JPH08113822A - たばこ煙用フィルター素材及びその製造方法 - Google Patents

たばこ煙用フィルター素材及びその製造方法

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JPH08113822A
JPH08113822A JP28005394A JP28005394A JPH08113822A JP H08113822 A JPH08113822 A JP H08113822A JP 28005394 A JP28005394 A JP 28005394A JP 28005394 A JP28005394 A JP 28005394A JP H08113822 A JPH08113822 A JP H08113822A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 たばこの喫味を損なうことなく、生分解性に
優れるたばこ煙用フィルター素材により、環境汚染を軽
減する。 【構成】 たばこ煙用フィルター素材は、天然又は再生
セルロース繊維から誘導される平均置換度1.5以下の
繊維状セルロース誘導体を含む。前記繊維状セルロース
誘導体は、表面が、例えば酢酸などの有機酸でエステル
化され、しかも内部に非エステル化部分を有する。前記
誘導体は、ASTM D5209に準ずる試験法におい
て、4週間後に20重量%以上分解する場合が多い。こ
のような繊維状セルロース誘導体は、例えば、セルロー
ス繊維を、液相中、触媒の非存在下に有機酸及び有機酸
無水物又は有機酸ハロゲン化物で処理することにより得
られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生分解性に優れるたば
こ煙用フィルター素材及びその製造方法、並びに前記素
材を用いた、たばこ煙の喫味が良好なたばこ煙用フィル
ターに関する。
【0002】
【従来の技術】たばこ煙中のタール類を除去し、喫味に
優れるたばこ煙用フィルターとして、平均置換度2.4
程度のセルロースアセテートの繊維束をトリアセチンな
どの可塑剤を用いて成型したフィルタープラグが広く使
用されている。前記セルロースアセテート繊維は、生分
解性に劣り、使用後に廃棄すると、環境中で分解するま
でに長時間を要し、環境汚染の一因となる。
【0003】一方、木材パルプを原料とし、クレープ状
に加工した紙製のたばこ煙用フィルターや再生セルロー
ス繊維束からなるたばこ煙用フィルターも知られてい
る。これらのフィルターは、セルロースアセテートから
なるフィルタープラグと比較して、生分解性が高く、環
境汚染をある程度軽減できる。しかし、たばこの喫味が
劣ると共に、フィルターとして必要なフェノール類の選
択除去性がセルロースアセテートに比べて極端に低く、
同じ圧力損失においてフィルターの硬度がセルロースア
セテートに比べて低い。
【0004】なお、特開平5−227939号公報に
は、環境汚染を軽減する目的で、微細な気孔を有する生
分解性の脂肪族ポリエステルを用いた紙巻たばこ用フィ
ルターが開示されている。このようなフィルターは、生
分解性はある程度改善されるものの、セルロースアセテ
ートからなるフィルタープラグと比較すると、たばこの
喫味が劣る。
【0005】特開昭52−72900号公報には、平均
酢化度が10〜50%の繊維状酢化セルロースの繊維集
合体からなるたばこフィルターが開示されている。前記
公報には、パルプなどのセルロース繊維を、硫酸などの
酢化触媒を用いてアセチル化して、繊維状酢化セルロー
スを得ることが記載されている。しかし、このような方
法で得られる繊維は、たばこの喫味には優れるものの、
生分解性が未だ十分ではない。
【0006】上記のように、従来のたばこ煙用フィルタ
ーでは、高い生分解性と、良好なたばこ煙の喫味などの
たばこフィルターとしての特性を両立させることは困難
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、たばこの喫味を損なうことなく、生分解性に優れ、
環境汚染を軽減できるたばこ煙用フィルター素材および
その製造方法を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、上記特性に加えて、
さらに有害成分の除去効率の高いたばこ煙用フィルター
素材及びその製造方法を提供することにある。
【0009】本発明のさらに他の目的は、前記の如き優
れた特性を有するたばこ煙用フィルターを提供すること
にある。
【0010】
【発明の構成】本発明者らは、上記目的を達成するため
に鋭意検討の結果、繊維表面がたばこの喫味に関与する
ことに着目し、表面のみがエステル化された繊維状セル
ロース誘導体が、たばこの喫味を損なうことなく、しか
も自然環境下で高い分解性を有することを見出だし、本
発明を完成した。
【0011】すなわち、本発明のたばこ煙用フィルター
素材は、天然又は再生セルロース繊維から誘導される繊
維状セルロース誘導体であって、繊維表面がエステル化
され、かつ非エステル化部分を含み、平均置換度が1.
5以下である繊維状セルロース誘導体を含む。
【0012】前記繊維状セルロース誘導体は、生分解性
を有し、例えば、ASTM D5209に準ずる試験法
において、4週間後に20重量%以上分解する。前記フ
ィルター素材における繊維状セルロース誘導体の含有量
は広い範囲から選択でき、例えば、素材の全量に対し
て、30重量%以上である。
【0013】たばこ煙用フィルターは、前記たばこ煙用
フィルター素材で構成することができる。 前記繊維状
セルロース誘導体は、例えば、天然又は再生セルロース
繊維を、液相中、有機酸及び有機酸無水物又は有機酸ハ
ロゲン化物で処理することにより得られる。
【0014】なお、本明細書において、「生分解」と
は、分解劣化の過程のいずれかに微生物などによる生物
的な分解を含む意味に用いる。
【0015】以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】前記セルロース誘導体は、繊維状であり、
その表面がエステル化され、しかも非エステル化部分を
含む。前記繊維状セルロース誘導体のうち、エステル化
された部分は、例えば、セルロースアセテート、セルロ
ースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機
酸とのエステル;セルロースアセテートプロピオネー
ト、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセ
テートフタレートなどの混酸エステルなどのエステルで
構成されている。
【0017】このような繊維状セルロース誘導体の平均
置換度は、1.5以下(例えば、0.01〜1.5)、
好ましくは、0.02〜1.2、より好ましくは0.0
5〜0.5程度である。平均置換度が1.5を越える
と、繊維内部までエステル化が進行し、生分解性が低下
し易い。また、平均置換度が0.01未満では、たばこ
の喫味などのフィルター特性に劣る。なお、本明細書で
用いる「平均置換度」とは、不均一にエステル化された
セルロース繊維の置換度の平均を表すものであり、いわ
ゆる溶解法エステル化により製造される均一に反応され
たセルロースエステル繊維の置換度とは異なる概念のも
のである。
【0018】繊維状セルロース誘導体の繊維径及び繊維
長は、フィルターとしての特性を損なわない範囲で適宜
選択できるが、短繊維である場合が多い。繊維状セルロ
ース誘導体は、繊維径0.01〜100μm(例えば、
1〜50μm程度)、繊維長0.1〜10mm(例え
ば、0.5〜4mm程度)を有している場合が多い。繊
維径、繊維長が上記範囲のセルロース誘導体を用いる
と、強度が高く、しかも成形性の良好なフィルター素材
が得られる。
【0019】繊維状セルロース誘導体の断面形状は、特
に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、
Y字状、X字状、R字状、I字状など)や中空状などの
いずれであってもよい。繊維状セルロース誘導体は、必
要に応じて捲縮されていてもよいが、通常、非捲縮繊維
である場合が多い。
【0020】前記繊維状セルロース誘導体は、繊維表面
(表層部)がエステル化され、しかも繊維内部(芯部)
は、非エステル化部分を含む。このような繊維状セルロ
ース誘導体は、たばこ煙の瀘過に関係する繊維表面がエ
ステル化されているため、たばこ煙の喫味や、タール類
の除去効率などの瀘過特性は、従来のアセテート繊維束
からなるフィルターと同程度に優れている。しかも、繊
維内部はエステル化されておらず、未置換の天然又は再
生セルロースで構成されているため、生分解性に優れ、
木材パルプや再生セルロース繊維などと同等の生分解性
を得ることができる。このように本発明のセルロース誘
導体は、繊維の表層部と芯部とで機能を分担させている
ため、優れたたばこの喫味と高い生分解性という相反す
る特性を両立することができるという特色がある。
【0021】なお、繊維状セルロース誘導体のエステル
化の分布は、例えば、繊維状セルロース誘導体を、直接
染料又は分散染料で染色し、繊維断面を観察することに
より確認できる。エステル化された部分は、分散染料で
染色できるが直接染料では染色できない。また、エステ
ル化されず、未置換のセルロース部分は、直接染料で染
色できるが分散染料では染色できない。本発明の繊維状
セルロース誘導体は、繊維表面は分散染料で染色できる
が、繊維内部に直接染料で染色できる部分を有する。
【0022】このような繊維状セルロース誘導体は、生
分解性に優れ、例えば、ASTM(American Society f
or Testing and Materials) D5209に準ずる試験
方法において、発生する炭酸ガス量を基準として、4週
間後に20重量%以上(例えば30〜100重量%)、
好ましくは40重量%以上(例えば50〜100重量%
程度)分解する。生分解性の測定に際して、活性汚泥と
して、都市下水処理場の活性汚泥が使用できる。なお、
繊維状セルロース誘導体の分解%は、二酸化炭素の発生
量を分解された炭素数に換算し、分解前の総炭素数に対
する割合から算出することができる。前記繊維状セルロ
ース誘導体は、天然又は再生セルロースから誘導され
る。前記セルロース繊維原料としては、天然又は再生セ
ルロースのいずれを用いてもよく、例えば、木材繊維
(例えば、針葉樹、広葉樹等の木材パルプなど)、種子
毛繊維(例えば、リンターなどの綿花、ボンバックス
綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、亜麻、
黄麻、ラミー、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例え
ば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然セ
ルロース繊維;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレー
ヨン、硝酸人絹等の再生セルロース繊維を用いることが
できる。これらは、一種又は二種以上組み合わせて使用
できる。
【0023】繊維状セルロース誘導体は、例えば、
(1)天然又は再生セルロース繊維を、ヘキサン、トル
エンなどのセルロースエステルに対する貧溶媒中で、触
媒の存在下、有機酸無水物又は有機酸ハロゲン化物等で
処理する方法(以下、触媒法という)、(2)天然又は
再生セルロース繊維を、有機酸及び有機酸無水物又は有
機酸ハロゲン化物で処理する方法などにより製造でき
る。
【0024】前記触媒法(1)において、触媒として
は、ピリジンなどの塩基、酢酸ナトリウム、酢酸カリウ
ム等の有機カルボン酸のアルカリ金属塩などが使用でき
る。セルロース繊維をエステル化する場合、一般に触媒
として、硫酸、過塩素酸などの酸触媒が用いられるが、
これらの触媒はセルロース繊維に対する浸透力が強いた
め、非エステル化部分を芯部に残しつつ表面がエステル
化された繊維状セルロース誘導体を得るのが困難であ
る。
【0025】前記方法(2)においては、触媒の存在
下、処理をおこなってもよいが、好ましくは、触媒の非
存在下で処理する。
【0026】液相中、有機酸及び有機酸無水物又は有機
酸ハロゲン化物で繊維を処理する前記方法(2)によれ
ば、特に触媒を用いなくても、セルロース繊維の表面を
エステル化でき、しかも繊維内部までエステル化が進行
するのを抑制できるので、本発明の前記繊維状セルロー
ス誘導体を容易に得ることができる。さらに、ヘキサ
ン、トルエンなどの芳香族炭化水素系などの溶媒を必要
としないので、溶媒処理工程などを必要とせず、また作
業環境も良好である。さらに、使用する有機酸及び有機
酸無水物又は有機酸ハロゲン化物は、それ自体生分解性
が高いので、万一、繊維状セルロース誘導体中に残存し
ても、素材の生分解性を損なうことがない。
【0027】前記有機酸としては、例えば、酢酸、プロ
ピオン酸、酪酸等の炭素数2〜4程度の脂肪族飽和カル
ボン酸などが例示される。これらの有機酸は一種又は二
種以上混合して使用できる。好ましい有機酸には、酢酸
が含まれる。
【0028】前記有機酸無水物又は有機酸ハロゲン化物
としては、前記有機酸の酸無水物、塩化物、臭化物、ヨ
ウ化物などのハロゲン化物が使用できる。混酸エステル
の場合は、前記酸無水物や酸ハロゲン化物を適宜組み合
わせて用いる。
【0029】反応条件は、繊維状セルロース誘導体の表
面がエステル化され、しかも繊維内部までエステル化が
進行しない範囲で適宜選択でき、反応温度は、通常、4
0〜120℃、好ましくは60〜100℃程度、反応時
間は、通常10分〜10時間、好ましくは30分〜3時
間程度である。
【0030】有機酸の使用量は、セルロース繊維原料に
対して、重量比で5〜500倍、好ましくは20〜20
0倍程度の広い範囲から選択できる。また、有機酸無水
物又は有機酸ハロゲン化物の量も広い範囲から選択で
き、例えば、セルロース繊維原料に対して、重量比で5
〜500倍、好ましくは20〜200倍(例えば、20
〜100倍)程度である。
【0031】前記方法によれば、セルロース繊維の表面
をエステル化し、しかも繊維内部はエステル化されてい
ない天然又は再生セルロースのまま残すことができる。
そのため、前記のように、たばこの喫味を損なうことな
く、優れた生分解性が得られる。さらに、繊維状の原料
をエステル化するので、繊維径の小さい細繊維を容易に
得ることができ、比表面積が大きく、有害成分の除去効
率の高いフィルター素材が得られる。
【0032】本発明のたばこ煙用フィルター素材は、少
なくとも前記繊維状セルロース誘導体を含んでいればよ
い。前記フィルター素材は、例えば(1)繊維状セルロ
ース誘導体を含む組成物を、そのままパッキング成形
法、ウェブ状シートに成形する方法などにより成形し
て、フィルター素材とする方法、(2)繊維状セルロー
ス誘導体を含む組成物を含有するスラリーを、慣用の方
法に従って湿式抄紙してシート状に成形し、シート状フ
ィルター素材とする方法などにより製造できる。
【0033】繊維状セルロース繊維に併用可能な成分と
しては、例えば、前記セルロース繊維原料として例示し
た天然又は再生セルロース繊維の他、例えば羊毛などの
天然繊維;セルロースエステル繊維、ポリオレフィン繊
維(例えばポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維)、
ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト繊維)、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維
などの合成繊維等を含んでいてもよい。これらは単独又
は二種以上組み合わせて用いることができる。前記成分
としては、生分解性に優れる天然又は再生セルロース繊
維、特に木材パルプなどが好ましい。
【0034】繊維状セルロース誘導体と他の成分との割
合は、たばこの喫味や生分解性などを損なわない限り広
い範囲から選択でき、例えば、前者/後者=99/1〜
20/80(重量比)、好ましくは99/1〜40/6
0(重量比)、より好ましくは98/2〜60/40
(重量比)程度である。前記割合は、95/5〜80/
20(重量比)程度である場合が多い。
【0035】前記第二成分としては、生分解性に優れる
天然又は再生セルロース繊維、特に、木材パルプなどが
好ましい。
【0036】フィルター素材における繊維状セルロース
誘導体の含有量は、生分解性などの特性を損なわない限
り広い範囲から選択でき、例えば、素材全量に対して、
30重量%以上(例えば、40〜100重量%程度)、
好ましくは50重量%以上(例えば、55〜100重量
%程度)、より好ましくは、60重量%以上(例えば、
65〜100重量%程度)である。
【0037】なお、前記繊維状セルロース誘導体、フィ
ルター素材は、その特性を損なわない範囲で、種々の添
加剤、例えば、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の無機微粉
末;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の
塩などの熱安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの
安定化剤;着色剤;歩留まり向上剤などを含有していて
もよい。また、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の生分解
促進剤、アナターゼ型酸化チタンなどの光分解促進剤な
どのいずれか一方、又は双方を含有させることにより、
前記高い生分解性と相俟って、フィルター素材の分解性
を高めることができる。なお、フィルター素材は、トリ
アセチン、トリエチレングリコールジアセテート等の可
塑剤を含んでいてもよいが、湿潤による崩壊性を高め、
フィルターの分解性を高めるため、可塑剤は含まないの
が好ましい。
【0038】本発明のたばこ煙用フィルター素材は、た
ばこ煙用フィルター(たばこ煙用フィルターロッド)を
製造する上で有用である。たばこ煙用フィルターは、慣
用の方法、例えば、(a)繊維状、毛状のフィルター素
材を、そのままフィルターチップ金型に充填してフィル
タープラグとする方法、(b)シート状フィルター素材
を、フィルタープラグ巻上げ機を用いて巻き上げ又は折
り畳んでフィルタープラグとする方法どにより得られ
る。前記(b)の方法では、シート状素材を渦巻き状に
巻き上げ又は折りたたんで成型した後乾燥してもよい
し、乾燥した後に渦巻き状折りたたんで成型してもよ
い。
【0039】また、シート状の素材は、フィルタープラ
グを通じて、チャンネリングを抑制しつつ、煙を円滑か
つ均一に通過させるため、クレープ加工又はエンボス加
工されているのが好ましい。クレープ加工は、進行方向
に沿って多数の溝が形成された一対のクレープ化ロール
にシート状素材を通し、シートの進行方向に沿って皺及
び若干の裂け目を形成することにより行うことができ
る。エンボス加工は、格子状、ランダム状などに凹凸が
形成されたロール間にシート状素材を通したり、凹凸部
が形成されたロールでシート状素材を押圧することによ
り行うことができる。クレープ加工やエンボス加工によ
り、フィルターの通気性を調整できる。
【0040】前記プラグ巻上げ機では、クレープ加工又
はエンボス加工したシート状素材をロート中に巻き込ん
だ後、巻紙により円筒状に巻き上げ、糊付けし、適当な
長さに切断することにより、フィルタープラグを作製で
きる。巻き上げに際して、クレープ加工したシート状素
材は、皺が延びる方向に横断又はほぼ直交する方向に巻
き上げる場合が多い。
【0041】フィルタープラグの作製に際して、円筒状
の巻紙同士の端部での糊付け、巻き上げられた円筒状の
素材と巻紙との糊付けが必要な場合、フィルターの湿潤
時の崩壊性を高めるため、水溶性接着剤を用いるのが好
ましい。水溶性接着剤には、天然物系接着剤(例えば、
デンプン、変性デンプン、可溶性デンプン、デキストラ
ン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、
ゼラチンなど);セルロース誘導体(例えば、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エ
チルセルロースなど);合成樹脂系接着剤(例えば、ポ
リビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ア
クリル樹脂など)等が例示される。これらの水溶性接着
剤は、一種又は二種以上使用できる。
【0042】このようなたばこ煙用フィルターを用いる
と、たばこ煙の喫味が良好である。すなわち、本発明の
たばこ煙用フィルターを構成する繊維状セルロース誘導
体は、繊維表面がエステル化されているセルロース誘導
体を用いるので、従来の平均置換度2.4程度のセルロ
ースアセテート繊維からなるフィルターと同等のたばこ
喫味を示す。しかも、素材の繊維内部はエステル化され
ていないので、木材パルプや再生セルロースなどに匹敵
する高い生分解性を有する。そのため、フィルターを屋
外などに廃棄したとしても、速やかに崩壊又は分解で
き、環境汚染の虞れが少ない。
【0043】なお、フィルターの生分解は、生物が作用
しうる種々の外部環境、例えば、温度0〜50℃、好ま
しくは10〜40℃、相対湿度30〜90%程度で行う
ことができる。また、フィルターの生分解を促進するた
めに、セルロースや有機酸などのセルロースエステルの
構成成分に対して馴化した微生物を含む土壌や水中など
の環境下にフィルターを晒すのが有用である。上記微生
物を含む活性汚泥を用いると、フィルターの生分解性を
高めることができる。
【0044】
【発明の効果】本発明のたばこ煙用フィルター素材及び
たばこ煙用フィルターは、繊維表面がエステル化され、
しかも非エステル化部分を含む繊維状セルロース誘導体
を用いるので、たばこの喫味を損なうことなく、生分解
性に優れ、環境汚染を軽減できる。また、瀘過効率が高
い。
【0045】本発明の方法によれば、前記の如き優れた
特性を有するたばこ煙用フィルター素材を製造できる。
【0046】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。なお、実施例および比較例において、平均
置換度、生分解性、通気抵抗、香喫味は、以下の方法に
より測定した。
【0047】平均置換度:1.9gの試料に120ml
のアセトンと30mlのジメチルスルホキシドを加え膨
潤させた後、30mlの1N−NaOHを加え、室温で
撹拌しながら2時間ケン化した。100mlの熱水を加
え5分間撹拌した後、25mlの純水を加え、フェノー
ルフタレインを指示薬として1N−H2 SO4 で消費し
たアルカリを逆滴定することにより、平均置換度を算出
した。
【0048】生分解性:ASTM D5209に準拠
し、活性汚泥として都市下水処理場活性汚泥を用いて評
価した。また、供試試料は、試料2gを液体窒素中で3
分間初期凍結し、コーヒーミルで3分間粉砕した後、液
体窒素で1分間凍結し、振動粉砕機で3分間粉砕するこ
とにより調製した(100メッシュパス)。そして、供
試試料濃度100ppm(仕込み量30mg)、前記汚
泥濃度30ppm(仕込み量9mg)で、25±1℃で
4週間に亘り試験し、発生した二酸化炭素の量を分解さ
れた炭素数に換算し、供試試料の総炭素数との比率から
分解率を求めた。 通気抵抗:フィルターをU字管水柱計を並列に真空ポン
プに連結して吸引し、フィルターを通過する空気量が毎
秒17.5mlの時の水柱計の目盛で表示した。
【0049】香喫味:プラグ状の試料を、市販のたばこ
(日本たばこ産業(株)、商品名「わかば」)のフィル
タープラグを除去したものにとりつけ、喫煙愛好者5人
によって喫味試験し、下記の基準で評価し、5人の評価
値の平均値で表した。
【0050】評価基準 香喫味3:辛味がなく、たばこの旨味がある 香喫味2:辛味はないが、旨味が落ちる 香喫味1:辛味がある 実施例1 針葉樹サルファイドパルプ(α−セルロース含有量94
%)10gを、水1000mlに1時間浸漬した後、5
倍まで脱液して酢酸100mlで置換した。これに酢酸
600ml及び無水酢酸600mlを加え、窒素気流
下、油浴中、80℃で1時間反応させた。反応生成物
を、水3000ml中に投入し、過剰の無水酢酸を分解
した後、ろ別、水洗、乾燥し、平均置換度0.15の繊
維状セルロース誘導体(繊維長:4mm、繊維径:20
μm)を得た。得られた繊維状セルロース誘導体の生分
解性は61%であった。また、前記繊維状セルロース誘
導体を分散染料(ディスパーズイエロー3)で染色し、
繊維断面を顕微鏡で観察したところ、外部のみが染料に
染まり、表面のみアセチル化されていることが確認され
た。
【0051】比較例1 市販のたばこフィルターに用いられる平均置換度2.4
のセルロースアセテート繊維(繊度3デニール、断面Y
字状)の生分解性を測定したところ、2%であった。
【0052】実施例2 実施例1で得られた繊維状セルロース誘導体を、内径
7.9mm、長さ17mmのフィルターチップ巻紙に充
填し、フィルタープラグの通気抵抗を50mm水柱にな
るようにして、たばこ煙用フィルターを作製した。この
フィルタープラグの喫味試験を行ったところ、香喫味は
2.8であった。
【0053】実施例3 実施例で得られた繊維状セルロースアセテート90重量
部と、針葉樹漂白クラフトパルプ10重量部とを、10
000重量部の水に懸濁し均一なスリラーとした後、多
孔板を用いて脱水、乾燥し、坪量35g/m2 のシート
を調製した。得られたシートを波状成形した後、内径
7.9mm、長さ17mmのフィルターチップ巻紙に充
填し、通気抵抗を50mm水柱となるようにしてフィル
タープラグを作製した。このフィルタープラグの喫味試
験を行ったところ、香喫味は2.6であった。
【0054】比較例2 針葉樹漂白グラフトパルプのみを用いて、実施例3と同
様な方法でフィルタープラグを作成し(内径7.9m
m、長さ17mm、通気抵抗50mm水柱)、喫味試験
を行ったところ、香喫味は1.2であった。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然又は再生セルロース繊維から誘導さ
    れる繊維状セルロース誘導体であって、繊維表面がエス
    テル化され、かつ非エステル化部分を含み、平均置換度
    が1.5以下である繊維状セルロース誘導体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の繊維状セルロース誘導体
    を含むたばこ煙用フィルター素材。
  3. 【請求項3】 繊維表面が、炭素数2〜4の有機酸でエ
    ステル化されている請求項2記載のたばこ煙用フィルタ
    ー素材。
  4. 【請求項4】 繊維状セルロース誘導体の平均置換度が
    0.02〜1.2である請求項2または3記載のたばこ
    煙用フィルター素材。
  5. 【請求項5】 繊維状セルロース誘導体が、ASTM
    D5209に準ずる試験法において、発生する炭酸ガス
    量を基準として、4週間後に20重量%以上分解する請
    求項2〜4のいずれかの項に記載のたばこ煙用フィルタ
    ー素材。
  6. 【請求項6】 繊維状セルロース誘導体が、繊維径0.
    01〜100μm、繊維長0.1〜10mmの繊維であ
    る請求項2〜5のいずれかの項に記載のたばこ煙用フィ
    ルター素材。
  7. 【請求項7】 素材の全量に対して、繊維状セルロース
    エステルを30重量%以上含有する請求項2〜6のいず
    れかの項に記載のたばこ煙用フィルター素材。
  8. 【請求項8】 シート状である請求項2〜7のいずれか
    の項に記載のたばこ煙用フィルター素材。
  9. 【請求項9】 天然又は再生セルロース繊維誘導体であ
    って、繊維表面がアセチル化され、かつ非アセチル化部
    分を含み、平均置換度が0.05〜0.5であり、AS
    TM D5209に準ずる試験法において、発生する炭
    酸ガス量を基準として、4週間後に40重量%以上分解
    する繊維状セルロース誘導体を、素材の全量に対して、
    50重量%以上含むたばこ煙用フィルター素材。
  10. 【請求項10】 請求項2〜9のいずれかの項に記載の
    たばこ煙用フィルター素材で構成されたたばこ煙用フィ
    ルター。
  11. 【請求項11】 天然又は再生セルロース繊維を、液相
    中、有機酸及び有機酸無水物又は有機酸ハロゲン化物で
    処理するたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
  12. 【請求項12】 触媒の非存在下で処理する請求項11
    記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
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