しかしながら、このタングステンまたはモリブデンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いた電子部品収納用パッケージでは、タングステンまたはモリブデンは熱伝導率,熱膨張係数が共に低く、銅は熱伝導率,熱膨張係数が共に高いため、銅の含有量を増加させるに伴って放熱部材の熱伝導率,熱膨張率が共に増加することとなる。よって、放熱部材の熱伝導率を向上させるために銅の含有量を増加させると、電子部品と放熱部材との熱膨張係数の差が大きくなり、電子部品を放熱部材に強固に接合することができなくなるという問題点があった。
本発明は上記従来の技術における問題に鑑み案出されたものであり、その目的は、電子部品の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ電子部品を放熱部材に強固に接合させることが可能な電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置を提供することにある。
本発明の電子部品収納用パッケージは、上面の中央部に電子部品の搭載部を有する平板状の放熱部材と、該放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された、内面から外面に導出する複数の配線導体を有する枠体とを具備しており、前記放熱部材は、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る枠状の基体の中央部の上面から下面にかけて銅または銅を主成分とする合金から成る貫通金属体が埋設されているとともに、前記基体および前記貫通金属体の上下面を覆ってそれぞれ銅層が形成されており、前記貫通金属体は、その側面が前記電子部品の側面の延長面と前記枠体の内面の延長面との間に位置しており、前記枠体は、前記放熱部材に金属製の枠状部材を介して接合されていることを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記銅層は、銅板が銀を主成分とする合金から成るロウ材を介して接合されて成ることを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記ロウ材は、前記基体の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率が15%以下であることを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記放熱部材は、前記基体の外側面に側面金属層が被着されていることを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、上面側の前記銅層は、その厚みが前記枠体の外側に位置する部位がその残部よりも薄いことを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記枠状部材は、外周端が前記枠体の外面よりも外側に位置していることを特徴とする。
本発明の電子装置は、上記本発明の電子部品収納用パッケージと、前記搭載部に搭載されるとともに電極が前記配線導体に電気的に接続された前記電子部品と、前記枠体の上面に前記電子部品を覆うように取着された蓋体または前記枠体の内側に前記電子部品を覆うように充填された封止樹脂とを具備していることを特徴とする。
本発明の電子部品収納用パッケージは、放熱部材が、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る枠状の基体の中央部の上面から下面にかけて銅または銅を主成分とする合金から成る貫通金属体が埋設されているとともに、基体および貫通金属体の上下面を覆ってそれぞれ銅層が形成されており、貫通金属体は、その側面が電子部品の側面の延長面と枠体の内面の延長面との間に位置していることから、従来のタングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る放熱部材に比べて、電子部品の搭載部の下により体積の大きい銅または銅を主成分とする銅合金から成る高熱伝導部分を配置することができるので、電子部品で発生した熱を電子部品の搭載面に垂直な方向により多く伝えることができ、その結果、電子部品に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に極めて良好に放散することができる。
また、銅または銅を主成分とする合金から成る貫通金属体が熱膨張しても、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る枠状の基体が貫通金属体を拘束して放熱部材全体の熱膨張を抑制することができる。よって、放熱部材における銅の占める割合が大きいにもかかわらず、放熱部材全体の熱膨張を小さくすることができ、電子部品と放熱部材との強固な接合を維持することができる。
さらに、放熱部材の上下に形成された銅層により、電子部品が発生した熱を放熱部材に平行な方向にもより多く伝えることができ、放熱部材に垂直な方向と平行な方向の両方に伝達することができ、電子部品の放熱性を極めて向上させることができる。その結果、電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
また、貫通金属体は、その側面が電子部品の側面の延長面と枠体の内面の延長面との間に位置していることから、放熱部材と枠体とを接合する際や電子部品を搭載部に搭載する際の加熱過程で、貫通金属体の熱膨張によって応力が生じやすい貫通金属体の外周から枠体および電子部品を離すことができ、枠体や電子部品に応力が加わるのを有効に防止することができる。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、銅層は、銅板が銀を主成分とする合金から成るロウ材を介して接合されて成ることから、電子部品で発生した熱を熱伝導率のよい銀を主成分とする合金から成るロウ材を介して伝えることも可能となり、より効率よく熱放散することができる。また、銀を主成分とするロウ材は塑性変形し易いので、放熱部材と枠体との接合時に、放熱部材と枠体との熱膨張係数の違いによって放熱部材に反りを生じさせようとする応力が生じても、良好に応力を緩和することができる。よって、放熱部材に反りが発生するのを防止して、放熱部材の上面の平坦性を維持し電子部品との密着性を良好にするとともに、放熱部材の下面の平坦性も維持することができ、放熱部材の支持基板への密着性も良好にして放熱部材から支持基板へ効率よく熱伝導させることができる。その結果、放熱部材の良好な熱伝導性と支持基板への高効率な熱伝導によって、電子部品収納用パッケージの放熱性を高くすることができ、電子部品を長期間にわたってより正常かつ安定に作動させることが可能となる。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、ロウ材は基体の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率が15%以下であることから、電子部品が発生した熱の移動がロウ材中のボイドによって妨げられるのを防ぐことができ、放熱性を極めて向上させることができる。その結果、電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、放熱部材は、基体の外側面に側面金属層が被着されていることから、電子部品から発生した熱のうち放熱部材の上面側の銅層の中央部から外周部に伝わったものを基体の側面で放熱部材の下面側に伝えて放熱させることができ、上面側の銅層の中央部と外周部との温度差を大きくすることができるので、上面側の銅層の熱伝導を効率的に行なわせることができる。そして、放熱部材を外部電気回路基板等に載置固定することによって、電子部品から発せられた熱を放熱部材の下面の外部電気回路基板等に効率よく放散させることができる。その結果、電子部品を効率的に冷却し、長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、上面側の銅層は、その厚みが枠体の外側に位置する部位がその残部よりも薄いことから、放熱部材の搭載部周辺の厚い銅層によって熱伝導性を良好に維持しながら、放熱部材における銅の比率を小さくして放熱部材と枠体との熱膨張差を小さくすることができる。よって、放熱部材と枠体との接合時に、放熱部材と枠体との熱膨張係数の違いから、放熱部材に反りが発生するのを有効に防止して放熱部材の下面の平坦性を維持し、支持基板への密着性を良好にして放熱部材から支持基板へ効率よく熱伝導させることができる。その結果、放熱部材の良好な熱伝導性と支持基板への高効率な熱伝導によって、電子部品収納用パッケージの放熱性を高くすることができる。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、好ましくは、枠体は、放熱部材に金属製の枠状部材を介して接合されていることから、放熱部材と枠体との熱膨張差による応力を枠状部材が吸収することができ、枠体にクラックが生じたり、枠体が放熱部材から剥離したりするのを有効に防止することができるとともに、放熱部材の上面側の銅層から枠状部材に熱を伝導させて、枠状部材の外面からも放熱することが可能となり、放熱効果をより高めることができる。
本発明の電子部品収納用パッケージは、好ましくは、枠状部材の外周端が枠体の外面よりも外側に位置していることから、枠状部材の外面の露出面積を大きくすることができ、放熱部材の上面側の銅層から枠状部材に熱を伝導させて、枠状部材の外面からより効率よく放熱することができる。
本発明の電子装置は、上記本発明の電子部品収納用パッケージと、搭載部に搭載されるとともに電極が配線導体に電気的に接続された電子部品と、枠体の上面に電子部品を覆うように取着された蓋体または枠体の内側に電子部品を覆うように充填された封止樹脂とを具備していることから、本発明の電子部品収納用パッケージの特徴を備えた、電子部品の放熱特性が極めて良好な、長期にわたって安定して電子部品を作動させることができる電子装置を提供することができる。
次に、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、1は放熱部材、2は放熱部材1の基体、3は貫通金属体、4は銅層(4aは放熱部材1の上面側の銅層,4bは放熱部材1の下面側の銅層)、5は枠体、6は枠体5の内面から外面に導出された複数の配線導体である。これら放熱部材1と枠体5とで電子部品11を収納する電子部品収納用パッケージ8が構成される。また、この放熱部材1の搭載部10に電子部品11を搭載した後に、放熱部材1と枠体5とからなる凹部5aに電子部品11を覆うように封止樹脂13を充填して電子部品11を封入することにより、または、枠体5の上面に蓋体を凹部5aを覆うように取着して電子部品11を封入することにより、本発明の電子装置14が構成される。
枠体5は酸化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等から成り、銀ロウ等のロウ材を介して放熱部材1の上面に搭載部10を取り囲んで接合固定されることにより取着される。なお、このロウ材による接合固定に際しては、ロウ付け用の金属層(図示せず)が枠体5の放熱部材1との接合部に形成されてもよい。また、枠体5は金属から構成されていてもよく、その場合、配線導体6を枠体5を構成する金属と絶縁させるために配線導体6の周囲をセラミックスや樹脂、ガラス等の絶縁体で覆えばよい。
以下、枠体5は四角枠状として説明するが、必ず四角枠状である必要はなく、多角形状,円形や楕円形状等の所要の形状とすることができる。
また、放熱部材1には、その上面の中央部の搭載部10に電子部品11が樹脂,ガラス,ロウ材等の接合材を介して固定される。なお、接合材としてロウ材を用いる場合には、ロウ付け用の金属層(図示せず)が放熱部材1の電子部品11との接合部10に形成されてもよい。ただし、放熱部材1の上面の搭載部10に接合された銅層4aにより十分なロウ付けができる場合には、ロウ付け用の金属層は特に必要ではない。
以下、放熱部材1は、四角平板状として説明するが、必ず四角平板状である必要はなく、多角形状,円形や楕円形状等の所要の形状とすることができる。
枠体5は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤,可塑剤,分散剤等を混合添加して泥漿状となすとともに、これからドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに、タングステン,モリブデン,マンガン,銅,銀,ニッケル,パラジウム,金等の金属材料粉末に適当な有機バインダ,溶剤を混合してなる導電性ペーストをグリーンシートに予めスクリーン印刷法等により所定の配線導体6のパターンに印刷塗布した後に、このグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
また、枠体5には、放熱部材1と枠体5とで構成される凹部5aの内面(搭載部10周辺)から枠体5の外面にかけて導出する複数の配線導体6が形成されており、配線導体6の凹部5aの内側の一端には電子部品11の各電極がボンディングワイヤ12を介して電気的に接続される。また、配線導体6の枠体5の外側の他端には外部電気回路基板との接続用のリード端子7が接続される。
配線導体6はタングステン,モリブデン等の高融点金属から成り、タングステン,モリブデン等の金属粉末に適当な有機バインダ,溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを枠体5となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法等によって所定のパターンに印刷塗布しておくことによって、放熱部材1および枠体5による凹部5aの内面から枠体5の外面にかけて被着形成される。
また、配線導体6はその露出する表面にニッケル,金等の耐食性に優れ、かつボンディングワイヤ12のボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みにメッキ法によって被着させておくと、配線導体6の酸化腐食を有効に防止できるとともに配線導体6へのボンディングワイヤ12の接続を強固となすことができる。従って、配線導体6は、その露出する表面にニッケル,金等の耐食性に優れ、かつボンディング性に優れる金属を1〜20μmの厚みに被着させておくことが望ましい。
本発明の放熱部材1は、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る枠状の基体2の中央部の上面から下面にかけて銅または銅を主成分とする合金から成る貫通金属体3が埋設されているとともに、基体2および貫通金属体3の上下面を覆ってそれぞれ銅層4a,4bが形成されている。放熱部材1は図1においてその外周長さが枠体5の外周長さとほぼ同じであるが、図4に示すように放熱部材1が枠体5よりも長い形態であったり、放熱部材1が枠体5よりも短い形態であったりしてもよい。図4に示すように放熱部材1を枠体5よりも長くすることによって、枠体5の外側に位置する放熱部材1の端部に、支持基板(図示せず)へのネジ止め固定用のネジ止め部(図示せず)となる切り欠きや孔を設けたりすることができる。なお、貫通金属体3は必ずしも直方体状である必要はなく、多角柱状や円柱状等所要の形状とすることができる。
そして、本発明の放熱部材1は、貫通金属体3の側面が電子部品11の側面の延長面と枠体5の内面の延長面との間に位置している。これにより、放熱部材1と枠体5とを接合する際や電子部品を搭載部に搭載する際の加熱過程で、貫通金属体3の熱膨張によって応力が生じやすい貫通金属体3の外周から枠体5の内面および電子部品11の外周を離すことができ、枠体5や電子部品11に応力が加わるのを有効に防止することができる。
貫通金属体3の外側側面は、平面視において、電子部品11の外側側面の延長面および枠体5の内面の延長面から貫通金属体3の厚み以上の間隔を設けた位置に位置しているのがよい。これにより、貫通金属体3の熱膨張の影響を電子部品11と枠体5に及ぼし難くすることができる。即ち、貫通金属体3と電子部品11との熱膨張差による応力を電子部品11に作用させ難くするとともに、貫通金属体3と枠体5との熱膨張差による応力を枠体5に作用させ難くすることができるので、貫通金属体3の熱膨張によって生じる貫通金属体3の外周に生じる応力が電子部品11や枠体5に伝わるのを有効に抑制することができる。
放熱部材1は、電子部品11の作動に伴い発生する熱を吸収するとともに大気中に放散させる、あるいは外部放熱板または支持基板に伝導させる機能を有する。このような放熱部材1は、例えば、先ず平均粒径が5〜40μmのタングステン粉末またはモリブデン粉末を、電子部品11の搭載部10となる部位に貫通穴が形成されるように加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結することにより、電子部品11の搭載部10に上面から下面にかけて形成された貫通穴を持つ多孔体を作製する。そして、この多孔体に水素雰囲気下において銅の融点1084℃以上で10〜50質量%の銅を含浸させることにより、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る(タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る)平板状の基体2を作製する。この基体2の中央に形成された貫通穴に、基体2の上面から下面にかけて銅から成る貫通金属体3を埋設し、さらに、この基体2および貫通金属体3の上面を覆って銅層4aならびに基体2および貫通金属体3の下面を覆って銅層4bを形成することによって形成される。
ここで、基体2はタングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成ることにより、タングステン単体またはモリブデン単体からなる場合に比べて熱伝導率が向上し、放熱部材1の放熱特性をより優れたものとすることができる。
基体2の貫通穴への貫通金属体3の埋設方法、および、上下の銅層4の形成方法は、例えば、基体2にめっき処理をする方法、銅粉末を含む金属ペーストを印刷塗布した後、焼成する方法、あるいは、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体と所定量の銅とを同時に加熱して銅を溶融させ、毛細管現象によって多孔質の焼結体に銅を含浸させるとともに貫通金属体3および銅層4を形成する方法が挙げられる。また、基体2の貫通穴へ貫通金属体3を埋設した後、基体2の上下面に上下の銅層4となる金属板を接合することにより形成してもよい。
好ましくは、図2に示すように、放熱部材1において銅層4は銅板が銀を主成分とする合金から成るロウ材15を介して接合されて成るのがよい。銀を主成分とする合金からなるロウ材15とは、例えば、銀を72%と銅を28%含有するロウ材が挙げられる。
この構成により、電子部品11で発生した熱を熱伝導率のよい銀を主成分とする合金から成るロウ材15を介しての伝えることも可能となり、より効率よく熱放散することができる。また、銀を主成分とするロウ材は塑性変形し易いので、放熱部材1と枠体5との接合時に、放熱部材1と枠体5との熱膨張係数の違いによって放熱部材1に反りを生じさせようとする応力が生じても、良好に応力を緩和することができる。よって、放熱部材1に反りが発生するのを有効に防止して、放熱部材1の上面の平坦性を維持し電子部品11との密着性を良好にするとともに、放熱部材1の下面の平坦性も維持することができ、放熱部材1の支持基板への密着性も良好にして放熱部材1から支持基板へ効率よく熱伝導させることができる。その結果、放熱部材1の良好な熱伝導性と支持基板への高効率な熱伝導によって、電子部品収納用パッケージの放熱性を高くすることができ、電子部品11を長期間にわたってより正常かつ安定に作動させることが可能となる。
また図2に示す構成において好ましくは、基体2および貫通金属体3の上下面を覆っているロウ材15は、基体2の主面に平行な断面でのロウ材15中のボイドにより生ずる空隙の面積が接合面の面積に占める面積比率が15%以下である。これにより、電子部品11が発生した熱の移動がロウ材15中のボイドによって妨げられることが十分少なくなり、放熱部材1の放熱性を十分発揮させることができる。その結果、電子部品11を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
基体2の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率が15%より大きい場合、電子部品11が発生した熱の移動がロウ材15中のボイドによって妨げられやすくなり、放熱性が低下しやすくなる。
このようなロウ材15は、例えば、基体2の貫通穴へ貫通金属体3を埋設した後、基体2の上下面に厚みが10〜40μmの箔状に加工されたロウ材15を介して上下の銅板4を積層し、加熱して接合することにより形成することができる。箔状のロウ材15を基体2および銅板4と積層する際、真空下で行なうと、ロウ材15が空気を巻き込むことがなくなって空隙をより減少させることができ、より好ましい。
なお、貫通金属体3の材料、および、基体2および貫通金属体3の上下面に接合される銅層4(4a,4b)の材料は、純銅に限られるものではなく、銅を主成分とする合金でもよい。このような銅を主成分とする合金とは、銅を50質量%より多く含む合金であり、例えば、銅−タングステン合金や銅−モリブデン合金,黄銅等が用いられる。また、基体2に含浸される銅も同様に純銅に限らず、貫通金属体3や銅層4(4a,4b)と同様の銅を主成分とする合金でもよい。
また、放熱部材1の上面側、即ち、電子部品11が搭載される搭載部10側の銅層4aの表面の算術平均粗さRaは、Ra≦30μmの平滑面であることが好ましい。Ra>30μmの場合には、電子部品11をガラス,樹脂,ロウ材等の接合材を介して搭載部10に接合固定する際に、接合材中にボイドが発生しやすくなる傾向がある。接合材中に発生したボイドは、電子部品11と放熱部材1との接合強度を低下させるだけでなく、電子部品11と放熱部材1との間の熱伝導を阻害し、電子部品収納用パッケージ8および電子装置14の熱放散性を低下させる傾向がある。
また、放熱部材1の下面側、即ち、電子部品11が搭載される搭載部10とは反対側の銅層4bの表面の算術平均粗さRaは、Ra≦30μmであることが好ましい。通常、電子部品収納用パッケージ8は、アルミニウムや銅等の金属体あるいは、高熱伝導を有するセラミック体等から成る支持基板へネジ止めにより、またははんだ等の溶融金属,ロウ材を用いて接続される。このとき、基体2の下面の銅層4bの下面の算術平均粗さRaがRa>30μmの場合には、電子部品収納用パッケージ8と支持基板とを十分に密着させることが困難となり、両者の間に空隙やボイドが発生しやすくなり、その結果、電子部品11で発生した熱を電子部品収納用パッケージ8からこの支持基板へ効率よく伝えることができなくなるおそれがある。従って、下面の銅層4bの外側表面となる下面は、支持基板との良好な密着性が得られるように、Ra≦30μmの平滑面であることが望ましい。
銅層4a,4bの厚みは、それぞれ800μmより厚くなると基体2と銅層4a,4bとの熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層4a,4bの厚みが50μm以上であれば、電子部品11の作動に伴い発生する熱が銅層4a,4bの平面方向に十分広がるので、放熱部材1の熱放散性の点で50μm以上としておくことが望ましい。
また、放熱部材1の基体2の上下面に接合される銅層4(4a,4b)は、少なくとも放熱部材1と枠体5とからなる凹部5aの底面と同じ面積で上下面に形成されれば十分であり、必ずしも図1に示すように放熱部材1の上下面の全面を覆うように形成される必要はない。
また、好ましくは、図4に示すように、枠体5の外側に位置する上面側の銅層4aは、その残部の銅層4aの厚みよりも薄くなっているのがよい。なおこの場合、枠体5は放熱部材1の上面の外周端よりも内側に取着されるようにする。
これにより、放熱部材1の搭載部10周辺の厚い銅層4aによって熱伝導性を良好に保持しながら、放熱部材1における銅の比率を小さくして放熱部材1と枠体5との熱膨張差を小さくすることができる。よって、放熱部材1と枠体5との接合時に、放熱部材1と枠体5との熱膨張係数の違いから、放熱部材1に反りが発生するのを有効に防止して放熱部材1の下面の平坦性を維持し、外部基板への密着性を良好にして放熱部材1から外部基板へ効率よく熱伝導させることができる。その結果、放熱部材1の良好な熱伝導性と外部基板への高効率な熱伝導によって、電子部品収納用パッケージ8の放熱性を大きくすることができる。
放熱部材1の枠体5の外側に位置する部位に支持基板へのネジ止め固定用のネジ止め部を設けた場合には、ネジ止め部にネジ止め固定した際の応力が銅層4aの厚さが変わる部位で遮断され枠体5に伝わり難くすることが可能となる。
枠体5の外側面と放熱部材1の外周端との距離、および、枠体5の外側に位置する上面側の銅層4aとその残部との厚み比は、放熱部材1と枠体5との熱膨張差を考慮して適宜調整すればよい。
また、銅層4a,4bの枠体5の外側面より内側の厚みは、それぞれ800μmより厚くなると基体2と銅層4a,4bとの熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層4a,4bの厚みが50μm以上であれば、電子部品11の作動に伴い発生する熱が銅層4a,4bの平面方向に十分広がるので、放熱部材1の熱放散性の点から50μm以上としておくことが望ましい。
また、放熱部材1を約780℃に加熱することにより銅層4を焼鈍してもよい。銅層4を焼鈍することにより、銅層4の延性が大きくなり、上面側の銅層4aと下面側の銅層4bとの厚さの差によって生じる熱応力が小さくなるので、放熱部材1に生じる歪みを抑制できる。なお、銅層4を焼鈍することにより熱伝導率が損なわれることはほとんどない。
また、好ましくは、図3に示すように、放熱部材1は、基体2の外側面に側面金属層4cが被着されているのがよい。この構成により、電子部品11から発生した熱のうち放熱部材1の上面側の銅層4aの中央部から外周部に伝わったものを基体2の側面で側面金属層4cを通じて放熱部材1の下面側に伝えて放熱させることができ、上面側の銅層4aの中央部と外周部との温度差を大きくすることができるので、上面側の銅層4aの熱伝導を効率的に行なわせることができる。そして、放熱部材1を外部電気回路基板等や支持基板,外部放熱板等に載置固定することによって、電子部品11から発せられた熱を放熱部材1の下面の外部電気回路基板等に効率よく放散させることができる。その結果、電子部品11を効率的に冷却し、長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
なお、側面金属層4cは、基体2の側面の全周にわたって被着されている必要はなく、一部分でも上面側の銅層4aと下面側の銅層4bとに接している側面金属層4cが被着されていればよい。例えば、放熱部材1が四角形である場合、少なくとも対向する2辺の側面で、上面側の銅層4aと下面側の銅層4bとに接している側面金属層4cが被着されていればよい。この構成においても、電子部品11から発生する熱を下面側の銅層4bから十分効率よく放散させることができる。
また、側面金属層4cの厚みは、上面側の銅層4aよりも電子部品11からの距離が離れており、伝熱量を多く必要としないので上面側の銅層4aより薄くても機能させることができ、放熱部材1の熱膨張が大きくなるのを抑制することができる。
また、側面金属層4cの表面粗さは、銅層4aの表面粗さよりも粗いのがよい。この構成により、面粗な側面金属層4cの表面から直接外部に放散される熱量を増大させることができ、放熱部材1の熱放散性をさらに高めることが可能となる。
側面金属層4cは、銅,銀,銀−銅合金等の熱伝導率が高く熱伝導性に優れた材料からなるのがよい。また、側面金属層4cの基体2への被着方法は、上面側の銅層4aと下面側の銅層4bと同様の方法によって被着させたり、放熱部材1と枠体5との接着固定用のロウ材が銀ロウ,銀−銅ロウ等のロウ材である場合には、このロウ材を基体2の側面に垂れ込ませたりすることによって形成されるロウ材層により実現してもよい。
また好ましくは、図5に示すように、枠体5は、放熱部材1に金属製の枠状部材9を介して接合されている。この構成により、放熱部材1と枠体5との熱膨張による応力を枠状部材9が吸収することができ、枠体5にクラックが生じたり、枠体5が放熱部材1から剥離したりするのを有効に防止することができるとともに、放熱部材1の上面側の銅層4aから枠状部材9に熱を伝導させて、枠状部材9の外面からも放熱することが可能となり、放熱効果をより高めることができる。
枠状部材9は、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金、タングステンまたはモリブデンから成る焼結体に銅を含浸させて成る材料等の金属が用いられる。好ましくは、放熱部材1の基体2と同じ材料であるのがよい。これにより、熱膨張係数の比較的大きな銅層4aを基体2と同じ熱膨張係数の枠状部材9と基体2とで挟み込むことによって、銅層4aの熱膨張を有効に抑制して、応力が生じるのを有効に緩和することができる。
枠状部材9は、例えば、タングステンから成る焼結体に銅を含浸させて成る材料からなる場合であれば、粒径が5〜40μmのタングステン粉末を、平板状に加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結させることで多孔質の焼結体を形成し、この焼結体に10〜50質量%の銅を含浸させて得た後に、搭載部10を取り囲む枠状となるように中央部に打ち抜き加工を行なうことで枠状部材9が形成される。
また、枠状部材9は、その厚みが枠体5の厚みの40%以上であるのがよい。これにより、枠体5と放熱部材1との熱膨張係数差による応力を有効に緩和するとともに枠状部材9の外側表面も大きくなり、枠状部材9の外面からの放熱性も向上させることができる。
枠状部材9は、好ましくは、その外周端が枠体5の外面よりも外側に位置しているのがよい。これにより、枠状部材9の外側表面の露出面積をさらに大きくすることができ、放熱部材1の上面側の銅層4aから枠状部材9に熱を伝導させて、枠状部材9の外面からより効率よく放熱することができる。
かくして、上述の電子部品収納用パッケージ8の放熱部材1の搭載部10上に電子部品11をガラス,樹脂,ロウ材等から成る接合材を介して接合固定するとともに、FET,LD,LED,IC,コンデンサ等の電子部品11の各電極をボンディングワイヤ12を介して所定の配線導体6に電気的に接続し、しかる後に、放熱部材1と枠体5とからなる凹部5aの内側に電子部品11を覆うようにエポキシ樹脂等の封止樹脂13を充填して電子部品11を封入することによって、あるいは、樹脂や金属,セラミックス等から成る蓋体を枠体5の上面に凹部5aを覆うように取着して電子部品11を封入することによって製品としての電子装置14となる。
次に、以下のようにしてサンプルを作製し、図2に示す本発明の電子部品収納用パッケージの評価を行なった。
まず、図2に示した放熱部材1として、大きさが34mm×17.4mmで、厚みが1.9mmのものを準備した。
放熱部材1の基体2は、タングステンから成る焼結体に銅を20質量%含浸させて成る材料で形成し、その厚みは1.00mmとした。また、放熱部材1の銅板4(4a・4b)は、それぞれ厚みを0.45mmとした。
貫通金属体3は銅を20mm×5mm×1mmの大きさに加工し、基体2の中央部に設けられた20.1mm×5.1mmの大きさの打ち抜かれた孔に貫通金属体3を挿入し、銅板4(4a・4b)と基体2および貫通金属体3とをB銀合金(銀が72.0質量%、銅が28.0質量%)から成るロウ材15で接合するとともに貫通金属体3と基体2との間をロウ材15で埋めることによって接合した。このとき、ロウ材15の平面の大きさは基体2と同じ寸法とし、ロウ材15の厚みを0.50mm,0.40mm,0.30mmの3種類に変化させたものを作製した。
これら放熱部材1に、外側の大きさ34mm×17.4mm×1mm、内側の大きさ28mm×11mmの枠状のFe−Ni−Co合金(熱膨張係数が18.3×10−6/℃)またはアルミナセラミックス(熱膨張係数が8.0×10−6/℃)製の枠体5をB銀合金(銀が72.0質量%、銅が28.0質量%)から成るロウ材で接合し、電子部品収納用パッケージ8を得た。この後、X線透過装置を用いて放熱部材1の銅板4(4a・4b)と基体1および貫通金属体3とを接合するロウ材15の基体1の主面に平行な断面でのロウ材15のボイドにより生じた空隙の占める面積比率を測定した。
さらに、電子部品収納用パッケージ8に電子部品の代わりにヒーターチップ(発熱部品)を実装し、ヒーターチップを作動させて放熱部材1の熱放散性を評価した。
以上の評価試験の結果を表1示す。表1は、電子部品収納用パッケージ8におけるロウ材15の基体1の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率と熱放散性との関係を示したものである。
表1に示す結果から明らかなように、放熱部材1の基体2の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率はロウ材15の厚みに依存して変化しており、また、この面積比率と熱放散性とに明確な関係があることが分かった。
そして、ロウ材15の基体2の主面に平行な断面での空隙の占める面積比率が15%以下の場合には、その熱放散性が良好で電子部品11から発生する熱を外部に効率よく放散させ、電子部品11を正常に作動させ得る熱伝導率である300W/mKを上回り非常に優れていることを見出した。これに対し、空隙の占める面積比率が15%より大きい場合には、その熱放散性が300W/mKを下回り電子部品11から発生する熱を外部に効率よく放散させることができず電子部品11が正常に作動できなくなることを見出した。
なお、本発明は以上の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、電子部品11で発生した熱を放熱部材1から大気中に効率よく放散させるために、放熱部材1の基体2および貫通金属体3の下面に接合された銅板4bに放熱フィンをロウ付け等で接合して放熱フィンが放熱部材1と一体化した形状としたりしてもよく、これによって、電子部品11の作動に伴い発生する熱を放熱部材1により吸収するとともに大気中に放散させる作用をさらに向上することができる。