JP2004223413A - フィルタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材2とし、この濾材2をプリーツ加工してビード状接着剤3により固定した。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体(気体または液体)の濾過に用いるフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、流体の濾過に用いるフィルタの濾材としては、ガラスまたは合成樹脂の単繊維からなる不織布が用いられている。
【0003】
ガラス繊維からなる不織布の濾材は、焼却することができないため、使用後は、産業廃棄物として土中に埋めて最終処分されているが、最近では、廃棄場の確保が難しくなってきている。
【0004】
一方、合成樹脂繊維からなる不織布の濾材は、使用後の最終処分を焼却炉で燃焼することにより行なえるが、CO2等のガス発生による地球温暖化等のデメリットがある。
【0005】
そのため、微生物によって分解される生分解性合成樹脂の単繊維からなる不織布、あるいは、自然環境中で腐食する金属製ワイヤを前記生分解性合成樹脂で被覆した複合繊維からなる不織布を濾材として用いることが検討されている。(特許文献1、2、3、4参照)
【0006】
【特許文献1】
特開平10−314520号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平11−244637号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2001−192932号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平7−163821号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、微生物によって分解される生分解性合成樹脂の単繊維は強度が弱いため、その繊維径を充分に細くすることが難しく、また、金属製ワイヤを前記生分解性合成樹脂で被覆した複合繊維も、その繊維径を充分に細くすることが難しい。
【0011】
そのため、前記生分解性合成樹脂の単繊維からなる不織布または前記金属製ワイヤを生分解性合成樹脂で被覆した複合繊維からなる不織布を濾材としたフィルタは、濾材の捕集効率が低く、プレフィルタ程度の性能しか得られない。
【0012】
本発明は、使用後の濾材を自然分解により処分することができ、しかも濾材の捕集効率を充分に高くすることができるフィルタを提供することを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のフィルタは、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材としたことを特徴とする。
【0014】
このフィルタは、前記自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材としているため、使用後の濾材を自然分解により処分することができる。
【0015】
しかも、前記自然分解性樹脂は、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加したものであるため、繊維径が充分に細く、強度も充分な単繊維を得ることができ、したがって、前記不織布の繊維密度を高くし、濾材の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0016】
本発明のフィルタにおいて、前記不織布の単繊維は、熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材に、前記熱可塑性樹脂に対する直接的生分解成分、酸化可能成分、遷移金属成分、及び非金属安定化成分からなる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂、より望ましくは、ポリオレフィン系樹脂に、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全てにさらされる環境下において前記ポリオレフィン系樹脂を低分子化し、水と二酸化炭素の無機物への分解を誘発する自然分解促進作用を有する合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっているのが好ましい。
【0017】
また、前記自然分解性樹脂の単繊維の平均直径は0.5〜20μmの範囲が好ましい。
【0018】
さらに、前記濾材はプリーツ加工するのが好ましく、その場合は、プリーツ加工された濾材を、その各折り返し部をつなぐビード状接着剤あるいは互いに隣り合う折り返し面の間にそれぞれ挿入された複数のセパレータによりプリーツ状態に保持し、さらに濾材取付枠内に収容して濾材パックとするのが望ましい。
【0019】
その場合、前記濾材パックの濾材以外の部材の少なくとも1つを、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂により形成するのが好ましい。
【0020】
また、本発明のフィルタは、前記濾材パックを枠状のフィルタケース内に収容してフィルタユニットとするのが望ましい。
【0021】
その場合、前記フィルタケースは、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂により形成するのが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明の第1の実施形態を示しており、図1はフィルタユニットの分解斜視図、図2は濾材の一部分の拡大斜視図である。
【0023】
この実施形態のフィルタは、濾材2を濾材取付枠5内に収容した濾材パック1と、この濾材パック1を収容する枠状のフィルタケース6とからなっている。
【0024】
前記濾材パック1の濾材2は、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布であり、その単繊維の平均直径は0.5〜20μmである。
【0025】
前記自然分解性樹脂の合成樹脂材は熱可塑性樹脂であり、合成樹脂分解性成分は、前記熱可塑性樹脂に対する直接的生分解成分、酸化可能成分、遷移金属成分、及び非金属安定化成分からなっている。
【0026】
前記自然分解性樹脂の合成樹脂材に用いる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等や、熱可塑性脂肪族ポリエステルが好適である。
【0027】
前記熱可塑性脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸エステル、ポリ乳酸エステル等が挙げられるが、2種以上のモノマーを主な繰り返し単位要素とする共重合体を用いてもよく、さらに、これらの脂肪族ポリエステルポリマーを複数種混合して使用してもよい。
【0028】
また、前記合成樹脂分解性成分は、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全ての作用により分解除去され、ポリオレフィン系樹脂の炭素―炭素結合の外部にさらされる面積を増加させる直接的生分解成分と、前記ポリオレフィン系樹脂の外部にさらされた炭素―炭素結合と化学反応してその結合を切断し、前記ポリオレフィン系樹脂を分解させる脂肪酸、脂肪酸エステル、天然系脂肪、天然系もしくは合成ゴム、またはその2種以上の混合物から選択された酸化可能成分と、前記酸化可能成分の化学反応を開始させる遷移金属成分と、前記ポリオレフィン系樹脂の分解プロセスの開始を遅延させるヒンダードフェノールからなる非金属安定化成分とからなっている。
【0029】
なお、前記合成樹脂分解性成分中の非金属安定化成分の配合量は、前記自然分解性樹脂を安定状態(自然分解し始める前の状態)に維持しておく必要のある時間、つまり濾材2の使用期限に応じて設定されている。
【0030】
すなわち、前記合成樹脂分解性成分は、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全てにさらされる環境下において前記ポリオレフィン系樹脂を化学反応により低分子化し、前記ポリオレフィン系樹脂の水と二酸化炭素の無機物への分解を誘発する自然分解促進作用を有している。
【0031】
この種の合成樹脂分解性成分としては、例えば、ノボン・ジャパン社製のデグラノボン(商品名)がある。
【0032】
前記ポリオレフィン系樹脂からなる合成樹脂材に前記合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂は、自然環境下において、前記合成樹脂分解性成分中の非金属安定化成分(ポリオレフィン系樹脂の分解プロセスの開始を遅延させる成分)の配合量に応じた安定状態維持時間を経過した後に、次のようなプロセスで分解する。
【0033】
[分解プロセス1]
合成樹脂分解性成分中の直接的生分解成分が、自然光(太陽光)中の紫外線、自然光の熱、地熱、大気中または水中の酸素、土中や水中及び大気中の微生物のいずれかまたは全ての作用により分解除去され、ポリオレフィン系樹脂の炭素―炭素結合の外部にさらされる面積が増加する。
【0034】
[分解プロセス2]
合成樹脂分解性成分中の遷移金属成分の作用により、前記分解性成分中の酸化可能成分がポリオレフィン系樹脂の外部にさらされた炭素―炭素結合と化学反応し、その結合が切断されて前記ポリオレフィン系樹脂が低分子化される。
【0035】
[分解プロセス3]
低分子化したポリオレフィン系樹脂が微生物により代謝分解される。
【0036】
なお、前記自然分解性樹脂の分解において、分解プロセス1と2、分解プロセス2と3、あるいは分解プロセス1,2,3は、ほとんど同時に始まる。
【0037】
このように、前記自然分解性樹脂は、最終的には微生物により分解されるが、微生物が存在する環境であれば、土中、水中、大気中等、どのような自然環境下でも分解させることができる。
【0038】
前記自然分解性樹脂は、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加したものであるため、紡糸性が高く、したがって、繊維径が充分に細く、強度も充分な単繊維を得ることができる。
【0039】
前記自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布は、例えば、前記自然分解性樹脂をメルトブロー法により繊維化し、その単繊維を集積する方法で製造する。
【0040】
前記メルトブロー法は、熱可塑性樹脂を紡糸ノズルの周囲から吹出す高温高圧の空気流により繊維化する方法であり、このメルトブロー法によれば、平均直径が0.5〜20μmの極細の単繊維を紡糸することができるため、その極細単繊維を集積した繊維密度の高い不織布を製造することができる。
【0041】
そして、前記不織布からなる濾材2は、一定のピッチでプリーツ加工されており、前記濾材2の各折り返し部をつなぐビード状接着剤3によりプリーツ状態に保持されている。このビード状接着剤3は、プリーツ加工された濾材2の両面にそれぞれ複数本ずつ適当間隔で設けられている。
【0042】
前記濾材2は、合成樹脂材に前記合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布であり、この不織布は、微生物によって分解される生分解性合成樹脂の単繊維からなる不織布に比べて曲げ加工強度が高いため、破損させること無く任意のピッチでプリーツ加工することができる。
【0043】
なお、この濾材2の曲げ加工強度は、前記自然分解性樹脂の合成樹脂分解性成分の添加量を少なくするほど高くすることができるが、合成樹脂分解性成分の添加量を少なくすると、濾材2の自然分解に要する時間(日数)が長くなるため、前記合成樹脂分解性成分の添加量は、濾材2の曲げ加工強度と自然分解時間の両方を考慮して設定するのが望ましい。
【0044】
また、前記濾材取付枠5は、板材または不織布等からなっており、前記ビード状接着剤3によりプリーツ状態に保持された濾材2は、この濾材取付枠5内に収容されて接着固定され、濾材パック1とされている。
【0045】
前記濾材2をプリーツ状態に保持するビード状接着剤3と、前記濾材取付枠5は、それぞれ、前記濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂、つまり、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂により形成されている。
【0046】
なお、前記ビード状接着剤3及び濾材取付枠5の材料である自然分解性樹脂の合成樹脂分解性成分の添加量は、前記濾材2に用いた不織布の単繊維材料である自然分解性樹脂と同じにしても、あるいは異ならせてもよい。
【0047】
一方、前記フィルタケース6は、前記濾材パック1を収容する深さを有し、一方の開口縁に前記濾材パック1の一方の面の外周部を受止める鍔部7aが形成された外枠7と、この外枠7に着脱自在に取付けられて前記濾材パック1の他方の面の外周部を押え固定する枠状の濾材パック押え8とからなっており、前記濾材パック1は、このフィルタケース6内に収容され、フィルタユニットとされている。
【0048】
前記フィルタケース6の外枠7と濾材パック押え8は、前記濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂)により形成されている。
【0049】
このフィルタの濾材の捕集効率と自然分解性は次の通りである。
【0050】
[実施例1]
ポリプロピレン80wt%に対し、合成樹脂分解性成分として上述したノボン・ジャパン社製のデグラノボンを20wt%加えた自然分解性樹脂をメルトブロー法により紡糸した平均直径が0.5〜20μmの単繊維を集積して目付80g/m2、厚さ0.6mmの不織布を製造した。
【0051】
[実施例2]
ポリプロピレン90wt%に対し、合成樹脂分解性成分として前記デグラノボンを10wt%加えた自然分解性樹脂をメルトブロー法により紡糸した平均直径が0.5〜20μmの単繊維を集積して目付83g/m2、厚さ0.6mmの不織布を製造した。
【0052】
[比較例]
ポリプロピレン100wt%の熱可塑性樹脂材をメルトブロー法により紡糸した平均直径が0.5〜20μmの単繊維を集積して目付80g/m2、厚さ0.6mmの不織布を製造した。
【0053】
これら[実施例1]、[実施例2]、[比較例]の不織布からなる濾材をそれぞれ同じピッチでプリーツ加工してビード状接着剤により保持し、それを濾材取付枠内に収容した濾材パックをフィルタケース内に収容して縦幅610mm、横幅610mm、厚さ65mmの外寸法を有するフィルタユニットを製造し、これらのフィルタユニットの性能をJIS B9908に準拠して測定した結果、前記各濾材の濾過面風速2.5m/秒における圧力損失と、0.3μm粒子の捕集効率は次の[表1]の通りであった。
【0054】
【表1】
【0055】
この[表1]のように、[実施例1]の不織布を濾材としたフィルタは、濾材の濾過面風速2.5m/秒における圧力損失が120Pa以下、0.3μm粒子の捕集効率が60%以上であり、[比較例]の不織布(ポリプロピレン100wt%の熱可塑性樹脂材の単繊維からなる不織布)を濾材としたフィルタに近い捕集効率をもっている。
【0056】
また、[実施例2]の不織布を濾材としたフィルタは、濾材の濾過面風速2.5m/秒における圧力損失が120Pa以下、0.3μm粒子の捕集効率が90%以上であり、前記[比較例]の不織布からなる濾材と同等の性能をもっている。
【0057】
次に、上記[実施例1]、[実施例2]、[比較例]の不織布からなる濾材の紫外線照射試験と自然光暴露試験とを行ない、前記紫外線照射試験における濾材の分解が終了する分解エンドポイントに要した日数と、前記自然光暴露試験における濾材の形状変化を調べたところ、次の[表2]のような結果が得られた。
【0058】
なお、前記紫外線照射試験は、アメリカ合衆国の試験基準であるASTM G―154(温度50℃の大気中において、カーボンランプにより340nmの波長の紫外線を照射する試験)に基いて行ない、分解エンドポイントに要した日数は、同国の測定基準であるASTM D3826(試験体全数の75%以上の試験体が引張試験で伸度5%以下になった時点を分解エンドポイントとする測定法)に基いて測定した。
【0059】
また、前記自然光暴露試験は、プリーツ加工しない30cm×30cmのサイズの不織布を、風雨にさらされる屋外に地面から離して垂直に設けた試料支持板に貼り付けて60日間放置することにより行ない、前記不織布の形状変化を60日の放置後に目視により測定する方法で行なった。
【0060】
【表2】
【0061】
この[表1]から明らかなように、上記[比較例]の不織布(ポリプロピレン100部の熱可塑性樹脂材の単繊維からなる不織布)は、紫外線照射試験における分解エンドポイントに要する日数が30日以上で、60日の自然光暴露試験によっても形状変化が無かったのに対し、上記[実施例1]及び[実施例2]の不織布(ポリプロピレンにデグラノボンを添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布)は、紫外線照射試験における分解エンドポイントに要する日数が5日以内であり、60日の自然光暴露試験により外形を留めないまでに分解する。
【0062】
このように、上記フィルタは、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材2としたものであるため、使用後の濾材2を自然分解により処分することができる。
【0063】
しかも、前記自然分解性樹脂は、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加したものであるため、繊維径が充分に細く、強度も充分な単繊維を得ることができ、したがって、前記不織布の繊維密度を高くし、濾材2の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0064】
このフィルタにおいて、前記不織布の単繊維は、熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材に、前記熱可塑性樹脂に対する直接的生分解成分、酸化可能成分、遷移金属成分、及び非金属安定化成分からなる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっているのが好ましい。
【0065】
前記不織布の単繊維は、上述したように、ポリオレフィン系樹脂に、例えばノボン・ジャパン社製のデグラノボンのような、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全てにさらされる環境下において前記ポリオレフィン系樹脂を低分子化し、水と二酸化炭素の無機物への分解を誘発する自然分解促進作用を有する合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっているのがより好ましく、このような自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材2とすることにより、使用後の濾材を微生物を大量発生させること無く自然分解により処分し、しかも前記不織布の繊維密度を高くして、濾材2の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0066】
すなわち、微生物によって分解される生分解性合成樹脂は、その分解にともなって微生物が大量発生し、生態系に影響を及ぼすおそれがあるが、前記自然分解性樹脂は、上述したような分解プロセスで分解し、最終的に微生物により代謝分解されるため、その分解にともなう微生物の発生は極く少なく、したがって生態系に影響を及ぼすことは無い。
【0067】
しかも、前記生分解性合成樹脂の不織布からなる濾材は、主に、土中に埋めて分解させる方法で処分されるが、前記自然分解性樹脂は、その最終的な分解に必要な微生物が存在する環境であればどのような環境下でも分解させることができるため、その単繊維の不織布からなる濾材2を、大気中でも自然分解させることができる。
【0068】
また、前記自然分解性樹脂は、前記生分解性合成樹脂に比べて紡糸性が高いため、繊維径が充分に細く、強度も充分な単繊維を得ることができ、したがって、前記不織布の繊維密度を高くし、濾材2の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0069】
なお、上記[実施例1]の不織布は、ポリプロピレンからなる合成樹脂材と前記デグラノボンからなる合成樹脂分解性成分とを、合成樹脂材80wt%、合成樹脂分解性成分20wt%の割合で調合した自然分解性樹脂により製造したものであり、上記[実施例2]の不織布は、前記合成樹脂材と前記合成樹脂分解性成分とを、合成樹脂材90wt%、合成樹脂分解性成分10wt%の割合で調合した自然分解性樹脂により製造したものであるが、前記自然分解性樹脂の合成樹脂材と合成樹脂分解性成分との割合は、合成樹脂材75〜95wt%、合成樹脂分解性成分5〜25wt%の範囲、好ましくは、合成樹脂材80〜90wt%、合成樹脂分解性成分10〜20wt%の範囲であればよく、前記自然分解性樹脂の合成樹脂材と合成樹脂分解性成分との割合をこの範囲にすることにより、使用後の濾材2を微生物を大量発生させること無く自然分解により処分し、しかも濾材2の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0070】
また、前記不織布の単繊維の繊維径は、上述したように0.5〜20μmとするのが好ましく、このようにすることにより、繊維密度の高い不織布を製造することができる。
【0071】
しかも、この自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布は、前記生分解性合成樹脂の単繊維からなる不織布に比べて曲げ加工強度が高いため、破損させることなく任意のピッチでプリーツ加工することができ、したがって、前記濾材2をプリーツ加工し、その捕集効率をさらに高くすることができる。
【0072】
上記実施形態では、プリーツ加工された濾材2を、その各折り返し部をつなぐビード状接着剤3によりプリーツ状態に保持し、さらに濾材取付枠5内に収容して濾材パック1としているため、前記プリーツ加工された濾材2の形崩れによる捕集機能の低下を防ぐことができる。
【0073】
さらに、上記実施形態では、前記濾材パック1を、外枠7と濾材パック押え8とからなるフィルタケース6内に収容してフィルタユニットとしているため、流体濾過装置への濾材パック1の組込みを、前記フィルタユニットを流体濾過装置に取付けることにより簡単に行なうことができる。
【0074】
そして、上記実施形態では、濾材パック1の濾材2以外の部材、つまり複数のビード状接着剤3及び濾材取付枠5を、前記濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂(ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂)により形成するとともに、前記フィルタケース6の外枠7と濾材パック押え8も前記自然分解性樹脂により形成しているため、使用後の濾材2を、前記フィルタケース6内に濾材パック1を収容した状態のまま自然分解させることができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、プリーツ加工された濾材2を、その各折り返し部をつなぐビード状接着剤3によりプリーツ状態に保持しているが、前記プリーツ加工された濾材2は、その互いに隣り合う折り返し面の間にそれぞれセパレータを挿入してプリーツ状態に保持してもよい。
【0076】
図3及び図4は本発明の第2の実施形態を示しており、図3はフィルタユニットの分解斜視図、図4は濾材の一部分の拡大斜視図である。なお、この実施形態において、上述した第1の実施形態と同じものについては、図に同符号を付して重複する説明を省略する。
【0077】
この実施形態のフィルタは、上述した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材2とし、この濾材2をプリーツ加工するとともに、前記濾材2を、その互いに隣り合う折り返し面の間にそれぞれ挿入された複数のセパレータ4によりプリーツ状態に保持したものである。
【0078】
前記セパレータ4は、波板状に折曲された板材からなっており、その各波状部の稜線方向を前記濾材2の折り返し面の奥行き方向と平行にして前記隣り合う折り返し面の間に挟持されている。
【0079】
そして、前記セパレータ4によりプリーツ状態に保持された濾材2は、濾材取付枠5内に収容して濾材パック1aとされ、さらに外枠7と濾材パック押え8とからなるフィルタケース6内に収容されて接着固定され、フィルタユニットとされている。
【0080】
また、この実施形態では、前記セパレータ4と、前記フィルタケース6の外枠7及び濾材パック押え8をそれぞれ前記濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂(ただし、合成樹脂分解性成分の添加量は、濾材2に用いた不織布の単繊維材料である自然分解性樹脂と同じでも、あるいは異ならせてもよい)により形成し、使用後の濾材2を、前記フィルタケース6内に濾材パック1aを収容した状態のまま自然環境下で分解させることができるようにしている。
【0081】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、フィルタケース6を濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂により形成しているが、このフィルタケース6は、前記自然分解性樹脂に限らず、微生物によって分解される生分解性合成樹脂により形成してもよい。
【0082】
その場合は、使用後のフィルタユニットの処分を、フィルタケース6内から濾材パック1,1aを取り出し、前記フィルタケース6と濾材パック1,1aと別の環境下で自然分解させるのが望ましい。
【0083】
さらに、前記フィルタケース6は、前記自然分解性樹脂または生分解性合成樹脂に限らず、非分解性合成樹脂や、金属板、木製合板等により形成してもよく、その場合は、濾材パック1,1aだけを交換し、フィルタケース6は繰り返し使用するようにしてもよい。
【0084】
また、上記第1及び第2の実施形態では、濾材パック1,1aの濾材2以外の部材であるビード状接着剤3またはセパレータ4と濾材取付枠5を、前記濾材2に用いた不織布の単繊維と実質的に同質の自然分解性樹脂により形成しているが、これらの部材は、前記生分解性合成樹脂により形成してもよい。
【0085】
さらに、前記濾材取付枠5は、非分解性合成樹脂板、金属板、硬質紙、非分解性合成樹脂板、非分解性合成樹脂または金属の単繊維からなる不織布等により形成してもよく、その場合は、使用後の濾材2を前記濾材取付枠5から取り出して自然分解させるのが望ましい。
【0086】
また、上記第2の実施形態における濾材パック1aのセパレータ4は、金属板、木製合板、非分解性合成樹脂板等により形成してもよく、その場合は、使用後の濾材2を、前記濾材取付枠5から取り出し、さらに前記セパレータ4を抜き取って自然分解させるのが望ましい。
【0087】
また、前記ビード状接着剤3は、非分解性合成樹脂からなる接着剤としてもよく、その場合は、使用後の濾材2を、前記前記ビード状接着剤3を剥ぎ取って自然分解させるのが望ましい。
【0088】
なお、濾材パック1,1aの濾材2以外の部材であるビード状接着剤3またはセパレータ4と濾材取付枠5は、その少なくとも1つを前記自然分解性樹脂あるいは生分解性合成樹脂により形成するのが好ましく、このようにすることにより、濾材パック1,1aの濾材2とそれ以外の少なくとも1つの部材の処分を自然分解により行なうことができる。
【0089】
また、上記実施形態のフィルタは、自然分解性樹脂の不織布からなる濾材2をプリーツ加工してその捕集効率をさらに高くしたものであるが、前記濾材2はプリーツ加工しない状態で使用してもよい。
【0090】
さらに、前記不織布の単繊維の径及び径繊維密度は、要求されるフィルタ性能に応じて選択すればよく、また、繊維密度の異なる複数枚の不織布を積層して濾材としてもよい。
【0091】
また、前記自然分解性樹脂の不織布からなる濾材2は、帯電させることができるため、この濾材2に帯電処理を施してその捕集効率を高くしてもよい。
【0092】
【発明の効果】
本発明のフィルタは、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材としたものであるため、使用後の濾材を自然分解により処分することができ、しかも濾材の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0093】
本発明のフィルタにおいて、前記不織布の単繊維は、熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材に、前記熱可塑性樹脂に対する直接的生分解成分、酸化可能成分、遷移金属成分、及び非金属安定化成分からなる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂、より望ましくは、ポリオレフィン系樹脂に、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全てにさらされる環境下において前記ポリオレフィン系樹脂を低分子化し、水と二酸化炭素の無機物への分解を誘発する自然分解促進作用を有する合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっているのが好ましく、このような自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材とすることにより、使用後の濾材を微生物を大量発生させること無く自然分解により処分し、しかも前記不織布の繊維密度を高くして、濾材の捕集効率を充分に高くすることができる。
【0094】
また、前記自然分解性樹脂の単繊維の平均直径は0.5〜20μmの範囲が好ましく、このようにすることにより、繊維密度の高い不織布を製造することができる。
【0095】
さらに、前記濾材はプリーツ加工するのが好ましく、このようにすることにより、前記濾材の捕集効率をさらに高くすることができる。
【0096】
その場合、プリーツ加工された濾材を、その各折り返し部をつなぐビード状接着剤あるいは互いに隣り合う折り返し面の間にそれぞれ挿入された複数のセパレータによりプリーツ状態に保持し、さらに濾材取付枠内に収容して濾材パックとするのが望ましく、このようにすることにより、前記プリーツ加工された濾材の形崩れによる捕集機能の低下を防ぐことができる。
【0097】
その場合、前記濾材パックの濾材以外の部材の少なくとも1つを、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂により形成するのが好ましく、このようにすることにより、濾材パックの濾材とそれ以外の少なくとも1つの部材の処分を自然分解により行なうことができる。
【0098】
また、本発明のフィルタは、前記濾材パックを枠状のフィルタケース内に収容してフィルタユニットとするのが望ましく、このようにすることにより、前記フィルタユニットを流体濾過装置に取付けることにより、流体濾過装置への濾材パック1の組込みを簡単に行なうことができる。
【0099】
その場合、前記フィルタケースは、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂により形成するのが好ましく、このようにすることにより、使用後の濾材を、前記フィルタケース内に濾材パックを収容した状態のまま自然分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すフィルタユニットの分解斜視図。
【図2】第1の実施形態における濾材の一部分の拡大斜視図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すフィルタユニットの分解斜視図。
【図4】第2の実施形態における濾材の一部分の拡大斜視図。
【符号の説明】
1,1a…濾材パック、2…濾材、3…ビード状接着剤、4…セパレータ、5…濾材取付枠、6…フィルタケース、7…外枠、8…濾材パック押え。
Claims (9)
- 合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂の単繊維からなる不織布を濾材としたことを特徴とするフィルタ。
- 不織布の単繊維は、熱可塑性樹脂からなる合成樹脂材に、前記熱可塑性樹脂に対する直接的生分解成分、酸化可能成分、遷移金属成分、及び非金属安定化成分からなる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
- 不織布の単繊維は、ポリオレフィン系樹脂に、紫外線、熱、酸素、微生物のいずれかまたは全てにさらされる環境下において前記ポリオレフィン系樹脂を低分子化し、水と二酸化炭素の無機物への分解を誘発する自然分解促進作用を有する合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂からなっていることを特徴とする請求項2に記載のフィルタ。
- 自然分解性樹脂の単繊維の平均直径が0.5〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
- 濾材がプリーツ加工されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
- プリーツ加工された濾材がその各折り返し部をつなぐビード状接着剤あるいは互いに隣り合う折り返し面の間にそれぞれ挿入された複数のセパレータによりプリーツ状態に保持され、さらに濾材取付枠内に収容されて濾材パックとされていることを特徴とする請求項5に記載のフィルタ。
- 濾材パックの濾材以外の部材の少なくとも1つが、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂からなっていることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ。
- 濾材パックが枠状のフィルタケース内に収容されていることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ。
- フィルタケースが、合成樹脂材にその合成樹脂材を自然環境下で分解させる合成樹脂分解性成分を添加した自然分解性樹脂あるいは微生物によって分解される生分解性合成樹脂からなっていることを特徴とする請求項8に記載のフィルタ。
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