JP2004221478A - 半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子が作動する際に発する熱を大気中に効果的に放散できない。
【解決手段】半導体素子9の搭載部を有する放熱部材1と、その上面に取着された絶縁枠体5と、その上部に取着された端子6とから成り、半導体素子9が搭載された後に半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6が放熱部材1の側面までを覆う封止樹脂12でもって端子6の外側端部を露出させて封止される半導体素子収納用パッケージ8であって、放熱部材1は、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る基体2の搭載部に銅から成る複数の貫通金属体3が埋設されているとともに、基体2の上下面に銅層4(4a・4b)が接合されており、銅層4aの上面と放熱部材1の側面とは、それぞれ算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)である。放熱部材1の熱伝導が良好で、封止樹脂12との接合信頼性も高い。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体素子9の搭載部を有する放熱部材1と、その上面に取着された絶縁枠体5と、その上部に取着された端子6とから成り、半導体素子9が搭載された後に半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6が放熱部材1の側面までを覆う封止樹脂12でもって端子6の外側端部を露出させて封止される半導体素子収納用パッケージ8であって、放熱部材1は、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る基体2の搭載部に銅から成る複数の貫通金属体3が埋設されているとともに、基体2の上下面に銅層4(4a・4b)が接合されており、銅層4aの上面と放熱部材1の側面とは、それぞれ算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)である。放熱部材1の熱伝導が良好で、封止樹脂12との接合信頼性も高い。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は良好な放熱特性の放熱構造を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、一般に酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁基体と、半導体素子が搭載されてその動作時に発生する熱を外部もしくは大気中に良好に放散させるための銅とタングステンとの合金材料または銅とモリブデンとの合金材料から成る放熱部材と蓋体とから構成されており、放熱部材の上面の半導体素子の搭載部を取り囲むように絶縁基体が配置されているとともに、これら絶縁基体および放熱部材によって形成される凹部の内側から外表面にかけて、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀等から成る複数の配線導体が被着導出されている。そして、放熱部材の上面の搭載部に半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともにこの半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介して配線導体に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体と放熱部材とから成る凹部にエポキシ樹脂等の封止樹脂を注入して半導体素子を封止することによって製品としての半導体装置となる。この半導体装置は、さらに放熱効率を向上させるために、ねじ止め等によって外部放熱板に搭載される場合もある。
【0003】
このようなタングステンと銅との合金材料等から成る放熱部材を具備した半導体素子収納用パッケージは、放熱部材の熱伝導率が高く、なおかつ放熱部材の熱膨張係数が半導体素子の構成材料であるシリコン・ガリウム砒素やパッケージの構成材料として使われるセラミック材料等と熱膨張係数が近似することから、パワーICや高周波トランジスタ等の高発熱半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−312361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パワーICや高周波トランジスタの高集積化に伴う発熱量の増大によって、現在では300W/m・K以上の熱伝導率を持つ放熱部材が求められている。しかしながら、前述のタングステンと銅との合金材料またはモリブデンと銅との合金材料から成る放熱部材の熱伝導率は200W/m・K程度とその要求に対して低いため、放熱特性が不十分になりつつあるという問題がある。
【0006】
これに対し、タングステンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いることが提案されている。また、銅または銅合金の高熱伝導層と、Fe−Ni系合金の低熱膨張層が交互に積層され、低熱膨張層を挟み込む高熱伝導層が低熱膨張層に形成した複数の貫通孔を介して連続している複合材料から成る伝熱基板を用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、このタングステンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いた半導体素子収納用パッケージでは、タングステンは熱伝導率・熱膨張係数が共に低く、銅は熱伝導率・熱膨張係数が共に高いため、銅の含有量を増加させるに従って放熱部材の熱伝導率・熱膨張率を共に増加させることができるものの、熱伝導率を向上させるために銅の含有量を増加させると、半導体素子と放熱部材との熱膨張係数の差が大きくなり、半導体素子を放熱部材に強固に接合することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0008】
また、銅または銅合金の高熱伝導層とFe−Ni系合金の低熱膨張層とから成る複合材料から成る伝熱基板を用いる場合は、一般にFe−Ni系合金は熱伝導率が低く(例えばFe−42Ni合金の場合であれば約16W/m・K)、基板の厚み方向の伝熱性が低いという問題があった。
【0009】
加えて、銅または銅合金の高熱伝導層と、Fe−Ni系合金の低熱膨張層とが交互に積層され、低熱膨張層を挟み込む高熱伝導層が低熱膨張層に形成した複数の貫通孔を介して連続している複合材料の場合は、熱膨張率が異なる材料を複雑に配しているため、加熱時に基板が大きく反ってしまうという問題があった。
【0010】
また、一般に放熱部材の表面粗さは、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材に接着固定する際の接着剤中のボイド発生による放熱部材と半導体素子との接合強度の低下を防止するために、放熱部材の表面粗さを算術平均粗さRaでRa≦30μmにされる場合が多い。
【0011】
しかしながら、放熱部材の表面粗さが極端に小さい場合は、放熱部材と封止樹脂とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果が小さくなるため、放熱部材と封止樹脂との接合強度が低下し、放熱部材と封止樹脂の界面で剥離が発生するおそれがある。
【0012】
また同様に、封止樹脂は、より信頼性の高い封止を行なうために、放熱部材および絶縁基体の上面全体を覆うとともに放熱部材の側面にまで回り込ませて用いられる場合があり、そのときに放熱部材の側面の表面粗さが極端に小さい場合においても、放熱部材と封止樹脂とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果が小さくなるため、放熱部材と封止樹脂との接合強度が低下し、放熱部材と封止樹脂との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0013】
本発明は上記従来の技術における問題に鑑み案出されたものであり、その目的は、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する平板状の放熱部材と、この放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された絶縁枠体と、前記絶縁枠体の上部に取着された端子とから成り、前記半導体素子が搭載された後にこの半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子が前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る平板状の基体の前記搭載部の上面から下面にかけて銅から成る複数の貫通金属体が埋設されているとともに、少なくとも前記基体の前記絶縁枠体の内側に位置する部位の上面および前記貫通金属体が埋設されている部位の下面に銅層が接合されており、前記絶縁枠体の内側に位置する前記銅層の上面と前記放熱部材の側面とは、それぞれ算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の基体の半導体素子の搭載部に、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を埋設したことから、タングステンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができるので、半導体素子で発生した熱を半導体素子の搭載面に垂直な方向により多く伝えることができ、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0016】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下に埋設された、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を、基体の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。これらの結果、半導体素子の熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0017】
また、放熱部材の基体の上面に接合された銅層の半導体素子の搭載部を含む絶縁枠体の内側に位置する上面は、算術平均粗さRaを0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材の搭載部に接着固定する際のボイド発生が無く、その結果、半導体素子を強固に接続することができることから、半導体素子で発生する熱を放熱部材へ効率良く伝達することが可能になり、かつ放熱部材と封止樹脂とが接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0018】
さらに、封止樹脂で覆われる放熱部材の側面も、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、放熱部材の側面と封止樹脂との接合界面に水分が吸着することがなく、半導体収納用パッケージを外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、微小な水蒸気爆発による放熱部材と封止樹脂との剥離が発生するおそれがなく、かつ放熱部材の側面においても封止樹脂と接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0019】
これらの結果、本発明によれば、高い信頼性を有する半導体素子収納用パッケージを提供することができる。
【0020】
また、本発明の半導体装置は、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、放熱特性が極めて良好で封止樹脂による封止信頼性も極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、1は放熱部材、2は放熱部材1の基体、3は貫通金属体、4(4a,4b)は銅層、5は絶縁枠体、6は端子である。これら放熱部材1と絶縁枠体5と端子6とで半導体素子9を収納する半導体素子収納用パッケージ8が構成される。また、この放熱部材1の搭載部に半導体素子7を搭載した後に、半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6を放熱部材1の側面までを覆う封止樹脂12で封止することにより半導体装置13が構成される。
【0024】
絶縁枠体5は酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミック質焼結体等から成り、ロウ材7を介して放熱部材1に接着固定される。なお、このロウ材7による接着固定に際しては、通常、ロウ付け用の金属層(図示せず)が絶縁枠体5と放熱部材1との接合部に形成される。
【0025】
また、放熱部材1には、その上面の中央部の搭載部に半導体素子9が樹脂・ガラス・ロウ材等の接着剤10を介して固定される。なお、接着剤10としてロウ材を用いる場合には、通常、ロウ付け用の金属層(図示せず)が放熱部材1の半導体素子9との接着部に形成される。ただし、放熱部材1の上面の搭載部に接合された銅層4(4a)により十分なロウ付けができる場合には、ロウ付け用の金属層は特に必要ではない。
【0026】
絶縁枠体5は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を混合添加して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)と成し、しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀・ニッケル・パラジウム・金等の金属材料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を混合してなる導電性ペーストをグリーンシートに予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布した後に、このグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
【0027】
また、絶縁枠体5の上部には、金属材料から成る端子6がロウ材7を介して接続されており、端子6と半導体素子9の各電極とがボンディングワイヤ11を介して電気的に接続される。
【0028】
端子6は、例えば、Fe−Ni−Co合金・Fe−Ni合金・Cu等の金属材料から成り、半導体素子9と外部配線基板(図示せず)とを電気的に接続する働きをもつ。
【0029】
また端子6は、絶縁枠体5とのロウ材7による接合およびボンディングワイヤ11との接合のために、表面に金等のめっき処理が施される。
【0030】
端子6に金めっき処理が施される場合、絶縁枠体5およびボンディングワイヤ11との安定した接合を得るために、その金めっき厚みは0.01μm以上5μm以下が望ましい。
【0031】
放熱部材1は、半導体素子9の作動に伴い発生する熱を吸収するとともに大気中に放散させる、あるいは外部放熱板に伝導させる機能を有する。例えば、平均粒径が5〜40μmのタングステン粉末またはモリブデン粉末を、半導体素子9の搭載部に複数の貫通穴が形成されるように加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結することで、10〜50質量%の銅を含浸させて得られる、半導体素子9の搭載部に上面から下面にかけて形成された複数の貫通穴を持つ多孔体をあらかじめ作製し、この多孔体に水素雰囲気下において約1200℃で銅を含浸させることにより、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る平板状の基体2と、基体2の搭載部の上面から下面にかけて埋設された銅から成る複数の貫通金属体3と、基体2の絶縁枠体5の内側に位置する部位の上面に接合された銅層4aおよび基体2の貫通金属体3が埋設されている部位の下面に接合された銅層4bとから成る放熱部材1が形成される。
【0032】
また、銅層4の内、半導体素子9の搭載部となる基体2の上面の銅層4aは、その絶縁枠体5の内側に位置する上面が、例えば研磨されることによって、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になっている。
【0033】
銅層4aの絶縁枠体5の内側に位置する上面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、これに半導体素子9をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定する際に、接着剤10中にボイドが発生することがあり、接着剤10中に発生したボイドは半導体素子9と放熱部材1との接合強度を低下させるだけでなく、半導体素子9と放熱部材1との間の熱伝達を阻害し、半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13の熱放散性を低下させるおそれがある。
【0034】
また、銅層4aの絶縁枠体5の内側に位置する上面の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、銅層4aと封止樹脂12とが接触する面積が減少すると同時に銅層4aへの封止樹脂12の投錨効果が小さくなるため、銅層4aと封止樹脂12との接合強度が低下し、銅層4aと封止樹脂12との界面で剥離が発生しやすくなるおそれがある。
【0035】
以上のことから、銅層4aの半導体素子9が搭載される搭載部となる絶縁枠体5の内側に位置する部位の上面の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0036】
一方、半導体素子9が搭載される上面とは反対側の基体2の下面に接合された銅層4bの下面の算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)であることが好ましい。通常、半導体素子収納用パッケージ8は、アルミニウムや銅等の金属体あるいは、高熱伝導を有するセラミック体から成る支持基板へネジ止めにより、またははんだ等の溶融金属・ロウ材を用いて接続される。このとき、基体2の下面の銅層4bの下面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合には、半導体素子収納用パッケージ8と支持基板とを十分に密着させることが困難となり、両者の間に空隙やボイドが発生してしまい、その結果、半導体素子9で発生した熱を半導体素子収納用パッケージ8からこの支持基板へ効率良く伝達させることができなくなるおそれがある。したがって、下面の銅層4bの外側表面となる下面は、支持基板との良好な密着性が得られるように平滑であることが望ましい。
【0037】
よって、半導体素子9が搭載される上面とは反対側の、基体2の貫通金属体3が埋設されている部位の下面に接合された銅層4bの下面の算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)で表面が平滑であることが好ましい。
【0038】
銅層4(4a,4b)の厚みは、それぞれ800μmより厚くなると基体2と銅層4(4a,4b)との熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層4(4a,4b)の厚みが50μm以上であれば、半導体素子9の作動に伴い発生する熱が銅層4(4a,4b)の平面方向に十分広がるので、放熱部材1の熱放散性はさらに向上する。
【0039】
さらに、本発明の半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13においては、放熱部材1の側面は、封止樹脂12で覆われることから、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になるように、例えば研磨されている。なお、この放熱部材1の側面は、銅層4(4a,4b)が基体2の外周縁まで延設されている場合には基体2の側面とこれら銅層4(4a,4b)の側面とで構成されることとなり、銅層4(4a,4b)が基体2の外周縁まで到達していない場合には基体2の側面のみで構成されることとなる。
【0040】
放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面に水分が吸着しやすくなり、半導体素子収納用パッケージ8を外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、吸着した水分が微小な水蒸気爆発をおこすこととなって、その結果、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0041】
また、放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、放熱部材1の側面と封止樹脂12とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材1の側面への封止樹脂12の投錨効果が小さくなるため、放熱部材1の側面と封止樹脂12との接合強度が低下し、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0042】
以上のことから、放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0043】
なお、放熱部材1の基体2の上下面に接合される銅層4(4a,4b)の材料は、純銅に限られるものではなく、熱伝導性が良好でタングステンまたはモリブデンと銅とのマトリックスである基体2と十分な接合強度が得られるものであれば、銅を主成分とする各種の銅合金であっても構わない。これは、銅から成る貫通金属体3についても同様である。
【0044】
また、放熱部材1の基体2の上下面に接合される銅層4(4a,4b)は、少なくとも複数の貫通金属体3が埋設されている部位の上下面のうち、上面については絶縁枠体5の内側に位置する部位に、また下面については貫通金属体3が埋設されている部位を覆うように形成されていれば十分であり、必ずしも図1に示すように放熱部材1の基体2の上下面の全面を覆うように形成される必要はない。
【0045】
かくして、上述の半導体素子収納用パッケージ8によれば、放熱部材1の搭載部上に半導体素子9をガラス・樹脂・ロウ材等から成る接着剤10を介して接着固定するとともに、半導体素子9の各電極をボンディングワイヤ11を介して所定の端子6に電気的に接続し、しかる後に、図1に示すように、半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6を放熱部材1の側面まで覆う封止樹脂12でもって端子6の外側端部を露出させて封止することによって、製品としての半導体装置13となる。
【0046】
【実施例】
次に、以下のようにしてサンプルを作製し、本発明の半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置の評価を行なった。
【0047】
まず、図1に示した放熱部材1として、大きさが34mm×17.4mmで、厚みが1.9mmのものを準備した。
【0048】
放熱部材1の基体2は、タングステンと銅とから成るマトリックス材で形成し、その厚みは1.52mmとした。また、放熱部材1の銅層4aおよび銅層4bは、それぞれ厚みを0.19mmとした。
【0049】
銅層4aおよび放熱部材1の側面は研摩を行ない、算術平均粗さRaがそれぞれ0.01μmから36μmまでの18種類のものを準備した。
【0050】
これら放熱部材1に、材質がアルミナセラミックスの絶縁枠体5とFe−Ni−Co合金の端子6とをAg−Cuロウ材を用いて接続し、半導体素子収納用パッケージ8を得た。
【0051】
この半導体素子収納用パッケージ8の絶縁枠体5の内側に位置する銅層4aの上面に、Siから成る半導体素子9(大きさ5mm×5mm、厚み0.3mm)をAuSnロウ材を用いて搭載した後、エポキシ系の封止樹脂12でもって半導体素子9を搭載した半導体素子収納用パッケージ8の上面および側面を封止し、半導体装置13を得た。
【0052】
これら半導体装置13を温度サイクル試験装置に−55℃〜125℃の条件下で投入し、一定の試験サイクル数の後に取り出し、半導体素子9と銅層4(4a)との接合界面部および放熱部材1の側面部と封止樹脂12との接合界面部の界面状態を超音波探傷装置およびマイクロX線装置で観察し、剥離発生の有無を確認した。
【0053】
以上の評価試験について、表1に試験結果を示す。
【0054】
表1は、温度サイクル試験に投入した半導体装置13における温度サイクル試験投入サイクル数と、そのときの半導体素子9と銅層4との界面(表1中では「銅層上部」で示す)および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面(表1中では「側面」で示す)における剥離の発生を調べ、剥離の発生が見られなかったものをOKとし、剥離の発生が見られたものをNGとして、銅層上部(銅層4aの上面)および放熱部材1の側面の算術平均粗さ(単位:μm)毎に示したものである。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す結果から分かるように、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値と、半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離発生には、明確な関係があることが分かった。
【0057】
すなわち、表1に示すように、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が0.05μm未満の場合は、投入サイクル数が1000あるいはそれ以下で半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面に剥離が発生し、半導体装置9は高い封止信頼性を有していないことを見出した。
【0058】
また、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が30μmより大きい場合についても、投入サイクル数が1000あるいはそれ以下で半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離が発生し、高い封止信頼性を有していないことを見出した。
【0059】
これに対し、本発明の半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13である、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が0.05μm以上30μm以下のサンプルにおいては、投入サイクル数が1000であっても半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離が発生せず、高い封止信頼性を有していることが分かった。
【0060】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、半導体素子9で発生した熱を放熱部材1から大気中に効率良く放散させるために、放熱部材1の基体2の下面に接合された銅層4bに、放熱フィンを接続したり、放熱フィンをロウ付け等で接合して放熱フィンが放熱部材1と一体化した形状としてもよく、これによって、半導体素子9の作動に伴い発生する熱を放熱部材1により吸収するとともに大気中に放散させる作用をさらに向上することができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の基体の半導体素子の搭載部に、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を埋設したことから、タングステンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができるので、半導体素子で発生した熱を半導体素子の搭載面に垂直な方向により多く伝えることができ、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0062】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下に埋設された、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を、基体の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。これらの結果、半導体素子の熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0063】
また、放熱部材の基体の上面に接合された銅層の半導体素子の搭載部を含む絶縁枠体の内側に位置する上面は、算術平均粗さRaを0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材の搭載部に接着固定する際のボイド発生が無く、その結果、半導体素子を強固に接続することができることから、半導体素子で発生する熱を放熱部材へ効率良く伝達することが可能になり、かつ放熱部材と封止樹脂とが接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0064】
さらに、封止樹脂で覆われる放熱部材の側面も、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、放熱部材の側面と封止樹脂との接合界面に水分が吸着することがなく、半導体収納用パッケージを外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、微小な水蒸気爆発による放熱部材と封止樹脂との剥離が発生するおそれがなく、かつ放熱部材の側面においても封止樹脂と接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0065】
また、本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、放熱特性が極めて良好で封止樹脂による封止信頼性も極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0066】
以上により、本発明によれば、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・放熱部材
2・・・・・基体
3・・・・・貫通金属体
4、4a、4b・・・・・銅層
5・・・・・絶縁枠体
6・・・・・端子
8・・・・・半導体素子収納用パッケージ
9・・・・・半導体素子
12・・・・・封止樹脂
13・・・・・半導体装置
【発明の属する技術分野】
本発明は良好な放熱特性の放熱構造を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子を収容するための半導体素子収納用パッケージは、一般に酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁基体と、半導体素子が搭載されてその動作時に発生する熱を外部もしくは大気中に良好に放散させるための銅とタングステンとの合金材料または銅とモリブデンとの合金材料から成る放熱部材と蓋体とから構成されており、放熱部材の上面の半導体素子の搭載部を取り囲むように絶縁基体が配置されているとともに、これら絶縁基体および放熱部材によって形成される凹部の内側から外表面にかけて、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀等から成る複数の配線導体が被着導出されている。そして、放熱部材の上面の搭載部に半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して接着固定するとともにこの半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介して配線導体に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体と放熱部材とから成る凹部にエポキシ樹脂等の封止樹脂を注入して半導体素子を封止することによって製品としての半導体装置となる。この半導体装置は、さらに放熱効率を向上させるために、ねじ止め等によって外部放熱板に搭載される場合もある。
【0003】
このようなタングステンと銅との合金材料等から成る放熱部材を具備した半導体素子収納用パッケージは、放熱部材の熱伝導率が高く、なおかつ放熱部材の熱膨張係数が半導体素子の構成材料であるシリコン・ガリウム砒素やパッケージの構成材料として使われるセラミック材料等と熱膨張係数が近似することから、パワーICや高周波トランジスタ等の高発熱半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−312361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パワーICや高周波トランジスタの高集積化に伴う発熱量の増大によって、現在では300W/m・K以上の熱伝導率を持つ放熱部材が求められている。しかしながら、前述のタングステンと銅との合金材料またはモリブデンと銅との合金材料から成る放熱部材の熱伝導率は200W/m・K程度とその要求に対して低いため、放熱特性が不十分になりつつあるという問題がある。
【0006】
これに対し、タングステンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いることが提案されている。また、銅または銅合金の高熱伝導層と、Fe−Ni系合金の低熱膨張層が交互に積層され、低熱膨張層を挟み込む高熱伝導層が低熱膨張層に形成した複数の貫通孔を介して連続している複合材料から成る伝熱基板を用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、このタングステンと銅とがマトリクス状に構成された複合材料から成る放熱部材を用いた半導体素子収納用パッケージでは、タングステンは熱伝導率・熱膨張係数が共に低く、銅は熱伝導率・熱膨張係数が共に高いため、銅の含有量を増加させるに従って放熱部材の熱伝導率・熱膨張率を共に増加させることができるものの、熱伝導率を向上させるために銅の含有量を増加させると、半導体素子と放熱部材との熱膨張係数の差が大きくなり、半導体素子を放熱部材に強固に接合することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0008】
また、銅または銅合金の高熱伝導層とFe−Ni系合金の低熱膨張層とから成る複合材料から成る伝熱基板を用いる場合は、一般にFe−Ni系合金は熱伝導率が低く(例えばFe−42Ni合金の場合であれば約16W/m・K)、基板の厚み方向の伝熱性が低いという問題があった。
【0009】
加えて、銅または銅合金の高熱伝導層と、Fe−Ni系合金の低熱膨張層とが交互に積層され、低熱膨張層を挟み込む高熱伝導層が低熱膨張層に形成した複数の貫通孔を介して連続している複合材料の場合は、熱膨張率が異なる材料を複雑に配しているため、加熱時に基板が大きく反ってしまうという問題があった。
【0010】
また、一般に放熱部材の表面粗さは、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材に接着固定する際の接着剤中のボイド発生による放熱部材と半導体素子との接合強度の低下を防止するために、放熱部材の表面粗さを算術平均粗さRaでRa≦30μmにされる場合が多い。
【0011】
しかしながら、放熱部材の表面粗さが極端に小さい場合は、放熱部材と封止樹脂とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果が小さくなるため、放熱部材と封止樹脂との接合強度が低下し、放熱部材と封止樹脂の界面で剥離が発生するおそれがある。
【0012】
また同様に、封止樹脂は、より信頼性の高い封止を行なうために、放熱部材および絶縁基体の上面全体を覆うとともに放熱部材の側面にまで回り込ませて用いられる場合があり、そのときに放熱部材の側面の表面粗さが極端に小さい場合においても、放熱部材と封止樹脂とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果が小さくなるため、放熱部材と封止樹脂との接合強度が低下し、放熱部材と封止樹脂との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0013】
本発明は上記従来の技術における問題に鑑み案出されたものであり、その目的は、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する平板状の放熱部材と、この放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された絶縁枠体と、前記絶縁枠体の上部に取着された端子とから成り、前記半導体素子が搭載された後にこの半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子が前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る平板状の基体の前記搭載部の上面から下面にかけて銅から成る複数の貫通金属体が埋設されているとともに、少なくとも前記基体の前記絶縁枠体の内側に位置する部位の上面および前記貫通金属体が埋設されている部位の下面に銅層が接合されており、前記絶縁枠体の内側に位置する前記銅層の上面と前記放熱部材の側面とは、それぞれ算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の基体の半導体素子の搭載部に、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を埋設したことから、タングステンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができるので、半導体素子で発生した熱を半導体素子の搭載面に垂直な方向により多く伝えることができ、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0016】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下に埋設された、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を、基体の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。これらの結果、半導体素子の熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0017】
また、放熱部材の基体の上面に接合された銅層の半導体素子の搭載部を含む絶縁枠体の内側に位置する上面は、算術平均粗さRaを0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材の搭載部に接着固定する際のボイド発生が無く、その結果、半導体素子を強固に接続することができることから、半導体素子で発生する熱を放熱部材へ効率良く伝達することが可能になり、かつ放熱部材と封止樹脂とが接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0018】
さらに、封止樹脂で覆われる放熱部材の側面も、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、放熱部材の側面と封止樹脂との接合界面に水分が吸着することがなく、半導体収納用パッケージを外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、微小な水蒸気爆発による放熱部材と封止樹脂との剥離が発生するおそれがなく、かつ放熱部材の側面においても封止樹脂と接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0019】
これらの結果、本発明によれば、高い信頼性を有する半導体素子収納用パッケージを提供することができる。
【0020】
また、本発明の半導体装置は、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、放熱特性が極めて良好で封止樹脂による封止信頼性も極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図であり、1は放熱部材、2は放熱部材1の基体、3は貫通金属体、4(4a,4b)は銅層、5は絶縁枠体、6は端子である。これら放熱部材1と絶縁枠体5と端子6とで半導体素子9を収納する半導体素子収納用パッケージ8が構成される。また、この放熱部材1の搭載部に半導体素子7を搭載した後に、半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6を放熱部材1の側面までを覆う封止樹脂12で封止することにより半導体装置13が構成される。
【0024】
絶縁枠体5は酸化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・ガラスセラミック質焼結体等から成り、ロウ材7を介して放熱部材1に接着固定される。なお、このロウ材7による接着固定に際しては、通常、ロウ付け用の金属層(図示せず)が絶縁枠体5と放熱部材1との接合部に形成される。
【0025】
また、放熱部材1には、その上面の中央部の搭載部に半導体素子9が樹脂・ガラス・ロウ材等の接着剤10を介して固定される。なお、接着剤10としてロウ材を用いる場合には、通常、ロウ付け用の金属層(図示せず)が放熱部材1の半導体素子9との接着部に形成される。ただし、放熱部材1の上面の搭載部に接合された銅層4(4a)により十分なロウ付けができる場合には、ロウ付け用の金属層は特に必要ではない。
【0026】
絶縁枠体5は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ・溶剤・可塑剤・分散剤等を混合添加して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)と成し、しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに、タングステン・モリブデン・マンガン・銅・銀・ニッケル・パラジウム・金等の金属材料粉末に適当な有機バインダ・溶剤を混合してなる導電性ペーストをグリーンシートに予めスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布した後に、このグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
【0027】
また、絶縁枠体5の上部には、金属材料から成る端子6がロウ材7を介して接続されており、端子6と半導体素子9の各電極とがボンディングワイヤ11を介して電気的に接続される。
【0028】
端子6は、例えば、Fe−Ni−Co合金・Fe−Ni合金・Cu等の金属材料から成り、半導体素子9と外部配線基板(図示せず)とを電気的に接続する働きをもつ。
【0029】
また端子6は、絶縁枠体5とのロウ材7による接合およびボンディングワイヤ11との接合のために、表面に金等のめっき処理が施される。
【0030】
端子6に金めっき処理が施される場合、絶縁枠体5およびボンディングワイヤ11との安定した接合を得るために、その金めっき厚みは0.01μm以上5μm以下が望ましい。
【0031】
放熱部材1は、半導体素子9の作動に伴い発生する熱を吸収するとともに大気中に放散させる、あるいは外部放熱板に伝導させる機能を有する。例えば、平均粒径が5〜40μmのタングステン粉末またはモリブデン粉末を、半導体素子9の搭載部に複数の貫通穴が形成されるように加圧成形し、これを1300〜1600℃の雰囲気中で焼結することで、10〜50質量%の銅を含浸させて得られる、半導体素子9の搭載部に上面から下面にかけて形成された複数の貫通穴を持つ多孔体をあらかじめ作製し、この多孔体に水素雰囲気下において約1200℃で銅を含浸させることにより、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る平板状の基体2と、基体2の搭載部の上面から下面にかけて埋設された銅から成る複数の貫通金属体3と、基体2の絶縁枠体5の内側に位置する部位の上面に接合された銅層4aおよび基体2の貫通金属体3が埋設されている部位の下面に接合された銅層4bとから成る放熱部材1が形成される。
【0032】
また、銅層4の内、半導体素子9の搭載部となる基体2の上面の銅層4aは、その絶縁枠体5の内側に位置する上面が、例えば研磨されることによって、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になっている。
【0033】
銅層4aの絶縁枠体5の内側に位置する上面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、これに半導体素子9をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤10を介して接着固定する際に、接着剤10中にボイドが発生することがあり、接着剤10中に発生したボイドは半導体素子9と放熱部材1との接合強度を低下させるだけでなく、半導体素子9と放熱部材1との間の熱伝達を阻害し、半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13の熱放散性を低下させるおそれがある。
【0034】
また、銅層4aの絶縁枠体5の内側に位置する上面の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、銅層4aと封止樹脂12とが接触する面積が減少すると同時に銅層4aへの封止樹脂12の投錨効果が小さくなるため、銅層4aと封止樹脂12との接合強度が低下し、銅層4aと封止樹脂12との界面で剥離が発生しやすくなるおそれがある。
【0035】
以上のことから、銅層4aの半導体素子9が搭載される搭載部となる絶縁枠体5の内側に位置する部位の上面の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0036】
一方、半導体素子9が搭載される上面とは反対側の基体2の下面に接合された銅層4bの下面の算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)であることが好ましい。通常、半導体素子収納用パッケージ8は、アルミニウムや銅等の金属体あるいは、高熱伝導を有するセラミック体から成る支持基板へネジ止めにより、またははんだ等の溶融金属・ロウ材を用いて接続される。このとき、基体2の下面の銅層4bの下面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合には、半導体素子収納用パッケージ8と支持基板とを十分に密着させることが困難となり、両者の間に空隙やボイドが発生してしまい、その結果、半導体素子9で発生した熱を半導体素子収納用パッケージ8からこの支持基板へ効率良く伝達させることができなくなるおそれがある。したがって、下面の銅層4bの外側表面となる下面は、支持基板との良好な密着性が得られるように平滑であることが望ましい。
【0037】
よって、半導体素子9が搭載される上面とは反対側の、基体2の貫通金属体3が埋設されている部位の下面に接合された銅層4bの下面の算術平均粗さRaは、Ra≦30(μm)で表面が平滑であることが好ましい。
【0038】
銅層4(4a,4b)の厚みは、それぞれ800μmより厚くなると基体2と銅層4(4a,4b)との熱膨張差によって発生する応力が大きくなり十分な接合強度が得られない傾向があることから、800μm以下としておくことが望ましい。また、銅層4(4a,4b)の厚みが50μm以上であれば、半導体素子9の作動に伴い発生する熱が銅層4(4a,4b)の平面方向に十分広がるので、放熱部材1の熱放散性はさらに向上する。
【0039】
さらに、本発明の半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13においては、放熱部材1の側面は、封止樹脂12で覆われることから、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)になるように、例えば研磨されている。なお、この放熱部材1の側面は、銅層4(4a,4b)が基体2の外周縁まで延設されている場合には基体2の側面とこれら銅層4(4a,4b)の側面とで構成されることとなり、銅層4(4a,4b)が基体2の外周縁まで到達していない場合には基体2の側面のみで構成されることとなる。
【0040】
放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaがRa>30(μm)の場合は、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面に水分が吸着しやすくなり、半導体素子収納用パッケージ8を外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、吸着した水分が微小な水蒸気爆発をおこすこととなって、その結果、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0041】
また、放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaがRa<0.05(μm)の場合は、放熱部材1の側面と封止樹脂12とが接触する面積が減少すると同時に放熱部材1の側面への封止樹脂12の投錨効果が小さくなるため、放熱部材1の側面と封止樹脂12との接合強度が低下し、放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面で剥離が発生するおそれがある。
【0042】
以上のことから、放熱部材1の封止樹脂12で覆われる側面の算術平均粗さRaは、0.05≦Ra≦30(μm)であることが望ましい。
【0043】
なお、放熱部材1の基体2の上下面に接合される銅層4(4a,4b)の材料は、純銅に限られるものではなく、熱伝導性が良好でタングステンまたはモリブデンと銅とのマトリックスである基体2と十分な接合強度が得られるものであれば、銅を主成分とする各種の銅合金であっても構わない。これは、銅から成る貫通金属体3についても同様である。
【0044】
また、放熱部材1の基体2の上下面に接合される銅層4(4a,4b)は、少なくとも複数の貫通金属体3が埋設されている部位の上下面のうち、上面については絶縁枠体5の内側に位置する部位に、また下面については貫通金属体3が埋設されている部位を覆うように形成されていれば十分であり、必ずしも図1に示すように放熱部材1の基体2の上下面の全面を覆うように形成される必要はない。
【0045】
かくして、上述の半導体素子収納用パッケージ8によれば、放熱部材1の搭載部上に半導体素子9をガラス・樹脂・ロウ材等から成る接着剤10を介して接着固定するとともに、半導体素子9の各電極をボンディングワイヤ11を介して所定の端子6に電気的に接続し、しかる後に、図1に示すように、半導体素子9,搭載部,絶縁枠体5および端子6を放熱部材1の側面まで覆う封止樹脂12でもって端子6の外側端部を露出させて封止することによって、製品としての半導体装置13となる。
【0046】
【実施例】
次に、以下のようにしてサンプルを作製し、本発明の半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置の評価を行なった。
【0047】
まず、図1に示した放熱部材1として、大きさが34mm×17.4mmで、厚みが1.9mmのものを準備した。
【0048】
放熱部材1の基体2は、タングステンと銅とから成るマトリックス材で形成し、その厚みは1.52mmとした。また、放熱部材1の銅層4aおよび銅層4bは、それぞれ厚みを0.19mmとした。
【0049】
銅層4aおよび放熱部材1の側面は研摩を行ない、算術平均粗さRaがそれぞれ0.01μmから36μmまでの18種類のものを準備した。
【0050】
これら放熱部材1に、材質がアルミナセラミックスの絶縁枠体5とFe−Ni−Co合金の端子6とをAg−Cuロウ材を用いて接続し、半導体素子収納用パッケージ8を得た。
【0051】
この半導体素子収納用パッケージ8の絶縁枠体5の内側に位置する銅層4aの上面に、Siから成る半導体素子9(大きさ5mm×5mm、厚み0.3mm)をAuSnロウ材を用いて搭載した後、エポキシ系の封止樹脂12でもって半導体素子9を搭載した半導体素子収納用パッケージ8の上面および側面を封止し、半導体装置13を得た。
【0052】
これら半導体装置13を温度サイクル試験装置に−55℃〜125℃の条件下で投入し、一定の試験サイクル数の後に取り出し、半導体素子9と銅層4(4a)との接合界面部および放熱部材1の側面部と封止樹脂12との接合界面部の界面状態を超音波探傷装置およびマイクロX線装置で観察し、剥離発生の有無を確認した。
【0053】
以上の評価試験について、表1に試験結果を示す。
【0054】
表1は、温度サイクル試験に投入した半導体装置13における温度サイクル試験投入サイクル数と、そのときの半導体素子9と銅層4との界面(表1中では「銅層上部」で示す)および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面(表1中では「側面」で示す)における剥離の発生を調べ、剥離の発生が見られなかったものをOKとし、剥離の発生が見られたものをNGとして、銅層上部(銅層4aの上面)および放熱部材1の側面の算術平均粗さ(単位:μm)毎に示したものである。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す結果から分かるように、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値と、半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離発生には、明確な関係があることが分かった。
【0057】
すなわち、表1に示すように、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が0.05μm未満の場合は、投入サイクル数が1000あるいはそれ以下で半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面に剥離が発生し、半導体装置9は高い封止信頼性を有していないことを見出した。
【0058】
また、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が30μmより大きい場合についても、投入サイクル数が1000あるいはそれ以下で半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離が発生し、高い封止信頼性を有していないことを見出した。
【0059】
これに対し、本発明の半導体素子収納用パッケージ8および半導体装置13である、銅層4aの上面および放熱部材1の側面の算術平均粗さRaの値が0.05μm以上30μm以下のサンプルにおいては、投入サイクル数が1000であっても半導体素子9と銅層4との界面および放熱部材1の側面と封止樹脂12との界面での剥離が発生せず、高い封止信頼性を有していることが分かった。
【0060】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、半導体素子9で発生した熱を放熱部材1から大気中に効率良く放散させるために、放熱部材1の基体2の下面に接合された銅層4bに、放熱フィンを接続したり、放熱フィンをロウ付け等で接合して放熱フィンが放熱部材1と一体化した形状としてもよく、これによって、半導体素子9の作動に伴い発生する熱を放熱部材1により吸収するとともに大気中に放散させる作用をさらに向上することができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、放熱部材の基体の半導体素子の搭載部に、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を埋設したことから、タングステンと銅とのマトリクスのみで形成された放熱部材に比べて、半導体素子の搭載部の下により多くの銅から成る高熱伝導部分を配置することができるので、半導体素子で発生した熱を半導体素子の搭載面に垂直な方向により多く伝えることができ、その結果、半導体素子に発生する熱をこの放熱部材を介して大気中あるいは外部放熱板に良好に放散することができる。
【0062】
さらに、放熱部材の半導体素子の搭載部の下に埋設された、基体の上面から下面まで貫通する銅から成る複数の貫通金属体を、基体の上下面に接合されている銅層と直接接合していることから、これら銅層と貫通金属体とにより半導体素子で発生する熱の放熱部材内における伝達を極めて良好なものとすることができる。これらの結果、半導体素子の熱を良好に放散させることができ、半導体素子を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0063】
また、放熱部材の基体の上面に接合された銅層の半導体素子の搭載部を含む絶縁枠体の内側に位置する上面は、算術平均粗さRaを0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、半導体素子をガラス・樹脂・ロウ材等の接着剤を介して放熱部材の搭載部に接着固定する際のボイド発生が無く、その結果、半導体素子を強固に接続することができることから、半導体素子で発生する熱を放熱部材へ効率良く伝達することが可能になり、かつ放熱部材と封止樹脂とが接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0064】
さらに、封止樹脂で覆われる放熱部材の側面も、算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)としたことから、放熱部材の側面と封止樹脂との接合界面に水分が吸着することがなく、半導体収納用パッケージを外部配線基板に半田を介して接続する際の加熱時に、微小な水蒸気爆発による放熱部材と封止樹脂との剥離が発生するおそれがなく、かつ放熱部材の側面においても封止樹脂と接触する面積を十分に確保することができると同時に放熱部材への封止樹脂の投錨効果を増加させることができ、放熱部材と封止樹脂との接合強度を増加させることができる。
【0065】
また、本発明の半導体装置によれば、上記構成の本発明の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともにこの半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることから、以上のような本発明の半導体素子収納用パッケージの特長を備えた、放熱特性が極めて良好で封止樹脂による封止信頼性も極めて良好な、長期にわたって安定して半導体素子を作動させることができる半導体装置を提供することができる。
【0066】
以上により、本発明によれば、半導体素子の発した熱を外部や大気中に良好に放散させることができ、かつ半導体素子を放熱部材に強固に接着させると同時に封止樹脂による高い封止信頼性を有する半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージおよびそれを用いた半導体装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・放熱部材
2・・・・・基体
3・・・・・貫通金属体
4、4a、4b・・・・・銅層
5・・・・・絶縁枠体
6・・・・・端子
8・・・・・半導体素子収納用パッケージ
9・・・・・半導体素子
12・・・・・封止樹脂
13・・・・・半導体装置
Claims (2)
- 上面の中央部に半導体素子が搭載される搭載部を有する平板状の放熱部材と、該放熱部材の上面に前記搭載部を取り囲んで取着された絶縁枠体と、前記絶縁枠体の上部に取着された端子とから成り、前記半導体素子が搭載された後に該半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子が前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止される半導体素子収納用パッケージであって、前記放熱部材は、タングステンまたはモリブデンと銅とのマトリクスから成る平板状の基体の前記搭載部の上面から下面にかけて銅から成る複数の貫通金属体が埋設されているとともに、少なくとも前記基体の前記絶縁枠体の内側に位置する部位の上面および前記貫通金属体が埋設されている部位の下面に銅層が接合されており、前記絶縁枠体の内側に位置する前記銅層の上面と前記放熱部材の側面とは、それぞれ算術平均粗さRaが0.05≦Ra≦30(μm)であることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
- 請求項1記載の半導体素子収納用パッケージの前記搭載部に半導体素子を搭載するとともに該半導体素子の電極と前記端子とを電気的に接続し、前記半導体素子,前記搭載部,前記絶縁枠体および前記端子を前記放熱部材の側面までを覆う封止樹脂でもって前記端子の外側端部を露出させて封止して成ることを特徴とする半導体装置。
Priority Applications (2)
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2003009843A Pending JP2004221478A (ja) | 2003-01-15 | 2003-01-17 | 半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111788675A (zh) * | 2018-03-20 | 2020-10-16 | 株式会社村田制作所 | 高频模块 |
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2003
- 2003-01-17 JP JP2003009843A patent/JP2004221478A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100720607B1 (ko) | 2004-08-06 | 2007-05-21 | 가부시키가이샤 덴소 | 반도체장치 |
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