JP2004238585A - 芳香族ポリスルホンフィルム類 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は柔軟性、接着性に優れる芳香族ポリスルホンフィルム類に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
芳香族ポリスルホンは優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を有することから、工業的に広く用いられており、芳香族ポリスルホンからなるフィルム、シート等のフィルム類も公知である。しかしながらこのフィルム類は、柔軟性、接着性等がいまだ不十分であり、その用途が限定されるという問題点があった。
本発明の目的は、芳香族ポリスルホンを含み、その特性を生かしつつ、柔軟性、接着性に優れたフィルム類を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、(A)芳香族ポリスルホンおよび(B)該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を含有するフィルム類が柔軟性、接着性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分である芳香族ポリスルホンは、アリーレン単位、エーテル結合およびスルホン結合の三者が必須の構成単位であり、アリーレン単位がエーテルおよびスルホン結合とともに、無秩序にまたは規則正しく位置するポリアリーレン化合物として定義される。例えば、代表的な例として下記(1)〜(7)に示される繰り返し単位とするものが挙げられる。
【0005】
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
本発明に用いる芳香族ポリスルホンは、上記(1)〜(7)に示される繰り返し単位のうちの1種のみで構成されていても2種以上で構成されていてもよい。 これらは、例えば特公昭40−10067号、特公昭42−7799号、特公昭47−617号等記載の方法により製造が可能である
【0013】
中でも、式(1)〜〈7〉で示される繰り返し単位の合計が芳香族ポリスルホン(A)が有する全繰り返し単位に対して80mol%以上である芳香族ポリスルホンが好ましく、式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して80mol%以上有する芳香族ポリスルホンがより好ましい。
【0014】
本発明のフィルム類は、上記のような成分(A)の芳香族ポリスルホンと成分(B)の該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を含有するものであるが、該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基としては、成分(A)と反応性を有しておればよく、例えば、オキサゾリル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。好ましくはエポキシ基である。
【0015】
成分(B)である共重合体において、このような官能基を共重合体中に導入する方法としては特に限定されるものではなく、周知の方法で行うことができる。例えば共重合体の合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、共重合体に該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0016】
エポキシ基等は他の官能基の一部として存在していてもよく、そのような例としては例えばグリシジル基が挙げられる。
【0017】
かかる官能基を有する単量体としては、とりわけグリシジル基を含有する単量体が好ましく使用される。グリシジル基を含有する単量体としては、例えば下記一般式
(式中、Rは、エチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基を表し、Xは、−C(O)O−、−CH2−O−または
を表す。)
で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0018】
ここで、不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0019】
不飽和グリシジルエーテルとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が例示される。
具体的には、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0020】
上記の芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体(B)は、かかる不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%を含有することが好ましく、0.1〜20質量%含有することがより好ましい。
【0021】
また上記の芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体(B)は、ゴムであっても熱可塑性樹脂であっても良いし、ゴムと熱可塑性樹脂の混合物であっても良い。
【0022】
本発明の成分(B)としてのゴムとしては、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムや、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムも例示することができる。
【0023】
芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムとして好ましくは、一般式(8)〜(10)
CH2=CR7−C(O)−OR1 (8)
CH2=CR8−C(O)−OR2OR3 (9)
CH2=CR4H−C(O)−O(R5(C(O)O)nR6 (10)
(式中、R1は炭素原子数1〜18(好ましくは1〜8)のアルキル基または炭素原子数1〜18のシアノアルキル基を示す。R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。R4、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数3〜30のアルキレン基、R6は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体と芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を有する単量体を成分とするものである。
【0024】
上記一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、アクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができる。
。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、その一種を単独で使用してもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0025】
また、上記一般式(9)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えばメトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、メトキシエチルメタアクリレート、エトキシエチルメタアクリレート、ブトキシエチルメタアクリレート、エトキシプロピルメタアクリレート等があげられる。これらの1種あるいは2種以上を該アクリルゴムの成分として用いることができる。
【0026】
かかるアクリルゴムの構成成分として、必要に応じて上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
このような不飽和単量体の例としては、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0027】
芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましい。この場合好ましい構成成分比は、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40.0〜99.9質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体0.0〜30質量%である。該アクリルゴムの構成成分比が上記の範囲内であると、組成物の耐熱性、成形加工性などが良好であり好ましい。
【0028】
上記アクリルゴムの製法は特に限定するものではなく、例えば特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、あるいはWO95/04764などに記載されているような周知の重合法を用いることができ、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合あるいはバルク重合で製造することができる。
【0029】
中でも、エポキシ基を有するアクリルゴムである、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴム等が好ましい。
【0030】
得られるフィルム類の熱安定性や機械的性質を向上させるために、(メタ)アクリル酸エステル単位が40質量%をこえ96質量%未満、さらに好ましくは45〜70質量%、エチレン単位が3質量%以上50質量%未満、さらに好ましくは10〜49質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエーテル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。(代表的な重合方法:特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報などに記載された方法、例えばフリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる)
【0031】
また前記ビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムとしては、ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする構成単位と共役ジエン化合物を主体とする構成単位からなるブロック共重合体をエポキシ化して得られるゴム、または該ブロック共重合体の水添物をエポキシ化して得られるゴム等が挙げられる。
【0032】
ここで芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
【0033】
かかるビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいはその水添物は、周知の方法で製造することができ、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報等に記載されている。
本発明に用いる共重合体(B)としてのゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成されるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
一方、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つ共重合体(B)の具体例としてのエポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
【0035】
ここでエチレン系不飽和エステル化合物(c)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0036】
該エポキシ基含有エチレン共重合体としては、たとえばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0037】
該エポキシ基含有エチレン共重合体のメルトインデックス(以下、MFRということがある。JIS K6760、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜100g/10分、更に好ましくは2〜50g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが100g/10分を越えると組成物にした時の機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では(A)成分との相溶性が劣り好ましくない。
【0038】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、曲げ剛性率が10〜1300kg/cm2の範囲のものが好ましく、20〜1100kg/cm2のものがさらに好ましい。曲げ剛性率がこの範囲外であると組成物の成形加工性や機械的性質が不十分となる場合がある。
【0039】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法により製造される。また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造し得る。
【0040】
共重合体(B)の中では、エポキシ基を有するゴムが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴム等がより好ましい。
【0041】
また、共重合体(B)としては、本発明のフィルム類の熱安定性や柔軟性を良好にするために、その結晶の融解熱量が3J/g未満の共重合体であることが好ましく、また、共重合(B)のムーニー粘度が3〜70のものが好ましく、3〜30のものがさらに好ましく、4〜25のものが特に好ましい。
ここでいうムーニー粘度は、JIS K6300に準じて100℃ラージローターを用いて測定した値をいう。
【0042】
本発明における樹脂組成物の成分(A)の芳香族ポリスルホンと成分(B)の該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体との比率は、
成分(A)が通常99〜1質量%、好ましくは97〜5質量%、成分(B)が通常1〜99質量%、好ましくは3〜95質量%である。成分(A)が少なすぎると、該組成物の耐熱性が著しく低下する傾向があり、成分(A)が多すぎると該組成物の耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0043】
本発明における樹脂組成物においては、機構の詳細は不明ではあるが、該組成物の成分(A)と成分(B)との間で反応が惹起し、そのために該樹脂組成物の成形性が向上し、優れた物性を示すフィルム、シートが得られるものと考えられる。
【0044】
本発明における樹脂組成物を製造する方法としては各成分を、押出し機を使用して溶融混練する方法が好ましい。溶融混練により本発明における組成物を得るには、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。なかでも二軸の高混練機が好ましい。
【0045】
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
本発明における樹脂組成物は、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を樹脂組成物の製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0046】
本発明におけるフィルム類の製造方法としては、溶融混練されて得られた、成分(A)と成分(B)を含有する樹脂組成物を、口金(ダイ)を備えた押出し機に供給し溶融押し出しする方法が好ましく用いられる。本発明においては、ダイとしては、Tダイもしくは円筒スリットのダイが好ましく用いられる。
【0047】
ここで、Tダイを使用して成形加工を行なう装置は、該組成物を溶融して押し出す押出し機、押出し機から流動してきた樹脂を細長いスリットから押し出し、フラット状のフィルム、シート、シートに成形するTダイ、巻き取り装置などを基本構成とする成形加工装置である。
ここで押出し機としては、一軸、二軸押出し機のいずれも使用することができるが、一軸押出し機が好ましく用いられる。
かかる押出し機の、樹脂溶融時のシリンダーの設定温度は、組成物の組成によって適宜設定されるが、180〜350℃であることが好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。シリンダー設定温度が低すぎると該組成物の流動性が不十分となる傾向があり、また、高すぎると該組成物が分解する虞がある。Tダイとしては、その形状から、ストレートマニホールド型、フィッシュテール型、コートハンガー型などをあげることができ、目的、樹脂の性状に応じてそれらから選択、使用することができる。Tダイの温度は180〜350℃の範囲が好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。Tダイのスリット間隙は目的に応じて設定することができるが、0.1〜3mmの範囲が好ましく、0.2〜2mmの範囲がさらに好ましい。
【0048】
Tダイから押し出されたフラット状の樹脂は、必要に応じて冷却装置を使用して冷却した後巻取ることができる。ここで冷却装置としては、水槽を用いることもできるし、冷却エアを用いることもできる。
Tダイから押し出されたフラット状の樹脂は、必要に応じて圧着ロールを通した後、巻き取ることが出来る。
また、本発明においては、必要に応じて、Tダイから押し出された組成物をさらに二軸延伸してフィルム類を作成することができる。
【0049】
本発明にフィルム類は、上記の組成物を環状スリットのダイを設置した押出し機に供給し、該組成物を溶融して環状スリットのダイから円筒状に押し出し、この円筒内へエアなどを吹き込んで円筒を膨張させた後巻き取る、インフレーション成膜法により得ることもできる。ここで、該押出し機のシリンダー設定温度は180〜350℃の範囲が好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。 環状スリットの間隙は0.1〜5mmの範囲が好ましく、0.2〜2mmの範囲がさらに好ましい。 環状スリットの直径は20〜1000mmの範囲が好ましく、25〜600mmの範囲がさらに好ましい。環状スリットから押し出された円筒状の溶融樹脂フィルム、シートの内側から空気または不活性ガス、例えば窒素ガスなどを吹き込むことにより円筒を膨張させることが出来る。ここで好ましいブロー比は1.2〜20の範囲である。
【0050】
本発明のフィルム類の厚みは特に限定するものではないが、1〜1000μmの範囲が実用上好ましく、1〜500μmの範囲がさらに好ましい。
【0051】
本発明のフィルム類の表面には、必要に応じて表面処理を施すことができる。このような表面処理法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、赤外線処理、スパッタリング処理、溶剤処理、研磨処理などが挙げられる。これらの処理は、成形加工の過程で行なっても良いし、成形加工後のフィルム、シート、シートに対して行なっても良いが、成形加工の過程、特に巻き取り機の手前でかかる処理を施すのが好ましい。
【0052】
本発明のフィルム類は、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等の芳香族スルホンの特性を生かしつつ、柔軟性、接着性などに優れ、しかも安価であることから絶縁フィルム類、シーリング材料、医療用材料、フィルムコンデンサー、プリント基板などの電気・電子材料;包装材料などに適用可能である。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
成分(A)
成分(A)として、住友化学工業(株)製芳香族ポリスルホン、スミカエクセルPES,4100Pを使用した。
成分(B)
成分(B)として、住友化学工業(株)製、ボンドファースト2B(エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル=83/12/5 重量比、MFR(190℃)=3g/10min)を使用した。
上記成分(A)と成分(B)とを、各々、80℃で8時間乾燥した後、成分(A)/成分(B)=50/50(重量比)の割合で良く混合し、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm、L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度295℃、回転数300rpm、樹脂吐出量約1.5Kg/hrで、ベントで脱気しながら溶融混練を行なった。
得られた組成物のペレットを、ハーケ株式会社(独)製ポリラボシステムを使用し、その一軸押出し機はスクリュー径19.05mm、L/D=20であり、シリンダー設定温度200℃、スクリュー回転数40rpmで混練、押し出しを行なった。また、Tダイはスリット間隙0.5mm、ダイ幅100mmのものを使用し、Tダイの設定温度は280℃であった。Tダイから出た樹脂は3本ロールの巻き取り機を用いて、ロール加熱温度60℃で、0.9m/minの速度で巻き取った。
【0055】
得られたシートは、厚さ270μmで、柔軟性があり、色調もシート全体が白色で色むらもなく、表面にぶつや皺も認められず、外観は良好であった。また、得られたシートを、(株)オリエンテック製引っ張り試験機、テンシロンを使用して、チャック間距離30mm,引っ張り速度30mm/min,室温で引っ張り試験を行なったところ、破断応力は、MD 3.0MPa,TD 2.7MPa、破断伸度は、 MD 172%,TD 151%であった。また、引っ張り弾性率は、MD 22.3MPa,TD 25.8MPaであった。
得られたシートを2枚重ね合わせ、温度100℃、圧力98MPaで90秒間圧着を行ってラミネートフィルムを作成したのち、JIS K6854 に準拠して、180°剥離試験法により剥離性の評価を行ったところ、シート間での剥離は発生せず、シートの接着性は非常に良好であった。
【0056】
比較例1
市販のポリエーテルスルホン100%のフィルムである(住友ベークライト製 商品名 スミライト FS−1300)は、厚み50μmであり、その 破断応力は、MD 72MPa,TD 74MPa、破断伸度は、 MD 12%,TD 12%であった。また、引っ張り弾性率は、MD 2050MPa,TD 1960MPaであった。
このようにポリエーテルスルホン100%のフィルムは破断伸度が小さく柔軟性に劣る。
【0057】
【発明の効果】
本発明のフィルム類は、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性等のポリスルホンの特性を生かしつつ、柔軟性、接着性等に優れ、しかも安価であり、幅広く産業界で適用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は柔軟性、接着性に優れる芳香族ポリスルホンフィルム類に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
芳香族ポリスルホンは優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を有することから、工業的に広く用いられており、芳香族ポリスルホンからなるフィルム、シート等のフィルム類も公知である。しかしながらこのフィルム類は、柔軟性、接着性等がいまだ不十分であり、その用途が限定されるという問題点があった。
本発明の目的は、芳香族ポリスルホンを含み、その特性を生かしつつ、柔軟性、接着性に優れたフィルム類を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、(A)芳香族ポリスルホンおよび(B)該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を含有するフィルム類が柔軟性、接着性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分である芳香族ポリスルホンは、アリーレン単位、エーテル結合およびスルホン結合の三者が必須の構成単位であり、アリーレン単位がエーテルおよびスルホン結合とともに、無秩序にまたは規則正しく位置するポリアリーレン化合物として定義される。例えば、代表的な例として下記(1)〜(7)に示される繰り返し単位とするものが挙げられる。
【0005】
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
本発明に用いる芳香族ポリスルホンは、上記(1)〜(7)に示される繰り返し単位のうちの1種のみで構成されていても2種以上で構成されていてもよい。 これらは、例えば特公昭40−10067号、特公昭42−7799号、特公昭47−617号等記載の方法により製造が可能である
【0013】
中でも、式(1)〜〈7〉で示される繰り返し単位の合計が芳香族ポリスルホン(A)が有する全繰り返し単位に対して80mol%以上である芳香族ポリスルホンが好ましく、式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して80mol%以上有する芳香族ポリスルホンがより好ましい。
【0014】
本発明のフィルム類は、上記のような成分(A)の芳香族ポリスルホンと成分(B)の該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を含有するものであるが、該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基としては、成分(A)と反応性を有しておればよく、例えば、オキサゾリル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。好ましくはエポキシ基である。
【0015】
成分(B)である共重合体において、このような官能基を共重合体中に導入する方法としては特に限定されるものではなく、周知の方法で行うことができる。例えば共重合体の合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、共重合体に該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0016】
エポキシ基等は他の官能基の一部として存在していてもよく、そのような例としては例えばグリシジル基が挙げられる。
【0017】
かかる官能基を有する単量体としては、とりわけグリシジル基を含有する単量体が好ましく使用される。グリシジル基を含有する単量体としては、例えば下記一般式
(式中、Rは、エチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基を表し、Xは、−C(O)O−、−CH2−O−または
を表す。)
で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0018】
ここで、不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0019】
不飽和グリシジルエーテルとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が例示される。
具体的には、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0020】
上記の芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体(B)は、かかる不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%を含有することが好ましく、0.1〜20質量%含有することがより好ましい。
【0021】
また上記の芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体(B)は、ゴムであっても熱可塑性樹脂であっても良いし、ゴムと熱可塑性樹脂の混合物であっても良い。
【0022】
本発明の成分(B)としてのゴムとしては、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムや、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムも例示することができる。
【0023】
芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムとして好ましくは、一般式(8)〜(10)
CH2=CR7−C(O)−OR1 (8)
CH2=CR8−C(O)−OR2OR3 (9)
CH2=CR4H−C(O)−O(R5(C(O)O)nR6 (10)
(式中、R1は炭素原子数1〜18(好ましくは1〜8)のアルキル基または炭素原子数1〜18のシアノアルキル基を示す。R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。R4、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数3〜30のアルキレン基、R6は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体と芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を有する単量体を成分とするものである。
【0024】
上記一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、アクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができる。
。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、その一種を単独で使用してもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0025】
また、上記一般式(9)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えばメトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、メトキシエチルメタアクリレート、エトキシエチルメタアクリレート、ブトキシエチルメタアクリレート、エトキシプロピルメタアクリレート等があげられる。これらの1種あるいは2種以上を該アクリルゴムの成分として用いることができる。
【0026】
かかるアクリルゴムの構成成分として、必要に応じて上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
このような不飽和単量体の例としては、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0027】
芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましい。この場合好ましい構成成分比は、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40.0〜99.9質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、上記の一般式(8)〜(10)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体0.0〜30質量%である。該アクリルゴムの構成成分比が上記の範囲内であると、組成物の耐熱性、成形加工性などが良好であり好ましい。
【0028】
上記アクリルゴムの製法は特に限定するものではなく、例えば特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、あるいはWO95/04764などに記載されているような周知の重合法を用いることができ、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合あるいはバルク重合で製造することができる。
【0029】
中でも、エポキシ基を有するアクリルゴムである、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴム等が好ましい。
【0030】
得られるフィルム類の熱安定性や機械的性質を向上させるために、(メタ)アクリル酸エステル単位が40質量%をこえ96質量%未満、さらに好ましくは45〜70質量%、エチレン単位が3質量%以上50質量%未満、さらに好ましくは10〜49質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエーテル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。(代表的な重合方法:特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報などに記載された方法、例えばフリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる)
【0031】
また前記ビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムとしては、ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする構成単位と共役ジエン化合物を主体とする構成単位からなるブロック共重合体をエポキシ化して得られるゴム、または該ブロック共重合体の水添物をエポキシ化して得られるゴム等が挙げられる。
【0032】
ここで芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
【0033】
かかるビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいはその水添物は、周知の方法で製造することができ、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報等に記載されている。
本発明に用いる共重合体(B)としてのゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成されるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
一方、芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持つ共重合体(B)の具体例としてのエポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
【0035】
ここでエチレン系不飽和エステル化合物(c)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0036】
該エポキシ基含有エチレン共重合体としては、たとえばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0037】
該エポキシ基含有エチレン共重合体のメルトインデックス(以下、MFRということがある。JIS K6760、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜100g/10分、更に好ましくは2〜50g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが100g/10分を越えると組成物にした時の機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では(A)成分との相溶性が劣り好ましくない。
【0038】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、曲げ剛性率が10〜1300kg/cm2の範囲のものが好ましく、20〜1100kg/cm2のものがさらに好ましい。曲げ剛性率がこの範囲外であると組成物の成形加工性や機械的性質が不十分となる場合がある。
【0039】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法により製造される。また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造し得る。
【0040】
共重合体(B)の中では、エポキシ基を有するゴムが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴム等がより好ましい。
【0041】
また、共重合体(B)としては、本発明のフィルム類の熱安定性や柔軟性を良好にするために、その結晶の融解熱量が3J/g未満の共重合体であることが好ましく、また、共重合(B)のムーニー粘度が3〜70のものが好ましく、3〜30のものがさらに好ましく、4〜25のものが特に好ましい。
ここでいうムーニー粘度は、JIS K6300に準じて100℃ラージローターを用いて測定した値をいう。
【0042】
本発明における樹脂組成物の成分(A)の芳香族ポリスルホンと成分(B)の該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体との比率は、
成分(A)が通常99〜1質量%、好ましくは97〜5質量%、成分(B)が通常1〜99質量%、好ましくは3〜95質量%である。成分(A)が少なすぎると、該組成物の耐熱性が著しく低下する傾向があり、成分(A)が多すぎると該組成物の耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0043】
本発明における樹脂組成物においては、機構の詳細は不明ではあるが、該組成物の成分(A)と成分(B)との間で反応が惹起し、そのために該樹脂組成物の成形性が向上し、優れた物性を示すフィルム、シートが得られるものと考えられる。
【0044】
本発明における樹脂組成物を製造する方法としては各成分を、押出し機を使用して溶融混練する方法が好ましい。溶融混練により本発明における組成物を得るには、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。なかでも二軸の高混練機が好ましい。
【0045】
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
本発明における樹脂組成物は、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を樹脂組成物の製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0046】
本発明におけるフィルム類の製造方法としては、溶融混練されて得られた、成分(A)と成分(B)を含有する樹脂組成物を、口金(ダイ)を備えた押出し機に供給し溶融押し出しする方法が好ましく用いられる。本発明においては、ダイとしては、Tダイもしくは円筒スリットのダイが好ましく用いられる。
【0047】
ここで、Tダイを使用して成形加工を行なう装置は、該組成物を溶融して押し出す押出し機、押出し機から流動してきた樹脂を細長いスリットから押し出し、フラット状のフィルム、シート、シートに成形するTダイ、巻き取り装置などを基本構成とする成形加工装置である。
ここで押出し機としては、一軸、二軸押出し機のいずれも使用することができるが、一軸押出し機が好ましく用いられる。
かかる押出し機の、樹脂溶融時のシリンダーの設定温度は、組成物の組成によって適宜設定されるが、180〜350℃であることが好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。シリンダー設定温度が低すぎると該組成物の流動性が不十分となる傾向があり、また、高すぎると該組成物が分解する虞がある。Tダイとしては、その形状から、ストレートマニホールド型、フィッシュテール型、コートハンガー型などをあげることができ、目的、樹脂の性状に応じてそれらから選択、使用することができる。Tダイの温度は180〜350℃の範囲が好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。Tダイのスリット間隙は目的に応じて設定することができるが、0.1〜3mmの範囲が好ましく、0.2〜2mmの範囲がさらに好ましい。
【0048】
Tダイから押し出されたフラット状の樹脂は、必要に応じて冷却装置を使用して冷却した後巻取ることができる。ここで冷却装置としては、水槽を用いることもできるし、冷却エアを用いることもできる。
Tダイから押し出されたフラット状の樹脂は、必要に応じて圧着ロールを通した後、巻き取ることが出来る。
また、本発明においては、必要に応じて、Tダイから押し出された組成物をさらに二軸延伸してフィルム類を作成することができる。
【0049】
本発明にフィルム類は、上記の組成物を環状スリットのダイを設置した押出し機に供給し、該組成物を溶融して環状スリットのダイから円筒状に押し出し、この円筒内へエアなどを吹き込んで円筒を膨張させた後巻き取る、インフレーション成膜法により得ることもできる。ここで、該押出し機のシリンダー設定温度は180〜350℃の範囲が好ましく、190〜320℃の範囲がさらに好ましい。 環状スリットの間隙は0.1〜5mmの範囲が好ましく、0.2〜2mmの範囲がさらに好ましい。 環状スリットの直径は20〜1000mmの範囲が好ましく、25〜600mmの範囲がさらに好ましい。環状スリットから押し出された円筒状の溶融樹脂フィルム、シートの内側から空気または不活性ガス、例えば窒素ガスなどを吹き込むことにより円筒を膨張させることが出来る。ここで好ましいブロー比は1.2〜20の範囲である。
【0050】
本発明のフィルム類の厚みは特に限定するものではないが、1〜1000μmの範囲が実用上好ましく、1〜500μmの範囲がさらに好ましい。
【0051】
本発明のフィルム類の表面には、必要に応じて表面処理を施すことができる。このような表面処理法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、赤外線処理、スパッタリング処理、溶剤処理、研磨処理などが挙げられる。これらの処理は、成形加工の過程で行なっても良いし、成形加工後のフィルム、シート、シートに対して行なっても良いが、成形加工の過程、特に巻き取り機の手前でかかる処理を施すのが好ましい。
【0052】
本発明のフィルム類は、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等の芳香族スルホンの特性を生かしつつ、柔軟性、接着性などに優れ、しかも安価であることから絶縁フィルム類、シーリング材料、医療用材料、フィルムコンデンサー、プリント基板などの電気・電子材料;包装材料などに適用可能である。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
成分(A)
成分(A)として、住友化学工業(株)製芳香族ポリスルホン、スミカエクセルPES,4100Pを使用した。
成分(B)
成分(B)として、住友化学工業(株)製、ボンドファースト2B(エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル=83/12/5 重量比、MFR(190℃)=3g/10min)を使用した。
上記成分(A)と成分(B)とを、各々、80℃で8時間乾燥した後、成分(A)/成分(B)=50/50(重量比)の割合で良く混合し、テクノベル(株)製二軸押出し機、TZW−15−30MG(スクリュー径 15mm、L/D=30)を使用し、シリンダー設定温度295℃、回転数300rpm、樹脂吐出量約1.5Kg/hrで、ベントで脱気しながら溶融混練を行なった。
得られた組成物のペレットを、ハーケ株式会社(独)製ポリラボシステムを使用し、その一軸押出し機はスクリュー径19.05mm、L/D=20であり、シリンダー設定温度200℃、スクリュー回転数40rpmで混練、押し出しを行なった。また、Tダイはスリット間隙0.5mm、ダイ幅100mmのものを使用し、Tダイの設定温度は280℃であった。Tダイから出た樹脂は3本ロールの巻き取り機を用いて、ロール加熱温度60℃で、0.9m/minの速度で巻き取った。
【0055】
得られたシートは、厚さ270μmで、柔軟性があり、色調もシート全体が白色で色むらもなく、表面にぶつや皺も認められず、外観は良好であった。また、得られたシートを、(株)オリエンテック製引っ張り試験機、テンシロンを使用して、チャック間距離30mm,引っ張り速度30mm/min,室温で引っ張り試験を行なったところ、破断応力は、MD 3.0MPa,TD 2.7MPa、破断伸度は、 MD 172%,TD 151%であった。また、引っ張り弾性率は、MD 22.3MPa,TD 25.8MPaであった。
得られたシートを2枚重ね合わせ、温度100℃、圧力98MPaで90秒間圧着を行ってラミネートフィルムを作成したのち、JIS K6854 に準拠して、180°剥離試験法により剥離性の評価を行ったところ、シート間での剥離は発生せず、シートの接着性は非常に良好であった。
【0056】
比較例1
市販のポリエーテルスルホン100%のフィルムである(住友ベークライト製 商品名 スミライト FS−1300)は、厚み50μmであり、その 破断応力は、MD 72MPa,TD 74MPa、破断伸度は、 MD 12%,TD 12%であった。また、引っ張り弾性率は、MD 2050MPa,TD 1960MPaであった。
このようにポリエーテルスルホン100%のフィルムは破断伸度が小さく柔軟性に劣る。
【0057】
【発明の効果】
本発明のフィルム類は、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性等のポリスルホンの特性を生かしつつ、柔軟性、接着性等に優れ、しかも安価であり、幅広く産業界で適用することができる。
Claims (16)
- (A)芳香族ポリスルホンおよび(B)該芳香族ポリスルホンと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を含有することを特徴とするフィルム類。
- 共重合体(B)における官能基が、エポキシ基である請求項1記載のフィルム類。
- 共重合体(B)が、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体である請求項1又は2記載のフィルム類。
- 共重合体(B)の融解熱量が3J/g未満である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム類。
- 共重合体(B)のムーニー粘度が、3〜70の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム類。
- 共重合体(B)が、エポキシ基を有するゴムである請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム類。
- エポキシ基を有するゴムが、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなる請求項6記載のフィルム類。
- (メタ)アクリル酸エステルが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む請求項7記載のフィルム類。
- 共重合体(B)が、(a)エチレン単位を60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位を0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体である請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム類。
- 絶縁用であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類を含むことを特徴とするシーリング材。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類を含むことを特徴とする医療用材料。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類を含むことを特徴とするフィルムコンデンサー。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類を含むことを特徴とするプリント基板。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム類を含むことを特徴とする包装材料。
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