JP2004226413A - 軸力測定方法および軸力測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボルト等の長尺部品の軸力を超音波の伝播時間に基づき測定する方法において、超音波のキャリア波形のうち、どの周期のものを選択するかについて、適切に選択する。
【解決手段】比較的大きなしきい値204を超えたピーク206,208を抽出し、このピークの間の時間T1を算出する。この時間T1がボルト締め付け前のものに比して、例えば破断点を超えているなど、現実にあり得ない値であるかを判断する。現実にはあり得ない値であった場合、前述のしきい値204をより小さいしきい値214とする。このしきい値に基づきピーク206,210を抽出し、このピーク間の時間T2を算出する。これが妥当な値であれば、これに基づき軸力を算出する。
【選択図】図9
【解決手段】比較的大きなしきい値204を超えたピーク206,208を抽出し、このピークの間の時間T1を算出する。この時間T1がボルト締め付け前のものに比して、例えば破断点を超えているなど、現実にあり得ない値であるかを判断する。現実にはあり得ない値であった場合、前述のしきい値204をより小さいしきい値214とする。このしきい値に基づきピーク206,210を抽出し、このピーク間の時間T2を算出する。これが妥当な値であれば、これに基づき軸力を算出する。
【選択図】図9
Description
本発明は、長尺部品、たとえばボルトなどねじ締結体の軸方向に加わる力である軸力を、当該部品中を伝播する音波の伝播時間に基づき測定する方法および測定する装置に関する。
二つまたはそれ以上の部品を締結する方法として、ボルトによる締結方法は最も広く知られた方法の一つである。この締結力は、ボルトの軸方向にかかる力である軸力の反力として発生する。したがって、ボルト軸力を測定することによって、当該ボルトが複数の部品を締結している力を知ることができる。一方、この締結力は、工業製品などの製造過程において適切に管理される必要がある。この締結力が小さければ、製品を使用中にボルトが緩んだり、締結力が大きければ想定された以上の変形が製品に生じ、所定の性能を達成できない場合がある。この締結力を管理するには、前述のようにその反力であるボルト軸力を管理すればよい。
このボルト軸力を管理するための様々な方法が知られている。最も広く用いられている方法は、ボルトを締め付けるトルクを管理することにより、間接的にボルト軸力を管理するものである。しかし、この方法は、簡易ではあるが、ボルトと締結される部品との摩擦力のばらつきが大きいために誤差が大きく、場合によっては、十分な精度を得ることができないという問題があった。
また、別の方法として、ボルト内部を伝播する音波の伝播時間に基づきボルト軸力を求める方法が知られている。軸力が加わるとボルトが延びるために伝播時間が延び、また軸力による応力場により音速が低下することによっても伝播時間が延びる。この方法においては、これを利用してボルトの軸力を測定している。具体的には、同一種類のボルトによって、ボルト軸力とボルト全長を音波が往復する伝播時間の関係を求めておき、あるボルトの伝播時間を測定し、前記の関係に基づき軸力を推定することができる。しかし、この方法では、個々のボルトのばらつき、特に長さのばらつきにより誤差が生じるという問題があった。なお、前述の音波は、所定周波数のキャリア波を短時間送信するパルス波を用いるのが一般的である。そして、キャリア波の所定値以上のピークに基づき音波の到達を判断している。
前述のパルス波は短時間とはいえ、ある程度の時間幅を有しており、そのどの時点でパルス波が到達したとするか問題がある。特に、一つのパルスが、複数周期のキャリア波形を含む場合、どの周期のキャリア波形が選択されたかにより伝播時間が変化してしまい、誤差が生じるという問題があった。
本発明は、複数周期のキャリア波形のうち、どの周期のものを選択するか、において有利な軸力測定方法およびこれを用いて軸力を測定する軸力測定装置を提供する。
本発明にかかる軸力測定方法は、測定対象となる長尺部品と同種の部品にて、当該部品の所定点の間の音波の伝播時間を、軸力を加える前後において測定し、またそのときの軸力を測定し、この伝播時間変化と軸力との関係を求めるステップと、測定対象となる長尺部品の、軸力を加える前後の伝播時間の変化を測定し、前記の伝播時間変化と軸力の関係から軸力を算出するステップと、を有する軸力測定方法に関するものである。
そして、特に、前記伝播時間の測定は、所定周波数のキャリア波のパルス音波を送受し、所定の点で受信された前記音波に基づき行われるものであって、前記パルス音波が含むキャリア波の、所定のしきい値を超えたピークのうち最初のピーク間の時間を伝播時間とするステップと、この伝播時間に基づき軸力を加える前後の伝播時間の変化を、仮の伝播時間変化として算出するステップと、前記仮の伝播時間変化が所定の範囲にない場合、前記しきい値を小さい値に変更するステップと、前記仮の伝播時間変化が所定の範囲となるまで、前記のしきい値変更を繰り返し、所定の範囲となったときの値を真の伝播時間変化として算出するステップと、により行われる。
前記のようなキャリア波からなるパルス波において、二つのパルス波の時間間隔を測定するには、二つのパルス波に含まれるキャリア波のピークの時間間隔を測定する。しかし、パルス波には、複数のキャリア波のピークが存在し、適正に対応するピーク間の時間を測定しないと、正しい軸力を算出することができない。ピークの選択を誤ると、負の軸力や、ボルトの破断応力以上の軸力など、あり得ない軸力が算出される場合がある。また、前記のピークは、キャリア波の周期ごとに現れるから、任意に選択されたピーク間の時間間隔は離散的な値をとる。よって、これに対応して算出される軸力も離散的な値をとるが、この離散値の間隔が、想定される軸力の範囲以上であれば、どの値が適切な値かを推定することができる。たとえば、ボルトを締め付けた場合、軸力が負となることはないので、負の軸力が算出されるようなピークの組は、排除することができる。また、材料強度などから定まる破断点以上の軸力が算出されるピークの組も排除することができる。さらに、実際の締め付けにおいて、軸力が所定の範囲となる場合においては、この範囲から外れるピークの組を排除することもできる。
より具体的には、伝播時間は次のように算出される。前記キャリア波のピークを検出するために、しきい値を定め、このしきい値より大きいピークのうち最初のピークが検出された時点を、そのパルス波の到達時点とする。二つのパルス波の前記の到達時点間の時間を算出し、伝播時間とする。この伝播時間と、あらかじめ求められている締め付け前の伝播時間との差を算出する。この伝播時間差が所定の範囲にあるかを判断し、ない場合、前記のしきい値を小さく変更し、同様にして再度伝播時間差を求める。このように、しきい値を小さくすることにより、減衰してピーク値の下がったピークを探し出すことができ、測定すべきピークを探すことができる。そして、伝播時間差が所定の範囲に入ったとき、これに基づき軸力を算出する。
前述のキャリア波のピークの選択について、音波の縦波と横波の伝播時間の比に基づき軸力を算出する方法にも採用することが可能である。すなわち、横波、縦波それぞれについて、任意のピークの組から伝播時間を求め、横波と縦波の伝播時間の比を求め、この比が所定の範囲となる場合に、これに基づき軸力を算出する。
さらに、適正なピーク値の組を次のように見つけることも可能である。到達時間の差を求めようとする二つのパルスの間で、各キャリア波のピーク間の時間差を全て算出し、この時間差についての度数分布を求める。この度数分布は、キャリア波の周期に相当する間隔を有する離散的な分布となる。離散した塊ごとに平均を求め、これらの平均値とあらかじめ測定されている締め付け前の伝播時間との差を求める。そして、この伝播時間差が所定の範囲にある前記平均値を真の伝播時間として、このときの伝播時間差に基づき軸力を算出する。
さらに、この適正なピークの組を見つけ、軸力を測定する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。すなわち、この記録媒体は、長尺部品の所定点の間の音波の伝播時間の軸力を加える前後変化と、そのときの軸力との関係をメモリから読み込む手順と、軸力を加える前に前記長尺部品の所定点間の音波の伝播時間を測定する手順と、軸力を加えた後、前記所定点において検出された音波の少なくとも二つのパルス波形を読み込む手順と、前記二つのパルス波形の間において、前記パルス波形が含むキャリア波の各ピーク間の時間を各個に算出する手順と、前記ピーク間の時間の度数分布を求め、度数分布の塊ごとに平均値を算出する手順と、前記各平均値と軸力を加える前の伝播時間の差が、所定の範囲内のものの平均値を音波の伝播時間とし、これに基づき軸力を加える前後の伝播時間の差を算出する手順と、前記軸力を加える前後の伝播時間差に基づき、前記伝播時間変化と軸力の関係から、そのときの軸力を算出する手順と、を記録したものである。
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。
[第1の関連技術]
図1は、本発明の実施形態に関連する装置概要を示す構成ブロック図である。測定対象は、二つの部品10,12を締結している六角ボルト14(以下、単にボルト14と記す)である。ボルト頭頂部には、ボルト14内に音波を送信し、およびボルト14から音波を受信する超音波探触子16が配置される。この装置においては、送受信される音波は、一般に約5〜20MHzの超音波が用いられている。超音波探触子16は、ボルト14内部に横波と縦波の超音波を生成し、またこれらを受信できるものであれば、公知のどのような探触子を使用することもできる。特に横波と縦波を同時に送受信できる構造であることが好ましい。さらには、ボルトが反った場合、反りの外側・内側で伝播経路が異なるので、これが相殺されるように超音波振動子の横波と縦波の送受信部が配置されることが好ましい。このような配置にはたとえば、中心部に横波の送受信部、そしてその周囲に円環状縦波の送受信部を配する方法がある。また、円を複数本の直径で分割した各扇形の部分に交互に横波・縦波の送受信部を配置することができる。超音波の送信は、送受信制御部18により制御される送信回路20から送信される送信信号によって実行される。また、受信回路22は、ボルト14の先端で反射した反射波を受信する。反射波を受信した時刻と、前述の送受信制御部18の送信制御の時刻に基づきボルト14の全長を超音波が往復した時間(伝播時間)を横波、縦波それぞれについて伝播時間算出部24が算出する。
図1は、本発明の実施形態に関連する装置概要を示す構成ブロック図である。測定対象は、二つの部品10,12を締結している六角ボルト14(以下、単にボルト14と記す)である。ボルト頭頂部には、ボルト14内に音波を送信し、およびボルト14から音波を受信する超音波探触子16が配置される。この装置においては、送受信される音波は、一般に約5〜20MHzの超音波が用いられている。超音波探触子16は、ボルト14内部に横波と縦波の超音波を生成し、またこれらを受信できるものであれば、公知のどのような探触子を使用することもできる。特に横波と縦波を同時に送受信できる構造であることが好ましい。さらには、ボルトが反った場合、反りの外側・内側で伝播経路が異なるので、これが相殺されるように超音波振動子の横波と縦波の送受信部が配置されることが好ましい。このような配置にはたとえば、中心部に横波の送受信部、そしてその周囲に円環状縦波の送受信部を配する方法がある。また、円を複数本の直径で分割した各扇形の部分に交互に横波・縦波の送受信部を配置することができる。超音波の送信は、送受信制御部18により制御される送信回路20から送信される送信信号によって実行される。また、受信回路22は、ボルト14の先端で反射した反射波を受信する。反射波を受信した時刻と、前述の送受信制御部18の送信制御の時刻に基づきボルト14の全長を超音波が往復した時間(伝播時間)を横波、縦波それぞれについて伝播時間算出部24が算出する。
メモリ26には、ボルト14と同種、すなわち材質、形状が同一であるボルトによってあらかじめ求められている伝播時間と軸力の関係を示す軸力算出関数が横波・縦波ごとに記憶されている。演算部28は、算出された伝播時間と、横波および縦波の軸力算出関数を読み出す。そして、暫定軸力算出部30は、これら読み込まれたデータから軸力を算出する。この算出された軸力は、実際に測定されたボルト14の長さが、軸力算出関数を求めたときのボルトの長さと異なる場合があるために、ある誤差を含んでいる。そこで、ここで算出された軸力を、暫定的に求められた軸力とし、横波に基づくものが暫定横波軸力、縦波に基づくものが暫定縦波軸力とする。本来、一つのボルトの軸力を測定しているのであるから、横波に基づき測定した軸力と縦波に基づき測定した軸力とは一致するはずである。軸力算出部32は、これら二つの暫定軸力が一致しない原因が、ボルト14の長さが軸力算出関数を求めたときのボルト長さと異なるためであり、ボルト長さが一致すれば、二つの暫定軸力が本来一致するとの仮定の下に、軸力の算出を行う。この軸力の算出については、後に詳述する。
前述の送受信制御部18、伝播時間算出部24と演算部28は、実際には、コンピュータに備えられた所定のプログラムに基づき作動するCPU(中央処理装置)34である。また、前記のプログラムは、コンピュータの内部メモリに記憶することも、CD−ROM(コンパクトディスク−読出し専用メモリ)36やFD(フレキシブルディスク)などの外部記録媒体に記憶することもできる。前記のような外部記録媒体に記憶する場合、記憶された情報を読み出すためのCD−ROMドライブ38などが備えられている。
次に、軸力の算出方法について詳述する。図2は、ボルト14により二つの部品10,12を締結している状態の模式図である。締結時、ボルト14には、均等に軸力が加わるのではなく、ボルト頭部の軸部に近接する部分からねじにより結合している部分の間に軸力が加わり、ボルト14の両端部には、軸力の加わらない部分が存在する。また、軸力が加わっている部分においても、均一の軸力が加わっているのではなく、たとえばねじにより結合している部分においては、ボルト頭部に近いほど軸力が高くなっている。しかし、ここでは、図示するように、簡易的に、軸力が加わっている負荷部分(図中斜線を施した部分)と、軸力が加わっていない無負荷部分に分ける。負荷部分の長さは、実際の軸力、すなわち長さ方向に均一ではない軸力による伸びと、ボルトにかかる軸力が負荷部分全体に均一に加わっているとしたときの伸びが一致する長さとする。この長さを、等価応力長さとする。
音速は、音の伝達媒体の応力により変化することが知られており、応力σにおける音速Vは、応力が0(無負荷)のときの音速V0、音弾性係数αを用いて、
V=V0(1−ασ) ・・・(1)
と表せる。なお、横波・縦波によって無負荷時の音速V0および音弾性係数αは異なっている。このように、応力によって音速が変化するために、軸力が加わったボルトの音速は、図2に示すようなものとなる。すなわち、無負荷時の音速は、横波がvS、縦波がvLであり、それぞれ負荷部分においては遅くなっている。
V=V0(1−ασ) ・・・(1)
と表せる。なお、横波・縦波によって無負荷時の音速V0および音弾性係数αは異なっている。このように、応力によって音速が変化するために、軸力が加わったボルトの音速は、図2に示すようなものとなる。すなわち、無負荷時の音速は、横波がvS、縦波がvLであり、それぞれ負荷部分においては遅くなっている。
図3は、ボルト長さのばらつきにより生じる軸力の誤差、およびボルト長さのばらつきの影響を除去する方法を説明するための図である。
実際に締結に用いられるボルト14と同種、すなわち材質、形状が同一のボルトによって、あらかじめ求めた伝播時間と軸力の関係が図3に破線で示されている。横波に関するものが破線50で、縦波に関するものが破線52で示されている。また、これらの破線で表される関数は、伝播時間から軸力を算出するための軸力算出関数であり、横波(破線50)に関しては横波軸力算出関数、縦波(破線52)に関しては縦波軸力関数である。これらの関数は、それぞれ多項式で表せる。多項式の次数は、実測値を統計的に検査し、妥当なものとすればよいがここでは2次関数式、
FS=aSTS 2+bSTS+cS ・・・(2)
FL=aLTL 2+bLTL+cL ・・・(3)
として説明する。ここで、FSは横波に関する軸力、TSは横波の伝播時間、FLは縦波に関する軸力、TLは縦波の伝播時間であり、aS,bS,cS,aL,bL,cLは、係数である。ここでは、2次曲線として近似しているが、十分な精度が得られれば、1次近似とすることもできる。
FS=aSTS 2+bSTS+cS ・・・(2)
FL=aLTL 2+bLTL+cL ・・・(3)
として説明する。ここで、FSは横波に関する軸力、TSは横波の伝播時間、FLは縦波に関する軸力、TLは縦波の伝播時間であり、aS,bS,cS,aL,bL,cLは、係数である。ここでは、2次曲線として近似しているが、十分な精度が得られれば、1次近似とすることもできる。
本来、同一の測定対象について測定しているのであるから、横波に基づき測定された軸力FSと縦波により測定された軸力FLは、当然一致する。しかし、実際に測定を行うと一致しない場合があり、この原因の一つに、式(2),(3)で示した軸力算出関数を求めたときのボルト長さと、測定対象となっているボルトの長さが異なることがある。
さて、以降、二つの測定された軸力FS,FLが異なる原因が前記のボルト長さのばらつきのみにより生じたものであるとして説明をする。ボルト長さが異なると伝播距離が変わるので、伝播時間も変化する。また、図2から、ボルトの長さが変わると等価応力長さは変化せず、無負荷部分の長さが変化することが分かる。したがって、測定された伝播時間TS,TLは、この無負荷部分の長さの変化を含んでいることになる。すなわち、ボルト長さの差による超音波の伝播時間の変化量は、超音波がこの差に相当する距離を超音波が伝播するのに要する時間である。そして、真の軸力Fに対する軸力FS,FLの誤差ΔFS(=F−FS),ΔFL(=F−FL)は、無負荷部分の長さの差を音波が伝播するのに要する時間に基づき発生するので、無負荷時の横波・縦波の音速をvS,vLとすれば、
ΔFS/ΔFL=vS/vL ・・・(4)
の関係がある。
ΔFS/ΔFL=vS/vL ・・・(4)
の関係がある。
しかし、誤差ΔFS,ΔFLの実際の値は不明であるので、この誤差に相当する修正変数としてdS,dLを式(2),(3)に加えた値を、暫定横波軸力FS *,暫定縦波軸力FL *とすれば、これらは、
FS *=FS+dS=aSTS 2+bSTS+cS+dS ・・・(5)
FL *=FL+dL=aLTL 2+bLTL+cL+dL ・・・(6)
で表せる。式(5),(6)で表される関数は、図3中、実線54,56で示されるように、破線50,52が縦軸方向に平行移動した線である。また、二つの修正変数dS,dLの関係は、式(4)と同様に、
dS/dL=vS/vL ・・・(7)
と表せる。前述のように、これらの暫定軸力FS *,FL *は、本来一致するはずであるから修正変数dS,dLを変化させて、暫定軸力FS *,FL *の差が最小となる修正変数を見つける。そして、このときの暫定軸力FS *,FL *の相加平均を実際の軸力Fと定める。
FS *=FS+dS=aSTS 2+bSTS+cS+dS ・・・(5)
FL *=FL+dL=aLTL 2+bLTL+cL+dL ・・・(6)
で表せる。式(5),(6)で表される関数は、図3中、実線54,56で示されるように、破線50,52が縦軸方向に平行移動した線である。また、二つの修正変数dS,dLの関係は、式(4)と同様に、
dS/dL=vS/vL ・・・(7)
と表せる。前述のように、これらの暫定軸力FS *,FL *は、本来一致するはずであるから修正変数dS,dLを変化させて、暫定軸力FS *,FL *の差が最小となる修正変数を見つける。そして、このときの暫定軸力FS *,FL *の相加平均を実際の軸力Fと定める。
図4には、この関連技術の軸力測定方法の流れを示すチャートが示されている。準備として、あらかじめ測定対象となるボルトと同種のボルトにて測定された、超音波の横波がボルト全長を往復するに要する時間(伝播時間)と軸力との関係を示す横波算出関数と、同様に超音波の縦波の伝搬時間と軸力との関係を示す縦波算出関数をあらかじめ求めメモリに記憶する。この算出関数が、図3における破線50,52である。
次に、実際の測定対象となるボルトに対し、超音波の送受信を行い、横波、縦波の伝播時間TS,TLの測定を行う(S100)。横波の伝播時間TSと前記の横波算出関数に基づき横波軸力(測定横波軸力)を求め、これに修正変数dSを加算し暫定横波軸力FS *を算出する(S102)。この暫定横波軸力FS *は、図3においては破線50で表された横波算出関数を縦方向に平行移動した関数群として表され、修正変数dSの値を定めることによって、たとえば図3中の実線54のように一つの関数が決定される。縦波に関しても、横波と同様の伝播時間TLから暫定縦波軸力FL *を求めることができ(S104)、これも図3中の破線52を縦方向に平行移動した関数群として表され、修正変数dLの値を定めることによって、一つの関数が決定される。なお、二つの修正変数dS,dLは、独立した変数ではなく、前述の式(4)の関係を有し一つの変数である。
最後に、二つの暫定軸力FS *,FL *の差が最小の値となるように修正変数dS,dLを定め、このときの暫定軸力FS *,FL *の相加平均を軸力Fとして算出する(S106)。
図5は、この関連技術の測定方法の効果を表す図である。横軸は、横波・縦波軸力算出関数を求めたときのボルト長さと、測定対象となったボルトとの長さの差である。縦軸は、歪み測定などにより求められた実際の軸力に対して、算出された軸力の誤差の率を示している。図中、黒まる(●)は、測定された伝播時間と軸力算出関数に基づき算出されたデータ(測定横波軸力、測定縦波軸力)を示し、実線がこれらのデータの近似線である。これらデータに対し、本実施形態の軸力算出方法を適用したデータが白まる(○)であり、これらの近似線が破線で示されている。この近似線(破線)は、横軸にほぼ平行、すなわちボルト長さの誤差に対して変化しないものであり、ボルト長さによる誤差が排除されていることが確認できる。
なお、軸力の測定誤差がボルト長さの差によるもののみであれば、この関連技術の適用前においては、一点鎖線で示すような、ボルト長さの誤差が0のとき軸力の誤差も0となるようなグラフを描き、また適用後は、破線で示す近似線は横軸に一致すると考えられる。したがって、図示するように、これらがずれたのは、軸力測定において、ボルト長さの他に他の誤差要因があることが推量される。
図5中、三角(△)で示したデータは、ボルト一つ一つに対し、軸力をかける前後、すなわち締め付けの前後で超音波の伝播時間を測定し、これに基づき算出された軸力のデータであり、二点鎖線がこれらのデータの近似線である。この方法によれば、軸力の誤差は約4%以下、平均で約2%であることが分かる。これに対し、この関連技術の算出方法によれば、誤差は約6%以下、平均で3%程度であることがわかる。
なお、この関連技術においては、ボルトの軸力を測定する場合について説明したが、軸力の方向の寸法に対し、直交する方向の寸法が十分小さい長尺部品の軸力測定にも適用できる。
[第2の関連技術]
図6には、本発明の実施形態に関連する他の装置の概略構成が示されている。前述の第1の関連技術の装置と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図6には、特に、ナット113とともに割り型クランプ110を挟持するボルト14の軸力を測定する場合が例示されている。割り型クランプ110は、その二股に分かれた根本部分にシャフト112などの部材を挟持し、脚部分をボルト等で締め付け部材の固定を行うものである。したがって、割り型クランプ110の脚部分は、比較的大きく変形する。すると、図2に示されるように被締結部材10,12がほとんど変形しないとして求めている軸力と音波の伝達時間等の関係を示す関数をそのまま適用することができない。これは、被締結部材が弾性変形することによって、ボルト内の応力場が前記関数を求めたときと相違することに起因する。図示する割り型クランプ110の場合、軸力が大きくなればなるほど、クランプの二つの脚部分は接近し、無負荷部分の長さは長くなり、等価応力長さは短くなる。この技術は、このように、軸力によって応力場が変化する場合に好適に適用できる。
図6には、本発明の実施形態に関連する他の装置の概略構成が示されている。前述の第1の関連技術の装置と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図6には、特に、ナット113とともに割り型クランプ110を挟持するボルト14の軸力を測定する場合が例示されている。割り型クランプ110は、その二股に分かれた根本部分にシャフト112などの部材を挟持し、脚部分をボルト等で締め付け部材の固定を行うものである。したがって、割り型クランプ110の脚部分は、比較的大きく変形する。すると、図2に示されるように被締結部材10,12がほとんど変形しないとして求めている軸力と音波の伝達時間等の関係を示す関数をそのまま適用することができない。これは、被締結部材が弾性変形することによって、ボルト内の応力場が前記関数を求めたときと相違することに起因する。図示する割り型クランプ110の場合、軸力が大きくなればなるほど、クランプの二つの脚部分は接近し、無負荷部分の長さは長くなり、等価応力長さは短くなる。この技術は、このように、軸力によって応力場が変化する場合に好適に適用できる。
実際の測定に先立って、測定対象となる同種のボルトによって、音波の横波と縦波の全長を往復する伝播時間と、軸力の関係を求める。このとき、被締結物は、実際の締め付けを行うものでなくてもよい。さらに、横波と縦波の無負荷状態から負荷状態の伝播時間の変化の比ΔTS/ΔTLと軸力の関係である音速変化比軸力算出関数を求める。この一例が図7に示されている。そして、メモリ126にこの関数が記憶される。応力(軸力)がかかった状態での音速vは、無負荷状態での音速v0と、音弾性係数α、等価応力σeから、
v=v0(1−α・σe) ・・・(8)
と表せる。
v=v0(1−α・σe) ・・・(8)
と表せる。
さらに、等価応力長さLeをボルト長さL0で割った値である等価応力長さ比β(=Le/L0)を用いて、横波と縦波の無負荷状態から負荷状態の伝播時間の変化ΔTS,ΔTLは、
と表される。式(9),(10)の辺々を割れば、
を得る。式(11)は、等価応力長さ比βに依存せず、等価応力σeのみの関数となっている。したがって、音速変化比軸力関数を求める場合、等価応力長さβが実際の締結状態と同一でなくてもよい、すなわち応力場が実際の締結状態の応力場と同一でなくてもよいことがわかる。また、締め付け過程において、等価応力長さβが一定でなくてもよいことがわかる。
そして、実際の測定対象となるボルトに対し、締め付け前、すなわち無負荷状態での横波、縦波の伝播時間を測定する。そして、締め付け後、再度横波、縦波の伝播時間を測定する。これら締め付け前後の伝播時間は、伝播時間算出部24によって算出され、演算部128に送られる。そして、演算部128では、締め付け前後の横波、縦波それぞれの伝播時間の差を算出し、さらに、それらの比を算出する。そして、軸力算出部132にて、この伝播時間差の変化の比と、メモリ126に記憶された同種のボルトにおける音速変化比軸力算出関数に基づき軸力を算出する。
前述の送受信制御部18、伝播時間算出部24、演算部128は、実際には、コンピュータに備えられた、所定のプログラムに基づき作動するCPU34である。また、前記プログラムは、コンピュータの内部メモリに記憶することも、CD−ROM136やFDなどの外部記録媒体に記憶することもできる。
図8には、この関連技術の軸力測定の流れを示すチャートが示されている。あらかじめ測定対象となるボルトと同種の横波と縦波の伝播時間の比と軸力の関係を示す音速比軸力算出関数が記憶されている。まず、測定対象のボルトについて、無負荷状態で横波、縦波のそれぞれの伝播時間を測定する(S200)。ボルトを締め付け、負荷のかかった状態で、横波、縦波の伝播時間を測定する(S202)。そして、締め付け前後の伝播時間の変化を算出し(S204)、その比を算出する(S206)。この比と前述の音速比軸力関数から軸力を算出する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、第1および第2の関連技術の伝播時間算出部24における音波の伝播時間の算出方法に関するものであり、装置の全体構成は前述の各関連技術の構成と同一である。
第1の実施形態は、第1および第2の関連技術の伝播時間算出部24における音波の伝播時間の算出方法に関するものであり、装置の全体構成は前述の各関連技術の構成と同一である。
図9には、超音波探触子16で受信した二つの反射波200,202が示されている。反射波200,202は、複数のキャリア波を含むパルス波であり、ボルト中を伝播する際、またボルト端面で反射する際、減衰して徐々にその振幅が小さくなっていく。図9の場合も、先の反射波200より後の反射波202が振幅が小さくなっている。反射波を受信した時点は、所定のしきい値以上のキャリア波のピークのうち最初のものを検出した時点とする。所定のしきい値を図の破線204とすると、選択されるピークは、先の反射波200においてはピーク206、後の反射波においてはピーク208となる。しかし、図から見て取れるように、先の反射波のピーク206に対応する後の反射波のピークは、ピーク210であり、後の反射波のピーク208に対応する先の反射波のピークは、ピーク212である。このように対応関係が崩れるのは、前述したように、音波の減衰によるものである。
前記のしきい値204に基づき算出された二つのピーク206,208の間の時間T1は、ピーク206とピーク210などのように対応するピーク間の時間T2より長くなる。この時間T1に基づき軸力を算出すると、ボルト14の伸びが実際より大きく検出され、軸力も実際より大きな値が算出される。場合によっては、算出された軸力では、すでにボルトが破断しているような値が算出されることもある。逆に、ピーク間の時間が締め付け前より短く検出される場合もあり、これにより軸力を算出すれば負の値となる。
また、伝播時間は、ピーク間の時間に基づき算出されるので、その値は離散的に現れる。すなわち、図9の伝播時間T1,T2の差は、キャリア波の周期τだけ異なり(τ=T1−T2)、理想的には、他のピークの組み合わせてもこの伝播時間 T1,T2の値の間の伝播時間が算出されることはない。したがって、真の伝播時間からキャリア波の1周期ずれた伝播時間に基づき算出された軸力が、前述したようなあり得ない軸力である場合、このようなピークの組を排除することによって、残りのピークの組がパルス波の伝播時間を算出するのに適切なピークの組であることが判定できる。具体的には、ボルト長さが比較的短い場合、すなわちボルトのばね定数が高いばねには、前記の判定を適用することができる。
また、現実にあり得ない軸力の範囲、すなわち締め付け前後の伝播時間変化の範囲は、前述の破断点の代わりに、降伏点以上とすることもできる。さらにまた、ある正の軸力からある降伏点以下の軸力の範囲以外の範囲に設定することもできる。たとえば、ボルト締め付け作業をトルク管理にて行い、その後軸力を測定する場合などは、軸力がある程度管理されるので、真の軸力と判定する範囲を狭いものとすることもできる。
図10には、本実施形態にかかる伝播時間算出部240の構成を示すブロック図が記載されている。伝播時間算出部240は、前述の実施形態の伝播時間算出部24に適用することができる。
伝播時間算出部240は、少なくとも二つのパルス波形を記憶する波形メモリ244と、記憶された波形の複数のピークの組から適切な組を選択し、決定するピーク決定部242を有している。ピーク決定部242は、さらに以下の構成を有している。すなわち、記憶された波形から所定にしきい値以上のピークのうち最初のピークを選択するピーク選択部246と、選択されたピークの間の時間を算出するピーク間時間算出部248、この時間が適切な範囲にあるか判定する判定部250、適切な範囲にない場合しきい値を変更するしきい値変更部252を有している。
ピーク選択部246は、たとえば図9に示すようなパルス波形について、所定のしきい値204以上のピークであって、各パルスの最初のピーク206,208を選択する。ピーク間時間算出部248は、前記の選択されたピーク206,208の間の時間T1を算出する。そして、判定部250は、締め付け前の伝播時間との差を算出し、この差が現実にあり得ない範囲の伝播時間差であるかを判定する。この範囲は、測定対象に応じてあらかじめ設定しておく。たとえば、前述のように、正の軸力であって破断点以下の範囲を適正な範囲とすることができる。ピーク206,208の組から算出された軸力が高すぎる、すなわち締め付け前後の伝播時間の差が大きすぎるとされた場合、判定部250は、しきい値変更部252に対し、しきい値をより小さくする指示を行う。しきい値変更部252は、前記の指示により、前回のしきい値を、たとえば図9の破線214で示す値に変更する。
そして、このしきい値214に基づき、前述の処理を再び行う。図9においては、今回はしきい値が小さく設定されているために、ピーク選択部246に選択されるのはピーク206,210である。このピーク間の時間T2を算出し、さらに締め付け前の伝播時間との差を算出する。算出された伝播時間差が、前記のような適切な範囲であれば、締め付け後の伝播時間として時間T2を出力する。また、締め付け前後の伝播時間差を出力することもできる。
図11には、本実施形態を適用した軸力算出の方法に関するフローチャートが示されてる。あらかじめ測定対象となるボルトと同種のボルトにて、締め付け前後の伝播時間の変化と、軸力の関係を求めておく。また、この同種のボルトにおいて、適正と考えられる軸力範囲に対応した伝播時間の変化の範囲を定めておく。
実際の測定にあたっては、まず締め付け前の伝播時間T0を測定する(S300)。次に、ボルトを締め付け、そのときの受信された音波の隣り合う二つのパルスを読み込む(S302)。このパルスのピークのうち所定のしきい値以上であって、そのパルスの最初のピークを選択する(S304)。この二つのピーク間の時間T1を算出し(S306)、さらに締め付け前後の伝播時間の変化(伝播時間の差)T1−T0を算出する(S308)。この伝播時間の変化があらかじめ定めた所定の範囲に入っているかを判定する(S310)。この範囲に入っていなければ、ステップS304で選択されたピークが適切でなかったと判定する。ステップS310で伝播時間変化が所定の範囲内でないと判定された理由は、受信した音波のピーク値が伝播中の減衰によって、小さくなり最初に設定したしきい値が大きすぎたためであると考えられる。そこで、しきい値を小さく変更し(S312)、再度ステップS304〜S310の処理を行う。そして、ステップS310で、伝播時間変化が適切であると判定されたならば、あらかじめ求められている伝播時間変化と軸力の関係から、軸力を算出する(S314)。
以上のように適正なピークの算出方法は、締め付け前後におけるボルトの伸び、すなわち音波の所定点間の伝播時間の差に基づき軸力測定できる。また、同様に締め付け後の音波の横波と縦波の伝播時間の比に基づき軸力を測定する方法、いわゆる音速比法にも適用できる。
測定に先立って、測定対象となるボルトと同種のボルトにて横波と縦波の伝播時間比と軸力との関係を求めておく。また、軸力において、あり得ない範囲を除外した適切な範囲に対応する伝播時間比の範囲を定めておく。そして、縦波、横波それぞれにおいて、隣り合う二つの受信波形を記憶する。縦波、横波のそれぞれにおいて、所定のしきい値以上で、そのパルスの最初のピークを選択し、パルス間の時間を算出する。そして、その比が先に定めておいた所定の範囲になっていなければ選択されたピークが適切なものでなかったとして、前記のしきい値を変更し、同様の処理を行う。そして、その比があらかじめ定めた範囲にあれば、適正なピークが選択されたとし、この比と、あらかじめ求めておいた伝播時間比と軸力との関係に基づき、軸力を算出する。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様、適切な伝播時間の算出に関するものである。第1の実施形態においては、受信された二つのパルス波の、適切なピークの組を一組選び出したが、本実施形態においては、二つのパルス波に属する複数のピーク間の時間を算出し、適正と思われる複数組のピーク間の時間の平均を伝播時間として算出する。したがって、より精度を向上させることが可能である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、二つのパルスの間隔を示すものではないピークの組から算出される軸力は、現実に存在し得ない軸力となるような条件が必要である。
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様、適切な伝播時間の算出に関するものである。第1の実施形態においては、受信された二つのパルス波の、適切なピークの組を一組選び出したが、本実施形態においては、二つのパルス波に属する複数のピーク間の時間を算出し、適正と思われる複数組のピーク間の時間の平均を伝播時間として算出する。したがって、より精度を向上させることが可能である。なお、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、二つのパルスの間隔を示すものではないピークの組から算出される軸力は、現実に存在し得ない軸力となるような条件が必要である。
図12には、受信された二つのパルス波形300,302が示されている。図示するように、これらのパルス波形は、複数のキャリア波のピークを含んでいる。このピークのうち、図中破線で示す所定のしきい値以上のものに対し、正側には前から順番にPos#1,Pos#2,・・・、負側にも順番にNeg#1,Neg#2,・・・と符号を付す。そして、正のピークどうし、負のピークどうし、それぞれのピーク間の時間を算出する。たとえば、パルス波形300が含むピークPos#1に対して、パルス波形302が含む正のピークPos#1,Pos#2,・・・の各々との時間Tを算出する。これにより、図13に示すファイル304が得られる。パルス波形300の他のピークPos#2,Pos#3,・・・,Neg#1,Neg#2,・・・についても同様である。
図14は、前記のピーク間の時間Tについての度数分布である。第1の実施形態においても述べたように、この度数分布は、キャリア波の1周期を間隔とする離散的な分布となる。また、図でハッチングで示したような、前記離散分布から外れた算出値を排除するために、抽出窓306を設定することもできる。抽出窓306は、キャリア波1周期を間隔として配列され、その幅は検出値のばらつき方などからあらかじめ定められている。この抽出窓306を、図14の下に示すように順次移動させ、抽出窓306の範囲に存在する算出値の数が最も多くなるように、窓306の位置を定める。このとき、この抽出窓306に入らない検出値は、異常値として削除する。そして、度数分布の塊ごとにピーク間時間の平均値・・・,Tm-1,Tm,Tm+1,・・・を算出する。この平均値の間隔がキャリア波の周波数に一致していれば、適切な測定が行われたと判断できる。そして、前記各平均値と無負荷状態の伝播時間との差からボルトの伸びが算出され、軸力を求めることができる。
図15には、本実施形態を適用した軸力算出の方法に関するフローチャートが示されている。あらかじめ測定対象となるボルトと同種のボルトにて、締め付け前後の伝播時間の変化と、軸力の関係を求めておく。また、同種のボルトにおいて、適正と考えられる軸力範囲に対応した伝播時間の変化の範囲を定めておく。
実際の測定にあたっては、まず締め付け前の伝播時間T0を測定する(S400)。次に、ボルトを締め付け、そのときの受信された音波の隣り合う二つのパルスを読み込む(S402)。このパルスのピークのうち所定のしきい値以上のもの全てを選択する(S404)。一方のパルスの一つのピークに対し、他方のパルスと前記ピークと同符号のピーク全てとの間の時間Tを算出する(S406)。そして、この時間Tについて、度数分布を作成する(S408)。この度数分布において、異常値の排除を行う(S410)。この異常値排除は、時間Tがキャリア波の1周期の間隔で離散的に出現することから、この間隔で存在しない算出値を異常値と判断するものである。具体的には、前記の度数分布に対し、キャリア波1周期間隔で配列され、所定の幅を持った抽出窓を設定し、この窓に入る算出値が最も多くなる位置にこの窓の位置を定め、この窓に入らない算出値を異常値として排除する。
異常値が排除された後の算出値Tの度数分布の塊ごとに平均値Tiを算出する(S412)。そして、この平均値の一つの値と、あらかじめ測定しておいた締め付け前の伝播時間T0の差、すなわちボルト締め付け前後における伝播時間の変化(Ti−T0)が、あり得る範囲であるかが判定される(S416)。あり得ないものであると判定された場合、次の平均値Tiに変更し(S418)、再びステップS414,S416の処理を行う。ステップS416で、所定の範囲内と判断されると、そのときの伝播時間の変化と、あらかじめ求められている伝播時間の変化と軸力の関係とに基づき軸力を算出する(S420)。
本実施形態においては、ピーク間の時間Tに関して度数分布を作成したが、ピーク間の時間Tと締め付け前の伝播時間T0の差ΔT(=T−T0)について度数分布を作成してもよい。このときは、あらかじめ設定された適正なΔTの範囲以外の範囲の算出値は全て排除し、範囲内のものの平均を取り、これと、伝播時間と軸力の関係から軸力を算出する。
以上の各実施形態においては、軸力を測定する対象となる部品をボルトとして説明したが、軸力方向の寸法に対し、直交する方向の寸法が小さい部品であれば、適用することが可能である。
14 (六角)ボルト、16 超音波探触子(送信手段、受信手段)、18 送受信制御部、20 送信回路(送信手段)、22 受信回路(受信手段)、24 伝播時間算出部(伝播時間測定手段)、26 メモリ(軸力算出関数記憶手段)、28 演算部、30 暫定軸力算出部(暫定軸力算出手段)、32 軸力算出部(軸力算出手段)、36 CD−ROM(記録媒体)、38 CD−ROMドライブ、TS,TL 伝播時間、FS,FL 測定軸力、FS *,FL * 暫定軸力、dS,dL 修正変数、F 軸力、添え字の「S」,「L」は、それぞれ横波に関するもの、縦波に関するものであることを示す。
Claims (4)
- 長尺部品の軸方向に加わる力である軸力を測定する軸力測定方法であって、
測定対象となる長尺部品と同種の部品にて、当該部品の所定点の間の音波の伝播時間を、軸力を加える前後において測定し、またそのときの軸力を測定し、この伝播時間変化と軸力との関係を求めるステップと、
測定対象となる長尺部品の、軸力を加える前後の伝播時間の変化を測定し、前記の伝播時間変化と軸力の関係から軸力を算出するステップと、
を有する軸力測定方法において、
前記伝播時間の測定は、所定周波数のキャリア波のパルス音波を送受し、所定の点で受信された前記音波に基づき行われるものであって、
前記パルス音波が含むキャリア波の、所定のしきい値を超えたピークのうち最初のピーク間の時間を伝播時間とするステップと、
この伝播時間に基づき軸力を加える前後の伝播時間の変化を、仮の伝播時間変化として算出するステップと、
前記仮の伝播時間変化が所定の範囲にない場合、前記しきい値を小さい値に変更するステップと、
前記仮の伝播時間変化が所定の範囲となるまで、前記のしきい値変更を繰り返し、所定の範囲となったときの値を真の伝播時間変化として算出するステップと、
を有する、軸力測定方法。 - 長尺部品の軸方向に加わる力である軸力を測定する軸力測定方法であって、
測定対象となる長尺部品と同種の部品にて、当該部品の所定点の間の音波の横波と縦波の伝播時間を測定し、またそのときの軸力を測定し、この横波と縦波の伝播時間比と軸力との関係を求めるステップと、
測定対象となる長尺部品の、軸力を加えた状態で横波と縦波の伝播時間の比を算出し、前記の伝播時間の比と軸力の関係から軸力を算出するステップと、
を有する軸力測定方法において、
前記伝播時間の測定は、所定周波数のキャリア波のパルス音波を送受し、所定の点で受信された前記音波に基づき行われるものであって、
前記音波の横波と縦波のそれぞれについて、前記パルス音波が含むキャリア波の所定のしきい値を超えたピークのうち最初のピーク間の時間を伝播時間とするステップと、
前記横波と縦波の伝播時間に基づき横波と縦波の伝播時間の比を仮の伝播時間比として算出するステップと、
前記仮の伝播時間比が所定の範囲にない場合、前記しきい値を小さい値に変更するステップと、
前記仮の伝播時間比が所定の範囲となるまで、前記のしきい値変更を繰り返し、所定の範囲となったときの値を真の伝播時間比として算出するステップと、
を有する、軸力測定方法。 - 長尺部品の軸方向に加わる力である軸力を測定する軸力測定方法であって、
測定対象となる長尺部品と同種の部品にて、当該部品の所定点の間の音波の伝播時間を、軸力を加える前後において測定し、またそのときの軸力を測定し、この伝播時間変化と軸力との関係を求めるステップと、
測定対象となる長尺部品の、軸力を加える前後の伝播時間の変化を測定し、前記の伝播時間変化と軸力の関係から軸力を算出するステップと、
を有する軸力測定方法において、
前記伝播時間の測定は、所定周波数のキャリア波のパルス音波の送受し、所定の点で受信された前記音波に基づき行われるものであって、
前記パルス音波の二つのパルスの間において、パルス波の含むキャリア波の各ピーク間の時間を各個に算出するステップと、
前記ピーク間の時間の度数分布を求め、この度数分布の塊ごとに平均値を算出するステップと、
前記各平均値と軸力を加える前の伝播時間の差が、所定範囲内のものの平均値を音波の伝播時間とし、これに基づき軸力を加える前後の伝播時間の差を算出するステップと、
を有する、軸力測定装置。 - 長尺部品の所定点の間の音波の伝播時間の軸力を加える前後変化と、そのときの軸力との関係をメモリから読み込む手順と、
軸力を加える前に前記長尺部品の所定点間の音波の伝播時間を測定する手順と、
軸力を加えた後、前記所定点において検出された音波の少なくとも二つのパルス波形を読み込む手順と、
前記二つのパルス波形の間において、前記パルス波形が含むキャリア波の各ピーク間の時間を各個に算出する手順と、
前記ピーク間の時間の度数分布を求め、この度数分布の塊ごとに平均値を算出する手順と、
前記各平均値と軸力を加える前の伝播時間の差が、所定の範囲内のものの平均値を音波の伝播時間とし、これに基づき軸力を加える前後の伝播時間の差を算出する手順と、
前記軸力を加える前後の伝播時間差に基づき、前記伝播時間変化と軸力の関係から、そのときの軸力を算出する手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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JP2013508680A (ja) * | 2009-10-15 | 2013-03-07 | ザ・ボーイング・カンパニー | 留め具の締まりばめを検証するための超音波法 |
CN103728083A (zh) * | 2012-10-16 | 2014-04-16 | 精工爱普生株式会社 | 压力测定装置以及液体处理装置 |
JP2014081269A (ja) * | 2012-10-16 | 2014-05-08 | Seiko Epson Corp | 圧力測定装置 |
-
2004
- 2004-03-01 JP JP2004056203A patent/JP2004226413A/ja active Pending
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