JP2004235365A - 半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子が作動する際に発する熱を大気中に効果的に放散できない。
【解決手段】タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成り、上面の中央部に半導体素子7が搭載される搭載部を有する放熱部材3と、放熱部材3の上面に取着された、複数の配線導体11を有する絶縁枠体1とを具備して成り、放熱部材3と絶縁枠体1とからなる凹部1aに半導体素子7を封止する封止樹脂2が注入される半導体素子収納用パッケージ8であって、放熱部材3は、搭載部から下面にかけて銅から成る貫通金属体5が埋設されているとともに、この貫通金属体5が埋設されている部位の上下面に銅層6(6a・6b)が接合されており、貫通金属体5は、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚み分大きい外周を有している。放熱部材3の熱伝導が良好であり、半導体素子7の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成り、上面の中央部に半導体素子7が搭載される搭載部を有する放熱部材3と、放熱部材3の上面に取着された、複数の配線導体11を有する絶縁枠体1とを具備して成り、放熱部材3と絶縁枠体1とからなる凹部1aに半導体素子7を封止する封止樹脂2が注入される半導体素子収納用パッケージ8であって、放熱部材3は、搭載部から下面にかけて銅から成る貫通金属体5が埋設されているとともに、この貫通金属体5が埋設されている部位の上下面に銅層6(6a・6b)が接合されており、貫通金属体5は、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚み分大きい外周を有している。放熱部材3の熱伝導が良好であり、半導体素子7の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は良好な放熱特性の放熱構造を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、一般に酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁枠体と、半導体素子が動作時に発生する熱を外部もしくは大気中に良好に放散させるための銅とタングステンとの複合材料や銅とモリブデンとの複合材料等から成る放熱部材とからなり、放熱部材の上面に半導体素子搭載部を取り囲むように絶縁枠体が配置されており、この絶縁枠体と放熱部材によって形成される凹部から外表面にかけて絶縁枠体に被着導出されたタングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀等の金属粉末から成る複数の配線導体と、蓋体とから構成されている。そして、放熱部材の上面に半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともにこの半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介して配線導体に電気的に接続し、しかる後、絶縁枠体と放熱部材とからなる凹部にエポキシ等の封止樹脂を注入し、半導体素子を封止することによって製品としての半導体装置となる。この半導体装置は、さらに放熱効率を向上させるために、ねじ止め等によって外部放熱板に搭載される場合もある。
【0003】
このようなタングステンと銅との合金材料から成る放熱部材を具備した半導体素子収納用パッケージは、放熱部材の熱伝導率が高く、なおかつ放熱部材の熱膨張係数が半導体素子の構成材料であるシリコン・ガリウム砒素やパッケージの構成材料として使われるセラミック材料等と熱膨張係数が近似することから、パワーICや高周波トランジスタ等の高発熱半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−312361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パワーICや高周波トランジスタの高集積化に伴う発熱量の増大によって、現在では300W/m・K以上の熱伝導率を持つ放熱部材が求められている。しかしながら、前述のタングステンと銅との合金材料またはモリブデンと銅との合金材料から成る放熱部材の熱伝導率は200W/m・K程度とその要求に対して低いため、放熱特性が不十分になりつつあるという問題がある。
【0006】
これに対し、タングステンまたはモリブデンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いることが提案されている。
【0007】
しかしながら、この複合材料から成る放熱部材を用いた半導体素子収納用パッケージでは、タングステンまたはモリブデンは熱伝導率・熱膨張係数が共に低く、銅は熱伝導率・熱膨張係数が共に高いため、銅の含有量を増加させるに従って放熱部材の熱伝導率・熱膨張率を共に増加させることができるものの、熱伝導率を向上させるために銅の含有量を増加させると、半導体素子と放熱部材の熱膨張係数の差が大きくなり、半導体素子を放熱部材に強固に接合することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0008】
本発明は上記従来の技術における問題に鑑み案出されたものであり、その目的は、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成り、上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する放熱部材と、この放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された、前記搭載部周辺から外表面に導出される複数の配線導体を有する絶縁枠体とを具備して成り、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を封止する封止樹脂が注入される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、前記搭載部から下面にかけて銅から成る貫通金属体が埋設されているとともに、この貫通金属体が埋設されている部位の上下面に銅層が接合されており、前記貫通金属体は、前記半導体素子の外周より前記放熱部材の厚み分大きい外周を有していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の半導体素子の搭載部に対応する中央部に、半導体素子の搭載部側の上面から下面まで貫通する銅から成る貫通金属体を埋設したことから、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができ、またその貫通金属体は、半導体素子の外周より放熱部材の厚み分大きい外周を有していることから、半導体素子で発生した熱を上面の半導体素子の搭載部から下面へと垂直な方向により多く伝えることができるとともに、貫通金属体内においても半導体素子の大きさに対してその外周から外側へ放熱部材の厚み分大きな範囲で水平な方向への熱の広がりを持たせることが可能となり、その結果、半導体素子が発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0011】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部に埋設された、上面の半導体素子の搭載部から下面まで貫通する銅から成る貫通金属体を、放熱部材の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、半導体素子で発生する熱の放熱部材内への伝達を極めて良好なものとすることができる。
【0012】
また、貫通金属体は、それ自体の材質として熱膨張は大きいが、放熱部材を構成している貫通金属体以外の部分の基体については半導体素子の材料であるシリコン・ガリウム砒素等と同等な熱膨張率を有するタングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成ることから、半導体素子の搭載部の熱膨張は周囲の枠状の基体の熱膨張に規制されることとなり、放熱部材における銅の占める割合が多いにもかかわらず、半導体素子の搭載部の水平方向への熱膨張が抑制される。これらの結果、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の半導体装置は、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記配線導体とを電気的に接続し、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を覆うように封止樹脂を注入して成ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の半導体装置によれば、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、半導体素子の放熱部材への接合が強固で、放熱特性が極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、1は絶縁枠体、2は封止樹脂、3は放熱部材である。この絶縁枠体1と封止樹脂2と放熱部材3とで、半導体素子7を収納する本発明の半導体素子収納用パッケージ8が構成される。また、この放熱部材3の搭載部に半導体素子7を搭載した後に、絶縁枠体1と放熱部材3とからなる凹部にエポキシ等の封止樹脂2を注入して半導体素子7を封止することにより、本発明の半導体装置13が構成される。
【0017】
絶縁枠体1は酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミック質焼結体等から成り、ロウ材9を介して放熱部材3に接着固定されて取着される。なお、このロウ材9による接着固定に際しては、通常、ロウ付け用の金属層(非図示)が絶縁枠体1と放熱部材3との接合部に形成される。
【0018】
また、放熱部材3には、その上面の中央部の搭載部に半導体素子7が樹脂・ガラス・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定される。なお、接着剤10としてロウ材を用いる場合には、通常、ロウ付け用の金属層(非図示)が放熱部材3の半導体素子7との接着部に形成される。ただし、放熱部材3の上面の搭載部に接合された銅層6(6a)により十分なロウ付けができる場合には、ロウ付け用の金属層は特に必要ではない。
【0019】
絶縁枠体1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を混合添加して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)となし、しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀・ニッケル・パラジウム・金等の金属材料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を混合してなる導電性ペーストをグリーンシートに予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布した後に、このグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
【0020】
また、絶縁枠体1には、絶縁枠体1と放熱部材3とで構成される凹部1aから絶縁枠体1の外表面にかけて導出する配線導体11が形成されており、配線導体11の一端には半導体素子7の各電極がボンディングワイヤ12を介して電気的に接続される。
【0021】
配線導体11はタングステン・モリブデン等の高融点金属から成り、タングステン・モリブデン等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを絶縁枠体1となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法等によって所定のパターンに印刷塗布しておくことによって、絶縁枠体1および放熱部材3による凹部1aから絶縁枠体1の外表面にかけて被着形成される。
【0022】
また、配線導体11はその露出する表面にニッケル・金等の耐食性に優れ、かつボンディングワイヤ12のボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みにメッキ法によって被着させておくと、配線導体11の酸化腐食を有効に防止できるとともに配線導体11へのボンディングワイヤ12の接続を強固となすことができる。従って、配線導体11は、その露出する表面にニッケル・金等の耐食性に優れ、かつボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みに被着させておくことが望ましい。
【0023】
放熱部材3は、半導体素子7の作動に伴い発生する熱を吸収するとともに大気中に放散させる機能を有し、例えば、平均粒径が5〜40μmのタングステン粉末またはモリブデン粉末を、半導体素子7の搭載部に貫通金属体5が埋設される貫通部が形成されるように枠状に加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結し、これに10〜50質量%の銅を含浸させて得られる、半導体素子7の搭載部に上面から下面にかけて形成された貫通部を持つ多孔体をあらかじめ作製し、この多孔体に水素雰囲気下にて約1200℃で銅を含浸させることにより、タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体4が形成される。そして、この基体4に貫通金属体5が埋設され、その上下面に銅層6(6a・6b)が接合されることにより、本発明の半導体素子収納用パッケージ8における放熱部材3が形成される。
【0024】
また、銅層6a(6a)の内、半導体素子7が搭載される上面の中央部は、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になるように、例えば研磨されている。
【0025】
銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、半導体素子7をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定する際に、接着剤10中にボイドが発生することがあり、接着剤10中に発生したボイドは半導体素子7と放熱部材3との接合強度を低下させるだけでなく、半導体素子7と放熱部材3との間の熱伝達を阻害し、半導体素子収納用パッケージ8の熱放散性を低下させるおそれがある。
【0026】
銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、銅層6aと封止樹脂2とが接触する面積が減少するとともに銅層6aへの封止樹脂2の投錨効果が少なくなるため、銅層6aと封止樹脂2との接合強度が低下し、銅層6aと封止樹脂2との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0027】
以上のことから、銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0028】
一方、半導体素子7が搭載される上面とは反対側の下面の銅層6bの算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)であることが好ましい。通常、半導体素子収納用パッケージ8は、アルミニウムや銅等の金属体、あるいは高熱伝導性を有するセラミックスから成る支持基板へ、ネジ止めにより、またははんだ等の溶融金属・ロウ材を用いて接続される。このとき、下面の銅層6bの算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合には、半導体素子収納用パッケージ8と支持基板とを十分に密着させることが困難となり、両者の間に空隙やボイドが発生してしまい、その結果、半導体素子7で発生した熱を半導体素子収納用パッケージ8からこの支持基板へ効率良く伝達させることができなくなるおそれがある。従って、下面の銅層6bの表面は、支持基板との良好な密着性が得られるように平滑であることが望ましい。
【0029】
よって、半導体素子7が搭載される上面とは反対側の下面の銅層6bの算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)で表面が平滑であることが好ましい。
【0030】
貫通金属体5は、図2に放熱部材3を搭載部側から見た場合のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体4の平面図を示すように、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚みT分大きい外周、すなわち半導体素子7の外周からその全周にわたって外側に放熱部材3の厚みTの距離を隔てた外周を有するように形成されている。一般的に、等方性材料の場合には、熱は平面方向および垂直方向ともに同等に伝わるので、結果として、45度程度の広がりをもって伝わることになる。従って、貫通金属体5は、貫通金属体5と半導体素子7の搭載部の領域とのなす角度14として45度程度を確保するために、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚みT分大きい外周を有することが望ましい。
【0031】
銅層6(6a・6b)の厚みは、それぞれ800μmより厚くなるとマトリクスから成る基体4と銅層6(6a・6b)との熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層6aの厚みが50μm以上であれば、半導体素子7の作動に伴い発生する熱が銅層6aの平面方向に十分広がるので、放熱部材3の熱放散性はさらに向上する。
【0032】
なお、放熱部材3の上下面に接合される銅層6(6a・6b)の材料は、純銅に限られるものではなく、熱伝導性が良好でタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリックスから成る基体4と十分な接合強度が得られるものであれば、銅を主成分とする各種の銅合金であっても構わない。これは、銅から成る貫通金属体5についても同様である。
【0033】
また、放熱部材3の上下面に接合される銅層6(6a・6b)は、少なくとも貫通金属体5が埋設されている部位の上下面、例えば半導体素子7の搭載部および外部放熱板との接合部に形成されれば十分であり、必ずしも放熱部材3の上下面の全面を覆う必要はない。
【0034】
かくして、上述の本発明の半導体素子収納用パッケージ8によれば、放熱部材3の搭載部上に半導体素子7をガラス・樹脂・ロウ材等から成る接着剤10を介して接着固定するとともに、半導体素子7の各電極をボンディングワイヤ12を介して所定の配線導体11に接続させ、必要に応じて配線導体11に取着された外部リード端子13に電気的に接続して導出し、しかる後に、放熱部材3と絶縁枠体1とにより形成される凹部1aに封止樹脂2を注入して半導体素子7を封止し、凹部1a内に半導体素子7を収容することによって、製品としての半導体装置となる。
【0035】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、半導体素子7で発生した熱を放熱部材3から大気中に効率良く放散させるために、放熱部材3の半導体素子7を搭載する上面とは反対側の下面の銅層6bに、放熱フィンを接続したり、放熱フィンをロウ付け等で接合したりして、放熱フィンが放熱部材3と一体化した形状としてもよく、これによって、半導体素子7の作動に伴い発生する熱を放熱部材3により吸収するとともに大気中に放散させる作用をさらに向上することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材を構成する枠状の基体の半導体素子の搭載部に対応する中央部に、半導体素子の搭載部側の上面から背面側の下面にかけて貫通する銅から成る貫通金属体を埋設したことから、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスのみで形成された従来の放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができ、またその貫通金属体は、半導体素子の外周より放熱部材の厚み分大きい外周を有していることから、半導体素子で発生した熱を上面の半導体素子の搭載部から下面へと垂直な方向により多く伝えることができるとともに、貫通金属体内においても半導体素子の大きさに対してその外周から外側へ放熱部材の厚み分大きな範囲で水平な方向への熱の広がりを持たせることが可能となり、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0037】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下方に埋設された、基体の上面から下面にかけて貫通する銅から成る貫通金属体の上下面を、基体および貫通金属体の上下面にそれぞれこれらを覆って接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と銅から成る貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。
【0038】
また、貫通金属体は、それ自体の材質として熱膨張は大きいが、放熱部材を構成している貫通金属体以外の部分である枠状のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスが半導体素子の材料であるシリコン・ガリウム砒素等と同等な熱膨張率を有することから、半導体素子の搭載部の熱膨張は周囲の熱膨張に規制されることとなり、放熱部材における銅の占める割合が多いにも関わらず、半導体素子の搭載部の水平方向への熱膨張が抑制される。これらの結果、半導体素子を強固に接合して搭載させることができるとともにその熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に搭載して作動させることが可能となる。
【0039】
また、本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と配線導体とを電気的に接続し、放熱部材と絶縁枠体とからなる凹部に半導体素子を覆うように封止樹脂を注入して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、半導体素子の放熱部材への接合が強固で、放熱特性が極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0040】
以上により、本発明によれば、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させることができる半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体素子収納用パッケージにおける放熱部材を搭載部側から見た場合のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体の平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・絶縁枠体
1a・・・・凹部
2・・・・・封止樹脂
3・・・・・放熱部材
4・・・・・基体
5・・・・・貫通金属体
6、6a、6b・・・・・銅層
7・・・・・半導体素子
8・・・・・半導体素子収納用パッケージ
9・・・・・ロウ材
10・・・・・接着剤
11・・・・・配線導体
12・・・・・ボンディングワイヤ
13・・・・・半導体装置
14・・・・・半導体素子を搭載する面との角度
【発明の属する技術分野】
本発明は良好な放熱特性の放熱構造を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、一般に酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁枠体と、半導体素子が動作時に発生する熱を外部もしくは大気中に良好に放散させるための銅とタングステンとの複合材料や銅とモリブデンとの複合材料等から成る放熱部材とからなり、放熱部材の上面に半導体素子搭載部を取り囲むように絶縁枠体が配置されており、この絶縁枠体と放熱部材によって形成される凹部から外表面にかけて絶縁枠体に被着導出されたタングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀等の金属粉末から成る複数の配線導体と、蓋体とから構成されている。そして、放熱部材の上面に半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともにこの半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介して配線導体に電気的に接続し、しかる後、絶縁枠体と放熱部材とからなる凹部にエポキシ等の封止樹脂を注入し、半導体素子を封止することによって製品としての半導体装置となる。この半導体装置は、さらに放熱効率を向上させるために、ねじ止め等によって外部放熱板に搭載される場合もある。
【0003】
このようなタングステンと銅との合金材料から成る放熱部材を具備した半導体素子収納用パッケージは、放熱部材の熱伝導率が高く、なおかつ放熱部材の熱膨張係数が半導体素子の構成材料であるシリコン・ガリウム砒素やパッケージの構成材料として使われるセラミック材料等と熱膨張係数が近似することから、パワーICや高周波トランジスタ等の高発熱半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−312361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パワーICや高周波トランジスタの高集積化に伴う発熱量の増大によって、現在では300W/m・K以上の熱伝導率を持つ放熱部材が求められている。しかしながら、前述のタングステンと銅との合金材料またはモリブデンと銅との合金材料から成る放熱部材の熱伝導率は200W/m・K程度とその要求に対して低いため、放熱特性が不十分になりつつあるという問題がある。
【0006】
これに対し、タングステンまたはモリブデンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いることが提案されている。
【0007】
しかしながら、この複合材料から成る放熱部材を用いた半導体素子収納用パッケージでは、タングステンまたはモリブデンは熱伝導率・熱膨張係数が共に低く、銅は熱伝導率・熱膨張係数が共に高いため、銅の含有量を増加させるに従って放熱部材の熱伝導率・熱膨張率を共に増加させることができるものの、熱伝導率を向上させるために銅の含有量を増加させると、半導体素子と放熱部材の熱膨張係数の差が大きくなり、半導体素子を放熱部材に強固に接合することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0008】
本発明は上記従来の技術における問題に鑑み案出されたものであり、その目的は、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成り、上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する放熱部材と、この放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された、前記搭載部周辺から外表面に導出される複数の配線導体を有する絶縁枠体とを具備して成り、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を封止する封止樹脂が注入される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、前記搭載部から下面にかけて銅から成る貫通金属体が埋設されているとともに、この貫通金属体が埋設されている部位の上下面に銅層が接合されており、前記貫通金属体は、前記半導体素子の外周より前記放熱部材の厚み分大きい外周を有していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の半導体素子の搭載部に対応する中央部に、半導体素子の搭載部側の上面から下面まで貫通する銅から成る貫通金属体を埋設したことから、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができ、またその貫通金属体は、半導体素子の外周より放熱部材の厚み分大きい外周を有していることから、半導体素子で発生した熱を上面の半導体素子の搭載部から下面へと垂直な方向により多く伝えることができるとともに、貫通金属体内においても半導体素子の大きさに対してその外周から外側へ放熱部材の厚み分大きな範囲で水平な方向への熱の広がりを持たせることが可能となり、その結果、半導体素子が発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0011】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部に埋設された、上面の半導体素子の搭載部から下面まで貫通する銅から成る貫通金属体を、放熱部材の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、半導体素子で発生する熱の放熱部材内への伝達を極めて良好なものとすることができる。
【0012】
また、貫通金属体は、それ自体の材質として熱膨張は大きいが、放熱部材を構成している貫通金属体以外の部分の基体については半導体素子の材料であるシリコン・ガリウム砒素等と同等な熱膨張率を有するタングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成ることから、半導体素子の搭載部の熱膨張は周囲の枠状の基体の熱膨張に規制されることとなり、放熱部材における銅の占める割合が多いにもかかわらず、半導体素子の搭載部の水平方向への熱膨張が抑制される。これらの結果、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の半導体装置は、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記配線導体とを電気的に接続し、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を覆うように封止樹脂を注入して成ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の半導体装置によれば、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、半導体素子の放熱部材への接合が強固で、放熱特性が極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、1は絶縁枠体、2は封止樹脂、3は放熱部材である。この絶縁枠体1と封止樹脂2と放熱部材3とで、半導体素子7を収納する本発明の半導体素子収納用パッケージ8が構成される。また、この放熱部材3の搭載部に半導体素子7を搭載した後に、絶縁枠体1と放熱部材3とからなる凹部にエポキシ等の封止樹脂2を注入して半導体素子7を封止することにより、本発明の半導体装置13が構成される。
【0017】
絶縁枠体1は酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミック質焼結体等から成り、ロウ材9を介して放熱部材3に接着固定されて取着される。なお、このロウ材9による接着固定に際しては、通常、ロウ付け用の金属層(非図示)が絶縁枠体1と放熱部材3との接合部に形成される。
【0018】
また、放熱部材3には、その上面の中央部の搭載部に半導体素子7が樹脂・ガラス・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定される。なお、接着剤10としてロウ材を用いる場合には、通常、ロウ付け用の金属層(非図示)が放熱部材3の半導体素子7との接着部に形成される。ただし、放熱部材3の上面の搭載部に接合された銅層6(6a)により十分なロウ付けができる場合には、ロウ付け用の金属層は特に必要ではない。
【0019】
絶縁枠体1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を混合添加して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)となし、しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀・ニッケル・パラジウム・金等の金属材料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を混合してなる導電性ペーストをグリーンシートに予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布した後に、このグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
【0020】
また、絶縁枠体1には、絶縁枠体1と放熱部材3とで構成される凹部1aから絶縁枠体1の外表面にかけて導出する配線導体11が形成されており、配線導体11の一端には半導体素子7の各電極がボンディングワイヤ12を介して電気的に接続される。
【0021】
配線導体11はタングステン・モリブデン等の高融点金属から成り、タングステン・モリブデン等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを絶縁枠体1となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法等によって所定のパターンに印刷塗布しておくことによって、絶縁枠体1および放熱部材3による凹部1aから絶縁枠体1の外表面にかけて被着形成される。
【0022】
また、配線導体11はその露出する表面にニッケル・金等の耐食性に優れ、かつボンディングワイヤ12のボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みにメッキ法によって被着させておくと、配線導体11の酸化腐食を有効に防止できるとともに配線導体11へのボンディングワイヤ12の接続を強固となすことができる。従って、配線導体11は、その露出する表面にニッケル・金等の耐食性に優れ、かつボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みに被着させておくことが望ましい。
【0023】
放熱部材3は、半導体素子7の作動に伴い発生する熱を吸収するとともに大気中に放散させる機能を有し、例えば、平均粒径が5〜40μmのタングステン粉末またはモリブデン粉末を、半導体素子7の搭載部に貫通金属体5が埋設される貫通部が形成されるように枠状に加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結し、これに10〜50質量%の銅を含浸させて得られる、半導体素子7の搭載部に上面から下面にかけて形成された貫通部を持つ多孔体をあらかじめ作製し、この多孔体に水素雰囲気下にて約1200℃で銅を含浸させることにより、タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体4が形成される。そして、この基体4に貫通金属体5が埋設され、その上下面に銅層6(6a・6b)が接合されることにより、本発明の半導体素子収納用パッケージ8における放熱部材3が形成される。
【0024】
また、銅層6a(6a)の内、半導体素子7が搭載される上面の中央部は、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になるように、例えば研磨されている。
【0025】
銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、半導体素子7をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定する際に、接着剤10中にボイドが発生することがあり、接着剤10中に発生したボイドは半導体素子7と放熱部材3との接合強度を低下させるだけでなく、半導体素子7と放熱部材3との間の熱伝達を阻害し、半導体素子収納用パッケージ8の熱放散性を低下させるおそれがある。
【0026】
銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、銅層6aと封止樹脂2とが接触する面積が減少するとともに銅層6aへの封止樹脂2の投錨効果が少なくなるため、銅層6aと封止樹脂2との接合強度が低下し、銅層6aと封止樹脂2との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0027】
以上のことから、銅層6aの半導体素子7が搭載される上面の中央部の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0028】
一方、半導体素子7が搭載される上面とは反対側の下面の銅層6bの算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)であることが好ましい。通常、半導体素子収納用パッケージ8は、アルミニウムや銅等の金属体、あるいは高熱伝導性を有するセラミックスから成る支持基板へ、ネジ止めにより、またははんだ等の溶融金属・ロウ材を用いて接続される。このとき、下面の銅層6bの算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合には、半導体素子収納用パッケージ8と支持基板とを十分に密着させることが困難となり、両者の間に空隙やボイドが発生してしまい、その結果、半導体素子7で発生した熱を半導体素子収納用パッケージ8からこの支持基板へ効率良く伝達させることができなくなるおそれがある。従って、下面の銅層6bの表面は、支持基板との良好な密着性が得られるように平滑であることが望ましい。
【0029】
よって、半導体素子7が搭載される上面とは反対側の下面の銅層6bの算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)で表面が平滑であることが好ましい。
【0030】
貫通金属体5は、図2に放熱部材3を搭載部側から見た場合のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体4の平面図を示すように、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚みT分大きい外周、すなわち半導体素子7の外周からその全周にわたって外側に放熱部材3の厚みTの距離を隔てた外周を有するように形成されている。一般的に、等方性材料の場合には、熱は平面方向および垂直方向ともに同等に伝わるので、結果として、45度程度の広がりをもって伝わることになる。従って、貫通金属体5は、貫通金属体5と半導体素子7の搭載部の領域とのなす角度14として45度程度を確保するために、半導体素子7の外周より放熱部材3の厚みT分大きい外周を有することが望ましい。
【0031】
銅層6(6a・6b)の厚みは、それぞれ800μmより厚くなるとマトリクスから成る基体4と銅層6(6a・6b)との熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層6aの厚みが50μm以上であれば、半導体素子7の作動に伴い発生する熱が銅層6aの平面方向に十分広がるので、放熱部材3の熱放散性はさらに向上する。
【0032】
なお、放熱部材3の上下面に接合される銅層6(6a・6b)の材料は、純銅に限られるものではなく、熱伝導性が良好でタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリックスから成る基体4と十分な接合強度が得られるものであれば、銅を主成分とする各種の銅合金であっても構わない。これは、銅から成る貫通金属体5についても同様である。
【0033】
また、放熱部材3の上下面に接合される銅層6(6a・6b)は、少なくとも貫通金属体5が埋設されている部位の上下面、例えば半導体素子7の搭載部および外部放熱板との接合部に形成されれば十分であり、必ずしも放熱部材3の上下面の全面を覆う必要はない。
【0034】
かくして、上述の本発明の半導体素子収納用パッケージ8によれば、放熱部材3の搭載部上に半導体素子7をガラス・樹脂・ロウ材等から成る接着剤10を介して接着固定するとともに、半導体素子7の各電極をボンディングワイヤ12を介して所定の配線導体11に接続させ、必要に応じて配線導体11に取着された外部リード端子13に電気的に接続して導出し、しかる後に、放熱部材3と絶縁枠体1とにより形成される凹部1aに封止樹脂2を注入して半導体素子7を封止し、凹部1a内に半導体素子7を収容することによって、製品としての半導体装置となる。
【0035】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、半導体素子7で発生した熱を放熱部材3から大気中に効率良く放散させるために、放熱部材3の半導体素子7を搭載する上面とは反対側の下面の銅層6bに、放熱フィンを接続したり、放熱フィンをロウ付け等で接合したりして、放熱フィンが放熱部材3と一体化した形状としてもよく、これによって、半導体素子7の作動に伴い発生する熱を放熱部材3により吸収するとともに大気中に放散させる作用をさらに向上することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材を構成する枠状の基体の半導体素子の搭載部に対応する中央部に、半導体素子の搭載部側の上面から背面側の下面にかけて貫通する銅から成る貫通金属体を埋設したことから、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスのみで形成された従来の放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができ、またその貫通金属体は、半導体素子の外周より放熱部材の厚み分大きい外周を有していることから、半導体素子で発生した熱を上面の半導体素子の搭載部から下面へと垂直な方向により多く伝えることができるとともに、貫通金属体内においても半導体素子の大きさに対してその外周から外側へ放熱部材の厚み分大きな範囲で水平な方向への熱の広がりを持たせることが可能となり、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0037】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下方に埋設された、基体の上面から下面にかけて貫通する銅から成る貫通金属体の上下面を、基体および貫通金属体の上下面にそれぞれこれらを覆って接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と銅から成る貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。
【0038】
また、貫通金属体は、それ自体の材質として熱膨張は大きいが、放熱部材を構成している貫通金属体以外の部分である枠状のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスが半導体素子の材料であるシリコン・ガリウム砒素等と同等な熱膨張率を有することから、半導体素子の搭載部の熱膨張は周囲の熱膨張に規制されることとなり、放熱部材における銅の占める割合が多いにも関わらず、半導体素子の搭載部の水平方向への熱膨張が抑制される。これらの結果、半導体素子を強固に接合して搭載させることができるとともにその熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に搭載して作動させることが可能となる。
【0039】
また、本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と配線導体とを電気的に接続し、放熱部材と絶縁枠体とからなる凹部に半導体素子を覆うように封止樹脂を注入して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、半導体素子の放熱部材への接合が強固で、放熱特性が極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0040】
以上により、本発明によれば、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させることができる半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体素子収納用パッケージにおける放熱部材を搭載部側から見た場合のタングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成る基体の平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・絶縁枠体
1a・・・・凹部
2・・・・・封止樹脂
3・・・・・放熱部材
4・・・・・基体
5・・・・・貫通金属体
6、6a、6b・・・・・銅層
7・・・・・半導体素子
8・・・・・半導体素子収納用パッケージ
9・・・・・ロウ材
10・・・・・接着剤
11・・・・・配線導体
12・・・・・ボンディングワイヤ
13・・・・・半導体装置
14・・・・・半導体素子を搭載する面との角度
Claims (2)
- タングステンまたはモリブデンおよび銅のマトリクスから成り、上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する放熱部材と、該放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された、前記搭載部周辺から外表面に導出される複数の配線導体を有する絶縁枠体とを具備して成り、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を封止する封止樹脂が注入される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、前記搭載部から下面にかけて銅から成る貫通金属体が埋設されているとともに、該貫通金属体が埋設されている部位の上下面に銅層が接合されており、前記貫通金属体は、前記半導体素子の外周より前記放熱部材の厚み分大きい外周を有していることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
- 請求項1記載の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともに該半導体素子の電極と前記配線導体とを電気的に接続し、前記放熱部材と前記絶縁枠体とからなる凹部に前記半導体素子を覆うように封止樹脂を注入して成ることを特徴とする半導体装置。
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2003
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