JP2004217096A - 変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蓄電手段から電力が供給される電動機が入力側に連結された変速機の制御装置であって、前記変速機での変速時に、その変速に関連して、前記蓄電手段に対する充電量を制御する充電制御手段(ステップS2)を備えている。したがって変速中における変速機の入力側のトルクもしくは運転状態が安定するので、ショックの悪化を防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、バッテリーなどの蓄電手段から電力の供給を受けて動作する電動機が入力側に連結された変速機を対象とした制御装置に関し、特にその電動機が動力源として使用されるハイブリッド車に搭載される変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動機を変速機の入力側に連結し、電動機の出力したトルクを変速機で増幅して出力軸に伝達するように構成された駆動装置の一例が特開2002−225578号公報(特許文献1)に記載されている。その駆動装置は、内燃機関とモータ・ジェネレータとを動力源としたハイブリッド駆動装置であって、内燃機関と第1モータ・ジェネレータとが、遊星歯車機構を主体とする合成分配機構を介して連結され、そのトルク合成機構に連結された出力軸に、高低二段に変速できる変速機を介して第2モータ・ジェネレータが連結されている。
【0003】
上記の第1モータ・ジェネレータが主として内燃機関の回転数を制御するとともに発電をおこなうためのものであるのに対して、第2モータ・ジェネレータは出力軸トルクを補助し、あるいは制動力を補助するためのものである。すなわち、加速時などの駆動状態では、内燃機関の出力するトルクを合成分配機構によって第1モータ・ジェネレータに伝達して第1モータ・ジェネレータによって発電させ、その電力を蓄電装置に充電する一方、その蓄電装置から第2モータ・ジェネレータに電力を供給してこれを駆動することにより、第2モータ・ジェネレータからのトルクと前記合成分配機構からのトルクとを合成したトルクを出力軸に付与するように構成されている。
【0004】
また、変速機は、二つの摩擦係合装置の係合・解放状態を切り換えることにより、いわゆる直結段と低速段とに変速できるようになっており、低車速時には低速段に設定して変速比に対応するトルクの増幅率を大きくし、また車速が増大した際には高速段に変速することより第2モータ・ジェネレータの回転数を相対的に低下させて動力損失を防止するようになっている。そして、その変速は、一方の摩擦係合装置の係合圧を低下させるとともに、他方の摩擦係合装置の係合圧を増大させることにより、第2モータ・ジェネレータや他の回転部材の回転数を変化させて実行される。
【0005】
また従来、エンジンの出力トルクと電動機の出力トルクとを遊星歯車機構によって合成した後に出力し、その出力トルクを変速機を介して車輪に伝達するように構成したハイブリッド駆動装置であって、かみ合いクラッチによって変速を実行する際に、引きずりトルクなどに相当する付加トルクを求め、前記電動機によってその付加トルクを付与することにより、クラッチの回転数を同期回転数に速やかに到達させるように構成した装置が、特開2000−295709号公報(特許文献2)に記載されている。
【0006】
さらに、電気モータのトルクを変速機を介して出力軸に伝達する電気モータ駆動車両において、その変速機での変速の状況を反電して電気モータのトルクを制御し、また併せてクラッチの係合圧を制御するように構成した装置が、特開平6−319210号公報(特許文献3)に記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−225578号公報(段落(0037)〜(0038))
【特許文献2】
特開2000−295709号公報(段落(0024))
【特許文献3】
特開平6−319210号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開2002−225578号公報に記載されたハイブリッド駆動装置における変速機は、その入力側に連結されている第2モータ・ジェネレータのトルクを出力軸に伝達するように機能し、またその変速はブレーキとクラッチとの両方の係合・解放状態を同時に切り換えて実行され、ロー(低速段)とハイ(直結段)との二段の変速段を設定するようになっている。これに対して、第1モータ・ジェネレータで発電し、かつ蓄電装置に充電された電力で第2モータ・ジェネレータを駆動するように構成されている。
【0009】
したがって、第1モータ・ジェネレータから蓄電装置に対する充電と、蓄電装置から第2モータ・ジェネレータに対する電力の供給とを並行しておこなっている状態で充電要求量が変化すると、電力の充放電の状態の変化や前記合成分配機構でのトルクの分配状態の変化などが要因となって、第2モータ・ジェネレータの出力状態が変動することがある。そのため、変速機での変速中に充電要求量が変化すると、その変速機の入力が変化することになり、その結果、変速制御が難しくなってショックが悪化する可能性があった。特に上述した二つの係合装置の係合・解放状態を同時に切り換えるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の場合には、解放途中あるいは係合途中の摩擦係合装置に作用するトルクが想定した状態から変化してしまうので、係合・解放のタイミングにずれが生じてショックが悪化する可能性があった。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、入力側に電動機が連結された変速機の変速制御を容易にすることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、蓄電手段から電力が供給される電動機が入力側に連結された変速機の制御装置において、前記変速機での変速時に、その変速に関連して、前記蓄電手段に対する充電量を制御する充電制御手段を備えていることを特徴とする制御装置である。
【0012】
したがって請求項1の発明では、変速機での変速に関連して充電量が制御され、それに伴い変速機の入力側に連結されている電動機の動作状態が変速に関連したものとなる。その結果、変速中における変速機の入力側のトルクが安定し、変速制御が容易になり、またショックの悪化が防止される。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明における前記充電制御手段が、前記変速中での前記充電量の変化を制限する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0014】
したがって請求項2の発明では、変速機での変速中には、変速機の入力側に連結されている電動機に対して電力を供給する蓄電手段に対する充電量の変化が制限される。そのため、電動機の動作状態に影響を及ぼす外的要因が少なくなって電動機の動作状態あるいは変速機の入力トルクが安定し、その結果、変速制御が容易になり、またショックの悪化が防止される。
【0015】
さらに、請求項3の発明は、請求項1の発明における前記充電制御手段が、前記変速機が搭載された車両に対する要求駆動力の前記変速中における変化に基づいて、その変速中での前記充電量を制御する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0016】
したがって請求項3の発明では、要求駆動力の変化と変速機での変速とが同時に生じた場合、その変速中における前記充電量が制御される。その充電量の制御の方向は、例えば前記電動機の出力トルクを変化させることなく、駆動力に対する要求を満たす方向の制御である。そのため、駆動力に対する要求を満たしつつ、変速制御が容易になり、またショックの悪化が防止される。換言すれば、変速品質が向上する。
【0017】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、内燃機関と、その内燃機関の出力した動力によって駆動されて前記蓄電手段に充電する電力を発生する発電手段と、前記内燃機関の動力が伝達されて回転させられる出力部材とを備え、前記変速機から出力したトルクが前記出力部材に伝達されるように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0018】
したがって請求項4の発明では、内燃機関の出力したトルクが発電手段と出力部材とに分配されて伝達され、その電力が充電手段に供給されるとともに、その充電手段から電動機に電力が供給され、その電動機のトルクが出力部材に付加される。そして、その変速機での変速中には、変速に関連して前記充電量が制御されるので、例えば変速中での前記充電量の変化が抑制され、あるいは要求駆動力が変化した場合にそれに応じて前記充電量が制御され、その結果、電動機の動作状態の変動が抑制される。そのため、変速中の変速機の入力側のトルクが安定するので、変速制御が容易になり、またショックの悪化が防止される。
【0019】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする変速機について説明すると、この発明で対象とする変速機は、一例として車両用ハイブリッド駆動装置に組み込まれるものであって、そのハイブリッド駆動装置は、図4に示すように、主動力源1のトルクが出力部材2に伝達され、その出力部材2からデファレンシャル3を介して駆動輪4にトルクが伝達されるようになっている。一方、走行のための駆動力を出力する力行制御あるいはエネルギを回収する回生制御の可能なアシスト動力源5が設けられており、このアシスト動力源5が変速機6を介して出力部材2に連結されている。したがってアシスト動力源5と出力部材2との間でトルク容量を変速機6で設定する変速比に応じて増減するようになっている。
【0020】
その変速機6は、設定する変速比が“1”以上となるように構成することができ、このように構成することにより、アシスト動力源5でトルクを出力する力行時に、アシスト動力源5で出力したトルクを増大させて出力部材2に伝達できるので、アシスト動力源5を低容量もしくは小型のものとすることができる。しかしながら、アシスト動力源5の運転効率を良好な状態に維持することが好ましいので、例えば車速に応じて出力部材2の回転数が増大した場合には、変速比を低下させてアシスト動力源5の回転数を低下させる。また、出力部材2の回転数が低下した場合には、変速比を増大させることがある。
【0021】
そのような変速の場合、変速機6でのトルク容量が低下したり、あるいは回転数の変化に伴う慣性トルクが生じたりし、これが出力部材2のトルクすなわち出力軸トルクに影響する。そこで上記のハイブリッド駆動装置は、変速機6による変速の際に主動力源1のトルクを補正して出力部材2のトルク変動を防止もしくは抑制するように制御される。
【0022】
より具体的に説明すると、主動力源1は図5に示すように、内燃機関10と、モータ・ジェネレータ(以下、仮に第1モータ・ジェネレータもしくはMG1と記す)11と、これら内燃機関10と第1モータ・ジェネレータ11との間でトルクを合成もしくは分配する遊星歯車機構12とを主体として構成されている。その内燃機関(以下、エンジンと記す)10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、スロットル開度(吸気量)や燃料供給量、点火時期などの運転状態を電気的に制御できるように構成されている。その制御は、例えば、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(E−ECU)13によっておこなうように構成されている。
【0023】
また、第1モータ・ジェネレータ11は、一例として同期電動機であって、電動機としての機能と発電機としての機能とを生じるように構成され、インバータ14を介してバッテリーなどの蓄電装置15に接続されている。そして、そのインバータ14を制御することにより、第1モータ・ジェネレータ11の出力トルクあるいは回生トルクを適宜に設定するようになっている。その制御をおこなうために、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(MG1−ECU)16が設けられている。
【0024】
さらに、遊星歯車機構12は、外歯歯車であるサンギヤ17と、そのサンギヤ17に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ18と、これらサンギヤ17とリングギヤ18とに噛合しているピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持しているキャリヤ19とを三つの回転要素として差動作用を生じる公知の歯車機構である。前記内燃機関10の出力軸がダンパー20を介して第1回転要素であるキャリヤ19に連結されている。言い換えれば、キャリヤ19が入力要素となっている。
【0025】
これに対して第2回転要素であるサンギヤ17に第1モータ・ジェネレータ11が連結されている。したがってサンギヤ17がいわゆる反力要素となっており、また第3回転要素であるリングギヤ18が出力要素となっている。そして、そのリングギヤ18が出力部材(すなわち出力軸)2に連結されている。
【0026】
一方、変速機6は、図5に示す例では、一組のラビニョ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわちそれぞれ外歯歯車である第1サンギヤ(S1)21と第2サンギヤ(S2)22とが設けられており、その第1サンギヤ21にショートピニオン23が噛合するとともに、そのショートピニオン23がこれより軸長の長いロングピニオン24に噛合し、そのロングピニオン24が前記各サンギヤ21,22と同心円上に配置されたリングギヤ(R)25に噛合している。なお、各ピニオン23,24は、キャリヤ(C)26によって自転かつ公転自在に保持されている。また、第2サンギヤ22がロングピニオン24に噛合している。したがって第1サンギヤ21とリングギヤ25とは、各ピニオン23,24と共にタプルピニオン型遊星歯車機構に相当する機構を構成し、また第2サンギヤ22とリングギヤ25とは、ロングピニオン24と共にシングルピニオン型遊星歯車機構に相当する機構を構成している。
【0027】
そして、第1サンギヤ21を選択的に固定する第1ブレーキB1と、リングギヤ25を選択的に固定する第2ブレーキB2とが設けられている。これらのブレーキB1,B2は摩擦力によって制動力を生じるいわゆる摩擦係合装置であり、多板形式の係合装置あるいはバンド形式の係合装置を採用することができる。そして、これらのブレーキB1,B2は、油圧や電磁力などによる係合圧に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されている。さらに、第2サンギヤ22に前述したアシスト動力源5が連結され、またキャリヤ26が前記出力軸2に連結されている。
【0028】
したがって、上記の変速機6は、第2サンギヤ22がいわゆる入力要素であり、またキャリヤ26が出力要素となっており、第1ブレーキB1を係合させることにより変速比が“1”より大きい高速段が設定され、第1ブレーキB1に替えて第2ブレーキB2を係合させることにより、高速段より変速比の大きい低速段が設定されるように構成されている。この各変速段の間での変速は、車速や要求駆動力(もしくはアクセル開度)などの走行状態に基づいて実行される。より具体的には、変速段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された運転状態に応じていずれかの変速段を設定するように制御される。その制御をおこなうためのマイクロコンピュータを主体とした電子制御装置(T−ECU)27が設けられている。
【0029】
なお、図5に示す例では、アシスト動力源5として、トルクを出力する力行およびエネルギを回収する回生の可能なモータ・ジェネレータ(以下仮に、第2モータ・ジェネレータもしくはMG2と記す)が採用されている。この第2モータ・ジェネレータ5は、インバータ28を介してバッテリー29に接続されている。そして、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(MG2−ECU)30によってそのインバータ28を制御することにより、力行および回生ならびにそれぞれの場合におけるトルクを制御するように構成されている。なお、そのバッテリー29および電子制御装置30は、前述した第1モータ・ジェネレータ11についてのインバータ14およびバッテリー(蓄電装置)15と統合することもできる。したがってこの第2モータ・ジェネレータ5がこの発明の電動機に相当している。
【0030】
上述したトルク合成分配機構としてのシングルピニオン型遊星歯車機構12についての共線図を示せば、図6の(A)のとおりであり、キャリヤ19に入力されるエンジン10の出力するトルクに対して、第1モータ・ジェネレータ11による反力トルクをサンギヤ17に入力すると、出力要素となっているリングギヤ18には、エンジン10から入力されたトルクより大きいトルクが現れる。その場合、第1モータ・ジェネレータ11は、発電機として機能する。また、リングギヤ18の回転数(出力回転数)を一定とした場合、第1モータ・ジェネレータ11の回転数を大小に変化させることにより、エンジン10の回転数を連続的に(無段階に)変化させることができる。すなわち、エンジン10の回転数を例えば燃費が最もよい回転数に設定する制御を、第1モータ・ジェネレータ11を制御することによっておこなうことができる。なお、この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称されている。
【0031】
また、変速機6を構成しているラビニョ型遊星歯車機構についての共線図を示せば、図6の(B)のとおりである。すなわち第2ブレーキB2によってリングギヤ25を固定すれば、低速段Lが設定され、第2モータ・ジェネレータ5の出力したトルクが変速比に応じて増幅されて出力軸2に付加される。これに対して第1ブレーキB1によって第1サンギヤ21を固定すれば、低速段Lより変速比の小さい高速段Hが設定される。この高速段Hにおける変速比も“1”より大きいので、第2モータ・ジェネレータ5の出力したトルクがその変速比に応じて増大させられて出力軸2に付加される。
【0032】
なお、各変速段L,Hが定常的に設定されている状態では、出力軸2に付加されるトルクは、第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクを変速比に応じて増大させたトルクとなるが、変速過渡状態では各ブレーキB1,B2でのトルク容量や回転数変化に伴う慣性トルクなどの影響を受けたトルクとなる。また、出力軸2に付加されるトルクは、第2モータ・ジェネレータ5の駆動状態では、正トルクとなり、被駆動状態では負トルクとなる。
【0033】
上述したハイブリッド駆動装置は、主動力源1とアシスト動力源5との二つの動力源を備えているので、これらを有効に利用して低燃費で排ガス量の少ない運転がおこなわれる。具体的に説明すると、上述したエンジン10と第1モータ・ジェネレータ11とのトルクおよび回転数は図6の(A)に共線図で示す関係にあるから、エンジン10の回転数を第1モータ・ジェネレータ11によって制御でき、またエンジン10の出力トルクは吸入空気量や燃料噴射量を電気的に制御することにより任意に制御できる。そのため、例えば図7にエンジン回転数とエンジントルクとで示す燃費最適線上に運転点があるように、エンジン10が制御される。
【0034】
一方、上述したハイブリッド駆動装置では、エンジン10の出力したトルクを遊星歯車機構12によって出力軸2と第1モータ・ジェネレータ11とに分配し、第1モータ・ジェネレータ11によって発電をおこなってその電力をバッテリー15に充電し、あるいは第2モータ・ジェネレータ5に供給してこれを駆動する。また出力軸2に伝達されたトルクがいわゆる直行分トルクであって、これが要求されている駆動トルクに対して不足している場合には、第2モータ・ジェネレータ5が出力するトルクが付加される。
【0035】
したがってエンジントルクが発電のためのトルクと走行のための直行分トルクとに分割されるので、エンジン10を上述した燃費最適線上での運転に維持した場合には、充電量(もしくは充電要求量あるいは発電要求量)が変化することに伴って第1モータ・ジェネレータ11側に分配されるトルクが変化するために、直行分トルクが変化する。これは、車両の状態に変化に起因する変化であって、運転者の意図に基づくものではないから、駆動トルクを従前の状態に維持するために、第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクが変化する。その関係を図8に線図で示してある。
【0036】
上述したように第2モータ・ジェネレータ5が入力側に連結されている前記変速機6は、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速によって変速を実行するので、解放側および係合側の各摩擦係合装置の油圧を変速の進行状態に合わせて制御する必要があり、この制御が所期どおりに実行されない場合には、各摩擦係合装置のトルク容量が共に低下するいわゆるアンダーラップや、反対に各トルク容量が過剰になるいわゆるオーバーラップが生じてショックが悪化することがある。
【0037】
このような不都合を避けるために、すなわち第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクを変化させないようにエンジン10のトルクを制御すると、エンジン10の運転点が、例えば図7に破線で示してあるように、燃費最適線上から外れてしまい、燃費が悪化することになる。
【0038】
そこで、この発明に係る制御装置は、前記変速機6での変速と第2モータ・ジェネレータ5による発電要求量の変更もしくは充電要求量の変更とが重畳する場合には、以下の制御をおこなうように構成されている。図1はその制御例を示しており、先ず、変速機6で変速中か否かが判断される(ステップS1)。これは、前述した変速機用電子制御装置27によって前記変速機6での変速が判断されているか否か、あるいは変速の指令信号が出力されているか否かによって判断することができる。このステップS1で肯定的に判断された場合、すなわち変速機6での変速中の場合には、充電要求量が変速出力時の値にホールドされる(ステップS2)。すなわち充電要求量(もしくは発電要求量)の変化が制限される。
【0039】
前述したようにエンジントルクを第1モータ・ジェネレータ11と出力軸2とに分配するように構成されているから、充電要求量の変更が制限されれば、第1モータ・ジェネレータ11に対して分配するトルクが変化することがなく、もしくはそのトルクの変動が抑制され、それに伴って出力軸トルクの変動が防止もしくは抑制される。そのため、出力軸トルクをアシストする機能の第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクの変更要求が生じないから、例えば第2モータ・ジェネレータ5を等パワー線に沿って駆動することができる。すなわち、変速機6での変速中にその入力側のトルクが大きく変化したり、あるいは急激に変化したりすることがないので、変速ショックが防止もしくは回避される。
【0040】
一方、ステップS1で否定的に判断された場合には、通常の充電制御が実行される(ステップS3)。すなわち、バッテリー15の充電状態(SOC:Srate of Charge)に基づく充電要求があった場合には、それに基づく発電をおこなうように第1モータ・ジェネレータ11が制御される。その際に発電のための動力が消費されることにより出力軸2に対して分配されるトルクが低下し、あるいは反対に増大することがあるが、変速機6での変速が実行されていないので、第2モータ・ジェネレータ5が出力軸トルクの変動を抑制するように制御される。
【0041】
上記の制御をおこなった場合のタイムチャートを図2に示してある。図2に示す例は、変速機6を高速段Hに設定している状態で低速段Lへの変速が判断され、同時に充電要求量が増大した場合の例であり、走行状態が変化することに伴う変速判断が成立してt1 時点にその変速を実行するための変速指令が出力されると、要求充電量がそのt1 時点の要求量にホールドされる。その状態で高速段Hを設定していた第1ブレーキB1の油圧が低下させられ、また変速の進行に合わせて第2ブレーキB2の油圧が次第に上昇させられる。
【0042】
そのような変速制御の過程においても第2モータ・ジェネレータ5が出力を維持する等出力制御(等パワー線に沿った制御)されるので、その回転数Nm が次第に上昇し、それに併せて第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクTm が次第に低下する。このような第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクTm および回転数Nm の変化は、等パワー制御に基づくものであって、変速に伴う変化として想定されているものであるから、変速ショックが悪化する要因とはならない。言い換えれば、変速ショックを悪化させることなく所期どおりに変速が実行される。
【0043】
そして、変速終了の判定が成立すると(t2 時点)、充電要求量のホールドが解除され、充電要求量が増大させられる。
【0044】
ここで上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上記のステップS2の機能的手段が、この発明の充電制御手段に相当する。
【0045】
ところで、上述した図6の(A)に示すように、第1モータ・ジェネレータ11による発電量を増大させて負の方向のトルクを増大させると、エンジントルクを一定にしていても出力軸2に作用するトルク(直行分トルク)が増大する。したがってアクセルペダル(図示せず)が踏み込まれるなどのことによって要求駆動力が増大し、これと同時に変速機6での変速が実行される場合、その変速に関連して充電要求量(第1モータ・ジェネレータ11での発電要求量)を制御することにより、変速ショックを悪化させることなく、駆動力を要求に即して増大させることができる。
【0046】
すなわち、要求駆動力が変化した場合、それに合わせて充電要求量を変化させる。例えば要求駆動力が増大した場合に充電要求量を増大させると、遊星歯車機構12で出力軸2に分配されるトルクが増大し、また反対に要求駆動力が低下した場合に充電要求量を低下させると、遊星歯車機構12で出力軸2に分配されるトルクが低下する。そのため、第2モータ・ジェネレータ5による出力軸トルクのアシスト量を変更する必要がなく、第2モータ・ジェネレータ5を等パワー運転することができる。そのため、変速機6での変速中にその入力側の出力が特には変化しないので、変速ショックを悪化させることなく変速を実行することができる。このように要求駆動量が変化した場合に変速機6での変速に関連して充電要求量(第1モータ・ジェネレータ11での発電量)を大小に制御する手段が、この発明の充電制御手段に相当する。
【0047】
要求駆動力が増大した場合に上記の制御をおこなった例におけるタイムチャートを図3に示してある。変速機6での変速と同時、もしくは変速中の所定時点t11に要求駆動力が増大すると、充電要求量がそれに合わせて増大させられる。その結果、第2モータ・ジェネレータ5を等パワー制御してそのトルクが、回転数の増大に伴って低下しても、遊星歯車機構12で出力軸2に対して分配されるトルクが増大するので、出力軸トルクTo が増大する。すなわち、第2モータ・ジェネレータ5によるトルクアシストをおこなうことなく、要求に即して駆動力を増大させることができる。そして、所定時間後のt12時点に変速終了の判定が成立し、充電要求量がその時点のバッテリー15の状態や車両の状態に応じた値に設定される。
【0048】
このようにこの発明に係る制御装置では、変速機6での変速中にその入力側の第2モータ・ジェネレータ5の運転状態が、要求駆動力が変化しても特には変化しないので、変速ショックの悪化を防止することができる。
【0049】
なお、この発明は上述した各具体例に限定されない。この発明で対象とする変速機は、図5に示すように内燃機関のトルクと第1モータ・ジェネレータ(もしくは電動機)のトルクとを遊星歯車機構を主体とする合成分配機構を介して出力部材に伝達し、さらにその出力部材に第2モータ・ジェネレータ(もしくは電動機)のトルクを変速機を介して伝達するいわゆる機械分配式のハイブリッド駆動装置における変速機が好適であるが、これ以外の構成のものであってもよく、要は、入力側に電動機が連結されていればよい。また、この発明における電動機は、トルクを出力する電動機に限られず、上記の具体例で示したように、回生トルク(負のトルク)を発生し、かつそのトルクを制御可能なモータ・ジェネレータであってもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、変速中における変速機の入力側のトルクが安定するので、変速制御が容易になり、またショックの悪化を防止もしくは抑制することができる。
【0051】
また、請求項2の発明によれば、電動機の動作状態に影響を及ぼす外的要因が少なくなって電動機の動作状態あるいは変速機の入力トルクが安定し、その結果、変速制御が容易になり、またショックの悪化を防止もしくは抑制することができる。
【0052】
さらに、請求項3の発明によれば、要求駆動力の変化と変速機での変速とが同時に生じた場合、その変速中における充電量が制御されるため、駆動力に対する要求を満たしつつ、変速制御が容易になり、またショックの悪化を防止もしくは抑制することができる。換言すれば、変速品質が向上する。
【0053】
そして、請求項4の発明によれば、変速機での変速中には、変速に関連して充電量が制御されるので、例えば変速中での充電量の変化が抑制され、あるいは要求駆動力が変化した場合にそれに応じて充電量が制御され、その結果、電動機の動作状態の変動が抑制されるため、変速中の変速機の入力側のトルクが安定するので、変速制御が容易になり、またショックの悪化を防止もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御例を説明するためのフローチャートである。
【図2】その制御を実行した場合の模式的なタイムチャートである。
【図3】要求駆動力の増大に伴って充電要求量を変化させた場合の模式的なタイムチャートである。
【図4】この発明で対象とするハイブリッド駆動装置の一例を模式的に示すブロック図である。
【図5】そのハイブリッド駆動装置を更に具体的に示すスケルトン図である。
【図6】図5に示す各遊星歯車機構についての共線図である。
【図7】燃費最適線を模式的に示す線図である。
【図8】充電要求量(MG1発電量)と第2モータ・ジェネレータの要求トルクとの関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…主動力源、 2…出力部材(出力軸)、 5…アシスト動力源(第2モータ・ジェネレータ)、 6…変速機、 10…内燃機関(エンジン)、 11…第1モータ・ジェネレータ、 12…遊星歯車機構、 B1,B2…ブレーキ。
Claims (4)
- 蓄電手段から電力が供給される電動機が入力側に連結された変速機の制御装置において、
前記変速機での変速時に、その変速に関連して、前記蓄電手段に対する充電量を制御する充電制御手段を備えていることを特徴とする変速機の制御装置。 - 前記充電制御手段は、前記変速中での前記充電量の変化を制限する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の変速機の制御装置。
- 前記充電制御手段は、前記変速機が搭載された車両に対する要求駆動力の前記変速中における変化に基づいて、その変速中での前記充電量を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の変速機の制御装置。
- 内燃機関と、その内燃機関の出力した動力によって駆動されて前記蓄電手段に充電する電力を発生する発電手段と、前記内燃機関の動力が伝達されて回転させられる出力部材とを備え、
前記変速機から出力したトルクが前記出力部材に伝達されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の変速機の制御装置。
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