JP2004239617A - センサ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力されるGセンサ2と、そのGセンサ2が搭載される筐体3とを備えたセンサ装置1において、筐体3は、Gセンサ2の周囲が高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって一次成形されているので、共振の原因となる高周波振動が確実に減衰し、共振の影響を受けることなく、衝突、振動の正しい検出出力を行うことができる。さらに、一次成形部3aの周囲が第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって二次成形された二次成形部3bとなっているので、外部からの衝撃によって筐体3が破壊されることを防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センシング部の物理的変位に応じて出力される電気信号によって衝突、振動、角速度等を検知可能な電子式センサを搭載したセンサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の衝突時にエアバッグの展開を行うために、衝突や振動を検知するための衝突検知センサ装置が車両前部等に搭載されている。そして、従来の衝突検知センサ装置では、例えば、図7に示す衝突検知センサ装置101のように、Gセンサ102を実装したP板(ガラスエポキシ系基板)109を、樹脂製の筐体103のGセンサ収容部103a内にて、筐体103に固定されたコネクタターミナル104にクリンチしてはんだ付けする構造や、図8に示す衝突検知センサ装置201のように、P板109を熱かしめすることにより筐体103へ固定する構造等が採用されている。また、Gセンサ102は、図示しないセンシング部の変形や移動等の物理的変位に応じて出力される電気信号によって衝突や振動を検出するように構成されており、構造体であるために必ず共振を発生させる周波数(共振点)が存在している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来構造の衝突検知センサ装置101又は201において、共振の原因となる高周波振動が、P板109によってある程度は減衰されるが、その減衰効果は、P板109の材質、サイズ、剛性、Gセンサ102を含めた重量、及びP板109を筐体103に固定する方法や固定位置によって異なってくる。そして、実際の製品設計においては、P板109の材質、サイズ、剛性、Gセンサ102を含めた重量は、回路規模によって決定され、P板109を筐体103に固定する方法や固定位置は、P板109のサイズによって決定されることになるため、このような構造から得られる高周波振動の減衰効果は成り行き任せとなっていたという問題があった。
【0004】
そして、P板109に実装されたGセンサ102のセンシング部(図示せず)の共振点が筐体103の共振点と重なる場合も想定され、そのような場合には、共振点を含む高周波振動の入力により、筐体103の共振にGセンサ102の共振が重畳し、Gセンサ102は入力Gよりも何倍も大きな検出値を出力することとなり、正しい衝突判定を行うことができない事態も生じうる。
【0005】
さらに、昨今の車両の衝突安全に関する法規やレーティング等に対応してエアバッグの車両搭載率が上昇しており、また、前突検知用だけでなく側突検知用の衝突検知センサ装置も搭載されるようになっている。これにより、車両1台当りの衝突検知センサ装置の搭載数も増加しており、センサ装置の製造コストを低減することの重要性が高まってきている。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、共振の原因となる高周波振動を確実に減衰させることが可能であり、且つ安価に製造可能なセンサ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に記載のセンサ装置は、センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力される電子式センサと、その電子式センサが搭載される筐体とを備えたセンサ装置において、前記筐体は、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって前記電子式センサの周囲を一次成形した一次成形部と、前記第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって前記一次成形部の周囲を二次成形した二次成形部とからなることを特徴とする。
【0008】
従って、センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力される電子式センサは高周波帯域(例えば、周波数1kHz以上の帯域)に共振点を有するが、前記電子式センサの周囲が、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって一次成形されているので、共振の原因となる高周波振動が確実に減衰し、センサ装置は、共振の影響を受けることなく、衝突、振動、角速度等の正しい検出出力を行うことができる。さらに、一次成形部の周囲が第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって二次成形されているので、強度に優れており、センサ装置が車両前部のエンジンルーム内や側部のピラー内等のクラッシュゾーン(破壊領域)に配置された場合でも外部からの衝突によって筐体が破壊されることを防止することができる。また、一次成形及び二次成形が完了した時点でセンサ装置の組付けが完了し、従来必要であった電子式センサを筐体に組付ける後組付け工程が省略可能となり、製造工数の削減が可能であると共に、センサ装置を最小限必要な部品のみで構成することが可能となり、製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0009】
また、請求項2に記載のセンサ装置は、前記第一の樹脂材料が、液状シリコーンゴムであることを特徴とする。
【0010】
従って、電子式センサの周囲が、軟らかい樹脂材料である液状シリコーンゴムによって一次成形されているので、高周波振動を確実に減衰させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセンサ装置を具体化した衝突検知センサ装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
まず、本発明の実施形態の衝突検知センサ装置(以下、センサ装置と称する)1の構成について、図1を参照しつつ説明する。センサ装置1は、Gセンサ2と、筐体3とを主体として構成され、車両の前部等に搭載されて衝突を検知し、エアバッグ制御装置へ衝突検知信号を出力するためのセンサ装置である。
【0013】
Gセンサ2は、図示しないセンシング部(検知部)を備え、加速度(以下、単に”G”とも称する)が入力されると、センシング部に物理的変位(移動、変形等)が生じ、その変位量に応じた電気信号を出力するように構成されている。ここで、Gセンサ2は、全ての範囲の入力Gについて検出可能であることが理想的であるが、実際には、図2に示すように有限のダイナミックレンジ(検出可能な入力Gの範囲)を有しており、ダイナミックレンジを超える入力加速度が印加されると正しく検出することができない。また、Gセンサ2は、構造体であることから必ず共振点(共振周波数とも称する)を有している。よって、入力加速度の中にGセンサ2の共振点周波数成分が含まれていると、Gセンサ2の検知部は、Gセンサ2のダイナミックレンジを超える働きをすることがあり、この時、Gセンサ2は正しい検知ができなくなる。尚、Gセンサ2としては、例えば、センシング部の移動量によって加速度を検出するように構成された櫛歯式のGセンサ等を用いることができ、通信回路、電源回路等が1パッケージに集積化されている。
【0014】
筐体3は、樹脂材料によってGセンサ2を一体モールド成形したケース部分であり、Gセンサ2の周囲をなす一次成形部3aと、一次成形部3aの周囲に設けられて筐体3の外形をなす二次成形部3bとから構成されている。すなわち、センサ装置1は、まず、Gセンサ2と、Gセンサ2を外部に電気的接続するためのコネクタターミナル4と、車両取付け用のボルトが挿通される円筒状の金属ブッシュ6とを軟らかい樹脂材料(第一の樹脂材料)によって一体モールド成形(一次成形)することにより一次成形部3aを形成し、さらに、一次成形部3aの周囲を硬い樹脂材料(第二の樹脂材料)によって二次成形することによりセンサ装置1の外形を形成したものである。従って、従来のセンサ装置のように筐体を成形した後でGセンサを組付ける後組付け工程が省略されるので、製造工数の削減が可能であると共に、センサ装置1を最小限必要な部品のみで構成することが可能となり、従来よりも製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0015】
一次成形部3aをなす樹脂材料(第一の樹脂材料)としては、例えば、成形加工可能な軟らかい樹脂材料である液状シリコーンゴム等が好適に用いられる。従って、Gセンサ2の周囲が、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって一次成形されているので、共振の原因となる高周波振動が確実に減衰し、センサ装置1は、共振の影響を受けることなく、衝突、振動の正しい検出出力を行うことができる。
【0016】
また、二次成形部3bをなす樹脂材料(第二の樹脂材料)としては、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、ナイロン樹脂等の硬い樹脂材料が好適に用いられる。従って、一次成形部3aの周囲が第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって二次成形されているので、強度に優れており、センサ装置1が、前突検知のために車両前部のエンジンルーム内に配置されたり、側突検知のために車両側部のピラー内やサイドシル部等のクラッシュゾーン(破壊領域)に配置された場合でも、外部からの衝突によって筐体3及びGセンサ2が破壊されることを防止することができる。
【0017】
コネクタターミナル4は、図示しない導体を介して図示しないエアバッグ制御装置に電気的に接続されており、Gセンサ2からの出力信号がエアバッグ制御装置に入力されるようになっている。エアバッグ制御装置は、Gセンサ2からの出力信号に基づいて、図示しないエアバッグの展開制御を行う。
【0018】
そして、センサ装置1は、筐体3の二次成形部3bにて一体モールド成形された金属ブッシュ6にボルトが挿通され、車両側取付け部に対して締付け固定される。
【0019】
次に、上述した構成を有するセンサ装置1において衝突を検知する場合の各部の作用について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
車両の衝突等によってセンサ装置1に入力される振動は、あらゆる周波数成分により構成されている。この周波数成分は、図3に示すように、車両の衝突判定に必要な成分(主に低周波帯域、例えば周波数1kHz未満)と、衝突判定に不要な成分(主に高周波帯域、例えば周波数1kHz以上)とに二分することができる。また、Gセンサ2(より詳細には、センシング部)の共振点は、高周波帯域に属しており、筐体3の共振点はGセンサ2の共振点とは異なる周波数に設定されている(図3では、Gセンサ2の共振点よりも低く設定した例を示す)。尚、衝突判定に必要な周波数帯では、筐体の振動伝達の共振・減衰が無いことが必須条件であり、Gセンサの共振が始まる周波数以上では、Gセンサ2に入力されるる振動が、Gセンサ2の低周波数側の検知に影響ないレベルまで減衰していることが必須条件である。また、筐体の共振点はGセンサの共振点よりも低く設定されているため、筐体共振点付近の周波数帯では筐体の共振が生じても構わない。
【0021】
次に、衝突による衝突G振動入力からセンサ出力までの流れについて、図4乃至図6を参照しつつ説明する。衝突G振動は、図6(a)に示すように、低周波振動(太線で示す)に高周波振動(細線で示す)が重畳して構成されている。そして、車両を介してセンサ装置1に振動が伝達されると、図5に示すように、一次成形部3aの制振効果によって、Gセンサ2の共振点を含む高周波の振動が減衰され(共振ピークが低下し)、図6(b)に示すように、衝突判定に必要な低周波振動のみがGセンサ2に伝達される。そして、図6(c)に示すように、Gセンサ2にダイナミックレンジ内の低周波振動のみが伝達され、Gセンサ2から正しいG検出信号が出力される。これにより、エアバッグ制御装置では正しいG検出信号に基づいて正確に衝突状態を判定し、適切にエアバッグの展開制御を行うことができる。
【0022】
ここで、比較のため、従来のセンサ装置において振動伝達特性が不適当な場合を図6(d)に示す。図6(d)から明らかなように、高周波振動によりGセンサが共振し、特定周波数の振動が増幅されている。このため、Gセンサのダイナミックレンジを超えた振動が伝達されるため、正しいG検出信号を得ることができなかった。
【0023】
また、本実施形態によれば、Gセンサ2が、一次成形部3aをなす樹脂材料によって覆われることで気密性が保持され、湿気や腐食の原因を排除することができるという効果も奏される。
【0024】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【0025】
例えば、前記実施形態では、本発明を加速度や振動を検出するための衝突検知センサ装置に適用した例を示したが、例えば、角速度を検出するためのロールオーバーセンサ、ロールレートセンサ、ヨーレートセンサ等に適用することも可能である。要するに、センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力される電子式センサと、その電子式センサが搭載される筐体とを備えたセンサ装置に本発明を適用することが可能である。
【0026】
また、一次成形部3a、二次成形部3bを形成する樹脂材料は上述した各材料には限られない。要するに、一次成形部3aを、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって形成し、二次成形部3bを、第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって形成すればよいのである。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のセンサ装置によれば、センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力される電子式センサが搭載される筐体において、電子式センサの周囲が、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって一次成形されているので、共振の原因となる高周波振動が確実に減衰し、センサ装置は、共振の影響を受けることなく、衝突、振動、角速度等の正しい検出出力を行うことができる。さらに、一次成形部の周囲が第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって二次成形されているので、強度に優れており、センサ装置が車両前部のエンジンルーム内や側部のピラー内等のクラッシュゾーン(破壊領域)に配置された場合でも外部からの衝突によって筐体が破壊されることを防止することができる。また、一次成形及び二次成形が完了した時点でセンサ装置の組付けが完了し、従来必要であった電子式センサを筐体に組付ける後組付け工程が省略可能となり、製造工数の削減が可能であると共に、センサ装置を最小限必要な部品のみで構成することが可能となり、製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における衝突検知センサ装置を側方から視た状態を表す概略構成図である。
【図2】GセンサのG検出出力特性の一例を示すグラフである。
【図3】Gセンサ及び筐体における振動伝達率と振動周波数との関係を示すグラフである。
【図4】衝突G振動入力からセンサ出力までの流れを示す説明図である。
【図5】一次成形部の有無による筐体の振動伝達特性の変化を示すグラフである。
【図6】(a)は衝突Gの入力波形の一例を示すグラフを、(b)は一次成形部の制振効果によって高周波振動が減衰した振動波形の一例を示すグラフを、(c)はGセンサに入力される振動波形の一例を示すグラフを、(d)は従来のセンサ装置において振動伝達特性が不適当な場合のGセンサに伝達される振動波形の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図7】従来技術における衝突検知センサ装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】従来技術における衝突検知センサ装置の他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…衝突検知センサ装置(センサ装置)、2…Gセンサ(電子式センサ)、3…筐体、3a…一次成形部(第一の樹脂材料)、3b…二次成形部(第二の樹脂材料)。
Claims (2)
- センシング部の物理的変位に応じて電気信号が出力される電子式センサと、その電子式センサが搭載される筐体とを備えたセンサ装置において、
前記筐体は、高周波振動を減衰可能な第一の樹脂材料によって前記電子式センサの周囲を一次成形した一次成形部と、前記第一の樹脂材料よりも硬い第二の樹脂材料によって前記一次成形部の周囲を二次成形した二次成形部とからなることを特徴とするセンサ装置。 - 前記第一の樹脂材料は、液状シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
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