JP2004232045A - スパッタリング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子フィルムや熱膨張係数の大きな材料からなる基板上に高品質な薄膜を形成し得るスパッタリング方法の提供。
【解決手段】基体2の成膜面にそれと対向配置したターゲット3のスパッタリングによって発生する粒子を付着させて成膜するスパッタリング方法において、前記ターゲットに、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とするスパッタリング方法。
【選択図】 図1
【解決手段】基体2の成膜面にそれと対向配置したターゲット3のスパッタリングによって発生する粒子を付着させて成膜するスパッタリング方法において、前記ターゲットに、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とするスパッタリング方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子フィルム基体等の耐熱性に劣る基体に高品質の膜を成膜し得るスパッタリング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりスパッタリング技術は、種々の基体上に、Ag,Al,Cu,Crなどの金属薄膜を成膜するために広く用いられている。
Ag薄膜は反射膜、電磁遮蔽膜などの低比抵抗を要求される製品などに使用され、反射率や導電性、光透過性を向上させる目的で、薄膜中の不純物量を可能な限り低くすることが高品質のAg薄膜を成膜するために有効である。
Cr薄膜はTFT液晶素子のゲート電極材や有機EL素子の電極材などの表示素子用電極材、半導体素子用電極材などとして幅広く使用されており、このCr薄膜にあっては低抵抗かつ薄膜化が課題となっている。
Al薄膜は反射膜、回路基板等の配線膜として、またCu薄膜は同じく配線膜として使用されており、これらAl薄膜とCu薄膜にあっては、電気特性のより一層の向上が望まれている。
【0003】
従来、スパッタリング法によって高品質の金属薄膜を成膜するために種々の技術が提案されている。
例えば、薄膜形成時以外は約1×10−4Pa以下の圧力の雰囲気に保ちつつ、かつ各薄膜形成時には基板にバイアス電圧を可変に印加可能として、膜表面に適正なエネルギーを与えながらスパッタリングを行う薄膜形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
別な方法として、アルミニウムターゲットと基板を設けた超高真空に排気可能な成膜室と、水に対する大きな排気速度を持つ真空ポンプと、高度に純化されたアルゴンガスを成膜室内へ供給するガス供給系とを備えたスパッタリング装置を用意し、基板にアルミニウム膜を成膜する時のアルゴンガス中の残留水分量を少なくとも1ppm以下として成膜するスパッタリング成膜方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載されたスパッタリング装置は、電解研磨処理を施した内壁を有し、また内壁を加熱クリーニングするためのヒーターを備えている。
さらに別な方法として、スパッタリングで金属薄膜を形成する際の雰囲気ガスとして、還元性ガスと希釈ガスとの混合ガスを用いる金属薄膜の形成方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに別な方法として、基体上に銀を主成分とするターゲットを用いて、スパッタリング法により厚さが1〜30nmの銀系透明導電体薄膜を成膜するにあたり、成膜時のスパッタリング雰囲気を酸素ガスを有する雰囲気とした銀系透明導電体薄膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
上述した従来技術のうち特許文献1及び2に記載の発明は、半導体装置やLSI製造用基板にWなどの高融点金属やアルミニウムをスパッタリングして成膜し、配線膜や配線電極を形成するための技術に関し、また特許文献3及び4に記載の発明は、高分子フィルムを基板とし、スパッタリング法により該高分子フィルム基板上に銀等の金属薄膜を成膜する技術に関する。
上記半導体装置やLSI製造用基板などの金属基板やガラス基板などの耐熱性基板上にスパッタリング法によって金属薄膜を成膜する場合、特許文献2記載の発明では、基板や成膜室内を100℃以上の高温に加熱して真空に排気し、水分等の残留ガスを排除した後、高純度Arガスなどのスパッタリングガスを成膜室内に供給して成膜を行っている。
【0005】
また、反応性スパッタリングにより導電性のターゲット材から絶縁体の生成物が生ずる場合に発生し易い異常放電(アーキング)の発生防止のために、負の電圧が一定の周期で間欠的に印加されるスパッタリング方法において、負の電圧が印加されない時間の少なくとも一部の時間は、電圧が0ボルトに制御され、かつ、1回のアーク放電の発生から消失するまでに要する時間と同等かそれよりも長い時間であることを特徴とするスパッタリング方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)
さらに、イオン支援で真空コーティングする方法において、電極に印加するパルスを調整することで大型の基板に比較的小さいコストで高い割合のコーティングを可能にする方法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−9721号公報
【特許文献2】
特開平5−271918号公報
【特許文献3】
特開2001−316814号公報
【特許文献4】
特開2002−25362号公報
【特許文献5】
特開平7−90573号公報
【特許文献6】
特表平9−512304号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3及び4に記載されているように、高分子フィルム基板上に金属薄膜を成膜する場合は、該基板を高温に加熱すると変形または溶融してしまうため、該基板を加熱することができず、基板から水分等のスパッタリング汚染源を十分に除去することができなかった。その結果、スパッタリングにより得られる膜の品質(電気抵抗、結晶構造、均一性など)は、金属基板やガラス基板を用いて該基板を加熱して成膜して得られた膜よりもかなり劣っていた。
また高分子フィルム基板や熱膨張係数の大きな材料からなる基板上に金属薄膜を成膜した場合、基板と膜との熱膨張係数差や膜の残留応力などに起因して基板から膜が剥離し易い問題がある。この膜の剥離を防止するために基板上に剥離防止層を設けるなどの対応がなされているが、そのためにコスト上昇、品質低下、歩留まり悪化などの問題が生じている。
さらに特許文献5に記載された技術は、ITO等の透明電極の成膜において、ターゲット表面に生成される絶縁材料を基板にスパッタリングする際に発生するアーキングの防止のための技術であり、高分子フィルム基板上に金属薄膜を成膜することに関しては記載されていない。
また特許文献6に記載された技術は、マグネトロンスパッタを行う場合、プラズマに対し、又は、ほぼプラズマ電位にある電極に対して負と正の電圧パルスを交互に印加するために、コーティング源とプラズマ源として2つのパルスマグネトロンが必要となり、装置が大型化、高価格化してしまう問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、高分子フィルムや熱膨張係数の大きな材料からなる基板上に高品質な薄膜を形成し得るスパッタリング方法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、基体の成膜面にそれと対向配置したターゲットのスパッタリングによって発生する粒子を付着させて成膜するスパッタリング方法において、前記ターゲットに、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とするスパッタリング方法を提供する。
本発明のスパッタリング方法において、周波数が50〜200kHzの範囲とすることが好ましい。
また、前記基体は高分子フィルムとすることが好ましい。
また、前記基体が高分子フィルムである場合は、実質的に基体バイアス電圧を加えないでスパッタリングを行うことが好ましい。
さらに本発明のスパッタリング方法は、高分子フィルム基体の成膜面に金属膜を成膜する場合に適用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のスパッタリング方法は、基体の成膜面に対向配置されたターゲットに、周波数50kHz以上、好ましくは50〜200kHz、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とする。
ここで「Off−Duty値」とは、トータルの電圧印加時間に占める電圧印加休止時間(反転パルス幅)のパーセンテージであり、例えば周波数100kHz(周期10μsec)(「μsec」は「μ秒」である)のパルス電圧において、反転パルス幅が1μsecであればOff−Duty値は10%、反転パルス幅が4μsecであればOff−Duty値は40%、反転パルス幅が5μsecであればOff−Duty値は50%となる。
【0011】
図1は本発明のスパッタリング方法を実施するために好適なスパッタリング装置を例示する概略構成図である。
このスパッタリング装置1は、基体として用いる高分子フィルム基体2(以下、フィルム基体と記す)とそれに対向配置された多数のターゲット3a〜3eとが配設され、該ターゲット3a〜3eのスパッタリングによって発生する粒子を、メインローラ4に接したフィルム基体2の外面側(成膜面)に付着させて成膜する高度真空排気が可能な成膜室5と、該成膜室5と連通して、フィルム基体2の移動方向左右に設けられたフィルム基体2供給用の巻出室6と成膜後のフィルム基体2保管用の巻取室8と、成膜室5と巻出室6との間に設けられた前処理室7とを主な構成要素として備えて構成されている。該ターゲット3a〜3eは、周波数50kHz以上、好ましくは50〜200kHz、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加可能な電源11にそれぞれ接続されている。
【0012】
成膜室5には、該成膜室5を超高真空に排気するための図示しない排気手段と成膜室5とを接続する排気口9と、該成膜室5内にスパッタリングガスとして高純度Arガスを供給する図示しないArガス供給源と成膜室5とを接続するArガス入口10が設けられている。なお上記Arガス入口10は、成膜室5ではなく巻出室6,前処理室7,巻取室8のいずれかに設けることができるし、排気口9も成膜室5と前処理室7以外に設けることができる。
該成膜室5を高真空に排気するための排気手段としては、例えば必要に応じてブースターポンプと組み合わせて、拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボ分子ポンプ、水選択排気ポンプなどの高度真空排気が可能な高性能ポンプを用いることが望ましい。
またArガス入口10から供給されるArガスは、水分や微粒子が実質上含まれない高純度Arガスを用いることが望ましい。スパッタリングの際に成膜室5に導入されるArガスの圧力は0.1〜0.8Pa程度とされる。
【0013】
成膜室5内に固定配置された多数のターゲット3a〜3eは、フィルム基体2上に成膜する所望の薄膜の材質に応じて選択使用でき、例えばAg,Au,Pt,Cu,Al,Cr,Ti,Zn,Sn,Zr,Hf,Nb,Mo,Ta,W,In,Si等の1種または2種以上の金属、ITO,SnO2,In2O3,ZnO,Ga添加ZnO,Al添加ZnO,SiO2,SiNx等の酸化物または窒化物、Fe,Co,Ni等の強磁性金属、および強磁性合金等の磁性材料等を挙げることができる。複数のターゲット3a〜3eは、フィルム基体2が巻回状態で移動するメインローラ4を包囲するように配置されている。それらのターゲット3a〜3eは、それぞれ同一のターゲット材料(例えば高純度Ag板)をセットすることもできるし、それぞれ異なるターゲット材料を、例えばフィルム基体2の移動方向上流から下流に向けて、Ag等の金属、ZnO等の酸化物、Ag等の金属、ZnO等の酸化物、Ag等の金属のように配置し、フィルム基体2の成膜面上にこれらのターゲット材料を順次積層できるようにしてもよい。これらのターゲット3a〜3eの配置個数は特に限定されず、成膜の目的や条件に応じて適宜設定される。
【0014】
前記フィルム基体2は、本例示では透明で可撓性のある高分子フィルムが用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどが用いられる。フィルム基体2のフィルム厚さは特に制限されないが、通常10〜250μm程度である。フィルム基体2の片面または両面には、ハードコート層を設けてもよい。ハードコート材としては紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化樹脂としては、エステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、アクリル・ウレタン系、アクリル・エポキシ系などのモノマーやオリゴマーに光重合開始剤を配合したものが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール系、尿素系、メラミン系、不飽和ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、重合促進剤、溶剤、粘度調節剤などを配合したものなどが挙げられる。
【0015】
長尺のフィルム基体2は、巻出室6内に設けられた巻出しローラ12に巻回された状態で供給され、ここから導出されたフィルム基体2は、前処理室7を通って成膜室5に入り、メインローラ4に係合されてターゲット3と対向しながらメインローラ4の外周に沿って移動し、スパッタリングを施した後、成膜室5から導出し、巻取室8に入って巻取ローラ13に巻き取る。図1中、符号16〜23は、このフィルム基体2を連続的に移動させるために装置内の適所に配置されたローラ(搬送手段)である。
【0016】
成膜室5と巻出室6の間に設けられた前処理室7には、巻出室6から成膜室5に向けて移動するフィルム基体2に紫外線を照射する紫外線照射器14と、フィルム基体2にイオンビームソースでAr,He,Kr,Neから選択される不活性ガスに酸素を加えたイオン化ガスを照射するイオンビーム照射器15とのいずれか一方又は両方が設けられている。
【0017】
上記紫外線照射器14に用いられる紫外線源としては、水分脱離に必要な結合エネルギーである5.5eV以上の光子エネルギーを有しかつ熱源となる赤外線領域の発光のない紫外線光源が用いられ、好ましくは波長200nm以下の真空紫外線を発するエキシマランプ、重水素(D2)ランプなどが用いられる。波長200nm以下の真空紫外線は、酸素等により直ちに吸収されるため、空気中では伝搬しないが、真空雰囲気中またはスパッタリングガス雰囲気中であれば該ランプからフィルム基体2に照射される。照射された紫外線はフィルム基体に存在する水(H2O)に作用し、H−OH間結合を切断して揮発し脱水する。
【0018】
また、上記イオンビーム照射器15は、イオンビームソースでAr,He,Kr,Neから選択される不活性ガスに酸素を加えたイオン化ガスを照射する従来公知のイオンビーム照射装置を使用できる。このイオン化ガスの照射によって高分子フィルムの水分が除去される。また特にHe,Kr,Neなどの不活性ガスイオンの照射により、基体の透過率を劣化させることなくフィルム表面を精密に粗面化し、成膜される金属等の薄膜と基体との密着性を改善できる。
【0019】
上記のように構成したスパッタリング装置を用い、本発明のスパッタリング方法を実施する場合を説明する。
フィルム基体2は、巻出ローラ12に巻回した状態で巻出室6にセットし、一端を引き出して前処理室7を通し、成膜室5のメインローラ4に巻き付け、さらに巻取室8内の巻取ローラ13に巻き取らせるように、各ローラ16〜23に係合させる。
ターゲット3は成膜室5内に配置された複数の固定治具に取り付けて固定する。これらの固定治具は電源11に接続してスパッタリング用電圧を印加可能にしてある。
【0020】
次に、スパッタリング装置1内を真空排気し、スパッタリングガスとして用いるArガスを導入して成膜室5内を低圧Arガス雰囲気(スパッタリングガス雰囲気)にする。
上記真空排気を終え、成膜室5内をスパッタリングガス雰囲気にした後、巻取ローラ13を巻取方向に回転させ、フィルム基体2を一定速度で移動させる。前処理室7の紫外線照射器14とイオンビーム照射器15をONにして、成膜室5に導入される直前のフィルム基体2表面の水分および有機汚染物質を除去する前処理を行う。
【0021】
上記前処理を終えたフィルム基体2は、前処理室7から導出され、成膜室5のメインローラ4の外周面に接触しながら移動し、該メインローラ4に対向配置された多数のターゲット3a〜3eのスパッタリングで生じた粒子(スパッタ粒子)が付着して成膜される。多数のターゲット3a〜3eに印加するパルス電圧は、周波数50kHz以上においてこのOff−Duty値が40〜50%となる範囲である。多数のターゲット3a〜3eに印加するパルス電圧は、それぞれが同一(印加電圧、周波数および反転パルス幅)であってもよいし、複数種類のターゲット材料を用いる場合には、個々のターゲット材料に適したパルス電圧を選択し、使用ターゲット毎に異なるパルス電圧を印加してもよい。
【0022】
本発明では、周波数50kHz以上においてOff−Duty値が40〜50%となる範囲のパルス電圧をターゲット3a〜3eに印加する。
このように印加電圧の周波数を50kHz以上とし、またOff−Duty値を40〜50%の範囲内とすることによって、直流電圧(DC;パルスOff)での成膜に比べ、成膜して得られる金属薄膜の抵抗値が減少し、高品質の金属薄膜が得られる。なお、Off−Duty値を40〜50%とすると、Off−Duty値が該範囲未満で成膜する場合よりも成膜レートが低下するため、電源11の出力を適宜上昇させ、目的の膜厚が得られるように調節してもよい。
また周波数50kHz以上、Off−Duty値40〜50%の条件でパルス電圧を印加することで、膜の結晶構造が肥大化し結晶化が促進される。その結果、本発明に従って成膜した金属薄膜は、直流電圧で成膜した金属薄膜に比べて基板から剥離し難くなる。
さらに、周波数50kHz以上、Off−Duty値40〜50%の条件でパルス電圧を印加することで、基体側にバイアス電圧を印加することなく、高品質の膜を形成することができるので、バイアス電圧付加のための余分な設備が不要になり、製造装置や電源を簡略化でき、使用電力を削減できる。また、バイアス電圧を加えることによる余分な熱の発生がないため、高分子フィルムへの影響を小さくすることができる。
【0023】
成膜室5内で成膜を終えたフィルム基体2の部分は、巻取室8の巻取ローラ13に巻き取られる。
【0024】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。上記実施形態では、基体をフィルム基体2とし、成膜室5にフィルム基体2の成膜面をターゲット3に対向させた状態で一方向に向け移動させつつスパッタリングを行って、長尺のフィルム基体に連続的に薄膜形成する装置構成を例示したが、基体として高分子フィルム以外の材料、例えばLSI製造用基板などの金属基板、ガラス基板、セラミック基板等の硬質基体を用い、ターゲット上に該硬質基体を固定状態で配置してスパッタリングを行う構成としてもよい。この場合、紫外線照射器14とイオンビーム照射器15は、硬質基体を配置する成膜室内に配置される。本発明は基体を加熱することなく該基体上に高品質の膜を成膜できることから、基体として高分子フィルムなどの耐熱性の劣る材料からなる基体や熱膨張率の大きな材料からなる基体であっても高品質の膜を成膜できる利点がある。
【0025】
また、フィルム基体2の成膜面に複数の薄膜層、例えばAg/ZnO/Ag/ZnO/Ag/ZnOのような多層構造を形成する際に上記スパッタリング装置1を適用してもよい。ここで、Ag層とZnO層は、同じスパッタリング装置1を用いて、ターゲット3を変更して、または異なるターゲット3を備えた2つの成膜室5を設けた構成とすることによって実施できるし、または真空蒸着法、CVD法、レーザ蒸着法などの他の薄膜形成手段によって一方の層を成膜してもよい。
【0026】
本発明のスパッタリング装置は、制限されることなしに、例えば以下の用途に適用できる。
本発明のスパッタリング装置は、プラズマディスプレイパネル用光学フィルタに用いられる電磁波遮蔽膜を成膜するのに使用でき、光学的、電気的特性に優れたAg薄膜を提供し得る。
また本発明のスパッタリング装置は、TFT液晶表示装置におけるゲート電極用Cr薄膜を成膜するのに使用でき、比抵抗の小さい優れたCr薄膜を提供し得る。
さらに本発明のスパッタリング装置は、液晶表示装置やプロジェクターなどに利用可能な反射膜を成膜するのに使用でき、酸化度の低い高反射のAl薄膜を提供し得る。
また本発明のスパッタリング装置は、有機EL表示素子用の平滑ITO膜上にCr膜を成膜するために使用でき、ITO膜−Cr膜間の密着性を改善し、かつ比抵抗の小さい優れたCr膜を提供し得る。
【0027】
【実施例】
図1に示すスパッタリング装置1を作製した。スパッタリング装置1は、成膜室5、巻出室6、前処理室7および巻取室8とを備え、成膜室5にはターボ分子ポンプと水選択排気ポンプとを連結した真空排気系を接続した。また成膜室5にはスパッタリングガスとして高純度Arガスのボンベから精製器を介してArガス供給路を接続し、所定量のArガスを供給可能とした。成膜室5内には、フィルム基体2を巻回状態で移動させるためのメインローラ4と、それに対向させてターゲット固定治具を設置した。ターゲット3a〜3eは各種材料を設置可能であり、直方体形状のものを用いた。前処理室7には紫外線照射器14とイオンビーム照射器15を配置し、成膜室5内に導入される直前のフィルム基体の水分及び表面の有機汚染物質を除去できる構成とした。フィルム基体2としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、これを巻出ローラ12に巻回し、巻出室6内に設置した。巻取室8にも同様の大きさの空の巻取ローラ13を配置し、巻出ローラ12からフィルム基体2を引き出し、前処理室7を通して成膜室5のメインローラ4に接触させて巻取室8に通し、その先端を巻取ローラ13で巻き取った。フィルム基体2は、成膜室5のメインローラ4に密着した状態で冷却もしくは加熱されながら、各ターゲット3a〜3eからのスパッタ粒子を堆積させて成膜される。このフィルム基体2は、各ローラを回転駆動させることにより、約1m/分でスパッタリング装置内を移動可能とした。
【0028】
図1に示したフィルムスパッタリング装置において、成膜室やターゲット周辺部材の表面は、サンドブラスト処理した後に電解研磨処理または硫酸とリン酸の混合液に浸漬する化学研磨処理して到達真空度の改善を図った。また、水排気能力の高い水選択排気ポンプとターボ分子ポンプを併用し、成膜室を排気した。これによりスパッタリングによる成膜前の成膜室到達真空度は1×10−5Pa以下となった。
成膜室には精製器で水分を除去したArガスを導入し、スパッタリング時の圧力が0.1から0.6Paとなるよう調整した。
ターゲットには純度99.95%のCrを使用した。
【0029】
[実験1]:Off−Duty値と成膜したCr膜の抵抗値との関係
Crターゲットに周波数100kHz(周期10μsec)にて、反転パルス幅を1μsec(Off−Duty値:10%)から5μsec(Off−Duty値:50%)まで可変させてパルス電圧を印加して1000〜2000(Å)を成膜した。反転パルス幅を大きくすると成膜レートが低下する為、電源出力を適宜上昇させ、目的の膜厚が得られるよう調整した。反転パルス幅を変えて成膜して得られたそれぞれのCr膜のシート抵抗を四探針法にて測定した。
反転パルス幅と測定したCr膜のシート抵抗値との関係を図2に示す。
図2から判るように、反転パルス幅の増加(Off−Duty値の増加)に伴い、得られるCr膜のシート抵抗値が低下していることが確認された。本実験から、周波数100kHzにおいて反転パルス幅が4μsec〜5μsec(Off−Duty値40〜50%)のパルス電圧の印加が良好であることが判った。
【0030】
[実験2]:周波数と成膜したCr膜の抵抗値との関係
次に、反転パルス幅をOff−Duty値50%に固定し、印加するパルス電圧の周波数を変えてCr膜を成膜し、その周波数と成膜したCr膜のシート抵抗値との関係を調べた。その結果を図3に示す。
図3から判るように、DC(パルスOff)に対し、Off−Duty値が50%のパルススパッタリングによる成膜は、周波数の上昇とともに、成膜されたCr膜のシート抵抗値が減少し、高品質のCr膜が得られることが確認された。これはパルスによる成膜レートが周波数上昇とともに低下することが関係し、周波数の効果が現われたと思われる。
【0031】
[実験3]:スパッタ圧力依存性の比較
印加電圧を周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)とし、成膜室内のArガス圧力(スパッタ圧力と記す)を変化させて成膜し、スパッタリングの圧力依存性を調べた。その結果を図4に示す。図4中、実施例と記した曲線は、各スパッタ圧力下、周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)でスパッタリングして成膜したCr膜のシート抵抗値であり、比較例と記した曲線は各スパッタ圧力下、DCでスパッタリングして成膜したCr膜のシート抵抗値である。
図4から判るように、DCを用いた比較例でもスパッタ圧力の低下によりCr膜のシート抵抗は下がるが、本発明に係る実施例では、スパッタ圧力の低下とともにCr膜のシート抵抗値が大幅に減少した。
一般的に0.2Pa以下の低圧下でのスパッタリングはインピーダンス上昇に伴い放電状態が不安定となるため実用的でないが、パルススパッタにおいては周波数上昇とともにプラズマインピーダンスの低下をもたらし、安定放電が可能となる。
【0032】
[実験4]:成膜したCr薄膜の結晶構造の比較
従来方式であるDCスパッタリングで成膜したCr薄膜(比較例)と、印加電圧を周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)でスパッタリングして成膜したCr薄膜(実施例)のそれぞれのX線回折結果を図5に示す。図5中(a)は比較例のCr膜、(b)は実施例のCr膜のX線回折結果である。図5から、本発明に係る実施例のCr膜は、ピーク強度および半値幅から判断して、結晶構造が促進されていることが確認できる。
【0033】
[実験5]:膜密着性の比較試験
膜密着性についてテープ剥離法(JIS K5400参照)により確認した。成膜室にガラス基板を固定配置し、該ガラス基板の成膜面にCrターゲットを配置し、DC電圧を印加するスパッタリング(比較例)および周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)のパルス電圧を印加するスパッタリング(実施例)を行って、それぞれ300nmの厚さのCr薄膜を成膜した。より効果を明瞭に確認するため、この試験に使用したガラス基板は超音波洗浄のみを施し、特に表面に粗面化処理は施さず、平滑な面を残した。スパッタリングにより成膜した実施例および比較例のそれぞれのCr薄膜を1mmピッチの碁盤目状にカッターで切り、テープを貼り付け、その後剥がした際のCr薄膜の残存率を比較した。その結果、比較例は残存率50%程度であったのに対し、本発明に係る実施例で成膜したCr薄膜は100%残存し、本発明により得られる膜は基体に対し優れた密着性が得られることが判った。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧をターゲットに印加してスパッタリングを行うことによって、基体を加熱することなく、低い電気抵抗、良好な結晶構造、膜の均一性などに優れる高品質の薄膜を成膜することができるので、特に加熱に耐えない高分子フィルム基体や熱膨張係数の大きな基体であっても、高品質の薄膜を成膜することができる。
また本発明によれば、基体と成膜される薄膜との密着性が良好となり、基体側に剥離防止層を形成せずに耐剥離性の良好な薄膜を形成できる。さらに剥離防止層が不要なので、該剥離防止層形成に伴うコスト上昇、品質低下、歩留まり悪化などの問題を克服できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパッタリング装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】Off−Duty値と成膜したCr膜の抵抗値との関係を調べた実験1の結果を示すグラフである。
【図3】周波数と成膜したCr膜の抵抗値との関係を調べた実験2の結果を示すグラフである。
【図4】スパッタ圧力依存性の比較試験(実験3)の結果を示すグラフである。
【図5】成膜したCr薄膜の結晶構造の比較試験(実験4)のX線回折結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 スパッタリング装置
2 フィルム基体(基体)
3 ターゲット
4 メインローラ
5 成膜室
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子フィルム基体等の耐熱性に劣る基体に高品質の膜を成膜し得るスパッタリング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりスパッタリング技術は、種々の基体上に、Ag,Al,Cu,Crなどの金属薄膜を成膜するために広く用いられている。
Ag薄膜は反射膜、電磁遮蔽膜などの低比抵抗を要求される製品などに使用され、反射率や導電性、光透過性を向上させる目的で、薄膜中の不純物量を可能な限り低くすることが高品質のAg薄膜を成膜するために有効である。
Cr薄膜はTFT液晶素子のゲート電極材や有機EL素子の電極材などの表示素子用電極材、半導体素子用電極材などとして幅広く使用されており、このCr薄膜にあっては低抵抗かつ薄膜化が課題となっている。
Al薄膜は反射膜、回路基板等の配線膜として、またCu薄膜は同じく配線膜として使用されており、これらAl薄膜とCu薄膜にあっては、電気特性のより一層の向上が望まれている。
【0003】
従来、スパッタリング法によって高品質の金属薄膜を成膜するために種々の技術が提案されている。
例えば、薄膜形成時以外は約1×10−4Pa以下の圧力の雰囲気に保ちつつ、かつ各薄膜形成時には基板にバイアス電圧を可変に印加可能として、膜表面に適正なエネルギーを与えながらスパッタリングを行う薄膜形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
別な方法として、アルミニウムターゲットと基板を設けた超高真空に排気可能な成膜室と、水に対する大きな排気速度を持つ真空ポンプと、高度に純化されたアルゴンガスを成膜室内へ供給するガス供給系とを備えたスパッタリング装置を用意し、基板にアルミニウム膜を成膜する時のアルゴンガス中の残留水分量を少なくとも1ppm以下として成膜するスパッタリング成膜方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載されたスパッタリング装置は、電解研磨処理を施した内壁を有し、また内壁を加熱クリーニングするためのヒーターを備えている。
さらに別な方法として、スパッタリングで金属薄膜を形成する際の雰囲気ガスとして、還元性ガスと希釈ガスとの混合ガスを用いる金属薄膜の形成方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに別な方法として、基体上に銀を主成分とするターゲットを用いて、スパッタリング法により厚さが1〜30nmの銀系透明導電体薄膜を成膜するにあたり、成膜時のスパッタリング雰囲気を酸素ガスを有する雰囲気とした銀系透明導電体薄膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
上述した従来技術のうち特許文献1及び2に記載の発明は、半導体装置やLSI製造用基板にWなどの高融点金属やアルミニウムをスパッタリングして成膜し、配線膜や配線電極を形成するための技術に関し、また特許文献3及び4に記載の発明は、高分子フィルムを基板とし、スパッタリング法により該高分子フィルム基板上に銀等の金属薄膜を成膜する技術に関する。
上記半導体装置やLSI製造用基板などの金属基板やガラス基板などの耐熱性基板上にスパッタリング法によって金属薄膜を成膜する場合、特許文献2記載の発明では、基板や成膜室内を100℃以上の高温に加熱して真空に排気し、水分等の残留ガスを排除した後、高純度Arガスなどのスパッタリングガスを成膜室内に供給して成膜を行っている。
【0005】
また、反応性スパッタリングにより導電性のターゲット材から絶縁体の生成物が生ずる場合に発生し易い異常放電(アーキング)の発生防止のために、負の電圧が一定の周期で間欠的に印加されるスパッタリング方法において、負の電圧が印加されない時間の少なくとも一部の時間は、電圧が0ボルトに制御され、かつ、1回のアーク放電の発生から消失するまでに要する時間と同等かそれよりも長い時間であることを特徴とするスパッタリング方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)
さらに、イオン支援で真空コーティングする方法において、電極に印加するパルスを調整することで大型の基板に比較的小さいコストで高い割合のコーティングを可能にする方法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−9721号公報
【特許文献2】
特開平5−271918号公報
【特許文献3】
特開2001−316814号公報
【特許文献4】
特開2002−25362号公報
【特許文献5】
特開平7−90573号公報
【特許文献6】
特表平9−512304号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3及び4に記載されているように、高分子フィルム基板上に金属薄膜を成膜する場合は、該基板を高温に加熱すると変形または溶融してしまうため、該基板を加熱することができず、基板から水分等のスパッタリング汚染源を十分に除去することができなかった。その結果、スパッタリングにより得られる膜の品質(電気抵抗、結晶構造、均一性など)は、金属基板やガラス基板を用いて該基板を加熱して成膜して得られた膜よりもかなり劣っていた。
また高分子フィルム基板や熱膨張係数の大きな材料からなる基板上に金属薄膜を成膜した場合、基板と膜との熱膨張係数差や膜の残留応力などに起因して基板から膜が剥離し易い問題がある。この膜の剥離を防止するために基板上に剥離防止層を設けるなどの対応がなされているが、そのためにコスト上昇、品質低下、歩留まり悪化などの問題が生じている。
さらに特許文献5に記載された技術は、ITO等の透明電極の成膜において、ターゲット表面に生成される絶縁材料を基板にスパッタリングする際に発生するアーキングの防止のための技術であり、高分子フィルム基板上に金属薄膜を成膜することに関しては記載されていない。
また特許文献6に記載された技術は、マグネトロンスパッタを行う場合、プラズマに対し、又は、ほぼプラズマ電位にある電極に対して負と正の電圧パルスを交互に印加するために、コーティング源とプラズマ源として2つのパルスマグネトロンが必要となり、装置が大型化、高価格化してしまう問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、高分子フィルムや熱膨張係数の大きな材料からなる基板上に高品質な薄膜を形成し得るスパッタリング方法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、基体の成膜面にそれと対向配置したターゲットのスパッタリングによって発生する粒子を付着させて成膜するスパッタリング方法において、前記ターゲットに、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とするスパッタリング方法を提供する。
本発明のスパッタリング方法において、周波数が50〜200kHzの範囲とすることが好ましい。
また、前記基体は高分子フィルムとすることが好ましい。
また、前記基体が高分子フィルムである場合は、実質的に基体バイアス電圧を加えないでスパッタリングを行うことが好ましい。
さらに本発明のスパッタリング方法は、高分子フィルム基体の成膜面に金属膜を成膜する場合に適用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のスパッタリング方法は、基体の成膜面に対向配置されたターゲットに、周波数50kHz以上、好ましくは50〜200kHz、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とする。
ここで「Off−Duty値」とは、トータルの電圧印加時間に占める電圧印加休止時間(反転パルス幅)のパーセンテージであり、例えば周波数100kHz(周期10μsec)(「μsec」は「μ秒」である)のパルス電圧において、反転パルス幅が1μsecであればOff−Duty値は10%、反転パルス幅が4μsecであればOff−Duty値は40%、反転パルス幅が5μsecであればOff−Duty値は50%となる。
【0011】
図1は本発明のスパッタリング方法を実施するために好適なスパッタリング装置を例示する概略構成図である。
このスパッタリング装置1は、基体として用いる高分子フィルム基体2(以下、フィルム基体と記す)とそれに対向配置された多数のターゲット3a〜3eとが配設され、該ターゲット3a〜3eのスパッタリングによって発生する粒子を、メインローラ4に接したフィルム基体2の外面側(成膜面)に付着させて成膜する高度真空排気が可能な成膜室5と、該成膜室5と連通して、フィルム基体2の移動方向左右に設けられたフィルム基体2供給用の巻出室6と成膜後のフィルム基体2保管用の巻取室8と、成膜室5と巻出室6との間に設けられた前処理室7とを主な構成要素として備えて構成されている。該ターゲット3a〜3eは、周波数50kHz以上、好ましくは50〜200kHz、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加可能な電源11にそれぞれ接続されている。
【0012】
成膜室5には、該成膜室5を超高真空に排気するための図示しない排気手段と成膜室5とを接続する排気口9と、該成膜室5内にスパッタリングガスとして高純度Arガスを供給する図示しないArガス供給源と成膜室5とを接続するArガス入口10が設けられている。なお上記Arガス入口10は、成膜室5ではなく巻出室6,前処理室7,巻取室8のいずれかに設けることができるし、排気口9も成膜室5と前処理室7以外に設けることができる。
該成膜室5を高真空に排気するための排気手段としては、例えば必要に応じてブースターポンプと組み合わせて、拡散ポンプ、クライオポンプ、ターボ分子ポンプ、水選択排気ポンプなどの高度真空排気が可能な高性能ポンプを用いることが望ましい。
またArガス入口10から供給されるArガスは、水分や微粒子が実質上含まれない高純度Arガスを用いることが望ましい。スパッタリングの際に成膜室5に導入されるArガスの圧力は0.1〜0.8Pa程度とされる。
【0013】
成膜室5内に固定配置された多数のターゲット3a〜3eは、フィルム基体2上に成膜する所望の薄膜の材質に応じて選択使用でき、例えばAg,Au,Pt,Cu,Al,Cr,Ti,Zn,Sn,Zr,Hf,Nb,Mo,Ta,W,In,Si等の1種または2種以上の金属、ITO,SnO2,In2O3,ZnO,Ga添加ZnO,Al添加ZnO,SiO2,SiNx等の酸化物または窒化物、Fe,Co,Ni等の強磁性金属、および強磁性合金等の磁性材料等を挙げることができる。複数のターゲット3a〜3eは、フィルム基体2が巻回状態で移動するメインローラ4を包囲するように配置されている。それらのターゲット3a〜3eは、それぞれ同一のターゲット材料(例えば高純度Ag板)をセットすることもできるし、それぞれ異なるターゲット材料を、例えばフィルム基体2の移動方向上流から下流に向けて、Ag等の金属、ZnO等の酸化物、Ag等の金属、ZnO等の酸化物、Ag等の金属のように配置し、フィルム基体2の成膜面上にこれらのターゲット材料を順次積層できるようにしてもよい。これらのターゲット3a〜3eの配置個数は特に限定されず、成膜の目的や条件に応じて適宜設定される。
【0014】
前記フィルム基体2は、本例示では透明で可撓性のある高分子フィルムが用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどが用いられる。フィルム基体2のフィルム厚さは特に制限されないが、通常10〜250μm程度である。フィルム基体2の片面または両面には、ハードコート層を設けてもよい。ハードコート材としては紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化樹脂としては、エステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、アクリル・ウレタン系、アクリル・エポキシ系などのモノマーやオリゴマーに光重合開始剤を配合したものが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール系、尿素系、メラミン系、不飽和ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、重合促進剤、溶剤、粘度調節剤などを配合したものなどが挙げられる。
【0015】
長尺のフィルム基体2は、巻出室6内に設けられた巻出しローラ12に巻回された状態で供給され、ここから導出されたフィルム基体2は、前処理室7を通って成膜室5に入り、メインローラ4に係合されてターゲット3と対向しながらメインローラ4の外周に沿って移動し、スパッタリングを施した後、成膜室5から導出し、巻取室8に入って巻取ローラ13に巻き取る。図1中、符号16〜23は、このフィルム基体2を連続的に移動させるために装置内の適所に配置されたローラ(搬送手段)である。
【0016】
成膜室5と巻出室6の間に設けられた前処理室7には、巻出室6から成膜室5に向けて移動するフィルム基体2に紫外線を照射する紫外線照射器14と、フィルム基体2にイオンビームソースでAr,He,Kr,Neから選択される不活性ガスに酸素を加えたイオン化ガスを照射するイオンビーム照射器15とのいずれか一方又は両方が設けられている。
【0017】
上記紫外線照射器14に用いられる紫外線源としては、水分脱離に必要な結合エネルギーである5.5eV以上の光子エネルギーを有しかつ熱源となる赤外線領域の発光のない紫外線光源が用いられ、好ましくは波長200nm以下の真空紫外線を発するエキシマランプ、重水素(D2)ランプなどが用いられる。波長200nm以下の真空紫外線は、酸素等により直ちに吸収されるため、空気中では伝搬しないが、真空雰囲気中またはスパッタリングガス雰囲気中であれば該ランプからフィルム基体2に照射される。照射された紫外線はフィルム基体に存在する水(H2O)に作用し、H−OH間結合を切断して揮発し脱水する。
【0018】
また、上記イオンビーム照射器15は、イオンビームソースでAr,He,Kr,Neから選択される不活性ガスに酸素を加えたイオン化ガスを照射する従来公知のイオンビーム照射装置を使用できる。このイオン化ガスの照射によって高分子フィルムの水分が除去される。また特にHe,Kr,Neなどの不活性ガスイオンの照射により、基体の透過率を劣化させることなくフィルム表面を精密に粗面化し、成膜される金属等の薄膜と基体との密着性を改善できる。
【0019】
上記のように構成したスパッタリング装置を用い、本発明のスパッタリング方法を実施する場合を説明する。
フィルム基体2は、巻出ローラ12に巻回した状態で巻出室6にセットし、一端を引き出して前処理室7を通し、成膜室5のメインローラ4に巻き付け、さらに巻取室8内の巻取ローラ13に巻き取らせるように、各ローラ16〜23に係合させる。
ターゲット3は成膜室5内に配置された複数の固定治具に取り付けて固定する。これらの固定治具は電源11に接続してスパッタリング用電圧を印加可能にしてある。
【0020】
次に、スパッタリング装置1内を真空排気し、スパッタリングガスとして用いるArガスを導入して成膜室5内を低圧Arガス雰囲気(スパッタリングガス雰囲気)にする。
上記真空排気を終え、成膜室5内をスパッタリングガス雰囲気にした後、巻取ローラ13を巻取方向に回転させ、フィルム基体2を一定速度で移動させる。前処理室7の紫外線照射器14とイオンビーム照射器15をONにして、成膜室5に導入される直前のフィルム基体2表面の水分および有機汚染物質を除去する前処理を行う。
【0021】
上記前処理を終えたフィルム基体2は、前処理室7から導出され、成膜室5のメインローラ4の外周面に接触しながら移動し、該メインローラ4に対向配置された多数のターゲット3a〜3eのスパッタリングで生じた粒子(スパッタ粒子)が付着して成膜される。多数のターゲット3a〜3eに印加するパルス電圧は、周波数50kHz以上においてこのOff−Duty値が40〜50%となる範囲である。多数のターゲット3a〜3eに印加するパルス電圧は、それぞれが同一(印加電圧、周波数および反転パルス幅)であってもよいし、複数種類のターゲット材料を用いる場合には、個々のターゲット材料に適したパルス電圧を選択し、使用ターゲット毎に異なるパルス電圧を印加してもよい。
【0022】
本発明では、周波数50kHz以上においてOff−Duty値が40〜50%となる範囲のパルス電圧をターゲット3a〜3eに印加する。
このように印加電圧の周波数を50kHz以上とし、またOff−Duty値を40〜50%の範囲内とすることによって、直流電圧(DC;パルスOff)での成膜に比べ、成膜して得られる金属薄膜の抵抗値が減少し、高品質の金属薄膜が得られる。なお、Off−Duty値を40〜50%とすると、Off−Duty値が該範囲未満で成膜する場合よりも成膜レートが低下するため、電源11の出力を適宜上昇させ、目的の膜厚が得られるように調節してもよい。
また周波数50kHz以上、Off−Duty値40〜50%の条件でパルス電圧を印加することで、膜の結晶構造が肥大化し結晶化が促進される。その結果、本発明に従って成膜した金属薄膜は、直流電圧で成膜した金属薄膜に比べて基板から剥離し難くなる。
さらに、周波数50kHz以上、Off−Duty値40〜50%の条件でパルス電圧を印加することで、基体側にバイアス電圧を印加することなく、高品質の膜を形成することができるので、バイアス電圧付加のための余分な設備が不要になり、製造装置や電源を簡略化でき、使用電力を削減できる。また、バイアス電圧を加えることによる余分な熱の発生がないため、高分子フィルムへの影響を小さくすることができる。
【0023】
成膜室5内で成膜を終えたフィルム基体2の部分は、巻取室8の巻取ローラ13に巻き取られる。
【0024】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。上記実施形態では、基体をフィルム基体2とし、成膜室5にフィルム基体2の成膜面をターゲット3に対向させた状態で一方向に向け移動させつつスパッタリングを行って、長尺のフィルム基体に連続的に薄膜形成する装置構成を例示したが、基体として高分子フィルム以外の材料、例えばLSI製造用基板などの金属基板、ガラス基板、セラミック基板等の硬質基体を用い、ターゲット上に該硬質基体を固定状態で配置してスパッタリングを行う構成としてもよい。この場合、紫外線照射器14とイオンビーム照射器15は、硬質基体を配置する成膜室内に配置される。本発明は基体を加熱することなく該基体上に高品質の膜を成膜できることから、基体として高分子フィルムなどの耐熱性の劣る材料からなる基体や熱膨張率の大きな材料からなる基体であっても高品質の膜を成膜できる利点がある。
【0025】
また、フィルム基体2の成膜面に複数の薄膜層、例えばAg/ZnO/Ag/ZnO/Ag/ZnOのような多層構造を形成する際に上記スパッタリング装置1を適用してもよい。ここで、Ag層とZnO層は、同じスパッタリング装置1を用いて、ターゲット3を変更して、または異なるターゲット3を備えた2つの成膜室5を設けた構成とすることによって実施できるし、または真空蒸着法、CVD法、レーザ蒸着法などの他の薄膜形成手段によって一方の層を成膜してもよい。
【0026】
本発明のスパッタリング装置は、制限されることなしに、例えば以下の用途に適用できる。
本発明のスパッタリング装置は、プラズマディスプレイパネル用光学フィルタに用いられる電磁波遮蔽膜を成膜するのに使用でき、光学的、電気的特性に優れたAg薄膜を提供し得る。
また本発明のスパッタリング装置は、TFT液晶表示装置におけるゲート電極用Cr薄膜を成膜するのに使用でき、比抵抗の小さい優れたCr薄膜を提供し得る。
さらに本発明のスパッタリング装置は、液晶表示装置やプロジェクターなどに利用可能な反射膜を成膜するのに使用でき、酸化度の低い高反射のAl薄膜を提供し得る。
また本発明のスパッタリング装置は、有機EL表示素子用の平滑ITO膜上にCr膜を成膜するために使用でき、ITO膜−Cr膜間の密着性を改善し、かつ比抵抗の小さい優れたCr膜を提供し得る。
【0027】
【実施例】
図1に示すスパッタリング装置1を作製した。スパッタリング装置1は、成膜室5、巻出室6、前処理室7および巻取室8とを備え、成膜室5にはターボ分子ポンプと水選択排気ポンプとを連結した真空排気系を接続した。また成膜室5にはスパッタリングガスとして高純度Arガスのボンベから精製器を介してArガス供給路を接続し、所定量のArガスを供給可能とした。成膜室5内には、フィルム基体2を巻回状態で移動させるためのメインローラ4と、それに対向させてターゲット固定治具を設置した。ターゲット3a〜3eは各種材料を設置可能であり、直方体形状のものを用いた。前処理室7には紫外線照射器14とイオンビーム照射器15を配置し、成膜室5内に導入される直前のフィルム基体の水分及び表面の有機汚染物質を除去できる構成とした。フィルム基体2としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、これを巻出ローラ12に巻回し、巻出室6内に設置した。巻取室8にも同様の大きさの空の巻取ローラ13を配置し、巻出ローラ12からフィルム基体2を引き出し、前処理室7を通して成膜室5のメインローラ4に接触させて巻取室8に通し、その先端を巻取ローラ13で巻き取った。フィルム基体2は、成膜室5のメインローラ4に密着した状態で冷却もしくは加熱されながら、各ターゲット3a〜3eからのスパッタ粒子を堆積させて成膜される。このフィルム基体2は、各ローラを回転駆動させることにより、約1m/分でスパッタリング装置内を移動可能とした。
【0028】
図1に示したフィルムスパッタリング装置において、成膜室やターゲット周辺部材の表面は、サンドブラスト処理した後に電解研磨処理または硫酸とリン酸の混合液に浸漬する化学研磨処理して到達真空度の改善を図った。また、水排気能力の高い水選択排気ポンプとターボ分子ポンプを併用し、成膜室を排気した。これによりスパッタリングによる成膜前の成膜室到達真空度は1×10−5Pa以下となった。
成膜室には精製器で水分を除去したArガスを導入し、スパッタリング時の圧力が0.1から0.6Paとなるよう調整した。
ターゲットには純度99.95%のCrを使用した。
【0029】
[実験1]:Off−Duty値と成膜したCr膜の抵抗値との関係
Crターゲットに周波数100kHz(周期10μsec)にて、反転パルス幅を1μsec(Off−Duty値:10%)から5μsec(Off−Duty値:50%)まで可変させてパルス電圧を印加して1000〜2000(Å)を成膜した。反転パルス幅を大きくすると成膜レートが低下する為、電源出力を適宜上昇させ、目的の膜厚が得られるよう調整した。反転パルス幅を変えて成膜して得られたそれぞれのCr膜のシート抵抗を四探針法にて測定した。
反転パルス幅と測定したCr膜のシート抵抗値との関係を図2に示す。
図2から判るように、反転パルス幅の増加(Off−Duty値の増加)に伴い、得られるCr膜のシート抵抗値が低下していることが確認された。本実験から、周波数100kHzにおいて反転パルス幅が4μsec〜5μsec(Off−Duty値40〜50%)のパルス電圧の印加が良好であることが判った。
【0030】
[実験2]:周波数と成膜したCr膜の抵抗値との関係
次に、反転パルス幅をOff−Duty値50%に固定し、印加するパルス電圧の周波数を変えてCr膜を成膜し、その周波数と成膜したCr膜のシート抵抗値との関係を調べた。その結果を図3に示す。
図3から判るように、DC(パルスOff)に対し、Off−Duty値が50%のパルススパッタリングによる成膜は、周波数の上昇とともに、成膜されたCr膜のシート抵抗値が減少し、高品質のCr膜が得られることが確認された。これはパルスによる成膜レートが周波数上昇とともに低下することが関係し、周波数の効果が現われたと思われる。
【0031】
[実験3]:スパッタ圧力依存性の比較
印加電圧を周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)とし、成膜室内のArガス圧力(スパッタ圧力と記す)を変化させて成膜し、スパッタリングの圧力依存性を調べた。その結果を図4に示す。図4中、実施例と記した曲線は、各スパッタ圧力下、周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)でスパッタリングして成膜したCr膜のシート抵抗値であり、比較例と記した曲線は各スパッタ圧力下、DCでスパッタリングして成膜したCr膜のシート抵抗値である。
図4から判るように、DCを用いた比較例でもスパッタ圧力の低下によりCr膜のシート抵抗は下がるが、本発明に係る実施例では、スパッタ圧力の低下とともにCr膜のシート抵抗値が大幅に減少した。
一般的に0.2Pa以下の低圧下でのスパッタリングはインピーダンス上昇に伴い放電状態が不安定となるため実用的でないが、パルススパッタにおいては周波数上昇とともにプラズマインピーダンスの低下をもたらし、安定放電が可能となる。
【0032】
[実験4]:成膜したCr薄膜の結晶構造の比較
従来方式であるDCスパッタリングで成膜したCr薄膜(比較例)と、印加電圧を周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)でスパッタリングして成膜したCr薄膜(実施例)のそれぞれのX線回折結果を図5に示す。図5中(a)は比較例のCr膜、(b)は実施例のCr膜のX線回折結果である。図5から、本発明に係る実施例のCr膜は、ピーク強度および半値幅から判断して、結晶構造が促進されていることが確認できる。
【0033】
[実験5]:膜密着性の比較試験
膜密着性についてテープ剥離法(JIS K5400参照)により確認した。成膜室にガラス基板を固定配置し、該ガラス基板の成膜面にCrターゲットを配置し、DC電圧を印加するスパッタリング(比較例)および周波数100kHz、反転パルス幅5μsec(Off−Duty値50%)のパルス電圧を印加するスパッタリング(実施例)を行って、それぞれ300nmの厚さのCr薄膜を成膜した。より効果を明瞭に確認するため、この試験に使用したガラス基板は超音波洗浄のみを施し、特に表面に粗面化処理は施さず、平滑な面を残した。スパッタリングにより成膜した実施例および比較例のそれぞれのCr薄膜を1mmピッチの碁盤目状にカッターで切り、テープを貼り付け、その後剥がした際のCr薄膜の残存率を比較した。その結果、比較例は残存率50%程度であったのに対し、本発明に係る実施例で成膜したCr薄膜は100%残存し、本発明により得られる膜は基体に対し優れた密着性が得られることが判った。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧をターゲットに印加してスパッタリングを行うことによって、基体を加熱することなく、低い電気抵抗、良好な結晶構造、膜の均一性などに優れる高品質の薄膜を成膜することができるので、特に加熱に耐えない高分子フィルム基体や熱膨張係数の大きな基体であっても、高品質の薄膜を成膜することができる。
また本発明によれば、基体と成膜される薄膜との密着性が良好となり、基体側に剥離防止層を形成せずに耐剥離性の良好な薄膜を形成できる。さらに剥離防止層が不要なので、該剥離防止層形成に伴うコスト上昇、品質低下、歩留まり悪化などの問題を克服できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパッタリング装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】Off−Duty値と成膜したCr膜の抵抗値との関係を調べた実験1の結果を示すグラフである。
【図3】周波数と成膜したCr膜の抵抗値との関係を調べた実験2の結果を示すグラフである。
【図4】スパッタ圧力依存性の比較試験(実験3)の結果を示すグラフである。
【図5】成膜したCr薄膜の結晶構造の比較試験(実験4)のX線回折結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 スパッタリング装置
2 フィルム基体(基体)
3 ターゲット
4 メインローラ
5 成膜室
Claims (5)
- 基体の成膜面にそれと対向配置したターゲットのスパッタリングによって発生する粒子を付着させて成膜するスパッタリング方法において、
前記ターゲットに、周波数50kHz以上、Off−Duty値が40〜50%である高周波パルス電圧を印加してスパッタリングを行うことを特徴とするスパッタリング方法。 - 周波数が50〜200kHzの範囲である請求項1に記載のスパッタリング方法。
- 基体が高分子フィルムである請求項1又は2に記載のスパッタリング方法。
- 実質的に基体バイアス電圧を加えないでスパッタリングを行う請求項3に記載のスパッタリング方法。
- 高分子フィルム基体の成膜面に金属膜を成膜する請求項3又は4に記載のスパッタリング方法。
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