JP2004243469A - 両面ラップ盤用回転定盤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属粉とダイアモンド粉とを焼結せしめた所定の厚みと幅を有する細長い角棒状をなしたダイアモンド研磨片15を上下一対の回転定盤3の摺り合せ面に相互に隙間が空く様に所定の面率で同心円状に固定して両面ラップ盤回転定盤を構成した。
【選択図】 図9
Description
【産業上の利用分野】
この発明は両面ラップ盤用回転定盤、詳しくは、加工作業中の破損事故をなくし、より薄いガラス板でも安全かつ高精度に研磨作業を実施できる両面ラップ盤用回転定盤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記憶用ハードディスク、液晶ディスプレイなどの製造の際には、部品の一つであるガラス板の研磨作業が必要であり、通常は両面ラップ盤によって実施されている。この両面ラップ盤18は図1に示す様に被加工物であるガラス板9の表裏を回転定盤3,3で挟み、この回転定盤3,3を相互に逆回転させることにより、この回転定盤3の摺り合せ面11に固着せしめられた研磨体によってガラス板9の表裏の研磨を行うものである。更に詳しく説明すると、この作業は図2及び図3に示す様に、保持枠体であるキャリア1にあけられた透孔2に被加工物であるガラス板9を嵌め込み、一対の回転定盤3,3のうち下側の回転定盤3の外側に固定された円形枠体19の内側に設けられた歯6及びこの下側の回転定盤3とは独立した駆動系により駆動される中央軸17の外側に設けられた中央軸17とは独立した駆動系によって駆動される平歯車20に、キャリア1の外周縁に形成されている歯8をそれぞれ係合させ、ガラス板9が嵌め込まれているキャリア1の表裏を上下一対の回転定盤3,3の摺り合せ面11、11で挟み込み、一対の回転定盤3,3をそれぞれ逆方向に回転させることにより、キャリア1に自転運動及び中央軸17を中心とする公転運動を与えながらキャリア1によって保持されているガラス板9の表裏を摺り合せ面11との摺接によって研磨するものである。なお、図4はこの研磨作業の際に用いるキャリア1の斜視図である。
そして、回転定盤3には、大きく分けて2タイプのものが存在しており、一つには図5に示すものの様に、回転定盤3の摺り合せ面11に円柱状をなした小型のダイアモンドペレット10を所定間隔で多数固定した所謂ペレット植設タイプのものであり、もう一つは図6に示す様に、回転定盤3の摺り合せ面自体を金属粉とダイアモンド粉とを焼結させた所定厚さを有する研磨体14で構成した所謂総型タイプのものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者、つまり図5に示すペレット植設タイプの回転定盤3においては、摺り合せ面11に植設されるダイアモンドペレット10,…間には比較的大きな隙間が形成されており、その面率は低いので、被加工物であるガラス板9を、より細かい加工番手で仕上げることができる特徴を有している。被加工物であるガラス板9の表面の平滑度を高めようとするときは、当然に細かい番手のダイアモンドペレット10を使用することになるが、加工しようとするガラス板9とダイアモンドペレット10の端面とは、番手が細かくなるに従って互いに吸い付きやすくなるが、このペレット植設タイプの回転定盤3の場合には、ダイアモンドペレット10植設の面率が低いので、かなり細かい番手のものまでこの吸い付き現象を抑制することができるのである。
【0004】
一方、図6に示す総型タイプの回転定盤3の場合、摺り合せ面11全体に研磨体14が一体的に形成されているので、研磨力が大きく、荒番手での加工には適しているが、細かい番手になると、吸い付き現象が急激に大きくなる特徴があり、細かい番手の研磨作業には適していなかった。又、研磨体14が一体的に形成されているので、一旦製作してしまった後は、定盤精度のコントロールは出来なかった。更に、加工精度を保つ為には、定盤全体を定期的に修正しなければならず、大掛かりな作業が必要で、コストや時間の面からも問題があった。
【0005】
近年は、磁気記憶用ハードディスクや液晶ディスプレイの高性能化に伴い、大きさや厚さが小さいガラス板を精密に研磨する機会が多くなっており、表面粗度に関する要求も益々高くなる傾向がある。この様な要求を満すには、図6に示す様な総型タイプの回転定盤3より、図5に示す様なペレット植設タイプの回転定盤3の方が適しており、これらの研磨作業には、このペレット植設タイプの回転定盤3が多く使用されている。
【0006】
このペレット植設タイプの回転定盤3の場合、総型タイプの回転定盤3に比べ、より細かい番手でも吸い付き現象の発生がなく、吸い付き力も小さいことは確かであるが、対向した一対の物質間に働く分子間力に由来するこの吸い付き現象を完全になくすことは不可能であり、このペレット植設タイプの回転定盤3でも、ある番手以下になると、吸い付き力が大きくなり、研磨作業に支障を来す場合があった。
【0007】
つまり、被加工物であるガラス板9は保持枠体であるキャリア1によって自転及び公転運動が付与されているのであるが、ガラス板9とダイアモンドペレット10の端面との間の吸い付き力が強大になると、キャリア1が自転及び公転運動をする際に大きな負担がかかり、外周縁に形成されている歯8を破損したり、上下にたわんでしまうことがあった。又、キャリア1自体もダイアモンドペレット10の端面に吸い付けられ、これによって上下にたわむこともあった。キャリア1は、一般に、ガラス繊維製円板にエポキシ樹脂を含浸させて形成したものであるが、被加工物1であるガラス板9より薄くなければならず、ガラス板9が薄くなればなるほど、その強度の保持はむずかしかった。又、研磨作業の際には摺り合せ面11に外部からクーラントを供給し、クーラントの潤滑作用によって吸い付きを減少させているが、ペレット植設タイプの場合、上側の回転定盤3からクーラントを供給しても、ダイアモンドペレット10同士は離れており、その間には大きな空間が形成されているので、せっかく供給したクーラントもこの空間から下側の回転定盤3側に一気に流れ落ちてしまい、ほとんど吸い付き現象を抑制する働きはなかった。
【0008】
そして、キャリア1が吸い付き力に抗し切れずに、回転運動中に上下にたわむと、キャリア1に形成されている透孔2の周縁が植設されているダイアモンドペレット10の側面や角に引っかかってしまい、その部分が破損分離し、被加工物であるガラス板9を破損してしまうことがあった。研磨作業中には、ガラス板9に強大な圧力がかかっており、ガラス板9自体は薄く極めて脆弱であるので、キャリア1の破片によってガラス板9は容易に破損され、ガラス板9の破損に伴う衝撃で植設されているダイアモンドペレット10の回転定盤3からの分離脱落という重大事故につながることもあった。
【0009】
この様に、より表面粗度が小さい研磨作業が求められるに従って、キャリア1は破損の危険に多くさらされる様になっており、キャリア1の破損に起因する重大事故の発生を防止する為、何らかの対策が強く求められていた。なお、回転定盤3自体は数百キログラムから数トンに及ぶ重量物であり、一旦事故が起きると、その修復に長時間を要し、その間操業を停止しなければならないので、経済的にも損失は極めて大きかった。
【0010】
本発明者は、ガラス板9の研磨作業に関する上記従来の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、ダイアモンドペレット10に代る新たなダイアモンド研磨片を、特定の配置方法で回転定盤3に固定することにより、吸い付き現象を低減化させ、キャリア1の破損を未然に防止できる技術を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
金属粉とダイアモンド粉とを焼結せしめた所定の厚みと幅を有する細長い角棒状をなしたダイアモンド研磨片を上下一対の回転定盤の摺り合せ面に相互に隙間が空く様に所定の面率で同心円状に固定して上下一対の回転定盤を構成することにより、上記課題を解決した。この際、ダイアモンド研磨片は円弧状に弯曲しているものであっても、直線状に形成されているものであっても良い。
【0012】
【実施の形態】
図7はこの発明に係る両面ラップ盤用回転定盤の一実施形態の平面図、図8はそれにキャリア1を組込んだ状態の平面図、図9は同じくその斜視図である。図中3は回転定盤であり、上下一対設けられており、それぞれの摺り合せ面11、11が対向する様になっている。そして、下側の回転定盤3の外側に設けられた円形枠体19の内側には歯6が形成されており、前記下側の回転定盤3とは独立した駆動系によって駆動される中央軸17の外側には、中央軸17とは独立した駆動系によって駆動される平歯車20が取付けられている。一方、1はガラス繊維製円板にエポキシ樹脂を含浸させたキャリアであり、その外周縁には歯8が形成されており、回転定盤3に形成されている歯6に係合し得る様になっている。又、そのキャリア1には、被加工物であるガラス板9を嵌め込んで保持する透孔2が複数個等間隔で設けられている。このキャリア1は、被加工物であるガラス板9より薄く形成されている。なお、これらの構成は従来の両面ラップ盤用回転定盤と全く同じである。
【0013】
そして、一対の回転定盤3の摺り合せ面11には、本発明者が新たに開発したダイアモンド研磨片15が所定の位置関係で配列固定されている。このダイアモンド研磨片15は従来のダイアモンドペレットに代るものであり、従来のダイアモンドペレットと同様、金属粉とダイアモンド粉とを焼結させたものであり、所定の厚みと幅を有する細長い角棒状をなしている。なお、この実施の形態の場合、図10に示す様に、このダイアモンド研磨片15は円弧状に弯曲した平面形状を有しているが、図11に示すものの様に、単純な長方形の平面形状を有するものであっても良い。又、実施の形態においては、平面形状における短辺の長さは、従来のダイアモンドペレットの直径とほぼ同じ程度の寸法となっているが、被加工物であるガラス板の口径や回転定盤3の寸法、使用番手などに応じて適宜変更し得るものであることは当然である。
【0014】
そして、このダイアモンド研磨片15は図7に示す様に、回転定盤3の摺り合せ面11に相互に一定間隔を保って所定の面率となる様に同心円状に多数固定されている。なお、回転定盤3の面積を一定にした場合、固定するダイアモンド研磨片15の数を多くする程、その面率は高くなる。このダイアモンド研磨片15の寸法やその配列の際の間隔、及び面率は、被加工物であるガラス板9の口径、研磨精度など具体的な研磨条件に応じて適宜決定されるが、一般的に口径の小さいガラス板9に対するもの程、ダイアモンド研磨片15同士の間隔は狭められる。
【0015】
ダイアモンド研磨片15同士は、相互に接触させず、一定の間隔を保って固定することが肝要であり、ダイアモンド研磨片15、15の間の形成される空隙16は、クーラント流動用の溝として作用する。
【0016】
このダイアモンド研磨片15は、あらかじめ長尺状の棒状の焼結体を作り、これを適当な寸法に切断すれば、比較的簡単かつ低コストで製作することが出来る。
【0017】
この様に、細長い角棒状をなしたダイアモンド研磨片15は回転定盤3に所定間隔で同心円状に固定されており、従来の両面ラップ盤と同様に一対の回転定盤3、3間にキャリア1を挟み込み、このキャリア1に被加工物であるガラス板9を保持させて、キャリア1に自転運動及び公転運動を付与し、ガラス板9の表裏にダイアモンド研磨片15を摺動させて、その研磨を行うのであるが、加工作業中に万が一キャリア1が何らかの理由によって上下にたわんだとしても、ダイアモンド研磨片15は角棒状をしているので、キャリア1の透孔2の周縁は、必ずどこかの部分でこのダイアモンド研磨片15と接しており、従来のダイアモンドペレットの場合の様に、ダイアモンド研磨片15の側面や角がキャリア1の透孔2の周縁に引っかかって、これを破損するおそれはない。
【0018】
又、研磨作業の際に、外部から回転定盤3に供給されたクーラントは、ダイアモンド研磨片15、15間に形成されている溝状となった空隙16内を流動し、回転定盤3が回転する際に発生する遠心力によってオーバーフローしてガラス板9表面との摺動箇所に万遍なく行き渡り、キャリア1の吸い付きを抑制することになる。
【0019】
【発明の効果】
この発明に係る両面ラップ盤用回転定盤は上記の通り、被加工物であるガラス板表裏の研磨を行うダイアモンド研磨片の形状及びその配置に工夫をこらしているので、ガラス板を保持するキャリアが上下にたわんで破損するおそれが少なく、より細かい番手での加工作業をより薄いガラス板に対しても実施できる効果を有し、研磨加工作業の能率向上に資する効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス板を研磨する為に用いる両面ラップ盤の一例の側面図。
【図2】従来の回転定盤のキャリアを組込んだ状態の斜視図。
【図3】同じくその平面図。
【図4】回転定盤に組込むキャリアの一例の斜視図。
【図5】従来用いられているペレット植設タイプの回転定盤の一例の斜視図。
【図6】従来用いられている総型タイプの回転定盤の一例の斜視図。
【図7】この発明に係る回転定盤の一実施形態の平面図。
【図8】同じく、キャリアを組込んだ状態の平面図。
【図9】同じくその斜視図。
【図10】この発明において用いたダイアモンド研磨片15の一例の斜視図。
【図11】同じく、他例の斜視図。
【符号の説明】
1 キャリア
2 透孔
3 回転定盤
6 歯
7 外周縁
8 歯
9 ガラス板
10 ダイアモンドペレット
11 摺り合せ面
14 研磨体
15 ダイアモンド研磨片
16 空隙
17 中央軸
18 両面ラップ盤
19 円形枠体
20 平歯車
Claims (3)
- 金属粉とダイアモンド粉とを焼結せしめた所定の厚みと幅を有する細長い角棒状をなしたダイアモンド研磨片を上下一対の回転定盤の摺り合せ面に相互に隙間が空く様に所定の面率で同心円状に固定したことを特徴とする両面ラップ盤用回転定盤。
- ダイアモンド研磨片が円弧状に弯曲していることを特徴とする請求項1記載の両面ラップ盤用回転定盤。
- ダイアモンド研磨片が直線状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の両面ラップ盤用回転定盤。
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