が開口する角部103において本体101から下方に向けて突出して形成されたストッパ107と、本排気部104内に配設される横置きのコイル状のフィラメント108とを備える。
【0036】
上記接触面において、本排気部104は角部103より所定の距離だけ離れた位置に開口するため、本排気部104の外周は差動排気部102に囲まれる。このとき、本排気部104の外周縁と差動排気部102の内周縁との距離(以下「シール幅」という。)は2.0mm以下、例えば0.5mmであり、差動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈する。
【0037】
また、上記接触面における差動排気部102の開口面積は500mm2以上であり、差動排気部102の容積は2000mm3以上である。
【0038】
差動排気系105は不図示のRPに接続される一方、本排気系106は不図示のTMPに接続され、差動排気系105及び本排気系106は、排気カップ100がPDP200に装着された際に、RP及びTMPの作動によって減圧される。
【0039】
本排気部104内に配設されたフィラメント108は、上記接触面から眺めたときに角部103の近傍に設けられ、接触面からの高さは約5mmである。
【0040】
ここで、排気カップ100の材質はステンレスであり、特に、0〜500℃の間において背面板ガラス203の膨張係数(8.5×10−6/℃)と排気カップ100の膨張係数との差の絶対値が20×10−6/℃以下となるステンレス、例えばSUS304等が用いられる。また、本排気系106及び差動排気系105の材質は金属であり、排気カップ100と同様ステンレスであるのが好ましい。
【0041】
次に、排気カップ100が装着されるPDPについて図面を参照しながら説明する。
【0042】
図2は、排気カップ100が装着されるガラスパネルとしてのPDPの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は部分断面図である。
【0043】
図2において、PDP200は、厚さが、例えば2.8mmの前面板ガラス201と、前面板ガラス201との間に減圧層202を形成すべく前面板ガラス201から、例えば0.1mmの間隔を隔てて配設され、厚さが、例えば2.8mmの背面板ガラス203とから成り、前面板ガラス201及び背面板ガラス203は、その外周縁において低融点ガラスフリットからなる封着部204により封着される。
【0044】
前面板ガラス201の内面上には、透明電極205a及び金属電極205bとから成る表示電極205がパターン形成され、該表示電極205を覆うように誘電体ガラス層206が積層され、誘電体ガラス層206上には、酸化マグネシウム(MgO)製誘電体保護層207が積層されている。
【0045】
また、背面板ガラス203の内面上には、後述する蛍光体212〜214の発光を制御するアドレス電極208が所定のピッチでパターン形成され、該アドレス電極208を覆うように誘電体ガラス層209が積層され、該誘電体ガラス層209上には、複数のチャンネル状放電空間210を画成する複数のガラス製リブ211がサンドブラスト法やブレード成型法によってパターン成形され、各放電空間210におけるリブ211の表面には、カラー表示をすべく赤色(R)の蛍光体212、緑色(G)の蛍光体213、及び青色(B)の蛍光体214が順に連続して塗布されている。
【0046】
リブ211は、その高さが、例えば0.1mmであり、前面板ガラス201と背面板ガラス203との間隔を約0.1mmに保持する。また、放電空間210には、希ガスが封入されている。希ガスは、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)を組成とする混合ガス系が用いられており、その封入圧力は約40〜70kPaの範囲に設定される。
【0047】
そして、蛍光体212〜214は、放電空間210への放電によって発生する波長の短い紫外線により励起発光する。
【0048】
図3は、図2(a)における背面板ガラス203の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図3(a)の線III−IIIに沿う断面図である。
【0049】
図3(a)及び図3(b)において、背面板ガラス203は、減圧層202に希ガスを封入する封止部300を有する。この封止部300は、図2(b)におけるリブ211が形成されるリブ形成範囲301の外側且つ封着部204の内側に形成された内径2mmの貫通孔302と、貫通孔302に内嵌された外径2mmのガラス管303と、ガラス管303と背面板ガラス203とを接合する低融点ガラス304とからなる。このとき、貫通孔302はリブ形成範囲301の外側且つ封着部204の内側に形成されるので、封止部300は背面板ガラス203の角部近傍に配設される。また、ガラス管303は、後述する減圧層202の減圧処理においてフィラメント108から加熱されることによってその先端が溶融されて封止される。
【0050】
図4は、図2のPDP200に装着された排気カップ100を示す図であり、(a)は排気カップ100を上方から眺めた平面図であり、(b)は図4(a)の線IV−IVに沿う断面図である。
【0051】
図4において、排気カップ100は、PDP200における背面板ガラス203の表面上に不図示のガスケットを介して装着される。このとき、排気カップ100のストッパ107は、背面板ガラス203の角部における周縁に係合することによって排気カップ100の角部103と背面板ガラス203の角部とを一致させて排気カップ100の背面板ガラス203に対する位置を定める。また、本排気部104は、接触面において角部103の近傍に配設されているので、背面板ガラス203の角部に配設された封止部300を内包し、フィラメント108は、上述したように本排気部104において角部103の近傍に設けられているので、封止部300のガラス管303の先端と対峙する。
【0052】
排気カップ100がPDP200に装着されると、差動排気部102及び本排気部104の開口部は背面板ガラス203によって塞がれて、差動排気部102及び本排気部104は密閉空間となる。上述したように接触面において本排気部104の外周は差動排気部102に囲まれると共に、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿い且つ本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状も背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うので、本排気部104と背面板ガラス203の角部近傍の周縁との間において差動排気部102によって密閉空間を形成することができる。
【0053】
そして、差動排気部102は、差動排気系105を介して接続されたRPの作動により減圧されて、排気カップ100と背面板ガラス203とを吸着する吸着力を発生する。
【0054】
次に、PDP200における減圧層202の減圧処理について説明する。
【0055】
図5は、図2のPDP200における減圧層202の減圧処理の工程図である。
【0056】
図5において、まず、背面板ガラス203上にスパッタリングやスクリーン印刷によってアドレス電極208,誘電体ガラス層209,リブ211及び蛍光体212〜214を形成すると共に、その角部において封止部300を形成する一方、前面板ガラス201上にスパッタリングによって表示電極205,誘電体ガラス層206及び誘電体保護層207を形成する。そして、前面板ガラス201と背面板ガラス203とを、誘電体保護層207とリブ211とが対向するようにペアリングし、ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203の全周縁に低融点ガラスフリット500を塗布すると共に、ガラス管303の周りに低融点ガラス304を塗布する(図5(a))。
【0057】
次いで、排気カップ100を、ストッパ107が背面板ガラス203の角部の周縁に係合するように、背面板ガラス203上に装着する。
【0058】
そして、RPを作動させて差動排気部102及び背面板ガラス203によって形成された密封空間の圧力を10〜103Paまで減圧し、排気カップ100を背面板ガラス203に吸着させる。このとき、排気カップ100の角部103と背面板ガラス203の角部とが一致し、封止部300が本排気部104に内包され、フィラメント108が封止部300のガラス管303の先端と対峙するのは上述した通りである(図5(b))。
【0059】
その後、ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203を、排気カップ100が装着されたまま、不図示の炉の内部で焼成して低融点ガラスフリット500及び低融点ガラス304を溶融させた後、当該ペアリングされた前面板ガラス201及び背面板ガラス203を冷却して低融点ガラスフリット500及び低融点ガラス304を凝固させることによって前面板ガラス201及び背面板ガラス203を封着すると共に、ガラス管303を背面板ガラス203に接合する(図5(c))。これにより、前面板ガラス201及び背面板ガラス203の間に減圧層202が形成されるが、上述した処理は大気中で実行されるので、減圧層202の圧力は大気圧である。
【0060】
次いで、炉内の温度を一定時間維持することによって減圧層202に存在する水分、有機物、油脂等をガス化させると共に、TMPを稼働させて当該ガス及び空気を本排気系106及び本排気部104を介して減圧層202から除去することによって減圧層202を減圧するベーキングを行い、減圧層202の圧力が約10−1〜10−2Paを下回ると、希ガスを本排気系106及び本排気部104を介して減圧層202へ充填し、減圧層202の圧力が約40〜70kPaを上回ると、PDP200の冷却を開始すると共に、フィラメント108に通電して、これを発熱させる。これにより、フィラメント108が対向するガラス管303の先端を溶融させて減圧層202を封止する(図5(d))。
【0061】
その後、RPの作動を停止して排気カップ100を背面板ガラス203から離脱させる。
【0062】
減圧層202の減圧処理において、RPは、排気カップ100が背面板ガラス203に装着された後、常に作動し、差動排気部102及び背面板ガラス203から形成される減圧空間を減圧することによって排気カップ100を背面板ガラス203に吸着させるだけでなく、外乱により排気カップ100と背面板ガラス203とが口開いた際に、差動排気部102へ侵入した空気を排出することによって本排気部104への空気の侵入を防止する。
【0063】
本発明の実施の形態に係る排気カップ100によれば、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、差動排気部102の角部103の近傍における外周縁形状は背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うと共に、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、本体101における角部103の形状に対応して少なくとも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈し、これにより、本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状も背面板ガラス203の角部近傍の周縁形状に沿うので、本排気部104と背面板ガラス203の角部近傍の周縁との間において差動排気部102によって密閉空間を形成することができ、封止部300が背面板ガラス203の周縁部に設けられたPDP200において、減圧層202の減圧を安定して行うことができる。
【0064】
差動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍における外周縁形状は、必ずしも互いに直交する2本の直線を有する角形状を呈する必要はなく、当該動排気部102及び本排気部104の角部103の近傍部分が接触する背面板ガラス203の周縁形状に沿う形状を呈していれば、上述した効果を奏することができるが、背面板ガラス203の開口面積を有効に利用できる観点から、特に直角が好ましい。
【0065】
上述した排気カップ100では、シール幅が0.5mm以下であり、背面板ガラス203の接触面において所定の面圧を容易に確保することができる。その結果、排気カップ100と背面板ガラス203とが口開きにくくなるため、本排気部104のシールをより安定して行うことができる。
【0066】
上述した排気カップ100では、接触面における差動排気部102の開口面積が500mm2以上であるので、当該排気カップ100を背面板ガラス203に確実に接触させる荷重を確保でき、上述した効果と同様に、背面板ガラス203の接触面において所定の面圧を容易に確保することができる。
【0067】
また、上述した排気カップ100では、差動排気部102の容積は2000mm3以上であるので、減圧層202の減圧の際、外乱により排気カップ100と背面板ガラス203とが口開き、差動排気部102と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、差動排気部102の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0068】
さらに、上述した排気カップ100では、PDP200に装着される際に、背面板ガラス203の周縁と係合するストッパ107を備えるので、PDP200における当該排気カップ100の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層202の減圧の際に、排気カップ100がずれることがないため、減圧層202の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0069】
また、上述したように、排気カップ100を背面板ガラス203に装着する際には、排気カップ100と背面板ガラス203との間にガスケットを挟んだが、当該ガスケットは必ずしも挟み込まれる必要はない。但し、排気カップ100においてはシール幅が0.5mmと狭小であるため、背面板ガラス203の表面に傷が付きやすくなる。この傷を防止する観点からは、排気カップ100と背面板ガラス203との間にガスケットを挟むのが好ましい。
【0070】
ここで、差動排気部102の接触面における開口面積は、2000mm2以上であるのがより好ましい。従来の排気カップ800における差動排気部803の開口面積は2000mm2であるが、これにより、差動排気部102が発生する吸着力の荷重を従来の排気カップ800よりも大きくすることができ、本排気部104のシールを従来の排気カップ800より安定して行うことができる。
【0071】
また、差動排気部102の容積は、5000mm3以上であるのがより好ましい。従来の排気カップ800における差動排気部803の容積は5000mm3であるが、これにより、外気の侵入圧力に対するバッファゾーンを従来の排気カップ800よりも大きくすることができ、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、従来の排気カップ800よりもコンダクタンスを大きくすることができ、より排気効率を向上することができる。
【0072】
上述したPDP200では、封止部300が背面板ガラス203の角部近傍に配設されたが、減圧層202の減圧効率向上のため、封止部300が背面板ガラス203の角部以外の周縁部において複数箇所設けられることもある。このような背面板ガラス203の角部以外の周縁部において設けられた封止部300を介して減圧層202を減圧するには、図6(a)及び(b)に示すように、排気カップ100がストッパ107を本体101の1辺にのみ有し、本排気部104が接触面における当該1辺の近傍において開口するのがより好ましい。これにより、排気カップ100は、背面板ガラス203の角部以外の周縁部において設けられた封止部300を介して減圧層202を減圧することができる。
【0073】
また、排気カップ100が装着されるガラスパネルは、上述したPDP200に限られず、減圧層202が真空にされた真空ガラスであってもよく、この他、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス、又は、冷蔵庫や保温装置等のような各種装置の扉や壁部等、種々の用途に使用されるガラスパネルであってもよい。
【0074】
また、ガラス管303に熱を与える熱源としては、フィラメント108だけでなく赤外線輻射ヒータ等を用いてもよい。
【0075】
上述した本実施の形態では、封着部204を形成する材料として低融点ガラスフリット500を使用する例を示したが、これに代えて、金属製の溶融ハンダを使用してもよい。
【0076】
前面板ガラス201,背面板ガラス203に使用される板ガラスとしては、フロートガラスに限られるものではなく、ガラスパネルの用途や目的に応じて、例えば、型板ガラス、表面処理により光拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入りガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、低反射ガラス、高透過ガラス、セラミック印刷ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラス、又は、これらの組み合わせ等、種々のガラスを適宜選択して使用することができる。
【0077】
ガラスの組成についても、ソーダ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ほう珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、各種結晶化ガラス等を使用することができ、前面板ガラス201,背面板ガラス203の厚みについても、適宜選択自由である。
【0078】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、請求項1記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0079】
請求項2記載の減圧処理装置によれば、減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧を安定して行うことができる。
【0080】
請求項3記載の減圧処理装置によれば、減圧室の外側に設けられ且つ接触面に開口する他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が接触する板ガラスの周縁形状に沿うので、他の減圧室が板ガラスから脱落することなく、排気孔が板ガラスの周縁部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をより安定して行うことができる。
【0081】
請求項4記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有するので、排気孔が板ガラスの角部に設けられたガラスパネルにおいて、減圧層の減圧をさらに安定して行うことができる。
【0082】
請求項5記載の減圧処理装置によれば、ガラスパネルに装着される際に、板ガラスの周縁と係合する係合部を備えるので、ガラスパネルにおける当該減圧処理装置の位置決めを容易に行うことができると共に、減圧層の減圧の際に、減圧処理装置がずれることがないため、減圧層の減圧を確実に安定して行うことができる。
【0083】
請求項6記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が500mm2以上であるので、当該減圧処理装置を板ガラスに確実に接触させる荷重を確保でき、減圧室のシールを安定して行うことができる。
【0084】
請求項7記載の減圧処理装置によれば、接触面における他の減圧室の開口面積が2000mm2以上であるので、板ガラスの接触面において面圧を従来の減圧処理装置より大きく確保することができ、減圧室のシールを従来の減圧処理装置より安定して行うことができる。
【0085】
請求項8記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は2000mm3以上であるので、減圧室の減圧の際、外乱により他の減圧室と外気とが連通しても、外気の侵入圧力を吸収することができると共に、他の減圧室の排気におけるコンダクタンスを確保することでき、排気効率を向上することができる。
【0086】
請求項9記載の減圧処理装置によれば、他の減圧室の容積は5000mm3以上であるので、外気の侵入圧力を確実に吸収することができると共に、より排気効率を向上することができる。
【0087】
請求項10記載の減圧処理装置によれば、接触面において、他の減圧室は減圧室を囲む環状を呈し、減圧室の外周縁と他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であるので、板ガラスの接触面において所定の面圧を確保することができ、減圧室のシールをより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線I−Iに沿う断面図である。
【図2】排気カップ100が装着されるガラスパネルとしてのPDPの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は部分断面図である。
【図3】図3は、図2(a)における背面板ガラス203の構造を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図3(a)の線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図2のPDP200に装着された排気カップ100を示す図であり、(a)は、排気カップ100を上方から眺めた平面図であり、(b)は図4の(a)の線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】図2のPDP200における減圧層202の減圧処理の工程図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る減圧処理装置の概略構成を示す図であり、(a)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図であり、(b)は図1(a)の線VI−VIに沿う断面図である。
【図7】従来のガラスパネルの概略構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図8】従来の排気カップの概略構成を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はガラスパネルの接触面から眺めた平面図である。
【図9】PDPとして使用されるガラスパネルの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
100,800 排気カップ
102,803 差動排気部
104,801 本排気部
107 ストッパ
108,805 フィラメント
200 PDP
203 背面板ガラス
300 封止部
303 ガラス管
700,701 板ガラス
705 排気管
706 ガラスパネル
707 O−リング
708 減圧管
Claims (10)
- 複数の板ガラス、該複数の板ガラスの間に設けられた減圧層、及び前記板ガラスの周縁部に配設されて前記減圧層と連通する排気孔を有するガラスパネルの前記板ガラスに接触する接触面と、該接触面に開口し且つ前記排気孔と対向する減圧室とを備える減圧処理装置において、
前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が、前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする減圧処理装置。 - 前記減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする請求項1記載の減圧処理装置。
- 前記減圧室の外側に設けられ且つ前記接触面に開口する他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が前記接触する板ガラスの周縁形状に沿うことを特徴とする請求項1又は2記載の減圧処理装置。
- 前記他の減圧室の前記接触面における外周縁形状の少なくとも一部が角部を成し、該角部は少なくとも互いに直交する2本の直線を有することを特徴とする請求項3記載の減圧処理装置。
- 前記ガラスパネルに装着される際に、前記板ガラスの周縁と係合する係合部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減圧処理装置。
- 前記接触面における前記他の減圧室の開口面積が500mm2以上であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の減圧処理装置。
- 前記開口面積が2000mm2以上であることを特徴とする請求項6記載の減圧処理装置。
- 前記他の減圧室の容積は2000mm3以上であることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の減圧処理装置。
- 前記容積は5000mm3以上であることを特徴とする請求項8記載の減圧処理装置。
- 前記接触面において、前記他の減圧室は前記減圧室を囲む環状を呈し、前記減圧室の外周縁と前記他の減圧室の内周縁との距離が2.0mm以下であることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の減圧処理装置。
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-
2003
- 2003-02-17 JP JP2003038765A patent/JP2004244292A/ja not_active Withdrawn
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