JP2004219360A - 紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器 - Google Patents
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Abstract
【課題】高感度でSN比が良く、高温環境下でも利用でき、火炎等のOHに起因する発光を含む紫外線の検出に適した紫外線センサーを提供すること。
【解決手段】少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、該紫外線センサーの、少なくとも波長306nm近傍の量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nm近傍の量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線センサー。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、該紫外線センサーの、少なくとも波長306nm近傍の量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nm近傍の量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線センサー。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器に関するものであり、火炎から放射される紫外線や、OHの発光に起因する紫外線の検出に好適な紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火炎の検出は、家庭用のコンロや給湯機から、大型のボイラーや工業炉などで行われている。この検出に用いられるセンサーは様々なものがあり、その用途によって使い分けられている(例えば、非特許文献1参照)。
安価な火炎センサーとしては熱電対やフレームイオンディテクターが挙げられる。熱電対は火炎から発せられる熱を検出するものであり、フレームイオンディテクターは火炎内の電流量を測定するものである。これらは安価で比較的寿命も長いため主に民生用に使用されているが次のような欠点もある。
【0003】
例えば、熱電対は周囲の熱の応答性に左右されるため、応答速度が遅くなる。また、火炎が消えても周りに熱容量の大きい物質があれば、この物質の温度が下がるまで火炎が消えたものとして検出できない。
また、フレームイオンディテクターは火炎内にセンサーを挿入し電流を測定するため、火炎が風などで揺らいだ時に変動が大きくなる。また高温で使用される工業炉などでは高温のためディテクターが壊れてしまうため測定に用いることができない。
【0004】
高価な火炎センサーとしては光電管を用いて、火炎の紫外域の発光を測定するものが挙げられる。この火炎センサーは火炎の位置から離れたところで測定する事が出来るため、高温炉の測定にも使用可能である。ただし使用温度が摂氏百数十度と耐熱性に限界があるため、冷却する必要がある。また光電管は一般的に大きく高価であることに加え、寿命が数年と短いために、民生用として使用することは出来ない。
【0005】
近年、火炎の紫外域の発光を測定する新しいセンサーとして太陽光に含まれる紫外線に感度を持たないいわゆるソーラーブラインド型の半導体受光素子を用いることが提案されている。例えば、組成がInxAlyGa1−x−yNからなる半導体受光素子とフィルターとを用い、波長が300nmより短波長側の光を感知し、300nmより長波長側は感知しない火炎センサーが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この技術によれば半導体に含まれる3族元素の組成を調整して、波長300nmより短波長域の光に対して主に感度を有し、且つ、感度の極大点を持つ受光器を用いている。しかしながら、波長300nmよりも長波長側の可視光領域に、半導体の結合欠陥に起因する感度領域があり、太陽光などの強い可視光に対しては、感知してしまう。
【0007】
このため、SN比を改善するために、波長300nmより長波長側をフィルターでカットすることが提案されている。この方法であれば、太陽光の紫外線への応答性は低くなるが、波長280nmよりも短波長側の火炎による紫外線の感度が非常に弱くなり、SN比が悪くなるという欠点があった。
このように、現状の火炎センサーは価格、性能、耐久性といった点でどれも欠点があり、状況に応じて使い分ける必要があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−153483号公報
【非特許文献1】
応用物理 第68号 第7号 805
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。即ち、本発明は、高感度でSN比が良く、高温環境下でも利用でき、火炎等のOHに起因する発光を含む紫外線の検出に適した紫外線センサー、および、これを用いた紫外線検出測定器を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、従来の技術について更に検討した。
まず、特許文献1に記載されているような火炎を検出するために用いられていた従来の紫外線検出センサーは、蛍光灯や太陽の光の影響を受けることなく、火炎から放出される紫外線を高いSN比で検出できるように、300nmよりも短波長側の紫外線を検出対象として構成されていた。
このような構成は、蛍光灯や太陽の光から放射される短波長域の紫外線の波長域と、火炎から放射される紫外線の波長域とを比較した際に、まず、両者が実質的に殆ど重なり合わない領域を前提として、火炎から放射される紫外線の強度が強い波長域(約280nm付近)を利用して火炎を測定しようとする着想に基くものである。
【0011】
これは、蛍光灯では、波長365nm、405nmおよび430nm近傍に水銀に起因する強い発光があり、また、太陽光から放射される紫外線では、290nmから315nmのUVB紫外線は微弱であるものの、315nm以上では波長の増大と共に徐々に強くなる傾向があるためである。従って、従来の火炎センサーは、火炎から放射される波長280nm近傍の紫外線を利用していた。
【0012】
一方、火炎から放射される紫外線のみを詳細に検討した場合、火炎から放射される紫外線の中でも波長306nm近傍の紫外線の強度が最も大きく、この強度は波長280nm近傍と比較すると数倍の強さである。しかしながら、この波長306nmの紫外線は、蛍光灯や太陽光等に起因する紫外線領域と重なるため、従来、火炎の測定に際しては利用されていなかった。
【0013】
本発明者らは、この事実に着目し、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線を利用して、従来よりもより高いSN比で火炎が検出できないか、火炎を測定する環境という視点から検討した。
すなわち、実際に火炎を測定する環境を考えた場合、例えば、種火のような小さい火炎であれば、紫外線センサーを火炎に近づけて用いることが多く、紫外線センサーを火災報知器のように利用する場合には、非常に強い火炎が検知対象となる。この場合、紫外線センサーに到達する火炎および迷光(蛍光灯や太陽光等)に起因する紫外線の強度比は、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線強度に対して、蛍光灯や太陽光に起因する同じ波長域の紫外線強度は相対的に非常に小さくなると考えられる。
【0014】
以上のことから、本発明者らは、紫外線センサーの構成を、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線に対して高い検出感度を有し、且つ、この波長よりも長波長側の紫外線や可視光線に対する感度を低く抑える構成とすることにより、火炎から放射される波長280nm近傍の紫外線を利用して紫外線を検出するよりもより高いSN比で検出できる可能性があるものと考え、以下に示す本発明を考案するに到った。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線センサーである。
【0016】
<2> 少なくとも、二つの電極および該電極に挟まれた前記半導体からなる半導体層を含む紫外線受光素子と、光学フィルターとを含むことを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0017】
<3> 火炎から放射される紫外線を検出することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0018】
<4> 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする<3>に記載の紫外線センサーである。
【0019】
<5> 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0020】
<6> 前記半導体が水素を含む多結晶からなることを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0021】
<7> 前記光学フィルターが、波長365nm、405nmおよび430nm近傍の水銀の輝線を遮断することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0022】
<8> 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことができることを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0023】
<9> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用い紫外線センサーを利用して紫外線の測定を行う紫外線測定方法において、
前記紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線測定方法である。
【0024】
<10> 前記紫外線が、火炎から放射された紫外線であることを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0025】
<11> 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする<10>に記載の紫外線測定方法である。
【0026】
<12> 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0027】
<13> 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0028】
<14> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーと、該紫外線センサーが紫外線を検出した際に発生する信号を、少なくとも積分、増幅およびアナログデジタル変換処理する機能を備えた測定回路と、を含む紫外線検出測定器において、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線検出測定器である。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする。
【0030】
なお、波長306nmの量子効率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。また、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/50以下であることが好ましく、波長360nm以上の長波長域において実質的に感度を有さないことがより好ましい。
波長306nmの量子効率が1%未満の場合には、火炎等から放射される紫外線自体の検出ができなくなる。また、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10を超える場合には、蛍光灯や太陽光の存在下で、火炎等から放射される紫外線を検出しようとしても、十分なSN比を得ることができない。
【0031】
なお、波長に対する量子効率のプロファイルは上記した条件を満たすものであれば特に限定されないが、波長306nmから波長360nmの範囲内において、波長が大きくなるに従い量子効率が単調あるいは急激に低下することが好ましく、波長306nm近傍における量子効率が極大値を取ることが更に好ましい。
【0032】
本発明の紫外線センサーは、その検出対象となる紫外線の分光特性は特に限定されるものではないが、OHの発光に起因する波長306nm付近に強い発光ピークを有する火炎から放射される紫外線の検出に好適に用いられる。また、火炎から放射される紫外線以外にも、OHの発光に起因する波長306nm付近の発光ピークを有する光源から放射される紫外線の検出にも好適に用いることができる。
【0033】
なお、本発明において、「火炎」とは、可燃性物質が燃焼(酸化)した際に発生する炎を意味する。この可燃性物質としては、水素を含む物質であれば特に限定されず、例えば、都市ガス等の気体状のものや、重油、ガソリン等の液体状のもの、蝋燭や可燃性廃棄物等の固体状のもの等が挙げられる。また、これらの可燃性物質を燃焼させる手段としては特に限定されず、例えば、通常のガスバーナやライター、家庭用のガス器具、ボイラーや大型の燃焼炉等が挙げられる。
【0034】
なお、可燃性物質は、水素を含むため、この可燃性物質が燃焼した場合、その火炎中にOH発光が見られる。このOHの燃焼に起因する発光は波長306nm付近に観測されるものである。
【0035】
一方、火炎からの紫外線を測定する場合、蛍光灯や太陽光から放射される紫外線が、ノイズとなる場合がある。しかしながら、本発明の紫外線センサーは、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下に抑えられるため、上記したような蛍光灯や太陽光から放射される紫外線の影響を殆ど受けることなく、火炎から放出される紫外線を効率的に検出することができる。
【0036】
また、本発明の紫外線センサーは、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いているために、紫外線センサーが100℃を超える環境下においても、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下となるような状態で火炎等から放射される紫外線を測定することができる。このため、火炎に紫外線センサーを近づけて測定しても、熱による感度の低下やSN比の劣化等が無く、常温と同様に正確に紫外線を測定することができる。
【0037】
なお、本発明の紫外線センサーの光学的な面での特徴は、既述したように、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であること(特性▲1▼)、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であること(特性▲2▼)、以上の2つである。
【0038】
以上の2つの特性を達成する手段は特に限定されず、紫外線センサーに用いられる半導体のみにより達成することができ、あるいは、この半導体と組み合わせて用いられるその他の部材との組合せにより達成することもできる。例えば、紫外線センサーが、二つの電極および該電極に挟まれた半導体からなる半導体層を含む紫外線受光素子や、この紫外線受光素子に光学フィルターも組み合わせたような構成からなる場合には、半導体層を構成する材料等の他にも、電極を構成する材料や厚み、使用する光学フィルター等を選択することにより上記した2つの特性を達成することができる。
以下に、これら2つの特性を達成するための具体的な手段も含めて、本発明の紫外線センサーを、紫外線受光素子(半導体および電極等)と、光学フィルターとに大きく分けて詳細に説明する。
【0039】
<紫外線受光素子>
本発明の紫外線センサーは、三族元素と窒素原子とを含む半導体(以下、「窒化物半導体」と略す場合がある)を用いたものであれば特に限定されないが、この窒化物半導体からなる窒化物半導体層が二つの電極に挟まれた紫外線受光素子を含んでいることが好ましく、必要に応じて、この紫外線受光素子に光学フィルターを組み合わせることもできる。
紫外線受光素子は、窒化物半導体層と、この窒化物半導体層を挟むようにして設けられた2つの電極とを有するものが好適に用いられるが、例えば、基板の上に電極、窒化物半導体層、電極をこの順に設けた構成であってもよく、導電性基板の上に、窒化物半導体層、電極をこの順に設けた構成であってもよい。以下に、紫外線受光素子を構成する各部について詳細に説明する。
【0040】
−窒化物半導体(層)−
本発明に用いられる窒化物半導体は、三族元素と窒素原子とを含むものであれば特に限定されないが、本発明の紫外線センサーに用いられる場合に必要となる2つの特性(既述した特性▲1▼および特性▲2▼)を達成するためには、以下に説明するような特徴を有していることが好ましい。
まず、三族元素としては、Al,Ga,Inが挙げられ、窒化物半導体中には、これらの元素の少なくとも一つ以上の元素が含まれていればよい。
【0041】
本発明に用いられる窒化物半導体の結晶性は特に限定されず、非晶質であってもよく、微結晶相からなっていてもよく、微結晶相および非晶質相の混合状態であっても良く、多結晶でもよく、単結晶であっても良い。
結晶系は立方晶あるいは6方晶系のいずれか一つであっても複数の結晶系が混合された状態でもよい。微結晶の大きさは5nmから5μmであり、X線回折や電子線回折および断面の電子顕微鏡写真を用いた形状測定などによって測定できることができる。また柱状成長したものでも良いし、X線回折スペクトルで単一ピークであり、結晶面方位が高度に配向した膜でも良いし、また単結晶でも良い。
【0042】
窒化物半導体が非単結晶の場合(特に多結晶体の場合)には、この窒化物半導体は水素原子を含むことが好ましい。この場合、バンドギャップ内に存在する欠陥準位を不活性化することができるため、欠陥準位に起因する波長306nmよりも長波長域の可視光領域に発生する感度を抑えたり、無くすことができる。
なお、窒化物半導体中に含まれる水素原子は0.5at%〜50at%の範囲内で含まれていることが好ましい。また一配位のハロゲン元素が含まれていても良い。
【0043】
この窒化物半導体に含まれる水素が0.5原子%未満では、結晶粒界での結合欠陥とあるいは非晶質相内部での結合欠陥や未結合手を水素との結合によって無くし、バンド内に形成する欠陥準位を不活性化するのに不十分であり、結合欠陥や構造欠陥が増大し、暗抵抗が低下し光感度がなくなるため、この窒化物半導体を用いて紫外線センサーを作製しても実用的な紫外線センサーとして機能することができない場合がある。
【0044】
これに対し、窒化物半導体に含まれる水素原子が50原子%をこえると、水素が三族元素及び窒素原子に2つ以上結合する確率が増え、これらの元素が3次元構造を保てず、2次元および鎖状のネットワークを形成するようになり、とくに結晶粒界でボイドを多量に発生するため結果としてバンドギャップ内に新たな準位を形成し、電気的な特性が劣化すると共に硬度などの機械的性質が低下する場合がある。さらに窒化物半導体が酸化されやすくなり、結果として窒化物半導体中に不純物欠陥が多量に発生することとになり、良好な光電変換特性が得られなくなる。
【0045】
また、窒化物半導体中に含まれる水素原子が50原子%をこえると、電気的特性を制御するためにドーパントを添加したような場合において、このドーパントが水素原子により不活性化されるため、結果として電気的に活性な非単結晶の窒化物半導体が得られない。
なお、窒化物半導体中に含まれる水素量についてはハイドジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することができる。また加熱による水素放出量の測定あるいはIRスペクトルの測定によっても推定することができる。また、これらの水素結合状態は赤外吸収スペクトルによって容易に測定することできる。
【0046】
窒化物半導体中に含まれる三族元素とチッ素原子との原子数比は、0.5:1.0〜1:0.5の範囲内が好ましい。原子数比が0.5:1.0以下の場合,あるいは、1:0.5以上の場合では三族元素とチッ素原子との結合において四面体型を取る部分が少なくなり欠陥が多くなり良好な窒化物半導体として機能しなくなる場合がある。
【0047】
窒化物半導体のバンドギャップは、窒化物半導体に含まれる三族元素が2種以上である場合、この混合比を変えることによって所望の値に調整することができる。
例えば、3.2〜3.5eVのバンドギャップ(約420nm〜300nmの長波長吸収端に相当)を有するGaN:Hをベース組成として、この組成にAlを加えることによって3.5〜6.5eVのバンドギャップ(300nm〜180nmの長波長吸収端に相当)にまで変化させることができる。また、前記ベース組成にAlとInとを加えることによってもバンドギャップを調整することができる。
【0048】
窒化物半導体中に含まれる各元素組成はX線光電子分光(XPS)、エレクトロンマイクロプローブ、ラザフォードバックスキャタリング(RBS)、二次イオン質量分析計等の方法で測定することが出来る。
【0049】
また、本発明に用いられる窒化物半導体は、p,n制御のために元素(ドーパント)をドープすることができる。n型用の元素としてはIa族のLi,Ib族のCu,Ag,Au,IIa族のMg,IIb族のZn,IVa族のSi,Ge,Sn,Pb,VIa族のS,Se,Teを用いることができる。
p型用の元素としてはIa族のLi,Na,K,Ib族のCu,Ag,Au,IIa族のBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra,IIb族のZn,Cd,Hg,IVa族のC,Si,Ge,Sn,Pb,VIa族のS,Se,Te、VIb族のCr,Mo,W,VIIIa族のFe,Co,Niなどを用いることができる。
【0050】
本発明に用いられる窒化物半導体はアンドープの場合は弱いn型であり、光感度を得るためにショットキーバリアを形成したり、pn接合を形成したりして、内部に電界を形成することができる。また内部の空乏層を広げるためにi型とすることもできる。このような観点から用いられるドーパントとしては、特に、Be,Mg,Ca,Zn,Srが好ましい。
【0051】
ドーパントを窒化物半導体にドーピングする方法としては熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することができる。
また、ドーピングの際に用いられる原料としては、n型用としてはSiH4,Si2H6,GeH4,GeF4,SnH4等を、また、i型用およびp型用としてはBeH2,BeCl2,BeCl4,シクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等をガス状態で使用することができる。
【0052】
−半導体の作製方法−
次に本発明に用いられれる窒化物半導体の作製方法の具体例を図面を用いて説明する。図1は、本発明の紫外線センサーに用いらる窒化物半導体の作製に使用する成膜装置の構成例を示す概略模式図である。
図1において、1は真空に排気しうる容器、2は排気口、3は基板ホルダー、4は基板加熱用のヒーター、5,6は容器1に接続された石英管であり、それぞれガス導入管9,10に連通している。また、石英管5にはガス導入管11に接続され、石英管6にはガス導入管12が接続されている。
【0053】
この成膜装置においては、チッ素元素源として、例えば、N2を用いガス導入管9から石英管5に導入する。マグネトロンを用いたマイクロ波発振器(図示せず)に接続されたマイクロ導波管8に2.45GHzのマイクロ波が供給され石英管5内に放電を発生させる。別のガス導入口10から、例えばH2を石英管6に導入する。高周波発振器(図示せず)から高周波コイル7に13.56MHzの高周波を供給し、石英管6内に放電を発生させる。放電空間の下流側よりトリメチルガリウムをガス導入管12より導入することによって基板上に窒化物半導体を成膜することができる。
【0054】
窒化物半導体の結晶性(例えば、非晶質、微結晶、多結晶、単結晶の状態や、多結晶の場合の結晶の配向性等)は基板の種類、基板温度,ガスの流量圧力、放電条件を制御することにより調整することができる。この場合の基板温度は100℃〜600℃の範囲内とすることが好ましい。
基板温度が高い場合および/または三族元素を含む原料ガスの流量が少ない場合には微結晶や単結晶状になりやすい。基板温度が300℃より低い場合には三族元素原料ガスの流量が少ない場合に結晶性となり、また基板温度が300℃より高い場合には低温条件よりも三族元素原料ガス(例えばトリメチルガリウム等)の流量が多い場合でも結晶性となりやすい。また、例えばH2放電を行った場合には、これを行なわないよりも結晶化を進めることができる。三族元素原料ガスとしてはトリメチルガリウムの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物を用いることもできるし、また、2種以上の原料ガスを混合することもできる。また、これらの有機金属化合物は、ガス導入管11から別々に導入しても良い。
【0055】
また、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つ以上の元素を含むガス、あるいはBe,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素を含むガスを放電空間の下流側(ガス導入管11又はガス導入管12)から導入することによってn型、p型等任意の伝導型の非晶質あるいは微結晶の窒化物半導体を得ることができる。Cを含むガスとしては、条件によっては有機金属化合物に含まれる炭素を使用してもよい。
【0056】
上述のような装置において放電エネルギーにより形成される活性チッ素あるいは活性水素を独立に制御してもよいし、NH3のようなチッ素と水素原子を同時に含むガスを用いてもよい。さらにH2を加えてもよい。また、有機金属化合物から活性水素が遊離生成する条件を用いることもできる。このようにすることによって、基板上には活性化された三族元素原子、チッ素原子が制御された状態で存在し、かつ水素原子がメチル基やエチル基をメタンやエタン等の不活性分子にするために低温にも拘わらず、炭素が入らず、膜欠陥が抑えられた非晶質あるいは結晶性が生成できる。またプラズマCVD装置を用いてもよい。
【0057】
上述の装置においてプラズマを活性化する手段として、高周波発振器、マイクロ波発振器、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式であっても良いし、これらの一つを用いても良いし、二つ以上を用いてもよい。また、二つ共マイクロ波発振器であっても良いし、2つ共高周波発振器で有っても良い。また高周波放電の場合、誘導型でも容量型でも良い。また2つ共エレクトロンサイクロトロン共鳴方式を用いても良い。
異なる活性化手段(励起手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要があり、放電内と成膜部(容器1内)に圧力差を設けても良い。また同一圧力で行う場合、異なる活性化手段(励起手段)、例えば、マイクロ波と高周波放電を用いると励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質制御に有効である。
【0058】
なお、窒化物半導体の作製に際して用いる原料としては、Al,Ga,Inのなかから選ばれる一つ以上の元素を含む有機金属化合物を用いることができる。これらの有機金属化合物としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、ターシャリーブチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、ターシャリーブチルインジウムなどの液体や固体を気化して単独にあるいはキャリアガスでバブリングすることによって混合状態で使用することができる。キャリアガスとしては水素,N2,メタン,エタンなどの炭化水素、CF4,C2F6などのハロゲン化炭素などを用いることができる。
【0059】
チッ素原料としてはN2,NH3,NF3,N2H4、メチルヒドラジンなどの気体、液体を気化あるいはキャリアガスでバブリングすることによって使用することができる。
【0060】
本発明の紫外線センサーに用いられる窒化物半導体は、上記に説明した以外の方法を利用しても作製することができ、図1に示す例のみに限定されるものではない。例えば、反応性蒸着法やイオンプレーイング、リアクティブスパッターなど少なくとも水素が活性化された雰囲気で窒化物半導体を作製することも可能である。
【0061】
−基板および電極−
紫外線受光素子は、既述したように半導体以外にも電極や基板、導電性基板等を組み合わせて構成されることが好ましいが、以下にこれらの部材について詳細に説明する。
【0062】
基板としては導電性でも絶縁性でも良く、結晶あるいは非晶質でも良い。導電性基板としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、クロム等の金属及びその合金結晶、Si,GaAs,GaP,GaN,SiC,ZnOなどの半導体を挙げることができる。
また、基板表面に導電化処理を施した絶縁性基板を使用することもできる。絶縁性基板としては、高分子フィルム、ガラス、石英、セラミック等を挙げることができる。導電化処理は、上記の金属又は金、銀、銅等を蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法などにより成膜して行う。
【0063】
なお、半導体層への光の入射が、少なくとも基板を介して行われる場合には、この基板は透光性を有することが好ましい。
なお、本発明において「透光性」とは、少なくとも波長306nmの紫外線の透過率が10%以上であることを意味し、この透過率は90%以上であることがより好ましい。
【0064】
透光性を有する基板としては、ガラス、石英、サファイア、MgO,LiF,CaF2等の透明な無機材料、また、弗素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ等の透明な有機樹脂のフィルムまたは板状体、さらにまた、オプチカルファイバー、セルフォック光学プレート等が使用できる。波長306nmも含め330nm以下の広い範囲の紫外線を測定する場合には石英、サファイア、MgO,LiF,CaF2等が好ましい。
【0065】
電極としては、公知の導電性材料を用いることができるが、半導体層への光の入射が、少なくとも電極を介して行われる場合には、この電極は透光性を有することが好ましい。
透光性を有する電極としては、ITO、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を用いることができ、これらの材料からなる電極は、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法により形成したものが利用できる。また、Al,Ni,Au等の金属を蒸着やスパッタリングにより透光性が確保できる程度に薄く形成した電極を用いることもでき、本発明においては蒸着により作製した透光性の金属電極が好適に用いられる。
【0066】
<光学フィルター>
本発明に用いられる窒化物半導体は、その構成を選択することにより窒化物半導体自体でも、既述したような2つの特性を同時に達成することも可能であるが、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下にすることができない場合もある。このような場合には光学フィルターを併用することが好ましい。
【0067】
使用する光学フィルターは、紫外線受光素子を構成する窒化物半導体の波長306nmを超える長波長域における分光感度特性と、紫外線を測定する環境とを考慮して選択することができるが、波長306nmの紫外線に対しては透光性を有していることが必要である。
【0068】
紫外線受光素子を構成する窒化物半導体が波長306nmを超える長波長域に感度を有する場合には、少なくとも感度を有する波長域の光を遮断するような光学フィルターを用いることが好ましい。
但し、本発明において「遮断」とは、光学フィルターを用いて紫外線センサーを作製した場合において、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下となるように、ある波長における透過率が抑制されていることを意味する。
【0069】
紫外線を測定する環境に関しては、実質的には蛍光灯の光や、太陽の光が問題となるため、これらを考慮して光学フィルターを選択することが好ましい。
例えば、蛍光灯は、波長365nm、405nmおよび430nm近傍に水銀に起因する強い輝線を有するために、少なくともこれら3つの波長域の光を遮断する光学フィルターが好ましく用いられる。
また、太陽光は、290nmから315nmのUVB紫外線が微弱に存在するものの、実質的に問題となる波長域は315nm以上の強い強度を有する紫外域および可視域の光であり、315nm以上の波長域(少なくとも紫外域である波長315nm〜400nm程度)を遮断する光学フィルターが好ましく用いられる。
【0070】
なお、太陽光の直射を受ける場所で火炎等から放射される紫外線を測定する場合には、太陽光の紫外線センサー受光部への直射を防止するために、紫外線センサーを何らかの覆いなどで囲うことが好適である。
【0071】
用いることのできる光学フィルターとしては、上記したような条件を満たすものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、短波長透過フィルターや干渉フィルター、また、紫外線透過性の誘電体多層膜を組み合わせた光学フィルターが用いることができる。
【0072】
なお、紫外線透過性の誘電体多層膜を組み合わせた光学フィルターは多重反射を利用したものであるため多層膜中の光路長により、干渉波長が異なる。このため垂直入射と斜入射では透過波長が異なりこのため垂直入射に対して、透過波長と不透過波長域を設計したものでも、斜めからの入射に対してはこれらの波長域が大きくズレてしまう。
例えば、波長320nm以下の短波長に透過域をもうけ、波長320〜450nmの範囲内までを不透過領域とし、波長450nm以上を透過域とする光学フィルターでは、この光学フィルターに対して光を45度で入射させた場合に不透過域が280〜380nmの範囲内となり、波長380nm以上に透過域が発生する。
【0073】
従って、このような入射角依存性を有する光学フィルターを用いる場合には、光入射の方向性を均一化する手段を設けることが好ましい。この手段としては紫外線受光素子に密着して設けた光学フィルターの上に、斜めから入射してくる光の方向性を均一化あるいは垂直入射に変更する手段を設ける。
【0074】
その手段としては光散乱物質や拡散物質としては、少なくとも波長306nmの紫外線透過し且つ白濁しているフィルム、例えばテフロン(R)や乳白色ガラスなどが用いられる。
また、光学フィルターの光が入射する側に基板を設ける場合には、この基板表面を粗面化して、斜めから入射する光を拡散させて、その方向性を均一化することもできる。例えば、基板として石英基板を用いる場合には、この石英基板をフッ化水素でエッチングしたり、サンドブラストなどの機械的手段を用いて粗面化してもよい。同様にして、光学フィルターの表面を粗面化してもよいし、別の粗面化した板材を、光学フィルターの光が入射する側に重ねて用いても良い。
【0075】
また、光学フィルターの光が入射する側に多孔質の透過材料を積層しても良い、多孔質材料としては陽極酸化膜のAl基材をエッチングし自立した構造のものを用いることが出来るし、機械的に穿孔したものをもちいることもできる。厚さと孔径の関係は2:1以上が望ましい。
また、ファイバー状のものを束ねたもので方向性を均一化する手段としても良いし、直線方向に集光するセルフォック板などでも良い。
なお、光の入射方向が一定の方向からなるように、例えば窓付きの筐体中に紫外線センサーを設ける場合には紫外線受光素子の光が入射する側の面に光学フィルターを設けるだけでも良い。
【0076】
<紫外線センサーの構成例>
次に、以上に説明したような窒化物半導体や光学フィルター等を用いた本発明の紫外線センサーの構成例について説明する。
図2は、本発明の紫外線センサーの構成の一例について示した模式断面図である。図2中、20は紫外線センサー、21は紫外線受光素子、22はフィルター、23は筐体、24は受光窓、25は同軸ケーブルを表す。
図2に示す紫外線センサー20は、受光窓24を設けた筐体23の内側に、紫外線受光素子21が配置されている。紫外線受光素子21の受光窓24側には、受光窓24から入射する光を受光できるようにフィルター22が設けられており、また、紫外線受光素子21は、受光した際に発生する信号を処理するために、筐体23の外部に設けられた不図示の測定回路(少なくとも積分、増幅、および、アナログデジタル変換機能を有する回路)と同軸ケーブル24により接続されている。
【0077】
筐体23は、紫外線受光素子1を保護すると共に、迷光が入射するのを防止し、且つ、所定の方向からのみ受光できるように受光窓24を設けた構成を有するもので、例えば、ステンレスなどで構成される。
筐体23内部に配置される紫外線受光素子21は、既述したような窒化物半導体を用いたものであれば特に限定されないが、フィルター22を通過した光が窒化物半導体に入射でき、その際に発生する電流を同軸ケーブル24に伝達できるようにするために、例えば、フィルター22側から紫外線を透過する透光性電極、窒化物半導体(層)、電極が順に設けられたような構成からなる。
【0078】
フィルター22は、受光窓24から入射した光の内、少なくとも波長306nmの紫外線を透過し、且つ、ノイズとなる波長域の光を遮断するものであればその具体的な構成は特定されないが、例えば、既成のフィルターを1枚ないし複数枚組み合わせたもの等が利用できる。
【0079】
<紫外線検出測定器>
なお、以上に説明したような紫外線センサーを用いて紫外線検出測定器を作製する場合には、少なくとも、本発明の紫外線センサーと、この紫外線センサーが紫外線を検出した際に発生する信号を、少なくとも積分、増幅およびアナログデジタル変換処理する機能を備えた測定回路と、を含む構成とすることが好ましく、必要に応じて、これら以外の構成を備えていてもよい。
【0080】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
まず、本発明の紫外線センサーを用いて、バーナーにより炭化水素系のガス(n−ブタン、プロパンガス)を燃焼させた際に発生した火炎を測定した例について説明する。
図3は、本発明の紫外線センサーを用いて、火炎(OHに起因する発光を含む火炎)を測定して得られた分光感度の一例を示すグラフであり、横軸が波長(nm)を、縦軸が相対感度(a.u.)を表す。
【0082】
なお、図3に示す例では、紫外線センサーとして、図2に示した構成を有する紫外線センサー20を用いた。なお、紫外線受光素子21は、フィルター22側から順に、ITOからなる膜厚が0.2μmの透光性電極と、膜厚が0.1μmの窒化物半導体と、金からなる膜厚が0.1μmの電極が形成されたものである。また、紫外線受光素子21に用いた窒化物半導体は、その組成が、Al0.1Ga0.9Nからなるものである。
【0083】
また、フィルター22は、315nmにおける透過率が50%となるように設計されている朝日分光製の干渉フィルターを用いた。
【0084】
図3からわかるように、波長360nmの量子効率は波長306nmの1/100以下であることがわかる。また、波長306nmにおける量子効率は5%であった。
【0085】
なお、量子効率h(入射光子1つあたりの出力電子数)は、ある波長(λ)において、入射光量Pを紫外線受光素子に入射したとき、紫外線受光素子からの出力電流がIpであるとした際に、下式(1)に基いて求めた。
・式(1) h=(Ip/e)(P/(h/λ))
なお、式(1)においてeは電荷を表し、hはプランク定数を表す。
【0086】
−OHの発光を伴うバーナーの火炎の分光放射照度−
なお、図3に示した分光感度の測定に用いた火炎は、図4に示すような分光放射照度を有するものである。
図4は、図3に示した分光感度の測定に用いた火炎の分光放射照度について示したグラフであり、図3中、横軸が波長(nm)、縦軸が、波長306nmで規格化した照度(強度)を示す。また、点線で示されるスペクトルは、他の光源が無い状態でバーナーの炎から放出される光のみを測定した場合のスペクトルであり、実線で示されるスペクトルは、蛍光灯下でバーナーの炎から放出される光を測定した場合のスペクトルである。
【0087】
図4からわかるように炎から放出される光は、OHの発光に起因する306nmが一番強い。一方、蛍光灯の光はこの炎から放出される光(図4中の点線のスペクトル)の迷光となり、波長306nmのやや長波長側の領域には蛍光灯に使用される水銀に起因する波長365nm、404nmおよび436nmの強く鋭い迷光(ピーク)が観察されていることがわかる。
しかしながら、図3に示される結果からわかるように、本発明の紫外線センサーを用いれば、図4に示されるような迷光となる波長域の光を除いて、OHの発光に起因する波長306nmの紫外線を選択的に検出できていることがわかる。
【0088】
次に、図3で用いた本発明の紫外線センサーのSN比について検討した結果について説明する。
図5は、図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、常温(約20℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
図5中、横軸は時間(sec)、縦軸は、バーナーに点火してOHの発光を観測した時の紫外線センサーから検出される電流値を1とした時の相対電流値である。また、区間NFは、バーナーに点火していない状態を、区間Fはバーナーに点火した状態を示す。さらに、図5中の区間NFにおける相対電流値の変化が明確に確認できるように拡大された拡大図中に示される区間ONは、区間NFにおいて蛍光灯を点灯した状態を、区間OFFは蛍光灯をOFFにした状態を示す。
【0089】
図5からわかるように、炎からのOHの発光を検出している場合(区間F)の相対電流値は1である。一方、バーナーを点火しない状態(区間NF)において、蛍光灯を点灯した時(区間ON)の相対電流値は約0.008であり、消灯した時(区間OFF)の相対電流値はほぼ0となっている。
したがって、迷光である蛍光灯に対するOHの発光の信号強度の比は125倍であり、本発明の紫外線センサーでは、極めて良好なSN比が得られていることがわかる。
【0090】
一方、図6は、図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、高温(約150℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
図6中、横軸は時間(sec)、左側の縦軸は、バーナーに点火してOHの発光を観測した時の紫外線センサーから検出される電流値を1とした時の相対電流値、右側の縦軸は、紫外線センサーの温度(℃)、実線が相対電流値、破線が紫外線センサーの温度を示している。また、区間NFは、蛍光灯の点灯下にてバーナーに点火していない状態を、区間Fはバーナーに点火した状態を示す。
【0091】
図6からわかるように、炎からのOHの発光を検出している場合(区間F)の相対電流値は1である。一方、蛍光灯の点灯下にてバーナーを点火しない状態(区間NF)の相対電流値は約0.02である。
したがって、紫外線センサーが100℃以上の高温環境下に放置された状態で測定しても、迷光である蛍光灯に対するOHの発光の信号強度の比は50倍であり、本発明の紫外線センサーでは、100℃以上の高温環境下においても極めて良好なSN比が得られていることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、高感度でSN比が良く、高温環境下でも利用でき、火炎等のOHに起因する発光を含む紫外線の検出に適した紫外線センサー、および、これを用いた紫外線検出測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外線センサーを構成する窒化物半導体の作製に用いられる成膜装置の構成例を示す概略模式図である。
【図2】本発明の紫外線センサーの構成の一例について示した模式断面図である。
【図3】本発明の紫外線センサーを用いて、火炎(OHに起因する発光を含む火炎)を測定して得られた分光感度の一例を示すグラフである。
【図4】図3に示した分光感度の測定に用いた火炎の分光放射照度について示したグラフである。
【図5】図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、常温(約20℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
【図6】図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、高温(約150℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
【符号の説明】
1 真空に排気しうる容器
2 排気口
3 基板ホルダー
4 基板加熱用のヒーター
5,6 石英管
7 高周波コイル
8 マイクロ導波管
9、10、11、12 ガス導入管
20 紫外線センサー
21 紫外線受光素子
22 フィルター
23 同軸ケーブル
24 受光窓
25 同軸ケーブル
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器に関するものであり、火炎から放射される紫外線や、OHの発光に起因する紫外線の検出に好適な紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火炎の検出は、家庭用のコンロや給湯機から、大型のボイラーや工業炉などで行われている。この検出に用いられるセンサーは様々なものがあり、その用途によって使い分けられている(例えば、非特許文献1参照)。
安価な火炎センサーとしては熱電対やフレームイオンディテクターが挙げられる。熱電対は火炎から発せられる熱を検出するものであり、フレームイオンディテクターは火炎内の電流量を測定するものである。これらは安価で比較的寿命も長いため主に民生用に使用されているが次のような欠点もある。
【0003】
例えば、熱電対は周囲の熱の応答性に左右されるため、応答速度が遅くなる。また、火炎が消えても周りに熱容量の大きい物質があれば、この物質の温度が下がるまで火炎が消えたものとして検出できない。
また、フレームイオンディテクターは火炎内にセンサーを挿入し電流を測定するため、火炎が風などで揺らいだ時に変動が大きくなる。また高温で使用される工業炉などでは高温のためディテクターが壊れてしまうため測定に用いることができない。
【0004】
高価な火炎センサーとしては光電管を用いて、火炎の紫外域の発光を測定するものが挙げられる。この火炎センサーは火炎の位置から離れたところで測定する事が出来るため、高温炉の測定にも使用可能である。ただし使用温度が摂氏百数十度と耐熱性に限界があるため、冷却する必要がある。また光電管は一般的に大きく高価であることに加え、寿命が数年と短いために、民生用として使用することは出来ない。
【0005】
近年、火炎の紫外域の発光を測定する新しいセンサーとして太陽光に含まれる紫外線に感度を持たないいわゆるソーラーブラインド型の半導体受光素子を用いることが提案されている。例えば、組成がInxAlyGa1−x−yNからなる半導体受光素子とフィルターとを用い、波長が300nmより短波長側の光を感知し、300nmより長波長側は感知しない火炎センサーが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この技術によれば半導体に含まれる3族元素の組成を調整して、波長300nmより短波長域の光に対して主に感度を有し、且つ、感度の極大点を持つ受光器を用いている。しかしながら、波長300nmよりも長波長側の可視光領域に、半導体の結合欠陥に起因する感度領域があり、太陽光などの強い可視光に対しては、感知してしまう。
【0007】
このため、SN比を改善するために、波長300nmより長波長側をフィルターでカットすることが提案されている。この方法であれば、太陽光の紫外線への応答性は低くなるが、波長280nmよりも短波長側の火炎による紫外線の感度が非常に弱くなり、SN比が悪くなるという欠点があった。
このように、現状の火炎センサーは価格、性能、耐久性といった点でどれも欠点があり、状況に応じて使い分ける必要があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−153483号公報
【非特許文献1】
応用物理 第68号 第7号 805
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。即ち、本発明は、高感度でSN比が良く、高温環境下でも利用でき、火炎等のOHに起因する発光を含む紫外線の検出に適した紫外線センサー、および、これを用いた紫外線検出測定器を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、従来の技術について更に検討した。
まず、特許文献1に記載されているような火炎を検出するために用いられていた従来の紫外線検出センサーは、蛍光灯や太陽の光の影響を受けることなく、火炎から放出される紫外線を高いSN比で検出できるように、300nmよりも短波長側の紫外線を検出対象として構成されていた。
このような構成は、蛍光灯や太陽の光から放射される短波長域の紫外線の波長域と、火炎から放射される紫外線の波長域とを比較した際に、まず、両者が実質的に殆ど重なり合わない領域を前提として、火炎から放射される紫外線の強度が強い波長域(約280nm付近)を利用して火炎を測定しようとする着想に基くものである。
【0011】
これは、蛍光灯では、波長365nm、405nmおよび430nm近傍に水銀に起因する強い発光があり、また、太陽光から放射される紫外線では、290nmから315nmのUVB紫外線は微弱であるものの、315nm以上では波長の増大と共に徐々に強くなる傾向があるためである。従って、従来の火炎センサーは、火炎から放射される波長280nm近傍の紫外線を利用していた。
【0012】
一方、火炎から放射される紫外線のみを詳細に検討した場合、火炎から放射される紫外線の中でも波長306nm近傍の紫外線の強度が最も大きく、この強度は波長280nm近傍と比較すると数倍の強さである。しかしながら、この波長306nmの紫外線は、蛍光灯や太陽光等に起因する紫外線領域と重なるため、従来、火炎の測定に際しては利用されていなかった。
【0013】
本発明者らは、この事実に着目し、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線を利用して、従来よりもより高いSN比で火炎が検出できないか、火炎を測定する環境という視点から検討した。
すなわち、実際に火炎を測定する環境を考えた場合、例えば、種火のような小さい火炎であれば、紫外線センサーを火炎に近づけて用いることが多く、紫外線センサーを火災報知器のように利用する場合には、非常に強い火炎が検知対象となる。この場合、紫外線センサーに到達する火炎および迷光(蛍光灯や太陽光等)に起因する紫外線の強度比は、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線強度に対して、蛍光灯や太陽光に起因する同じ波長域の紫外線強度は相対的に非常に小さくなると考えられる。
【0014】
以上のことから、本発明者らは、紫外線センサーの構成を、火炎から放射される波長306nm近傍の紫外線に対して高い検出感度を有し、且つ、この波長よりも長波長側の紫外線や可視光線に対する感度を低く抑える構成とすることにより、火炎から放射される波長280nm近傍の紫外線を利用して紫外線を検出するよりもより高いSN比で検出できる可能性があるものと考え、以下に示す本発明を考案するに到った。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線センサーである。
【0016】
<2> 少なくとも、二つの電極および該電極に挟まれた前記半導体からなる半導体層を含む紫外線受光素子と、光学フィルターとを含むことを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0017】
<3> 火炎から放射される紫外線を検出することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0018】
<4> 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする<3>に記載の紫外線センサーである。
【0019】
<5> 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0020】
<6> 前記半導体が水素を含む多結晶からなることを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0021】
<7> 前記光学フィルターが、波長365nm、405nmおよび430nm近傍の水銀の輝線を遮断することを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0022】
<8> 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことができることを特徴とする<1>に記載の紫外線センサーである。
【0023】
<9> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用い紫外線センサーを利用して紫外線の測定を行う紫外線測定方法において、
前記紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線測定方法である。
【0024】
<10> 前記紫外線が、火炎から放射された紫外線であることを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0025】
<11> 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする<10>に記載の紫外線測定方法である。
【0026】
<12> 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0027】
<13> 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことを特徴とする<9>に記載の紫外線測定方法である。
【0028】
<14> 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーと、該紫外線センサーが紫外線を検出した際に発生する信号を、少なくとも積分、増幅およびアナログデジタル変換処理する機能を備えた測定回路と、を含む紫外線検出測定器において、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線検出測定器である。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする。
【0030】
なお、波長306nmの量子効率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。また、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/50以下であることが好ましく、波長360nm以上の長波長域において実質的に感度を有さないことがより好ましい。
波長306nmの量子効率が1%未満の場合には、火炎等から放射される紫外線自体の検出ができなくなる。また、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10を超える場合には、蛍光灯や太陽光の存在下で、火炎等から放射される紫外線を検出しようとしても、十分なSN比を得ることができない。
【0031】
なお、波長に対する量子効率のプロファイルは上記した条件を満たすものであれば特に限定されないが、波長306nmから波長360nmの範囲内において、波長が大きくなるに従い量子効率が単調あるいは急激に低下することが好ましく、波長306nm近傍における量子効率が極大値を取ることが更に好ましい。
【0032】
本発明の紫外線センサーは、その検出対象となる紫外線の分光特性は特に限定されるものではないが、OHの発光に起因する波長306nm付近に強い発光ピークを有する火炎から放射される紫外線の検出に好適に用いられる。また、火炎から放射される紫外線以外にも、OHの発光に起因する波長306nm付近の発光ピークを有する光源から放射される紫外線の検出にも好適に用いることができる。
【0033】
なお、本発明において、「火炎」とは、可燃性物質が燃焼(酸化)した際に発生する炎を意味する。この可燃性物質としては、水素を含む物質であれば特に限定されず、例えば、都市ガス等の気体状のものや、重油、ガソリン等の液体状のもの、蝋燭や可燃性廃棄物等の固体状のもの等が挙げられる。また、これらの可燃性物質を燃焼させる手段としては特に限定されず、例えば、通常のガスバーナやライター、家庭用のガス器具、ボイラーや大型の燃焼炉等が挙げられる。
【0034】
なお、可燃性物質は、水素を含むため、この可燃性物質が燃焼した場合、その火炎中にOH発光が見られる。このOHの燃焼に起因する発光は波長306nm付近に観測されるものである。
【0035】
一方、火炎からの紫外線を測定する場合、蛍光灯や太陽光から放射される紫外線が、ノイズとなる場合がある。しかしながら、本発明の紫外線センサーは、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下に抑えられるため、上記したような蛍光灯や太陽光から放射される紫外線の影響を殆ど受けることなく、火炎から放出される紫外線を効率的に検出することができる。
【0036】
また、本発明の紫外線センサーは、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いているために、紫外線センサーが100℃を超える環境下においても、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下となるような状態で火炎等から放射される紫外線を測定することができる。このため、火炎に紫外線センサーを近づけて測定しても、熱による感度の低下やSN比の劣化等が無く、常温と同様に正確に紫外線を測定することができる。
【0037】
なお、本発明の紫外線センサーの光学的な面での特徴は、既述したように、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であること(特性▲1▼)、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であること(特性▲2▼)、以上の2つである。
【0038】
以上の2つの特性を達成する手段は特に限定されず、紫外線センサーに用いられる半導体のみにより達成することができ、あるいは、この半導体と組み合わせて用いられるその他の部材との組合せにより達成することもできる。例えば、紫外線センサーが、二つの電極および該電極に挟まれた半導体からなる半導体層を含む紫外線受光素子や、この紫外線受光素子に光学フィルターも組み合わせたような構成からなる場合には、半導体層を構成する材料等の他にも、電極を構成する材料や厚み、使用する光学フィルター等を選択することにより上記した2つの特性を達成することができる。
以下に、これら2つの特性を達成するための具体的な手段も含めて、本発明の紫外線センサーを、紫外線受光素子(半導体および電極等)と、光学フィルターとに大きく分けて詳細に説明する。
【0039】
<紫外線受光素子>
本発明の紫外線センサーは、三族元素と窒素原子とを含む半導体(以下、「窒化物半導体」と略す場合がある)を用いたものであれば特に限定されないが、この窒化物半導体からなる窒化物半導体層が二つの電極に挟まれた紫外線受光素子を含んでいることが好ましく、必要に応じて、この紫外線受光素子に光学フィルターを組み合わせることもできる。
紫外線受光素子は、窒化物半導体層と、この窒化物半導体層を挟むようにして設けられた2つの電極とを有するものが好適に用いられるが、例えば、基板の上に電極、窒化物半導体層、電極をこの順に設けた構成であってもよく、導電性基板の上に、窒化物半導体層、電極をこの順に設けた構成であってもよい。以下に、紫外線受光素子を構成する各部について詳細に説明する。
【0040】
−窒化物半導体(層)−
本発明に用いられる窒化物半導体は、三族元素と窒素原子とを含むものであれば特に限定されないが、本発明の紫外線センサーに用いられる場合に必要となる2つの特性(既述した特性▲1▼および特性▲2▼)を達成するためには、以下に説明するような特徴を有していることが好ましい。
まず、三族元素としては、Al,Ga,Inが挙げられ、窒化物半導体中には、これらの元素の少なくとも一つ以上の元素が含まれていればよい。
【0041】
本発明に用いられる窒化物半導体の結晶性は特に限定されず、非晶質であってもよく、微結晶相からなっていてもよく、微結晶相および非晶質相の混合状態であっても良く、多結晶でもよく、単結晶であっても良い。
結晶系は立方晶あるいは6方晶系のいずれか一つであっても複数の結晶系が混合された状態でもよい。微結晶の大きさは5nmから5μmであり、X線回折や電子線回折および断面の電子顕微鏡写真を用いた形状測定などによって測定できることができる。また柱状成長したものでも良いし、X線回折スペクトルで単一ピークであり、結晶面方位が高度に配向した膜でも良いし、また単結晶でも良い。
【0042】
窒化物半導体が非単結晶の場合(特に多結晶体の場合)には、この窒化物半導体は水素原子を含むことが好ましい。この場合、バンドギャップ内に存在する欠陥準位を不活性化することができるため、欠陥準位に起因する波長306nmよりも長波長域の可視光領域に発生する感度を抑えたり、無くすことができる。
なお、窒化物半導体中に含まれる水素原子は0.5at%〜50at%の範囲内で含まれていることが好ましい。また一配位のハロゲン元素が含まれていても良い。
【0043】
この窒化物半導体に含まれる水素が0.5原子%未満では、結晶粒界での結合欠陥とあるいは非晶質相内部での結合欠陥や未結合手を水素との結合によって無くし、バンド内に形成する欠陥準位を不活性化するのに不十分であり、結合欠陥や構造欠陥が増大し、暗抵抗が低下し光感度がなくなるため、この窒化物半導体を用いて紫外線センサーを作製しても実用的な紫外線センサーとして機能することができない場合がある。
【0044】
これに対し、窒化物半導体に含まれる水素原子が50原子%をこえると、水素が三族元素及び窒素原子に2つ以上結合する確率が増え、これらの元素が3次元構造を保てず、2次元および鎖状のネットワークを形成するようになり、とくに結晶粒界でボイドを多量に発生するため結果としてバンドギャップ内に新たな準位を形成し、電気的な特性が劣化すると共に硬度などの機械的性質が低下する場合がある。さらに窒化物半導体が酸化されやすくなり、結果として窒化物半導体中に不純物欠陥が多量に発生することとになり、良好な光電変換特性が得られなくなる。
【0045】
また、窒化物半導体中に含まれる水素原子が50原子%をこえると、電気的特性を制御するためにドーパントを添加したような場合において、このドーパントが水素原子により不活性化されるため、結果として電気的に活性な非単結晶の窒化物半導体が得られない。
なお、窒化物半導体中に含まれる水素量についてはハイドジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することができる。また加熱による水素放出量の測定あるいはIRスペクトルの測定によっても推定することができる。また、これらの水素結合状態は赤外吸収スペクトルによって容易に測定することできる。
【0046】
窒化物半導体中に含まれる三族元素とチッ素原子との原子数比は、0.5:1.0〜1:0.5の範囲内が好ましい。原子数比が0.5:1.0以下の場合,あるいは、1:0.5以上の場合では三族元素とチッ素原子との結合において四面体型を取る部分が少なくなり欠陥が多くなり良好な窒化物半導体として機能しなくなる場合がある。
【0047】
窒化物半導体のバンドギャップは、窒化物半導体に含まれる三族元素が2種以上である場合、この混合比を変えることによって所望の値に調整することができる。
例えば、3.2〜3.5eVのバンドギャップ(約420nm〜300nmの長波長吸収端に相当)を有するGaN:Hをベース組成として、この組成にAlを加えることによって3.5〜6.5eVのバンドギャップ(300nm〜180nmの長波長吸収端に相当)にまで変化させることができる。また、前記ベース組成にAlとInとを加えることによってもバンドギャップを調整することができる。
【0048】
窒化物半導体中に含まれる各元素組成はX線光電子分光(XPS)、エレクトロンマイクロプローブ、ラザフォードバックスキャタリング(RBS)、二次イオン質量分析計等の方法で測定することが出来る。
【0049】
また、本発明に用いられる窒化物半導体は、p,n制御のために元素(ドーパント)をドープすることができる。n型用の元素としてはIa族のLi,Ib族のCu,Ag,Au,IIa族のMg,IIb族のZn,IVa族のSi,Ge,Sn,Pb,VIa族のS,Se,Teを用いることができる。
p型用の元素としてはIa族のLi,Na,K,Ib族のCu,Ag,Au,IIa族のBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra,IIb族のZn,Cd,Hg,IVa族のC,Si,Ge,Sn,Pb,VIa族のS,Se,Te、VIb族のCr,Mo,W,VIIIa族のFe,Co,Niなどを用いることができる。
【0050】
本発明に用いられる窒化物半導体はアンドープの場合は弱いn型であり、光感度を得るためにショットキーバリアを形成したり、pn接合を形成したりして、内部に電界を形成することができる。また内部の空乏層を広げるためにi型とすることもできる。このような観点から用いられるドーパントとしては、特に、Be,Mg,Ca,Zn,Srが好ましい。
【0051】
ドーパントを窒化物半導体にドーピングする方法としては熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することができる。
また、ドーピングの際に用いられる原料としては、n型用としてはSiH4,Si2H6,GeH4,GeF4,SnH4等を、また、i型用およびp型用としてはBeH2,BeCl2,BeCl4,シクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等をガス状態で使用することができる。
【0052】
−半導体の作製方法−
次に本発明に用いられれる窒化物半導体の作製方法の具体例を図面を用いて説明する。図1は、本発明の紫外線センサーに用いらる窒化物半導体の作製に使用する成膜装置の構成例を示す概略模式図である。
図1において、1は真空に排気しうる容器、2は排気口、3は基板ホルダー、4は基板加熱用のヒーター、5,6は容器1に接続された石英管であり、それぞれガス導入管9,10に連通している。また、石英管5にはガス導入管11に接続され、石英管6にはガス導入管12が接続されている。
【0053】
この成膜装置においては、チッ素元素源として、例えば、N2を用いガス導入管9から石英管5に導入する。マグネトロンを用いたマイクロ波発振器(図示せず)に接続されたマイクロ導波管8に2.45GHzのマイクロ波が供給され石英管5内に放電を発生させる。別のガス導入口10から、例えばH2を石英管6に導入する。高周波発振器(図示せず)から高周波コイル7に13.56MHzの高周波を供給し、石英管6内に放電を発生させる。放電空間の下流側よりトリメチルガリウムをガス導入管12より導入することによって基板上に窒化物半導体を成膜することができる。
【0054】
窒化物半導体の結晶性(例えば、非晶質、微結晶、多結晶、単結晶の状態や、多結晶の場合の結晶の配向性等)は基板の種類、基板温度,ガスの流量圧力、放電条件を制御することにより調整することができる。この場合の基板温度は100℃〜600℃の範囲内とすることが好ましい。
基板温度が高い場合および/または三族元素を含む原料ガスの流量が少ない場合には微結晶や単結晶状になりやすい。基板温度が300℃より低い場合には三族元素原料ガスの流量が少ない場合に結晶性となり、また基板温度が300℃より高い場合には低温条件よりも三族元素原料ガス(例えばトリメチルガリウム等)の流量が多い場合でも結晶性となりやすい。また、例えばH2放電を行った場合には、これを行なわないよりも結晶化を進めることができる。三族元素原料ガスとしてはトリメチルガリウムの代わりにインジウム、アルミニウムを含む有機金属化合物を用いることもできるし、また、2種以上の原料ガスを混合することもできる。また、これらの有機金属化合物は、ガス導入管11から別々に導入しても良い。
【0055】
また、C,Si,Ge,Snから選ばれた少なくとも一つ以上の元素を含むガス、あるいはBe,Mg,Ca,Zn,Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素を含むガスを放電空間の下流側(ガス導入管11又はガス導入管12)から導入することによってn型、p型等任意の伝導型の非晶質あるいは微結晶の窒化物半導体を得ることができる。Cを含むガスとしては、条件によっては有機金属化合物に含まれる炭素を使用してもよい。
【0056】
上述のような装置において放電エネルギーにより形成される活性チッ素あるいは活性水素を独立に制御してもよいし、NH3のようなチッ素と水素原子を同時に含むガスを用いてもよい。さらにH2を加えてもよい。また、有機金属化合物から活性水素が遊離生成する条件を用いることもできる。このようにすることによって、基板上には活性化された三族元素原子、チッ素原子が制御された状態で存在し、かつ水素原子がメチル基やエチル基をメタンやエタン等の不活性分子にするために低温にも拘わらず、炭素が入らず、膜欠陥が抑えられた非晶質あるいは結晶性が生成できる。またプラズマCVD装置を用いてもよい。
【0057】
上述の装置においてプラズマを活性化する手段として、高周波発振器、マイクロ波発振器、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式であっても良いし、これらの一つを用いても良いし、二つ以上を用いてもよい。また、二つ共マイクロ波発振器であっても良いし、2つ共高周波発振器で有っても良い。また高周波放電の場合、誘導型でも容量型でも良い。また2つ共エレクトロンサイクロトロン共鳴方式を用いても良い。
異なる活性化手段(励起手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要があり、放電内と成膜部(容器1内)に圧力差を設けても良い。また同一圧力で行う場合、異なる活性化手段(励起手段)、例えば、マイクロ波と高周波放電を用いると励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質制御に有効である。
【0058】
なお、窒化物半導体の作製に際して用いる原料としては、Al,Ga,Inのなかから選ばれる一つ以上の元素を含む有機金属化合物を用いることができる。これらの有機金属化合物としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、ターシャリーブチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、ターシャリーブチルインジウムなどの液体や固体を気化して単独にあるいはキャリアガスでバブリングすることによって混合状態で使用することができる。キャリアガスとしては水素,N2,メタン,エタンなどの炭化水素、CF4,C2F6などのハロゲン化炭素などを用いることができる。
【0059】
チッ素原料としてはN2,NH3,NF3,N2H4、メチルヒドラジンなどの気体、液体を気化あるいはキャリアガスでバブリングすることによって使用することができる。
【0060】
本発明の紫外線センサーに用いられる窒化物半導体は、上記に説明した以外の方法を利用しても作製することができ、図1に示す例のみに限定されるものではない。例えば、反応性蒸着法やイオンプレーイング、リアクティブスパッターなど少なくとも水素が活性化された雰囲気で窒化物半導体を作製することも可能である。
【0061】
−基板および電極−
紫外線受光素子は、既述したように半導体以外にも電極や基板、導電性基板等を組み合わせて構成されることが好ましいが、以下にこれらの部材について詳細に説明する。
【0062】
基板としては導電性でも絶縁性でも良く、結晶あるいは非晶質でも良い。導電性基板としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、クロム等の金属及びその合金結晶、Si,GaAs,GaP,GaN,SiC,ZnOなどの半導体を挙げることができる。
また、基板表面に導電化処理を施した絶縁性基板を使用することもできる。絶縁性基板としては、高分子フィルム、ガラス、石英、セラミック等を挙げることができる。導電化処理は、上記の金属又は金、銀、銅等を蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法などにより成膜して行う。
【0063】
なお、半導体層への光の入射が、少なくとも基板を介して行われる場合には、この基板は透光性を有することが好ましい。
なお、本発明において「透光性」とは、少なくとも波長306nmの紫外線の透過率が10%以上であることを意味し、この透過率は90%以上であることがより好ましい。
【0064】
透光性を有する基板としては、ガラス、石英、サファイア、MgO,LiF,CaF2等の透明な無機材料、また、弗素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ等の透明な有機樹脂のフィルムまたは板状体、さらにまた、オプチカルファイバー、セルフォック光学プレート等が使用できる。波長306nmも含め330nm以下の広い範囲の紫外線を測定する場合には石英、サファイア、MgO,LiF,CaF2等が好ましい。
【0065】
電極としては、公知の導電性材料を用いることができるが、半導体層への光の入射が、少なくとも電極を介して行われる場合には、この電極は透光性を有することが好ましい。
透光性を有する電極としては、ITO、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を用いることができ、これらの材料からなる電極は、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法により形成したものが利用できる。また、Al,Ni,Au等の金属を蒸着やスパッタリングにより透光性が確保できる程度に薄く形成した電極を用いることもでき、本発明においては蒸着により作製した透光性の金属電極が好適に用いられる。
【0066】
<光学フィルター>
本発明に用いられる窒化物半導体は、その構成を選択することにより窒化物半導体自体でも、既述したような2つの特性を同時に達成することも可能であるが、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下にすることができない場合もある。このような場合には光学フィルターを併用することが好ましい。
【0067】
使用する光学フィルターは、紫外線受光素子を構成する窒化物半導体の波長306nmを超える長波長域における分光感度特性と、紫外線を測定する環境とを考慮して選択することができるが、波長306nmの紫外線に対しては透光性を有していることが必要である。
【0068】
紫外線受光素子を構成する窒化物半導体が波長306nmを超える長波長域に感度を有する場合には、少なくとも感度を有する波長域の光を遮断するような光学フィルターを用いることが好ましい。
但し、本発明において「遮断」とは、光学フィルターを用いて紫外線センサーを作製した場合において、波長360nm以上の長波長域の量子効率が波長306nmの量子効率の1/10以下となるように、ある波長における透過率が抑制されていることを意味する。
【0069】
紫外線を測定する環境に関しては、実質的には蛍光灯の光や、太陽の光が問題となるため、これらを考慮して光学フィルターを選択することが好ましい。
例えば、蛍光灯は、波長365nm、405nmおよび430nm近傍に水銀に起因する強い輝線を有するために、少なくともこれら3つの波長域の光を遮断する光学フィルターが好ましく用いられる。
また、太陽光は、290nmから315nmのUVB紫外線が微弱に存在するものの、実質的に問題となる波長域は315nm以上の強い強度を有する紫外域および可視域の光であり、315nm以上の波長域(少なくとも紫外域である波長315nm〜400nm程度)を遮断する光学フィルターが好ましく用いられる。
【0070】
なお、太陽光の直射を受ける場所で火炎等から放射される紫外線を測定する場合には、太陽光の紫外線センサー受光部への直射を防止するために、紫外線センサーを何らかの覆いなどで囲うことが好適である。
【0071】
用いることのできる光学フィルターとしては、上記したような条件を満たすものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、短波長透過フィルターや干渉フィルター、また、紫外線透過性の誘電体多層膜を組み合わせた光学フィルターが用いることができる。
【0072】
なお、紫外線透過性の誘電体多層膜を組み合わせた光学フィルターは多重反射を利用したものであるため多層膜中の光路長により、干渉波長が異なる。このため垂直入射と斜入射では透過波長が異なりこのため垂直入射に対して、透過波長と不透過波長域を設計したものでも、斜めからの入射に対してはこれらの波長域が大きくズレてしまう。
例えば、波長320nm以下の短波長に透過域をもうけ、波長320〜450nmの範囲内までを不透過領域とし、波長450nm以上を透過域とする光学フィルターでは、この光学フィルターに対して光を45度で入射させた場合に不透過域が280〜380nmの範囲内となり、波長380nm以上に透過域が発生する。
【0073】
従って、このような入射角依存性を有する光学フィルターを用いる場合には、光入射の方向性を均一化する手段を設けることが好ましい。この手段としては紫外線受光素子に密着して設けた光学フィルターの上に、斜めから入射してくる光の方向性を均一化あるいは垂直入射に変更する手段を設ける。
【0074】
その手段としては光散乱物質や拡散物質としては、少なくとも波長306nmの紫外線透過し且つ白濁しているフィルム、例えばテフロン(R)や乳白色ガラスなどが用いられる。
また、光学フィルターの光が入射する側に基板を設ける場合には、この基板表面を粗面化して、斜めから入射する光を拡散させて、その方向性を均一化することもできる。例えば、基板として石英基板を用いる場合には、この石英基板をフッ化水素でエッチングしたり、サンドブラストなどの機械的手段を用いて粗面化してもよい。同様にして、光学フィルターの表面を粗面化してもよいし、別の粗面化した板材を、光学フィルターの光が入射する側に重ねて用いても良い。
【0075】
また、光学フィルターの光が入射する側に多孔質の透過材料を積層しても良い、多孔質材料としては陽極酸化膜のAl基材をエッチングし自立した構造のものを用いることが出来るし、機械的に穿孔したものをもちいることもできる。厚さと孔径の関係は2:1以上が望ましい。
また、ファイバー状のものを束ねたもので方向性を均一化する手段としても良いし、直線方向に集光するセルフォック板などでも良い。
なお、光の入射方向が一定の方向からなるように、例えば窓付きの筐体中に紫外線センサーを設ける場合には紫外線受光素子の光が入射する側の面に光学フィルターを設けるだけでも良い。
【0076】
<紫外線センサーの構成例>
次に、以上に説明したような窒化物半導体や光学フィルター等を用いた本発明の紫外線センサーの構成例について説明する。
図2は、本発明の紫外線センサーの構成の一例について示した模式断面図である。図2中、20は紫外線センサー、21は紫外線受光素子、22はフィルター、23は筐体、24は受光窓、25は同軸ケーブルを表す。
図2に示す紫外線センサー20は、受光窓24を設けた筐体23の内側に、紫外線受光素子21が配置されている。紫外線受光素子21の受光窓24側には、受光窓24から入射する光を受光できるようにフィルター22が設けられており、また、紫外線受光素子21は、受光した際に発生する信号を処理するために、筐体23の外部に設けられた不図示の測定回路(少なくとも積分、増幅、および、アナログデジタル変換機能を有する回路)と同軸ケーブル24により接続されている。
【0077】
筐体23は、紫外線受光素子1を保護すると共に、迷光が入射するのを防止し、且つ、所定の方向からのみ受光できるように受光窓24を設けた構成を有するもので、例えば、ステンレスなどで構成される。
筐体23内部に配置される紫外線受光素子21は、既述したような窒化物半導体を用いたものであれば特に限定されないが、フィルター22を通過した光が窒化物半導体に入射でき、その際に発生する電流を同軸ケーブル24に伝達できるようにするために、例えば、フィルター22側から紫外線を透過する透光性電極、窒化物半導体(層)、電極が順に設けられたような構成からなる。
【0078】
フィルター22は、受光窓24から入射した光の内、少なくとも波長306nmの紫外線を透過し、且つ、ノイズとなる波長域の光を遮断するものであればその具体的な構成は特定されないが、例えば、既成のフィルターを1枚ないし複数枚組み合わせたもの等が利用できる。
【0079】
<紫外線検出測定器>
なお、以上に説明したような紫外線センサーを用いて紫外線検出測定器を作製する場合には、少なくとも、本発明の紫外線センサーと、この紫外線センサーが紫外線を検出した際に発生する信号を、少なくとも積分、増幅およびアナログデジタル変換処理する機能を備えた測定回路と、を含む構成とすることが好ましく、必要に応じて、これら以外の構成を備えていてもよい。
【0080】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
まず、本発明の紫外線センサーを用いて、バーナーにより炭化水素系のガス(n−ブタン、プロパンガス)を燃焼させた際に発生した火炎を測定した例について説明する。
図3は、本発明の紫外線センサーを用いて、火炎(OHに起因する発光を含む火炎)を測定して得られた分光感度の一例を示すグラフであり、横軸が波長(nm)を、縦軸が相対感度(a.u.)を表す。
【0082】
なお、図3に示す例では、紫外線センサーとして、図2に示した構成を有する紫外線センサー20を用いた。なお、紫外線受光素子21は、フィルター22側から順に、ITOからなる膜厚が0.2μmの透光性電極と、膜厚が0.1μmの窒化物半導体と、金からなる膜厚が0.1μmの電極が形成されたものである。また、紫外線受光素子21に用いた窒化物半導体は、その組成が、Al0.1Ga0.9Nからなるものである。
【0083】
また、フィルター22は、315nmにおける透過率が50%となるように設計されている朝日分光製の干渉フィルターを用いた。
【0084】
図3からわかるように、波長360nmの量子効率は波長306nmの1/100以下であることがわかる。また、波長306nmにおける量子効率は5%であった。
【0085】
なお、量子効率h(入射光子1つあたりの出力電子数)は、ある波長(λ)において、入射光量Pを紫外線受光素子に入射したとき、紫外線受光素子からの出力電流がIpであるとした際に、下式(1)に基いて求めた。
・式(1) h=(Ip/e)(P/(h/λ))
なお、式(1)においてeは電荷を表し、hはプランク定数を表す。
【0086】
−OHの発光を伴うバーナーの火炎の分光放射照度−
なお、図3に示した分光感度の測定に用いた火炎は、図4に示すような分光放射照度を有するものである。
図4は、図3に示した分光感度の測定に用いた火炎の分光放射照度について示したグラフであり、図3中、横軸が波長(nm)、縦軸が、波長306nmで規格化した照度(強度)を示す。また、点線で示されるスペクトルは、他の光源が無い状態でバーナーの炎から放出される光のみを測定した場合のスペクトルであり、実線で示されるスペクトルは、蛍光灯下でバーナーの炎から放出される光を測定した場合のスペクトルである。
【0087】
図4からわかるように炎から放出される光は、OHの発光に起因する306nmが一番強い。一方、蛍光灯の光はこの炎から放出される光(図4中の点線のスペクトル)の迷光となり、波長306nmのやや長波長側の領域には蛍光灯に使用される水銀に起因する波長365nm、404nmおよび436nmの強く鋭い迷光(ピーク)が観察されていることがわかる。
しかしながら、図3に示される結果からわかるように、本発明の紫外線センサーを用いれば、図4に示されるような迷光となる波長域の光を除いて、OHの発光に起因する波長306nmの紫外線を選択的に検出できていることがわかる。
【0088】
次に、図3で用いた本発明の紫外線センサーのSN比について検討した結果について説明する。
図5は、図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、常温(約20℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
図5中、横軸は時間(sec)、縦軸は、バーナーに点火してOHの発光を観測した時の紫外線センサーから検出される電流値を1とした時の相対電流値である。また、区間NFは、バーナーに点火していない状態を、区間Fはバーナーに点火した状態を示す。さらに、図5中の区間NFにおける相対電流値の変化が明確に確認できるように拡大された拡大図中に示される区間ONは、区間NFにおいて蛍光灯を点灯した状態を、区間OFFは蛍光灯をOFFにした状態を示す。
【0089】
図5からわかるように、炎からのOHの発光を検出している場合(区間F)の相対電流値は1である。一方、バーナーを点火しない状態(区間NF)において、蛍光灯を点灯した時(区間ON)の相対電流値は約0.008であり、消灯した時(区間OFF)の相対電流値はほぼ0となっている。
したがって、迷光である蛍光灯に対するOHの発光の信号強度の比は125倍であり、本発明の紫外線センサーでは、極めて良好なSN比が得られていることがわかる。
【0090】
一方、図6は、図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、高温(約150℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
図6中、横軸は時間(sec)、左側の縦軸は、バーナーに点火してOHの発光を観測した時の紫外線センサーから検出される電流値を1とした時の相対電流値、右側の縦軸は、紫外線センサーの温度(℃)、実線が相対電流値、破線が紫外線センサーの温度を示している。また、区間NFは、蛍光灯の点灯下にてバーナーに点火していない状態を、区間Fはバーナーに点火した状態を示す。
【0091】
図6からわかるように、炎からのOHの発光を検出している場合(区間F)の相対電流値は1である。一方、蛍光灯の点灯下にてバーナーを点火しない状態(区間NF)の相対電流値は約0.02である。
したがって、紫外線センサーが100℃以上の高温環境下に放置された状態で測定しても、迷光である蛍光灯に対するOHの発光の信号強度の比は50倍であり、本発明の紫外線センサーでは、100℃以上の高温環境下においても極めて良好なSN比が得られていることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、高感度でSN比が良く、高温環境下でも利用でき、火炎等のOHに起因する発光を含む紫外線の検出に適した紫外線センサー、および、これを用いた紫外線検出測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外線センサーを構成する窒化物半導体の作製に用いられる成膜装置の構成例を示す概略模式図である。
【図2】本発明の紫外線センサーの構成の一例について示した模式断面図である。
【図3】本発明の紫外線センサーを用いて、火炎(OHに起因する発光を含む火炎)を測定して得られた分光感度の一例を示すグラフである。
【図4】図3に示した分光感度の測定に用いた火炎の分光放射照度について示したグラフである。
【図5】図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、常温(約20℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
【図6】図4に示す分光放射照度を測定した環境下において、高温(約150℃前後)に保たれた本発明の紫外線センサーにより、炎のOHに起因する発光を測定した際の電流値について示したグラフである。
【符号の説明】
1 真空に排気しうる容器
2 排気口
3 基板ホルダー
4 基板加熱用のヒーター
5,6 石英管
7 高周波コイル
8 マイクロ導波管
9、10、11、12 ガス導入管
20 紫外線センサー
21 紫外線受光素子
22 フィルター
23 同軸ケーブル
24 受光窓
25 同軸ケーブル
Claims (14)
- 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーにおいて、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線センサー。 - 少なくとも、二つの電極および該電極に挟まれた前記半導体からなる半導体層を含む紫外線受光素子と、光学フィルターとを含むことを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 火炎から放射される紫外線を検出することを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする請求項3に記載の紫外線センサー。
- 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 前記半導体が水素を含む多結晶からなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 前記光学フィルターが、波長365nm、405nmおよび430nm近傍の水銀の輝線を遮断することを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことができることを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサー。
- 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用い紫外線センサーを利用して紫外線の測定を行う紫外線測定方法において、
前記紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線測定方法。 - 前記紫外線が、火炎から放射された紫外線であることを特徴とする請求項9に記載の紫外線測定方法。
- 前記火炎が、水素を含む可燃性物質の燃焼により発生したものであることを特徴とする請求項10に記載の紫外線測定方法。
- 波長306nmのOHの発光により放射される紫外線を検出することを特徴とする請求項9に記載の紫外線測定方法。
- 少なくとも100℃以上の環境下において、紫外線の測定を行うことを特徴とする請求項9に記載の紫外線測定方法。
- 少なくとも、三族元素と窒素原子とを含む半導体を用いた紫外線センサーと、該紫外線センサーが紫外線を検出した際に発生する信号を、少なくとも積分、増幅およびアナログデジタル変換処理する機能を備えた測定回路と、を含む紫外線検出測定器において、
該紫外線センサーの、少なくとも波長306nmの量子効率が1%以上であり、波長360nm以上の長波長域の量子効率が前記波長306nmの量子効率の1/10以下であることを特徴とする紫外線検出測定器。
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JP2003009280A JP2004219360A (ja) | 2003-01-17 | 2003-01-17 | 紫外線センサー、これを用いた紫外線測定方法および紫外線検出計測器 |
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JP2010153745A (ja) * | 2008-12-26 | 2010-07-08 | Oki Semiconductor Co Ltd | 半導体光センサ素子およびその製造方法 |
JP2018025477A (ja) * | 2016-08-10 | 2018-02-15 | 新コスモス電機株式会社 | 水素火炎検出装置 |
CN113340412A (zh) * | 2020-02-18 | 2021-09-03 | 阿自倍尔株式会社 | 光检测系统以及放电概率算出方法 |
-
2003
- 2003-01-17 JP JP2003009280A patent/JP2004219360A/ja active Pending
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