JP2004218763A - 流体式クラッチ遮断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダとアウタシリンダを安定状態でクラッチハウジングの取付け面に取付ける。
【解決手段】インナシリンダ7は、軸方向端部にクラッチハウジング5の取付け面5aに当接する当接面34cと、当接面34cよりも取付け面5aから離れた位置にインナシリンダ7の外周面から径方向外側に突出するフランジ部16を有する。アウタシリンダ6は、その軸方向端部において周方向に並ぶ複数の位置に取付け面5aに螺着される複数の螺着部(取付脚)38と、螺着部38よりも径方向内側でかつ取付け面5aから離れた位置にフランジ嵌入凹部6fを有する。フランジ嵌入凹部6fの外周縁に形成された係止爪18が、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部16が嵌入された状態で径方向内側に折り曲げられ、フランジ部16がアウタシリンダ6側に抱き込み保持される。
【選択図】 図2
【解決手段】インナシリンダ7は、軸方向端部にクラッチハウジング5の取付け面5aに当接する当接面34cと、当接面34cよりも取付け面5aから離れた位置にインナシリンダ7の外周面から径方向外側に突出するフランジ部16を有する。アウタシリンダ6は、その軸方向端部において周方向に並ぶ複数の位置に取付け面5aに螺着される複数の螺着部(取付脚)38と、螺着部38よりも径方向内側でかつ取付け面5aから離れた位置にフランジ嵌入凹部6fを有する。フランジ嵌入凹部6fの外周縁に形成された係止爪18が、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部16が嵌入された状態で径方向内側に折り曲げられ、フランジ部16がアウタシリンダ6側に抱き込み保持される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからミッションヘの動力伝達を遮断する流体式クラッチ遮断装置に関し、詳細には、クラッチのダイヤフラムスプリングを直接押圧する位置に取付けられる圧力流体で作動する流体式クラッチ遮断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の流体式クラッチ遮断装置としては、図8および図9(図8のAの拡大図)に示す構成の装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8および図9に示す流体式クラッチ遮断装置は、クラッチハウジング105に取付けられるもので、クラッチハウジング105に対する取付け面106aを有するアウタシリンダ106と、アウタシリンダ106の内側かつクラッチ主軸101の外側に設けられ、クラッチハウジング105に対する取付け面107aを有するインナシリンダ107と、上記アウタシリンダ106及びインナシリンダ107で挟まれた空洞である環状シリンダ108と、環状シリンダ108の内部に嵌入されて流体圧によって移動する環状ピストン113と、環状ピストン113に内側端部が埋設固定されたプレート板111と、プレート板111に取付けられ、インナレース110a、アウタレース110bおよび転動体110cを有するレリーズベアリング110と、プレート板111とアウタシリンダ106との間に配置されてインナレース110aを弾性付勢する弾性付勢手段115とを備える。
【0004】
かかる構成を有する流体式クラッチ遮断装置は、クラッチマスタシリンダ(図示せず)が操作されないとき、クラッチのダイヤフラムスプリング(図示せず)の押圧力がレリーズベアリング110のインナレース110aに働き、この力がレリーズベアリング110のアウタレース110bとプレート板111とを介して環状ピストン113に作用するので、環状シリンダ108の圧油が流路118を介してクラッチマスタシリンダへ帰還するため、環状ピストン113が右方向に移動させられた状態となり、エンジンとミッションが接続される。
【0005】
ミッションを操作して変速操作をするためにクラッチマスタシリンダを操作すると、クラッチマスタシリンダからの圧油が流路118を介して環状シリンダ108に流入する。このため、環状ピストン113は、クラッチのダイヤフラムスプリングの押圧力に逆らって左方向に作動してダイヤフラムスプリングを押して、エンジンとミッションの間の動力伝達を遮断する(クラッチOFF)。クラッチによってエンジンとミッションとの間が遮断され、変速操作が終了してクラッチマスタシリンダの踏力を解除すると、前述したように環状シリンダ108内の圧油がクラッチマスタシリンダヘ還流し、環状シリンダ108が左方向に移動してエンジンとミッションを接続(クラッチIN)するように作動する。
【0006】
かかる流体式クラッチ遮断装置のクラッチハウジング105に対する取付け構造は、前記アウタシリンダ106の取付け面106aに環状突起120が形成されているとともに環状突起120の突出面に断面V字状の環状溝117が形成され、環状突起120の内周面120aにインナシリンダ107の取付けフランジ部107aの外周端が圧入固定されると共に、環状突起120の外周面120bにクラッチハウジング105の段付き部105aが嵌合された構造である。
【0007】
この取付け構造による場合には、クラッチハウジング105の段付き部105aの内側にアウタシリンダ106の環状突起120を圧入嵌合し、更に環状突起120の内側にインナシリンダ107の取付けフランジ部107aを圧入固定しているので、特許文献1の従来例(図3)に示すようにインナシリンダ(23)とアウタシリンダ(24)とをボルト(図示せず)で固定する場合に比べて、ボルトが不要となることで部品点数の減少化が図れるという利点がある。さらに、環状突起120の内周面120aにインナシリンダ107を圧入するようにしたため、断面V字状の環状溝117の空間にて、圧入による半径方向の寸法変形が吸収でき、環状突起120とクラッチハウジング105との嵌合精度を維持することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−220496号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1の図1に示される構造は、クラッチハウジングの取付け面に形成された段付き部の内側にインナシリンダ及びアウタシリンダのフランジ部を嵌め込んで固定するものであるため、前記段付き部を形成するのにきわめて高い精度での機械加工が要求されるという不都合がある。
【0010】
一方、前記特許文献1の図3に示される構造は、インナシリンダとアウタシリンダとをボルトで締結し、かつ、アウタシリンダをクラッチハウジングの取付け面にボルトで締結する構造のものであるが、同図に示される構造では具体的なボルトの配置が示されておらず、また、同構造において仮にインナシリンダとアウタシリンダとをボルトで締結できたとしても、その締結状態のまま両シリンダを安定してクラッチハウジングの取付け面に取付けることが非常に難しいという欠点がある。
【0011】
すなわち、同図に示される構造において、インナシリンダとアウタシリンダとを締結する方法としては、インナシリンダのフランジ部にボルト挿通孔を設け、アウタシリンダにねじ孔を設け、前記ボルト挿通孔に対してクラッチハウジングの取付け面の側からボルトを挿入して前記ねじ孔にねじ込むことが考えられるが、その場合、ボルトの頭部がインナシリンダのフランジ部から取付け面側に突出してしまうため、このボルト頭部が邪魔になってアウタシリンダとクラッチハウジングの取付け面との締結ができなくなってしまう。
【0012】
また、このような障害を避けるために、前記ボルトの頭部よりもさらにクラッチハウジングの取付け面に近い側にアウタシリンダの取付け面の位置をずらした場合には、当該クラッチハウジングの取付け面にアウタシリンダの取付け面しか当接せず、インナシリンダはクラッチハウジングの取付け面から浮いた状態になるため、その固定状態が不安定になるという不都合が発生する。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態で前記クラッチハウジングの取付け面に取付けることができる流体式クラッチ遮断装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の流体式クラッチ遮断装置は、クラッチハウジングの取付け面からクラッチ主軸の一部が突出するとともに、その突出したクラッチ主軸が挿通されるインナシリンダと、このインナシリンダの周囲に設けられて当該インナシリンダとの間に環状シリンダを形成するアウタシリンダとを備え、前記インナシリンダとアウタシリンダとが相互結合された状態で前記取付け面に取付けられる流体式クラッチ遮断装置であって、上記インナシリンダは、その軸方向端部に前記取付け面に当接する当接面を有するとともにこの当接面よりも前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に当該インナシリンダの外周面から径方向外側に突出するフランジ部を有し、上記アウタシリンダは、その軸方向端部において周方向に並ぶ複数の位置に上記クラッチハウジングの取付け面に螺着される複数の螺着部を有するとともに、これらの螺着部よりも径方向内側で、かつ前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に前記インナシリンダのフランジ部が前記取付け面側から嵌入されるフランジ嵌入凹部を有し、このフランジ嵌入凹部の外周縁には係止爪が形成されていて当該フランジ嵌入凹部に前記インナシリンダのフランジ部が嵌入された状態で前記係止爪が径方向内側に折り曲げられることにより当該フランジ部がアウタシリンダ側に抱き込み保持されるように構成され、かつ、その抱き込み保持状態で前記螺着部が前記クラッチハウジングの取付け面に螺着されることにより当該螺着部と前記インナシリンダの当接面の双方が前記取付け面に当接するようにこれら螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする。
【0015】
この発明による場合には、フランジ嵌入凹部にインナシリンダのフランジ部を嵌入した状態で、アウタシリンダに設けられた係止爪を径方向内側に折り曲げると、係止爪の先端側がインナシリンダのフランジ部を抱き込み保持し、これによりインナシリンダおよびアウタシリンダは一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダに設けた螺着部をクラッチハウジングに螺着することにより、インナシリンダおよびアウタシリンダは、フランジ嵌入凹部にフランジ部を嵌入した連結状態を維持してクラッチハウジングの取付け面に取付けられる。よって、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態でクラッチハウジングの取付け面に取付けることができる。
【0016】
ここで、係止爪はフランジ嵌入凹部の外周縁の全周にわたり或いは複数箇所に形成してもよい。
【0017】
本発明の請求項2の流体式クラッチ遮断装置は、請求項1記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記インナシリンダは、前記クラッチ主軸が挿通される筒状部の軸方向端部に当該筒状部の外周面から径方向外側に突出するフランジ部が形成されたシリンダ本体と、このシリンダ本体に軸方向の一端が結合され、他端に前記当接面を有するスペーサとを含むことを特徴とする。
【0018】
この発明による場合には、インナシリンダの当接面とアウタシリンダの螺着部との位置関係を精度良く調整できる。
【0019】
本発明の請求項3の流体式クラッチ遮断装置は、請求項2記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記スペーサは、その当接面と反対側の端部に前記シリンダ本体のフランジ部と略同一形状のフランジ部を有し、これらのフランジ部が重ね合わされた状態で前記係止爪により抱き込み保持されていることを特徴とする。
【0020】
この発明による場合には、係止爪を利用してシリンダ本体とスペーサの双方を保持することができる。
【0021】
本発明の請求項4の流体式クラッチ遮断装置は、請求項2または3記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記シリンダ本体の筒状部及びフランジ部は互いに略同等の厚みを有することを特徴とする。
【0022】
この発明による場合には、板材からシリンダ本体の成形を容易に行うことが可能となる。
【0023】
本発明の請求項5の流体式クラッチ遮断装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記螺着部が前記取付け面に螺着される前の状態で当該螺着部よりも前記当接面が前記取付け面側に突出するように当該螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする。
【0024】
この発明による場合には、螺着部が撓むことで、当接面をより確実に十分な圧力でクラッチハウジングの取付け面に圧接させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0026】
図1はクラッチに本発明の流体式クラッチ遮断装置を組み込んだ概略図である。
【0027】
このクラッチ80は、エンジン(図示せず)に接続してあってエンジンの回転が伝達されるフライホイール3aと、トランスミッションに接続されたクラッチ主軸2aにスプラインで連結したクラッチディスク3と、このクラッチディスク3に対向して配置してあってダイヤフラムスプリング4の弾性力による押圧力を受けるプレッシャプレート3bと、前記フライホイール3a、クラッチディスク3およびプレッシャプレート3b等の各部品を収納するクラッチハウジング5と、このクラッチハウジング5の内部に設置してあって前記クラッチ主軸2aが貫通すると共にダイヤフラムスプリング4を押圧する出力部を持つ流体式クラッチ遮断装置1とで構成される。
【0028】
上記流体式クラッチ遮断装置1は、クラッチマスタシリンダ(図示せず)に連結された配管1aを介して接続されており、クラッチマスタシリンダが操作され、それに伴い吐出された圧力流体が流体式クラッチ遮断装置1に供給されると、その出力部がダイヤフラムスプリング4を押圧する。そして、クラッチマスタシリンダの操作が解除されると、その出力部がダイヤフラムスプリング4による押圧力を受け、その内部の圧力流体をクラッチマスタシリンダに還流させる。
【0029】
上記したクラッチ80は、クラッチマスタシリンダが踏み込まれ、その吐出圧力流体が流体式クラッチ遮断装置1に供給されて、流体式クラッチ遮断装置1の出力部がダイヤフラムスプリング4の中央を押圧する。ダイヤフラムスプリング4は、その中央が押圧されると、その周辺4bが支点4aを介して中央部と反対の方向に反ることで、プレッシャプレート3bへの押圧力を解除する。このため、クラッチディスク3とフライホイール3aとの摩擦力が無くなり、エンジンとミッションとが遮断される。すなわちクラッチOFFとなる。クラッチOFFは、クラッチマスタシリンダを踏みこんでいる間保たれる。そして、このクラッチOFFにおいて、ミッションは、変速操作される。ミッションの変速操作が終了してクラッチマスタシリンダの操作を解除すると、流体式クラッチ遮断装置1の圧力流体がクラッチマスタシリンダに還流されるので、ダイヤフラムスプリング4の中央部の押し圧力が解除される。このためダイヤフラムスプリング4は、支点4aを介してその周辺4bがプレッシャプレート3bを押圧し、エンジンとミッションとが接続されるクラッチINとなるように作動する。
【0030】
次に、前記流体式クラッチ遮断装置1につき、図2〜図7に基づき説明する。図2は本実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置を示す正面断面図、図3は図2の流体式クラッチ遮断装置の下側を示す正面断面図、図4は図3の流体式クラッチ遮断装置の一部を示す正面断面図、図5は図2の流体式クラッチ遮断装置の右側を示す正面断面図、図6は図2の流体式クラッチ遮断装置の動作状態を説明するための図(正面断面図)、図7は図2の流体式クラッチ遮断装置に備わったアウタシリンダの右側面図である。なお、図7は、前記配管1aを省略して示している。
【0031】
流体式クラッチ遮断装置1は、前記クラッチハウジング5の平坦な取付け面5aに取付けられており、その取付け面5aからクラッチ主軸2aの一部が突出するとともに、その突出したクラッチ主軸2aが内側を挿通するインナシリンダ7およびインナシリンダ7の外側周囲に設けられたアウタシリンダ6で構成する環状シリンダ8と、アウタレース12がクラッチのダイヤフラムスプリング4に当接可能に配置されたレリーズベアリング10と、前記環状シリンダ8の内部に一端が嵌入されると共に他端にレリーズベアリング10のインナレース11が取付けられた環状ピストン13と、前記環状シリンダ8の内部に嵌入される前記環状ピストン13の端部に設けたシール14と、前記インナレース11とアウタシリンダ6との間に配置されてあってレリーズベアリング10をダイヤフラムスプリング4側に押圧するばね15とを有する。
【0032】
前記環状シリンダ8は、その内部に環状ピストン13が摺動自在に嵌入しており、前記配管1aを介してクラッチマスタシリンダに接続されている。したがって、クラッチマスタシリンダが操作され、その吐出圧力流体が環状シリンダ8に供給されると、環状ピストン13が図2の左方向に移動させられ、ダイヤフラムスプリング4の中央部を押圧する。なお、図2は、この環状シリンダ8にクラッチマスタシリンダの吐出圧力流体が供給され、環状ピストン13が移動してクラッチOFFの状態となっている図である。そして、環状シリンダ8の圧力流体がクラッチマスタシリンダに還流して環状ピストン13がダイヤフラムスプリング4の押圧力で押されると、図6の上半分(図6の下半分は図2と同一状態を示す)に示す状態となる。
【0033】
前記環状ピストン13は、インナシリンダ7に摺動自在に嵌入し、つまり環状シリンダ8内に嵌入し、一端(図2の右端)にシール14を備え、他端側がアウタシリンダ6の外部に突出するようになっており、他端側には、レリーズベアリング10が取付けられる。
【0034】
シール14は、図3に示すように、環状シリンダ8内に挿入してあり、インナシリンダ7とアウタシリンダ6の双方に圧接する。また、シール14は、その一端側(図3の左側)に、環状ピストン13の端部13aに設けた溝13bに嵌入して固定する鉤状をした端部14cを備えると共に、この端部14cと反対側の他端側に、環状ピストン13に圧接して摺動自在に接するリップ14aとアウタシリンダ6の内面に圧接しながら摺動するリップ14bとを有する。
【0035】
前記端部14cは、環状シリンダ8の外側内周面に対向し、最初に流体を充満するための真空引きに対してシール14が離脱しないようにするためのものである。また、リップ14aおよびリップ14bは、環状シリンダ8の内側と外側の両内周面を押圧するように予め外方に向けて突出させて、つまりリップ14a〜リップ14bまでの離隔距離を環状シリンダ8の径方向の内寸よりも大きくして形成されており、環状シリンダ8に挿入されて環状シリンダ8の内側と外側の両内周面を押圧する時に生じる初期のシール力を保持するための機能を有し、環状シリンダ8に流体圧力が作用すると、この流体圧力を受けて外側に膨らんでシール力が初期のシール力よりも高くなる機能を有する。
【0036】
アウタシリンダ6の外部に突出する環状ピストン13の他端13cには、図4(部分図)に示すように、インナシリンダ7の表面に圧接するリップ22aを有するダストスイーパ22が、環状ホルダ24により保持されている。より詳細には、環状ホルダ24に設けられた鍵24aと突起24bで保持されている。環状ホルダ24は、例えば合成樹脂からなる環状ピストン13を成形するモールド内に内装することで環状ピストン13と一体的に形成したものである。また、環状ピストン13の先端(図4の左端)に設けてあるレリーズベアリング10は、環状ホルダ24の先端部24cに係合し、断面がくの字状の環状押え金具26によりインナレース11を固定することで取付けてある。そして、このレリーズベアリング10のアウタレース12は、ダイヤフラムスプリング4に当接して常時回転するが、インナレース11は環状ピストン13に固定されたままである。したがって、エンジンの回転が環状ピストン13に影響しないようになっている。なお、インナシリンダ7の解放端側に形成した凹溝27aに嵌入してある断面円形のC型止輪27は、流体式クラッチ遮断装置1をクラッチ80から取り外したとき環状ピストン13が抜け落ちるのを防止するものである。換言すると、流体式クラッチ遮断装置1は単体で部品工場からメーカに搬送されるので、C型止輪27は流体式クラッチ遮断装置1の搬送中における安定を保つものである。
【0037】
前記レリーズベアリング10のインナレース11とアウタシリンダ6との間には、図2に示すようにばね15が設けられている。このばね15は、その一端15aが、インナレース11に嵌合する環状ホルダ28でインナレース11に保持され、ばね15の他端は、アウタシリンダ6の環状溝6bに嵌入して位置決め状態で設けられた環状ホルダ29で保持されている。また、このばね15は、アウタシリンダ6とレリーズベアリング10との間に圧縮して装着してあり、その弾力でレリーズベアリング10をダイヤフラムスプリング4側に常に押圧する。この押付け力は、レリーズベアリング10がダイヤフラムスプリング4に常時当接するのを保証する程度の軽いものである。
【0038】
前記ばね15の両端を保持する環状ホルダ28と環状ホルダ29には、図2に示すように弾力を有するブーツ20が掛け渡され、ブーツ20の一方の端部20aは環状ホルダ28の保持段部28aに、ブーツ20の他方の端部20bは環状ホルダ29の保持段部29aにそれぞれ装着され、ブーツ20は伸縮可能となっている。尚、前記環状ホルダ28は、レリーズベアリング10のインナレース11内に円筒部分28cを嵌入して固定されている。また、環状ホルダ29は、その右端のフランジ部分29bをアウタシリンダ6のシリンダ部分6cの外側に遊嵌することで取付けられている。
【0039】
図2および図5に示すように、インナシリンダ7は、インナシリンダ本体7aとスペーサ34とを有し、インナシリンダ本体7aは、その内側をクラッチ主軸2aが挿通すると共に、その外側周囲に設けられたアウタシリンダ6とで環状シリンダ8を形成する筒状部7cと、この筒状部7cにテーパ部7dで連携してあって筒状部7cの外周面から90度の角度を保って半径方向外側に突出した円リング形のフランジ部7bとを備える。また、インナシリンダ本体7aは、その全体がほぼ厚み一定に形成されたものであり、例えば板材から絞り加工等により容易に成形させ得るようになっている。
【0040】
上記スペーサ34は、厚み調整用の円リング形のもので、軸方向の一端側には、インナシリンダ本体7aのフランジ部7bに重ね合わされ、フランジ部7bと略同一形状のフランジ部34bが設けられている(図2参照)。このフランジ部34bは、クラッチハウジング5の取付け面5aから離れた位置に設けられる。スペーサ34の他端側には、クラッチハウジング5の取付け面5aに当接する当接面34cが形成され、フランジ部34bは当接面34cよりも外側に全周にわたり外方に突出し、スペーサ34の外周部は断面L字形となっていてフランジ部34bのクラッチハウジング5側に凹部34aが形成されている。
【0041】
フランジ部7bおよび34b(以下、これら両フランジ部を16と言う)は、アウタシリンダ6とクラッチハウジング5との間に挟持される。また、前記フランジ部16は、図5に示すようにアウタシリンダ6に設けられた内孔6eに連接された基礎部分6dに設けたフランジ嵌入凹部6fに嵌入される。このフランジ嵌入凹部6fは、クラッチハウジング5の取付け面5aから離れた位置に配される。フランジ嵌入凹部6fとフランジ部7bとの間には、密封用のシール部材30が設けられており、このシール部材30は環状シリンダ8を密封する機能を有する。
【0042】
アウタシリンダ6の基礎部分6dには、フランジ部16が嵌入されるフランジ嵌入凹部6fを内側に有する円筒部36が延出形成されていると共に、アウタシリンダ6をクラッチハウジング5にボルト40(図1参照)で取付けられる螺着部としての取付脚38が、アウタシリンダ6の軸方向端において周方向に並ぶように複数本、図7に示すように本実施形態では3本外方向に延出した状態で設けられている。各取付脚38には、ボルト40が挿入される穴38aが形成されており、一方、クラッチハウジング5の取付け面5aには、各穴38aに対応する数、位置でボルト螺着穴5bが形成されている(図2等参照)。なお、取付脚38の本数は、2本以上の任意の本数とすることができる。
【0043】
前記円筒部36の内周縁部には、フランジ嵌入凹部6fから直角に縦部6gが形成されており、その縦部6gの長さは、フランジ部7bの厚みとフランジ部34bの厚みを合わせた厚み寸法より若干短く設定されている。この縦部6gには、内面18bを沿わせて薄肉の係止爪18が突出形成されている。この薄肉の係止爪18は、縦部6gの全周にわたって設けてあり、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部7bとフランジ部34bを重ねて嵌入して、図5に示すように径方向内側(クラッチ主軸側)に折り曲げるようにかしめられる。このかしめは、凹部34aにより可能であって、このかしめにより、薄肉の係止爪18の先端18aは、凹部34a内に入って埋没し、これによりフランジ部7bと34bを抱き込み保持してスペーサ34を抜け防止状態に押さえ付ける。これにより、インナシリンダ7のフランジ部7bは、スペーサ34と共にフランジ嵌入凹部6f内に挿入され、薄肉の係止爪18をかしめることでアウタシリンダ6に取付けられ、インナシリンダ7はアウタシリンダ6と一体化される。
【0044】
このようにインナシリンダ7と一体化されたアウタシリンダ6は、各取付脚38をクラッチハウジング5の取付け面5aにボルト40(図1参照)で螺着することで取付け面5aに取付けられる。具体的には、穴38aをボルト螺着穴5bに一致させて穴38aにボルト40を通し、そのボルト40をボルト螺着穴5bに螺着する。
【0045】
このとき、アウタシリンダ6の取付脚38におけるクラッチハウジング5側の取付面38bと、スペーサ34のクラッチハウジング5側の当接面34cとは、取付面38bよりも当接面34cがクラッチ主軸2aの軸方向に若干突出するように相対位置関係が設定されている。このため、図5に示すように、ボルト40で締め付けない状態(またはボルト40を挿通する前の状態)では、当接面34cはクラッチハウジング5の取付け面5aに当接するが、取付脚38の取付面38bは取付け面5aに対して隙間sだけ開くようになる。よって、ボルト40を締め付けて取付脚38の取付面38bを取付け面5aに当接させると、取付脚38が撓み、これにより当接面34cを、より確実に十分な圧力でクラッチハウジング5の取付け面5aに圧接させることができる。
【0046】
したがって、本実施形態による場合には、フランジ嵌入凹部6fにインナシリンダ7のフランジ部16を挿入した状態で、アウタシリンダ6に設けられた係止爪18を径方向内側、つまりクラッチ主軸2a側に折り曲げると、係止爪18の先端18aがスペーサ34の外周面の凹部34dに入ることで、インナシリンダ7およびアウタシリンダ6は一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダ6に設けた螺着部としての取付脚38をクラッチハウジング5に螺着することにより、インナシリンダ7およびアウタシリンダ6は、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部16を挿入した連結状態を維持してクラッチハウジング5に固定される。よって、クラッチハウジング5側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ7及びアウタシリンダ6の双方を安定した状態でクラッチハウジング5の取付け面5aに取付けることができる。また、クラッチハウジング5に表面加工を行う必要がないので、クラッチハウジング5に平坦な取付け面が存在すればよく、クラッチハウジング5の形式にあまり拘わらずに流体式クラッチ遮断装置1の取付けができるという効果を有する。
【0047】
また、本実施形態においては、インナシリンダ7がシリンダ本体7aとスペーサ34とを含む構成としているので、インナシリンダ7の当接面とアウタシリンダ6の螺着部としての取付脚38の取付面38bとの位置関係を精度良く調整できる。
【0048】
次に、上記流体式クラッチ遮断装置1のクラッチ動作について、図6に基づいて説明する。図6の上側に示すように、環状ピストン13が右方向に寄せられた位置にあるのは、図1の状態(クラッチIN)の状態を示している。すなわちクラッチINの状態は、クラッチマスタシリンダが操作されず環状シリンダ8内の圧液がレザーバに還流し、このためダイヤフラムスプリング4の力によりフライホイール3aとプレッシャプレート3bとがクラッチディスク3に押圧され(図1参照)、エンジンの出力をクラッチ主軸2aに連結している状態である。
【0049】
クラッチINの状態では、ダイヤフラムスプリング4の押し圧力でレリーズベアリング10を介して環状ピストン13を図6の上側に示す位置まで押し込んでいる。この状態で、クラッチマスタシリンダが操作されて、環状シリンダ8にその吐出圧力流体が供給されると、図6の下側に示すように環状ピストン13が右方向に作動して、ダイヤフラムスプリング4の中央を図1の左方向に押圧するので、ダイヤフラムスプリング4の周辺4bが支点4aを介して右方向に移動する。このため、プレッシャプレート3bのクラッチディスク3への押付け力が解除されて、エンジンの出力をクラッチ主軸2aから遮断する。
【0050】
なお、上述した実施形態において、インナシリンダ7のフランジ部16は、クラッチハウジング5に当接させるべく、フランジ部7bとスペーサ34とを有する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、インナシリンダ本体7aのフランジ部として、フランジ部7bの厚みを厚くし、そのフランジ部7bがクラッチハウジング5に当接する構成、つまりスペーサ34が省略された構成としてもよい。この構成の場合には、そのインナシリンダ本体7aのフランジ部7bの外周面に、薄肉の係止爪18の先端側がかしめによって入る凹部を形成すればよい。
【0051】
また、上述した実施形態においては、薄肉の係止爪18がインナシリンダ本体7aのフランジ部7bの全周にわたり設けられた構成としているが、本発明はこれに限らず、フランジ部の周りに薄肉の係止爪を複数個ける構成としてもよい。この場合、係止爪の間隔は等間隔でも不等間隔でもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による場合には、フランジ嵌入凹部にインナシリンダのフランジ部を嵌入した状態で、アウタシリンダに設けられた係止爪を径方向内側に折り曲げると、係止爪の先端側がインナシリンダのフランジ部を抱き込み保持し、これによりインナシリンダおよびアウタシリンダは一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダに設けた螺着部をクラッチハウジングに螺着することにより、インナシリンダおよびアウタシリンダは、フランジ嵌入凹部にフランジ部を嵌入した連結状態を維持してクラッチハウジングの取付け面に取付けられる。よって、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態でクラッチハウジングの取付け面に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置をクラッチに組み込んだ概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置を示す正面断面図である。
【図3】図2の流体式クラッチ遮断装置の下側を示す正面断面図である。
【図4】図3の流体式クラッチ遮断装置の一部を示す正面断面図である。
【図5】図2の流体式クラッチ遮断装置の右側を示す正面断面図である。
【図6】図2の流体式クラッチ遮断装置の動作状態を説明するための図(正面断面図)である。
【図7】図2の流体式クラッチ遮断装置に備わったアウタシリンダの右側面図である。
【図8】従来の流体式クラッチ遮断装置の上側を示す正面断面図である。
【図9】図8のA部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 流体式クラッチ遮断装置
2a クラッチ主軸
5 クラッチハウジング
5a 取付け面
6 アウタシリンダ
6f フランジ嵌入凹部
7 インナシリンダ
7a インナシリンダ本体
7b インナシリンダ本体のフランジ部
8 環状シリンダ
13 環状ピストン
18 係止爪
34 スペーサ
34a 凹部
34b スペーサのフランジ部
34c 当接面
38 取付脚(螺着部)
38b 取付面
40 ボルト
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからミッションヘの動力伝達を遮断する流体式クラッチ遮断装置に関し、詳細には、クラッチのダイヤフラムスプリングを直接押圧する位置に取付けられる圧力流体で作動する流体式クラッチ遮断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の流体式クラッチ遮断装置としては、図8および図9(図8のAの拡大図)に示す構成の装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8および図9に示す流体式クラッチ遮断装置は、クラッチハウジング105に取付けられるもので、クラッチハウジング105に対する取付け面106aを有するアウタシリンダ106と、アウタシリンダ106の内側かつクラッチ主軸101の外側に設けられ、クラッチハウジング105に対する取付け面107aを有するインナシリンダ107と、上記アウタシリンダ106及びインナシリンダ107で挟まれた空洞である環状シリンダ108と、環状シリンダ108の内部に嵌入されて流体圧によって移動する環状ピストン113と、環状ピストン113に内側端部が埋設固定されたプレート板111と、プレート板111に取付けられ、インナレース110a、アウタレース110bおよび転動体110cを有するレリーズベアリング110と、プレート板111とアウタシリンダ106との間に配置されてインナレース110aを弾性付勢する弾性付勢手段115とを備える。
【0004】
かかる構成を有する流体式クラッチ遮断装置は、クラッチマスタシリンダ(図示せず)が操作されないとき、クラッチのダイヤフラムスプリング(図示せず)の押圧力がレリーズベアリング110のインナレース110aに働き、この力がレリーズベアリング110のアウタレース110bとプレート板111とを介して環状ピストン113に作用するので、環状シリンダ108の圧油が流路118を介してクラッチマスタシリンダへ帰還するため、環状ピストン113が右方向に移動させられた状態となり、エンジンとミッションが接続される。
【0005】
ミッションを操作して変速操作をするためにクラッチマスタシリンダを操作すると、クラッチマスタシリンダからの圧油が流路118を介して環状シリンダ108に流入する。このため、環状ピストン113は、クラッチのダイヤフラムスプリングの押圧力に逆らって左方向に作動してダイヤフラムスプリングを押して、エンジンとミッションの間の動力伝達を遮断する(クラッチOFF)。クラッチによってエンジンとミッションとの間が遮断され、変速操作が終了してクラッチマスタシリンダの踏力を解除すると、前述したように環状シリンダ108内の圧油がクラッチマスタシリンダヘ還流し、環状シリンダ108が左方向に移動してエンジンとミッションを接続(クラッチIN)するように作動する。
【0006】
かかる流体式クラッチ遮断装置のクラッチハウジング105に対する取付け構造は、前記アウタシリンダ106の取付け面106aに環状突起120が形成されているとともに環状突起120の突出面に断面V字状の環状溝117が形成され、環状突起120の内周面120aにインナシリンダ107の取付けフランジ部107aの外周端が圧入固定されると共に、環状突起120の外周面120bにクラッチハウジング105の段付き部105aが嵌合された構造である。
【0007】
この取付け構造による場合には、クラッチハウジング105の段付き部105aの内側にアウタシリンダ106の環状突起120を圧入嵌合し、更に環状突起120の内側にインナシリンダ107の取付けフランジ部107aを圧入固定しているので、特許文献1の従来例(図3)に示すようにインナシリンダ(23)とアウタシリンダ(24)とをボルト(図示せず)で固定する場合に比べて、ボルトが不要となることで部品点数の減少化が図れるという利点がある。さらに、環状突起120の内周面120aにインナシリンダ107を圧入するようにしたため、断面V字状の環状溝117の空間にて、圧入による半径方向の寸法変形が吸収でき、環状突起120とクラッチハウジング105との嵌合精度を維持することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−220496号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1の図1に示される構造は、クラッチハウジングの取付け面に形成された段付き部の内側にインナシリンダ及びアウタシリンダのフランジ部を嵌め込んで固定するものであるため、前記段付き部を形成するのにきわめて高い精度での機械加工が要求されるという不都合がある。
【0010】
一方、前記特許文献1の図3に示される構造は、インナシリンダとアウタシリンダとをボルトで締結し、かつ、アウタシリンダをクラッチハウジングの取付け面にボルトで締結する構造のものであるが、同図に示される構造では具体的なボルトの配置が示されておらず、また、同構造において仮にインナシリンダとアウタシリンダとをボルトで締結できたとしても、その締結状態のまま両シリンダを安定してクラッチハウジングの取付け面に取付けることが非常に難しいという欠点がある。
【0011】
すなわち、同図に示される構造において、インナシリンダとアウタシリンダとを締結する方法としては、インナシリンダのフランジ部にボルト挿通孔を設け、アウタシリンダにねじ孔を設け、前記ボルト挿通孔に対してクラッチハウジングの取付け面の側からボルトを挿入して前記ねじ孔にねじ込むことが考えられるが、その場合、ボルトの頭部がインナシリンダのフランジ部から取付け面側に突出してしまうため、このボルト頭部が邪魔になってアウタシリンダとクラッチハウジングの取付け面との締結ができなくなってしまう。
【0012】
また、このような障害を避けるために、前記ボルトの頭部よりもさらにクラッチハウジングの取付け面に近い側にアウタシリンダの取付け面の位置をずらした場合には、当該クラッチハウジングの取付け面にアウタシリンダの取付け面しか当接せず、インナシリンダはクラッチハウジングの取付け面から浮いた状態になるため、その固定状態が不安定になるという不都合が発生する。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態で前記クラッチハウジングの取付け面に取付けることができる流体式クラッチ遮断装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の流体式クラッチ遮断装置は、クラッチハウジングの取付け面からクラッチ主軸の一部が突出するとともに、その突出したクラッチ主軸が挿通されるインナシリンダと、このインナシリンダの周囲に設けられて当該インナシリンダとの間に環状シリンダを形成するアウタシリンダとを備え、前記インナシリンダとアウタシリンダとが相互結合された状態で前記取付け面に取付けられる流体式クラッチ遮断装置であって、上記インナシリンダは、その軸方向端部に前記取付け面に当接する当接面を有するとともにこの当接面よりも前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に当該インナシリンダの外周面から径方向外側に突出するフランジ部を有し、上記アウタシリンダは、その軸方向端部において周方向に並ぶ複数の位置に上記クラッチハウジングの取付け面に螺着される複数の螺着部を有するとともに、これらの螺着部よりも径方向内側で、かつ前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に前記インナシリンダのフランジ部が前記取付け面側から嵌入されるフランジ嵌入凹部を有し、このフランジ嵌入凹部の外周縁には係止爪が形成されていて当該フランジ嵌入凹部に前記インナシリンダのフランジ部が嵌入された状態で前記係止爪が径方向内側に折り曲げられることにより当該フランジ部がアウタシリンダ側に抱き込み保持されるように構成され、かつ、その抱き込み保持状態で前記螺着部が前記クラッチハウジングの取付け面に螺着されることにより当該螺着部と前記インナシリンダの当接面の双方が前記取付け面に当接するようにこれら螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする。
【0015】
この発明による場合には、フランジ嵌入凹部にインナシリンダのフランジ部を嵌入した状態で、アウタシリンダに設けられた係止爪を径方向内側に折り曲げると、係止爪の先端側がインナシリンダのフランジ部を抱き込み保持し、これによりインナシリンダおよびアウタシリンダは一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダに設けた螺着部をクラッチハウジングに螺着することにより、インナシリンダおよびアウタシリンダは、フランジ嵌入凹部にフランジ部を嵌入した連結状態を維持してクラッチハウジングの取付け面に取付けられる。よって、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態でクラッチハウジングの取付け面に取付けることができる。
【0016】
ここで、係止爪はフランジ嵌入凹部の外周縁の全周にわたり或いは複数箇所に形成してもよい。
【0017】
本発明の請求項2の流体式クラッチ遮断装置は、請求項1記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記インナシリンダは、前記クラッチ主軸が挿通される筒状部の軸方向端部に当該筒状部の外周面から径方向外側に突出するフランジ部が形成されたシリンダ本体と、このシリンダ本体に軸方向の一端が結合され、他端に前記当接面を有するスペーサとを含むことを特徴とする。
【0018】
この発明による場合には、インナシリンダの当接面とアウタシリンダの螺着部との位置関係を精度良く調整できる。
【0019】
本発明の請求項3の流体式クラッチ遮断装置は、請求項2記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記スペーサは、その当接面と反対側の端部に前記シリンダ本体のフランジ部と略同一形状のフランジ部を有し、これらのフランジ部が重ね合わされた状態で前記係止爪により抱き込み保持されていることを特徴とする。
【0020】
この発明による場合には、係止爪を利用してシリンダ本体とスペーサの双方を保持することができる。
【0021】
本発明の請求項4の流体式クラッチ遮断装置は、請求項2または3記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記シリンダ本体の筒状部及びフランジ部は互いに略同等の厚みを有することを特徴とする。
【0022】
この発明による場合には、板材からシリンダ本体の成形を容易に行うことが可能となる。
【0023】
本発明の請求項5の流体式クラッチ遮断装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記螺着部が前記取付け面に螺着される前の状態で当該螺着部よりも前記当接面が前記取付け面側に突出するように当該螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする。
【0024】
この発明による場合には、螺着部が撓むことで、当接面をより確実に十分な圧力でクラッチハウジングの取付け面に圧接させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0026】
図1はクラッチに本発明の流体式クラッチ遮断装置を組み込んだ概略図である。
【0027】
このクラッチ80は、エンジン(図示せず)に接続してあってエンジンの回転が伝達されるフライホイール3aと、トランスミッションに接続されたクラッチ主軸2aにスプラインで連結したクラッチディスク3と、このクラッチディスク3に対向して配置してあってダイヤフラムスプリング4の弾性力による押圧力を受けるプレッシャプレート3bと、前記フライホイール3a、クラッチディスク3およびプレッシャプレート3b等の各部品を収納するクラッチハウジング5と、このクラッチハウジング5の内部に設置してあって前記クラッチ主軸2aが貫通すると共にダイヤフラムスプリング4を押圧する出力部を持つ流体式クラッチ遮断装置1とで構成される。
【0028】
上記流体式クラッチ遮断装置1は、クラッチマスタシリンダ(図示せず)に連結された配管1aを介して接続されており、クラッチマスタシリンダが操作され、それに伴い吐出された圧力流体が流体式クラッチ遮断装置1に供給されると、その出力部がダイヤフラムスプリング4を押圧する。そして、クラッチマスタシリンダの操作が解除されると、その出力部がダイヤフラムスプリング4による押圧力を受け、その内部の圧力流体をクラッチマスタシリンダに還流させる。
【0029】
上記したクラッチ80は、クラッチマスタシリンダが踏み込まれ、その吐出圧力流体が流体式クラッチ遮断装置1に供給されて、流体式クラッチ遮断装置1の出力部がダイヤフラムスプリング4の中央を押圧する。ダイヤフラムスプリング4は、その中央が押圧されると、その周辺4bが支点4aを介して中央部と反対の方向に反ることで、プレッシャプレート3bへの押圧力を解除する。このため、クラッチディスク3とフライホイール3aとの摩擦力が無くなり、エンジンとミッションとが遮断される。すなわちクラッチOFFとなる。クラッチOFFは、クラッチマスタシリンダを踏みこんでいる間保たれる。そして、このクラッチOFFにおいて、ミッションは、変速操作される。ミッションの変速操作が終了してクラッチマスタシリンダの操作を解除すると、流体式クラッチ遮断装置1の圧力流体がクラッチマスタシリンダに還流されるので、ダイヤフラムスプリング4の中央部の押し圧力が解除される。このためダイヤフラムスプリング4は、支点4aを介してその周辺4bがプレッシャプレート3bを押圧し、エンジンとミッションとが接続されるクラッチINとなるように作動する。
【0030】
次に、前記流体式クラッチ遮断装置1につき、図2〜図7に基づき説明する。図2は本実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置を示す正面断面図、図3は図2の流体式クラッチ遮断装置の下側を示す正面断面図、図4は図3の流体式クラッチ遮断装置の一部を示す正面断面図、図5は図2の流体式クラッチ遮断装置の右側を示す正面断面図、図6は図2の流体式クラッチ遮断装置の動作状態を説明するための図(正面断面図)、図7は図2の流体式クラッチ遮断装置に備わったアウタシリンダの右側面図である。なお、図7は、前記配管1aを省略して示している。
【0031】
流体式クラッチ遮断装置1は、前記クラッチハウジング5の平坦な取付け面5aに取付けられており、その取付け面5aからクラッチ主軸2aの一部が突出するとともに、その突出したクラッチ主軸2aが内側を挿通するインナシリンダ7およびインナシリンダ7の外側周囲に設けられたアウタシリンダ6で構成する環状シリンダ8と、アウタレース12がクラッチのダイヤフラムスプリング4に当接可能に配置されたレリーズベアリング10と、前記環状シリンダ8の内部に一端が嵌入されると共に他端にレリーズベアリング10のインナレース11が取付けられた環状ピストン13と、前記環状シリンダ8の内部に嵌入される前記環状ピストン13の端部に設けたシール14と、前記インナレース11とアウタシリンダ6との間に配置されてあってレリーズベアリング10をダイヤフラムスプリング4側に押圧するばね15とを有する。
【0032】
前記環状シリンダ8は、その内部に環状ピストン13が摺動自在に嵌入しており、前記配管1aを介してクラッチマスタシリンダに接続されている。したがって、クラッチマスタシリンダが操作され、その吐出圧力流体が環状シリンダ8に供給されると、環状ピストン13が図2の左方向に移動させられ、ダイヤフラムスプリング4の中央部を押圧する。なお、図2は、この環状シリンダ8にクラッチマスタシリンダの吐出圧力流体が供給され、環状ピストン13が移動してクラッチOFFの状態となっている図である。そして、環状シリンダ8の圧力流体がクラッチマスタシリンダに還流して環状ピストン13がダイヤフラムスプリング4の押圧力で押されると、図6の上半分(図6の下半分は図2と同一状態を示す)に示す状態となる。
【0033】
前記環状ピストン13は、インナシリンダ7に摺動自在に嵌入し、つまり環状シリンダ8内に嵌入し、一端(図2の右端)にシール14を備え、他端側がアウタシリンダ6の外部に突出するようになっており、他端側には、レリーズベアリング10が取付けられる。
【0034】
シール14は、図3に示すように、環状シリンダ8内に挿入してあり、インナシリンダ7とアウタシリンダ6の双方に圧接する。また、シール14は、その一端側(図3の左側)に、環状ピストン13の端部13aに設けた溝13bに嵌入して固定する鉤状をした端部14cを備えると共に、この端部14cと反対側の他端側に、環状ピストン13に圧接して摺動自在に接するリップ14aとアウタシリンダ6の内面に圧接しながら摺動するリップ14bとを有する。
【0035】
前記端部14cは、環状シリンダ8の外側内周面に対向し、最初に流体を充満するための真空引きに対してシール14が離脱しないようにするためのものである。また、リップ14aおよびリップ14bは、環状シリンダ8の内側と外側の両内周面を押圧するように予め外方に向けて突出させて、つまりリップ14a〜リップ14bまでの離隔距離を環状シリンダ8の径方向の内寸よりも大きくして形成されており、環状シリンダ8に挿入されて環状シリンダ8の内側と外側の両内周面を押圧する時に生じる初期のシール力を保持するための機能を有し、環状シリンダ8に流体圧力が作用すると、この流体圧力を受けて外側に膨らんでシール力が初期のシール力よりも高くなる機能を有する。
【0036】
アウタシリンダ6の外部に突出する環状ピストン13の他端13cには、図4(部分図)に示すように、インナシリンダ7の表面に圧接するリップ22aを有するダストスイーパ22が、環状ホルダ24により保持されている。より詳細には、環状ホルダ24に設けられた鍵24aと突起24bで保持されている。環状ホルダ24は、例えば合成樹脂からなる環状ピストン13を成形するモールド内に内装することで環状ピストン13と一体的に形成したものである。また、環状ピストン13の先端(図4の左端)に設けてあるレリーズベアリング10は、環状ホルダ24の先端部24cに係合し、断面がくの字状の環状押え金具26によりインナレース11を固定することで取付けてある。そして、このレリーズベアリング10のアウタレース12は、ダイヤフラムスプリング4に当接して常時回転するが、インナレース11は環状ピストン13に固定されたままである。したがって、エンジンの回転が環状ピストン13に影響しないようになっている。なお、インナシリンダ7の解放端側に形成した凹溝27aに嵌入してある断面円形のC型止輪27は、流体式クラッチ遮断装置1をクラッチ80から取り外したとき環状ピストン13が抜け落ちるのを防止するものである。換言すると、流体式クラッチ遮断装置1は単体で部品工場からメーカに搬送されるので、C型止輪27は流体式クラッチ遮断装置1の搬送中における安定を保つものである。
【0037】
前記レリーズベアリング10のインナレース11とアウタシリンダ6との間には、図2に示すようにばね15が設けられている。このばね15は、その一端15aが、インナレース11に嵌合する環状ホルダ28でインナレース11に保持され、ばね15の他端は、アウタシリンダ6の環状溝6bに嵌入して位置決め状態で設けられた環状ホルダ29で保持されている。また、このばね15は、アウタシリンダ6とレリーズベアリング10との間に圧縮して装着してあり、その弾力でレリーズベアリング10をダイヤフラムスプリング4側に常に押圧する。この押付け力は、レリーズベアリング10がダイヤフラムスプリング4に常時当接するのを保証する程度の軽いものである。
【0038】
前記ばね15の両端を保持する環状ホルダ28と環状ホルダ29には、図2に示すように弾力を有するブーツ20が掛け渡され、ブーツ20の一方の端部20aは環状ホルダ28の保持段部28aに、ブーツ20の他方の端部20bは環状ホルダ29の保持段部29aにそれぞれ装着され、ブーツ20は伸縮可能となっている。尚、前記環状ホルダ28は、レリーズベアリング10のインナレース11内に円筒部分28cを嵌入して固定されている。また、環状ホルダ29は、その右端のフランジ部分29bをアウタシリンダ6のシリンダ部分6cの外側に遊嵌することで取付けられている。
【0039】
図2および図5に示すように、インナシリンダ7は、インナシリンダ本体7aとスペーサ34とを有し、インナシリンダ本体7aは、その内側をクラッチ主軸2aが挿通すると共に、その外側周囲に設けられたアウタシリンダ6とで環状シリンダ8を形成する筒状部7cと、この筒状部7cにテーパ部7dで連携してあって筒状部7cの外周面から90度の角度を保って半径方向外側に突出した円リング形のフランジ部7bとを備える。また、インナシリンダ本体7aは、その全体がほぼ厚み一定に形成されたものであり、例えば板材から絞り加工等により容易に成形させ得るようになっている。
【0040】
上記スペーサ34は、厚み調整用の円リング形のもので、軸方向の一端側には、インナシリンダ本体7aのフランジ部7bに重ね合わされ、フランジ部7bと略同一形状のフランジ部34bが設けられている(図2参照)。このフランジ部34bは、クラッチハウジング5の取付け面5aから離れた位置に設けられる。スペーサ34の他端側には、クラッチハウジング5の取付け面5aに当接する当接面34cが形成され、フランジ部34bは当接面34cよりも外側に全周にわたり外方に突出し、スペーサ34の外周部は断面L字形となっていてフランジ部34bのクラッチハウジング5側に凹部34aが形成されている。
【0041】
フランジ部7bおよび34b(以下、これら両フランジ部を16と言う)は、アウタシリンダ6とクラッチハウジング5との間に挟持される。また、前記フランジ部16は、図5に示すようにアウタシリンダ6に設けられた内孔6eに連接された基礎部分6dに設けたフランジ嵌入凹部6fに嵌入される。このフランジ嵌入凹部6fは、クラッチハウジング5の取付け面5aから離れた位置に配される。フランジ嵌入凹部6fとフランジ部7bとの間には、密封用のシール部材30が設けられており、このシール部材30は環状シリンダ8を密封する機能を有する。
【0042】
アウタシリンダ6の基礎部分6dには、フランジ部16が嵌入されるフランジ嵌入凹部6fを内側に有する円筒部36が延出形成されていると共に、アウタシリンダ6をクラッチハウジング5にボルト40(図1参照)で取付けられる螺着部としての取付脚38が、アウタシリンダ6の軸方向端において周方向に並ぶように複数本、図7に示すように本実施形態では3本外方向に延出した状態で設けられている。各取付脚38には、ボルト40が挿入される穴38aが形成されており、一方、クラッチハウジング5の取付け面5aには、各穴38aに対応する数、位置でボルト螺着穴5bが形成されている(図2等参照)。なお、取付脚38の本数は、2本以上の任意の本数とすることができる。
【0043】
前記円筒部36の内周縁部には、フランジ嵌入凹部6fから直角に縦部6gが形成されており、その縦部6gの長さは、フランジ部7bの厚みとフランジ部34bの厚みを合わせた厚み寸法より若干短く設定されている。この縦部6gには、内面18bを沿わせて薄肉の係止爪18が突出形成されている。この薄肉の係止爪18は、縦部6gの全周にわたって設けてあり、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部7bとフランジ部34bを重ねて嵌入して、図5に示すように径方向内側(クラッチ主軸側)に折り曲げるようにかしめられる。このかしめは、凹部34aにより可能であって、このかしめにより、薄肉の係止爪18の先端18aは、凹部34a内に入って埋没し、これによりフランジ部7bと34bを抱き込み保持してスペーサ34を抜け防止状態に押さえ付ける。これにより、インナシリンダ7のフランジ部7bは、スペーサ34と共にフランジ嵌入凹部6f内に挿入され、薄肉の係止爪18をかしめることでアウタシリンダ6に取付けられ、インナシリンダ7はアウタシリンダ6と一体化される。
【0044】
このようにインナシリンダ7と一体化されたアウタシリンダ6は、各取付脚38をクラッチハウジング5の取付け面5aにボルト40(図1参照)で螺着することで取付け面5aに取付けられる。具体的には、穴38aをボルト螺着穴5bに一致させて穴38aにボルト40を通し、そのボルト40をボルト螺着穴5bに螺着する。
【0045】
このとき、アウタシリンダ6の取付脚38におけるクラッチハウジング5側の取付面38bと、スペーサ34のクラッチハウジング5側の当接面34cとは、取付面38bよりも当接面34cがクラッチ主軸2aの軸方向に若干突出するように相対位置関係が設定されている。このため、図5に示すように、ボルト40で締め付けない状態(またはボルト40を挿通する前の状態)では、当接面34cはクラッチハウジング5の取付け面5aに当接するが、取付脚38の取付面38bは取付け面5aに対して隙間sだけ開くようになる。よって、ボルト40を締め付けて取付脚38の取付面38bを取付け面5aに当接させると、取付脚38が撓み、これにより当接面34cを、より確実に十分な圧力でクラッチハウジング5の取付け面5aに圧接させることができる。
【0046】
したがって、本実施形態による場合には、フランジ嵌入凹部6fにインナシリンダ7のフランジ部16を挿入した状態で、アウタシリンダ6に設けられた係止爪18を径方向内側、つまりクラッチ主軸2a側に折り曲げると、係止爪18の先端18aがスペーサ34の外周面の凹部34dに入ることで、インナシリンダ7およびアウタシリンダ6は一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダ6に設けた螺着部としての取付脚38をクラッチハウジング5に螺着することにより、インナシリンダ7およびアウタシリンダ6は、フランジ嵌入凹部6fにフランジ部16を挿入した連結状態を維持してクラッチハウジング5に固定される。よって、クラッチハウジング5側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ7及びアウタシリンダ6の双方を安定した状態でクラッチハウジング5の取付け面5aに取付けることができる。また、クラッチハウジング5に表面加工を行う必要がないので、クラッチハウジング5に平坦な取付け面が存在すればよく、クラッチハウジング5の形式にあまり拘わらずに流体式クラッチ遮断装置1の取付けができるという効果を有する。
【0047】
また、本実施形態においては、インナシリンダ7がシリンダ本体7aとスペーサ34とを含む構成としているので、インナシリンダ7の当接面とアウタシリンダ6の螺着部としての取付脚38の取付面38bとの位置関係を精度良く調整できる。
【0048】
次に、上記流体式クラッチ遮断装置1のクラッチ動作について、図6に基づいて説明する。図6の上側に示すように、環状ピストン13が右方向に寄せられた位置にあるのは、図1の状態(クラッチIN)の状態を示している。すなわちクラッチINの状態は、クラッチマスタシリンダが操作されず環状シリンダ8内の圧液がレザーバに還流し、このためダイヤフラムスプリング4の力によりフライホイール3aとプレッシャプレート3bとがクラッチディスク3に押圧され(図1参照)、エンジンの出力をクラッチ主軸2aに連結している状態である。
【0049】
クラッチINの状態では、ダイヤフラムスプリング4の押し圧力でレリーズベアリング10を介して環状ピストン13を図6の上側に示す位置まで押し込んでいる。この状態で、クラッチマスタシリンダが操作されて、環状シリンダ8にその吐出圧力流体が供給されると、図6の下側に示すように環状ピストン13が右方向に作動して、ダイヤフラムスプリング4の中央を図1の左方向に押圧するので、ダイヤフラムスプリング4の周辺4bが支点4aを介して右方向に移動する。このため、プレッシャプレート3bのクラッチディスク3への押付け力が解除されて、エンジンの出力をクラッチ主軸2aから遮断する。
【0050】
なお、上述した実施形態において、インナシリンダ7のフランジ部16は、クラッチハウジング5に当接させるべく、フランジ部7bとスペーサ34とを有する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、インナシリンダ本体7aのフランジ部として、フランジ部7bの厚みを厚くし、そのフランジ部7bがクラッチハウジング5に当接する構成、つまりスペーサ34が省略された構成としてもよい。この構成の場合には、そのインナシリンダ本体7aのフランジ部7bの外周面に、薄肉の係止爪18の先端側がかしめによって入る凹部を形成すればよい。
【0051】
また、上述した実施形態においては、薄肉の係止爪18がインナシリンダ本体7aのフランジ部7bの全周にわたり設けられた構成としているが、本発明はこれに限らず、フランジ部の周りに薄肉の係止爪を複数個ける構成としてもよい。この場合、係止爪の間隔は等間隔でも不等間隔でもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による場合には、フランジ嵌入凹部にインナシリンダのフランジ部を嵌入した状態で、アウタシリンダに設けられた係止爪を径方向内側に折り曲げると、係止爪の先端側がインナシリンダのフランジ部を抱き込み保持し、これによりインナシリンダおよびアウタシリンダは一体化される。そして、その一体化されたアウタシリンダに設けた螺着部をクラッチハウジングに螺着することにより、インナシリンダおよびアウタシリンダは、フランジ嵌入凹部にフランジ部を嵌入した連結状態を維持してクラッチハウジングの取付け面に取付けられる。よって、クラッチハウジング側にきわめて高精度の機械加工を施すことなく、インナシリンダ及びアウタシリンダの双方を安定した状態でクラッチハウジングの取付け面に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置をクラッチに組み込んだ概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる流体式クラッチ遮断装置を示す正面断面図である。
【図3】図2の流体式クラッチ遮断装置の下側を示す正面断面図である。
【図4】図3の流体式クラッチ遮断装置の一部を示す正面断面図である。
【図5】図2の流体式クラッチ遮断装置の右側を示す正面断面図である。
【図6】図2の流体式クラッチ遮断装置の動作状態を説明するための図(正面断面図)である。
【図7】図2の流体式クラッチ遮断装置に備わったアウタシリンダの右側面図である。
【図8】従来の流体式クラッチ遮断装置の上側を示す正面断面図である。
【図9】図8のA部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 流体式クラッチ遮断装置
2a クラッチ主軸
5 クラッチハウジング
5a 取付け面
6 アウタシリンダ
6f フランジ嵌入凹部
7 インナシリンダ
7a インナシリンダ本体
7b インナシリンダ本体のフランジ部
8 環状シリンダ
13 環状ピストン
18 係止爪
34 スペーサ
34a 凹部
34b スペーサのフランジ部
34c 当接面
38 取付脚(螺着部)
38b 取付面
40 ボルト
Claims (5)
- クラッチハウジングの取付け面からクラッチ主軸の一部が突出するとともに、その突出したクラッチ主軸が挿通されるインナシリンダと、このインナシリンダの周囲に設けられて当該インナシリンダとの間に環状シリンダを形成するアウタシリンダとを備え、前記インナシリンダとアウタシリンダとが相互結合された状態で前記取付け面に取付けられる流体式クラッチ遮断装置であって、
上記インナシリンダは、その軸方向端部に前記取付け面に当接する当接面を有するとともにこの当接面よりも前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に当該インナシリンダの外周面から径方向外側に突出するフランジ部を有し、
上記アウタシリンダは、その軸方向端部において周方向に並ぶ複数の位置に上記クラッチハウジングの取付け面に螺着される複数の螺着部を有するとともに、これらの螺着部よりも径方向内側で、かつ前記クラッチハウジングの取付け面から離れた位置に前記インナシリンダのフランジ部が前記取付け面側から嵌入されるフランジ嵌入凹部を有し、
このフランジ嵌入凹部の外周縁には係止爪が形成されていて当該フランジ嵌入凹部に前記インナシリンダのフランジ部が嵌入された状態で前記係止爪が径方向内側に折り曲げられることにより当該フランジ部がアウタシリンダ側に抱き込み保持されるように構成され、
かつ、その抱き込み保持状態で前記螺着部が前記クラッチハウジングの取付け面に螺着されることにより当該螺着部と前記インナシリンダの当接面の双方が前記取付け面に当接するようにこれら螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする流体式クラッチ遮断装置。 - 請求項1記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記インナシリンダは、前記クラッチ主軸が挿通される筒状部の軸方向端部に当該筒状部の外周面から径方向外側に突出するフランジ部が形成されたシリンダ本体と、このシリンダ本体に軸方向の一端が結合され、他端に前記当接面を有するスペーサとを含むことを特徴とする流体式クラッチ遮断装置。
- 請求項2記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記スペーサは、その当接面と反対側の端部に前記シリンダ本体のフランジ部と略同一形状のフランジ部を有し、これらのフランジ部が重ね合わされた状態で前記係止爪により抱き込み保持されていることを特徴とする流体式クラッチ遮断装置。
- 請求項2または3記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記シリンダ本体の筒状部及びフランジ部は互いに略同等の厚みを有することを特徴とする流体式クラッチ遮断装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の流体式クラッチ遮断装置において、前記螺着部が前記取付け面に螺着される前の状態で当該螺着部よりも前記当接面が前記取付け面側に突出するように当該螺着部と当接面との相対位置関係が設定されていることを特徴とする流体式クラッチ遮断装置。
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JP2003007890A JP2004218763A (ja) | 2003-01-16 | 2003-01-16 | 流体式クラッチ遮断装置 |
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JP2003007890A JP2004218763A (ja) | 2003-01-16 | 2003-01-16 | 流体式クラッチ遮断装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009030710A (ja) * | 2007-07-26 | 2009-02-12 | Toyota Motor Corp | 油圧式クラッチ操作装置の組み付け補助具、油圧式クラッチ操作装置の組み付け方法、筒形部材の組み付け補助具、ならびに筒形部材の組み付け方法 |
JP2010203576A (ja) * | 2009-03-05 | 2010-09-16 | Nissan Motor Co Ltd | クラッチ構造 |
-
2003
- 2003-01-16 JP JP2003007890A patent/JP2004218763A/ja not_active Withdrawn
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