JP2004237659A - 焼成インク画像形成用シートおよび焼成インク画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼成インク画像が可変情報であっても、容易に形成することができ、しかも、焼成インク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷を防止できる焼成インク画像形成用シートを提供する。
【解決手段】焼成インク画像形成用シートは、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられ、焼失性ポリマーフィルムからなり、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有していることを特徴とする。焼失性ポリマーフィルムは、熱分解温度が450℃以下のポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成されていてもよい。焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面の反対側の面に、接着層を有していることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】焼成インク画像形成用シートは、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられ、焼失性ポリマーフィルムからなり、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有していることを特徴とする。焼失性ポリマーフィルムは、熱分解温度が450℃以下のポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成されていてもよい。焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面の反対側の面に、接着層を有していることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられる焼成インク画像形成用シート、および該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車で用いられているガラス(フロントガラス等)などの各種ガラス製品では、サンドブラストやエナメルガラスを用いた印刷焼付け方法、また、エナメルガラス焼付け後のレーザーエッチング処理方法などを利用して、個別管理表示を行っている。このような従来の方法では、例えば、サンドブラスト、エナメルガラスの印刷焼付け方法では、可変情報を入力することが容易ではなく、一方、レーザーエッチング方法では、強化ガラスに傷をつけてしまうことが問題となっていた。
【0003】
また、焼成によりパターンを固定する必要のあるパターン形成方法として、従来、無機化合物及びガラスフリットを含むインクを、基体上又は基体中に均一に保持したパターン形成用シートが知られている(特許文献1〜特許文献2参照)。これらは、多品種少量生産工程における管理用ラベル等として使用されている。例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ホウ珪酸鉛系ガラスフリット、アクリル樹脂系バインダーおよびブチルセロソルブアセテートの混合物から構成されるフレキシブルシート(インク受容層)に、アクリル樹脂系粘着剤からなる粘着剤層を積層したインク受容型焼成用フレキシブルシートを得て、該フレキシブルシートのインク受容層表面に、黒色顔料、ホウ珪酸ガラスフリット、エチルセルロース系バインダーおよびターピネオールの混合物から構成されるインクで、バーコードパターンを形成し、さらに、この構成物を、粘着剤層を介して、ガラス製品に貼り付け、450℃で30分間焼き鈍しを行うことにより、ガラス製品に、白色の基材を介して、黒色のバーコードパターンを、強いコントラストで、形成できることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
国際公開第88/07937号パンフレット
【特許文献2】
特開平8−337042号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のようなインク受容型焼成用フレキシブルシートのインク受容層には、酸化ジルコニウム(ZrO2)やホウ珪酸鉛系ガラスフリット等の無機成分が含まれており、これらの無機成分は、焼成後も、ガラス製品の表面に残存することになり(上記の白色基材に相当している)、例えば、透明なガラス板等に、パターンを形成する場合では、前記インク受容型焼成用フレキシブルシートが貼付した部分全体の透明性が損なわれることになる。従って、透明なガラス製部材等にパターン形成を行う場合は、その透明性を損なわないように、文字等から構成されるパターン形成箇所などの必要最小限度の部分のみの焼結体が残ることが望ましい。
【0006】
従って、本発明の目的は、焼成処理されたインク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで形成することができ、しかも、焼成処理されたインク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷を防止することができる焼成インク画像形成用シート、および、該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、透明性を有するガラス製部材に対しても、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の透明性を保持して、ガラス製部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる焼成インク画像形成用シート、および、該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の透明性を保持して、表面に焼成処理されたインク画像が形成されたガラス製部材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、熱処理工程で完全に焼失させることが可能な易分解性ポリマーにより形成された焼失性ポリマーフィルムからなる焼成インク画像形成用シートを用い、該焼成インク画像形成用シートの表面に、耐熱性着色剤を含有するインクによる熱転写インクリボンを用いて熱転写方法により熱転写印字を行い、常温でガラス板に重ね合わせた後、熱処理工程を経て焼成させると、焼成処理されたインク画像(「焼成インク画像」と称する場合がある)が可変情報であっても、容易に且つ低コストでガラス板の表面に焼成インク画像を形成することができ、しかも、エッチング等を行っていないため、ガラス板の表面への損傷は防止されており、さらにまた、前記熱処理工程で、焼失性ポリマーフィルムが焼失し、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像のみを焼成によりガラス板表面に形成することができるため、焼成インク画像が形成されていない非画線部では、ガラス板の透明性が確保されていることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられる焼成インク画像形成用シートであって、焼失性ポリマーフィルムからなり、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有していることを特徴とする焼成インク画像形成用シートを提供する。
【0009】
前記焼失性ポリマーフィルムは、熱分解温度が450℃以下のポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成されていることが好ましい。また、焼失性ポリマーフィルムは、TGA(Themogravimetric Analysis;熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下であることが好ましい。
【0010】
また、焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面の反対側の面に、接着層を有していてもよい。焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像が形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、また、無機系部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成する方法であって、下記工程A〜Cを具備することを特徴とする焼成インク画像形成方法を提供する。
工程A:前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成する工程
工程B:焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像が形成された焼成インク画像形成用シートを、無機系部材に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された面の反対側の面が接触するように重ね合わせる工程
工程C:焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材を高温加熱処理する工程
【0012】
本発明は、さらに、前記焼成インク画像形成用シートを用いて、表面に、焼成処理されたインク画像が形成されていることを特徴とするガラス製部材を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
(焼成インク画像形成用シート)
本発明の焼成インク画像形成用シートは、焼失性ポリマーフィルムにより構成されているとともに、前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有している。前記焼成インク画像形成用シートは、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いることができる。該焼成処理されたインク画像は、例えば、ガラス製部材などの無機系部材の表面に形成することができる。
【0014】
焼失性ポリマーフィルムとしては、加熱(特に、焼成の際の熱処理時の加熱)により容易に焼失されるフィルムであれば特に制限されない。焼失性ポリマーフィルムとしては、例えば、加熱(特に、焼成の際の熱処理時の加熱)により容易に分解される易分解性ポリマーを主成分とし、必要に応じて添加剤などを含む樹脂組成物により形成することができる。このような易分解性ポリマーの熱分解温度としては、焼成の際の熱処理温度(焼成温度)より低いことが好ましく、例えば、450℃以下(例えば、250〜450℃)、好ましくは270〜430℃、さらに好ましくは300〜420℃程度の範囲から選択することができる。なお、本発明において、易分解性ポリマーの熱分解温度は、TGA(熱重量分析)により測定することができ、その測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。易分解性ポリマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
具体的には、易分解性ポリマーとしては、加熱により容易に分解されるポリマーであれば特に制限されないが、例えば、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系ポリマー;エチルセルロース等のセルロース;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等のポリアルキレングリコール系ポリマー;ポリビニルブチラール;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニルなどを好適に用いることができる。易分解性ポリマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、易分解性ポリマーとしては、セラミックのバインダーポリマーとして一般的に使用されているポリマーを用いることができる。
【0016】
焼失性ポリマーフィルムとしては、有機成分のみにより構成されていることが重要である。従って、焼失性ポリマーフィルムが添加剤を含んでいる場合は、添加剤も有機成分であることが重要である。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、粘着付与剤、架橋剤、着色剤などが挙げられる。
【0017】
また、焼失性ポリマーフィルムとしては、焼成残渣成分が少ないことが重要であり、例えば、TGA(熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下(好ましくは0〜1重量%)であることが望ましい。なお、本発明において、焼成残渣成分をTGAにより測定する際の測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。
【0018】
焼失性ポリマーフィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、2〜60μm(好ましくは5〜30μm)程度の範囲から選択することができる。焼失性ポリマーフィルムの厚みが2μm未満であると、焼成インク画像形成用シートの取り扱い性が低下し、一方、60μmを超えると、焼成時にポリマー成分の流動変形が生じやすくなり、焼成インク画像の形成(パターンの変形)、いわゆる「印字踊り」が生じやすくなる。
【0019】
焼失性ポリマーフィルムは、公知のフィルム形成方法(例えば、押出成形方法、射出成形方法、カレンダー成形方法、圧縮成形方法、塗布成形方法など)を利用して形成することができる。なお、焼失性ポリマーフィルムは、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0020】
焼失性ポリマーフィルムは、前述のように、一方の面が、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっている。焼失性ポリマーフィルムの一方の面は、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっていれば、例えば、印刷性を向上させるために、公知の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理など)が施されていてもよく、有機成分のみによる層が積層されていてもよい。
【0021】
なお、焼失性ポリマーフィルムは、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を、熱転写方法により、形成することが可能な構成を有していればよく、すなわち、実際に、焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像を形成する際に、熱転写方法が利用されておらず、他のインク画像形成方法(例えば、スクリーン印刷方法等の公知の印刷方法)が利用されていてもよい。
【0022】
本発明では、焼失性ポリマーフィルムの他方の面(インク画像を形成することが可能な面に対して反対側の面)には、有機成分のみからなる層(有機成分層)が設けられていてもよい。このような有機成分層としては、接着層(特に、感圧接着層)が好適である。このように、焼失性ポリマーフィルムの他方の面に接着層を設けることにより、ガラス製部材などの無機系部材の表面に、焼成処理されたインク画像を形成する際に、焼成インク画像形成用シートを、前記接着層を利用してガラス製部材の表面に貼付(特に、仮接着)させて固定させることができる。なお、焼失性ポリマーフィルムの他方の面に接着層が設けられていない場合は、両面粘着テープ又はシートや接着剤等を用いた接着手段などの公知の接着手段を利用して、焼成インク画像形成用シートを、前記接着層を利用して無機系部材(ガラス製部材など)の表面に貼付(特に、仮接着)させて固定させることができる。また、このような接着手段を用いずに、焼成インク画像形成用シートを使用することも可能である。
【0023】
有機成分層において、接着層を形成する接着剤としては、特に制限されず、公知の接着剤から1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。接着層は、単層、積層のいずれの形態を有していてもよい。このような接着層としては、特に感圧接着層が好適である。該感圧接着層を形成する感圧接着剤(粘着剤)としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の感圧接着剤から1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。感圧接着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が好ましく、粘着特性や焼失性などの観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0024】
前記アクリル系粘着剤は、アクリル系ポリマーを主成分又はベースポリマーとして含有している。該アクリル系ポリマーでは、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル]が主モノマー成分として用いられており、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルに対して共重合性を有している単量体成分(共重合性モノマー)が共重合性モノマー成分として用いられている。アクリル系ポリマーを得るための重合方法としては、アゾ系化合物や過酸化物などの重合開始剤を用いて行う溶液重合方法、エマルジョン重合方法や塊状重合方法、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法などを採用することができる。なお、アクリル系ポリマーの主モノマー成分としての(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルの割合としては、モノマー成分全量に対して、50重量%以上であることが重要であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが含まれる。また、共重合性モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有共重合性モノマー又はその無水物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有共重合性モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有共重合性モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有共重合性モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有共重合性モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアミノ基含有共重合性モノマーなどの各種の官能基(特に極性基)を有している共重合性モノマー(官能基含有共重合性モノマー)の他、スチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン系モノマーなどが含まれる。
【0026】
なお、接着層(感圧接着層など)は、構成成分が全て有機成分であることが重要である。従って、感圧接着剤等の接着剤が添加剤を含んでいる場合は、添加剤も有機成分であることが重要である。なお、接着剤に含まれる添加剤としては、例えば、架橋剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の各種安定剤、可塑剤、粘着付与剤、帯電防止剤、発泡剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
接着層も、前記焼失性ポリマーフィルムと同様に、焼成残渣成分が少ないことが重要であり、例えば、TGA(熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下(好ましくは0〜1重量%)であることが望ましい。なお、TGA測定による測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。
【0028】
なお、接着層の無機系部材(ガラス製部材など)に対する接着力については、特に制限されず、接着後のハンドリング時に接着層が剥がれない程度の接着力を有していればよく、仮接着程度の大きさの接着力であってもよい。
【0029】
接着層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば、50μm以下、好ましくは20μm以下である。接着層は、仮接着性能を確保するだけの接着力を有していれば、その厚みは薄いほどよい。これは、厚みが薄いほど、焼成時に悪影響を及ぼさないためである。
【0030】
接着層は公知の方法により形成することができる。例えば、感圧接着層の場合、感圧接着剤を、前記焼失性ポリマーフィルム上に塗布する方法、適当な剥離ライナー上に感圧接着剤を塗布して感圧接着層を形成し、これを前記焼失性ポリマーフィルム上に転写(移着)する方法などが挙げられる。感圧接着剤などの接着剤の塗布に際しては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを利用することができる。
【0031】
本発明の焼成インク画像形成用シートとしては、焼失性ポリマーフィルムと、該焼失性ポリマーフィルムの片面に形成された接着層(特に、感圧接着層)とを有しており、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの接着層に対して反対側の面が、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっている構成を有していることが好ましい。この際、前記接着層が感圧接着層である場合、ガラス製部材などの無機系部材の表面に焼成インク画像形成用シートを貼着させるまでの間、感圧接着層は剥離ライナーにより保護されていることが好ましい。例えば、焼成インク画像形成用シートは、焼失性ポリマーフィルムの片面に感圧接着層、剥離ライナーがこの順で積層された積層体が、ロール状に巻回された形態を有していてもよく、前記積層体(シート状の積層体)が積層された形態を有していてもよい。
【0032】
なお、感圧接着層上に積層された剥離ライナーは、焼成インク画像形成用シートを無機系部材(ガラス製部材など)に貼付する(仮接着する)際に剥離される。剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。具体的には、剥離ライナーとしては、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材の表面に形成された剥離ライナーや、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム、剥離ライナー用の基材の表面に、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材による剥離層を形成した構成の剥離ライナーなどが挙げられる。
【0033】
(焼成インク画像形成方法)
本発明の焼成インク画像形成用シートは、ガラス製部材などの無機系部材の表面に、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いることができる。具体的には、下記工程A〜Cを具備する焼成インク画像形成方法を利用して、無機系部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる。
工程A:前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成する工程
工程B:工程Aにより得られた、焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像が形成された焼成インク画像形成用シートを、無機系部材に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された面の反対側の面が接触するように重ね合わせる工程
工程C:工程Bにより得られた、焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材を高温加熱処理する工程
【0034】
[工程A]
工程Aでは、前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの表面に、耐熱性着色剤を含有するインク(「耐熱性インク」と称する場合がある)によるインク画像を形成している。
【0035】
(インク)
焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、インク画像を形成する際に用いられるインク(耐熱性インク)としては、耐熱性着色剤を少なくとも含有していることが重要である。このような耐熱性着色剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記耐熱性着色剤としては、無機顔料を好適に用いることができる。無機顔料としては、カーボン粒子等の非金属系無機顔料を用いることも出来るが、耐熱性の観点から、金属系無機顔料が好適である。金属系無機顔料としては、例えば、金属化合物(例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫化物、金属の炭酸塩、金属の硫酸塩、金属の硝酸塩など)による顔料が挙げられる。このような金属化合物は、2種以上の金属元素を含有する金属化合物(例えば、合金、複合金属酸化物、複合金属硫化物など)であってもよい。
【0037】
無機顔料において、金属化合物(金属単体や合金などを含む)を構成する金属元素としては、例えば、クロム元素(Cr)、コバルト元素(Co)、鉄元素(Fe)、マンガン元素(Mn)、銅元素(Cu)、アルミニウム元素(Al)、チタン元素(Ti)、亜鉛元素(Zn)、カルシウム元素(Ca)、バリウム元素(Ba)、スズ元素(Sn)、金元素(Au)、銀元素(Ag)、白金元素(Pt)、パラジウム元素(Pd)、ニッケル元素(Ni)、バナジウム元素(V)、ジルコニウム元素(Zr)、カドミウム元素(Cd)、ケイ素元素(Si)、タングステン元素(W)、モリブデン元素(Mo)などが挙げられる。
【0038】
具体的には、金属化合物としては、例えば、酸化クロム(Cr2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)や、これらの成分の混合体又は複合体(Cr2O3・CoO・Fe2O3・MnO2)等の黒色顔料などが挙げられる。
【0039】
無機顔料としては、セラミック化が可能な粉末(セラミック粉末)を用いることができる。
【0040】
なお、無機顔料等の耐熱性着色剤の色は、特に制限されず、例えば、黒色や白色のみならず、有色(黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色の他、金色や銀色等の金属光沢色など)であってもよい。また、耐熱性着色剤は、蛍光性や蓄光性を有していてもよい。
【0041】
耐熱性インクには、耐熱性着色剤とともにガラス成分が含有されていてもよい。ガラス成分を併用することにより、工程Cにおける高温加熱処理により焼成処理されたインク画像の、無機系部材の表面への融着性を高めることができる。このようなガラス成分としては、例えば、鉛ガラス系ガラス成分、ホウ珪酸鉛ガラス系ガラス成分、ホウ珪酸ガラス系ガラス成分、ソーダガラス系ガラス成分、珪酸ガラス系ガラス成分、石英ガラス系ガラス成分などが挙げられる。このようなガラス成分では、構成成分として、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属化合物;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等のアルミニウム系化合物;酸化ケイ素等のケイ素化合物;ホウ酸などのホウ素化合物;酸化亜鉛等の亜鉛系化合物;酸化鉛等の鉛系化合物の他、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ビスマスなどの各種成分が用いられており、また、硼砂、長石、カオリン等も用いることができる。
【0042】
前記ガラス成分は、いわゆる「ガラスフリット」として用いることができる。ガラス成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
このようなガラス成分の使用量(耐熱性着色剤に対する割合)としては、着色度合いの観点から、耐熱性着色剤(特に、無機顔料)100重量部に対して1000重量部以下(例えば、1〜1000重量部)程度の範囲から適宜選択することができる。また、インクの定着性を確保する観点からは、ガラス成分の使用量としては、耐熱性着色剤(特に、無機顔料)100重量部に対して300重量部以下(例えば、10〜300重量部)程度であることが望ましい。
【0044】
また、前記耐熱性インクでは、バインダー成分が用いられていてもよい。該バインダー成分としては、樹脂系バインダー成分やワックス系バインダー成分等の有機バインダー成分を用いることができる。このような有機系バインダー成分は、工程Cにおける高温加熱処理時に、蒸発や焼却により焼失する。なお、バインダー成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。バインダー成分の使用量は特に制限されない。
【0045】
バインダー成分において、樹脂系バインダー成分には、例えば、シリコーン系樹脂、炭化水素系樹脂、石油系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アセチル系樹脂などが含まれる。また、ワックス系バインダー成分には、例えば、パラフィンワックスや、カルナバワックスなどが含まれる。さらにまた、バインダー成分としては、高級脂肪酸類、高級アルコール類、高級ケトン類、高級脂肪酸エステルアミド類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸エステル類、ヒマシ油などを用いることもできる。
【0046】
耐熱性インクには、必要に応じて、各種添加剤(例えば、分散剤、柔軟剤、溶剤、発泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、繊維、粘度調整剤、染料など)が含まれていてもよい。
【0047】
従って、耐熱性インクは、耐熱性着色剤と、必要に応じてガラス成分、バインダー成分や添加剤などとを混合して調製することができ、この際、バインダー成分中に耐熱性着色剤等の固形分が均一に又はほぼ均一に分散されていることが好ましい。
【0048】
(インク画像の形成方法)
前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの表面(片面)に耐熱性インクによるインク画像を形成する方法としては、特に制限されず、スクリーン印刷方法等の公知の印刷方法を用いることができるが、容易に、可変情報を印刷できることから、転写方法(特に、熱転写方法)を好適に用いることができる。
【0049】
前記熱転写方法としては、前記耐熱性インクを主成分とするインク層を有する熱転写用リボン(熱転写用インクリボン)を用いる方法が好ましい。熱転写用インクリボンは、耐熱性インクを、基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート製フィルム等のプラスチックフィルム)上に、公知の塗布装置(例えば、グラビア塗工機など)を用いて、乾燥後の厚みが所定の厚みとなるように塗布し乾燥させてインク層を形成させた後、所定の幅に切断することにより作製することができる。
【0050】
熱転写用インクリボンにおけるインク層の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、15μm以下(例えば、1〜15μm)、好ましくは10μm以下(例えば、3〜10μm)程度の範囲から選択することができる。該インク層の厚みが薄すぎると、焼成インク画像の隠蔽性が低下し、一方、厚すぎると熱転写時の印字(インク画像)の解像度が低下する。
【0051】
なお、耐熱性インクによる熱転写用インクリボンを用いた熱転写に際しては、公知の熱転写プリンターを用いることができる。
【0052】
焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上に形成されたインク画像としては、文字情報、図形情報などの如何なる画像情報を有するインク画像であってもよい。インク画像としては、例えば、食器やタイル等の陶磁器製品又はガラス製品の各種模様や文字;浴槽等のほうろう製品の各種模様や文字;無機系部材を用いた各種製品のバーコード、製造会社名称、製品名称、マーク;IC回路等の回路パターンなどが挙げられる。従って、前記焼成インク画像形成用シートは、ラベルとしての機能を発揮させることができる。
【0053】
[工程B]
工程Bでは、工程Aにより得られた、表面にインク画像が形成された焼失性ポリマーフィルムを有する焼成インク画像形成用シートを、被着体としての無機系部材(ガラス製部材など)の表面に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された表面に対して反対側の面が接触するように重ね合わせており、この際、焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された表面に対して反対側の面に感圧接着層が形成されている場合は、無機系部材(ガラス製部材など)の所定の部位に焼成インク画像形成用シートを重ね合わせた後は、加圧(圧着)により、感圧接着層を無機系部材に接着(仮接着)させることができる。この加圧手段としては、特に制限されず、例えば、手で圧着させる方法、加圧ローラ等を用いた各種機械的手段などを利用することができる。
【0054】
(無機系部材)
無機系部材としては、無機系材による各種部材であれば特に制限されず、例えば、陶磁器製部材(陶器製食器、陶器製花瓶、陶器製便器等の各種陶磁器製品の他、タイルなど)や、陶磁器製部材の焼成前の部材(未焼成の陶磁器等の湿潤体)、金属製部材、半導体セラミック基板などが挙げられるが、ガラス製部材を好適に用いることができる。ガラス製部材としては、ガラス材料による各種部材であれば特に制限されず、例えば、ディスプレイ面(ブラウン管ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等)、ガラス製板、ガラス製食器、ガラスビン、ガラス製花瓶などの各種ガラス製製品や、ほうろう製部材(浴槽など)などが挙げられる。
【0055】
本発明では、ガラス製部材などの無機系部材の表面(特に、焼成インク画像を形成する面)の形状は、特に制限されず、平面状や凹凸状のいずれであってもよい。また、ガラス製部材などの無機系部材は、板状の形態や容器状の形態などのいずれの形態を有していてもよい。無機系部材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
[工程C]
工程Cでは、工程Bにより得られた、焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材(ガラス製部材など)を高温加熱処理している。この高温加熱処理により、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に焼成処理されたインク画像(焼成インク画像)が形成される。具体的には、高温加熱時に、インク中および焼成インク画像形成用シート中の有機成分が蒸発や焼却等により消失し、一方、インク中の無機成分(例えば、無機顔料やガラス成分など)が焼結して、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に焼成インク画像が形成される。
【0057】
このように、本発明の無機系部材、特にガラス製部材は、その表面に、焼成インク画像が、前記焼成インク画像形成用シートを用いて形成されている。
【0058】
従って、本発明では、焼成インク画像が可変情報であっても、熱転写方法により、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上に容易に且つ低コストでインク画像を形成することができるので、ガラス製部材などの無機系部材の表面に容易に且つ低コストで焼成インク画像を形成することができる。そのため、無機系部材(ガラス製部材など)が少量多品種の製品であっても、低コストで焼成インク画像を形成させることができる。
【0059】
もちろん、無機系部材が、例えば、ガラス製部材である場合、ガラス製部材の表面にエッチング処理を行っていないので、焼成インク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷が防止されている。
【0060】
しかも、高温加熱処理による焼成処理後、無機系部材(ガラス製部材など)の表面において、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたが、焼成インク画像が形成されていない非画線部には、焼成インク画像形成用シートの焼失により何も積層されていないので、該非画線部は、本来の無機系部材(ガラス製部材など)の表面そのものとなっている。従って、無機系部材が、優れた透明性を有するガラス製部材であっても、前記非画線部は、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部、および焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部ともに、本来のガラス製部材の表面そのものであるので、本来のガラス製部材の表面そのものの透明性や風合いを保持しており、高い透明性および違和感のない風合いが発揮されている。
【0061】
また、インク中にガラス成分(ガラスフリットなど)が含まれていると、耐熱性着色剤を包埋した状態でガラス成分が焼結するので、焼成インク画像をより一層強固に焼き付けることができる。そのため、耐熱性、耐水性、耐光性や耐久性等が優れ、保存安定性が極めて良好である。
【0062】
さらにまた、耐熱性着色剤を含有するインクとしては従来と同様のインクを用いることができ、また、高温加熱処理も従来と同様の装置で行うことができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の焼成インク画像形成用シートによれば、焼成処理されたインク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで形成することができ、しかも、焼成処理されたインク画像の形成に際して、無機系部材がガラス製部材である場合、ガラス製部材の表面への損傷を防止することができる。従って、臨機な情報発行に対応して、無機系部材(ガラス製部材など)の熱処理工程を経て、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に、視認性が優れた焼成インク画像を形成することが可能である。
【0064】
また、透明性を有するガラス製部材に対しても、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の優れた透明性を保持して、ガラス製部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる。
【0065】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
ポリブチルメタクリレート(重量平均分子量:約16万)を押し出し成形して、厚さが20μmのシート(ポリブチルメタクリレート製シート)を得た。このポリブチルメタクリレート製シートは焼失性を有しており、焼失性ポリマーフィルムとして用いる。前記ポリブチルメタクリレート製シートの熱分解温度は300℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は0.5重量%であった。
【0067】
ラウリルメタクリレート:100重量部、メチルアクリレート:5重量部、酢酸エチル:125重量部、およびアゾビスイソブチルニトリル:1重量部の混合分散液を60℃で8時間、溶液重合を行って、アクリル系重合体を含む混合液を得た。この混合液に、アクリル系重合体:100重量部に対して、多官能性イソシアネート化合物(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物)を2重量部の割合で添加して、粘着剤液を調製した。この粘着剤液を、ドクターブレード法にて、一方の面をシリコン系剥離処理剤で処理したグラシン紙(厚さ:70μm)からなる剥離ライナー(セパレーター)上に、均一に塗工した後、乾燥させて、粘着層(乾燥後の厚み:4μm)を得た。
【0068】
前記セパレーター上の粘着層を、前記ポリブチルメタクリレート製シートに重ね合わせて圧着することにより、粘着層をポリブチルメタクリレート製シート上に転写して、焼成インク画像形成用シート(パターン形成用シート)を得た。
【0069】
さらに、バインダー成分としてのパラフィンワックス:30重量部、カルナバワックス:40重量部、およびエチレンビニルアセテート系樹脂:30重量部を含むキシレン溶液に、耐熱性着色剤としての平均粒径が0.5μmの黒色粉末(Cr2O3・CoO・Fe2O3・MnO2からなる黒色粉末):100重量部、および鉛ガラス系ガラスフリット:100重量部を加えて均一に分散するように混合し、その均一分散液をグラビア塗工機にて、厚さが6μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(PETフィルム)上に均一に塗工した後、乾燥させて、熱転写用インクリボン(パターン形成用インクリボン;インク層の厚み:6μm)を得た。
【0070】
前記焼成インク画像形成用シートと、前記熱転写用インクリボンとを用い、且つ熱転写プリンターを用いて印字を行い、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。
【0071】
(実施例2)
ポリブチルメタクリレートに代えて、ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量:約30万)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして焼失性ポリマーフィルムを作製し、さらに実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。焼失性ポリマーフィルムとして用いたポリメチルメタクリレート製シートの熱分解温度は320℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は0.9重量%であった。
【0072】
(実施例3)
ポリブチルメタクリレートに代えて、エチルセルロースを用いたこと以外は、実施例1と同様にして焼失性ポリマーフィルムを作製し、さらに実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。焼失性ポリマーフィルムとして用いたエチルセルロース製シートの熱分解温度は420℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は1.5重量%であった。
【0073】
(比較例1)
ポリブチルメタクリレート(重量平均分子量:約16万):100重量部に対して
鉛ガラスを20重量部の割合で添加した樹脂組成物を押し出し成形して、ガラス成分を含有し且つ厚さが20μmのシート(ガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シート)を得た。
【0074】
ポリブチルメタクリレート製シート(焼失性ポリマーフィルム)に代えて、ガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートのガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シート上にインク画像(パターン)を形成した。
【0075】
(評価)
一方の面に形成されたインク画像を有する焼成インク画像形成用シートを、12mm×60mmの大きさに切断した後、セパレーターを剥がし、露出した粘着層をガラス板に貼着させて仮接着し、電気炉を用いて、以下の焼成条件で焼成を行ったところ、ガラス板上に焼結により固着したインク画像(セラミックパターン;焼成インク画像)が形成された。
(焼成条件)
室温から680℃まで、50℃/分の割合で昇温させた後、680℃で10分間保持し、その後、100℃/分の割合で室温まで冷却する。
【0076】
前記焼成により得られた、ガラス板上のインク画像(焼成インク画像)について、焼成インク画像とガラス板との密着性を爪で焼成インク画像の端部を強く擦ることにより官能的に評価し、さらにまた、焼成インク画像の視認性、焼成インク画像の印字踊り防止性を目視により官能的に評価したところ、表1に示す結果が得られた。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より明らかなように、実施例に係る焼成インク画像形成用シートを用いると、焼成インク画像のガラス製部材に対する密着性、視認性、印字踊り防止性が良好であることが確認される。
【0079】
特に、熱転写方法を利用して、焼成インク画像形成用シートにインク画像を形成することができるので、焼成インク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで焼成インク画像を形成することができる。もちろん、ガラス製部材の表面にエッチング処理を行っていないので、焼成インク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷は生じていない。
【0080】
また、ガラス板上の焼成インク画像が形成されていない非画線部では、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部、および焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部ともに、ガラス板上に何も形成されていないので、該非画線部の透明性や風合い性も優れており、非画線部には全く違和感が生じていない。もちろん、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部と、焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部との間の境界線も見られない。
【0081】
一方、比較例に係る焼成インク画像形成用シートでは、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部に、ガラス成分による皮膜が形成されており、この非画線部での透明性が低くなっている。これにより、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部と、焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部との間の境界線が見られ、非画線部の風合い性が低下し、違和感が生じている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられる焼成インク画像形成用シート、および該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車で用いられているガラス(フロントガラス等)などの各種ガラス製品では、サンドブラストやエナメルガラスを用いた印刷焼付け方法、また、エナメルガラス焼付け後のレーザーエッチング処理方法などを利用して、個別管理表示を行っている。このような従来の方法では、例えば、サンドブラスト、エナメルガラスの印刷焼付け方法では、可変情報を入力することが容易ではなく、一方、レーザーエッチング方法では、強化ガラスに傷をつけてしまうことが問題となっていた。
【0003】
また、焼成によりパターンを固定する必要のあるパターン形成方法として、従来、無機化合物及びガラスフリットを含むインクを、基体上又は基体中に均一に保持したパターン形成用シートが知られている(特許文献1〜特許文献2参照)。これらは、多品種少量生産工程における管理用ラベル等として使用されている。例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ホウ珪酸鉛系ガラスフリット、アクリル樹脂系バインダーおよびブチルセロソルブアセテートの混合物から構成されるフレキシブルシート(インク受容層)に、アクリル樹脂系粘着剤からなる粘着剤層を積層したインク受容型焼成用フレキシブルシートを得て、該フレキシブルシートのインク受容層表面に、黒色顔料、ホウ珪酸ガラスフリット、エチルセルロース系バインダーおよびターピネオールの混合物から構成されるインクで、バーコードパターンを形成し、さらに、この構成物を、粘着剤層を介して、ガラス製品に貼り付け、450℃で30分間焼き鈍しを行うことにより、ガラス製品に、白色の基材を介して、黒色のバーコードパターンを、強いコントラストで、形成できることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
国際公開第88/07937号パンフレット
【特許文献2】
特開平8−337042号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のようなインク受容型焼成用フレキシブルシートのインク受容層には、酸化ジルコニウム(ZrO2)やホウ珪酸鉛系ガラスフリット等の無機成分が含まれており、これらの無機成分は、焼成後も、ガラス製品の表面に残存することになり(上記の白色基材に相当している)、例えば、透明なガラス板等に、パターンを形成する場合では、前記インク受容型焼成用フレキシブルシートが貼付した部分全体の透明性が損なわれることになる。従って、透明なガラス製部材等にパターン形成を行う場合は、その透明性を損なわないように、文字等から構成されるパターン形成箇所などの必要最小限度の部分のみの焼結体が残ることが望ましい。
【0006】
従って、本発明の目的は、焼成処理されたインク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで形成することができ、しかも、焼成処理されたインク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷を防止することができる焼成インク画像形成用シート、および、該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、透明性を有するガラス製部材に対しても、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の透明性を保持して、ガラス製部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる焼成インク画像形成用シート、および、該焼成インク画像形成用シートが、焼成処理されたインク画像の形成の際に用いられた焼成インク画像形成方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の透明性を保持して、表面に焼成処理されたインク画像が形成されたガラス製部材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、熱処理工程で完全に焼失させることが可能な易分解性ポリマーにより形成された焼失性ポリマーフィルムからなる焼成インク画像形成用シートを用い、該焼成インク画像形成用シートの表面に、耐熱性着色剤を含有するインクによる熱転写インクリボンを用いて熱転写方法により熱転写印字を行い、常温でガラス板に重ね合わせた後、熱処理工程を経て焼成させると、焼成処理されたインク画像(「焼成インク画像」と称する場合がある)が可変情報であっても、容易に且つ低コストでガラス板の表面に焼成インク画像を形成することができ、しかも、エッチング等を行っていないため、ガラス板の表面への損傷は防止されており、さらにまた、前記熱処理工程で、焼失性ポリマーフィルムが焼失し、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像のみを焼成によりガラス板表面に形成することができるため、焼成インク画像が形成されていない非画線部では、ガラス板の透明性が確保されていることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられる焼成インク画像形成用シートであって、焼失性ポリマーフィルムからなり、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有していることを特徴とする焼成インク画像形成用シートを提供する。
【0009】
前記焼失性ポリマーフィルムは、熱分解温度が450℃以下のポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成されていることが好ましい。また、焼失性ポリマーフィルムは、TGA(Themogravimetric Analysis;熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下であることが好ましい。
【0010】
また、焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面の反対側の面に、接着層を有していてもよい。焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像が形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、また、無機系部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成する方法であって、下記工程A〜Cを具備することを特徴とする焼成インク画像形成方法を提供する。
工程A:前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成する工程
工程B:焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像が形成された焼成インク画像形成用シートを、無機系部材に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された面の反対側の面が接触するように重ね合わせる工程
工程C:焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材を高温加熱処理する工程
【0012】
本発明は、さらに、前記焼成インク画像形成用シートを用いて、表面に、焼成処理されたインク画像が形成されていることを特徴とするガラス製部材を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
(焼成インク画像形成用シート)
本発明の焼成インク画像形成用シートは、焼失性ポリマーフィルムにより構成されているとともに、前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有している。前記焼成インク画像形成用シートは、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いることができる。該焼成処理されたインク画像は、例えば、ガラス製部材などの無機系部材の表面に形成することができる。
【0014】
焼失性ポリマーフィルムとしては、加熱(特に、焼成の際の熱処理時の加熱)により容易に焼失されるフィルムであれば特に制限されない。焼失性ポリマーフィルムとしては、例えば、加熱(特に、焼成の際の熱処理時の加熱)により容易に分解される易分解性ポリマーを主成分とし、必要に応じて添加剤などを含む樹脂組成物により形成することができる。このような易分解性ポリマーの熱分解温度としては、焼成の際の熱処理温度(焼成温度)より低いことが好ましく、例えば、450℃以下(例えば、250〜450℃)、好ましくは270〜430℃、さらに好ましくは300〜420℃程度の範囲から選択することができる。なお、本発明において、易分解性ポリマーの熱分解温度は、TGA(熱重量分析)により測定することができ、その測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。易分解性ポリマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
具体的には、易分解性ポリマーとしては、加熱により容易に分解されるポリマーであれば特に制限されないが、例えば、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系ポリマー;エチルセルロース等のセルロース;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等のポリアルキレングリコール系ポリマー;ポリビニルブチラール;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニルなどを好適に用いることができる。易分解性ポリマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、易分解性ポリマーとしては、セラミックのバインダーポリマーとして一般的に使用されているポリマーを用いることができる。
【0016】
焼失性ポリマーフィルムとしては、有機成分のみにより構成されていることが重要である。従って、焼失性ポリマーフィルムが添加剤を含んでいる場合は、添加剤も有機成分であることが重要である。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、粘着付与剤、架橋剤、着色剤などが挙げられる。
【0017】
また、焼失性ポリマーフィルムとしては、焼成残渣成分が少ないことが重要であり、例えば、TGA(熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下(好ましくは0〜1重量%)であることが望ましい。なお、本発明において、焼成残渣成分をTGAにより測定する際の測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。
【0018】
焼失性ポリマーフィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、2〜60μm(好ましくは5〜30μm)程度の範囲から選択することができる。焼失性ポリマーフィルムの厚みが2μm未満であると、焼成インク画像形成用シートの取り扱い性が低下し、一方、60μmを超えると、焼成時にポリマー成分の流動変形が生じやすくなり、焼成インク画像の形成(パターンの変形)、いわゆる「印字踊り」が生じやすくなる。
【0019】
焼失性ポリマーフィルムは、公知のフィルム形成方法(例えば、押出成形方法、射出成形方法、カレンダー成形方法、圧縮成形方法、塗布成形方法など)を利用して形成することができる。なお、焼失性ポリマーフィルムは、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0020】
焼失性ポリマーフィルムは、前述のように、一方の面が、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっている。焼失性ポリマーフィルムの一方の面は、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっていれば、例えば、印刷性を向上させるために、公知の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理など)が施されていてもよく、有機成分のみによる層が積層されていてもよい。
【0021】
なお、焼失性ポリマーフィルムは、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を、熱転写方法により、形成することが可能な構成を有していればよく、すなわち、実際に、焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像を形成する際に、熱転写方法が利用されておらず、他のインク画像形成方法(例えば、スクリーン印刷方法等の公知の印刷方法)が利用されていてもよい。
【0022】
本発明では、焼失性ポリマーフィルムの他方の面(インク画像を形成することが可能な面に対して反対側の面)には、有機成分のみからなる層(有機成分層)が設けられていてもよい。このような有機成分層としては、接着層(特に、感圧接着層)が好適である。このように、焼失性ポリマーフィルムの他方の面に接着層を設けることにより、ガラス製部材などの無機系部材の表面に、焼成処理されたインク画像を形成する際に、焼成インク画像形成用シートを、前記接着層を利用してガラス製部材の表面に貼付(特に、仮接着)させて固定させることができる。なお、焼失性ポリマーフィルムの他方の面に接着層が設けられていない場合は、両面粘着テープ又はシートや接着剤等を用いた接着手段などの公知の接着手段を利用して、焼成インク画像形成用シートを、前記接着層を利用して無機系部材(ガラス製部材など)の表面に貼付(特に、仮接着)させて固定させることができる。また、このような接着手段を用いずに、焼成インク画像形成用シートを使用することも可能である。
【0023】
有機成分層において、接着層を形成する接着剤としては、特に制限されず、公知の接着剤から1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。接着層は、単層、積層のいずれの形態を有していてもよい。このような接着層としては、特に感圧接着層が好適である。該感圧接着層を形成する感圧接着剤(粘着剤)としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の感圧接着剤から1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。感圧接着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が好ましく、粘着特性や焼失性などの観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0024】
前記アクリル系粘着剤は、アクリル系ポリマーを主成分又はベースポリマーとして含有している。該アクリル系ポリマーでは、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル]が主モノマー成分として用いられており、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルに対して共重合性を有している単量体成分(共重合性モノマー)が共重合性モノマー成分として用いられている。アクリル系ポリマーを得るための重合方法としては、アゾ系化合物や過酸化物などの重合開始剤を用いて行う溶液重合方法、エマルジョン重合方法や塊状重合方法、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法などを採用することができる。なお、アクリル系ポリマーの主モノマー成分としての(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルの割合としては、モノマー成分全量に対して、50重量%以上であることが重要であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが含まれる。また、共重合性モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有共重合性モノマー又はその無水物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有共重合性モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有共重合性モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有共重合性モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有共重合性モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアミノ基含有共重合性モノマーなどの各種の官能基(特に極性基)を有している共重合性モノマー(官能基含有共重合性モノマー)の他、スチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン系モノマーなどが含まれる。
【0026】
なお、接着層(感圧接着層など)は、構成成分が全て有機成分であることが重要である。従って、感圧接着剤等の接着剤が添加剤を含んでいる場合は、添加剤も有機成分であることが重要である。なお、接着剤に含まれる添加剤としては、例えば、架橋剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の各種安定剤、可塑剤、粘着付与剤、帯電防止剤、発泡剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
接着層も、前記焼失性ポリマーフィルムと同様に、焼成残渣成分が少ないことが重要であり、例えば、TGA(熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下(好ましくは0〜1重量%)であることが望ましい。なお、TGA測定による測定条件としては、「大気中、昇温速度:10℃/分」の条件を採用することができる。
【0028】
なお、接着層の無機系部材(ガラス製部材など)に対する接着力については、特に制限されず、接着後のハンドリング時に接着層が剥がれない程度の接着力を有していればよく、仮接着程度の大きさの接着力であってもよい。
【0029】
接着層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば、50μm以下、好ましくは20μm以下である。接着層は、仮接着性能を確保するだけの接着力を有していれば、その厚みは薄いほどよい。これは、厚みが薄いほど、焼成時に悪影響を及ぼさないためである。
【0030】
接着層は公知の方法により形成することができる。例えば、感圧接着層の場合、感圧接着剤を、前記焼失性ポリマーフィルム上に塗布する方法、適当な剥離ライナー上に感圧接着剤を塗布して感圧接着層を形成し、これを前記焼失性ポリマーフィルム上に転写(移着)する方法などが挙げられる。感圧接着剤などの接着剤の塗布に際しては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを利用することができる。
【0031】
本発明の焼成インク画像形成用シートとしては、焼失性ポリマーフィルムと、該焼失性ポリマーフィルムの片面に形成された接着層(特に、感圧接着層)とを有しており、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの接着層に対して反対側の面が、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能となっている構成を有していることが好ましい。この際、前記接着層が感圧接着層である場合、ガラス製部材などの無機系部材の表面に焼成インク画像形成用シートを貼着させるまでの間、感圧接着層は剥離ライナーにより保護されていることが好ましい。例えば、焼成インク画像形成用シートは、焼失性ポリマーフィルムの片面に感圧接着層、剥離ライナーがこの順で積層された積層体が、ロール状に巻回された形態を有していてもよく、前記積層体(シート状の積層体)が積層された形態を有していてもよい。
【0032】
なお、感圧接着層上に積層された剥離ライナーは、焼成インク画像形成用シートを無機系部材(ガラス製部材など)に貼付する(仮接着する)際に剥離される。剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。具体的には、剥離ライナーとしては、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材の表面に形成された剥離ライナーや、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム、剥離ライナー用の基材の表面に、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材による剥離層を形成した構成の剥離ライナーなどが挙げられる。
【0033】
(焼成インク画像形成方法)
本発明の焼成インク画像形成用シートは、ガラス製部材などの無機系部材の表面に、焼成処理されたインク画像を形成する際に用いることができる。具体的には、下記工程A〜Cを具備する焼成インク画像形成方法を利用して、無機系部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる。
工程A:前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成する工程
工程B:工程Aにより得られた、焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像が形成された焼成インク画像形成用シートを、無機系部材に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された面の反対側の面が接触するように重ね合わせる工程
工程C:工程Bにより得られた、焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材を高温加熱処理する工程
【0034】
[工程A]
工程Aでは、前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの表面に、耐熱性着色剤を含有するインク(「耐熱性インク」と称する場合がある)によるインク画像を形成している。
【0035】
(インク)
焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、インク画像を形成する際に用いられるインク(耐熱性インク)としては、耐熱性着色剤を少なくとも含有していることが重要である。このような耐熱性着色剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記耐熱性着色剤としては、無機顔料を好適に用いることができる。無機顔料としては、カーボン粒子等の非金属系無機顔料を用いることも出来るが、耐熱性の観点から、金属系無機顔料が好適である。金属系無機顔料としては、例えば、金属化合物(例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫化物、金属の炭酸塩、金属の硫酸塩、金属の硝酸塩など)による顔料が挙げられる。このような金属化合物は、2種以上の金属元素を含有する金属化合物(例えば、合金、複合金属酸化物、複合金属硫化物など)であってもよい。
【0037】
無機顔料において、金属化合物(金属単体や合金などを含む)を構成する金属元素としては、例えば、クロム元素(Cr)、コバルト元素(Co)、鉄元素(Fe)、マンガン元素(Mn)、銅元素(Cu)、アルミニウム元素(Al)、チタン元素(Ti)、亜鉛元素(Zn)、カルシウム元素(Ca)、バリウム元素(Ba)、スズ元素(Sn)、金元素(Au)、銀元素(Ag)、白金元素(Pt)、パラジウム元素(Pd)、ニッケル元素(Ni)、バナジウム元素(V)、ジルコニウム元素(Zr)、カドミウム元素(Cd)、ケイ素元素(Si)、タングステン元素(W)、モリブデン元素(Mo)などが挙げられる。
【0038】
具体的には、金属化合物としては、例えば、酸化クロム(Cr2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)や、これらの成分の混合体又は複合体(Cr2O3・CoO・Fe2O3・MnO2)等の黒色顔料などが挙げられる。
【0039】
無機顔料としては、セラミック化が可能な粉末(セラミック粉末)を用いることができる。
【0040】
なお、無機顔料等の耐熱性着色剤の色は、特に制限されず、例えば、黒色や白色のみならず、有色(黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色の他、金色や銀色等の金属光沢色など)であってもよい。また、耐熱性着色剤は、蛍光性や蓄光性を有していてもよい。
【0041】
耐熱性インクには、耐熱性着色剤とともにガラス成分が含有されていてもよい。ガラス成分を併用することにより、工程Cにおける高温加熱処理により焼成処理されたインク画像の、無機系部材の表面への融着性を高めることができる。このようなガラス成分としては、例えば、鉛ガラス系ガラス成分、ホウ珪酸鉛ガラス系ガラス成分、ホウ珪酸ガラス系ガラス成分、ソーダガラス系ガラス成分、珪酸ガラス系ガラス成分、石英ガラス系ガラス成分などが挙げられる。このようなガラス成分では、構成成分として、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属化合物;酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等のアルミニウム系化合物;酸化ケイ素等のケイ素化合物;ホウ酸などのホウ素化合物;酸化亜鉛等の亜鉛系化合物;酸化鉛等の鉛系化合物の他、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ビスマスなどの各種成分が用いられており、また、硼砂、長石、カオリン等も用いることができる。
【0042】
前記ガラス成分は、いわゆる「ガラスフリット」として用いることができる。ガラス成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
このようなガラス成分の使用量(耐熱性着色剤に対する割合)としては、着色度合いの観点から、耐熱性着色剤(特に、無機顔料)100重量部に対して1000重量部以下(例えば、1〜1000重量部)程度の範囲から適宜選択することができる。また、インクの定着性を確保する観点からは、ガラス成分の使用量としては、耐熱性着色剤(特に、無機顔料)100重量部に対して300重量部以下(例えば、10〜300重量部)程度であることが望ましい。
【0044】
また、前記耐熱性インクでは、バインダー成分が用いられていてもよい。該バインダー成分としては、樹脂系バインダー成分やワックス系バインダー成分等の有機バインダー成分を用いることができる。このような有機系バインダー成分は、工程Cにおける高温加熱処理時に、蒸発や焼却により焼失する。なお、バインダー成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。バインダー成分の使用量は特に制限されない。
【0045】
バインダー成分において、樹脂系バインダー成分には、例えば、シリコーン系樹脂、炭化水素系樹脂、石油系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アセチル系樹脂などが含まれる。また、ワックス系バインダー成分には、例えば、パラフィンワックスや、カルナバワックスなどが含まれる。さらにまた、バインダー成分としては、高級脂肪酸類、高級アルコール類、高級ケトン類、高級脂肪酸エステルアミド類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸エステル類、ヒマシ油などを用いることもできる。
【0046】
耐熱性インクには、必要に応じて、各種添加剤(例えば、分散剤、柔軟剤、溶剤、発泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、繊維、粘度調整剤、染料など)が含まれていてもよい。
【0047】
従って、耐熱性インクは、耐熱性着色剤と、必要に応じてガラス成分、バインダー成分や添加剤などとを混合して調製することができ、この際、バインダー成分中に耐熱性着色剤等の固形分が均一に又はほぼ均一に分散されていることが好ましい。
【0048】
(インク画像の形成方法)
前記焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの表面(片面)に耐熱性インクによるインク画像を形成する方法としては、特に制限されず、スクリーン印刷方法等の公知の印刷方法を用いることができるが、容易に、可変情報を印刷できることから、転写方法(特に、熱転写方法)を好適に用いることができる。
【0049】
前記熱転写方法としては、前記耐熱性インクを主成分とするインク層を有する熱転写用リボン(熱転写用インクリボン)を用いる方法が好ましい。熱転写用インクリボンは、耐熱性インクを、基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート製フィルム等のプラスチックフィルム)上に、公知の塗布装置(例えば、グラビア塗工機など)を用いて、乾燥後の厚みが所定の厚みとなるように塗布し乾燥させてインク層を形成させた後、所定の幅に切断することにより作製することができる。
【0050】
熱転写用インクリボンにおけるインク層の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、15μm以下(例えば、1〜15μm)、好ましくは10μm以下(例えば、3〜10μm)程度の範囲から選択することができる。該インク層の厚みが薄すぎると、焼成インク画像の隠蔽性が低下し、一方、厚すぎると熱転写時の印字(インク画像)の解像度が低下する。
【0051】
なお、耐熱性インクによる熱転写用インクリボンを用いた熱転写に際しては、公知の熱転写プリンターを用いることができる。
【0052】
焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上に形成されたインク画像としては、文字情報、図形情報などの如何なる画像情報を有するインク画像であってもよい。インク画像としては、例えば、食器やタイル等の陶磁器製品又はガラス製品の各種模様や文字;浴槽等のほうろう製品の各種模様や文字;無機系部材を用いた各種製品のバーコード、製造会社名称、製品名称、マーク;IC回路等の回路パターンなどが挙げられる。従って、前記焼成インク画像形成用シートは、ラベルとしての機能を発揮させることができる。
【0053】
[工程B]
工程Bでは、工程Aにより得られた、表面にインク画像が形成された焼失性ポリマーフィルムを有する焼成インク画像形成用シートを、被着体としての無機系部材(ガラス製部材など)の表面に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された表面に対して反対側の面が接触するように重ね合わせており、この際、焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された表面に対して反対側の面に感圧接着層が形成されている場合は、無機系部材(ガラス製部材など)の所定の部位に焼成インク画像形成用シートを重ね合わせた後は、加圧(圧着)により、感圧接着層を無機系部材に接着(仮接着)させることができる。この加圧手段としては、特に制限されず、例えば、手で圧着させる方法、加圧ローラ等を用いた各種機械的手段などを利用することができる。
【0054】
(無機系部材)
無機系部材としては、無機系材による各種部材であれば特に制限されず、例えば、陶磁器製部材(陶器製食器、陶器製花瓶、陶器製便器等の各種陶磁器製品の他、タイルなど)や、陶磁器製部材の焼成前の部材(未焼成の陶磁器等の湿潤体)、金属製部材、半導体セラミック基板などが挙げられるが、ガラス製部材を好適に用いることができる。ガラス製部材としては、ガラス材料による各種部材であれば特に制限されず、例えば、ディスプレイ面(ブラウン管ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等)、ガラス製板、ガラス製食器、ガラスビン、ガラス製花瓶などの各種ガラス製製品や、ほうろう製部材(浴槽など)などが挙げられる。
【0055】
本発明では、ガラス製部材などの無機系部材の表面(特に、焼成インク画像を形成する面)の形状は、特に制限されず、平面状や凹凸状のいずれであってもよい。また、ガラス製部材などの無機系部材は、板状の形態や容器状の形態などのいずれの形態を有していてもよい。無機系部材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
[工程C]
工程Cでは、工程Bにより得られた、焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材(ガラス製部材など)を高温加熱処理している。この高温加熱処理により、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に焼成処理されたインク画像(焼成インク画像)が形成される。具体的には、高温加熱時に、インク中および焼成インク画像形成用シート中の有機成分が蒸発や焼却等により消失し、一方、インク中の無機成分(例えば、無機顔料やガラス成分など)が焼結して、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に焼成インク画像が形成される。
【0057】
このように、本発明の無機系部材、特にガラス製部材は、その表面に、焼成インク画像が、前記焼成インク画像形成用シートを用いて形成されている。
【0058】
従って、本発明では、焼成インク画像が可変情報であっても、熱転写方法により、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上に容易に且つ低コストでインク画像を形成することができるので、ガラス製部材などの無機系部材の表面に容易に且つ低コストで焼成インク画像を形成することができる。そのため、無機系部材(ガラス製部材など)が少量多品種の製品であっても、低コストで焼成インク画像を形成させることができる。
【0059】
もちろん、無機系部材が、例えば、ガラス製部材である場合、ガラス製部材の表面にエッチング処理を行っていないので、焼成インク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷が防止されている。
【0060】
しかも、高温加熱処理による焼成処理後、無機系部材(ガラス製部材など)の表面において、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたが、焼成インク画像が形成されていない非画線部には、焼成インク画像形成用シートの焼失により何も積層されていないので、該非画線部は、本来の無機系部材(ガラス製部材など)の表面そのものとなっている。従って、無機系部材が、優れた透明性を有するガラス製部材であっても、前記非画線部は、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部、および焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部ともに、本来のガラス製部材の表面そのものであるので、本来のガラス製部材の表面そのものの透明性や風合いを保持しており、高い透明性および違和感のない風合いが発揮されている。
【0061】
また、インク中にガラス成分(ガラスフリットなど)が含まれていると、耐熱性着色剤を包埋した状態でガラス成分が焼結するので、焼成インク画像をより一層強固に焼き付けることができる。そのため、耐熱性、耐水性、耐光性や耐久性等が優れ、保存安定性が極めて良好である。
【0062】
さらにまた、耐熱性着色剤を含有するインクとしては従来と同様のインクを用いることができ、また、高温加熱処理も従来と同様の装置で行うことができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の焼成インク画像形成用シートによれば、焼成処理されたインク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで形成することができ、しかも、焼成処理されたインク画像の形成に際して、無機系部材がガラス製部材である場合、ガラス製部材の表面への損傷を防止することができる。従って、臨機な情報発行に対応して、無機系部材(ガラス製部材など)の熱処理工程を経て、無機系部材(ガラス製部材など)の表面に、視認性が優れた焼成インク画像を形成することが可能である。
【0064】
また、透明性を有するガラス製部材に対しても、焼成処理されたインク画像が形成されていない非画線部では、ガラス製部材の優れた透明性を保持して、ガラス製部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成することができる。
【0065】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
ポリブチルメタクリレート(重量平均分子量:約16万)を押し出し成形して、厚さが20μmのシート(ポリブチルメタクリレート製シート)を得た。このポリブチルメタクリレート製シートは焼失性を有しており、焼失性ポリマーフィルムとして用いる。前記ポリブチルメタクリレート製シートの熱分解温度は300℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は0.5重量%であった。
【0067】
ラウリルメタクリレート:100重量部、メチルアクリレート:5重量部、酢酸エチル:125重量部、およびアゾビスイソブチルニトリル:1重量部の混合分散液を60℃で8時間、溶液重合を行って、アクリル系重合体を含む混合液を得た。この混合液に、アクリル系重合体:100重量部に対して、多官能性イソシアネート化合物(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物)を2重量部の割合で添加して、粘着剤液を調製した。この粘着剤液を、ドクターブレード法にて、一方の面をシリコン系剥離処理剤で処理したグラシン紙(厚さ:70μm)からなる剥離ライナー(セパレーター)上に、均一に塗工した後、乾燥させて、粘着層(乾燥後の厚み:4μm)を得た。
【0068】
前記セパレーター上の粘着層を、前記ポリブチルメタクリレート製シートに重ね合わせて圧着することにより、粘着層をポリブチルメタクリレート製シート上に転写して、焼成インク画像形成用シート(パターン形成用シート)を得た。
【0069】
さらに、バインダー成分としてのパラフィンワックス:30重量部、カルナバワックス:40重量部、およびエチレンビニルアセテート系樹脂:30重量部を含むキシレン溶液に、耐熱性着色剤としての平均粒径が0.5μmの黒色粉末(Cr2O3・CoO・Fe2O3・MnO2からなる黒色粉末):100重量部、および鉛ガラス系ガラスフリット:100重量部を加えて均一に分散するように混合し、その均一分散液をグラビア塗工機にて、厚さが6μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(PETフィルム)上に均一に塗工した後、乾燥させて、熱転写用インクリボン(パターン形成用インクリボン;インク層の厚み:6μm)を得た。
【0070】
前記焼成インク画像形成用シートと、前記熱転写用インクリボンとを用い、且つ熱転写プリンターを用いて印字を行い、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。
【0071】
(実施例2)
ポリブチルメタクリレートに代えて、ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量:約30万)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして焼失性ポリマーフィルムを作製し、さらに実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。焼失性ポリマーフィルムとして用いたポリメチルメタクリレート製シートの熱分解温度は320℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は0.9重量%であった。
【0072】
(実施例3)
ポリブチルメタクリレートに代えて、エチルセルロースを用いたこと以外は、実施例1と同様にして焼失性ポリマーフィルムを作製し、さらに実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルム上にインク画像(パターン)を形成した。焼失性ポリマーフィルムとして用いたエチルセルロース製シートの熱分解温度は420℃であり、また、500℃における焼成残渣成分(TGAにより測定;測定条件「大気中、昇温速度:10℃/分」)は1.5重量%であった。
【0073】
(比較例1)
ポリブチルメタクリレート(重量平均分子量:約16万):100重量部に対して
鉛ガラスを20重量部の割合で添加した樹脂組成物を押し出し成形して、ガラス成分を含有し且つ厚さが20μmのシート(ガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シート)を得た。
【0074】
ポリブチルメタクリレート製シート(焼失性ポリマーフィルム)に代えて、ガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートを得た。さらにまた、実施例1で用いた熱転写用インクリボンを用いて、実施例1と同様にして、焼成インク画像形成用シートのガラス成分含有ポリブチルメタクリレート製シート上にインク画像(パターン)を形成した。
【0075】
(評価)
一方の面に形成されたインク画像を有する焼成インク画像形成用シートを、12mm×60mmの大きさに切断した後、セパレーターを剥がし、露出した粘着層をガラス板に貼着させて仮接着し、電気炉を用いて、以下の焼成条件で焼成を行ったところ、ガラス板上に焼結により固着したインク画像(セラミックパターン;焼成インク画像)が形成された。
(焼成条件)
室温から680℃まで、50℃/分の割合で昇温させた後、680℃で10分間保持し、その後、100℃/分の割合で室温まで冷却する。
【0076】
前記焼成により得られた、ガラス板上のインク画像(焼成インク画像)について、焼成インク画像とガラス板との密着性を爪で焼成インク画像の端部を強く擦ることにより官能的に評価し、さらにまた、焼成インク画像の視認性、焼成インク画像の印字踊り防止性を目視により官能的に評価したところ、表1に示す結果が得られた。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より明らかなように、実施例に係る焼成インク画像形成用シートを用いると、焼成インク画像のガラス製部材に対する密着性、視認性、印字踊り防止性が良好であることが確認される。
【0079】
特に、熱転写方法を利用して、焼成インク画像形成用シートにインク画像を形成することができるので、焼成インク画像が可変情報であっても、容易に且つ低コストで焼成インク画像を形成することができる。もちろん、ガラス製部材の表面にエッチング処理を行っていないので、焼成インク画像の形成に際して、ガラス製部材の表面への損傷は生じていない。
【0080】
また、ガラス板上の焼成インク画像が形成されていない非画線部では、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部、および焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部ともに、ガラス板上に何も形成されていないので、該非画線部の透明性や風合い性も優れており、非画線部には全く違和感が生じていない。もちろん、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部と、焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部との間の境界線も見られない。
【0081】
一方、比較例に係る焼成インク画像形成用シートでは、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部に、ガラス成分による皮膜が形成されており、この非画線部での透明性が低くなっている。これにより、焼成インク画像形成用シートが貼付されていたうちの非画線部と、焼成インク画像形成用シートが貼付されていなかった非画線部との間の境界線が見られ、非画線部の風合い性が低下し、違和感が生じている。
Claims (7)
- 焼成処理されたインク画像を形成する際に用いられる焼成インク画像形成用シートであって、焼失性ポリマーフィルムからなり、且つ前記焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、熱転写方法により、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成することが可能な構成を有していることを特徴とする焼成インク画像形成用シート。
- 焼失性ポリマーフィルムが、熱分解温度が450℃以下のポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成されている請求項1記載の焼成インク画像形成用シート。
- 焼失性ポリマーフィルムが、TGA(熱重量分析)測定による焼成残渣成分が、500℃で2重量%以下である請求項1又は2記載の焼成インク画像形成用シート。
- 焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面の反対側の面に、接着層を有している請求項1〜3の何れかの項に記載の焼成インク画像形成用シート。
- 焼失性ポリマーフィルムのインク画像を形成することが可能な面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像が形成されている請求項1〜4の何れかの項に記載の焼成インク画像形成用シート。
- 無機系部材の表面に焼成処理されたインク画像を形成する方法であって、下記工程A〜Cを具備することを特徴とする焼成インク画像形成方法。
工程A:請求項1〜4の何れかの項に記載の焼成インク画像形成用シートの焼失性ポリマーフィルムの一方の面に、耐熱性着色剤を含有するインクによるインク画像を形成する工程
工程B:焼失性ポリマーフィルムの一方の面にインク画像が形成された焼成インク画像形成用シートを、無機系部材に、前記焼失性ポリマーフィルムのインク画像が形成された面の反対側の面が接触するように重ね合わせる工程
工程C:焼成インク画像形成用シートが重ね合わされた無機系部材を高温加熱処理する工程 - 請求項1〜5の何れかの項に記載の焼成インク画像形成用シートを用いて、表面に、焼成処理されたインク画像が形成されていることを特徴とするガラス製部材。
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