JP2004244269A - 薄膜光ファイバ素線並びにコネクタ接続部 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバ素線の薄膜紫外線硬化型皮膜と光ファイバのガラス面との密着力を向上させること、また前記薄膜光ファイバ素線上に設けた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後に、前記薄膜光ファイバ素線にカッティング処理を施しても、前記薄膜の皮膜が光ファイバガラスから剥離しないこと、さらに前記の薄膜光ファイバ素線を用いて、コネクタ接続損失の小さなコネクタ接続部を得ることを目的とする。
【解決手段】光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【選択図】 図1
【解決手段】光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、密着力に優れた薄膜の皮膜を有する薄膜光ファイバ素線、並びにそれを用いた低損失のコネクタ接続部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ心線は、例えば80〜100μmの光ファイバ上に薄肉の紫外線硬化型樹脂皮膜を施した薄膜光ファイバ素線上に、通常着色層やプラスチックの2次被覆を設けて、前記薄膜光ファイバ素線を保護するように構成されている。例えば、外径80μm石英ファイバ上に45μmの薄肉の紫外線硬化樹脂皮膜を設けて薄膜光ファイバ素線とし、その上に厚肉のソフトタイプ紫外線硬化型樹脂やハードタイプ紫外線硬化型樹脂被覆等が順次設けられて、外径が250μmの光ファイバ心線として使用される。そして前記薄膜光ファイバ素線の製造は、通常コーティングされた前記紫外線硬化型樹脂の硬化処理を大気中で行っているので、酸素雰囲気に曝されながら硬化処理が行われることになり、前記紫外線硬化型樹脂皮膜は酸素阻害によって十分な硬化が行われず、前記石英光ファイバとの密着力が十分でないことがある。そして、その上に設けるソフトタイプやハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆は、前記紫外線硬化型樹脂どうしの関係から、密着力は前記光ファイバとの密着力よりも大きくなっている。このような光ファイバ心線のソフトタイプやハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆を、機械的に除去すると、前記薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜の方が剥がれてしまうことが生じていた。また前記光ファイバ心線は、コネクタ接続時には前記紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理することが行われる。その際には、前記紫外線硬化型樹脂皮膜の密着力が小さいと、この皮膜が光ファイバガラスから剥離することがあった。このような状態が生じると、光ファイバガラス端面に傷がついたり、ガラス欠けと称する割れ等が発生する。また、このような傷等が生じた光ファイバ素線を用いてコネクタ接続部を形成すると、コネクタ接続損失が増大して問題となっていた。そこで、このような問題解決に対する提案の一つとして、光ファイバのクラッド層上に密着性が良好な、フッ素系樹脂の薄層を設けた構造の光ファイバ素線に関して、特許文献1が知られているが、いまだ満足するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−155244号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明が解決しようとする課題は、光ファイバ素線の薄膜紫外線硬化型皮膜と光ファイバのガラス面との密着力を向上させること、また前記薄膜光ファイバ素線上に設けた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後に、前記薄膜光ファイバ素線にカッティング処理を施しても、前記薄膜の皮膜が光ファイバガラスから剥離しないこと、さらに前記の薄膜光ファイバ素線を用いて、コネクタ接続損失の小さなコネクタ接続部を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【0006】
また、請求項2に記載されるように、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【0007】
さらに、請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載される薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が0.1dB以下であるコネクタ接続部とすることによって、解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、前記薄膜光ファイバ素線の薄膜の皮膜の密着力を向上させることができ、このような特性の薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラスの接続やコネクタ接続のために、カッティング処理を施しても前記薄膜の皮膜は、前記光ファイバガラスから剥離することがなくなる。
【0009】
そこで前述の特性を確認するために、光ファイバ素線の薄膜皮膜の密着力と、この光ファイバ素線をカッティング処理したときの、前記薄膜の剥離の状態について調べた。具体的には、薄膜の皮膜として、光ファイバガラス上に設けられた紫外線硬化型樹脂の特性である、ヤング率並びに破断伸び率と密着力の関係について、また得られた前記薄膜光ファイバ素線を、前記皮膜ごとカッティング処理した時の前記皮膜の剥離状態について、調べたものである。すなわち、図1に示すような外径80μmの石英ファイバガラス1の上に、表1に示す種々のヤング率と破断伸び率の紫外線硬化型樹脂を用いて、それぞれの密着力になるように、薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜2として45μm厚さ設けて、薄膜光ファイバ素線3とした。さらにその上に順次、比較的厚肉のソフトタイプの紫外線硬化型樹脂被覆4、ハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆5を設けて、外径250μmの光ファイバ心線6を製造した。なお、前記紫外線硬化型樹脂皮膜の密着力は、石英ガラスの紡糸時における前記ガラス入線温度の調整や、前記紡糸時における表面性の改善、例えば酸素濃度等の調整によって行った。
【0010】
前記密着力の測定は、JIS規格C6471の銅箔の引剥がし強さを測定する方法Aに準拠して、行った。また、前記薄膜光ファイバ素線のカッティング処理による前記皮膜の剥離状態は、顕微鏡を用いて観測して、前記皮膜の剥離の発生率(%)として記載した。なお、前記のカッティング処理は、前記薄膜光ファイバ素線上に厚膜の紫外線硬化型樹脂被覆を施し、ついでこの樹脂被覆をストリッパ等を用いて除去した後の、薄膜光ファイバ素線について行ったものである。また、前記薄膜光ファイバ素線の試料数は、50本とした。
【0011】
結果は表1に記載されるように、密着力に関しては40gf/cm以上のものが、好ましいことが確認された。また用いる前記紫外線硬化型樹脂は、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸びが90%以下のものを使用するのが、好ましいことも確認された。このような条件を満たす前記薄膜光ファイバ素線を用いれば、カッティング処理による前記皮膜の剥離の発生率を、0%とすることができる。
【0012】
より詳細に説明すると、前記カッティング処理によって、薄膜光ファイバ素線の前記薄膜の皮膜に剥離が生じないもの、すなわち前記皮膜の剥離の発生率が0%の例は、実験例4、6、9、10、13、14および17であった。そして、これら実験例の前記皮膜の密着力は40gf/cm以上であり、また、前記紫外線硬化型樹脂の特性は、いずれもヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下のものであった。このように本発明の範囲であれば、前記薄膜光ファイバ素線のカッティング処理によって、前記薄膜の皮膜に剥離を生じないことが解る。
【0013】
これに対して、実験例1に見られるように、前記薄膜の皮膜の密着力が10gf/cmで、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1100MPa、破断伸び率が80%の場合には、得られた試料全てにカッティング処理による、剥離が発生するものとなっている。また、実験例2および3に見られるように、実験例1と同様の紫外線硬化型樹脂を用いて、密着力をそれぞれ20gf/cmおよび30gf/cmとしても、やはりカッティング処理による皮膜の剥離の発生が、高い率で生じていた。さらに前記皮膜の密着力が40gf/cmであっても、実験例5から明らかなように、前記紫外線硬化型樹脂のヤング率が900MPaで、破断伸び率が80%のように、本発明の範囲を外れたものを用いると、カッティング処理による前記皮膜の剥離が、40%程度発生している。また、実験例16のように、前記皮膜の密着力を70gf/cmと大きくしても、ヤング率および破断伸び率のいずれかが本発明の範囲を外れると、やはり前記皮膜の剥離が見られる。
【0014】
【表1】
【0015】
以上の実験結果から、本発明の薄膜光ファイバ素線を用いれば、請求項2に記載されるように、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることができことになる。このようにカッティング処理によって、前記皮膜が剥離することがない薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラス端面に傷等を付けることも無くなる。さらに、前記薄膜光ファイバ素線を用いた光ファイバ心線も、紫外線硬化型樹脂被覆の除去作業上の問題がなくなり、コネクタ接続作業上も好ましい。そしてまた、得られたコネクタ接続部のコネクタ接続損失も、小さなものとすることができる。
【0016】
つぎに、前記の薄膜光ファイバ素線の試料を用いて、コネクタ接続部を形成した時のコネクタ接続損失を測定した。結果は、表2に示すとおりである。具体的に述べると、前述の薄膜光ファイバ素線を用いて、カッティング処理した後、コネクタ接続のためのPC研磨加工を行い、これをコネクタ接続部として組み立て、コネクタ接続損失(dB)を、JIS規格C5961の試験法により、光パワーメーターを用いて波長1.31μmで、測定したものである。
【0017】
結果は表2に記載されるとおり、実験例21、23、26、27、30、31、および34のように、前記光ファイバ素線の皮膜の密着力が40gf/cm以上で、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1000MPa以上、並びに破断伸び率が90%以下の薄膜光ファイバ素線を使用したコネクタ接続部は、コネクタ接続損失が0.1dB以下と、実用上好ましいものとすることができる。これに対して、実験例18〜20のように、密着力が40gf/cm未満のものは、いずれもコネクタ接続損失が0.2dB以上となって、実用上問題があるものとなる。また、実験例22や23のように、前記皮膜の密着力が40gf/cm以上であっても、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1000MPa未満であったり、破断伸び率が90%を越えるような、薄膜光ファイバ素線を用いると、コネクタ接続損失が0.2dBを超えてしまうので好ましくない。さらに、実施例25、28、29、32や33のように、密着力を50gf/cm、60gf/cmや70gf/cmと高くしても、前記紫外線硬化型樹脂としてヤング率や破断伸び率が、本発明の範囲を外れる薄膜光ファイバを使用した場合には、コネクタ接続部の接続損失が0.2dBを越えるものとなって、好ましくなくなる。
【0018】
【表2】
【0019】
以上の結果から、請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載される薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が(0.1)dB以下であるコネクタ接続部とすることができる。すなわち、前記薄膜の皮膜の密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)を40gf/cm以上とし、ヤング率が1000MPa以上で破断伸び率が90%以下とした、紫外線硬化型樹脂を用いて前記薄膜光ファイバ素線を作製し、この薄膜光ファイバ素線を使用してコネクタ接続部を構成することによって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることが可能になる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したとおり、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、光ファイバ素線の薄膜の紫外線硬化型皮膜と光ファイバのガラス面との密着力を向上させることができる。また、この薄膜光ファイバ素線をカッティング処理しても、前記薄膜の皮膜は剥離することがない。具体的には、前記薄膜と石英ガラス界面との剥離の発生率を、0%とすることができる。さらに、光ファイバ素線薄膜の密着力の調整も、石英ガラスの紡糸時における入線温度の調整や前記紡糸時における表面性の改善(酸素濃度等の調整)によって行えばよいので、実用的なものといえる。
【0021】
また、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることが可能となる。このようにカッティング処理によって、前記皮膜が剥離することがない薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラス端面に傷等を付けることも無くなる。さらに、前記薄膜光ファイバ素線を用いた光ファイバ心線も、紫外線硬化型樹脂被覆の除去作業上の問題がなくなり、コネクタ接続作業上も好ましい。そしてまた、得られたコネクタ接続部のコネクタ接続損失も、小さなものとすることができる。
【0022】
さらに請求項1または2に記載される、薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が0.1dB以下であるコネクタ接続部とすることにって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることが可能となる。すなわち、薄膜の皮膜の密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が40gf/cm以上であって、ヤング率が1000MPa以上、破断伸び率が90%以下とした前記紫外線硬化方樹脂を用いた、前記薄膜光ファイバ素線を用いて、コネクタ接続部を構成することによって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることができることになる。このようなコネクタ接続部は、実用的なものである。さらに、前記光ファイバ素線を用いることによって、その端面部の処理をPC研磨(フィジカルコンタクト)、APC研磨(アドバンストフィジカルコンタクト)やフラット研磨等の研磨加工を施しても、前記ガラス端面に傷等の発生が殆どない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、光ファイバ心線の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバガラス
2 薄膜の皮膜
3 薄膜光ファイバ素線
4 紫外線硬化型樹脂被覆
5 紫外線硬化型樹脂被覆
6 光ファイバ心線
【発明の属する技術分野】
本発明は、密着力に優れた薄膜の皮膜を有する薄膜光ファイバ素線、並びにそれを用いた低損失のコネクタ接続部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバ心線は、例えば80〜100μmの光ファイバ上に薄肉の紫外線硬化型樹脂皮膜を施した薄膜光ファイバ素線上に、通常着色層やプラスチックの2次被覆を設けて、前記薄膜光ファイバ素線を保護するように構成されている。例えば、外径80μm石英ファイバ上に45μmの薄肉の紫外線硬化樹脂皮膜を設けて薄膜光ファイバ素線とし、その上に厚肉のソフトタイプ紫外線硬化型樹脂やハードタイプ紫外線硬化型樹脂被覆等が順次設けられて、外径が250μmの光ファイバ心線として使用される。そして前記薄膜光ファイバ素線の製造は、通常コーティングされた前記紫外線硬化型樹脂の硬化処理を大気中で行っているので、酸素雰囲気に曝されながら硬化処理が行われることになり、前記紫外線硬化型樹脂皮膜は酸素阻害によって十分な硬化が行われず、前記石英光ファイバとの密着力が十分でないことがある。そして、その上に設けるソフトタイプやハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆は、前記紫外線硬化型樹脂どうしの関係から、密着力は前記光ファイバとの密着力よりも大きくなっている。このような光ファイバ心線のソフトタイプやハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆を、機械的に除去すると、前記薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜の方が剥がれてしまうことが生じていた。また前記光ファイバ心線は、コネクタ接続時には前記紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理することが行われる。その際には、前記紫外線硬化型樹脂皮膜の密着力が小さいと、この皮膜が光ファイバガラスから剥離することがあった。このような状態が生じると、光ファイバガラス端面に傷がついたり、ガラス欠けと称する割れ等が発生する。また、このような傷等が生じた光ファイバ素線を用いてコネクタ接続部を形成すると、コネクタ接続損失が増大して問題となっていた。そこで、このような問題解決に対する提案の一つとして、光ファイバのクラッド層上に密着性が良好な、フッ素系樹脂の薄層を設けた構造の光ファイバ素線に関して、特許文献1が知られているが、いまだ満足するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−155244号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明が解決しようとする課題は、光ファイバ素線の薄膜紫外線硬化型皮膜と光ファイバのガラス面との密着力を向上させること、また前記薄膜光ファイバ素線上に設けた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後に、前記薄膜光ファイバ素線にカッティング処理を施しても、前記薄膜の皮膜が光ファイバガラスから剥離しないこと、さらに前記の薄膜光ファイバ素線を用いて、コネクタ接続損失の小さなコネクタ接続部を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【0006】
また、請求項2に記載されるように、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることによって、解決される。
【0007】
さらに、請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載される薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が0.1dB以下であるコネクタ接続部とすることによって、解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、前記薄膜光ファイバ素線の薄膜の皮膜の密着力を向上させることができ、このような特性の薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラスの接続やコネクタ接続のために、カッティング処理を施しても前記薄膜の皮膜は、前記光ファイバガラスから剥離することがなくなる。
【0009】
そこで前述の特性を確認するために、光ファイバ素線の薄膜皮膜の密着力と、この光ファイバ素線をカッティング処理したときの、前記薄膜の剥離の状態について調べた。具体的には、薄膜の皮膜として、光ファイバガラス上に設けられた紫外線硬化型樹脂の特性である、ヤング率並びに破断伸び率と密着力の関係について、また得られた前記薄膜光ファイバ素線を、前記皮膜ごとカッティング処理した時の前記皮膜の剥離状態について、調べたものである。すなわち、図1に示すような外径80μmの石英ファイバガラス1の上に、表1に示す種々のヤング率と破断伸び率の紫外線硬化型樹脂を用いて、それぞれの密着力になるように、薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜2として45μm厚さ設けて、薄膜光ファイバ素線3とした。さらにその上に順次、比較的厚肉のソフトタイプの紫外線硬化型樹脂被覆4、ハードタイプの紫外線硬化型樹脂被覆5を設けて、外径250μmの光ファイバ心線6を製造した。なお、前記紫外線硬化型樹脂皮膜の密着力は、石英ガラスの紡糸時における前記ガラス入線温度の調整や、前記紡糸時における表面性の改善、例えば酸素濃度等の調整によって行った。
【0010】
前記密着力の測定は、JIS規格C6471の銅箔の引剥がし強さを測定する方法Aに準拠して、行った。また、前記薄膜光ファイバ素線のカッティング処理による前記皮膜の剥離状態は、顕微鏡を用いて観測して、前記皮膜の剥離の発生率(%)として記載した。なお、前記のカッティング処理は、前記薄膜光ファイバ素線上に厚膜の紫外線硬化型樹脂被覆を施し、ついでこの樹脂被覆をストリッパ等を用いて除去した後の、薄膜光ファイバ素線について行ったものである。また、前記薄膜光ファイバ素線の試料数は、50本とした。
【0011】
結果は表1に記載されるように、密着力に関しては40gf/cm以上のものが、好ましいことが確認された。また用いる前記紫外線硬化型樹脂は、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸びが90%以下のものを使用するのが、好ましいことも確認された。このような条件を満たす前記薄膜光ファイバ素線を用いれば、カッティング処理による前記皮膜の剥離の発生率を、0%とすることができる。
【0012】
より詳細に説明すると、前記カッティング処理によって、薄膜光ファイバ素線の前記薄膜の皮膜に剥離が生じないもの、すなわち前記皮膜の剥離の発生率が0%の例は、実験例4、6、9、10、13、14および17であった。そして、これら実験例の前記皮膜の密着力は40gf/cm以上であり、また、前記紫外線硬化型樹脂の特性は、いずれもヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下のものであった。このように本発明の範囲であれば、前記薄膜光ファイバ素線のカッティング処理によって、前記薄膜の皮膜に剥離を生じないことが解る。
【0013】
これに対して、実験例1に見られるように、前記薄膜の皮膜の密着力が10gf/cmで、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1100MPa、破断伸び率が80%の場合には、得られた試料全てにカッティング処理による、剥離が発生するものとなっている。また、実験例2および3に見られるように、実験例1と同様の紫外線硬化型樹脂を用いて、密着力をそれぞれ20gf/cmおよび30gf/cmとしても、やはりカッティング処理による皮膜の剥離の発生が、高い率で生じていた。さらに前記皮膜の密着力が40gf/cmであっても、実験例5から明らかなように、前記紫外線硬化型樹脂のヤング率が900MPaで、破断伸び率が80%のように、本発明の範囲を外れたものを用いると、カッティング処理による前記皮膜の剥離が、40%程度発生している。また、実験例16のように、前記皮膜の密着力を70gf/cmと大きくしても、ヤング率および破断伸び率のいずれかが本発明の範囲を外れると、やはり前記皮膜の剥離が見られる。
【0014】
【表1】
【0015】
以上の実験結果から、本発明の薄膜光ファイバ素線を用いれば、請求項2に記載されるように、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることができことになる。このようにカッティング処理によって、前記皮膜が剥離することがない薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラス端面に傷等を付けることも無くなる。さらに、前記薄膜光ファイバ素線を用いた光ファイバ心線も、紫外線硬化型樹脂被覆の除去作業上の問題がなくなり、コネクタ接続作業上も好ましい。そしてまた、得られたコネクタ接続部のコネクタ接続損失も、小さなものとすることができる。
【0016】
つぎに、前記の薄膜光ファイバ素線の試料を用いて、コネクタ接続部を形成した時のコネクタ接続損失を測定した。結果は、表2に示すとおりである。具体的に述べると、前述の薄膜光ファイバ素線を用いて、カッティング処理した後、コネクタ接続のためのPC研磨加工を行い、これをコネクタ接続部として組み立て、コネクタ接続損失(dB)を、JIS規格C5961の試験法により、光パワーメーターを用いて波長1.31μmで、測定したものである。
【0017】
結果は表2に記載されるとおり、実験例21、23、26、27、30、31、および34のように、前記光ファイバ素線の皮膜の密着力が40gf/cm以上で、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1000MPa以上、並びに破断伸び率が90%以下の薄膜光ファイバ素線を使用したコネクタ接続部は、コネクタ接続損失が0.1dB以下と、実用上好ましいものとすることができる。これに対して、実験例18〜20のように、密着力が40gf/cm未満のものは、いずれもコネクタ接続損失が0.2dB以上となって、実用上問題があるものとなる。また、実験例22や23のように、前記皮膜の密着力が40gf/cm以上であっても、紫外線硬化型樹脂のヤング率が1000MPa未満であったり、破断伸び率が90%を越えるような、薄膜光ファイバ素線を用いると、コネクタ接続損失が0.2dBを超えてしまうので好ましくない。さらに、実施例25、28、29、32や33のように、密着力を50gf/cm、60gf/cmや70gf/cmと高くしても、前記紫外線硬化型樹脂としてヤング率や破断伸び率が、本発明の範囲を外れる薄膜光ファイバを使用した場合には、コネクタ接続部の接続損失が0.2dBを越えるものとなって、好ましくなくなる。
【0018】
【表2】
【0019】
以上の結果から、請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載される薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が(0.1)dB以下であるコネクタ接続部とすることができる。すなわち、前記薄膜の皮膜の密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)を40gf/cm以上とし、ヤング率が1000MPa以上で破断伸び率が90%以下とした、紫外線硬化型樹脂を用いて前記薄膜光ファイバ素線を作製し、この薄膜光ファイバ素線を使用してコネクタ接続部を構成することによって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることが可能になる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したとおり、光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上である薄膜光ファイバ素線とすることによって、光ファイバ素線の薄膜の紫外線硬化型皮膜と光ファイバのガラス面との密着力を向上させることができる。また、この薄膜光ファイバ素線をカッティング処理しても、前記薄膜の皮膜は剥離することがない。具体的には、前記薄膜と石英ガラス界面との剥離の発生率を、0%とすることができる。さらに、光ファイバ素線薄膜の密着力の調整も、石英ガラスの紡糸時における入線温度の調整や前記紡糸時における表面性の改善(酸素濃度等の調整)によって行えばよいので、実用的なものといえる。
【0021】
また、前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しない薄膜光ファイバ素線とすることが可能となる。このようにカッティング処理によって、前記皮膜が剥離することがない薄膜光ファイバ素線は、光ファイバガラス端面に傷等を付けることも無くなる。さらに、前記薄膜光ファイバ素線を用いた光ファイバ心線も、紫外線硬化型樹脂被覆の除去作業上の問題がなくなり、コネクタ接続作業上も好ましい。そしてまた、得られたコネクタ接続部のコネクタ接続損失も、小さなものとすることができる。
【0022】
さらに請求項1または2に記載される、薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が0.1dB以下であるコネクタ接続部とすることにって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることが可能となる。すなわち、薄膜の皮膜の密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が40gf/cm以上であって、ヤング率が1000MPa以上、破断伸び率が90%以下とした前記紫外線硬化方樹脂を用いた、前記薄膜光ファイバ素線を用いて、コネクタ接続部を構成することによって、コネクタ接続部の接続損失を0.1dB以下とすることができることになる。このようなコネクタ接続部は、実用的なものである。さらに、前記光ファイバ素線を用いることによって、その端面部の処理をPC研磨(フィジカルコンタクト)、APC研磨(アドバンストフィジカルコンタクト)やフラット研磨等の研磨加工を施しても、前記ガラス端面に傷等の発生が殆どない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、光ファイバ心線の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバガラス
2 薄膜の皮膜
3 薄膜光ファイバ素線
4 紫外線硬化型樹脂被覆
5 紫外線硬化型樹脂被覆
6 光ファイバ心線
Claims (3)
- 光ファイバ上に設けられた、ヤング率が1000MPa以上で、破断伸び率が90%以下の紫外線硬化型樹脂からなる薄膜の紫外線硬化型樹脂皮膜であって、その密着力(JIS規格C6471の銅箔の引剥がし試験方法Aに準拠)が、40gf/cm以上であることを特徴とする、薄膜光ファイバ素線。
- 前記薄膜光ファイバ素線上に設けられた紫外線硬化型樹脂被覆を除去した後、前記薄膜光ファイバ素線をカッティング処理した時に、前記紫外線硬化型樹脂皮膜が剥離しないことを特徴とする、薄膜光ファイバ素線。
- 請求項1または2に記載される薄膜光ファイバ素線を用いたコネクタ接続部であって、コネクタ接続損失が0.1dB以下であることを特徴とする、コネクタ接続部。
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---|---|---|---|
JP2003036570A JP2004244269A (ja) | 2003-02-14 | 2003-02-14 | 薄膜光ファイバ素線並びにコネクタ接続部 |
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JP2015131733A (ja) * | 2014-01-09 | 2015-07-23 | 住友電気工業株式会社 | 光ファイバおよび光ケーブル |
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2003
- 2003-02-14 JP JP2003036570A patent/JP2004244269A/ja active Pending
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