JP2004232777A - 車両用高圧ガス容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料ガスの充填に伴う容器本体の温度上昇を防止するとともに、車両走行中における容器本体の温度低下を抑える。
【解決手段】燃料ガス充填時に容器本体3を冷却するとともに、車両走行中には容器本体3の温度低下を抑える熱交換システムを設ける。熱交換システムは、冷媒タンク7からの冷媒28を熱交換用配管25を通して容器本体3の周囲に循環させる構造とされ、この熱交換システムの動作は、容器本体3の温度や冷媒28の温度を基に、サブコントローラ6によって制御される。
【選択図】 図2
【解決手段】燃料ガス充填時に容器本体3を冷却するとともに、車両走行中には容器本体3の温度低下を抑える熱交換システムを設ける。熱交換システムは、冷媒タンク7からの冷媒28を熱交換用配管25を通して容器本体3の周囲に循環させる構造とされ、この熱交換システムの動作は、容器本体3の温度や冷媒28の温度を基に、サブコントローラ6によって制御される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧水素ガス等の燃料ガスが充填される高圧ガス容器に関するものであり、特に、車両用の高圧ガス容器における温度制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば燃料電池車両の駆動動力源となる燃料電池システムでは、燃料電池スタックに燃料である水素ガスを供給する水素供給源が必要であり、このような水素供給源として、水素ガスが高圧状態で充填される高圧ガス容器を燃料電池スタック等とともに車両に搭載することが一般的に行われている。燃料電池システムでは、この高圧ガス容器内の水素ガスを流量制御弁等で流量制御し、水素供給配管を通して燃料電池スタックの燃料極に供給している。したがって、高圧ガス容器内の水素残量が減少した時には、例えばガソリンスタンドのような水素ステーションにおいて、水素ガスを高圧ガス容器内に補填する必要がある。
【0003】
ところで、高圧ガス容器に燃料ガスを充填する際には、充填に伴って容器内の温度が上昇することが知られている。特に、燃料ガスを急速に充填すると、急激に容器内の温度が上昇し、容器内の燃料ガスが満量に達する前に容器内圧が上昇し過ぎたり、容器の加熱により溶栓弁が開いてしまう虞れがある。このため、高圧ガス容器への燃料ガスの充填をゆっくりと行わなければならず、充填時間を短縮することができないという不都合が生ずる。例えば、燃料電池車両において、燃料である水素ガスの充填に長時間を要することは、使用者にとっては非常に不便であり、その普及の妨げになる虞れがある。
【0004】
また、高圧ガス容器には、通常、異常温度や異常圧力による容器の破壊を防止するためのリリーフ弁を設けているが、外気温度が高く、燃料ガス流量が多い条件下では、容器内圧がリリーフ設定圧に近くなることも予想され、十分な量の燃料ガスを貯蓄できなくなることも懸念される。
【0005】
そこで、このような問題の解決策として、燃料ガスを充填する際の温度制御技術が提案されている(例えば、特許文献1等を参照。)。この特許文献1に記載される技術は、充填装置側の技術であり、充填する燃料ガスの温度を空冷にて冷却するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−230698号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1記載の技術では、充填装置側で燃料ガスを冷却して容器温度上昇を防止するという構成が開示されるのみであり、車両走行中の容器温度低下防止については何ら考慮されていない。
【0008】
車両用の燃料電池システムに用いられる高圧ガス容器においては、車両走行中は断熱膨張により逆に容器温度が低下する。特に、高負荷走行条件下では高圧ガス容器から燃料電池スタックへ供給されるガス流量が多くなるため、容器温度低下幅が増加することになる。
【0009】
このように、車両に搭載され燃料ガスが充填される高圧ガス容器では、燃料ガスの充填時と車両走行中との双方において温度変化幅が大きいため、材質の経時劣化による水素漏れ等も懸念される。したがって、このような高圧ガス容器においては、燃料ガスを充填する際の温度上昇ばかりでなく、車両走行中の温度低下についても有効な対策を講じて、高い信頼性を確保することが求められる。
【0010】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、燃料ガスの充填に伴う温度上昇を防止し得るのみならず、車両走行中の容器温度低下を抑えることができ、高い信頼性が得られる車両用高圧ガス容器を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用高圧ガス容器は、車両に搭載され、燃料ガスが高圧状態で充填されるものであり、容器本体と、熱交換手段とを備える。そして、熱交換手段が、燃料ガス充填時に容器本体を冷却するとともに、車両走行中には容器本体の温度低下を抑える。熱交換手段としては、例えば、冷媒タンクと、容器本体の周囲に配設された熱交換用配管と、冷媒タンクに貯留される冷媒を熱交換用配管を通して循環させる循環ポンプとが設けられる。
【0012】
燃料ガスの充填時には、燃料ガスが圧縮されることにより容器本体の温度が上昇することになるが、本発明の車両用高圧ガス容器では、例えば、容器本体の周囲に配設された熱交換用配管を流れる冷媒と容器本体との間で熱交換が行われることで、容器本体が冷却される。一方、車両走行時、特に高負荷走行時においては、燃料ガスの断熱膨張により容器本体の温度が低下することになるが、本発明の車両用高圧ガス容器では、例えば、燃料ガスの充填時に蓄熱した冷媒が前記熱交換用配管を流れ、この冷媒と容器本体との間で熱交換が行われることで、容器本体の温度低下も有効に抑えられる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の車両用高圧ガス容器によれば、燃料ガスの充填に伴う容器本体の温度上昇を有効に抑制することができるとともに、車両走行中の容器温度低下も抑えることができる。そして、燃料ガス充填時における容器本体の温度上昇が防止されることで、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となる。また、車両走行中における容器本体の温度低下も抑えられることで、燃料ガス充填時と車両走行中との双方において温度変化幅を抑えることができ、材質の経時劣化を抑え、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した車両用高圧ガス容器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態の高圧ガス容器は、例えば車両用燃料電池システムにおいて、燃料電池に供給する燃料である水素ガスを貯蔵しておくタンクとして、車両に搭載されるものである。
【0016】
燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の概略構成を図1に示す。この図1に示すように、燃料電池車両では、車両本体1に、車両本体1を駆動するためのモータに電力を供給する燃料電池スタック2や、この燃料電池スタック2に供給される燃料ガス(水素ガス)を貯蔵しておく高圧ガス容器の容器本体(高圧水素ガスタンク)3等が搭載される。車両本体1には、ガソリンを燃料とするガソリン自動車と同様、フューエルリッド4が設けられており、ここから高圧ガス容器の容器本体3内に燃料ガスが補充されるようになっている。
【0017】
燃料電池スタック2は、水素が供給されるアノード極と酸素(空気)が供給されるカソード極とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされて発電セルが構成されるとともに、複数の発電セルが多段積層された構造を有し、電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。アノード極では、高圧ガス容器の容器本体3から燃料ガスである水素ガスが供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、カソード極にそれぞれ移動する。カソード極では、供給された空気中の酸素とアノード極からの水素イオン及び電子が反応して水が生成し、外部に排出される。
【0018】
このような燃料電池スタック2は、車両本体1内部のレイアウト性や重量バランス等を考慮して、例えば車両本体1のフロアパネル下部に配設される。また、この燃料電池スタック2に接続される容器本体3も、フロアパネル下部の燃料電池スタック2に比較的近い位置に配設される。
【0019】
また、車両本体1には、燃料電池システムを含む燃料電池車両全体の制御を行う車両コントローラ5が搭載されており、燃料電池車両の運転状態に応じて、燃料電池スタック2の出力や、容器本体3からの燃料ガス流量等が制御される。
【0020】
また、本実施形態の高圧ガス容器には、容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムが設けられており、この熱交換システムの制御を行うためのサブコントローラ6や、熱交換を行う冷媒を貯蔵するための冷媒タンク7等が車両本体1の適所に設置されている。
【0021】
したがって、本実施形態の燃料電池車両では、高圧ガス容器における容器本体3の温度変化に対応して熱交換システムが作動し、容器本体3が常に最適な温度状態となるように制御される。例えば、燃料ガスの充填時に燃料ガスが圧縮されることにより容器本体3の温度が上昇した場合には、冷媒タンク7内の冷媒を容器本体3の周囲に循環させることで、温度上昇が抑えられる。一方、燃料電池車両の走行時に燃料ガスの断熱膨張により容器本体3の温度が低下した場合には、燃料ガスの充填時に容器本体3を冷却することで蓄熱した冷媒を容器本体3の周囲に循環させることで、温度低下が抑えられる。
【0022】
以下、このような容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムを備えた高圧ガス容器の構造について詳述する。
【0023】
本実施形態の高圧ガス容器において、容器本体3は、図2に示すように、容器バンド11によってフレーム12に固定されている。そして、このフレーム12が車両本体1に固定されることで、容器本体3は車両本体1に搭載されている。
【0024】
本実施形態の高圧ガス容器において、容器本体3からの燃料ガス供給系としては、燃料電池スタック2へ燃料ガス(水素ガス)を供給するための供給ポート13、主止弁14、供給配管15、及び減圧弁16が備えられている。容器本体3内の燃料ガスは、車両コントローラ5により前記主止弁14や減圧弁16を制御することにより流量が調整された上で、供給配管15を通して燃料電池スタック2へ供給されることになる。なお、前記主止弁14は、容器本体3内に内蔵されるタイプのものであってもよい。
【0025】
一方、容器本体3への燃料ガスの充填機構としては、燃料ガス充填ポート17、逆止弁18、充填用配管19及び充填用レセプタクル20が設けられている。充填用レセプタクル20は、車両本体1のフューエルリッド4内に設置されており、例えば水素ステーションで燃料ガス(水素ガス)を充填する場合、ディスペンサ21から引き出された充填ホース22先端のノズル23を前記充填用レセプタクル20に装着して、燃料ガスの充填を行う。充填用レセプタクル20からの燃料ガスは、前記逆止弁18を介して充填用配管19により燃料ガス充填ポート17へと導かれ、容器本体3内に充填される。なお、前記逆止弁18は、先の主止弁14と同様、容器本体3内に内蔵されるタイプのものであってもよい。
【0026】
図3は、前記充填用レセプタクル20近傍の詳細構成を示すものである。充填用レセプタクル20は、車両本体1のフューエルリッド4の内側に取り付けられ、先端にはゴミ等の侵入を防止するためのキャップ20aが取り外し可能な状態で取り付けられている。フューエルリッド4は、回転軸4aを中心に回動することにより開閉可能とされているが、これを閉じたときにフューエルリッド4の先端が当接する位置に、フューエルリッド4の開閉状態を検知するリッドスイッチ24が設けられている。このリッドスイッチ24の信号は前記サブコントローラ6に送られ、これにより、容器本体3における燃料ガスの充填状態が判別される。すなわち、サブコントローラ6は、フューエルリッド4の開閉に連動してリッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号により、容器本体3が充填状態であるか否かを判別する。
【0027】
以上が燃料電池車両に搭載される高圧ガス容器の基本構成であるが、本実施形態の高圧ガス容器においては、更に、容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムが設けられている。この熱交換システムは、容器本体3の周囲に巻回される熱交換用配管25と、この熱交換用配管25に冷媒を供給する冷媒供給配管26、熱交換用配管25を循環した後の冷媒を回収するリターン配管27、さらには冷媒28を貯蔵する冷媒タンク7を備えている。また、冷媒供給配管26の中途部には、冷媒タンク7内の冷媒28を循環させるための循環ポンプ29及びこの循環ポンプ29を駆動するモータ30が設けられており、冷媒タンク7内の冷媒28は、この循環ポンプ29によって冷媒供給配管26を通して熱交換用配管25へと送り込まれるようになっている。
【0028】
図4は、冷媒タンク7の詳細構成を示すものである。冷媒タンク7の周囲には、外気温度の影響を最小限に抑えるための断熱材31が取り付けられている。なお、断熱効果を高めるための構造として、冷媒タンク7を2重構造(例えば2重の円筒形)とし、2重にした間の空間を真空にすることも可能である。また、冷媒タンク7から前記熱交換用配管25に至るまでの配管(冷媒供給配管26及びリターン配管27)も断熱構造とすることが好ましい。
【0029】
また、冷媒タンク7内には、冷媒供給配管26及びリターン配管27の先端が冷媒28に浸るように挿入されているが、冷媒供給配管26の先端(冷媒供給口)にはフィルタ26aが取り付けられている。さらに、冷媒タンク7内には、冷媒28の温度を検出する冷媒温度センサ32が設けられ、リード線33を介してサブコントローラ6と接続されている。
【0030】
また、容器本体3には、当該容器本体3の温度を検出する容器温度センサ33や、当該容器本体3内の圧力を検出する容器内圧力センサ34が設けられている。これら容器温度センサ33や容器内圧力センサ34の信号は、いずれもサブコントローラ6に送られる。また、車両コントローラ5は、燃料電池車両の走行状態、例えば燃料電池車両の走行速度等から負荷状態を判定する機能を有し、燃料電池車両の負荷状態を示す信号をサブコントローラ6に出力する。
【0031】
本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、以上の構成の熱交換システムによって容器本体3の温度が適正に制御されることになるが、ここで、容器本体3における温度変化について説明する。
【0032】
先ず、燃料ガスを充填する際の容器本体3の温度の変化について、図5を用いて説明する。横軸を時間、縦軸を容器温度とした場合、燃料ガス充填時の容器本体3の温度は、図5中の曲線Aで示すような上昇カーブとなる。外気温度が高い夏場では、充填初期における容器本体3の温度が高いため、破線で示す曲線Bのように、その差分だけ最高到達温度も上昇することになる。
【0033】
容器本体3には、当該容器本体3の温度が異常に高くなった場合の容器保護を目的としてリリーフ機能を備えているが、図5中の線aは、そのリリーフ設定温度Trを示す。また、図5中の線bは、リリーフ温度を超えないよう常用使用範囲の許容最高温度Tnを定めたものである。図5に示すように、外気温度によっては、燃料ガスが十分に充填されていない状態であっても、容器本体3の温度が許容最高温度Tnを越えてリリーフ設定温度Trに近づくことも起こり得る。
【0034】
次に、車両走行中における容器本体3の温度変化について、図6を用いて説明する。図5と同様に横軸を時間、縦軸を容器温度とした場合、車両走行中における容器本体3の温度は、図6中の曲線Cで示すような温度カーブとなる。この線Cで示す温度カーブは、市街地走行等の低負荷走行条件下での容器本体3の温度変化を示したものである。温度低下の要因は、容器本体3内の燃料ガスが外部に流出することによる断熱膨張によるもので、外部に流出する燃料ガスの流量が大きいほど容器本体3の温度低下が大きくなる。
【0035】
高速道路を一定速で走行する場合や山岳路を長時間運転した場合の高負荷走行条件下では、外気温度にもよるが、容器本体3の温度は、図6中の曲線Dで示すような温度カーブとなる。図6に示すように、高負荷走行を長時間行った場合には、容器本体3の温度が0℃を下回る場合もある。
【0036】
そこで、本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、以上のような容器本体3の温度変化に対応して、サブコントローラ6により熱交換システムが動作制御されるようになっている。以下、このサブコントローラ6による制御の一例について説明する。
【0037】
先ず、燃料ガス充填時におけるサブコントローラ6による制御について、図7を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS1でリッドスイッチ24からの信号を、ステップS2で容器温度センサ33からの信号を、ステップS3で冷媒温度センサ32からの信号を、それぞれ読み込む。
【0038】
そして、サブコントローラ6は、ステップS4において、リッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号によりフューエルリッド4の開閉状態を判断し、フューエルリッド4が開いている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS5へ進む。一方、フューエルリッド4が閉じている場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS8へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0039】
次に、サブコントローラ6は、ステップS5において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっているかどうかを判断する。そして、容器本体3の温度が所定値以上である場合にはステップS6へ進み、容器本体3の温度が所定値未満である場合には、ステップS8へ進む。
【0040】
次に、サブコントローラ6は、ステップS6において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度と、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度とを比較する。そして、容器本体3の温度が冷媒28の温度以上の場合には、ステップS7において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0041】
燃料ガスの充填が終了してフューエルリッド4が閉じられると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。このとき、冷媒28には容器本体3からの熱が蓄積されており、また冷媒タンク7の周囲には断熱材31が取り付けられているので、冷媒28からの放熱は最小限に抑えられる。
【0042】
次に、車両走行中のサブコントローラ6による制御について、図8を参照して説明する。車両走行中においては、サブコントローラ6は、先ず、ステップS11で車両コントローラ5からの燃料電池車両の負荷状態を示す信号を、ステップS12で容器温度センサ33からの信号を、ステップS13で冷媒温度センサ32の信号を、それぞれ読み込む。
【0043】
そして、サブコントローラ6は、ステップS14において、車両コントローラ5からの信号を基に車両走行中における負荷状態を監視し、燃料電池車両が高負荷走行中であると判断した場合にはステップS15へ進む。一方、燃料電池車両が高負荷走行中ではないと判断した場合にはステップS18へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0044】
次に、サブコントローラ6は、ステップS15において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば5℃)以下となっているかどうかを判断する。そして、容器本体3の温度が所定値以下である場合にはステップS16に進み、容器本体3の温度が所定値を上回っている場合には、ステップS18に進む。
【0045】
次に、サブコントローラ6は、ステップS16において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度と、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度とを比較する。そして、容器本体3の温度が冷媒28の温度以下の場合には、ステップS17において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環される。このとき、冷媒28には、燃料ガス充填時における容器本体3からの熱が蓄熱されているので、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、燃料電池車両の高負荷走行時における容器本体3の温度低下が有効に抑制されることになる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっている。したがって、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態は、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、サブコントローラ6により容器本体3における燃料ガスの充填状態を判別する手法が第1の実施形態とは異なるものである。すなわち、第1の実施形態では、サブコントローラ6が、フューエルリッド4の開閉に連動してリッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号に基づき、容器本体3が充填状態であるか否かを判別していたのに対して、本実施形態では、サブコントローラ6が、容器本体3に設けられた容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づいて、容器本体3が充填状態であるか否かを判別するようにしている。以下、本実施形態において特徴的な部分であるコントローラ6による充填状態判別手法について説明する。
【0048】
図9は、燃料ガス充填時における容器本体6の内圧の変化を、横軸を時間、縦軸を容器内圧力として示したものである。図9に示すように、容器本体6の内圧は、燃料ガスの充填が開始された直後から徐々に上昇していき、充填が終了した後はほぼ一定の圧力に保たれることになる。
【0049】
そこで、サブコントローラ6は、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、例えば、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断する。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値P0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えば0.5MPa程度に設定される。
【0050】
また、サブコントローラ6は、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、単位時間Δt毎の圧力上昇幅ΔPを求め、ΔPをΔtで割った圧力勾配αを算出して、この圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力勾配αが基準値α0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断するようにしてもよい。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値α0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えばΔPが0.5MPa、Δtが5secとして、0.1MPa/sec程度に設定される。
【0051】
ここで、本実施形態における燃料ガス充填時のサブコントローラ6による制御について、図10を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS21で容器内圧力センサ34からの信号を、ステップS22で容器温度センサ33からの信号を、ステップS23で冷媒温度センサ32からの信号を、それぞれ読み込む。
【0052】
そして、サブコントローラ6は、ステップS24において、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えているか、或いは圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えているかを判断し、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えている場合、或いは圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS25へ進む。一方、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下の場合、或いは圧力勾配αが基準値α0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS28へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0053】
次に、サブコントローラ6は、上述した第1の実施形態と同様に、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっており(ステップS25)、且つ、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度以上となっていると判断すると(ステップS26)、ステップS27において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0054】
燃料ガスの充填が終了して、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下、或いは圧力勾配αが基準値α0以下となると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。
【0055】
なお、車両走行中におけるサブコントローラ6による制御は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
以上のように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においても、第1の実施形態と同様、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっているので、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。また、本実施形態の車両高圧ガス容器においては、容器本体3が充填状態にあるか否かの判断を、容器本体3の圧力上昇幅或いは圧力勾配に基づいて行っているので、充填状態の判断をより正確に行うことができ、容器本体3の温度制御を更に高精度に行うことができる。
【0057】
(第3の実施形態)
本実施形態は、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、サブコントローラ6が、容器本体3に設けられた容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づいて、容器本体3が充填状態であるか否かを判別するようにしていることを特徴としたものである。以下、本実施形態において特徴的な部分であるコントローラ6による充填状態判別手法について説明する。
【0058】
図11は、燃料ガス充填時における容器本体6の内部温度の変化を、横軸を時間、縦軸を容器内温度として示したものである。図9に示すように、容器本体6の内部温度は、燃料ガスの充填が開始された直後から徐々に上昇していき、充填が終了した後はほぼ一定の温度に保たれることになる。
【0059】
そこで、サブコントローラ6は、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、例えば、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力上昇幅ΔTが基準値T0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断する。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値T0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えば1℃程度に設定される。
【0060】
また、サブコントローラ6は、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、単位時間Δt毎の温度上昇幅ΔTを求め、ΔTをΔtで割った温度勾配βを算出して、この温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、温度勾配βが基準値β0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断するようにしてもよい。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値β0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えばΔTが1℃、Δtが2secとして、0.5℃/sec程度に設定される。
【0061】
ここで、本実施形態における燃料ガス充填時のサブコントローラ6による制御について、図12を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS31で容器温度センサ33からの信号を、ステップS32で冷媒温度センサ32からの信号をそれぞれ読み込む。
【0062】
そして、サブコントローラ6は、ステップS33において、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えているか、或いは温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えているかを判断し、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えている場合、或いは温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS34へ進む。一方、容器本体6の温度上昇幅ΔTが基準値T0以下の場合、或いは温度勾配βが基準値β0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS37へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0063】
次に、サブコントローラ6は、上述した第1の実施形態と同様に、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっており(ステップS34)、且つ、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度以上となっていると判断すると(ステップS35)、ステップS36において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0064】
燃料ガスの充填が終了して、容器本体6の温度上昇幅ΔTが基準値T0以下、或いは温度勾配βが基準値β0以下となると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。
【0065】
なお、車両走行中におけるサブコントローラ6による制御は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
以上のように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においても、第1の実施形態と同様、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっているので、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。また、本実施形態の車両高圧ガス容器においては、容器本体3が充填状態にあるか否かの判断を、容器本体3の温度上昇幅或いは温度勾配に基づいて行っているので、充填状態の判断をより正確に行うことができ、容器本体3の温度制御を更に高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池車両の概略構成を示す図である。
【図2】本発明を適用した車両用高圧ガス容器の全体構成を示す図である。
【図3】充填用レセプタクル近傍の詳細な構成を示す図である。
【図4】冷媒タンクの詳細な構成を示す図である。
【図5】燃料ガス充填時における容器本体の温度変化の様子を示す特性図である。
【図6】燃料電池車両の走行中における容器本体の温度変化の様子を示す特性図である。
【図7】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】燃料電池車両走行時におけるサブコントローラによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】燃料ガス充填時における容器本体の内圧変化の様子を示す図である。
【図10】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の他の例を示すフローチャートである。
【図11】燃料ガス充填時における容器本体の温度変化の様子を示す図である。
【図12】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の更に他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両本体
2 燃料電池スタック
3 容器本体
4 フューエルリッド
6 サブコントローラ
7 冷媒タンク
24 リッドスイッチ
25 熱交換用配管
28 冷媒
32 冷媒温度センサ
33 容器温度センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧水素ガス等の燃料ガスが充填される高圧ガス容器に関するものであり、特に、車両用の高圧ガス容器における温度制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば燃料電池車両の駆動動力源となる燃料電池システムでは、燃料電池スタックに燃料である水素ガスを供給する水素供給源が必要であり、このような水素供給源として、水素ガスが高圧状態で充填される高圧ガス容器を燃料電池スタック等とともに車両に搭載することが一般的に行われている。燃料電池システムでは、この高圧ガス容器内の水素ガスを流量制御弁等で流量制御し、水素供給配管を通して燃料電池スタックの燃料極に供給している。したがって、高圧ガス容器内の水素残量が減少した時には、例えばガソリンスタンドのような水素ステーションにおいて、水素ガスを高圧ガス容器内に補填する必要がある。
【0003】
ところで、高圧ガス容器に燃料ガスを充填する際には、充填に伴って容器内の温度が上昇することが知られている。特に、燃料ガスを急速に充填すると、急激に容器内の温度が上昇し、容器内の燃料ガスが満量に達する前に容器内圧が上昇し過ぎたり、容器の加熱により溶栓弁が開いてしまう虞れがある。このため、高圧ガス容器への燃料ガスの充填をゆっくりと行わなければならず、充填時間を短縮することができないという不都合が生ずる。例えば、燃料電池車両において、燃料である水素ガスの充填に長時間を要することは、使用者にとっては非常に不便であり、その普及の妨げになる虞れがある。
【0004】
また、高圧ガス容器には、通常、異常温度や異常圧力による容器の破壊を防止するためのリリーフ弁を設けているが、外気温度が高く、燃料ガス流量が多い条件下では、容器内圧がリリーフ設定圧に近くなることも予想され、十分な量の燃料ガスを貯蓄できなくなることも懸念される。
【0005】
そこで、このような問題の解決策として、燃料ガスを充填する際の温度制御技術が提案されている(例えば、特許文献1等を参照。)。この特許文献1に記載される技術は、充填装置側の技術であり、充填する燃料ガスの温度を空冷にて冷却するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−230698号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1記載の技術では、充填装置側で燃料ガスを冷却して容器温度上昇を防止するという構成が開示されるのみであり、車両走行中の容器温度低下防止については何ら考慮されていない。
【0008】
車両用の燃料電池システムに用いられる高圧ガス容器においては、車両走行中は断熱膨張により逆に容器温度が低下する。特に、高負荷走行条件下では高圧ガス容器から燃料電池スタックへ供給されるガス流量が多くなるため、容器温度低下幅が増加することになる。
【0009】
このように、車両に搭載され燃料ガスが充填される高圧ガス容器では、燃料ガスの充填時と車両走行中との双方において温度変化幅が大きいため、材質の経時劣化による水素漏れ等も懸念される。したがって、このような高圧ガス容器においては、燃料ガスを充填する際の温度上昇ばかりでなく、車両走行中の温度低下についても有効な対策を講じて、高い信頼性を確保することが求められる。
【0010】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、燃料ガスの充填に伴う温度上昇を防止し得るのみならず、車両走行中の容器温度低下を抑えることができ、高い信頼性が得られる車両用高圧ガス容器を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両用高圧ガス容器は、車両に搭載され、燃料ガスが高圧状態で充填されるものであり、容器本体と、熱交換手段とを備える。そして、熱交換手段が、燃料ガス充填時に容器本体を冷却するとともに、車両走行中には容器本体の温度低下を抑える。熱交換手段としては、例えば、冷媒タンクと、容器本体の周囲に配設された熱交換用配管と、冷媒タンクに貯留される冷媒を熱交換用配管を通して循環させる循環ポンプとが設けられる。
【0012】
燃料ガスの充填時には、燃料ガスが圧縮されることにより容器本体の温度が上昇することになるが、本発明の車両用高圧ガス容器では、例えば、容器本体の周囲に配設された熱交換用配管を流れる冷媒と容器本体との間で熱交換が行われることで、容器本体が冷却される。一方、車両走行時、特に高負荷走行時においては、燃料ガスの断熱膨張により容器本体の温度が低下することになるが、本発明の車両用高圧ガス容器では、例えば、燃料ガスの充填時に蓄熱した冷媒が前記熱交換用配管を流れ、この冷媒と容器本体との間で熱交換が行われることで、容器本体の温度低下も有効に抑えられる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の車両用高圧ガス容器によれば、燃料ガスの充填に伴う容器本体の温度上昇を有効に抑制することができるとともに、車両走行中の容器温度低下も抑えることができる。そして、燃料ガス充填時における容器本体の温度上昇が防止されることで、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となる。また、車両走行中における容器本体の温度低下も抑えられることで、燃料ガス充填時と車両走行中との双方において温度変化幅を抑えることができ、材質の経時劣化を抑え、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した車両用高圧ガス容器について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態の高圧ガス容器は、例えば車両用燃料電池システムにおいて、燃料電池に供給する燃料である水素ガスを貯蔵しておくタンクとして、車両に搭載されるものである。
【0016】
燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の概略構成を図1に示す。この図1に示すように、燃料電池車両では、車両本体1に、車両本体1を駆動するためのモータに電力を供給する燃料電池スタック2や、この燃料電池スタック2に供給される燃料ガス(水素ガス)を貯蔵しておく高圧ガス容器の容器本体(高圧水素ガスタンク)3等が搭載される。車両本体1には、ガソリンを燃料とするガソリン自動車と同様、フューエルリッド4が設けられており、ここから高圧ガス容器の容器本体3内に燃料ガスが補充されるようになっている。
【0017】
燃料電池スタック2は、水素が供給されるアノード極と酸素(空気)が供給されるカソード極とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされて発電セルが構成されるとともに、複数の発電セルが多段積層された構造を有し、電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。アノード極では、高圧ガス容器の容器本体3から燃料ガスである水素ガスが供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、カソード極にそれぞれ移動する。カソード極では、供給された空気中の酸素とアノード極からの水素イオン及び電子が反応して水が生成し、外部に排出される。
【0018】
このような燃料電池スタック2は、車両本体1内部のレイアウト性や重量バランス等を考慮して、例えば車両本体1のフロアパネル下部に配設される。また、この燃料電池スタック2に接続される容器本体3も、フロアパネル下部の燃料電池スタック2に比較的近い位置に配設される。
【0019】
また、車両本体1には、燃料電池システムを含む燃料電池車両全体の制御を行う車両コントローラ5が搭載されており、燃料電池車両の運転状態に応じて、燃料電池スタック2の出力や、容器本体3からの燃料ガス流量等が制御される。
【0020】
また、本実施形態の高圧ガス容器には、容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムが設けられており、この熱交換システムの制御を行うためのサブコントローラ6や、熱交換を行う冷媒を貯蔵するための冷媒タンク7等が車両本体1の適所に設置されている。
【0021】
したがって、本実施形態の燃料電池車両では、高圧ガス容器における容器本体3の温度変化に対応して熱交換システムが作動し、容器本体3が常に最適な温度状態となるように制御される。例えば、燃料ガスの充填時に燃料ガスが圧縮されることにより容器本体3の温度が上昇した場合には、冷媒タンク7内の冷媒を容器本体3の周囲に循環させることで、温度上昇が抑えられる。一方、燃料電池車両の走行時に燃料ガスの断熱膨張により容器本体3の温度が低下した場合には、燃料ガスの充填時に容器本体3を冷却することで蓄熱した冷媒を容器本体3の周囲に循環させることで、温度低下が抑えられる。
【0022】
以下、このような容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムを備えた高圧ガス容器の構造について詳述する。
【0023】
本実施形態の高圧ガス容器において、容器本体3は、図2に示すように、容器バンド11によってフレーム12に固定されている。そして、このフレーム12が車両本体1に固定されることで、容器本体3は車両本体1に搭載されている。
【0024】
本実施形態の高圧ガス容器において、容器本体3からの燃料ガス供給系としては、燃料電池スタック2へ燃料ガス(水素ガス)を供給するための供給ポート13、主止弁14、供給配管15、及び減圧弁16が備えられている。容器本体3内の燃料ガスは、車両コントローラ5により前記主止弁14や減圧弁16を制御することにより流量が調整された上で、供給配管15を通して燃料電池スタック2へ供給されることになる。なお、前記主止弁14は、容器本体3内に内蔵されるタイプのものであってもよい。
【0025】
一方、容器本体3への燃料ガスの充填機構としては、燃料ガス充填ポート17、逆止弁18、充填用配管19及び充填用レセプタクル20が設けられている。充填用レセプタクル20は、車両本体1のフューエルリッド4内に設置されており、例えば水素ステーションで燃料ガス(水素ガス)を充填する場合、ディスペンサ21から引き出された充填ホース22先端のノズル23を前記充填用レセプタクル20に装着して、燃料ガスの充填を行う。充填用レセプタクル20からの燃料ガスは、前記逆止弁18を介して充填用配管19により燃料ガス充填ポート17へと導かれ、容器本体3内に充填される。なお、前記逆止弁18は、先の主止弁14と同様、容器本体3内に内蔵されるタイプのものであってもよい。
【0026】
図3は、前記充填用レセプタクル20近傍の詳細構成を示すものである。充填用レセプタクル20は、車両本体1のフューエルリッド4の内側に取り付けられ、先端にはゴミ等の侵入を防止するためのキャップ20aが取り外し可能な状態で取り付けられている。フューエルリッド4は、回転軸4aを中心に回動することにより開閉可能とされているが、これを閉じたときにフューエルリッド4の先端が当接する位置に、フューエルリッド4の開閉状態を検知するリッドスイッチ24が設けられている。このリッドスイッチ24の信号は前記サブコントローラ6に送られ、これにより、容器本体3における燃料ガスの充填状態が判別される。すなわち、サブコントローラ6は、フューエルリッド4の開閉に連動してリッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号により、容器本体3が充填状態であるか否かを判別する。
【0027】
以上が燃料電池車両に搭載される高圧ガス容器の基本構成であるが、本実施形態の高圧ガス容器においては、更に、容器本体3の温度制御を行うための熱交換システムが設けられている。この熱交換システムは、容器本体3の周囲に巻回される熱交換用配管25と、この熱交換用配管25に冷媒を供給する冷媒供給配管26、熱交換用配管25を循環した後の冷媒を回収するリターン配管27、さらには冷媒28を貯蔵する冷媒タンク7を備えている。また、冷媒供給配管26の中途部には、冷媒タンク7内の冷媒28を循環させるための循環ポンプ29及びこの循環ポンプ29を駆動するモータ30が設けられており、冷媒タンク7内の冷媒28は、この循環ポンプ29によって冷媒供給配管26を通して熱交換用配管25へと送り込まれるようになっている。
【0028】
図4は、冷媒タンク7の詳細構成を示すものである。冷媒タンク7の周囲には、外気温度の影響を最小限に抑えるための断熱材31が取り付けられている。なお、断熱効果を高めるための構造として、冷媒タンク7を2重構造(例えば2重の円筒形)とし、2重にした間の空間を真空にすることも可能である。また、冷媒タンク7から前記熱交換用配管25に至るまでの配管(冷媒供給配管26及びリターン配管27)も断熱構造とすることが好ましい。
【0029】
また、冷媒タンク7内には、冷媒供給配管26及びリターン配管27の先端が冷媒28に浸るように挿入されているが、冷媒供給配管26の先端(冷媒供給口)にはフィルタ26aが取り付けられている。さらに、冷媒タンク7内には、冷媒28の温度を検出する冷媒温度センサ32が設けられ、リード線33を介してサブコントローラ6と接続されている。
【0030】
また、容器本体3には、当該容器本体3の温度を検出する容器温度センサ33や、当該容器本体3内の圧力を検出する容器内圧力センサ34が設けられている。これら容器温度センサ33や容器内圧力センサ34の信号は、いずれもサブコントローラ6に送られる。また、車両コントローラ5は、燃料電池車両の走行状態、例えば燃料電池車両の走行速度等から負荷状態を判定する機能を有し、燃料電池車両の負荷状態を示す信号をサブコントローラ6に出力する。
【0031】
本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、以上の構成の熱交換システムによって容器本体3の温度が適正に制御されることになるが、ここで、容器本体3における温度変化について説明する。
【0032】
先ず、燃料ガスを充填する際の容器本体3の温度の変化について、図5を用いて説明する。横軸を時間、縦軸を容器温度とした場合、燃料ガス充填時の容器本体3の温度は、図5中の曲線Aで示すような上昇カーブとなる。外気温度が高い夏場では、充填初期における容器本体3の温度が高いため、破線で示す曲線Bのように、その差分だけ最高到達温度も上昇することになる。
【0033】
容器本体3には、当該容器本体3の温度が異常に高くなった場合の容器保護を目的としてリリーフ機能を備えているが、図5中の線aは、そのリリーフ設定温度Trを示す。また、図5中の線bは、リリーフ温度を超えないよう常用使用範囲の許容最高温度Tnを定めたものである。図5に示すように、外気温度によっては、燃料ガスが十分に充填されていない状態であっても、容器本体3の温度が許容最高温度Tnを越えてリリーフ設定温度Trに近づくことも起こり得る。
【0034】
次に、車両走行中における容器本体3の温度変化について、図6を用いて説明する。図5と同様に横軸を時間、縦軸を容器温度とした場合、車両走行中における容器本体3の温度は、図6中の曲線Cで示すような温度カーブとなる。この線Cで示す温度カーブは、市街地走行等の低負荷走行条件下での容器本体3の温度変化を示したものである。温度低下の要因は、容器本体3内の燃料ガスが外部に流出することによる断熱膨張によるもので、外部に流出する燃料ガスの流量が大きいほど容器本体3の温度低下が大きくなる。
【0035】
高速道路を一定速で走行する場合や山岳路を長時間運転した場合の高負荷走行条件下では、外気温度にもよるが、容器本体3の温度は、図6中の曲線Dで示すような温度カーブとなる。図6に示すように、高負荷走行を長時間行った場合には、容器本体3の温度が0℃を下回る場合もある。
【0036】
そこで、本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、以上のような容器本体3の温度変化に対応して、サブコントローラ6により熱交換システムが動作制御されるようになっている。以下、このサブコントローラ6による制御の一例について説明する。
【0037】
先ず、燃料ガス充填時におけるサブコントローラ6による制御について、図7を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS1でリッドスイッチ24からの信号を、ステップS2で容器温度センサ33からの信号を、ステップS3で冷媒温度センサ32からの信号を、それぞれ読み込む。
【0038】
そして、サブコントローラ6は、ステップS4において、リッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号によりフューエルリッド4の開閉状態を判断し、フューエルリッド4が開いている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS5へ進む。一方、フューエルリッド4が閉じている場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS8へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0039】
次に、サブコントローラ6は、ステップS5において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっているかどうかを判断する。そして、容器本体3の温度が所定値以上である場合にはステップS6へ進み、容器本体3の温度が所定値未満である場合には、ステップS8へ進む。
【0040】
次に、サブコントローラ6は、ステップS6において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度と、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度とを比較する。そして、容器本体3の温度が冷媒28の温度以上の場合には、ステップS7において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0041】
燃料ガスの充填が終了してフューエルリッド4が閉じられると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。このとき、冷媒28には容器本体3からの熱が蓄積されており、また冷媒タンク7の周囲には断熱材31が取り付けられているので、冷媒28からの放熱は最小限に抑えられる。
【0042】
次に、車両走行中のサブコントローラ6による制御について、図8を参照して説明する。車両走行中においては、サブコントローラ6は、先ず、ステップS11で車両コントローラ5からの燃料電池車両の負荷状態を示す信号を、ステップS12で容器温度センサ33からの信号を、ステップS13で冷媒温度センサ32の信号を、それぞれ読み込む。
【0043】
そして、サブコントローラ6は、ステップS14において、車両コントローラ5からの信号を基に車両走行中における負荷状態を監視し、燃料電池車両が高負荷走行中であると判断した場合にはステップS15へ進む。一方、燃料電池車両が高負荷走行中ではないと判断した場合にはステップS18へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0044】
次に、サブコントローラ6は、ステップS15において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば5℃)以下となっているかどうかを判断する。そして、容器本体3の温度が所定値以下である場合にはステップS16に進み、容器本体3の温度が所定値を上回っている場合には、ステップS18に進む。
【0045】
次に、サブコントローラ6は、ステップS16において、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度と、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度とを比較する。そして、容器本体3の温度が冷媒28の温度以下の場合には、ステップS17において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環される。このとき、冷媒28には、燃料ガス充填時における容器本体3からの熱が蓄熱されているので、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、燃料電池車両の高負荷走行時における容器本体3の温度低下が有効に抑制されることになる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においては、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっている。したがって、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態は、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、サブコントローラ6により容器本体3における燃料ガスの充填状態を判別する手法が第1の実施形態とは異なるものである。すなわち、第1の実施形態では、サブコントローラ6が、フューエルリッド4の開閉に連動してリッドスイッチ24から送られるオン・オフ信号に基づき、容器本体3が充填状態であるか否かを判別していたのに対して、本実施形態では、サブコントローラ6が、容器本体3に設けられた容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づいて、容器本体3が充填状態であるか否かを判別するようにしている。以下、本実施形態において特徴的な部分であるコントローラ6による充填状態判別手法について説明する。
【0048】
図9は、燃料ガス充填時における容器本体6の内圧の変化を、横軸を時間、縦軸を容器内圧力として示したものである。図9に示すように、容器本体6の内圧は、燃料ガスの充填が開始された直後から徐々に上昇していき、充填が終了した後はほぼ一定の圧力に保たれることになる。
【0049】
そこで、サブコントローラ6は、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、例えば、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断する。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値P0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えば0.5MPa程度に設定される。
【0050】
また、サブコントローラ6は、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、単位時間Δt毎の圧力上昇幅ΔPを求め、ΔPをΔtで割った圧力勾配αを算出して、この圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力勾配αが基準値α0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断するようにしてもよい。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値α0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えばΔPが0.5MPa、Δtが5secとして、0.1MPa/sec程度に設定される。
【0051】
ここで、本実施形態における燃料ガス充填時のサブコントローラ6による制御について、図10を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS21で容器内圧力センサ34からの信号を、ステップS22で容器温度センサ33からの信号を、ステップS23で冷媒温度センサ32からの信号を、それぞれ読み込む。
【0052】
そして、サブコントローラ6は、ステップS24において、容器内圧力センサ34から送られるセンサ信号に基づき、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えているか、或いは圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えているかを判断し、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが予め設定された基準値P0を越えている場合、或いは圧力勾配αが予め設定された基準値α0を越えている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS25へ進む。一方、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下の場合、或いは圧力勾配αが基準値α0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS28へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0053】
次に、サブコントローラ6は、上述した第1の実施形態と同様に、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっており(ステップS25)、且つ、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度以上となっていると判断すると(ステップS26)、ステップS27において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0054】
燃料ガスの充填が終了して、容器本体6の圧力上昇幅ΔPが基準値P0以下、或いは圧力勾配αが基準値α0以下となると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。
【0055】
なお、車両走行中におけるサブコントローラ6による制御は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
以上のように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においても、第1の実施形態と同様、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっているので、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。また、本実施形態の車両高圧ガス容器においては、容器本体3が充填状態にあるか否かの判断を、容器本体3の圧力上昇幅或いは圧力勾配に基づいて行っているので、充填状態の判断をより正確に行うことができ、容器本体3の温度制御を更に高精度に行うことができる。
【0057】
(第3の実施形態)
本実施形態は、基本構成を上述した第1の実施形態と同様とし、サブコントローラ6が、容器本体3に設けられた容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づいて、容器本体3が充填状態であるか否かを判別するようにしていることを特徴としたものである。以下、本実施形態において特徴的な部分であるコントローラ6による充填状態判別手法について説明する。
【0058】
図11は、燃料ガス充填時における容器本体6の内部温度の変化を、横軸を時間、縦軸を容器内温度として示したものである。図9に示すように、容器本体6の内部温度は、燃料ガスの充填が開始された直後から徐々に上昇していき、充填が終了した後はほぼ一定の温度に保たれることになる。
【0059】
そこで、サブコントローラ6は、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、例えば、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、圧力上昇幅ΔTが基準値T0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断する。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値T0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えば1℃程度に設定される。
【0060】
また、サブコントローラ6は、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、単位時間Δt毎の温度上昇幅ΔTを求め、ΔTをΔtで割った温度勾配βを算出して、この温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えている場合に燃料ガスの充填時であると判断し、温度勾配βが基準値β0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断するようにしてもよい。ここで、燃料ガス充填状態の判断の基準となる基準値β0は、容器本体6のサイズ等にもよるが、例えばΔTが1℃、Δtが2secとして、0.5℃/sec程度に設定される。
【0061】
ここで、本実施形態における燃料ガス充填時のサブコントローラ6による制御について、図12を参照して説明する。サブコントローラ6は、ステップS31で容器温度センサ33からの信号を、ステップS32で冷媒温度センサ32からの信号をそれぞれ読み込む。
【0062】
そして、サブコントローラ6は、ステップS33において、容器温度センサ33から送られるセンサ信号に基づき、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えているか、或いは温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えているかを判断し、容器本体6の温度上昇幅ΔTが予め設定された基準値T0を越えている場合、或いは温度勾配βが予め設定された基準値β0を越えている場合には、燃料ガスの充填時であると判断してステップS34へ進む。一方、容器本体6の温度上昇幅ΔTが基準値T0以下の場合、或いは温度勾配βが基準値β0以下の場合には燃料ガスの充填時ではないと判断してステップS37へ進み、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30は作動させない。したがって、この場合には、熱交換システムの冷媒28は熱交換用配管25に送り込まれることなく、冷媒タンク7に貯留されることになる。
【0063】
次に、サブコントローラ6は、上述した第1の実施形態と同様に、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が所定値(例えば40℃)以上となっており(ステップS34)、且つ、容器温度センサ33で検出された容器本体3の温度が、冷媒温度センサ32で検出された冷媒28の温度以上となっていると判断すると(ステップS35)、ステップS36において、熱交換システムの循環ポンプ29を駆動するモータ30を作動させる。これにより、冷媒タンク7内の冷媒28が熱交換用配管25を通って循環され、この冷媒28と容器本体3との間で熱交換が行われることで、容器本体3の温度上昇が抑えられることになる。
【0064】
燃料ガスの充填が終了して、容器本体6の温度上昇幅ΔTが基準値T0以下、或いは温度勾配βが基準値β0以下となると、サブコントローラ6によってモータ30の作動が停止され、燃料ガス充填時における制御が完了する。
【0065】
なお、車両走行中におけるサブコントローラ6による制御は、上述した第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
以上のように、本実施形態の車両用高圧ガス容器においても、第1の実施形態と同様、サブコントローラ6により動作制御される熱交換システムによって、燃料ガス充填時においては容器本体3の温度上昇が抑えられ、また、燃料電池車両の高負荷走行時においては、容器本体3の温度低下が抑制されるようになっているので、燃料ガスの充填時間の短縮を図ることが可能となり、また、材質の経時劣化を抑えて、燃料ガスの漏れ等に対して高い信頼性を確保することが可能である。また、本実施形態の車両高圧ガス容器においては、容器本体3が充填状態にあるか否かの判断を、容器本体3の温度上昇幅或いは温度勾配に基づいて行っているので、充填状態の判断をより正確に行うことができ、容器本体3の温度制御を更に高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池車両の概略構成を示す図である。
【図2】本発明を適用した車両用高圧ガス容器の全体構成を示す図である。
【図3】充填用レセプタクル近傍の詳細な構成を示す図である。
【図4】冷媒タンクの詳細な構成を示す図である。
【図5】燃料ガス充填時における容器本体の温度変化の様子を示す特性図である。
【図6】燃料電池車両の走行中における容器本体の温度変化の様子を示す特性図である。
【図7】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】燃料電池車両走行時におけるサブコントローラによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】燃料ガス充填時における容器本体の内圧変化の様子を示す図である。
【図10】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の他の例を示すフローチャートである。
【図11】燃料ガス充填時における容器本体の温度変化の様子を示す図である。
【図12】燃料ガス充填時におけるサブコントローラによる制御の更に他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両本体
2 燃料電池スタック
3 容器本体
4 フューエルリッド
6 サブコントローラ
7 冷媒タンク
24 リッドスイッチ
25 熱交換用配管
28 冷媒
32 冷媒温度センサ
33 容器温度センサ
Claims (7)
- 車両に搭載され、燃料ガスが高圧状態で充填される車両用高圧ガス容器において、
容器本体と、
燃料ガス充填時に前記容器本体を冷却するとともに、車両走行中に前記容器本体の温度低下を抑える熱交換手段とを備えることを特徴とする車両用高圧ガス容器。 - 前記熱交換手段は、冷媒タンクと、前記容器本体の周囲に配設された熱交換用配管と、前記冷媒タンクに貯留される冷媒を前記熱交換用配管を通して循環させる循環ポンプとを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用高圧ガス容器。
- 前記冷媒タンク及びこの冷媒用タンクから前記熱交換用配管に至るまでの配管部材が断熱構造とされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用高圧ガス容器。
- 前記容器本体の温度を検出する容器温度検出手段と、前記冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段とを備え、
前記熱交換手段は、燃料ガス充填時に、前記容器本体の温度が所定値以上で、且つ、前記容器本体の温度が前記冷媒の温度以上の場合に前記循環ポンプの駆動により冷媒を循環させるとともに、車両走行中に、前記容器本体の温度が所定値以下で、且つ、前記容器本体の温度が前記冷媒の温度以下の場合に前記循環ポンプの駆動により冷媒を循環させることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用高圧ガス容器。 - 車両に設けられたフューエルリッドの開閉により、燃料ガスの充填時であるか否かを判別する充填状態検出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用高圧ガス容器。
- 前記容器本体の内部圧力を検出する容器内圧力検出手段と、前記容器本体内部の圧力上昇幅或いは圧力勾配に基づき、燃料ガスの充填時であるか否かを判別する充填状態検出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用高圧ガス容器。
- 前記容器本体の温度を検出する容器温度検出手段と、前記容器本体内部の温度上昇幅或いは温度勾配に基づき、燃料ガスの充填時であるか否かを判別する充填状態検出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用高圧ガス容器。
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