JP4759835B2 - 流量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体や気体の流量を計測する流量計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の流量計測装置では、圧力変動が発生した場合であっても正確な流量を求めるために様々な提案がなされており、例えば特開平11−44563号公報に記載されているようなものがあった。図4を用いてこの種の流量計測装置の動作について説明する。
【0003】
図4において、流体流路1に、流量検出手段としての第1振動子2と第2振動子3が、流れの方向に対向して取り付けられていて、流量計測手段19がこれらふたつの振動子間で超音波の送受信を行い、その時超音波伝搬に要した時間を用いて流量値を求めている。このような構成においては、流路1の内部で圧力変動が発生した場合にはその影響を受けて、流速が変化するため正確な流量値を求められない。そのため、圧力検出手段10が取り付けられており、圧力検出手段10の出力信号の交流成分が脈動計測手段11に入力されるとともに、比較手段12で信号レベルのゼロクロス通過点が検出され、これに同期して、流量計測手段19の発停が制御されている。この構成により、圧力周期に合わせて計測時間を制御し、脈動時の正確な平均流量を求めることが可能となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の流量計測装置では、次のような課題があった。すなわち、圧力信号波形は必ずしも、正弦波の様に単純な波形ではなく、多くの場合は複数の周波数成分が合成された複雑な波形となっていて、中には、圧力変動1周期の間にゼロクロスを何度も発生するケースもあった。このような場合、ゼロクロス1回分と同期して計測しても、必ずしも、圧力変動周期の流量を平均化したことにならないため、正確な平均流量が求められず、計測精度の点で課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、圧力変動周期を正確に捉えることにより、流量計測のタイミングを最適化し、高精度の計測が可能な流量計測装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流量計測装置は、流体の流量を検出する流量検出手段と、流体の圧力変動を検出する脈動検出手段と、前記脈動検出手段の出力信号と設定電圧との比較結果に応じた信号を出力する比較手段と、前記比較手段の出力より脈動周期を計測する周期検出手段と、前記周期検出手段で連続して計測された複数の脈動周期を所定回数毎に加算し、その加算値のばらつき(標準偏差、または最大値と最小値との差)を検出するばらつき検出手段と、前記ばらつき検出手段の前記所定回数を変化させ、前記ばらつきが最小となる所定回数を判定する判定手段と、前記ばらつきが最小となる所定回数だけ脈動周期が観測される毎に前記流量検出手段を動作させる計測制御手段と、を備えたものである。これによって、検出結果のばらつきを基に周期を補正し、正確な圧力変動周期を捉えることにより、流量計測のタイミングを最適化できるので、圧力変動の影響を受けない高精度の流量計測を実現するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、流体の流量を検出する流量検出手段と、流体の圧力変動を検出する脈動検出手段と、前記脈動検出手段の出力信号と設定電圧との比較結果に応じた信号を出力する比較手段と、前記比較手段の出力より脈動周期を計測する周期検出手段と、前記周期検出手段で連続して計測された複数の脈動周期を所定回数毎に加算し、その加算値のばらつき(標準偏差、または最大値と最小値との差)を検出するばらつき検出手段と、前記ばらつき検出手段の前記所定回数を変化させ、前記ばらつきが最小となる所定回数を判定する判定手段と、前記ばらつきが最小となる所定回数だけ脈動周期が観測される毎に前記流量検出手段を動作させる計測制御手段と、を備えたことにより、検出結果のばらつきを基に周期を補正し、正確な圧力変動周期を捉えることにより、流量計測のタイミングを最適化できるので、圧力変動の影響を受けない高精度の流量計測を実現するものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、流体の流量を検出する流量検出手段と、流体の圧力変動を検出する脈動検出手段と、前記脈動検出手段の出力信号と設定電圧との比較結果に応じた信号を出力する比較手段と、前記比較手段の出力より脈動周期を計測する周期検出手段と、前記周期検出手段で連続して計測された複数の脈動周期を所定回数毎に加算し、その加算値のばらつき(標準偏差、または最大値と最小値との差)を検出するばらつき検出手段と、前記ばらつき検出手段で検出したばらつきが所定値以内に収まっていなければ前記所定回数を逐次増加させ、前記ばらつきが所定値以内に収まる所定回数を判定する判定手段と、前記ばらつきが最小となる所定回数だけ脈動周期が観測される毎に前記流量検出手段を動作させる計測制御手段と、を備えた構成とすることにより、周期判別の最適条件が選択できるので、脈動周期計測の最適化が実現できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、特に、請求項1または2に記載の判定手段を、ばらつき検出手段の出力が大ならば、周期検出手段の補正周期を逐次増加させる構成とすることにより、補正周期をできるだけ短く設定することが可能となり、省電力化を図ることができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の流量計測装置を示すブロック図である。
【0012】
図1において、流体流路1の途中に流量検出手段として超音波を発信する第1振動子2と受信する第2振動子3が流れ方向に配置されている。4は第1振動子2への送信回路、5は第2振動子3で受信した超音波を信号処理する受信回路で、6は第1振動子2と第2振動子3の送受信を切換える切換手段、7は受信回路5で超音波を検知した後第1振動子2からの送信と第2振動子3での受信を複数回繰り返す繰り返し手段、8は繰り返し手段7により行われる複数回の超音波伝搬の所要時間を計測する計時手段、9は計時測手段8の計測値から流量を求める流量演算手段である。
【0013】
また、10は流路1内の圧力を検出する圧力検出手段、11は圧力検出手段11の信号出力の交流成分をコンデンサを介して取り出す脈動検出手段、12は脈動検出手段により取り出された交流信号と設定電圧とを比較し、その大小関係を二値信号に変換して出力する比較手段、13は比較手段12の二値信号の小から大への出力変化点の間隔を計測し脈動周期を検出する周期検出手段、14は周波数検出手段13の出力を補正する周期補正手段であり、周期検出手段13の出力履歴を記憶する記憶手段15、記憶手段15に記憶された値から脈動周期のばらつきを検出するばらつき検出手段16、ばらつき検出手段16で求めたばらつきが大の時、補正周期を求める判定手段17とで構成される。また、18は、周期補正手段14で求めた周期に応じて流量計測時間を制御する計測制御手段である。
【0014】
次に、動作作用について説明する。静止流体中の音速をc、流体の流れの速さをvとすると、流れの順方向の超音波の伝搬速度は(c+v)、逆方向の伝搬速度は(c−v)となる。振動子2と3の間の距離をL、超音波伝搬軸と流路の中心軸とがなす角度をθ、流れの順方向に発信された超音波の伝搬する時間をt1、流れの逆方向に発信された超音波の伝搬する時間をt2とすると、
t1=L/(c+vcosθ) (1)
t2=L/(c−vcosθ) (2)
となる。(1)式、(2)式より流速vを求めると、
v=(L/2cosθ)・(1/t1−1/t2) (3)
となり、Lとθが既知ならt1、t2を計測して流速vが求められる。ここで、流路断面積をS、補正係数をKとすれば、流量Qは
Q=K・S・v (4)
となる。式(3)、(4)から明らかなように、伝搬時間を求めることにより流量Qが求められる。一方、流路1内部に圧力変動が発生している場合には流速vは一定しないが、周期的な変動が発生している場合には、圧力変動n周期の間の伝搬時間を計測し、その平均値を求めれば、変動の影響はキャンセルされて、正確な値を求めることができる。
【0015】
次に図2、3を用いて、計測制御手順について説明する。脈動検出手段11の出力信号と比較基準値0Vとの比較処理が比較手段12で行われる。比較手段12は脈動検出手段11の交流信号が比較基準値より高ければH、低ければLの二値信号を出力する。周期検出手段13は、比較手段12の出力がLからHに変化する点の時間間隔を計測し、記憶手段15は所定時間内に計測された脈動周期の履歴を記憶する。ばらつき判定手段16は、記憶手段15で記憶した値から周期検出手段13の出力ばらつきを求める。図2の場合、周期はTsで一定であるため、ばらつきは0となり、判定手段15では、周期補正は行わない。
【0016】
そのため、計測制御手段17は、周期検出手段13で求めた周期Ts毎に繰り返し手段7に対して、流量計測の開始と停止の指示を与える。すなわち、計測制御手段17は、比較手段12の立ち上がり波形、すなわち、出力信号がLからHに変化する変化点t1aと同期して、繰り返し手段7に対して、繰り返し計測の開始信号を出力する。この時、切換手段6は、予め第1振動子2を送信回路4に、第2振動子3を受信回路5に接続して超音波を流れの順方向に送信した伝搬時間を計測する体制が取られている。計測制御手段18の開始信号出力を受けて送受信が開始され、送受信1回が終了する毎に、繰り返し手段7は送受信の回数をカウントすると共に、送信回路4に超音波の送信を指示する。繰り返し手段7での繰り返し計測と平行して、計時手段8では送受信に要した時間が計測される。
【0017】
そして、計測制御手段18は、再び比較手段12の出力がLからHに変化する点t1bで、計測の停止信号を出力する。計測制御手段18からの停止信号を受けると、繰り返し手段7は、新たな送受信を中止する。
【0018】
ここで、計時手段8で計測した伝搬時間と繰り返し手段7行った送受信の繰り返し回数を元に、流量演算手段9で流れの順方向の伝搬時間t1を求める。この後、切換手段6は第1振動子2に、受信回路5を第2振動子3に繋ぎ換えることにより流れの逆方向に超音波を送信した伝搬時間を計測する体制を取る。比較手段12の信号がLからHに切換わる点t2aおよびt2bで、計測制御手段18がそれぞれ開始信号、停止信号を出力し、順方向と同様の手順で、逆方向の計測が行われる。以上のように求めた順方向、逆方向の伝搬時間を基に、流量演算手段9では(3)、(4)式を用いて流量Qを求める。脈動波形が図2で示したような正弦波であれば、1周期でゼロクロスを2回生じるが、図3で示すような波形であったとすると、1周期の間に4回ゼロクロスを生じる。以後、このような現象を中割れ現象と称する。比較手段12の比較基準値を0とすると、比較手段12の出力は図の如く変化し、周期検出手段13の検出値がTa、Tbと交互に変化する。
【0019】
この場合、Taの期間では、圧力平均値はプラス側、Tbの期間ではマイナス側に振れるため、いずれの期間で平均化したとしても流量平均値の真値を得ることはできない。ばらつき検出手段15は、記憶手段14に記憶された値を使って脈動周期の標準偏差を求める。判定手段16は、この時求めた標準偏差が所定値を越えているため、周期検出手段13の連続した2回分の加算値を補正周期として定める。計測制御手段18は、判定手段17の判定結果を受けて、比較手段12の出力の立ち上がり点を2回観測する毎に繰り返し手段7に対して、流量計測の開始と停止の指示を与える。そのため図3のような中割れ波形においては、常に一定期間Ta+Tbで流量計測が行われることになり、その結果、脈動の影響がキャンセルされて正確な流量値を求めることができるようになる。
【0020】
以上、説明したように、検出結果のばらつきを基に周期を補正し、正確な圧力変動周期を捉えることにより、流量計測のタイミングを最適化できるので、圧力変動の影響を受けない高精度の流量計測を実現できる。
【0021】
図2においては、周期検出手段13の出力2回分の加算値を補正周期として定める例について説明したが、必ずしも2回分の値が適正な周期とは限らない。そのため、判定手段17は、記憶手段15で記憶した値を使って、周期検出手段13の出力1回分の標準偏差、連続した2回分の加算値の標準偏差、連続した3回分の標準偏差、以下同様にm回までの標準偏差を一度に算出し、最も標準偏差の小さくなる条件を周期補正の条件と定める。判定手段17の判定結果は計測手段18に伝達され、その結果を基に、比較手段12の出力の立ち上がり点をここで求めた判定手段で求めたm回観測される毎に繰り返し手段7に対して、流量計測の開始と停止の指示を与える。この場合、周期判別の最適条件が選択できるので、脈動周期計測の最適化が実現できる。
【0022】
また、別の方法として、補正周期を逐次増加させる方法を取っても良い。この場合、判定手段17は、まず、記憶手段15に記憶された値を基に、連続した2回分の出力加算値の標準偏差を求める。この時求めた標準偏差が所定の値より大きければ、今度は連続した3回分の出力加算値のばらつきを求める。以下同様に、出力加算回数を逐次増加して、その加算値の標準偏差が所定値以内となるまで繰り返す。そして、標準偏差が初めて所定値以内に収まった加算回数n回が周期補正の条件と定められる。この場合、補正周期をできるだけ短く設定することが可能となり、省電力化を図ることができる。
【0023】
以上、述べてきた方法においては、ばらつきの判断は標準偏差によるものとしているが、例えば、最大値と最小値の差をもって判断するような方法でも良い。
【0024】
なお、各実施例において、比較手段12の出力の立ち上がりと同期する構成で説明したが、立ち下がり信号であっても同様の効果が得られる。立ち上がり立ち下がりいずれの場合であっても、比較手段12の出力変化と同期して流量計測を行うことにより、圧力変動に対する時間遅れの小さい計測ができるため、圧力変動に対する追従性を高めることができる。
【0025】
また、別の方法として、周期検出手段13で求めた時間を繰り返し手段13の繰り返し回数に変換する演算処理を施して、比較信号と非同期で計測する方法もある。この場合には流量計測手段の動作が、脈動検出手段や比較手段のノイズで妨げられる危険性がないので、流量計測中の不要信号の影響を回避できるため、ノイズの影響を受け難い信頼性の高い計測が可能となる。
【0026】
更に、各実施例は超音波振動子を用いたものについて説明したが、それ以外の例えば熱線式のフローセンサであっても同等の効果が得られる。また、気体流量の計測装置に限らず、液体流量の計測装置であっても同等の効果が得られることは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1〜3に記載の発明によれば、検出結果のばらつきを基に周期を補正し、正確な圧力変動周期を捉えることにより、流量計測のタイミングを最適化できるので、圧力変動の影響を受けない高精度の流量計測を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における流量計測装置のブロック図
【図2】 同装置の動作を説明するタイミングチャート
【図3】 同装置の動作を説明するタイミングチャート
【図4】 従来の流量計測装置のブロック図
【符号の説明】
2 第1振動子(流量検出手段)
3 第2振動子(流量検出手段)
11 脈動検出手段
13 周期検出手段
14 周期補正手段
16 ばらつき検出手段
17 判定手段
18 計測制御手段
Claims (3)
- 流体の流量を検出する流量検出手段と、
流体の圧力変動を検出する脈動検出手段と、
前記脈動検出手段の出力信号と設定電圧との比較結果に応じた信号を出力する比較手段と、
前記比較手段の出力より脈動周期を計測する周期検出手段と、
前記周期検出手段で連続して計測された複数の脈動周期を所定回数毎に加算し、その加算値のばらつき(標準偏差、または最大値と最小値との差)を検出するばらつき検出手段と、
前記ばらつき検出手段の前記所定回数を変化させ、前記ばらつきが最小となる所定回数を判定する判定手段と、
前記ばらつきが最小となる所定回数だけ脈動周期が観測される毎に前記流量検出手段を動作させる計測制御手段と、を備えた流量計測装置。 - 流体の流量を検出する流量検出手段と、
流体の圧力変動を検出する脈動検出手段と、
前記脈動検出手段の出力信号と設定電圧との比較結果に応じた信号を出力する比較手段と、
前記比較手段の出力より脈動周期を計測する周期検出手段と、
前記周期検出手段で連続して計測された複数の脈動周期を所定回数毎に加算し、その加算値のばらつき(標準偏差、または最大値と最小値との差)を検出するばらつき検出手段と、
前記ばらつき検出手段で検出したばらつきが所定値以内に収まっていなければ前記所定回数を逐次増加させ、前記ばらつきが所定値以内に収まる所定回数を判定する判定手段と、前記ばらつきが最小となる所定回数だけ脈動周期が観測される毎に前記流量検出手段を動作させる計測制御手段と、を備えた流量計測装置。 - 前記計測制御手段の開始停止信号は前記周期検出手段の出力変化点と同期して出力される請求項1または2に記載の流量計測装置。
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