JP2004230773A - 離型フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】シリコーンを嫌う用途であって、離型面の反対面側に脱気性などが求められる用途に好適な離型フィルムを提供する。
【解決手段】基材ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有するフィルムであって、離型層表面における炭素原子に対する珪素原子の存在比(Si/C)が0.01以下、炭素原子に対するハロゲン原子の存在比(X/C)が0.1以下、トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cm以下、残留接着率が80%以上であって、少なくとも一方の表面の表面粗さが0.10mμ以上である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、離型フィルムに関し、詳しくは、電子部品の製造工程などで好適に使用される離型フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術および本発明が解決しようとする課題】
離型フィルムは、粘着シート、接着シート、セラミックグリーンシート等の製造において、それぞれの原材料と成る溶液・分散液などを塗工するための基材として幅広く使用されている。特に、クリーン度が求められる用途においては、ポリエステルフィルムを基材とし、シリコーン化合物を離型層としたフィルムが最も一般的に使用されている。ところが、シリコーン離型層には未反応の低分子量シリコーン化合物などが含まれており、これが粘着剤等々の製品側へ移行し、その部位周辺のみにハジキを生じる等の障害を生じる場合がある。
【0003】
このため、特にシリコーン化合物の転移を嫌う用途においては、弗素化合物から成る離型層を有するフィルムやポリオレフィンフィルム等が使用されてきた。ところが、弗素化合物から成る離型層は、大部分、現行シリコーン系に比べて重剥離であり、また、昨今の廃棄物処理における環境負荷軽減のための脱ハロゲン化の趨勢に必ずしも従うものではない。
【0004】
そこで、珪素もハロゲン元素も含まない離型剤の例として、ポリオレフィン又は長鎖アルキル含有ポリマーが知られている(例えば特許文献1〜6参照)。
【0005】
しかしながら、これらの離型剤は、何れも、剥離力が100mN/cmを超える重剥離であり、適用できる用途に制限がある。更に、長鎖アルキル含有ポリマーの従来の主用途では耐溶剤性を要しないため、溶液・スラリー等をキャストする工程で使用するフィルムには適さない等の課題もある。
【0006】
また、ポリオレフィンフィルムは、前述のクリーン度や平坦性の他に、耐熱性の観点より溶液・分散液塗設後の熱処理条件に制約がある等の課題がある。更に、熱プレス加工で基板などの製造時に使用される場合は、製品と接触する離型面の反対面は通常衝撃吸収のためのラバーシート等と接触しており、熱シワが発生したり、気泡巻き込みで平坦性を損ねるなどの課題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開昭54−7442号公報
【特許文献2】
特開昭55−69675号公報
【特許文献3】
特開平5−329994号公報
【特許文献4】
特開平10−183078号公報
【特許文献5】
特開平11−28708号公報
【特許文献6】
特開2000−303019号公報
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の処方によって得られた長鎖アルキルポリマーから成る離型層を少なくとも片面に有し、少なくとも一方の面を所定の粗面とすることにより、プレス加工などで好適に使用される離型フィルムとなし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、基材ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有するフィルムであって、離型層表面における炭素原子に対する珪素原子の存在比(Si/C)が0.01以下、炭素原子に対するハロゲン原子の存在比(X/C)が0.1以下、トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cm以下、残留接着率が80%以上であって、少なくとも一方の表面の表面粗さが0.10mμ以上であることを特徴とする離型フィルムに存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう基材フィルムとは、ポリエステルを主体としたポリマーから構成される一層または複数の層より成るシート状成形体を指する。基材フィルムの厚さは、通常10〜250μmである。
【0011】
基材フィルムに使用するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、これらの誘導体などが好適である。基材フィルムは、押出成形法、流延法などの常法によって得ることが出来るが、耐熱性の観点から、シートに成形後、必要に応じて延伸・熱固定を施すことが好ましい。なお、基材フィルムには、各種安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤などが添加されていてもよいし、ポリブチレンテレフタレート等の他種ポリエステルやポリプロピレン等の他種ポリマーが混合されていてもよい。
【0012】
本発明でいう離型層とは、基材フィルム上の少なくとも一方の表面に設けられた、離型性を有する表面層であって、離型性を有するポリマー等を塗工した場合はポリマー塗工層を指す。
【0013】
本発明における離型層は、離型層表面における炭素原子に対する珪素原子の存在比(Si/C)が0.01以下でなければならない。Si/Cは好ましくは0.001以下であり、離型層表面に珪素原子が実質的含まれていないのが最も好ましい。Si/Cが0.01を超えると、使用に際して粘着面などの被保護体表面上または外環境へ珪素が転着し汚染の著しい要因となるために好ましくない。
【0014】
本発明における離型層は、離型層表面における炭素原子に対するハロゲン原子の存在比(X/C)が0.1以下でなければならない。ここに、ハロゲン原子(X)は、弗素、塩素、臭素などを指す。X/Cは好ましくは0.01以下であり、離型層表面にハロゲン原子が実質的含まれていないのが最も好ましい。X/Cが0.1を超えると、環境負荷低減の観点から好ましくない。
【0015】
なお、離型層中の珪素密度・ハロゲン密度を実質的に零とするためには、塗工前のコート剤中の珪素密度・ハロゲン密度を実質的に零とすればよい。
【0016】
本発明の離型フィルムは、トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cm以下、好ましくは70mN/cm以下、更に好ましくは50mN/cm以下である。トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cmを超えると、耐溶剤性が不十分となるため転写法用途には適さなくなるために好ましくない。
【0017】
本発明の離型フィルムは、残留接着率が80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。残留接着率が80%に満たない場合、離型層が被着体へ移行量が多くなるために好ましくない。
【0018】
珪素原子もハロゲン原子も実質的に含有せず、トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cm以下、残留接着率が80%以上を同時に実現する離型剤として使用される組成物の例としては、(1)ポリメチレンを主体とする主鎖に長鎖アルキル側鎖が設けられたポリマー、(2)ポリオレフィン主骨格に反応性架橋基を導入したもの、(3)ポリオレフィンに反応性架橋基を有する低分子量ポリオレフィンを混合させたものを原料とし、これらの原料 の1種または2種以上を適当な架橋剤の存在下に熱硬化または活性エネルギー線硬化させたもの等が挙げられる。特に、上記(2)又は(3)を原料とした共重合ポリエチレンが好ましい。
【0019】
上記の組成物の一例としては、4−ヒドロキシブチルアクリレートを共重合したポリステアリルメタクリレートやエチレン−プロピレン共重合体に2−ヒドロキシエチルメタクリレートを溶融変性させたもの等を多官能イソシアネートで熱硬化した組成物が挙げられる。
【0020】
本発明の離型フィルムは、少なくとも一方の表面粗さが0.10μm以上、好ましくは0.20μm以上、更に好ましくは0.30μm以上である。表面粗さが0.10μmに満たないと、熱プレス加工などの加工時に熱シワが入り易くなったり、気泡巻き込みによる平坦性低下などを生じる場合があり好ましくない。上記の様な表面粗さは、基材ポリエステルフィルムとして適切な表面粗さを有するものを使用することによって達成することが出来る。そして、必要な基材ポリエステルフィルムは市販のポリエステルフィルムの中から容易に選択することが出来る。
【0021】
離型層を形成する組成物には、必要に応じ、消包剤、塗布性改良剤、増粘剤、界面活性剤、潤滑剤、有機系粒子、無機系粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、高分子化合物などを添加してもよい。
【0022】
基材フィルムの表面に離型層を形成する方法としては、例えば、ホットメルト法、塗布法、共押出法などの方法が挙げられる。塗布法の場合には、原崎勇次著、槇書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター又はこれら以外の塗布装置を使用し、基材フィルム製造工程外で塗布液を塗布する方法、フィルム製造工程内で塗布する方法が挙げられる。
【0023】
基材フィルムと離型層との間には、易接着層、帯電防止層などの中間層を設けてもよい。更に、必要に応じ、基材フィルムの表面には、コロナ放電処理などの易接着処理を行ってもよい。
【0024】
離型層の厚さは、通常10nm以上、好ましくは50nm以上である。離型層の厚さが10nm未満の場合には、均一な層が得難いために剥離性が劣る様になることがある。一方、上限は、特に限定は無いが、厚過ぎる場合はコストアップ要因となること、場合によっては10μm以上で滑り性が低下すること等から、10μm以下にすることが推奨される。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは「重量部」のことである。また、本発明で使用した評価方法は次の通りである。
【0026】
(1)表面の原子の存在比:
離型層表面における原子存在比は、X線光電子分光法を使用して求められる表面に存在する原子種と濃度とから、ハロゲン原子濃度/炭素原子濃度、珪素原子濃度/炭素原子濃度で与えられる。島津製作所「ESCA−1000」を使用して8kV、300mAの条件で得られたMgのKα線を使用し、C(1S)、Si(2S)、Cl(2P)、F(1S)、Br(3d)由来のスペクトルを測定し、それらのピーク面積を次の原子感度係数を使用して補正し表面濃度を見積もった。次いで、C(1S)由来の濃度を使用して各原子濃度を規格化することにより、珪素原子存在比(Si/C)、塩素原子存在比(Cl/C)、フッ素原子存在比(F/C)、臭素原子存在比(Br/C)を求めた。原子感度係数は次の通りである。C(1S)=1.0、Si(2S)=0.86、Cl(2P)=2.36、F(1S)=4.26、Br(3d)=3.04
【0027】
(2)トルエン浸漬後剥離力[mN/cm]:
室温大気圧下でフィルムをトルエンに10分間浸漬後、取り出して風乾する。このフィルムの離型層表面に、粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を貼り付けて、室温にて1時間放置後、引張試験機にて引張速度300mm/分で180°剥離を行い、剥離が安定した領域における平均剥離荷重を粘着テープ幅で除した値をトルエン浸漬後の剥離力とした。
【0028】
(3)残留接着率[%]:
離型層表面に粘着テープ「No.31B」(日東電工(株)製)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着した離型フィルムを剥がし、粘着テープ「No.31B」を使用し、JIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力Fを測定する。粘着テープ「No.31B」を直接ステンレス板に粘着・剥離した際の接着力F0に対するFの百分率を残留接着率とした。
【0029】
(4)表面粗さ[μm]:
3cm角のフィルム試料の表面にAl蒸着を行い、直接位相検出干渉法、いわゆる2光束干渉法を用いた非接触式3次元粗さ計(マイクロマップ社製「512」)を使用し、測定波長:554nm、対物レンズ倍率:20倍の条件にて、突起高さ分布曲線より、232μm×177μmの測定領域におけるフィルム表面の中心面平均粗さSRaを50点に亘り測定し、50点のSRa値を平均して、フィルムの表面粗さとした。
【0030】
(離型剤主成分:エチレンプロピレン共重合体の合成)
1Lのオートクレーブをエチレンとプロピレン混合ガス(分圧比8/2)で置換し、脱気、乾燥したトルエン450mLを投入した。系内にメチルアルモキサントルエン溶液(Witco社製)をAl分として100ミリモル仕込み、70℃で10分攪拌した後、メタロセン触媒(ジメチルシリレンビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド)を0.1ミリモル加えて上記エチレンとプロピレンの混合ガスで0.7MPaに加圧し、1時間重合してエチレンプロピレンランダム共重合体を得た。H−NMRで求めた生成物の組成重量比はエチレン/プロピレン=74/26、MFRは2.0g/10分、密度は0.86g/cmであった。
【0031】
(離型剤主成分:エチレンヘキセン共重合体の合成)
1Lのオートクレーブをエチレンガスで置換し、脱気、乾燥したトルエン450mL、同じく脱気、乾燥した1−ヘキセン16gを投入した。系内にメチルアルモキスァントルエン溶液(Witco社製)をAl分として100ミリモル仕込み、70℃で10分攪拌した後、メタロセン触媒(ジメチルシリレンビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド)を0.1ミリモル加えてエチレンガスで0.5MPaに加圧し、2時間重合してエチレンヘキセンランダム共重合体を得た。H−NMRで求めた生成物の組成重量比はエチレン/ヘキセン=85/15、MFRは17g/10分であった。
【0032】
(離型剤主成分:変性エチレンプロピレン共重合体の合成)
エチレンプロピレン共重合体100部、ヒドロキシエチルメタクリレート30部、ジクミルパーオキシド6.6部をオルトジクロロベンゼンに溶解して2重量%溶液とし、150℃に加熱し7時間反応させた。反応後、系内に過剰量のメタノールを加え、沈殿物を濾過、乾燥して変性エチレンプロピレン共重合体を得た。H−NMRより求めたヒドロキシエチルメタクリレートの含有量は0.32重量%であり、OH基量は0.04重量%であった。密度は0.86g/cmであった。
【0033】
(コート液Aの調製)
エチレンプロピレン共重合体4部、エチレンヘキセン共重合体5部をトルエン/酢酸エチル(85部/15部)の混合溶液591部に溶解し、コート液Aとした。
【0034】
(コート液Bの調製)
変性エチレンプロピレン共重合体4部、エチレンヘキセン共重合体5部をトルエン/酢酸エチル(85部/15部)の混合溶液591部に溶解した。これに、変性エチレンプロピレン共重合体のOHに対して1.1当量のイソシアネート基になる様に、三菱化学(株)製「マイテックス718A」(脂肪族イソシアネート・トリオール付加体(3官能イソシアネート)の76重量%酢酸ブチル溶液)を添加し、最後にフードリープロセス社製「DABCO」(1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン)0.1部を加えコート液Bとした。
【0035】
(コート液Cの調製)
エチレンヘキセン共重合体9部をトルエン/酢酸エチル(85部/15部)の混合溶液591部に溶解し、コート液Cとした。
【0036】
実施例1及び比較例1〜3
基材フィルム上に上記の各コート液をメイヤーバー#6にて塗布後、120℃2分間の熱処理を行い、離型層を形成し、離型フィルムとした。得られた離型フィルムの評価結果を表1及び表2に示す。
【0037】
【表1】
Figure 2004230773
【0038】
【表2】
Figure 2004230773
【0039】
【発明の効果】
本発明の離型フィルムは、シリコーンを嫌う用途であって、離型面の反対面側に脱気性などが求められる用途に好適であり、その工業的価値は非常に高い。

Claims (2)

  1. 基材ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に離型層を有するフィルムであって、離型層表面における炭素原子に対する珪素原子の存在比(Si/C)が0.01以下、炭素原子に対するハロゲン原子の存在比(X/C)が0.1以下、トルエン浸漬後の剥離力が90mN/cm以下、残留接着率が80%以上であって、少なくとも一方の表面の表面粗さが0.10mμ以上であることを特徴とする離型フィルム。
  2. 離型層が主として共重合ポリエチレンで構成されている請求項1に記載の離型フィルム。
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