JP2011000922A - 燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、燃料電池の駆動(発電)効率を下げない範囲で、燃料タンクの許容範囲以上への過熱を抑制または防止し、燃料タンクの許容範囲以下への過冷を抑制または防止し、燃料タンクとの熱交換を利用して燃料電池の温度調節システムを燃料電池の駆動(発電)効率の高い範囲に維持するようにすることを目的とする。
【解決手段】この発明は、燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置において、燃料タンク周りに燃料タンクと熱交換可能なタンク用熱交換部を設け、熱交換システムのクーラントを燃料電池に流す燃料電池用配管に制御弁を設けるとともに、この制御弁の切り換えで熱交換システムのクーラントを燃料電池用配管からタンク用熱交換部に流すタンク用配管を設け、制御装置は、燃料タンクの温度が高温または低温となる所定の時期に制御弁を切り換えて熱交換システムのクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部へ流すことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

この発明は燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置に係り、燃料電池搭載車両の水素供給システムおよび燃料電池の温度調節システム(冷却システム)、特に、水素供給システムの温度調節システムに関し、とりわけ燃料電池の温度調節システムを利用した燃料タンクの温度調節システムについての燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置に関する。
燃料電池搭載車両(FCV:Fue1 Ce11 Vehicle)においては、水素ガスと酸化ガスを反応させて発電する燃料電池の水素供給システムとして、高圧の水素ガスを充填・放出可能な燃料タンクを搭載している。燃料タンクは、水素ガスの充填過程(充填時)では水素ガスの断熱圧縮により温度が上昇し、水素ガスの放出過程(アイドリング、走行時)では断熱膨張により温度が低下する。燃料タンクの温度上限値は、法規によって85℃、下限値は−40℃と決められている。
そこで、従来の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置には、水素供給システムの燃料タンクへの水素ガスの充填効率を高めるために、燃料タンク外部に容器元弁及び水素ガスの充填配管を冷却する熱交換器を設けた温度調節システムや、燃料タンク内部に水素ガスを冷却する熱交換器を設けた温度調節システムが提案されている。
特開2002−89793号公報 特開2006−298371号公報 特開2006−316994号公報 特開2006−316996号公報
ところで、燃料電池搭載車両には、LT(Low Temperature)系とHT(High Temperature)系との、二種類の冷却系(熱交換システム)が存在する。LT系の熱交換システムは、車両補機(走行用モータなど)用の冷却系である。HT系の熱交換システムは、燃料電池用の冷却系である。HT系の熱交換システムの特徴は、電気伝導率が低い特殊なクーラント(熱交換媒体)であり、燃料電池内に入っても燃料電池のアノード(水素極)とカソード(酸素極)間のイオン反応を阻害しないようにしている。
また、燃料電池は、効率的に動作する温度域(例えば、50〜80℃)が存在するので、クーラント温度をその温度域から著しく外したくない要求がある。
前記燃料電池用の冷却系であるHT系の熱交換システムは、図8に示すように構成される。図8において、101は水素ガスと酸化ガスを反応させて発電する燃料電池であり、102は燃料電池101の温度管理を行う熱交換システムである。熱交換システム102は、燃料電池101に電池用熱交換部103を燃料電池用供給配管104及び燃料電池用戻り配管105により接続し、燃料電池用供給配管104に熱交換媒体であるクーラントを流すクーラントポンプ106を備えている。なお、符号107は、クーラントの余剰・不足分を回収・補充するクーラントタンクである。
熱交換システム102は、燃料電池101と電池用熱交換部103との間に燃料電池用供給配管104及び燃料電池用戻り配管105を介してクーラントポンプ106によりクーラントを流し、燃料電池101を冷却して昇温したクーラントを電池用熱交換部103で放熱して冷却することで、燃料電池101の温度管理を行っている。
前記燃料電池101の温度管理をする熱交換システム102のクーラント温度と、前記燃料電池101に水素ガスを供給する水素供給システムの燃料タンク温度との、車両運行時(充填時、アイドル・走行時)における温度変化は、図9・図10に示すようになっている。
充填時においては、図9に示すように、燃料電池101が発電を停止し、かつ熱交換システム102のクーラントポンプ106が停止しているので、クーラント温度は熱交換システム102の停止から時間の経過とともに下降し、また、燃料タンク温度は水素ガスの充填開始から水素ガスの断熱圧縮により上昇する。
このため、水素ガスの充填過程では、高流量にして充填時間を短縮させようとすると、燃料タンク温度はより高い値まで上昇する。そのため、充填時間の短縮を考えたときは、上限温度がボトルネックとなっていた。
一方、アイドル・走行時においては、図10に示すように、燃料電池101の発電で熱交換システム102が駆動しているのでクーラント温度は上昇し、また、燃料タンク温度は水素ガスの消費による放出で断熱膨張により低下する。
このため、放出過程では、高速で長時間走行する際に、燃料タンク温度が−20℃以下に下がる状況が確認されていて、より高速で長時間の走行を考えると、燃料タンク温度の下限値も注意が必要であった。
前記特許文献2〜4に開示されるように、従来の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置には、充填効率を高めるために、燃料タンク内部に熱交換器を収容したものがある。
これら特許文献2〜4に開示される技術は、燃料タンク内部で水素ガスと直接熱交換できるので交換効率が極めて高く、一見すると非常に優れているように見えるが、熱交換器により燃料タンク内部容量が減少されてしまうので、充填可能な水素ガスの絶対量が減ってしまう不都合がある。また、特許文献2〜4に開示される技術は、高圧な燃料タンクの開口部の閉塞部材を介して燃料タンク外部と熱のやりとりをするため、高圧水素ガスの漏洩を防ぐためのシール構造や狭い範囲で温度勾配が大きくなり熱負荷がかかるので、その構造が複雑になり大型化してしまう不都合がある。
また、充填時には、燃料タンクの開口部側では膨張が起き、燃料タンク内部では圧縮がおきるため、開口部だけを温度管理する方法では、温度変化に対して効率が悪く、タンク温度を充分に管理でき内不都合がある。
この発明は、燃料電池の駆動(発電)効率を下げない範囲で燃料タンクの許容範囲以上への過熱を抑制または防止すること、燃料電池の駆動(発電)効率を下げない範囲で燃料タンクの許容範囲以下への過冷を抑制または防止すること、燃料タンクとの熱交換を利用して燃料電池の温度調節システムを燃料電池の駆動(発電)効率の高い範囲に維持するようにすることを目的とする。
この発明は、水素ガスを充填・放出可能な燃料タンクと、水素ガスと酸化ガスを反応させて発電する燃料電池と、この燃料電池の運転時には熱交換媒体であるクーラントを流して燃料電池の温度管理を行う熱交換システムと、前記燃料タンクの温度を検出する燃料タンク温度検出手段と、前記クーラントの温度を検出するクーラント温度検出手段を備え、少なくとも前記燃料電池の発電時にはこれら燃料タンク温度検出手段及びクーラント温度検出手段の検出温度に基づいて燃料電池の熱交換システムを駆動制御する制御装置を備えた燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置において、前記燃料タンク周りに燃料タンクと熱交換可能なタンク用熱交換部を設け、前記熱交換システムのクーラントを前記燃料電池に流す燃料電池用配管に制御弁を設けるとともに、この制御弁の切り換えで熱交換システムのクーラントを燃料電池用配管から前記タンク用熱交換部に流すタンク用配管を設け、前記制御装置は、燃料タンクの温度が高温または低温となる所定の時期に前記制御弁を切り換えて熱交換システムのクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部へ流すことを特徴とする。
この発明の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置は、燃料タンクと燃料電池の温度管理をするク−ラントとを熱交換することで、互いの温度変化を抑制できる。とくに、互いの温度変化が相反する条件下では、それぞれの効率(燃料電池の駆動(発電)効率、燃料タンクの充填効率)を高めることができる。熱交換システムは、経路が複雑化するが、新たな熱交換が可能になるので、ラジエータやファンの駆動等のもとの構成部品を小型化できるので、重量増加を少なくできる。
燃料タンク温度管理装置のシステム構成図である。(実施例) 図1の矢印II部分の拡大図である。(実施例) 充填時におけるクーラント温度と燃料タンク温度との変化を示す図である。(実施例) アイドル・走行時におけるクーラント温度と燃料タンク温度との変化を示す図である。(実施例) タンク用熱交換部を備えた燃料タンクの斜視図である。(実施例) タンク用熱交換部の拡大断面図である。(実施例) 燃料電池搭載車両の概略側面図である。(実施例) 燃料タンク温度管理装置のシステム構成図である。(従来例) 充填時におけるクーラント温度と燃料タンク温度との変化を示す図である。(従来例) アイドル・走行時におけるクーラント温度と燃料タンク温度との変化を示す図である。(従来例)
この発明は、燃料タンクとクーラントとの熱交換を利用して、燃料電池の駆動(発電)効率や燃料タンクの充填効率・放出効率を高い範囲に維持するようにするものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。図7において、1は燃料電池搭載車両、2はフロア、3はリヤフロア、4は前輪、5は後輪である。燃料電池搭載車両1は、前部に水素ガスと酸化ガスを反応させて発電する燃料電池6を搭載し、フロア2の下部に燃料電池6から後部に延びる排出管7を配設し、フロア2から立ち上がった後部のリアフロア3の下部に水素ガスを充填・放出可能な燃料タンク8を搭載している。燃料電池搭載車両1は、水素供給システムの燃料タンク8から燃料電池6に水素ガスを供給し、燃料電池6で水素ガスと酸化ガスを反応させて発電し、モータにより前輪4及び/又は後輪5を駆動して走行する。
前記燃料タンク8は、円筒形状の第1燃料タンク8aと、第1燃料タンク8aよりも大径で円筒形状の第2燃料タンク8bとの2個からなる。第1燃料タンク8a及び第2燃料タンク8bは、長手方向を車幅方向に指向させ、かつ小径の第1燃料タンク8aを前側に位置させて大径の第2燃料タンク8bを後側に位置させた状態で、サブフレーム9に2本の金属バンドで締付固定して搭載している。
前記燃料電池搭載車両1は、図1に示すように、燃料電池6の運転時(発電時)に熱交換媒体であるクーラントを流して燃料電池の温度管理を行う熱交換システム10を備えている。熱交換システム10は、燃料電池6用の冷却系であるHT系の冷却システムであり、燃料電池6に電池用熱交換部11を燃料電池用配管の燃料電池用供給配管12及び燃料電池用戻り配管13により接続し、燃料電池用供給配管12の途中に熱交換媒体であるクーラントを流すクーラントポンプ14を備えている。
熱交換システム10は、燃料電池6と電池用熱交換部11との間に燃料電池用供給配管12及び燃料電池用戻り配管13を介してクーラントポンプ14によりクーラントを流し、燃料電池6を冷却して昇温したクーラントを電池用熱交換部11で放熱して冷却することで、燃料電池6の温度管理を行っている。
前記燃料タンク8には、燃料タンク8の温度を検出する燃料タンク温度検出手段である燃料タンク温度センサ15を内部に設けている。前記燃料電池6には、クーラントの温度を検出するクーラント温度検出手段であるクーラント温度センサ16を出口側に設けている。前記クーラントポンプ14と、燃料タンク温度センサ15と、クーラント温度センサ16とは、燃料タンク温度管理装置17を構成する制御装置18に接続している。制御装置18は、少なくとも燃料電池6の発電時にはこれら燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16の検出温度に基づいて燃料電池6の熱交換システム10のクーラントポンプ14を駆動制御する。
この燃料タンク温度管理装置17は、図5・図6に示すように、燃料タンク8周りに燃料タンク8と熱交換可能なタンク用熱交換部19を設けている。タンク用熱交換部19は、図6に示すように、燃料タンク8の上側の外壁20表面にヒートシンク(Heat Sink)21を密着させ、ヒートシンク21にコルゲート状(波状)に折曲した保持部材22の内側を当接させ、この保持部材22に熱交換用管23を貫通して保持させ、保持部材22の外側に熱交換用管23を覆うように断熱層24を設けている。熱交換用管22は、図5に示すように、燃料タンク8の上側の外壁20の表面に沿い、長手方向に折り返し往復しながら周方向に延びるように配設している。
前記熱交換システム10のクーラントを燃料電池6に流す燃料電池用配管の燃料電池用戻り配管13には、図1・図2に示すように、燃料電池6から電池用熱交換部11に向かって順次に3方弁からなる第1制御弁25・第2制御弁26を設けている。第1制御弁25は、第1タンク用配管27により前記タンク用熱交換部19の熱交換用管23の入口側に接続している。第2制御弁26は、第2タンク用配管28により前記タンク用熱交換部19の熱交換用管23の出口側に接続している。第1タンク用配管27・第2タンク用配管28は、第1制御弁25・第2制御弁26の切り換えで、熱交換システム10のクーラントを燃料電池用配管の燃料電池用戻り配管13からタンク用熱交換部19の熱交換用管23に流す。
前記制御装置18は、燃料タンク8の温度が高温または低温となる所定の時期に、第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えて熱交換システム10のクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19へ流す。
即ち、制御装置18は、燃料タンク8に水素ガスを充填する際には、燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、上昇傾向を示す燃料タンク温度変化を抑制するよう第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えてクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19に流す。
また、制御装置18は、燃料電池6が発電する際には、燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、予め設定した燃料タンク温度の低下傾向を示す燃料タンク温度変化を抑制するよう第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えてクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19に流す。
さらに、制御装置18は、燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、クーラント温度が燃料電池6の運転効率が高い温度範囲にある場合に、予め設定した燃料タンク温度の上限値を上回る傾向を示す燃料タンク温度変化と、下限値を下回る傾向を示す燃料タンク温度変化とを、ともに抑制するよう第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えてクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19に流す。
なお、制御装置18は、双方向のデータ通信が可能な車両通信線29を介して燃料電池搭載車両1に搭載された他の制御装置30に接続されている。
次に作用を説明する。
燃料タンク温度管理装置17の制御装置18は、熱交換システム10によって、燃料電池6と電池用熱交換部11との間に燃料電池用供給配管12及び燃料電池用戻り配管13を介してクーラントポンプ14によりクーラントを流し、燃料電池6を冷却して昇温したクーラントを電池用熱交換部11で放熱して冷却することで、燃料電池6の温度管理を行っている。
このとき、第1制御弁25・第2制御弁26は、第1タンク用配管27・第2タンク用配管28を閉鎖して燃料電池用戻り配管13を連通することで、図2に矢印Aで示すように、クーラントを電池用熱交換部11にだけ流してタンク用熱交換部19に流さない。
制御装置18は、燃料タンク8の温度が高温または低温となる所定の時期に、第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えて、図2に矢印Bで示すように、熱交換システム10のクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19へ流す。
これにより、燃料タンク温度管理装置17は、燃料タンク8と燃料電池6の温度管理をするためのク−ラントとを熱交換することで、互いの温度変化を抑制できる。とくに、互いの温度変化が相反する条件下では、それぞれの効率(燃料電池6の駆動(発電)効率、燃料タンク8の充填効率・放出効率)を高めることができる。熱交換システム10は、第1タンク用配管27・第2タンク用配管28の付加で経路が複雑化するが、タンク用熱交換部19による新たな熱交換が可能になるので、電池用熱交換部11やファンの駆動等のもとの構成部品を小型化できるので、重量増加を少なくできる。
前記燃料タンク8の温度が高温または低温となり、熱交換システム10のクーラントをタンク用熱交換部19へ流す時期には、充填時、アイドル・走行時がある。
燃料タンク8への水素ガスの充填時においては、図3に示すように、燃料電池6が発電を停止し、かつ熱交換システム10のクーラントポンプ14が停止しているので、クーラント温度は熱交換システム10の停止から時間の経過とともに下降し、また、燃料タンク温度は水素ガスの充填開始から水素ガスの断熱圧縮により上昇する。
制御装置18は、燃料タンク8への水素ガスの充填時に、クーラント温度が燃料タンク温度よりも低い場合(クーラント温度<燃料タンク温度)に、上昇傾向を示す燃料タンク温度変化を抑制するよう、第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えて第1タンク用配管27・第2タンク用配管28を燃料電池用戻り配管13に連通することで、図2に矢印Bで示すように、クーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28を介してタンク用熱交換部19に流す。
タンク用熱交換部19へのクーラントの供給開始は、図3に示すように、クーラント温度が燃料タンク温度よりも低くなったときであるが、燃料電池用戻り配管13からタンク用熱交換部19へクーラントが流入するまでの時間的な遅れを考慮して、クーラント温度が燃料タンク温度よりも低くなる少し前から開始することが好ましい。
これにより、燃料タンク温度管理装置17は、水素ガスの充填時に、クーラントで燃料タンク8の温度変化を抑制することによって、充填効率が上がり、短時間で充填を完了することができる。燃料タンク8は、水素ガスの充填時に異常高温になり難いので、可燃性ガスの扱いもより安全になる。また、燃料タンク8との熱交換でクーラントの温度低下を抑制し、燃料タンク温度と同じ温度に保持することができる。
一方、アイドル・走行時においては、図4に示すように、燃料電池6の発電で熱交換システム10が駆動しているのでクーラントの温度は上昇し、また、燃料タンク8の温度は水素ガスの消費による放出で断熱膨張により低下する。
制御装置18は、燃料電池6が発電する際に、予め設定した燃料タンク温度(図4に実線で示す)の低下傾向を示す燃料タンク温度変化(図4に破線で示す)を抑制するよう、第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えて第1タンク用配管27・第2タンク用配管28を燃料電池用戻り配管13に連通することで、図2に矢印Bで示すように、クーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19に流す。
これにより、燃料タンク温度管理装置17は、燃料電池搭載車両1の高速走行時など、燃料タンク8が温度低下する状況でも、燃料タンク温度の低下を抑制することができる。また、燃料タンク温度管理装置17は、燃料電池搭載車両1の高速走行時など、燃料電池6の発電量が多く、長時間継続する際のように、クーラント温度が高温になりやすい状況(図4に破線で示す)でも、燃料タンク8の温度低下を利用してクーラント温度変化(図4に実線で示す)を抑制し、最適な範囲に燃料電池6の温度管理をすることができる。
したがって、燃料タンク温度管理装置17は、アイドル・走行時に、燃料タンク8とクーラントの両者を必要以上に温度変化させることなく、最適な範囲に温度管理することができる。熱交換システム10は、電池用熱交換部11を大型化したり、ファンの駆動頻度を高めたりせず、温度管理を行うことができる。
また、制御装置18は、燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、クーラント温度が燃料電池6の運転効率が高い温度範囲にある場合に、予め設定した燃料タンク温度の上限値を上回る傾向を示す燃料タンク温度変化と、下限値を下回る傾向を示す燃料タンク温度変化とを、ともに抑制するよう、第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えてクーラントを第1タンク用配管27・第2タンク用配管28でタンク用熱交換部19に流す。
これにより、燃料タンク温度管理装置17は、燃料タンク8を所望の温度範囲に収めることと、燃料電池6の運転効率を高く維持することとを、両立させることができる。なお、実施例では、法規制によって決められた燃料タンク8の温度範囲を所望の温度範囲として採用しているが、より狭い範囲に制御することも可能であり、安全性を高めることができる。
このように、この燃料電池搭載車両1の燃料タンク温度管理装置17は、燃料電池システムの燃料電池6及び水素供給システムの燃料タンク8の温度管理を、以下のように行っている。
燃料電池搭載車両1の燃料電池システムにおいては、燃料電池6が効率的に動く温度域が「50〜80℃」である。燃料電他6の温度を調整する冷却系(HT系)のクーラント温度もほぼこの値の範囲となる。また、水素供給システムは、法規制によって求められる燃料タンク8の取り得る温度範囲(許可温度範囲)が「−40〜85℃」の範囲なので、クーラント温度と燃料タンク8の温度の関係は次のようになる。
(1).充填時:
燃料電池6のクーラント温度は、燃料電池6の駆動停止(発電停止)の後も停止時点の温度から急には下がらない。すなわち、およそ「50〜80℃」か、それよりやや低い温度である。一方、燃料タンク8は、充填開始時(あるいは充填前の時)には外気温度と同等であり、充填が進むにつれて温度が高くなる(図3参照)。
よって、『充填に因ってタンク温度が「−40〜85℃」の範囲の中でかなり高くなり、かつ、「50〜80℃」の範囲の中で比較的高い温度(理想的には、80℃よりやや低い温度)であるクーラント温度が、相対的に燃料タンク温度より低くなる。』条件で、あるいは、『充填に因ってタンク温度が「−40〜85℃」の範囲の中でかなり低くなり、かつ、クーラント温度が、「50〜80℃」の範囲の中で比較的高い温度(理想的には、80℃よりやや低い温度)である。』条件で、燃料タンク8とクーラントを熱交換することで、熱交換による充填効率向上、充填時間の短縮効果がある。燃料電池6のクーラント温度が「50〜80℃」の範囲を超えてしまう場合には、熱交換を止めてしまって、「50〜80℃」の範囲に収めるのが好ましい制御となる。
(2).アイドル・走行時:
通常運転時、常温(外気温度と同じ)の燃料タンク8は、水素ガスを消費することで、温度が徐々に低下していく。燃料電池6が高負荷(高発電量)で使われると、燃料タンク8内の水素ガスの消費量が増大する。このため、消費による水素ガスの放出で断熱膨張が継続されることによって、燃料タンク温度は常温より徐々に低下する一方、燃料電池6では発電に伴う発熱量が増大するため、燃料電池6の温度を調整するクーラント温度は高温(80℃など)になる(図4参照)。
それ故、温度変化が互いに相反する関係にあるクーラントと燃料タンク8は、互いの温度差が大きくなり易く、熱交換することによってそれぞれの温度変化を鈍化させたり、いずれかの温度を望ましい範囲(クーラント温度は「50〜80℃」の範囲、燃料タンク温度は「−40〜85℃」の範囲)に維持することによって、燃料電池6の運転効率を高めたり、水素ガスによる継続運転時間を長くしたりする効果がある。高速走行中や長時間にわたる走行中では、燃料電池6やクーラントの温度は高くなる。また、走行中における停車時のように燃料電池6の発電状態が極めて低い負荷(アイドル運転)である場合であっても、その状態が短時間であれば、燃料電池6やクーラントの温度は高いままである。
充填時には、燃料電池6の発電駆動は停止しているが、燃料電池システムの制御システムとしては電源の入った起動状態(スタンバイ状態)としてある。そのため、燃料タンク温度管理装置17は、燃料タンク温度センサ15及びクーラント温度センサ16それぞれの出力を得たり、クーラントを循環するクーラントポンプ14を駆動したりすることが可能となっている。したがって、水素ガスの充填中に燃料タンク8の温度が高くなった場合には、その時にクーラントを供給することができる。
燃料タンク温度管理装置17は、燃料タンク8の温度変化として、燃料タンク温度センサ15が随時検出した中で任意の時点の温度によって判断している。燃料タンク8の温度変化は、比較的緩慢な変化勾配を有し、それを予め実験等の経験的に把握できるので、単一の時点のデータから判断しても、必要充分な精度を達成できる。また、経過時間の間の温度変化をモニタし、温度と温度の変化勾配を考慮することで、より正確なタイミングで判断および制御ができる。
燃料タンク6の周囲に設けるタンク用熱交換部19(大気との熱交換を行う燃料電池用熱交換部11を第一の熱交換部とすれば、第二の熱交換部となる)は、図5に示すように、分岐の無い単管を曲げ加工した熱交換用管23を、燃料タンク8の上側の表面を網羅するよう蛇行させて配設し、通路長を長くすることによって、熱伝導面積を広く確保するようにしている。これにより、タンク用熱交換部19は、HT系のクーラントに極めて重要となる破損防止やシール性確保を実現している。なお、タンク用熱交換部19は、熱伝導を助長するフィンなどを設けたり、熱容量をためるヒートシンクとしても良い。
充填時における燃料タンク温度上昇の要因である「断熱圧縮」とは、概してみた状態であり、厳密には、充填時の燃料タンク内部では、入り口付近では膨張が起きているが、それより奥では徐々に加圧圧縮しており、全体としてみれば断熱圧縮となる。
クーラント温度は、燃料電池6から流出するクーラントの温度を用いると、温度管理がし易く、本制御の精度も高くなる。しかし、クーラント温度を検出するクーラント温度センサ16の数や位置も限られることから、燃料電池6に流人するクーラントの温度を用いる場合には、燃料電池6の駆動負荷を考慮して経験上から得られる上昇温度を加味して、制御を行うこともできる。
燃料タンク温度は、充填中のように、燃料タンク内でも入り口側と内奥部とでは温度が異なる状態があるので、燃料タンク内部の温度か、燃料タンク自体の温度が好ましい。
水素ガスを充填・放出可能な燃料タンク8は、図5〜図7に示すように、長手方向を車幅方向に沿わせて、車両後下部に搭載している。燃料タンク8は、燃料電池搭載車両1の前部のフロア2よりも上方に高くなったリヤフロア3の下方空間に収容してあり、複数ある燃料タンク8の一方の燃料タンク8aは後部座席の下方に位置し、他方の燃料タンク8bは荷室の下方に位置して搭載している。
この燃料タンク8の配設位置において、燃料タンク8は概略ラダー形状を呈するサブフレーム9に搭載して車体のフレームに着脱可能に取り付けられる。リヤフロア3の下面に臨む燃料タンク8は、表面を薄肉のバンド状保持部材にて保持してサブフレーム9に固定するため、燃料タンク8とリヤフロア3に囲まれた空間を小さくでき、タンク用熱交換部19を表面上に敷設しても、なお高さ方向寸法を小さくできる。
燃料電池6の温度を調整する冷却系(HT系)の熱交換システム10では、駆動モータ等の補機を冷却する冷却系(LT系)と比べて温度が高いだけでなく、クーラントに不純物が入ることを避けなければならず、電池用熱交換部11においても損傷をできるだけ避けなければならない。燃料タンク8との熱交換を行うタンク用熱交換部19は、熱交換用管23を燃料タンク8の上側半面に対して敷設しているため、路面上の異物などとの接触の可能性を下げている。なお、燃料タンク8およびサブフレーム9の下方には、広範囲に広がるアンダーカバーを設け、それらを覆うようにしている。
タンク用熱交換部19では、燃料タンク8の内部容量ではなく金属製燃料タンク構造体の体積を蓄熱体として利用でき、燃料タンク8の外壁20内表面では燃料ガスである水素ガスとの熱交換を行い、外壁20外表面では外気の雰囲気との熱交換を行う。リヤフロア3との距離は小さく、省スペースである。
燃料タンク温度管理装置17は、燃料電池6の温度を調整する冷却系(HT系)である熱交換システム10を利用しているが、これを燃料電池6の温度調節システムとしてさらに機能を向上するよう発展させることができる。燃料タンク8でのタンク用熱交換部19では、発熱体である燃料電池6内を通過した後の温度上昇されたクーラントの熱を利用している。
すなわち、燃料タンク温度管理装置17は、図1・図2に示すように、大気への放熱によってHT系のクーラント冷却を担う電池用熱交換部11を通過する前の、高温のクーラントの熱を利用することによって、燃料電池6直前のクーラントの温度への影響を少なく抑えることができる。この燃料タンク温度管理装置17は、電池用熱交換部11の放熱容量を増やすことなく、燃料タンク8のタンク用熱交換部19で熱エネルギを消費することによって、HT系のクーラントの最低温度(冷却後温度)を下げることができ、燃料電池6の運転負荷を増大させる余裕を生むことができる。
燃料タンク温度管理装置17は、発熱体である燃料電池6から出てHT系の電池用熱交換部11に至る燃料電池用配管である燃料電池用戻り配管13の途中位置において、燃料タンク8のタンク用熱交換部19を備える別配管の第1タンク用配管27・第2タンク用配管28を連結し、連結部分に三方弁からなる第1制御弁25・第2制御弁26を設けている。燃料タンク温度管理装置17は、この三方弁からなる第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えて、燃料タンク8のタンク用熱交換部19を燃料電池用戻り配管13に介在させたり、燃料電池用戻り配管13を短絡させたりを、択一的に選択して切り換えている。
燃料タンク温度管理装置17は、この切換配分を、時間比率の変更などによって切り換えることで、ある程度、HT系の熱交換システム10全体の温度をコントロールできる。さらに、分岐させ合流させるようにした場合は、第1制御弁25・第2制御弁26の切換制御の頻度を下げつつ、よりHT系の熱交換システム10の温度変化を細かく変えることができる。燃料電池6のクーラントの温度が、最適範囲より低下することがないように、三方弁からなる第1制御弁25・第2制御弁26を切り換えれば、燃料電池6の駆動効率も高く維持できる。
この発明は、燃料タンクとクーラントとの熱交換を利用して、燃料電池の駆動(発電)効率や燃料タンクの充填効率・放出効率を高い範囲に維持するようにするものであり、燃料電池システム及び水素供給システムに適用可能である。
1 燃料電池搭載車両
6 燃料電池
8 燃料タンク
10 熱交換システム
11 電池用熱交換部
12 燃料電池用供給配管
13 燃料電池用戻り配管
14 クーラントポンプ
15 燃料タンク温度センサ
16 クーラント温度センサ
17 燃料タンク温度管理装置
18 制御手段
19 タンク用熱交換部
23 熱交換用管
25 第1制御弁
26 第2制御弁
27 第1タンク用配管
28 第2タンク用配管

Claims (4)

  1. 水素ガスを充填・放出可能な燃料タンクと、
    水素ガスと酸化ガスを反応させて発電する燃料電池と、
    この燃料電池の運転時には熱交換媒体であるクーラントを流して燃料電池の温度管理を行う熱交換システムと、
    前記燃料タンクの温度を検出する燃料タンク温度検出手段と、
    前記クーラントの温度を検出するクーラント温度検出手段を備え、
    少なくとも前記燃料電池の発電時にはこれら燃料タンク温度検出手段及びクーラント温度検出手段の検出温度に基づいて燃料電池の熱交換システムを駆動制御する制御装置を備えた燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置において、
    前記燃料タンク周りに燃料タンクと熱交換可能なタンク用熱交換部を設け、
    前記熱交換システムのクーラントを前記燃料電池に流す燃料電池用配管に制御弁を設けるとともに、この制御弁の切り換えで熱交換システムのクーラントを燃料電池用配管から前記タンク用熱交換部に流すタンク用配管を設け、
    前記制御装置は、燃料タンクの温度が高温または低温となる所定の時期に前記制御弁を切り換えて熱交換システムのクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部へ流すことを特徴とする燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置。
  2. 前記制御装置は、燃料タンクに水素ガスを充填する際には、燃料タンク温度検出手段及びクーラント温度検出手段により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、
    上昇傾向を示す燃料タンク温度変化を抑制するよう制御弁を切り換えてクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部に流すことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置。
  3. 前記制御装置は、燃料電池が発電する際には、燃料タンク温度検出手段及びクーラント温度検出手段により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、
    予め設定した燃料タンク温度の低下傾向を示す燃料タンク温度変化を抑制するよう制御弁を切り換えてクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部に流すことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置。
  4. 前記制御装置は、燃料タンク温度検出手段及びクーラント温度検出手段により燃料タンク温度及びクーラント温度を検出し、
    クーラント温度が燃料電池の運転効率が高い温度範囲にある場合に、予め設定した燃料タンク温度の上限値を上回る傾向を示す燃料タンク温度変化と、下限値を下回る傾向を示す燃料タンク温度変化とを、ともに抑制するよう制御弁を切り換えてクーラントをタンク用配管でタンク用熱交換部に流すことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載車両の燃料タンク温度管理装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015197114A (ja) * 2014-03-31 2015-11-09 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 水素ステーション
CN105947450A (zh) * 2016-06-30 2016-09-21 江苏大学 一种多功能塑料油箱
WO2023070213A1 (en) * 2021-10-26 2023-05-04 Sleegers Engineered Products, Inc. Fuel tank assembly and method of using same

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