JP2004243623A - インクジェット記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適で、発色性、耐擦性に優れ、ブリードがなく、高画質で長期保存が可能な画像を形成することができ、且つ、色調、光沢、手触り感がアート紙、コート紙などの一般の塗工印刷用紙に類似し、商業用リーフレットやパンフレットの作成用、出版・広告関係などの各種印刷業務用としても使用可能なインクジェット記録媒体を提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けてなる記録媒体において、上記塗工層中の全顔料の40重量%以上をサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムとする。
【選択図】 なし
【解決手段】基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けてなる記録媒体において、上記塗工層中の全顔料の40重量%以上をサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムとする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録媒体に関し、詳しくは、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適に使用することができ、且つ、色調、光沢、手触り感が一般の塗工印刷用紙に類似したインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方式は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)のノズルからインクの液滴を吐出させ、紙等の記録媒体にインクを付着させて画像を記録する印刷方式である。インクジェット記録用のインクとしては、染料系あるいは顔料系の色材を水性媒体中に溶解又は分散させた水性インクが一般的であり、染料インクと顔料インクに大別される。これまで、色再現性等に優れる染料インクが多用されてきたが、インクジェット記録技術のデジタル写真サービスや商業印刷等への用途拡大により、記録画像の長期保存性が重要視されるようになってきており、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが使用されるようになってきている。
【0003】
また、インクジェット記録用の記録媒体としてはPPC用紙に代表される非塗工紙を使用することもできるが、非塗工紙はインク吸収量、インク吸収速度が不十分なため、カラーインクジェット記録のように大量のインクを使用する印刷には対応できず、非塗工紙に対してカラーインクジェット記録を行えば、異色の境界部分で色が滲んだり不均一に混ざり合ういわゆるブリードが発生するおそれがある。また、例えば特許文献1〜5には、炭酸カルシウム、サチンホワイト、カオリン、プラスチックピグメントなどの各種顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を有する塗工印刷用紙、いわゆるアート紙やコート紙が開示されているが、このような塗工印刷用紙は、基本的に油性インクを使用するオフセット印刷用の記録媒体であり、これらをカラーインクジェット記録に用いてもブリードの発生は避けられない。
【0004】
そこで、インク吸収性が良好で、画像濃度が高くブリードのない画像が得られるインクジェット記録用の記録媒体(インクジェット記録媒体)が数多く提案されている。その代表的なものとしては、特許文献6に開示されているような、基材上にアルミナ水和物などの無機粒子を主成分とする多孔質層(インク受容層)を有する記録媒体が挙げられる。また、特許文献7には、顔料としてサチンホワイト、炭酸カルシウム及びプラスチックピグメントなどの1種以上を含み、ピグメントのバインダーとしてカチオン化プルランを含む被覆層を有するインクジェット記録用紙が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献6及び7に開示されているような従来のインクジェット記録媒体の多くは、基本的に、インクジェット記録用インクとして現在主流となっている染料インクが使用されることを想定して設計されており、顔料インクを用いるインクジェット記録に対しては有効なものではなかった。染料インクによる画像形成は、染料を記録媒体内部に侵入させることにより記録媒体自体を染色して画像を形成するもので、染料が記録媒体の表面に留まらないのに対し、顔料インクによる画像形成は、染料よりはるかに大きな顔料粒子を記録媒体の表面に留め、該表面上にある顔料粒子自体の発色により画像を形成するものであるため、顔料インクによる画像は、染料インクによる画像に比して、入射光の乱反射による色見の相違や発色性の低下が起こりやすく、また顔料粒子が剥がれ落ちやすく耐擦性に劣る。このように、染料インクと顔料インクとは画像形成の原理が異なり、記録画像の発色性や耐擦性などに難がある顔料インクを用いて、記録用インクとして染料インクが使用されることを前提に設計された従来の記録媒体に対してインクジェット記録を行っても、画質(発色性、ブリード防止など)及び保存性(耐擦性など)の点でバランスのとれた記録画像を形成することはできない。
【0006】
また、従来のインクジェット記録媒体は、商業印刷分野で主流のグラビア印刷方式やオフセット印刷方式等とは全く異なる独特の印刷方式に特化させた記録媒体であるため、これらの印刷方式に適合した特性を持つ一般の塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)とは、色調、光沢、手触り感が全く異なっており、その上、他の印刷用紙に比して高価であるところ、近年のインクジェット記録技術を利用した新しいビジネスモデルの開発に伴い、アート紙やコート紙に類似した外観、質感を有し、価格的にも手頃なインクジェット記録媒体の開発が望まれている。例えば、商業印刷分野では、輪転機を稼働させて印刷物を刷る前に、インクジェットプリンタを用いて印刷物の仕上がりを事前に確認する作業(色校正)を行うようになってきており、この色校正用のインクジェット記録媒体には、本印刷用紙(アート紙、コート紙)の外観、質感を忠実に再現することが求められる。また、インクジェット記録方式の用途は依然として家庭用、個人用がメインとなっており、今後これを業務用にも拡大していくためには、従来のインクジェット記録媒体の特異性を解消し、安価で、アート紙、コート紙ライクなインクジェット記録媒体の開発が不可欠である。このようなインクジェット記録媒体にインクジェット画像が出力できるようになることで、商業用リーフレットやパンフレットの作成の他、出版関係、広告関係などの各種印刷業務などにもインクジェット記録方式を展開させていくことが可能となる。
【0007】
従って、本発明の目的は、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適で、発色性、耐擦性に優れ、ブリードがなく、高画質で長期保存が可能な画像を形成することができ、且つ、色調、光沢、手触り感がアート紙、コート紙などの一般の塗工印刷用紙に類似し、商業用リーフレットやパンフレットの作成用、出版・広告関係などの各種印刷業務用としても使用可能なインクジェット記録媒体を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−256295号公報
【特許文献2】
特開平7−238495号公報
【特許文献3】
特開平8−92894号公報
【特許文献4】
特開平9−67794号公報
【特許文献5】
特開平6−158591号公報
【特許文献6】
特開平2−276670号公報
【特許文献7】
特開平6−328836号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水性顔料インクによるインクジェット記録に好適で、且つアート紙、コート紙ライクなインクジェット記録媒体について種々検討した結果、サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムを主要な顔料として含有する塗工層が顔料系色材の定着性等に優れること、及びこのような塗工層を有する記録媒体が色調、光沢、手触り感の点でアート紙やコート紙などに類似することを知見し、この知見に基づいて、良好な顔料インク画像を形成し得る本発明をなすに到った。サチンホワイトは古くから紙塗工原料に使用されている顔料で、アート紙や塗工白板紙などの製造分野において白色度、光沢、耐水性などの改良を目的として全顔料の10〜20重量%程度の範囲で使用されているが、このサチンホワイトを全顔料の40重量%以上含有させた塗工層が、水性顔料インクによる印刷に有効であるとの知見は知られていない。また、硫酸カルシウムは、いわゆる石こうと呼ばれるもので、食品添加物、樹脂用充填剤、微量水分除去剤、土木建築用添加剤などとしては一般的であるが、紙塗工原料としては一般的ではなく、硫酸カルシウムを高配合させた塗工層が、水性顔料インクによる印刷に有効であるとの知見は知られていない。
【0010】
即ち、本発明は、基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けてなるインクジェット記録媒体において、上記塗工層中の全顔料の40重量%以上がサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムであることを特徴とするインクジェット記録媒体を提供するものである。
【0011】
サチンホワイトや硫酸カルシウムを塗工層に多く配合すると、嵩高でポーラスな塗工層となり、オフセット印刷に必要な塗工層強度を確保できなくなる。このため、通常のアート紙やコート紙においては20重量%程度がサチンホワイトの含有量の上限となるが、ノンインクパクトプリント方式であるインクジェット記録方式においては、塗工層強度はさほど重要な要素ではなく、むしろ、塗工層がポーラスであるとインク吸収性が良好になり、顔料系色材の定着性が向上する。従って、サチンホワイトや硫酸カルシウムを塗工層に高配合させた本発明のインクジェット記録媒体によれば、良好な顔料インク画像が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
【0013】
本発明のインクジェット記録媒体は、基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けた、いわゆる塗工紙である。
【0014】
本発明に係る基材としては、セルロースパルプを主成分とする紙が好ましく用いられる。このような紙は、晒クラフトパルプ(針葉樹及び広葉樹)、砕木パルプ、脱墨古紙パルプ等の各種のパルプを適宜混合して公知の抄紙機において湿式で抄造される紙を用いることができる。また、この紙中にはタルク、炭酸カルシウム等の填料、サイズ剤、歩留向上剤、紙力増強剤、染料、硫酸バンド並びにピッチコントロール剤等の通常紙を抄造する際に用いられる各種の助剤薬品を含有させても良く、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙等いずれの抄紙方法で製造されたものでも良い。更に、紙の最終乾燥の前でサイズプレス、ゲートロールコーター等の各種のコーターにより澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤等を塗布したものであっても良い。
【0015】
一方、本発明に係る塗工層は、該塗工層中の全顔料の40重量%以上、好ましくは50重量%以上がサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムである。サチンホワイト及び硫酸カルシウムの両方を使用する場合は、塗工層中における両者の合計量の全顔料に対する割合がこの範囲にあればよく、両者の混合比は特に限定されない。サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムの含有量が全顔料の40重量%未満では塗工層が緻密となって、本発明の目的であるインクジェット顔料インク画像の改善を達成することができない。一方、サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムの含有量が多すぎると、塗膜強度が著しく低下し、プリンタ内部での用紙搬送時に粉落ちが発生するなどのおそれがあるので、含有量の上限は全顔料の90重量%程度とすることが好ましい。尚、サチンホワイト、硫酸カルシウムには多量の結晶水が含有されていることを考慮し、本明細書におけるサチンホワイト及び硫酸カルシウムの含有量は、サチンホワイト又は硫酸カルシウムを105℃で24時間放置した後に測定した絶乾重量を基準としている。
【0016】
本発明に使用するサチンホワイトとしては、紙塗工原料として通常用いられるものを使用することができる。サチンホワイトは、微細な針状結晶で、工業的には硫酸アルミニウムを石灰泥あるいは消石灰溶液中に攪拌しながら添加することで製造され、化学的にはスルホアルミン酸カルシウムであるが、分子構造は製造条件によって様々で、性質も種々変化する。本発明に好適に使用できるサチンホワイトとしては、白石工業(株)製のSW−BLシリーズが挙げられる。また、塗工層に適度な空隙を持たせて、塗膜強度とインク吸収性とのバランスを図る観点から、サチンホワイトは、針状結晶の長辺の長さが0.3〜3μm、短辺の長さが0.05〜0.3μmの範囲にあるものが好ましい。
【0017】
また、本発明に使用する硫酸カルシウムとしては、塗工層として使用できるものであればよく、二水塩(CaSO4・2H2O)、半水塩(CaSO4・1/2H2O)、無水塩(CaSO4)などが挙げられる。二水塩は普通に石こうと呼ばれ、半水塩は焼石こう、無水塩は無水石こう、硬石こうなどと呼ばれる。
【0018】
サチンホワイト、硫酸カルシウム以外の顔料としては、公知の塗工紙用原料を用いることができ、例えば、カオリン、炭酸カルシウム、白土、クレー、酸化亜鉛、二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、プラスチックピグメント等が挙げられ、これらの1種以上を上記塗工層に含有させることができる。
【0019】
特に、必要な塗膜強度を確保し且つ良好な画像を出力し得るようにすると共に、アート紙、コート紙ライクな記録媒体とする観点から、上記塗工層におけるサチンホワイト、硫酸カルシウム以外の顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム及びプラスチックピグメントを併用することが好ましい。この場合、これら3種の顔料の含有量は、塗工層中の全顔料に対し、それぞれ次のような範囲に調整することが好ましい。カオリン;5〜30重量%。炭酸カルシウム;5〜30重量%。プラスチックピグメント;3〜20重量%。
【0020】
上記のカオリン及び炭酸カルシウムとしては、それぞれ、紙塗工原料として通常用いられているものを使用することができる。炭酸カルシウムは重質でも軽質でもよく、結晶構造についてもアラゴナイト結晶構造、カルサイト結晶構造など特に限定されない。
【0021】
また、上記のプラスチックピグメントは、高分子化合物からなる微粒子であって、ポリスチレン系プラスチックピグメント、スチレン−ブタジエン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン−アクリル系プラスチックピグメント等が挙げられ、これらを単独または2種類以上混合して使用できる。これらは一般に市販品として入手できるものである。球状、扁平状、中空状、微粒子集合体、バインダーピグメント等の各種の形状、性質のプラスチックピグメントが使用できる。
【0022】
また、上記顔料と共に上記塗工層中に含有されるバインダー(接着剤)としては、特に限定されるものではなく、通常の塗工紙製造分野で使用されるバインダー、例えば各種の澱粉類、カゼイン、大豆蛋白やゼラチン等の蛋白質類、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース変性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)やメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MBR)やアクリル系樹脂などのラテックス類、ポリビニールアルコール等の合成高分子類を適宜使用することができる。なかでも、SBRは比較的低コストながら、塗膜強度及び画質の点で有効であるため、本発明において主バインダー(インク受容層中の全バインダーの50重量%以上を占めるバインダーを意味する)として好ましく使用できる。
【0023】
上記SBRはブタジエン及びスチレンを主モノマーとする共重合体であり、これらのモノマーに加えてメタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、メタアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有モノマーを共重合させたものも本発明に使用することができる。SBRをインク受容層成分として実際に使用する場合は、SBR粒子を分散質とするエマルジョンを使用することができる。このエマルジョン中のSBR粒子の平均粒子径は80〜250nmの範囲にあることが、塗工性の良好な塗工液とする点で好ましい。
【0024】
上記バインダーの含有量は、プリンタ内部での用紙搬送に必要な塗膜強度を確保する観点から、上記塗工層中の全顔料に対して5〜40重量%の範囲で調整されることが好ましい。含有量が全顔料に対して5重量%未満では塗工層の強度不足を招き、40重量%超では塗工適性及びインク吸収性の低下を招き、製造コスト的にも好ましくない。
【0025】
本発明に係る塗工層には、必要に応じ、上記各成分以外の各種の助剤、例えば、分散剤、塗膜強化剤、染料定着剤、防腐剤、防黴剤、ダスティング防止剤、保水剤、流動変性剤、硬化剤等を含有させることができる。
【0026】
なかでも、分散剤はサチンホワイト、硫酸カルシウムの分散性を高め、顔料インクを用いた印刷に対してより有効な塗工層を形成させる観点から、上記塗工層中に含有させることが好ましい。分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ソーダ、スルホン酸変性ポリビニルアルコールが挙げられる。分散剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して0.1〜4重量%の範囲で調整されることが好ましい。含有量が全顔料に対して0.1重量%未満では分散効果に乏しく、4重量%超では画質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
また、本発明に使用可能な塗膜強化剤としては、炭酸ジルコニウムアンモニウム、尿素ホルマリン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂などが挙げられる。塗膜強化剤を塗工層に添加することで、塗工層の乾燥面強度(ドライラブ)及び湿潤面強度(ウエットラブ)を向上させることができる。塗膜強化剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して1〜10重量%の範囲で調整することが好ましい。含有量が全顔料に対して1重量%未満では塗工層の強度向上の効果に乏しく、10重量%超ではインク吸収性の低下を招き、塗工層自体が硬く、もろくなる。
【0028】
また、本発明に使用可能な染料定着剤としては、カチオン性有機物、多価金属イオン及びカチオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性有機物としては、例えば、1級〜3級アミン化合物、1級〜3級アミン塩、4級アンモニウム塩等の低分子化合物や、1級〜3級アミノ基、1級〜3級アミン塩基若しくは4級アンモニウム塩基を有するオリゴマー又はこれらの基を有するポリマー等が挙げられ、具体的には、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドポリマー、エピハロヒドリン−2級アミンコポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミドコポリマー、ジアリルメチルアンモニウム塩ポリマー、ジアリルアミン塩酸塩−二酸化硫黄コポリマー、ジメチルメチルアミン塩酸塩コポリマー、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン4級アンモニウム塩化合物、(メタ)アクリルアミドアルキルアンモニウム塩ポリマー、4級アンモニウム塩基を含むアイオネン等が挙げられる。多価金属イオンとしては、Al3+、Ca2+、Mg2+等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。染料定着剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して0.1〜10重量%の範囲で調整することが好ましい。含有量が全顔料に対して0.1重量%未満では記録画像の耐水性、発色性向上の効果に乏しく、10重量%超では塗工液の粘度の増大、インク吸収性不良、画質の低下を招くおそれがある。
【0029】
本発明に係る塗工層の塗工量は、画質、インク吸収性の観点から、乾燥重量で好ましくは7〜50g/m2、更に好ましくは15〜35g/m2である。塗工量が7g/m2未満では所望の効果が充分に得られず、上記基材を充分にカバーすることができない。一方、塗工量が50g/m2超では塗工不良や塗工層のひび割れを生じるおそれがある。
【0030】
本発明の記録媒体は公知の塗工紙と同様に製造することができる。上記の特定顔料及びバインダーなどを含有させた塗工液の塗工方法は特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、フローティングナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター、サイズプレス装置等の公知の塗工装置を用いて常法通り行うことができる。塗工後、熱風あるいは赤外線などにより乾燥されることにより、上記基材上に上記塗工層が形成される。
【0031】
光沢感や表面強度をより高めたい場合などには、上記塗工層に対してカレンダー処理を施すことができる。カレンダー処理とは、スーパーカレンダー、グロスカレンダー等の公知のカレンダー装置を用い、加圧・加熱したロール間に塗工紙等を通過させてその表面を平滑化する処理方法である。また、塗工面を金属若しくはフィルム等の鏡面に写し取るいわゆるキャスト法により、より高い光沢感を有する塗工面を得ることもできる。
【0032】
また、良好なインク吸収性を確保する観点から、上記塗工層は、下記(測定方法)により求められる空隙率が9.5%以上であることが好ましい。
【0033】
(測定方法)
測定対象となる塗工層を、坪量47.5g/m2のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥重量が30g/m2となるように塗工し、この塗工層のJIS P8140に基づくコッブ法による吸水度を測定する。具体的には、130mm四方の試料(PETフィルム上に塗工層を設けたもの)を用意し、これをコッブ法で使用する円形クランプで挟んで50mlの蒸留水を注ぎ、300秒経過後にクランプ内の蒸留水を捨ててこのときの試料の坪量を求め、この坪量と、吸水前の試料の坪量(47.5+30=77.5g/m2)との差を求める。このようにして求めた「JIS P8140に基づくコッブ法による吸水度」を下記(式1)に代入することにより、上記空隙率を求めることができる。
【0034】
【数2】
【0035】
本発明のインクジェット記録媒体は、前述したように、顔料系色材を含有させたインク(顔料インク)を用いるインクジェット記録に最適であり、高度なインク吸収能が求められるカラーインクジェット記録に使用されても画質及び保存性の良好な画像を提供することができる。顔料系色材としては、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0036】
一般に、インクジェット記録用の顔料インクは、水、各種有機溶剤及び界面活性剤等からなる水性媒体中に上記顔料系色材を含有させた水性顔料インクである。インク中の顔料系色材の含有量はインクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、インク全重量に対して0.5〜30重量%程度である。カラーインクジェット記録を行う場合は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラック(K)その他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0037】
また、本発明のインクジェット記録媒体は、インクジェット記録方式以外の記録方式、例えば、枚葉オフセット印刷方式、輪転オフセット印刷方式などにも使用できる。オフセット印刷方式は、顔料系色材を含有させたインク(油性顔料インク)を使用するため、本発明のインクジェット記録媒体で充分に対応できる。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。尚、本実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量基準である。
【0039】
〔塗工液の調製〕
下記〔表1〕〜〔表7〕に示す塗工液1〜7をそれぞれ調製した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
尚、上記塗工液1及び2において、それぞれ、分散剤を添加しない以外は塗工液1及び2と同一の組成の塗工液を調製しようとしたところ、顔料ペーストの分散不良で、塗工液を調製することができなかった。このことから、サチンホワイト又は硫酸カルシウムを配合する塗工液の調製においては分散剤は必須であると言える。
【0048】
〔実施例1〕
基材(商品名「マシュマロ」〈110〉、坪量128g/m2、王子製紙製)の片面の全面に、ワイヤーバーを用いて上記塗工液1を乾燥重量が25g/m2となるように均一に塗工し、乾燥させた後、由利ロール製卓上カレンダーPSG180を用いて、温度50℃、線圧30kg/cm、速度2m/min.で1往復させてスーパーカレンダー処理を行い、インクジェット記録媒体を作製した。
【0049】
〔実施例2〜4及び比較例1〜3〕
実施例1において、上記塗工液1に代えて、上記塗工液2〜7をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、それぞれ、実施例2〜4及び比較例1〜3のサンプルとした。
【0050】
〔試験例〕
上記インクジェット記録媒体について、発色性、ブリード、耐擦性、塗膜強度、外観類似性、白紙光沢度、オフセット印刷適性をそれぞれ下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表8〕に示す。
【0051】
(発色性の評価方法)
顔料インクジェットプリンタ(商品名「PM4000PX」、セイコーエプソン製)を用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にKCMYの100%カラーパッチを印刷し、各カラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:KCMYの4色のOD値の合計が7.5を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が7.5〜6.0。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が6.0未満(平均でOD値1.5未満)。実用不可。
【0052】
(ブリードの評価方法)
上記PM4000PXを用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にイエロー及びブラックの100%カラーパッチを印刷し、両パッチが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察して、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
評価基準
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしないほど色混じりが起こった。実用不可。
【0053】
(耐擦性の評価方法)
上記PM4000PXを用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にKCMYの100%カラーパッチを印刷した後、幅20mmの消しゴムを傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該塗工層表面(印刷面)の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:印刷面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:印刷面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:印刷面にハガレが発生する。実用不可。
【0054】
(塗膜強度の評価方法)
上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にニチバン製粘着テープを貼り付け、該テープの上で5kgの重さのロールを2往復させた後、該テープを手動により一定の剥離速度で引き剥がし、基材(紙)間剥離を起こす場合をA(塗膜強度良好)、塗工層が一部剥離する場合をB(実用上問題なし)、塗工層がほぼ完全に剥離する場合をC(実用不可)とした。
【0055】
(外観類似性の評価方法)
グレタグマクベス社製のX−Rite938を用い、視野角2度、光源D50、Black Backingの条件で、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面のCIELAB値(L*/a*/b*)を測定し、これらの測定値と、「Japan Color色再現印刷2001」に用いるISO規格用紙タイプ1(アート紙)又はタイプ3(コート紙)のCIELAB値(91/0/−2)とから、JIS Z8730で規定される色差(ΔE*)を計算し、ΔE*が4.0以下をA(アート紙、コート紙と外観が類似している)、ΔE*が4.0超7.0未満をB(外観類似限界)、ΔE*が7.0以上をC(アート紙、コート紙と外観が類似していない)とした。
【0056】
(白紙光沢度の評価方法)
TAPPI T480om−90に準じて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面の75度光沢度を測定し、この測定値が50%以上をA(アート紙、コート紙と同等以上の光沢度)、40%以上50%未満をB(実用限界)、40%未満をC(実用に堪えない)とした。尚、上記ISO規格用紙タイプ1(アート紙)又はタイプ3(A2グロス白コート紙)の75度光沢度の測定値は60±10%程度である。
【0057】
(オフセット印刷適性の評価方法)
RI印刷適性試験機(石川島播磨産業機械製)を用いて、上記インクジェット記録媒体に対してオフセット印刷を行い、発色性、表面強度を下記方法により評価した。
【0058】
〈オフセット発色性〉
上記RI印刷適性試験機を用いて、C,M,Yの3色のインク(TKハイエコーSOY、東洋インキ製)により、印刷胴8000m/h、インク盛り量0.5cc/1回の印刷条件で、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面に各色のベタ印刷を行った。そして各印刷部分について、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:C色印刷部分1.7以上、且つM色印刷部分1.6以上、且つY色印刷部分1.5以上。いずれの色も画像濃度高く、オフセット発色性良好。
B:C色印刷部分1.4以上、且つM色印刷部分1.3以上、且つY色印刷部分1.2以上。実用限界。
C:C色印刷部分1.4未満、又はM色印刷部分1.3未満、又はY色印刷部分1.2未満。実用不可。
【0059】
〈オフセット表面強度〉
上記RI印刷適性試験機を用いて、Kインク(インクタック15、東洋インキ製)により、上記と同様の印刷条件で上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にベタ印刷を行い、印刷後の紙面の紙剥けの状況を目視で観察して、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:紙剥けが無く、印刷胴に紙粉がほとんど付着していない。表面強度良好。
B:紙剥けは無いが、印刷胴の所々に紙粉が付着している。実用限界。
C:紙剥けが発生している。実用不可。
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録媒体は、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適に使用することができ、発色性、耐擦性に優れ、ブリードがなく、高画質で長期保存が可能な画像を提供することができる。また、このインクジェット記録媒体は、色調、光沢、手触り感がアート紙、コート紙などの一般の塗工印刷用紙に類似しており、その上、従来の多孔質顔料を使用するインクジェット記録媒体に比して低コストで製造できるので、印刷校正用、商業用リーフレットやパンフレットの作成用、出版・広告関係などの各種印刷業務用など、種々の用途に好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録媒体に関し、詳しくは、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適に使用することができ、且つ、色調、光沢、手触り感が一般の塗工印刷用紙に類似したインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方式は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)のノズルからインクの液滴を吐出させ、紙等の記録媒体にインクを付着させて画像を記録する印刷方式である。インクジェット記録用のインクとしては、染料系あるいは顔料系の色材を水性媒体中に溶解又は分散させた水性インクが一般的であり、染料インクと顔料インクに大別される。これまで、色再現性等に優れる染料インクが多用されてきたが、インクジェット記録技術のデジタル写真サービスや商業印刷等への用途拡大により、記録画像の長期保存性が重要視されるようになってきており、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが使用されるようになってきている。
【0003】
また、インクジェット記録用の記録媒体としてはPPC用紙に代表される非塗工紙を使用することもできるが、非塗工紙はインク吸収量、インク吸収速度が不十分なため、カラーインクジェット記録のように大量のインクを使用する印刷には対応できず、非塗工紙に対してカラーインクジェット記録を行えば、異色の境界部分で色が滲んだり不均一に混ざり合ういわゆるブリードが発生するおそれがある。また、例えば特許文献1〜5には、炭酸カルシウム、サチンホワイト、カオリン、プラスチックピグメントなどの各種顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を有する塗工印刷用紙、いわゆるアート紙やコート紙が開示されているが、このような塗工印刷用紙は、基本的に油性インクを使用するオフセット印刷用の記録媒体であり、これらをカラーインクジェット記録に用いてもブリードの発生は避けられない。
【0004】
そこで、インク吸収性が良好で、画像濃度が高くブリードのない画像が得られるインクジェット記録用の記録媒体(インクジェット記録媒体)が数多く提案されている。その代表的なものとしては、特許文献6に開示されているような、基材上にアルミナ水和物などの無機粒子を主成分とする多孔質層(インク受容層)を有する記録媒体が挙げられる。また、特許文献7には、顔料としてサチンホワイト、炭酸カルシウム及びプラスチックピグメントなどの1種以上を含み、ピグメントのバインダーとしてカチオン化プルランを含む被覆層を有するインクジェット記録用紙が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献6及び7に開示されているような従来のインクジェット記録媒体の多くは、基本的に、インクジェット記録用インクとして現在主流となっている染料インクが使用されることを想定して設計されており、顔料インクを用いるインクジェット記録に対しては有効なものではなかった。染料インクによる画像形成は、染料を記録媒体内部に侵入させることにより記録媒体自体を染色して画像を形成するもので、染料が記録媒体の表面に留まらないのに対し、顔料インクによる画像形成は、染料よりはるかに大きな顔料粒子を記録媒体の表面に留め、該表面上にある顔料粒子自体の発色により画像を形成するものであるため、顔料インクによる画像は、染料インクによる画像に比して、入射光の乱反射による色見の相違や発色性の低下が起こりやすく、また顔料粒子が剥がれ落ちやすく耐擦性に劣る。このように、染料インクと顔料インクとは画像形成の原理が異なり、記録画像の発色性や耐擦性などに難がある顔料インクを用いて、記録用インクとして染料インクが使用されることを前提に設計された従来の記録媒体に対してインクジェット記録を行っても、画質(発色性、ブリード防止など)及び保存性(耐擦性など)の点でバランスのとれた記録画像を形成することはできない。
【0006】
また、従来のインクジェット記録媒体は、商業印刷分野で主流のグラビア印刷方式やオフセット印刷方式等とは全く異なる独特の印刷方式に特化させた記録媒体であるため、これらの印刷方式に適合した特性を持つ一般の塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)とは、色調、光沢、手触り感が全く異なっており、その上、他の印刷用紙に比して高価であるところ、近年のインクジェット記録技術を利用した新しいビジネスモデルの開発に伴い、アート紙やコート紙に類似した外観、質感を有し、価格的にも手頃なインクジェット記録媒体の開発が望まれている。例えば、商業印刷分野では、輪転機を稼働させて印刷物を刷る前に、インクジェットプリンタを用いて印刷物の仕上がりを事前に確認する作業(色校正)を行うようになってきており、この色校正用のインクジェット記録媒体には、本印刷用紙(アート紙、コート紙)の外観、質感を忠実に再現することが求められる。また、インクジェット記録方式の用途は依然として家庭用、個人用がメインとなっており、今後これを業務用にも拡大していくためには、従来のインクジェット記録媒体の特異性を解消し、安価で、アート紙、コート紙ライクなインクジェット記録媒体の開発が不可欠である。このようなインクジェット記録媒体にインクジェット画像が出力できるようになることで、商業用リーフレットやパンフレットの作成の他、出版関係、広告関係などの各種印刷業務などにもインクジェット記録方式を展開させていくことが可能となる。
【0007】
従って、本発明の目的は、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適で、発色性、耐擦性に優れ、ブリードがなく、高画質で長期保存が可能な画像を形成することができ、且つ、色調、光沢、手触り感がアート紙、コート紙などの一般の塗工印刷用紙に類似し、商業用リーフレットやパンフレットの作成用、出版・広告関係などの各種印刷業務用としても使用可能なインクジェット記録媒体を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−256295号公報
【特許文献2】
特開平7−238495号公報
【特許文献3】
特開平8−92894号公報
【特許文献4】
特開平9−67794号公報
【特許文献5】
特開平6−158591号公報
【特許文献6】
特開平2−276670号公報
【特許文献7】
特開平6−328836号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水性顔料インクによるインクジェット記録に好適で、且つアート紙、コート紙ライクなインクジェット記録媒体について種々検討した結果、サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムを主要な顔料として含有する塗工層が顔料系色材の定着性等に優れること、及びこのような塗工層を有する記録媒体が色調、光沢、手触り感の点でアート紙やコート紙などに類似することを知見し、この知見に基づいて、良好な顔料インク画像を形成し得る本発明をなすに到った。サチンホワイトは古くから紙塗工原料に使用されている顔料で、アート紙や塗工白板紙などの製造分野において白色度、光沢、耐水性などの改良を目的として全顔料の10〜20重量%程度の範囲で使用されているが、このサチンホワイトを全顔料の40重量%以上含有させた塗工層が、水性顔料インクによる印刷に有効であるとの知見は知られていない。また、硫酸カルシウムは、いわゆる石こうと呼ばれるもので、食品添加物、樹脂用充填剤、微量水分除去剤、土木建築用添加剤などとしては一般的であるが、紙塗工原料としては一般的ではなく、硫酸カルシウムを高配合させた塗工層が、水性顔料インクによる印刷に有効であるとの知見は知られていない。
【0010】
即ち、本発明は、基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けてなるインクジェット記録媒体において、上記塗工層中の全顔料の40重量%以上がサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムであることを特徴とするインクジェット記録媒体を提供するものである。
【0011】
サチンホワイトや硫酸カルシウムを塗工層に多く配合すると、嵩高でポーラスな塗工層となり、オフセット印刷に必要な塗工層強度を確保できなくなる。このため、通常のアート紙やコート紙においては20重量%程度がサチンホワイトの含有量の上限となるが、ノンインクパクトプリント方式であるインクジェット記録方式においては、塗工層強度はさほど重要な要素ではなく、むしろ、塗工層がポーラスであるとインク吸収性が良好になり、顔料系色材の定着性が向上する。従って、サチンホワイトや硫酸カルシウムを塗工層に高配合させた本発明のインクジェット記録媒体によれば、良好な顔料インク画像が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
【0013】
本発明のインクジェット記録媒体は、基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けた、いわゆる塗工紙である。
【0014】
本発明に係る基材としては、セルロースパルプを主成分とする紙が好ましく用いられる。このような紙は、晒クラフトパルプ(針葉樹及び広葉樹)、砕木パルプ、脱墨古紙パルプ等の各種のパルプを適宜混合して公知の抄紙機において湿式で抄造される紙を用いることができる。また、この紙中にはタルク、炭酸カルシウム等の填料、サイズ剤、歩留向上剤、紙力増強剤、染料、硫酸バンド並びにピッチコントロール剤等の通常紙を抄造する際に用いられる各種の助剤薬品を含有させても良く、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙等いずれの抄紙方法で製造されたものでも良い。更に、紙の最終乾燥の前でサイズプレス、ゲートロールコーター等の各種のコーターにより澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤等を塗布したものであっても良い。
【0015】
一方、本発明に係る塗工層は、該塗工層中の全顔料の40重量%以上、好ましくは50重量%以上がサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムである。サチンホワイト及び硫酸カルシウムの両方を使用する場合は、塗工層中における両者の合計量の全顔料に対する割合がこの範囲にあればよく、両者の混合比は特に限定されない。サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムの含有量が全顔料の40重量%未満では塗工層が緻密となって、本発明の目的であるインクジェット顔料インク画像の改善を達成することができない。一方、サチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムの含有量が多すぎると、塗膜強度が著しく低下し、プリンタ内部での用紙搬送時に粉落ちが発生するなどのおそれがあるので、含有量の上限は全顔料の90重量%程度とすることが好ましい。尚、サチンホワイト、硫酸カルシウムには多量の結晶水が含有されていることを考慮し、本明細書におけるサチンホワイト及び硫酸カルシウムの含有量は、サチンホワイト又は硫酸カルシウムを105℃で24時間放置した後に測定した絶乾重量を基準としている。
【0016】
本発明に使用するサチンホワイトとしては、紙塗工原料として通常用いられるものを使用することができる。サチンホワイトは、微細な針状結晶で、工業的には硫酸アルミニウムを石灰泥あるいは消石灰溶液中に攪拌しながら添加することで製造され、化学的にはスルホアルミン酸カルシウムであるが、分子構造は製造条件によって様々で、性質も種々変化する。本発明に好適に使用できるサチンホワイトとしては、白石工業(株)製のSW−BLシリーズが挙げられる。また、塗工層に適度な空隙を持たせて、塗膜強度とインク吸収性とのバランスを図る観点から、サチンホワイトは、針状結晶の長辺の長さが0.3〜3μm、短辺の長さが0.05〜0.3μmの範囲にあるものが好ましい。
【0017】
また、本発明に使用する硫酸カルシウムとしては、塗工層として使用できるものであればよく、二水塩(CaSO4・2H2O)、半水塩(CaSO4・1/2H2O)、無水塩(CaSO4)などが挙げられる。二水塩は普通に石こうと呼ばれ、半水塩は焼石こう、無水塩は無水石こう、硬石こうなどと呼ばれる。
【0018】
サチンホワイト、硫酸カルシウム以外の顔料としては、公知の塗工紙用原料を用いることができ、例えば、カオリン、炭酸カルシウム、白土、クレー、酸化亜鉛、二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、プラスチックピグメント等が挙げられ、これらの1種以上を上記塗工層に含有させることができる。
【0019】
特に、必要な塗膜強度を確保し且つ良好な画像を出力し得るようにすると共に、アート紙、コート紙ライクな記録媒体とする観点から、上記塗工層におけるサチンホワイト、硫酸カルシウム以外の顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム及びプラスチックピグメントを併用することが好ましい。この場合、これら3種の顔料の含有量は、塗工層中の全顔料に対し、それぞれ次のような範囲に調整することが好ましい。カオリン;5〜30重量%。炭酸カルシウム;5〜30重量%。プラスチックピグメント;3〜20重量%。
【0020】
上記のカオリン及び炭酸カルシウムとしては、それぞれ、紙塗工原料として通常用いられているものを使用することができる。炭酸カルシウムは重質でも軽質でもよく、結晶構造についてもアラゴナイト結晶構造、カルサイト結晶構造など特に限定されない。
【0021】
また、上記のプラスチックピグメントは、高分子化合物からなる微粒子であって、ポリスチレン系プラスチックピグメント、スチレン−ブタジエン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン−アクリル系プラスチックピグメント等が挙げられ、これらを単独または2種類以上混合して使用できる。これらは一般に市販品として入手できるものである。球状、扁平状、中空状、微粒子集合体、バインダーピグメント等の各種の形状、性質のプラスチックピグメントが使用できる。
【0022】
また、上記顔料と共に上記塗工層中に含有されるバインダー(接着剤)としては、特に限定されるものではなく、通常の塗工紙製造分野で使用されるバインダー、例えば各種の澱粉類、カゼイン、大豆蛋白やゼラチン等の蛋白質類、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)やカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース変性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)やメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MBR)やアクリル系樹脂などのラテックス類、ポリビニールアルコール等の合成高分子類を適宜使用することができる。なかでも、SBRは比較的低コストながら、塗膜強度及び画質の点で有効であるため、本発明において主バインダー(インク受容層中の全バインダーの50重量%以上を占めるバインダーを意味する)として好ましく使用できる。
【0023】
上記SBRはブタジエン及びスチレンを主モノマーとする共重合体であり、これらのモノマーに加えてメタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、メタアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有モノマーを共重合させたものも本発明に使用することができる。SBRをインク受容層成分として実際に使用する場合は、SBR粒子を分散質とするエマルジョンを使用することができる。このエマルジョン中のSBR粒子の平均粒子径は80〜250nmの範囲にあることが、塗工性の良好な塗工液とする点で好ましい。
【0024】
上記バインダーの含有量は、プリンタ内部での用紙搬送に必要な塗膜強度を確保する観点から、上記塗工層中の全顔料に対して5〜40重量%の範囲で調整されることが好ましい。含有量が全顔料に対して5重量%未満では塗工層の強度不足を招き、40重量%超では塗工適性及びインク吸収性の低下を招き、製造コスト的にも好ましくない。
【0025】
本発明に係る塗工層には、必要に応じ、上記各成分以外の各種の助剤、例えば、分散剤、塗膜強化剤、染料定着剤、防腐剤、防黴剤、ダスティング防止剤、保水剤、流動変性剤、硬化剤等を含有させることができる。
【0026】
なかでも、分散剤はサチンホワイト、硫酸カルシウムの分散性を高め、顔料インクを用いた印刷に対してより有効な塗工層を形成させる観点から、上記塗工層中に含有させることが好ましい。分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ソーダ、スルホン酸変性ポリビニルアルコールが挙げられる。分散剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して0.1〜4重量%の範囲で調整されることが好ましい。含有量が全顔料に対して0.1重量%未満では分散効果に乏しく、4重量%超では画質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0027】
また、本発明に使用可能な塗膜強化剤としては、炭酸ジルコニウムアンモニウム、尿素ホルマリン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂などが挙げられる。塗膜強化剤を塗工層に添加することで、塗工層の乾燥面強度(ドライラブ)及び湿潤面強度(ウエットラブ)を向上させることができる。塗膜強化剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して1〜10重量%の範囲で調整することが好ましい。含有量が全顔料に対して1重量%未満では塗工層の強度向上の効果に乏しく、10重量%超ではインク吸収性の低下を招き、塗工層自体が硬く、もろくなる。
【0028】
また、本発明に使用可能な染料定着剤としては、カチオン性有機物、多価金属イオン及びカチオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性有機物としては、例えば、1級〜3級アミン化合物、1級〜3級アミン塩、4級アンモニウム塩等の低分子化合物や、1級〜3級アミノ基、1級〜3級アミン塩基若しくは4級アンモニウム塩基を有するオリゴマー又はこれらの基を有するポリマー等が挙げられ、具体的には、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドポリマー、エピハロヒドリン−2級アミンコポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミドコポリマー、ジアリルメチルアンモニウム塩ポリマー、ジアリルアミン塩酸塩−二酸化硫黄コポリマー、ジメチルメチルアミン塩酸塩コポリマー、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン4級アンモニウム塩化合物、(メタ)アクリルアミドアルキルアンモニウム塩ポリマー、4級アンモニウム塩基を含むアイオネン等が挙げられる。多価金属イオンとしては、Al3+、Ca2+、Mg2+等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。染料定着剤の含有量は、上記塗工層中の全顔料に対して0.1〜10重量%の範囲で調整することが好ましい。含有量が全顔料に対して0.1重量%未満では記録画像の耐水性、発色性向上の効果に乏しく、10重量%超では塗工液の粘度の増大、インク吸収性不良、画質の低下を招くおそれがある。
【0029】
本発明に係る塗工層の塗工量は、画質、インク吸収性の観点から、乾燥重量で好ましくは7〜50g/m2、更に好ましくは15〜35g/m2である。塗工量が7g/m2未満では所望の効果が充分に得られず、上記基材を充分にカバーすることができない。一方、塗工量が50g/m2超では塗工不良や塗工層のひび割れを生じるおそれがある。
【0030】
本発明の記録媒体は公知の塗工紙と同様に製造することができる。上記の特定顔料及びバインダーなどを含有させた塗工液の塗工方法は特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、フローティングナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター、サイズプレス装置等の公知の塗工装置を用いて常法通り行うことができる。塗工後、熱風あるいは赤外線などにより乾燥されることにより、上記基材上に上記塗工層が形成される。
【0031】
光沢感や表面強度をより高めたい場合などには、上記塗工層に対してカレンダー処理を施すことができる。カレンダー処理とは、スーパーカレンダー、グロスカレンダー等の公知のカレンダー装置を用い、加圧・加熱したロール間に塗工紙等を通過させてその表面を平滑化する処理方法である。また、塗工面を金属若しくはフィルム等の鏡面に写し取るいわゆるキャスト法により、より高い光沢感を有する塗工面を得ることもできる。
【0032】
また、良好なインク吸収性を確保する観点から、上記塗工層は、下記(測定方法)により求められる空隙率が9.5%以上であることが好ましい。
【0033】
(測定方法)
測定対象となる塗工層を、坪量47.5g/m2のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥重量が30g/m2となるように塗工し、この塗工層のJIS P8140に基づくコッブ法による吸水度を測定する。具体的には、130mm四方の試料(PETフィルム上に塗工層を設けたもの)を用意し、これをコッブ法で使用する円形クランプで挟んで50mlの蒸留水を注ぎ、300秒経過後にクランプ内の蒸留水を捨ててこのときの試料の坪量を求め、この坪量と、吸水前の試料の坪量(47.5+30=77.5g/m2)との差を求める。このようにして求めた「JIS P8140に基づくコッブ法による吸水度」を下記(式1)に代入することにより、上記空隙率を求めることができる。
【0034】
【数2】
【0035】
本発明のインクジェット記録媒体は、前述したように、顔料系色材を含有させたインク(顔料インク)を用いるインクジェット記録に最適であり、高度なインク吸収能が求められるカラーインクジェット記録に使用されても画質及び保存性の良好な画像を提供することができる。顔料系色材としては、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0036】
一般に、インクジェット記録用の顔料インクは、水、各種有機溶剤及び界面活性剤等からなる水性媒体中に上記顔料系色材を含有させた水性顔料インクである。インク中の顔料系色材の含有量はインクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、インク全重量に対して0.5〜30重量%程度である。カラーインクジェット記録を行う場合は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラック(K)その他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0037】
また、本発明のインクジェット記録媒体は、インクジェット記録方式以外の記録方式、例えば、枚葉オフセット印刷方式、輪転オフセット印刷方式などにも使用できる。オフセット印刷方式は、顔料系色材を含有させたインク(油性顔料インク)を使用するため、本発明のインクジェット記録媒体で充分に対応できる。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。尚、本実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量基準である。
【0039】
〔塗工液の調製〕
下記〔表1〕〜〔表7〕に示す塗工液1〜7をそれぞれ調製した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
尚、上記塗工液1及び2において、それぞれ、分散剤を添加しない以外は塗工液1及び2と同一の組成の塗工液を調製しようとしたところ、顔料ペーストの分散不良で、塗工液を調製することができなかった。このことから、サチンホワイト又は硫酸カルシウムを配合する塗工液の調製においては分散剤は必須であると言える。
【0048】
〔実施例1〕
基材(商品名「マシュマロ」〈110〉、坪量128g/m2、王子製紙製)の片面の全面に、ワイヤーバーを用いて上記塗工液1を乾燥重量が25g/m2となるように均一に塗工し、乾燥させた後、由利ロール製卓上カレンダーPSG180を用いて、温度50℃、線圧30kg/cm、速度2m/min.で1往復させてスーパーカレンダー処理を行い、インクジェット記録媒体を作製した。
【0049】
〔実施例2〜4及び比較例1〜3〕
実施例1において、上記塗工液1に代えて、上記塗工液2〜7をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、それぞれ、実施例2〜4及び比較例1〜3のサンプルとした。
【0050】
〔試験例〕
上記インクジェット記録媒体について、発色性、ブリード、耐擦性、塗膜強度、外観類似性、白紙光沢度、オフセット印刷適性をそれぞれ下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表8〕に示す。
【0051】
(発色性の評価方法)
顔料インクジェットプリンタ(商品名「PM4000PX」、セイコーエプソン製)を用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にKCMYの100%カラーパッチを印刷し、各カラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:KCMYの4色のOD値の合計が7.5を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が7.5〜6.0。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が6.0未満(平均でOD値1.5未満)。実用不可。
【0052】
(ブリードの評価方法)
上記PM4000PXを用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にイエロー及びブラックの100%カラーパッチを印刷し、両パッチが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察して、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
評価基準
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしないほど色混じりが起こった。実用不可。
【0053】
(耐擦性の評価方法)
上記PM4000PXを用いて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にKCMYの100%カラーパッチを印刷した後、幅20mmの消しゴムを傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該塗工層表面(印刷面)の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:印刷面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:印刷面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:印刷面にハガレが発生する。実用不可。
【0054】
(塗膜強度の評価方法)
上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にニチバン製粘着テープを貼り付け、該テープの上で5kgの重さのロールを2往復させた後、該テープを手動により一定の剥離速度で引き剥がし、基材(紙)間剥離を起こす場合をA(塗膜強度良好)、塗工層が一部剥離する場合をB(実用上問題なし)、塗工層がほぼ完全に剥離する場合をC(実用不可)とした。
【0055】
(外観類似性の評価方法)
グレタグマクベス社製のX−Rite938を用い、視野角2度、光源D50、Black Backingの条件で、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面のCIELAB値(L*/a*/b*)を測定し、これらの測定値と、「Japan Color色再現印刷2001」に用いるISO規格用紙タイプ1(アート紙)又はタイプ3(コート紙)のCIELAB値(91/0/−2)とから、JIS Z8730で規定される色差(ΔE*)を計算し、ΔE*が4.0以下をA(アート紙、コート紙と外観が類似している)、ΔE*が4.0超7.0未満をB(外観類似限界)、ΔE*が7.0以上をC(アート紙、コート紙と外観が類似していない)とした。
【0056】
(白紙光沢度の評価方法)
TAPPI T480om−90に準じて、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面の75度光沢度を測定し、この測定値が50%以上をA(アート紙、コート紙と同等以上の光沢度)、40%以上50%未満をB(実用限界)、40%未満をC(実用に堪えない)とした。尚、上記ISO規格用紙タイプ1(アート紙)又はタイプ3(A2グロス白コート紙)の75度光沢度の測定値は60±10%程度である。
【0057】
(オフセット印刷適性の評価方法)
RI印刷適性試験機(石川島播磨産業機械製)を用いて、上記インクジェット記録媒体に対してオフセット印刷を行い、発色性、表面強度を下記方法により評価した。
【0058】
〈オフセット発色性〉
上記RI印刷適性試験機を用いて、C,M,Yの3色のインク(TKハイエコーSOY、東洋インキ製)により、印刷胴8000m/h、インク盛り量0.5cc/1回の印刷条件で、上記インクジェット記録媒体の塗工層表面に各色のベタ印刷を行った。そして各印刷部分について、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:C色印刷部分1.7以上、且つM色印刷部分1.6以上、且つY色印刷部分1.5以上。いずれの色も画像濃度高く、オフセット発色性良好。
B:C色印刷部分1.4以上、且つM色印刷部分1.3以上、且つY色印刷部分1.2以上。実用限界。
C:C色印刷部分1.4未満、又はM色印刷部分1.3未満、又はY色印刷部分1.2未満。実用不可。
【0059】
〈オフセット表面強度〉
上記RI印刷適性試験機を用いて、Kインク(インクタック15、東洋インキ製)により、上記と同様の印刷条件で上記インクジェット記録媒体の塗工層表面にベタ印刷を行い、印刷後の紙面の紙剥けの状況を目視で観察して、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:紙剥けが無く、印刷胴に紙粉がほとんど付着していない。表面強度良好。
B:紙剥けは無いが、印刷胴の所々に紙粉が付着している。実用限界。
C:紙剥けが発生している。実用不可。
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録媒体は、水性顔料インクを用いるインクジェット記録に好適に使用することができ、発色性、耐擦性に優れ、ブリードがなく、高画質で長期保存が可能な画像を提供することができる。また、このインクジェット記録媒体は、色調、光沢、手触り感がアート紙、コート紙などの一般の塗工印刷用紙に類似しており、その上、従来の多孔質顔料を使用するインクジェット記録媒体に比して低コストで製造できるので、印刷校正用、商業用リーフレットやパンフレットの作成用、出版・広告関係などの各種印刷業務用など、種々の用途に好適に使用することができる。
Claims (6)
- 基材の少なくとも片面に、顔料及びバインダーを主成分とする塗工層を設けてなるインクジェット記録媒体において、
上記塗工層中の全顔料の40重量%以上がサチンホワイト及び/又は硫酸カルシウムであることを特徴とするインクジェット記録媒体。 - 上記塗工層中の全バインダーの50重量%以上がスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
- 上記塗工層が、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ソーダ及びスルホン酸変性ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上の分散剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録媒体。
- 上記基材がセルロースパルプを主成分とする紙であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録媒体。
- 顔料系色材を含有させたインクを用いる記録方式に使用されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003035104A JP2004243623A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | インクジェット記録媒体 |
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JP2003035104A JP2004243623A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | インクジェット記録媒体 |
Publications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008044795A1 (fr) * | 2006-10-11 | 2008-04-17 | Oji Paper Co., Ltd. | Feuille d'enregistrement |
JP2020164572A (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-08 | 大日本塗料株式会社 | 水系プライマーインク、インクセット及び印刷方法 |
-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003035104A patent/JP2004243623A/ja not_active Withdrawn
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