JP2004236910A - 医用画像の貼り合わせ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、隣り合うステージどうしの画像の貼り合わせ位置を最適化することにより、貼り合わせ位置調整の手間を軽減し、しかも画像に変形を加えることなく血管が自然につながるように画像を貼り合わせることにある。
【解決手段】本発明に係る医用画像の貼り合わせ装置は、被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を接合位置とともに設定し、設定された位置合わせ量と接合位置とに基づいて複数の医用画像を貼り合わせる。
【選択図】 図20

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影位置の異なる複数の医用画像の貼り合わせ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下肢の動脈など細長で撮影領域全外が検出器の大きさを超える場合には、造影剤の移動を追いかけるようにテーブルを移動しながら複数のテーブル位置(ステージと称する)で造影画像を撮影し、これら造影画像からステージが各々対応する造影前のマスク画像をサブトラクションするステッピングDSA(ディジタル・サブトラクション・アンギオ)が行われる。このように撮影した複数のDSA画像を貼り合わせて全撮影領域が一望できるようにしたものが長尺表示と呼ばれる。しかし、撮影した医用画像にはひずみが存在すること、また、血管が蛇行して走行するために幾何学的が常に一定でないことにより、単純に継ぎ合わせただけでは継ぎ目にて血管がずれて互い違いになってしまうことが問題になっている。
【0003】
継ぎ目にて血管がスムースにつながるようにするため、隣合うステージの画像どうしの位置のずれ量を手動で設定してから、貼り合わせる方法が考えられる。しかし、実際にはX線検出器のひずみと画像間の幾何学的拡大率の違いのため、単純に平行移動しただけでは上下の画像が一般にはきれいに繋がらないという問題がある。画像に変形を加えればこの問題を解決して画像がスムーズにつながるようにできるが、そのようにすると、貼りあわせた画像には変形が施されているため、貼りあわせた画像は元画像と角度や長さが異なってしまい、診断に適さないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、隣り合うステージどうしの画像の貼り合わせ位置を最適化することにより、貼り合わせ位置調整の手間を軽減し、しかも画像に変形を加えることなく血管が自然につながるように画像を貼り合わせることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1局面に係る医用画像の貼り合わせ装置は、被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を接合位置とともに設定する手段と、前記設定された位置合わせ量と接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備する。
本発明の第2局面に係る医用画像の貼り合わせ装置は、被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を手動で初期的に設定する手段と、前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、前記最終的な位置合わせ量で位置合わせされた医用画像間の接合位置を自動的に設定する手段と、前記最終的な位置合わせ量と前記自動的に設定された接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備する。
本発明の第3局面に係る医用画像の貼り合わせ装置は、被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を接合位置とともに手動で初期的に設定する手段と、前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、前記初期的に設定された接合位置を初期値として最終的な接合位置を自動的に設定する手段と、前記最終的な位置合わせ量と前記最終的な接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備する。
本発明の第4局面に係る医用画像の貼り合わせ装置は、被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を手動で初期的に設定する手段と、前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、前記最終的な位置合わせ量と所定の接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明によるX線診断装置を好ましい実施形態により説明する。
図1は本発明の実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図である。コ字形のフレーム15の一端には、X線管11が取り付けられる。X線管11のX線照射窓にはX線照射野を限定するためのX線絞り12が取り付けられる。上下動フレーム15の他端には、イメージインテンシファイア及びTVカメラの組み合わせ、またはX線を直接的に電気信号に変換する平面検出器のX線検出器14が取り付けられる。X線検出器14はX線管11に向き合うように設けられ、それらの間に寝台の天板13に載置された被検体Pが配置される。ステッピングDSAの撮影に際しては、上下動フレーム15は、図2に示すように、被検体Pの体軸に沿って頭頂から足の先まで広い範囲を移動可能なように、天井レールから取り下げられ、又は床面レール上に設けられ、あるいは寝台フレームのレールに設けられる。それにより、被検体Pを動かすことなく、被検体には注入された造影剤を追跡しながら、撮影を繰り返し、被検体の体軸に沿った連続的で且つ部分的に重複する複数のX線画像を取得することができる。
【0007】
X線検出器14で発生したアナログのX線画像は、アナログディジタル変換器16によりディジタルのX線画像データに変換され、ディジタル画像処理装置18に送られる。ディジタル画像処理装置18は、複数ステージのX線画像データに対して貼り合わせ処理を行う。複数ステージのX線画像データ及びその貼り合わせ画像(パノラミックビュー画像)は濃淡画像として表示モニタ19に表示される。この他、ディジタルX線画像データは、光磁気ディスク装置等の記憶装置17に記憶される。
【0008】
ディジタル画像処理装置18は、複数ステージのX線画像の貼り合わせ処理に際しては、フレーム15、X線管11、X線絞り12、X線検出器14、寝台の天板13等からなる撮影系の幾何学的情報を、幾何学的情報発生装置21から供給を受け、それを、操作者が操作部20を介して入力した情報とともに利用する。幾何学的情報には、X線管11から天板13までの距離とX線管11から件器14までの距離とにより決まる幾何学的拡大率、天板13の位置等が含まれる。幾何学的情報発生装置21は、幾何学的情報を取得するために必要とされるそれぞれ適当な位置に設置された例えば複数のロータリーエンコーダを有している。
【0009】
ここで、本実施形態に係るX線画像の貼り合わせ方法についてその概要を説明する。
【0010】
「ステッピングDSA画像の自動貼り合わせ方法の概要」
図3は、5つのステージ(天板13の位置)で撮影したDSA画像と、それらを本方法を用いて貼り合せたパノラミックビュー画像の例である。典型的には下肢(骨盤から遠位部)のいくつかの場所を撮影領域とした動脈造影画像と、非造影画像からサブトラクション画像を作成したもの(ステッピングDSA画像)を対象として各々の画像を貼り合わせて下肢動脈の長尺画像を作成する方法について説明する。もちろん動脈造影画像は非造影画像と同じ位置で撮影され、また隣り合う撮影領域が部分的に重なり合うように各撮影位置が設定されている。
【0011】
図4に自動位置合わせとマニュアル位置合わせを含むパノラミックビュー画像作成の全体の処理フローを示す。全体的な処理の手順としては、複数の画像をマニュアル(手動)により大雑把に位置合わせ(マニュアル位置合わせ)を行い、続いて、手動による位置合わせされた複数の画像に対して、自動位置合わせの前処理として自動的に関心領域の設定処理(自動ROI設定)とフィルタ処理とを実行し、前処理の完了した複数の画像に対して仔細に位置合わせ量と接合位置とを自動的に決定し(自動位置合わせ)、最後に、自動的に決定した仔細な位置合わせ量と接合位置とに従って複数の画像を張り合わせてパノラミックビュー画像を作成する(パノラミックビュー画像合成)。
【0012】
処理全体の入力は、ステッピングDSA撮影時に幾何学的情報発生装置21で取得された幾何学的情報(天板移動量や幾何学的拡大率など)と、N個のステージのサブトラクション画像(以下単に画像という)である。出力は、複数のステージのサブトラクション画像を貼り合わせたパノラミックビュー画像である。図4はステージ数が3個の場合を示している。
【0013】
上記の処理フローでは、次のような操作によりパノラミックビュー画像作成処理を行う。まず、入力された複数ステージの複数の画像をデフォルトの貼り合わせ位置で貼り合わせた状態で画面に表示する。デフォルトの貼り合わせ位置は、ステッピングDSA画像撮影時の幾何学的情報を元に決定する。画面には隣接する2ステージの画像が表示されており、下側ステージの画像の位置をマニュアル操作により平行移動することにより、微調整を行うことが出来る。
【0014】
この状態で自動位置合わせを実行すると、画面に表示されている2つのステージの間の位置合わせが自動的に行われる。位置合わせ結果は画面に再び表示され、位置合わせ結果に満足が行かない場合は再びマニュアル位置合わせを行うことが出来る。表示されている2つのステージの位置合わせが終了すると、画面には別の隣接する2つのステージが表示され、同様にマニュアル位置合わせと自動位置合わせが行われる。全てのステージの間の位置合わせが終わると、全部のステージを貼り合わせた画像(パノラミックビュー画像)が作成される。
【0015】
マニュアル位置合わせでは、表示されている2つのステージの間の平行移動量(上下方向および左右方向)を調節することが出来る。この「上下方向の平行移動量(上下平行移動量)」と「左右方向の平行移動量(左右平行移動量)」とをマニュアル位置合わせパラメータと呼ぶ。さらに、上下ステージの画像の接合位置を調節することもできる。
【0016】
自動位置合わせでは、マニュアルの上下平行移動量と左右平行移動量に対して上下平行移動量と左右平行移動量が自動的に調節されるとともに、画像の変形量が調節される。画像の変形は、画像の「上半分変形率」と「下半分変形率」という2つのパラメータによって表される。隣接する2つのステージの間では、上側(例えば頭部側)のステージの画像の「下半分変形率」と下側(例えば下肢側)のステージの画像の「上半分変形率」とが調節される。
【0017】
さらに、位置合わせ時には下側画像のみにコントラスト変換が施される。コントラスト変換は、「画素値の変換比率」と「オフセット」の2つのパラメータで表される。
【0018】
平行移動に関する「上下平行移動量」と「左右平行移動量」、画像の変形に関する「上半分変形率」と「下半分変形率」、コントラスト変換に関する「画素値の変換比率」と「オフセット」、これら6つのパラメータを調整して、画像間の貼り合わせ位置が決定される。ただし、コントラスト変換の2つのパラメータは位置合わせされた画像を最終的に貼り合わせる際には無視される。従って、オリジナル画像と貼り合わせたパノラミックビュー画像は同じコントラストになる。自動位置合わせ処理においては、画像の上下平行移動量、左右平行移動量、上半分変形率、下半分変形率、コントラスト変換比率、およびオフセットの6つのパラメータを制御因子として用いられる。そして、上半分変形率、下半分変形率の調整された値を用いて最適な接合位置を自動的に決定する。
【0019】
これら6つのパラメータが調整されると、その都度、結果が表示されるが、その際、画像の変形を行う方法と画像の変形を行わない方法がある。画像の変形を行わない場合は、決定された接合位置を用いて画像を貼り合わせた結果が提示される。
【0020】
画像貼り合わせ処理では自動位置合わせ処理にて調整されたパラメータを用いて全部のステージを貼り合わせた画像を作成する。その際は、決定された接合位置を用いて変形のない画像を貼り合わせる方法がとられる。操作者が指定した場合は変形を含む画像貼り合わせも行えるようになっている。
【0021】
自動位置合わせ処理は、上側の画像の位置と、それと対応する位置の下側の画像との間で画素値どうしを比較し、それら画素値の差が小さくなるように自動位置合わせパラメータを最適化していく。画素値の比較は、実際には、血管の周囲のみで行われる。まず、上側画像の血管の周囲に設定された関心領域ROIの各点の中から評価点をピックアップする。つぎに、各評価点に対応する下側画像の位置を、位置合わせパラメータから求める。そして、それら対応点での両方の画像の画素値を比較する。「自動ROI設定」処理は、上側画像の血管を自動抽出して、その周囲にROIを設定する処理を実行する。
【0022】
自動位置合わせのもうひとつの前処理は、「フィルタ処理」である。画素値を比較する画像に前もってローパスフィルタをかけておくことにより、位置合わせ処理をより安定に動作させることが可能になる。
【0023】
本実施形態の主なポイントは、図4中の「自動位置合わせ処理」および「画像貼り合わせ処理」において、自動的に画像の位置合わせを行うことにあり、その位置合わせ処理に際しては画像の変形が行われること、さらに画像貼り合わせ時に最適な接合位置を自動決定し変形を行わずに貼りあわせることにある。
【0024】
以下、本実施形態のX線画像の貼り合わせ方法について詳細に説明する。まず、位置合わせおよび変形のパラメータについての説明する。
図5に平行移動に関するパラメータを示している。点xをx´に移動するには、tとmの2種類のパラメータが使われる。tは自動による平行移動量を示し、mはマニュアルによる平行移動量を示している。tとmはそれぞれ上下平行移動量と左右平行移動量からなる。
【0025】
【数1】
Figure 2004236910
【0026】
画像の変形は、ずれ変形と拡大・縮小と、さらにX線撮影特有の周辺部変形により複合的に決まる。図6には、ずれ変形に関するパラメータを示している。左右方向のずれ変形はh、上下方向のずれ変形はhで与えられる。
【0027】
【数2】
Figure 2004236910
【0028】
図7に拡大・縮小に関するパラメータを示している。左右方向の拡大縮小変形はS、上下方向の拡大縮小変形はSで与えられる。
【0029】
【数3】
Figure 2004236910
【0030】
図8に周辺部変形に関するパラメータを示している。画像の上半分と下半分とにそれぞれ独立した変形量p、pが設定される。
【0031】
【数4】
Figure 2004236910
逆変換作用素P は、次の式で表される。
【0032】
【数5】
Figure 2004236910
【0033】
この周辺部変形方法では、画像の上半分と下半分に独立した変形量p、pが設定される。これにより画像のひずみが複雑で画像の上と下でひずみ方が異なる場合であっても、良好に位置合わせを行うことができるという効果がある。また、この方法は画像の変形が左右方向の拡大・縮小のみであるため、最適化の際、変形量と2つの画像の縦方向の平行移動量とが独立になり、さらに離れたステージ間の変形量も独立であるため、最適化が容易になり高速に位置あわせができるようになるという効果がある。
【0034】
次に、以下の説明で使用する各処理段階での座標系について説明する。
図9には初期的な画像座標系(2次元)として、撮影したm×n画素の画像内の画素の位置を表す座標系を示しており、実際には負の値や非整数値も扱うことができる。図10には、変形後画像座標系として、画像に周辺部変形を施した後の座標系を示しており、もちろん周辺部変形を施さなければ画像座標系に一致する。
【0035】
複数のステージの画像を位置合わせする際に、これらの画像を位置を変えながら配置していくための仮想的で全体的座標系を用いる。本実施形態ではこれをグローバル座標系と呼ぶ。図11は、グローバル座標系に各ステージの画像を配置した様子を示している。配置した各画像を合成した(貼り合わせた)パノラミックビュー画像の領域もグローバル座標系内に設定される。
【0036】
これら3種の座標系の間では当然にして座標変換処理が必要とされる。ここでは、各2次元座標系の間の変換をアフィン変換にて表記する。従って位置を表すベクトルを、x,y座標に加えて常に値が1である要素を加えた3次元のベクトルとして扱う。
【0037】
グローバル座標系の座標y、i番目(i=1,2,・・・N)のステージの変形後座標系の座標をyとしたとき、各座標系の関係は、
【数6】
Figure 2004236910
で表される。Eはステージi−1変形後座標系からステージi変形後座標系への座標変換行列であり、マニュアル平行移動M、自動位置合わせ平行移動T、ずれ変形H、拡大・縮小S、画像左上隅から画像中心への平行移動Cを用いて、
【数7】
Figure 2004236910
で表される。変形後画像座標系から変形前の画像座標系への座標変換は、
【数8】
Figure 2004236910
で表される。xは変形前の画像座標系での座標値である。座標変換の各要素は次の通りである。
【0038】
【数9】
Figure 2004236910
Lは正方形画像の幅である。Pは非線形作用素であり、
【数10】
Figure 2004236910
により定義される。これらより、ステージi−1変形後座標系からステージi変形後座標系への座標変換行列E
【数11】
Figure 2004236910
となる。隣接するステージ間の座標変換を、変換作用素Dを用いて表すと
【数12】
Figure 2004236910
となる。xはi番目のステージの変形前の画像座標系の座標、xi+1はi+1番目のステージの変形前の画像座標系の座標である。変換作用素Dは、次の通り表される。
【0039】
【数13】
Figure 2004236910
【0040】
次に実際に自動位置あわせ処理について説明する。自動位置あわせ処理には、その前処理として「自動ROI設定」と、「フィルタ処理」とが実行される。
【0041】
まず、自動ROI設定について説明する。
図12には画像有効データ領域とROI設定有効領域を示している。m×n画素の長方形の画像データの領域のうち撮影したX線画像の有効なデータが存在する領域である。ここでは画像有効データ領域は、画像座標系にて中心点(m/2,n/2)を中心とする半径Rvalの円内が画像データ有効領域とする。
【0042】
テストプログラムでは、自動位置合わせ、自動ROI設定、フィルタリングなどの全ての処理の前(画像読み込み直後)に、全てのステージの画像は、各画像毎に画像データ有効領域内の画素値の平均値を各画素から引き、平均値が0になるように正規化されており、画像データ有効領域の外の画素は、画素値0に置き換えられる。これは、テストプログラムではマニュアルで位置合わせする際にステージ間の画像を重畳表示しているためである。重畳表示が自然に行われるために、上側のステージはそのまま表示し、下側のステージは画像の平行移動や変形を行なった後、画素値の正負を反転して表示し、上下のステージの画像の重複する領域は下側画像の反転した画素値を上側画像に加えている。このとき、血管以外のバックグラウンドの領域は0に近い値であると重ね合わせが自然に行なわれる。上下のステージの画像を重ねて表示しない場合には、画像読み込み時に画素値の平均値を引く処理は不要である。この場合画像データ有効領域の外の画素は平均値に置き換えた方が良い。
【0043】
ROI設定有効領域は、画像データ有効領域よりも幾分小さい半径Rroi内の円状の領域である。この領域は自動ROI設定処理にて用いられる。テストプログラムでは入力画像のマトリクスサイズが512×512であることを仮定しており、Rvalには232(pixel),Rroiには215(pixel)という値を用いている。この値は、画像サイズ毎に変える必要がある。
【0044】
図13には、しきい値処理による自動ROI設定について示している。自動位置合わせアルゴリズムでは隣接するステージ間の画像の対応する点どうしの画素値を比較し、この画素値の差が小さくなるように上下の画像の間で位置の対応関係を求める。画素値の差を計算する評価点は、血管の近辺のみに限定しなければ血管以外の背景部のコントラスト揺らぎの影響を受けてしまうため安定に位置合わせすることが出来ない。また、高速化のためにも血管領域の周辺のみに評価点を限定することが望ましい。自動ROI設定処理では位置合わせ処理の前処理として、位置合わせのための関心領域(ROI)を設定する処理を行う。
【0045】
位置合わせ処理では、2つのステージの上側の画像に設定されたROI内部の各点に対応する下側画像内の点を求め、両者の画素値の差が小さくなるようにする。その前処理として、自動ROI設定では上側画像の血管の周囲にROIを設定する。
【0046】
入力は上側画像と初期位置合わせパラメータ、出力は設定されたROIの形状である。設定されるROIは、上下のステージの画像を初期位置合わせパラメータの平行移動量を用いて重ね合わせたとき、上下の両方の画像にてROI有効領域内となる領域のみに設定される。ROI有効領域はX線画像の有効データが存在する円より小さめに設定された、円状の領域である。
【0047】
図14には自動ROI設定の処理手順を示している。2つのステージの間の自動ROI設定は次の手順で実行される。
1.上側ステージの画像の画像データ有効領域内の画素値の平均値aと分散vを求める。
2.上側ステージ画像にて画素値が、(a−nv)以下の領域を閾値処理により抽出する(領域A)。
は閾値を決定する定数でテストプログラムでは2を用いている。従って、閾値は平均値より2SD(標準偏差の2倍)だけ小さい値となる。
【0048】
3.上側ステージのROI設定有効領域と下側ステージのROI設定有効領域との論理積演算を行ってROI設定有効領域を決定する(領域E)。
4.領域AとROI設定有効領域との論理積演算を行う(領域B)。
5.領域Bをnピクセル分拡大する(領域C)。
は拡大する大きさを決定する定数で、テストプログラムでは5pixelを用いている。
5.領域Cと上側ステージのROI設定有効領域との論理積演算を行う(領域D)。
【0049】
テストプログラムでは、このように抽出した領域Dを、ランレングスエンコーディングしてメモリに記憶している。自動位置合わせ処理の際は、このランレングスエンコーディングされた領域Dに対応するROIデータを参照して処理が行われている。これにより、自動位置合わせの際に全部の画素をスキャンする必要がなくなるため、自動位置合わせの処理が高速に行われるようになるという効果がある。
【0050】
次に、もう一つの前処理としてのフィルタ処理について説明する。
図15にはフィルタ処理について示している。自動位置合わせ処理ではROI内の対応する画素値どうしを比較し、画素値の差が小さくなるように位置合わせする。従って、位置合わせ前の初期状態で上下のステージの画像に血管の重なりが無いと、正しく位置合わせされた状態に収束しない。このような結果になる確率を小さくするために、自動位置合わせの前処理として、元画像をぼかすフィルタ処理(ローパスフィルタ処理)を行うことが効果的である。
【0051】
フィルタのカーネルは、n×nであるが、演算回数の低減のため、縦方向と横方向の畳み込みに分解できるように、Kij=Kで表されるカーネルを採用した。Kは分解した1次元のフィルタ係数で、次に示す三角形状の係数を用いた。
【0052】
【数14】
Figure 2004236910
【0053】
このカーネルを用いると、ローパスフィルタ処理は2段階の1次元の畳み込みに分解できる。
【0054】
(1)横方向の畳み込み
【数15】
Figure 2004236910
(2)縦方向の畳み込み
【数16】
Figure 2004236910
は、それぞれ、元画像、横方向の畳み込み結果画像、フィルタ処理結果画像の(i,j)の画素の画素値である。
【0055】
全ステージの画像の前面にフィルタ処理を施すのではなく、位置合わせで参照される可能性のある部分のみにフィルタ処理を限定することで、フィルタリングの所要時間を大幅に削減することが出来る。テストプログラムではフィルタリングを行う領域を図16に示すように以下の2つの部分に限定している。
【0056】
・抽出されたROI領域(領域D)
・フィルタリング有効領域と上側画像のフィルタリング有効領域の積領域
フィルタリング有効領域は、画像データ有効領域より一回り大きい円領域であり、その半径はテストプログラムでは画像データ有効領域の半径より10pixel大きい値(242pixel)を用いている。
【0057】
以上の前処理完了後に、「自動位置合わせ処理」が実行される。全ステージ数Nの位置合わせは、隣接する2つのステージの間ごとに行われる。2つのステージ(番号iとi+1)の画像に加える位置合わせ・変形は、次の4個のパラメータで規定される。
【0058】
【数17】
Figure 2004236910
【0059】
自動位置合わせの際には、上下のステージの画像にこれら6つのパラメータ(p、t、t、p、α、β)による変換(位置合わせ、変形、コントラスト変換)が加えられた後、画素値が比較される。そして、画素値の差が小さくなるようなパラメータを求めることで位置合わせ処理が行われる。
【0060】
ここで画像左上隅から画像中心への平行移動cix、ciyは、上側ステージの変形に関わるが、この値はステージi、i+1の間の位置合わせだけでなく、i−1、iの間の位置合わせにも関わり、これらの値を位置合わせパラメータとして着目している2ステージの位置合わせを行うと、それ以外のステージ間の位置合わせ結果を壊してしまうことになる。本実施形態の位置合わせ方法はそのようなことが無いように隣接2ステージ毎に位置合わせする方法を採用しており、cixとciyの値は一定値0として位置合わせ過程で変更されることが無いようにしている。すなわち、
【数18】
Figure 2004236910
【0061】
上述したように、自動位置合わせ処理では設定されたROI内の全ての画素を、次のステージの対応する画素値と比較するのではなく、ROI内の全ての画素からランダムにピックアップした画素について、次のステージの対応する画素値と比較する。これにより自動位置合わせの高速化がはかられている。ROI内の画素から評価点をピックアップする処理を図17に示す。
【0062】
図17の各升目は、ステージiの画像の各画素を示し、太線で示した枠がROI内の領域を示す。ROIの各画素は、画像の横方向にスキャンされていく。これらの画素をスキャン順に並べたとき、評価点として採用される画素(斜線)の間隔sは平均でNピクセルになるようにピックアップされる。sは平均N、幅Nの一様乱数で、rが0から1の間を取る一様乱数であるとき、
【数19】
Figure 2004236910
と書ける。
【0063】
ここで、ステージi(上側ステージ)とステージi+1(下側ステージ)の間での位置合わせを行う場合を考える。目的関数は、上下のステージの画像の画素値の2乗誤差とペナルティー関数からなる。まず、2乗誤差の計算方法について説明する。2乗誤差を計算する際、下側ステージの画像の画素値には平行移動や変形の他に
【数20】
Figure 2004236910
という画素値変換がなされる。上側ステージには画素値変換が行われない。ステージ数N、ステージiの画像内の評価点の数C、ステージiのj番目の点のある評価点の画像座標系での座標値を
【数21】
Figure 2004236910
、上側ステージの画素値
【数22】
Figure 2004236910
とコントラスト変換が施された下側ステージの画素値
【数23】
Figure 2004236910
の2乗誤差S
【数24】
Figure 2004236910
と表される。
【0064】
画像読み込み時に各ステージの画像の画素値の平均値が0になるように読み込んだ画素値から平均値を引き算してない場合は、2乗誤差Sを計算する際に平均値を引き算する。
【0065】
【数25】
Figure 2004236910
【0066】
ここで、
【数26】
Figure 2004236910
はステージiの画像の画素値の平均値である。目的関数は2乗誤差Sにペナルティー関数Qを加えたものを、ステージiの着目画素(ピックアップされた評価点)の数Cで割ったものである。
【0067】
【数27】
Figure 2004236910
εの後ろの括弧は目的関数εが6つの変数を持ち、これらに関して最適化されることを明示的に表している。最適化する変数は、上側ステージiの変換に関するものが、
【数28】
Figure 2004236910
の1個、下側ステージi+1に関するものが、
【数29】
Figure 2004236910
の5個である。位置合わせの過程では、これら6つのパラメータを調節して目的関数が最小になるようにする。
【0068】
【数30】
Figure 2004236910
はすべて0に固定される。ペナルティー関数は以下の式で表される。
【0069】
【数31】
Figure 2004236910
【0070】
目的関数にペナルティー項が加わっていることは、位置合わせが単に画素値の2乗誤差を小さくするように行われるのではないことを意味する。ペナルティー項はパラメータ
【数32】
Figure 2004236910
の絶対値がそれぞれの基準値
【数33】
Figure 2004236910
に比べて大きな値になりすぎないように値を制限する働きをもつ。また、
【数34】
Figure 2004236910
との差が各々の基準値σ、σαに比べて大きくなりすぎないように値を制限する働きをもつ。
【0071】
ペナルティー関数の最後の
【数35】
Figure 2004236910
の差に関する項は、上下の変形率の差があまり大きくならないように制限する働きがある。この項の存在により、パノラミックビュー画像の作成時に、変形を取り除いて貼り合わせた場合、算出される接合位置が上下の画像の重なり領域の中央から大きく外れることが防止される。
【0072】
測定データにあるパラメータを決定するだけの情報がない場合、そのパラメータの値が変わっても2乗誤差の変化は小さく、このとき目的関数を最小にするパラメータ値はペナルティー関数が小さな値になるように選ばれる。選ばれる値は狭い範囲に分布することになり、調整範囲が狭いことになる。逆にパラメータを決定する十分な情報がある場合には広い調整範囲の中から適切なパラメータを選ぶことになる。このように、ペナルティー関数の導入によりどのパラメータをどの範囲から選ぶかが与えられた画像から自動的に判断されるようになるという効果がある。たとえば、与えられた2つのステージの間の血管が主に縦方向に走行している場合には縦位置を合わせる情報が画像中にあまり含まれないため、この画像の場合には縦位置の調整範囲が自動的に小さくされることになり、位置合わせ結果がより安定する。
【0073】
次に、画像補間について説明する。図18には2×2カーネルの場合の2次元補間を示している。目的関数の計算のためには任意の座標xでの画素値を求めることが必要である。一方、元画像はm×n個の画素から構成された画像I(j,i)(i=0,...,m−1, j=0,...,n−1)として与えられているので、実数x,yに対する画素値I(x、y)は何らかの補間により求めることが必要である。ここでは関数値と導関数がともに連続であり、かつカーネルサイズが2×2と小さい補間方法を選択した(2×2キュービック補間)。一般に、カーネルサイズが大きいほど補間精度が良くなるので、必要であればよりカーネルサイズが大きい補間方法を選択することも考慮すべきである。
【0074】
ここで選択した2×2キュービック補間の2次元のカーネルh´(x、y)は、xおよびy方向のみに依存する1次元のカーネルh(x)とh(y)との積で表される。
【0075】
【数36】
Figure 2004236910
【0076】
このように自動位置合わせ処理は目的関数εを最小にする変数
【数37】
Figure 2004236910
の組を求めることであると定式化された。これを実際に行うアルゴリズムが最適化である。特に今回の目的関数εのように非線形の関数の最適化は非線形最適化と呼ばれる。非線形最適化には多くのアルゴリズムが知られている。たとえば、共役法(conjugate direction 法)、準ニュートン法、シンプレックス法やローゼンブロック法(Rosenbrock法)、シミュレーテッドアニーリング法、遺伝的アルゴリズム、タブーサーチ法(tabu search法)などを用いることができる。
以上説明した自動位置合わせ処理のデータフローを図19に示している。
【0077】
自動位置合わせ処理が終了した後に、その処理で決定したパラメータを用いて実際にパノラミックビュー画像合成処理が実行される。
パノラミックビュー画像合成処理は、N個のステージの画像を位置合わせした後、ひとつの大きな画像として合成する処理である。各ステージの画像の位置関係は、自動位置合わせまたはマニュアル位置合わせにより得られた位置合わせパラメータにより与えられる。ただし、コントラスト変換のパラメータαi+1、βi+1は、貼り合わせの際には使用しない。従って、貼り合わせた結果の画像のコントラストを、入力画像と同じコントラストに維持する。
【0078】
隣接する画像どうしは重なり合う位置関係にあるが、本実施形態で採用した合成方法では、上下の画像とも接合位置で切り取って接合することにより、合成した後の画像には重なりが無い。
【0079】
図20にパノラミックビュー画像の合成方法を模式的に示す。図21にはパノラミックビュー画像合成の手順を示している。順番に説明する。
(1)まず、各ステージの変形後画像の左上隅座標と右下隅座標をグローバル座標系にて求める。
(2)次に、合成画像の左上隅座標と右下隅座標をグローバル座標系にて求める。
(3)そして、合成画像領域を確保し画素値を0で初期化する。
【0080】
(4)続いて、各ステージの領域毎に、リサンプリングを行う。各ステージの左上隅座標と右下隅座標から、そのステージの画像が表示される画素の四角形領域をグローバル座標系にて求める(図20参照)。2つのステージの間の重なり範囲の上半分は上側のステージ、下半分は下側のステージの領域に割り振られる。四角形領域を設定したら、この領域の各画素の画素値を該当ステージの画像からリサンプリングにより求める。
【0081】
(5)画素値を入力画素値の値に戻す。つまり、リサンプリング後、各画素値に対して画像読み込み時に引き算した画素値を再び加えて、元の画素値に戻す。画像読み込み時に平均値を引き算しない場合は、この処理は不要である。画像データ有効領域の外を黒く表示させたい場合は、画像データ有効領域の外の画素値を0またはこれに近い特定の画素値に置き換える処理を行う。
【0082】
図22には画像の変形を行わないパノラミックビュー画像の合成方法について示している。画像の貼りあわせ時に、上下の画像の変形率p、pを0とおくことにより、貼り合わせた画像に画像の変形が施されないように出来る。このとき、上下の画像の接合位置を次のように定めると、継ぎ合わせた部分でのずれが生じないようになる。上側画像の中心を(x,y)、下側画像の中心を(x,y)とし、接合位置と上側画像の中心との距離をvとする。上下の画像の間隔は、h=y−yとなる。
【0083】
【数38】
Figure 2004236910
【0084】
ただし、このように接合位置を決定すると、上下の変形率の値によっては接合位置が上下の画像からはみ出ることがある。このようなことが起こらないように、実際に継ぎ合わせるときは接合位置と上下の画像の端部とを比較し、継ぎ目が画像の外にならないように調整する必要がある。
【0085】
画像の変形を元に戻すことにより下側画像は横位置を修正することが必要になる。修正後の上下の画像の横ずれ量(x´2−x1)は元の画像の横ずれ(x2−x1)に接合部での拡大率gを乗じたものになる。
【0086】
【数39】
Figure 2004236910
【0087】
次に、マニュアルで接合位置を決定するパノラミックビュー画像の合成方法について説明する。上述では接合位置vを自動決定したが、これをマニュアルで設定する方法も考えられる。まず、隣接する2つのステージの画像を表示する。この際、上下の画像は既定の接合位置でつき合わせられる。既定の接合位置はたとえば上下の画像の切り取り幅が同じになる位置(h/2)や前述の方法で決定した値が用いられる。操作者は表示された画像の接合状況を観察し必要なら接合位置と上下の画像の平行移動量を修正する。修正結果は直ちに画像として再表示される。このようにして最終的に操作者が選んだ接合位置と平行移動量がパノラミックビュー画像の合成に用いられる。
【0088】
図23は表示される画像の例である。図23(a)は上下の画像を接合位置にて切断し貼りあわせた表示方法である。図23(b)は接合位置より外側の部分を反転した後に上下の画像を加算したものである。図23(c)は片方の画像(この場合上側画像)のみ反転して上下の画像を加算したものである。図23(a)によれば貼りあわせた最終結果がどうなるかを判断することができる。図23(b)または図23(c)の表示方法によれば、接合位置や平行移動量をどの方向にどの程度修正すればよいかを容易に判断できるようになる。接合位置をマウスのドラッグ操作で修正する場合、通常は図23(a)の表示を行い、ドラッグ中のみ図23(b)または図23(c)の表示を行うことにより、最終結果の判断と修正方向の判断の両方に有用な画像表示を行うことができる。
【0089】
また、接合位置を決定するために半自動的な方法をとることもできる。上下の画像を貼りあわせた画像が表示された状態で、操作者が上側画像を選択すると、接合位置が暫定的にv=hとされて、上側画像の全領域が表示されるようになる。この状態で、操作者はスムースにつなげたい血管をトレースする。2本の血管がある場合には2本の血管をトレースする。トレースする範囲はおおよそ上下両方の画像に含まれると思われる範囲で良い。次に、操作者は下側画像を選択すると接合位置が暫定的にv=0とされて、下側画像の全領域が表示される。同様に操作者は血管をトレースする。上下画像の血管のトレースが終了すると、上下の血管が交差する交差点をすべて算出し、これら交差点の縦位置がなるべく等しくなるような横方向の平行移動量を決定する。このときの交差点の縦位置を接合位置として、貼り合せ画像が再描画される。必要なら操作者は縦方向の平行移動量を修正することができる。縦方向の修正を行うと、上記の処理を再実行し再び横方向の平行移動量を算出しなおし、接合位置を際算出し、貼り合せ画像が描画される。このようにして最終的に決定された平行移動量(縦位置と横位置)と接合位置が、パノラミックビューの画像の合成に用いられる。
【0090】
画像読み込み時に、各画像の画像データ有効領域内の平均値を求め、各画像の画素値から平均値を引き算する処理を行う。算出した各画像の平均値は一旦記憶され、パノラミックビュー画像合成時に元の画素値に戻すために使われる。マニュアル位置合わせ時に上下の画像を重畳表示しない場合は、平均値を引く処理は不要である。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、各ステージの位置合わせが自動的に行われるため、位置合わせに要する手数を軽減できるという効果がある。自動位置合わせにおいては画像の変形を考慮して画像がスムーズに接続する変形量を求めているが、画像貼り合わせ処理においては、変形せずに画像がスムーズに接続する最適な接合位置を求めてその位置で画像をつなぎ合わせるので、最終的に貼りあわせた画像は変形がなく、かつ、接合位置にて画像がスムーズに接合される。従って、本実施形態によれば画像がスムーズに接続されているにもかかわらず、オリジナル画像の長さや角度が保存されていて診断にも適する画像を提供できるという効果がある。
【0092】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、隣り合うステージどうしの画像の貼り合わせ位置を最適化することができる。それにより、貼り合わせ位置調整の手間が軽減され、しかも画像に変形を加えることなく血管が自然につながるように画像を貼り合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態において、ステッピングDSAの撮影時のフレームの移動を示す図。
【図3】本実施形態において、5つのステージで撮影したDSA画像と、それらを貼り合せたパノラミックビュー画像の例を示す中間調画像。
【図4】本実施形態において、自動位置合わせとマニュアル位置合わせを含むパノラミックビュー画像作成の全体の処理フローを示す図。
【図5】本実施形態において、平行移動に関するパラメータを示す図。
【図6】本実施形態において、ずれ変形に関するパラメータを示す図。
【図7】本実施形態において、拡大・縮小に関するパラメータを示す図。
【図8】本実施形態において、周辺部変形に関するパラメータを示す図。
【図9】本実施形態において、初期的な画像座標系として、撮影したm×n画素の画像内の画素の位置を表す座標系を示す図。
【図10】本実施形態において、変形後画像座標系として、画像に周辺部変形を施した後の座標系を示す図。
【図11】本実施形態において、グローバル座標系に各ステージの画像を配置した様子を示す図。
【図12】本実施形態において、画像有効データ領域とROI設定有効領域を示す図。
【図13】本実施形態において、しきい値処理による自動ROI設定について示す図。
【図14】本実施形態において、自動ROI設定の処理手順を示す図。
【図15】本実施形態において、フィルタ処理について示す図。
【図16】本実施形態において、テストプログラムでフィルタリングを行う領域として、抽出されたROI領域と、フィルタリング有効領域と上側画像のフィルタリング有効領域との積領域とを示す図。
【図17】本実施形態において、ROI内の画素から評価点をピックアップする処理を示す図。
【図18】本実施形態において、2×2カーネルの場合の2次元補間を示す図。
【図19】本実施形態において、自動位置合わせ処理のデータフローを示す図。
【図20】本実施形態において、パノラミックビュー画像の合成処理を示す図。
【図21】本実施形態において、パノラミックビュー画像合成の手順を示す図。
【図22】本実施形態において、画像の変形を行わないパノラミックビュー画像の合成処理を示す図。
【図23】本実施形態において、様々な貼り合わせ方法それぞれの表示画像の例を示す図。
【符号の説明】
11…X線管、12…X線絞り、13…天板、14…検出器、15…フレーム、16…アナログディジタル変換器、17…記憶装置、18…ディジタル画像処理装置、19…表示モニタ、20…操作部、21…撮影系幾何学的情報発生装置。

Claims (25)

  1. 被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を接合位置とともに設定する手段と、
    前記設定された位置合わせ量と接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備することを特徴とする医用画像の貼り合わせ装置。
  2. 被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を手動で初期的に設定する手段と、
    前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、
    前記最終的な位置合わせ量で位置合わせされた医用画像間の接合位置を自動的に設定する手段と、
    前記最終的な位置合わせ量と前記自動的に設定された接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備することを特徴とする医用画像の貼り合わせ装置。
  3. 被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を接合位置とともに手動で初期的に設定する手段と、
    前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、
    前記初期的に設定された接合位置を初期値として最終的な接合位置を自動的に設定する手段と、
    前記最終的な位置合わせ量と前記最終的な接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備することを特徴とする医用画像の貼り合わせ装置。
  4. 被検体に関する部分的に重なった複数の医用画像に対して画像間の位置合わせ量を手動で初期的に設定する手段と、
    前記初期的に設定された位置合わせ量を初期値として最終的な位置合わせ量を自動的に設定する手段と、
    前記最終的な位置合わせ量と所定の接合位置とに基づいて前記複数の医用画像を貼り合わせる手段とを具備することを特徴とする医用画像の貼り合わせ装置。
  5. 前記位置合わせ量は、前記医用画像の平行移動量と変形量とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  6. 前記変形量は、前記医用画像の上側に関する変形量と、前記上側に関する変形量とは独立した前記医用画像の下側に関する変形量とを含むことを特徴とする請求項5記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  7. 前記変形量は、前記医用画像の左右方向に関する変形量を含み、前記医用画像の上下方向に関する変形量を含まないことを特徴とする請求項5記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  8. 前記複数の医用画像をそれぞれ撮影時の天板の位置に基づいて初期的に張り合わせ、表示する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  9. 前記最終的な位置合わせ量は、前記医用画像内の関心領域に限局して調整されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  10. 前記上側の医用画像内の画像データ有効領域内の関心領域設定有効領域と前記下側の医用画像内の画像データ有効領域内の関心領域設定有効領域とが重なる領域内から注目領域を抽出することにより前記関心領域を決定するとを特徴とする請求項9記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  11. 前記重なる領域内から所定のしきい値より高い又は低い輝度を示す領域を抽出し、前記抽出した領域を拡大処理することにより前記関心領域を決定することを特徴とする請求項10記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  12. 前記決定した関心領域をランレングスエンコーディングすることを特徴とする請求項11記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  13. 前記医用画像各々に対して前処理としてフィルタ処理をかける手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  14. 前記医用画像各々に対して前記フィルタ処理を関心領域に限局してかけることを特徴とする請求項13記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  15. 前記最終的な位置合わせ量は、隣り合う医用画像間の対応する位置の画素値の差が小さくなるように決定されることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  16. 前記複数の医用画像において上下に隣り合う医用画像の座標変換には、上側の医用画像に加える変形量に関するパラメータ、下側の医用画像に加える変形量に関するパラメータ、上下に隣り合う医用画像間の平行移動量に関するパラメータが含まれることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  17. 前記上下に隣り合う医用画像の座標変換には、下側の医用画像に対するコントラスト変換に関するパラメータが含まれることを特徴とする請求項16記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  18. 前記最終的な位置合わせ量は、隣り合う医用画像間の対応する位置の画素値の差が小さくなるように決定され、
    前記対応する位置は、前記隣り合う医用画像の重なり合う領域内に設定されたランレングスエンコーディングされた関心領域のデータをもとに画素をスキャンし、前記関心領域内の画素各々に対して算出されることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  19. 前記最終的な位置合わせ量は、隣り合う医用画像間の対応する位置の画素値の差が小さくなるように決定され、
    前記対応する位置は、前記隣り合う医用画像の重なり合う領域内に設定されたランレングスエンコーディングされた関心領域のデータをもとに画素をスキャンし、前記関心領域内の画素のうちランダムにピックアップされた複数の画素に対して算出されることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  20. 前記最終的な位置合わせ量は、隣り合う医用画像間の対応する位置の画素値の2乗誤差とペナルティー関数とからなる目的関数を最小化又は最大化するように決定されることを特徴とする請求項1記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  21. 前記目的関数には、隣り合う医用画像の変形率の差に関連する項が含まれることを特徴とする請求項20記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  22. 前記接合位置は、隣り合う医用画像の一方の変形率と他方変形率とを使って決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  23. 前記接合位置は、隣り合う医用画像に対して手動で設定されることを特徴とする請求項1又は4記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  24. 前記複数の医用画像は前記接合位置で切断して貼り合わせられ、前記接合位置を手動で変更する際には、隣り合う医用画像が重畳して表示されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の医用画像の貼り合わせ装置。
  25. 前記接合位置は、上下方向に隣り合う医用画像の一方の医用画像に含まれる血管像を手動でトレースして得られる線と、他方の医用画像に含まれる血管像を手動でトレースして得られる線との複数の交差点間での上下方向の距離が小さくなるように決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の医用画像の貼り合わせ装置。
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