JP2004239377A - 回転体及び減速機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この回転体は、固定部材1と、固定部に対して回転する回転部材2と、固定部材と回転部材との間に設けられた軸受3と、固定部材と回転部材との間を密封するように軸受の近傍に配置され主リップ32bと補助リップ35とを有するシール部材5と、を具備する。シール部材5は、主リップが回転部材の回転面20に摺接しかつ補助リップが軸受の回転軸線に直交する軸受端面3dに摺接する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シール部材を有する回転体及び減速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、減速機等の動力伝達装置において、潤滑剤を密封するために1つのオイルシールが用いられる。しかし、1つのオイルシールのみでは、シール性が維持できないため、従来の密封装置として複数個のオイルシールを軸方向に並設して、圧力水・潤滑剤などを密封するようにしたものがある(例えば、下記特許文献1参照)。また、動力伝達装置において潤滑剤を密封するようにすると、例えば図5に示すような密封装置がある。図5の密封装置は、固定部54に対し回転する回転部53と固定部54との間に配置された軸受50側から潤滑剤が流出しないように軸方向に2つのオイルシール51,52を配列することで2重に潤滑剤の流出を防いでいる。しかしながら、このような従来の密封装置では、2つのオイルシールを用いているため、軸方向の長さが長くなり減速機等に適用される回転体が大型化する問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−338535号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、圧力水や潤滑剤等に対するシール性を向上させかつ小型化可能な回転体及び減速機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による回転体は、固定部と、前記固定部に対して回転する回転部と、前記固定部と前記回転部との間に設けられた軸受と、前記固定部と前記回転部との間を密封するように前記軸受の近傍に配置され主リップと補助リップとを有するシール部材と、を具備し、前記シール部材は、前記主リップが前記回転部に摺接しかつ前記補助リップが前記軸受の回転軸線に直交する軸受端面に摺接するように構成されていることを特徴とする。
【0006】
この回転体によれば、シール部材が主リップで回転部に摺接しかつ補助リップで軸受の回転軸線に直交する軸受端面に摺接するので、圧力水や潤滑剤等に対するシール性を向上させることができる。かかるシール性の向上を1つのシール部材で実現できるので、シール部材の個数を減らすことができ、回転体を小型化できる。
【0007】
上記回転体では、前記補助リップが前記軸受の内輪の前記軸受端面に摺接することが好ましい。また、前記補助リップが摺接する部位として、通常硬化処理及び高精度加工されている軸受端面を利用することで、補助リップにより潤滑剤漏れを効果的に防止できるとともに、補助リップの摺接部の加工が特に必要なく、部品コスト的に有利となり、コスト減に寄与できる。
【0008】
なお、上記シール部材は、前記主リップを構成する第1弾性部が固定された第1補強リング部材と、前記補助リップを構成する第2弾性部が固定されかつ第1補強リング部材の内周部に設けられた第2補強リング部材と、を備えることが好ましい。
【0009】
また、上記シール部材は、前記主リップ及び前記補助リップを構成する弾性部が固定された補強リング部材を備えることが好ましく、前記補助リップは前記主リップと一体的に形成されることが好ましい。
【0010】
また、上記補助リップは前記回転部の半径方向外側を向くように構成されることで、回転部内からの圧力によって開き難くなる。また。外部からの塵挨を除去するために主リップよりも外側に設けられ回転部に摺接するダストリップを備えることが好ましい。
【0011】
本発明による減速機は、上述の回転体を備え、前記回転部が減速機に入力する回転力により減速しながら回転することを特徴とする。この減速機によれば、内部の潤滑剤や圧力水に対するシール性を向上できかつ小型化を実現できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
【0014】
図1は本実施の形態による減速機の偏心揺動型減速機構を示す断面図であり、図2は図1のシール部に配置したシール部材を示す部分拡大断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の減速機は、固定部材1と、固定部材1に対し回転する回転部材2と、固定部材1と回転部材2との間に配置された転がり軸受3,4と、固定部材1と回転部材2との間を密封するように軸受3の近傍のシール部6に配置されたシール部材5と、を備える。これらの固定部材1と回転部材2等から回転体が構成される。
【0016】
図1の減速機は、公知の偏心揺動型減速機構を有し、入力平歯車12によって入力側の回転力が伝達される複数の偏心軸11と、固定ケース1の内周部に設けられた複数のピン(内歯)からなる内歯歯車15と、内歯歯車15に対応する所定ピッチで内歯歯車15と例えば1つ異なる歯数の外歯を有し内歯歯車15に噛合する外歯歯車13,14と、中心部にモータ等から回転が伝達され入力平歯車12に噛み合うピニオンを有する駆動軸や電気配線等を収容する空洞部16と、を備える。
【0017】
偏心軸11は、外歯歯車13,14を軸受ピン13a,14aを介して内歯歯車15の中心軸線に対し偏心して公転運動可能に支持する。回転部材2は、固定部材1に対し転がり軸受3,4を介して回転自在に結合され、偏心軸11の両端部を軸受11a、11bを介して回転自在に支持する。回転部材2内の外歯歯車13,14と内歯歯車15との噛み合い部分の円滑な駆動のために潤滑剤が充填されている。
【0018】
複数の偏心軸11のうちの少なくとも一つが、その軸端部に装着された入力平歯車12を介して入力側のモータ等の回転力が伝達されて回転することにより、外歯歯車13,14は公転運動しながら、外歯歯車13,14の歯数より例えば1つ歯数が多い内歯歯車15に噛合う。その公転1回につき歯数差(1)に対応して外歯歯車13,14が自転し、これによって回転部材2が内歯歯車15とともに外歯歯車13,14の自転に対応して減速回転する。このようにして、入力平歯車12を介して入力側の回転力が伝達されて減速出力を取り出すことができ、例えば、回転部材2の出力側のシャフト17に連結された外部の回転軸を減速回転させることができる。
【0019】
図1,図2のように、固定部材1と回転部材2との間であって入力平歯車12側に設けられた転がり軸受3は、内輪3aと外輪3bと転動体3cとからなる。転がり軸受3の内輪3a及び外輪3bは軸受鋼等の金属材料からなり市販品においても、通常、焼入れ硬化処理が施されている。また、内輪3aの内周面、軸受3の回転軸線に直交する内輪3aの端面3d、外輪3bの外周面及び回転軸線に直交する外輪3bの端面は、軸受の精度を高精度化するために、市販品においても、通常、高精度に研摩加工が施されている。
【0020】
なお、図1,図2の軸受3は、1組のアンギュラ玉軸受を背面組合せにした例であるが、正面組合せにしてもよい。また、軸受は円すいころ軸受でも、深溝玉軸受等であってもよい。
【0021】
図2のように、シール部材5は、金属材料からなる断面L字状の第1補強金属環31と、第1補強金属環31に一体的に焼き付け固定されたゴム材料等からなる第1弾性体32と、第1補強金属環31の内周部に嵌着される金属材料からなる断面L字状の第2補強金属環33と、を備える。
【0022】
第1弾性体32は、固定部材1に嵌合される嵌合部32cと、回転部材2の回転面20に摺接する主リップ32bと、図1の減速機の外部からの塵挨を除去するために主リップ32bよりも外側に設けられ回転面20に摺接するダストリップ32aと、を備える。主リップ32bは、その外周側に設けられた線状のばね部材34により回転面20に対し押し付けられている。
【0023】
シール部材5は、更に、ゴム材料等の弾性体からなり第2補強金属環33の内周端に固着される補助リップ35を第2弾性体として備える。従って、減速機の内部から発生する歯車の摩耗粉が主リップ32bへ到達しないためシール寿命を向上できる。第2弾性体の補助リップ35は、軸受3の回転軸線に直交する内輪3aの端面3dに対し回転部材2の半径方向外方を向くようにして摺接している。従って、外歯歯車13、14の揺動運動等により発生する減速機内の作動圧を受けることができる。
【0024】
図1,図2のように固定部材1と回転部材2との間のシール部6に配置されたシール部材5によれば、主リップ32bが回転部材2の回転面20に摺接するとともに、補助リップ35が軸受3の内輪3aの回転軸線に直交する端面3dに摺接することで2段階に密封することにより、シール部材5のシール性を向上でき、回転部材2内に充填された潤滑剤の漏れを防止できる。
【0025】
また、本実施の形態では、図5の従来例と比べてシール部材5は単数であり少ないので、固定部材1と回転部材2等からなる回転体の軸方向長さを短く構成できるので、回転体を小型化でき、かかる回転体から構成される減速機を小型化できる。
【0026】
また、シール部材5の補助リップ35は、予め硬化処理および高精度加工された軸受3の内輪3aの端面3dに摺接することで潤滑剤漏れを効果的に防止できるとともに、補助リップ35が摺接する摺接部を特に加工する必要がなく、部品コスト的に有利となり、シール部材5のコスト減に寄与できる。
【0027】
また、補助リップ35は、回転部材2の半径方向外方を向くように形成されているため、回転部材2内(潤滑剤充填側)からの圧力によって開き難いようになっている。
【0028】
なお、シール部材5の第1補強金属環31と第2補強金属環33との間には別のシール部材を介在させてもよい。これにより、潤滑剤が補助リップ35を通過せず、第1補強金属環31と第2補強金属環33との間を通過して主リップへ到達するのを防ぐことができる。また、軸受4側は、蓋部材(図示省略)が結合されて密閉されるので、図2のようなシール部材を配置する必要がない。なお、蓋部材を結合しない場合は、軸受4側にもシール部材6を設けてもよい。
【0029】
以上のような図1,図2の減速機は、例えば、出力側のシャフト17が半導体製造装置等の真空チャンバの真空部分にさらされる場合、真空チャンバにおける高真空度の維持のために高いシール性が要求されるが、上述のように、単数のシール部材5により減速機内部の充填剤を効果的にシールし充填剤の漏れを防止でき、また大気側からの空気流を防止できるので、真空チャンバにおける高真空度の維持に寄与することができる。
【0030】
〈第2の実施の形態〉
【0031】
図3は図1のシール部に配置された第2の実施の形態のシール部材を示す図2と同様の部分拡大断面図である。
【0032】
第2の実施の形態では、シール部材40が図2と比べて第1弾性体の主リップの先端に補助リップを形成した点だけが異なるので、同様の構成部分には同じ符号を付けてその説明を省略する。第2の実施の形態のシール部材40は図1の減速機の固定部材1と回転部材2との間のシール部6に配置される。
【0033】
図3に示すように、シール部材40は第1弾性体32の主リップ32bの先端側に一体的に形成された補助リップ41を有する。補助リップ41は、図2と同様に、予め硬化処理および高精度加工された軸受3の内輪3aの回転軸線に直交する端面3dに摺接するようになっている。
【0034】
図3のシール部材40によれば、固定部材1と回転部材2との間のシール部6を、主リップ32bが回転面20に摺接しかつ補助リップ41が軸受3の端面3dに摺接することで2段階に密封することにより、シール部材40のシール性を向上でき、回転部材2内に充填された潤滑剤の漏れを防止でき、図1,図2と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、図3の補助リップ41は、図2と同様に回転部材2の半径方向外側を向くように形成され、回転部材2内からの圧力によって開き難いようになっている。また、補助リップ41は、軸受3の内輪3aの回転軸線に直交する端面3dに摺接できれば、どこに形成してもよく、例えば、第1弾性体32における主リップ32bの基部から形成してもよい。
【0036】
〈第3の実施の形態〉
【0037】
図4は図1のシール部に配置された第3の実施の形態のシール部材を示す図2と同様の部分拡大断面図である。
【0038】
第3の実施の形態では、シール部材45が図3と比べて第1弾性体の主リップの先端に形成した補助リップが半径方向内方を向くようになっている点だけが異なるので、同様の構成部分には同じ符号を付けてその説明を省略する。第3の実施の形態のシール部材45は図1の減速機の固定部材1と回転部材2との間のシール部6に配置される。また、内輪3aに対向する回転部材2の外周に形成したOリング溝2aには、Oリング10がはめ込まれている。従って、回転部材2と内輪3aとの間に隙間がある場合でも、減速機内の油や空気圧がオイルシール部材45の方に流出するのを防止している。
【0039】
図4に示すように、シール部材45は第1弾性体32の主リップ32bの先端側に一体的に形成された補助リップ46を有する。補助リップ46は、図2と同様に、予め硬化処理および高精度加工された軸受3の内輪3aの回転軸線に直交する端面3dに摺接するようになっている。補助リップ46は、回転部材2の半径方向内側を向くように形成されている。
【0040】
図4のシール部材45によれば、固定部材1と回転部材2との間のシール部6を、主リップ32bが回転面20に摺接しかつ補助リップ46が軸受3の端面3dに摺接することで2段階に密封することにより、シール部材40のシール性を向上でき、回転部材2内に充填された潤滑剤の漏れを防止でき、図1,図2と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、図4のように、シール部材45の補助リップ46を回転部材2の半径方向内側を向くように構成することは、回転部材2内の圧力が小さい場合に適用できる。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態においても、第3の実施の形態のように、軸受の内輪3aと回転部材2との間にOリングを設けてもよい。
【0042】
以上のように本発明を実施の形態により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本発明による固定部材、回転部材及びシール部材等から構成される回転体は、減速機のみならず、歯車式や摩擦式等の他の動力伝達装置に適用できることは勿論である。
【0043】
また、本実施の形態では図1の回転体の外側の部材を固定部とし内側の部材を回転部としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、図1において回転体の内側の部材を固定部とし外側の部材を回転部としてもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、圧力水や潤滑剤等に対するシール性を向上させかつ小型化可能な回転体及び減速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態による減速機の偏心揺動型減速機構を示す断面図である。
【図2】図1のシール部に配置したシール部材を示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は図1のシール部に配置された第2の実施の形態のシール部材を示す図2と同様の部分拡大断面図である。
【図4】図1のシール部に配置された第3の実施の形態のシール部材を示す図2と同様の部分拡大断面図である。
【図5】従来のシール部材からなる密封装置の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・固定部材(固定部)
2・・・回転部材(回転部)
3・・・転がり軸受
3a・・・内輪
3b・・・外輪
3d・・・端面
5・・・シール部材
6・・・シール部
20・・・回転部材の回転面
31・・・第1補強金属環
32・・・第1弾性体
33・・・第2補強金属環
32a・・・ダストリップ
32b・・・主リップ
35・・・補助リップ
40,45・・・シール部材
41,46・・・補助リップ
Claims (3)
- 固定部と、
前記固定部に対して回転する回転部と、
前記固定部と前記回転部との間に設けられた軸受と、
前記固定部と前記回転部との間を密封するように前記軸受の近傍に配置され主リップと補助リップとを有するシール部材と、を具備し、
前記シール部材は、前記主リップが前記回転部に摺接しかつ前記補助リップが前記軸受の回転軸線に直交する軸受端面に摺接するように構成されていることを特徴とする回転体。 - 前記補助リップが前記軸受の内輪の前記軸受端面に摺接していることを特徴とする請求項1に記載の回転体。
- 請求項1または2に記載の記載の回転体を備え、前記回転部が入力する回転力により減速しながら回転することを特徴とする減速機。
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