JP2006240608A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する差動機構とその出力軸に設けられた電動機とを備える車両用駆動装置において、加速性能の悪化が抑制される制御装置を提供する。
【解決手段】 エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されているときに、その制限されているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクTE が制限されたとしても駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
【選択図】 図5
【解決手段】 エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されているときに、その制限されているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクTE が制限されたとしても駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
【選択図】 図5
Description
本発明は、車両用駆動装置の制御装置に係り、差動作用が作動可能な差動機構と電動機とを備える車両用駆動装置において、特に、電動機などを小型化する技術に関するものである。
エンジンと、そのエンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両用駆動装置がそれである。このようなハイブリッド車両用駆動装置では差動機構が例えば遊星歯車装置で構成され、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪へ機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより電気的に変速比が変更される変速機例えば電気的な無段変速機として機能させられ、エンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させるように制御装置により制御されて燃費が向上させられる。
そして、上記特許文献1に示すような従来の車両用駆動装置では、差動機構はその設計に由来してトルク容量限界を有しており、エンジンが高出力化される程大型化される必要があり、車両にとっては不都合である。たとえば、エンジンの出力を第1電動機と伝達部材とに分配する型式である場合は、電気的に変速比が変更される変速機として制御される為に第1電動機はエンジンの出力トルク(以下、エンジントルクという)に対する反力トルクを受け持つので、出力されるエンジントルクに合わせて第1電動機が受け持つ反力トルク容量が必要とされる。例えば、所望の加速性能を得るために要求されるエンジントルクが大きくされること等に合わせて第1電動機が受け持つ反力トルクが大きくされる。そのため、エンジンが高出力化される程第1電動機を大型化する必要がある。
これに対し、差動機構或いは第1電動機を大型化することなく保護するために、第1電動機が受け持つことができる最大の反力トルク容量で対応可能な最大のエンジントルクの範囲内となるように一時的にエンジントルクを制限することも考えられる。そうすると、結果として駆動輪へ伝達されるトルクが減少し、加速性能に影響を与えることとなって、所望の加速性能が得られない可能性があった。
また、上記車両用駆動装置では、車両停止中や低負荷走行中や加速走行中などの車両の走行状態に基づいて、走行用駆動力源として電動機とエンジンとがそれぞれ単独で、或いは共に用いられるように設定されている場合がある。このような場合、車両の走行状態に基づいてエンジンの始動または停止が繰り返し行われる。例えば、電動機を駆動力源とする走行中に、所望の加速性能を得るために要求される駆動トルクが大きくされること等に合わせてエンジンの始動が行われ、エンジンを駆動力源とする走行に切り換えられる。このとき、少なくともエンジンの始動に要する時間だけエンジントルクが発生していないため、エンジンが既に運転状態である場合に比較してエンジントルクの発生遅れが生じる可能性がある。そうすると、結果として駆動輪へのトルクの伝達に遅れが生じ、加速性能に影響を与えることとなって、所望の加速性能が得られない可能性があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機と備える車両用駆動装置において、加速性能の悪化が抑制される制御装置を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、(a) 前記差動機構のトルク容量限界に基づいて前記エンジンの出力トルクを制限するエンジントルク制限手段と、(b) そのエンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、該制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段とを、含むことにある。
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、(a) 前記エンジンの出力トルクを制限するエンジントルク制限手段と、(b) そのエンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、該制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機すなわち前記第1電動機および/または第2電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段と、を、含むことを特徴とする。
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものであることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項2または3に係る発明において、前記エンジントルク制限手段は、前記差動機構のトルク容量限界に基づいて前記エンジンの出力トルクを制限するものであることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項4に係る発明において、前記差動機構のトルク容量限界は、前記第1電動機のトルク容量限界であることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項4に係る発明において、前記差動機構のトルク容量限界は、前記差動機構の電気的伝達容量の容量限界であることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至6のいずれかに係る発明において、前記エンジントルク制限手段は、前記エンジンを駆動力源とする車両発進時に、該エンジンの出力トルクを制限するものであることを特徴とする。
また、請求項8に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれかに係る発明において、(a) 前記差動機構に備えられ、該差動機構を差動作用が働く差動状態と該差動作用しないロック状態とに選択的に切り換えるための係合装置を更に含み、(b) 前記エンジントルク制限手段は、前記係合装置による前記差動状態からロック状態への切換えに際して、該エンジンの出力トルクを制限するものであることを特徴とする。
また、請求項9に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至8のいずれかに係る発明において、前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものであることを特徴とする。
また、請求項10に係る発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、該発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことを特徴とする。
また、請求項11に係る発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、該発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記第2電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことを特徴とする。
また、請求項12に係る発明の要旨とするところは、請求項11に係る発明において、前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものであることを特徴とする。
また、請求項13に係る発明の要旨とするところは、請求項10乃至12のいずれかに係る発明において、(a) 前記エンジンの始動を行うエンジン始動制御手段を更に含み、(b) 前記トルクアシスト制御手段は、前記エンジン始動制御手段による前記エンジンの始動時の該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることを特徴とする。
また、請求項14に係る発明の要旨とするところは、請求項10乃至13のいずれかに係る発明において、(a) 前記エンジンはその作動状態が変更可能なものであり、(b) 前記エンジンの作動状態を変更する作動状態変更手段を更に含み、(c) 前記トルクアシスト手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動状態の切換えに伴う該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることを特徴とする。
また、請求項15に係る発明の要旨とするところは、請求項14に係る発明において、(a) 前記エンジンはその作動気筒数が切り換えられるものであり、(b) 前記作動状態変更手段は、前記エンジンの作動気筒数を切り換えるものであり、(c) 前記トルクアシスト制御手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動気筒数の切換えに伴う該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることを特徴とする。
また、請求項16に係る発明の要旨とするところは、請求項10乃至15のいずれかに係る発明において、前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものであることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、エンジンと、そのエンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、エンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、トルクアシスト制御手段により、その制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。すなわち、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られる。
請求項2に係る発明によれば、エンジンと、そのエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、エンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、トルクアシスト制御手段により、その制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機すなわち前記第1電動機および/または第2電動機によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。すなわち、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られる。
請求項3に係る発明によれば、前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものであるので、トルクアシスト制御手段により第2電動機によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、前記エンジントルク制限手段は、前記差動機構のトルク容量限界に基づいて前記エンジンの出力トルクを制限するものであることから、その差動機構のトルク容量限界のためにエンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
請求項5に係る発明によれば、前記差動機構のトルク容量限界は、前記第1電動機のトルク容量限界であることから、その第1電動機のトルク容量限界のためにエンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
また、請求項6に係る発明によれば、前記差動機構のトルク容量限界は、前記差動機構の電気的伝達容量の容量限界であることから、その差動機構の電気的伝達容量の容量限界のためにエンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
また、請求項7に係る発明によれば、前記エンジントルク制限手段は、前記エンジンを駆動力源とする車両発進時に、該エンジンの出力トルクを制限するものであることから、その車両発進時のエンジンの出力トルクを制限に拘わらず、駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
また、請求項8に係る発明によれば、(a) 前記差動機構に備えられ、該差動機構を差動作用が働く差動状態と該差動作用しないロック状態とに選択的に切り換えるための係合装置を更に含み、(b) 前記エンジントルク制限手段は、前記係合装置による前記差動状態からロック状態への切換えに際して、該エンジンの出力トルクを制限するものであることから、エンジントルクが制限されたとしても駆動輪へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
また、請求項9に係る発明によれば、前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものであることから、制動時における不要なトルクアシストが回避される。
また、請求項10に係る発明によれば、エンジンと、そのエンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、その伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、該発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことから、エンジンの出力トルクの発生が遅れに起因する駆動トルクの一時的な落ち込みが好適に防止される。
また、請求項11に係る発明によれば、エンジンと、そのエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、その発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記第2電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことから、エンジンの出力トルクの発生が遅れに起因する駆動トルクの一時的な落ち込みが好適に防止される。
また、請求項12に係る発明によれば、前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものであることから、駆動輪に作動的に連結される。
また、請求項13に係る発明によれば、(a) 前記エンジンの始動を行うエンジン始動制御手段を更に含み、(b) 前記トルクアシスト制御手段は、前記エンジン始動制御手段による前記エンジンの始動時の該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることから、そのエンジンの始動時の該エンジンの出力トルクの発生遅れに起因する駆動トルクの一時的な落ち込みが好適に防止される。
また、請求項14に係る発明によれば、(a) 前記エンジンはその作動状態が変更可能なものであり、(b) 前記エンジンの作動状態を変更する作動状態変更手段を更に含み、(c) 前記トルクアシスト手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動状態の切換えに伴うそのエンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることから、エンジンの作動状態の切換えに伴うそのエンジンの出力トルクの発生遅れ起因する駆動トルクの一時的な落ち込みが好適に防止される。
また、請求項15に係る発明によれば、(a) 前記エンジンはその作動気筒数が切り換えられるものであり、(b) 前記作動状態変更手段は、前記エンジンの作動気筒数を切り換えるものであり、(c) 前記トルクアシスト制御手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動気筒数の切換えに伴う該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものであることから、エンジンの作動気筒数の切換えに伴うそのエンジンの出力トルクの発生遅れに起因する駆動トルクの一時的な落ち込みが好適に防止される。
また、請求項16に係る発明によれば、前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものであることから、車両制動時における不用なトルクアシストが回避される。
ここで、好適には、前記トルクアシスト制御手段によりトルクアシストのために制御される電動機は、必ずしも第1電動機や第2電動機ではなく、たとえば後輪を駆動するために設けられたものであったり、エンジンを始動させるために設けられたものであっても差し支えない。
また、好適には、前記差動機構は、その差動機構を差動作用が働く差動状態とその差動作用をしないロック状態とに選択的に切り換えるための係合装置を備えるものである。このようにすれば、係合装置により差動作用が働く差動状態とその差動作用をしないロック状態とに差動機構が選択的に切り換えられることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域において、上記差動機構が差動状態とされると車両の燃費性能が確保されるが、高速走行においてその差動機構がロック状態とされると専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達され、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また例えば、高出力走行において差動機構がロック状態とされると、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、電動機が発生すべき電気的エネルギの最大値換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
また、好適には、前記差動機構は、前記エンジンに連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有するものであり、前記係合装置は、前記差動状態とするためにその第1要素乃至第3要素を相互に相対回転可能とし、前記ロック状態とするためにその第1要素乃至第3要素を共に一体回転させるか或いはその第2要素を非回転状態とするものである。このようにすれば、差動機構が差動状態とロック状態とに切り換えられるように構成される。
また、好適には、前記係合装置は、前記第1要素乃至第3要素を共に一体回転させるために前記第1要素乃至第3要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するクラッチおよび/または前記第2要素を非回転状態とするために前記第2要素を非回転部材に連結するブレーキである。このようにすれば、差動機構が差動状態とロック状態とに簡単に切り換えられるように構成される。
また、好適には、前記差動機構は、前記クラッチおよび前記ブレーキの解放により前記第1回転要素乃至第3回転要素を相互に相対回転可能な差動状態とされて電気的な差動装置とされ、前記クラッチの係合により変速比が1である変速機とされるか、或いは前記ブレーキの係合により変速比が1より小さい増速変速機とされるものである。このようにすれば、差動機構が差動状態とロック状態とに切り換えられるように構成されるとともに、単段または複数段の定変速比を有する変速機としても構成され得る。
また、好適には、前記差動機構動は遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成され得る。
また、好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また、好適には、前記切換制御手段は、車両状態が予め設定された車両の高速走行を判定するための高速走行判定値を超えるような高車速時のときに、前記差動機構をロック状態に切り換えるものである。このようにすれば、実際の車速が高速走行判定値を越える高速走行では、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達され、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。
また、好適には、前記切換制御手段は、車両状態が予め設定された車両の高出力走行を判定するための高出力走行判定値を超えるような高出力時のときに、前記差動機構をロック状態に切り換えるものである。このようにすれば、要求駆動力或いは実際の駆動力などの駆動力関連値が高出力走行判定値を越える高出力走行では、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達され、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となるので、電動機が発生すべき電気的エネルギの最大値換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。また、上記駆動力関連値は、エンジントルク、変速機の出力トルク、駆動輪の駆動トルク等の動力伝達経路における伝達トルクや回転力、それを要求するスロットル弁開度など、車両の駆動力に直接或いは間接的に関連するものである。
また、好適には、前記切換制御手段は、車両状態が前記差動機構を差動状態として電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時のときに、その差動機構をロック状態に切り換えるものである。このようにすれば、差動機構が通常は差動状態とされる場合であっても優先的にロック状態とされることで、ロック状態ではあるが差動状態での走行と略同様の車両走行が確保される。
また、好適には、前記動力伝達経路の一部を構成する変速部を更に備え、その変速部の変速比と前記差動機構の変速比とに基づいて前記車両用駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、変速部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになるので、差動機構における電気的な差動装置としての制御の効率が一層高められる。
また、好適には、前記変速部は有段式の自動変速機である。このようにすれば、差動機構の差動状態において差動機構と変速部とで無段変速機が構成され、差動機構のロック状態において差動機構と変速部とで有段変速機が構成される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)を介して直接に連結された差動部11と、その差動部11と駆動輪38との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の変速機として機能する変速部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪38(図5参照)との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪38へ伝達する。
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように設けられている第2電動機M2とを備えている。なお、この第2電動機M2は伝達部材18から駆動輪38までの間の動力伝達経路を構成するいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、係合装置としての切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。
この状態で、上記切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が係合させられると動力分配機構16は前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、上記切換クラッチC0が係合させられて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合させられると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1が共に回転すなわち一体回転させられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて第1サンギヤS1がケース12に連結させられると、動力分配機構16は第1サンギヤS1が非回転状態とさせられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は増速機構として機能するものであり、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)の変速状態を差動状態すなわち非ロック状態と非差動状態すなわちロック状態とに、すなわち差動部11(動力分配機構16)を電気的な差動装置として作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な無段変速機として作動する電気的な無段変速作動可能な無段変速状態と、電気的な無段変速作動しない変速状態例えば無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化を一定にロックするロック状態すなわち1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動する電気的な無段変速作動しないすなわち電気的な無段変速作動不能な定変速状態(非差動状態)、換言すれば変速比が一定の1段または複数段の変速機として作動する定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備えている。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。このように、自動変速部20と伝達部材18とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間すなわち差動部11(伝達部材18)と駆動輪38との間の動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3は従来の車両用有段式自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された変速機構10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT )が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、変速機構10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構10は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。また、差動部11も有段変速状態と無段変速状態とに切り換え可能な変速機であると言える。
例えば、変速機構10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
しかし、変速機構10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体としてのトータル変速比(総合変速比)γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NE を示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結されるとともに切換クラッチC0を介して第2回転要素(第1サンギヤS1)RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
例えば、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態(差動状態)に切換えられたときは、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、車速Vに拘束される第1リングギヤR1の回転速度が略一定である場合には、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられる。また、切換クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、動力分配機構16は上記3回転要素が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NE と同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると動力分配機構16は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度NE よりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NE と同じ回転速度で第8回転要素RE8に差動部11すなわち動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度NE よりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
エンジン8は、エンジン8の負荷状態に応じて燃料供給を停止させて気筒を選択的に休止させることによりエンジン8の作動気筒数が切換え可能な可変気筒エンジンである。例えば、軽負荷走行時においては、一部の気筒乃至全気筒への燃料供給を停止して作動気筒数を減少させる部分気筒運転(減筒運転或いは休筒運転)が行われて燃費消費量が減少させられる。また、発進時や急加速時、中・高負荷走行時においては、すべての気筒を運転する全気筒運転が行われて所望の出力が得られる。
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置40には、図4に示す各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を示す信号、シフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NE を表す信号、ギヤ比列設定値を示す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度NOUT に対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温を示す油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量Accを示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、各車輪の車輪速を示す車輪速信号、変速機構10を有段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を有段変速状態(ロック状態)に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を示す信号、変速機構10を無段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を無段変速状態(差動状態)に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を示す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、エンジン8の空燃比A/Fを示す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置40からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置43(図5参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管95に備えられた電子スロットル弁96の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ97への駆動信号や燃料噴射装置98によるエンジン8の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置99によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42(図5参照)に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、有段変速制御手段54は、自動変速部20の変速を行う変速制御手段として機能するものである。例えば、有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された図6の実線および一点鎖線に示す関係(変速線図、変速マップ)から車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断し、すなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の変速を実行する。このとき、有段変速制御手段54は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を除いた油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令)を油圧制御回路42へ出力する。
ハイブリッド制御手段52は、変速機構10の前記無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセルペダル操作量Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NE とエンジントルクTE となるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
ハイブリッド制御手段52は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NE と車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は例えばエンジン回転速度NE とエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TE とをパラメータとする二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に定められたエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)を予め記憶しており、その最適燃費率曲線に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTE とエンジン回転速度NE となるように変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
ハイブリッド制御手段52は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置98による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置99による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置43に出力して必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段52は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置43は、ハイブリッド制御手段52による指令に従って、スロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉する他、燃料噴射装置98により燃料噴射をし、イグナイタ等の点火装置99により点火する。
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン8の出力制御のためにエンジン8の作動気筒数を切り換える作動気筒数切換制御手段90を備え、車速Vやアクセルペダル操作量Accなどの車両状態に基づいて、予め実験的に求められた車両状態に応じた作動気筒数を判断し、その作動気筒数となるように作動気筒数切換制御手段90にエンジン8の作動気筒数の切換えを実行させる。この車両状態に応じた作動気筒数は、定速走行のような軽負荷走行時には少なくなるように、また車両発進加速時やアクセルペダルが大きく踏込操作される急加速時のような中・高負荷走行時には多くなるように、予め実験的に求められている。
作動気筒数切換制御手段90は、一部の気筒乃至全気筒への燃料噴射装置98による燃料供給を停止させて部分気筒運転状態とし、全気筒へ燃料噴射装置98により燃料を供給させて全気筒運転状態とする。特に、この全気筒への燃料噴射装置98による燃料供給の停止は所謂フューエルカット作動である。このように、ハイブリッド制御手段52は、車両状態に基づいてエンジン8の作動気筒数の切換えを行うことにより、エンジン8の作動状態を停止状態から全気筒運転状態の間で変更する。
前記図6の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機M2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図6に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUT とをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図6中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に記憶手段56に予め記憶されている。
そして、ハイブリッド制御手段52は、例えば図6の駆動力源切換線図から車速Vと要求出力トルクTOUT とで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。このように、ハイブリッド制御手段52によるモータ走行は、図6から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT 時すなわち低エンジントルクTE 時、或いは車速Vの比較的低車速時すなわち低負荷域で実行される。よって、車両発進に関しては、通常はモータ発進が実行される。但し、例えば図6の駆動力源切換線図のモータ走行領域を超える要求出力トルクTOUT すなわち要求エンジントルクTE とされる程大きくアクセルペダルが踏込操作されるような車両状態によっては、エンジン発進も通常実行される。
ハイブリッド制御手段52は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用によりエンジン回転速度NE を零乃至略零に維持する。
ハイブリッド制御手段52は、エンジン走行とモータ走行とを切り換えるために、エンジン8の作動状態を運転状態と停止状態との間で切り換える、すなわちエンジン8の始動および停止を行うエンジン始動制御手段としてのエンジン始動停止制御手段92を備えている。このエンジン始動停止制御手段92は、ハイブリッド制御手段52により例えば図6の駆動力源切換線図から車両状態に基づいてモータ走行とエンジン走行と切換えが判断された場合に、エンジン8の始動または停止を実行する。
例えば、エンジン始動停止制御手段92は、図6の実線Bの点a→点bや点a→点b’に示すように、アクセルペダルが踏込操作されて要求出力トルクTOUT が大きくなり車両状態がモータ走行領域からエンジン走行領域へ変化した場合には、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち第1電動機M1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度NE を引き上げ、所定のエンジン回転速度NE ’例えば自律回転可能なエンジン回転速度NE で点火装置99により点火させるようにエンジン8の始動を行って、ハイブリッド制御手段52によるモーター走行からエンジン走行へ切り換える。このとき、エンジン始動停止制御手段92は、第1電動機回転速度NM1を速やかに引き上げることでエンジン回転速度NE を速やかに所定のエンジン回転速度NE ’まで引き上げてもよい。これにより、良く知られたアイドル回転速度NEID L 以下のエンジン回転速度領域における共振領域を速やかに回避できて始動時の振動が抑制される。
また、エンジン始動停止制御手段92は、図6の実線Bの点b→点aや点b’→点aに示すように、アクセルペダルが戻されて要求出力トルクTOUT が小さくなり車両状態がエンジン走行領域からモータ走行領域へ変化した場合には、燃料噴射装置98により燃料供給を停止させるように、すなわちフューエルカットによりエンジン8の停止を行って、ハイブリッド制御手段52によるエンジン走行からモータ走行へ切り換える。このとき、エンジン始動停止制御手段92は、第1電動機回転速度NM1を速やかに引き下げることでエンジン回転速度NE を速やかに零乃至略零まで引き下げてもよい。これにより、上記共振領域を速やかに回避できて停止時の振動が抑制される。或いは、エンジン始動停止制御手段92は、フューエルカットより先に、第1電動機回転速度NM1を引き下げてエンジン回転速度NE を引き下げ、所定のエンジン回転速度NE ’でフューエルカットするようにエンジン8の停止を行ってもよい。
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置60からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪38にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行には、エンジン走行+モータ走行も含むものとする。
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の運転状態を維持させられる。例えば、車両停止時に蓄電装置60の充電容量SOCが低下して第1電動機M1による発電が必要となった場合には、エンジン8の動力により第1電動機M1が発電させられてその第1電動機M1の回転速度が引き上げられ、車速Vで一意的に決められる第2電動機回転速度NM2が車両停止状態により零(略零)となっても動力分配機構16の差動作用によってエンジン回転速度NE が自律回転可能な回転速度以上に維持される。
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度NE を一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度NE を一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段52はエンジン回転速度NE を引き上げる場合には、車速V(駆動輪38)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
増速側ギヤ段判定手段62は、変速機構10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて記憶手段56に予め記憶された前記図6に示す変速線図に従って変速機構10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。
切換制御手段50は、車両状態に基づいて前記係合装置(切換クラッチC0、切換ブレーキB0)の係合/解放を切り換えることにより、前記無段変速状態と前記有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と前記ロック状態とを選択的に切り換える。例えば、切換制御手段50は、記憶手段56に予め記憶された前記図6の破線および二点鎖線に示す関係(切換線図、切換マップ)から車速Vおよび要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、変速機構10(差動部11)の変速状態を切り換えるべきか否かを判断して、すなわち変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは変速機構10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定することにより変速機構10の切り換えるべき変速状態を判断して、変速機構10を前記無段変速状態と前記有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換える変速状態の切換えを実行する。
具体的には、切換制御手段50は有段変速制御領域内であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速を許可する。このときの有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20の自動変速を実行する。例えば記憶手段56に予め記憶された図2は、このときの変速において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。すなわち、変速機構10全体すなわち差動部11および自動変速部20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段が判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、切換制御手段50によって変速機構10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、差動部11が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、変速機構10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
しかし、切換制御手段50は、変速機構10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域内であると判定した場合は、変速機構10全体として無段変速状態が得られるために差動部11を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、切換制御手段50により無段変速状態に切り換えられた差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ここで前記図6について詳述すると、図6は自動変速部20の変速判断の基となる記憶手段56に予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)であり、車速Vと駆動力関連値である要求出力トルクTOUT とをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図の一例である。図6の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。
また、図6の破線は切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための判定車速V1および判定出力トルクT1を示している。つまり、図6の破線はハイブリッド車両の高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、ハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速部20の出力トルクTOUT が高出力となる高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。さらに、図6の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図6は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUT とをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。なお、この切換線図を含めて変速マップとして記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUT の何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。
上記変速線図、切換線図、或いは駆動力源切換線図等は、マップとしてではなく実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUT と判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。この場合には、切換制御手段50は、車両状態例えば実際の車速が判定車速V1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。また、切換制御手段50は、車両状態例えば自動変速部20の出力トルクTOUT が判定出力トルクT1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。
また、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時、例えば第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわち第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や、故障とか低温による機能低下が発生したような車両状態となる場合には、無段制御領域であっても車両走行を確保するために切換制御手段50は変速機構10を優先的に有段変速状態としてもよい。
前記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速部20の出力トルクTOUT 、エンジントルクTE 、車両加速度や、例えばアクセル開度或いはスロットル弁開度θTH(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度NE とに基づいて算出されるエンジントルクTE などの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量或いはスロットル開度等に基づいて算出される要求(目標)エンジントルクTE 、自動変速部20の要求(目標)出力トルクTOUT 、要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT 等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
また、例えば判定車速V1は、高速走行において変速機構10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において変速機構10が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機M1の反力トルクをエンジンの高出力域まで対応させないで第1電動機M1を小型化するために、例えば第1電動機M1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機M1の特性に応じて設定されている。
図7は、エンジン回転速度NE とエンジントルクTE とをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための境界線としてのエンジン出力線を有し、記憶手段56に予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。切換制御手段50は、図6の切換線図に替えてこの図7の切換線図からエンジン回転速度NE とエンジントルクTE とに基づいて、それらのエンジン回転速度NE とエンジントルクTE とで表される車両状態が無段制御領域内であるか或いは有段制御領域内であるかを判定してもよい。また、この図7は図6の破線を作るための概念図でもある。言い換えれば、図6の破線は図7の関係図(マップ)に基づいて車速Vと出力トルクTOUT とをパラメータとする二次元座標上に置き直された切換線でもある。
図6の関係に示されるように、出力トルクTOUT が予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が、有段制御領域として設定されているので有段変速走行がエンジン8の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速の比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
同様に、図7の関係に示されるように、エンジントルクTE が予め設定された所定値TE1以上の高トルク領域、エンジン回転速度NE が予め設定された所定値NE1以上の高回転領域、或いはそれらエンジントルクTE およびエンジン回転速度NE から算出されるエンジン出力が所定以上の高出力領域が、有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高トルク、比較的高回転速度、或いは比較的高出力時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルク、比較的低回転速度、或いは比較的低出力時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。図7における有段制御領域と無段制御領域との間の境界線は、高車速判定値の連なりである高車速判定線および高出力走行判定値の連なりである高出力走行判定線に対応している。
これによって、例えば、車両の低中速走行および低中出力走行では、変速機構10が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、実際の車速Vが前記判定車速V1を越えるような高速走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。
また、出力トルクTOUT などの前記駆動力関連値が判定トルクT1を越えるような高出力走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギ換言すれば第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて第1電動機M1或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
つまり、前記所定値TE1が第1電動機M1が反力トルクを受け持つことができるエンジントルクTE の切換判定値として予め設定されると、エンジントルクTE がその所定値TE1を超えるような高出力走行では、差動部11が有段変速状態とされるため、第1電動機M1は差動部11が無段変速状態とされているときのようにエンジントルクTE に対する反力トルクを受け持つ必要が無いので、第1電動機M1の大型化が防止されつつその耐久性の低下が抑制される。言い換えれば、本実施例の第1電動機M1は、その最大出力がエンジントルクTE の最大値に対して必要とされる反力トルク容量に比較して小さくされることで、すなわちその最大出力を上記所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE に対する反力トルク容量に対応させないことで、小型化が実現されている。
尚、上記第1電動機M1の最大出力は、この第1電動機M1の使用環境に許容されるように実験的に求められて設定されている第1電動機M1の定格値である。また、上記エンジントルクTE の切換判定値は、第1電動機M1が反力トルクを受け持つことができるエンジントルクTE の最大値またはそれよりも所定値低い値であって、第1電動機M1の耐久性の低下が抑制されるように予め実験的に求められた値である。
また、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。これによって、ユーザは、例えば図8に示すような有段自動変速走行におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度NE の変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度NE の変化が楽しめる。
このように、本実施例の変速機構10(差動部11、動力分配機構16)は無段変速状態(差動状態)と有段変速状態(ロック状態)とに選択的に切換え可能であって、前記切換制御手段50により車両状態に基づいて差動部11の切り換えるべき変速状態が判断され、差動部11が無段変速状態と有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換えられる。
そして、切換制御手段50による変速機構10の無段変速状態と有段変速状態との切換えの際には、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の解放と係合との切換えに伴い、変速機構10を有段変速状態とするための切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0による係合トルクと、変速機構10の無段変速状態における第1電動機M1による反力トルクとの間でトルクの受け渡しが行われる。
一方、この動力分配機構16はエンジントルクTE を第1電動機M1と伝達部材18に分配することから、第1電動機M1が受け持つ反力トルクや切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が伝達する伝達トルクはエンジントルクTE に応じたトルクとされる。よって、エンジントルクTE に変化が生じるとそのエンジントルク変化に応じて第1電動機M1による反力トルクや切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0による伝達トルクが変化させられる。
他方、動力分配機構16の差動状態とロック状態との切換えに際して、第1電動機M1による反力トルクと切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の係合トルクとの間でトルクが円滑に受け渡されるように、第1電動機M1による反力トルクの有無の切換えと、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の解放と係合との切換えとのタイミングが予め設定される。
ここで、例えば、アクセルペダルの操作により要求出力トルクTOUT が変化したことで車両状態が前記図6の実線Bの点a←→点bの如く変化して、変速機構10の無段変速状態と有段変速状態との切換えが行われる際には、要求出力トルクTOUT に合わせてエンジントルクTE が変化する。このとき、予め設定されたタイミングでトルクの受渡しが行われるが、そのトルクの受け渡しの過渡期間にエンジントルクTE が変化するとトルクが円滑に受け渡されず、変速機構10の無段変速状態と有段変速状態との切換えに伴う切換えショックが発生する可能性がある。特に、図6からも明らかなように、アクセルペダルが踏み込まれたことによる変速機構10の無段変速状態から有段変速状態への切換え時には、すなわち動力分配機構16の差動状態からロック状態への切換え時には、エンジントルクTE が増加することになるため、より切換えショックが発生しやすい可能性があった。
そこで、エンジントルク制限手段80は、動力分配機構16の差動状態から切換クラッチC0によるロック状態への切換えに際して、その切換えに伴う切換えショックを抑制するために、第1電動機M1による反力トルクから切換クラッチC0による係合トルクへのトルクの受渡し時にエンジントルクTE を制限する。すなわち、エンジントルク制限手段80は、第1電動機M1による反力トルクから切換クラッチC0による係合トルクへのトルクの受渡しが実際に行われている過渡期間は、エンジントルクTE の増加を可及的に小さくするようにエンジントルクTE を制限する。例えば、エンジントルク制限手段80は、切換制御手段50による切換クラッチC0の係合作動期間に、電子スロットル弁71の開度を絞ったり、燃料噴射装置98による燃料供給量を減少させたり、点火装置99によるエンジン8の点火時期を遅角させたりする指令をエンジン出力制御装置43に出力して、エンジントルクTE を一時的に低下させてエンジントルクTE の増加を抑制する。
前記エンジントルク制限手段80は、例えばエンジントルクTE の変化が予め記憶された所定値より大きい場合に、すなわちエンジントルクTE の変化率が予め記憶された所定エンジントルク変化率より大きい場合に、エンジントルクTE の変化を抑制する。この所定エンジントルク変化率は、動力分配機構16の差動状態からロック状態への切換えに伴う切換えショックを抑制する必要がある程大きいことが予め実験等により求められて記憶されている単位時間当たりのエンジントルクTE の変化量である。またエンジントルク制限手段80は、例えば予め実験的に求められた関係から実際のアクセル開度信号Acc(スロットル開度θTH)およびエンジン回転速度NE に基づいて推定エンジントルクTE を算出し、その推定エンジントルクTE に基づいてエンジントルクTE の変化率を算出する。
また、アクセルペダルが踏み込まれたことにより動力分配機構16を差動状態から切換クラッチC0によるロック状態へ切り換える場合に、その切換えに伴う切換えショックを抑制するために、ハイブリッド制御手段52により第1電動機回転速度NM1をエンジン回転速度NE に略同期回転させて、切換クラッチC0の相対回転速度が抑制された状態で切換制御手段50により切換クラッチC0を係合させるように、差動状態からロック状態への切換え時のトルクの受け渡しのタイミングを設定してもよい。このとき、切換クラッチC0が係合されるまでは、ハイブリッド制御手段52は第1電動機M1にエンジントルクTE に対する反力トルクを発生させる必要がある。しかしながら、本実施例では、第1電動機M1はその小型化のために所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE に対する反力トルクに対応していないため、切換クラッチC0が係合されるまでにエンジントルクTE が所定値TE1を超えると第1電動機M1の耐久性が低下する可能性がある。
そこで、エンジントルク制限手段80は、前述した機能に加え、第1電動機M1の大型化が防止されつつ耐久性の低下が抑制されるために、動力分配機構16の差動状態から切換クラッチC0によるロック状態への切換えに際して、切換クラッチC0が係合されるまでは、所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE が出力されないように、エンジントルクTE を制限する。エンジントルク制限手段80は、電子スロットル弁96の開度を絞ったり、燃料噴射装置98による燃料供給量を減少させたり、点火装置99によるエンジン8の点火時期を遅角させたりする指令をエンジン出力制御装置43に出力し、エンジントルクTE を一時的に低下させてそのエンジントルクTE を所定値TE1以下に制限する。
図9は、アクセルペダル操作量(アクセル開度)Accに対するエンジントルクTE の出力特性図の一例である。例えば、動力分配機構16の差動状態から切換クラッチC0によるロック状態への切換え時にアクセルペダルがアクセル開度Acc1以上踏込操作される場合に、切換クラッチC0が係合完了するまでは、所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE が出力されないように、言い換えれば第1電動機M1による反力トルクがとれるように、エンジントルク制限手段80により図9の破線Aから実線BとされたエンジントルクTE の出力特性に従ってエンジントルクTE が制限される。図9の斜線部分は、エンジントルクTE の出力特性において、アクセルペダルがアクセル開度Acc1以上踏込操作されて要求エンジントルクTE が所定値TE1を超える高トルク領域となる部分であって、第1電動機M1の大型化が防止されつつその耐久性の低下が抑制されるためにエンジントルクTE が所定値TE1を超えないように制限される制限領域Cである。
但し、エンジントルクTE が前記所定値TE1を超えるエンジン高トルク領域が全て元々差動部11を有段変速状態としなければいけないロック領域(有段制御領域)ではない。つまり、要求エンジントルクTE が前記所定値TE1を超えるエンジン高トルク領域であっても、差動部11を無段変速状態としなければいけない制限領域Dがある。以下に、その制限領域Dに関する制御作動について説明する。
差動部11の無段変速状態においては、その電気的な無段変速作動により車速Vに拘束されることなくエンジン回転速度NE が制御され得る。例えば、前記ハイブリッド制御手段52は、車両の停止状態又は低車速状態であっても差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の作動状態を維持させられる。よって、例えば動力伝達経路にクラッチやトルクコンバータ等の流体伝動装置のような入力側と出力側とが相対回転可能な機構(装置)が備えられなくとも、差動部11の無段変速状態ではハイブリッド制御手段52はエンジン作動を維持させられると共にエンジン発進を良好に行える。
それに対し、差動部11の有段変速状態においては、エンジン8と駆動輪38との間の動力伝達経路が機械的に連結されてエンジン回転速度NE は車速Vに拘束されるので、車両の停止状態又は極低車速状態では、ハイブリッド制御手段52はエンジン作動を維持させられず、エンジン発進を行えない可能性がある。
ハイブリッド制御手段52により差動部11の無段変速状態が適切に制御されるためには、第1電動機M1はエンジントルクTE に対する反力トルクを発生させる必要があるが、本実施例ではエンジントルクTE が前記所定値TE1以上において、第1電動機M1はその小型化のために所定値TE1以上に対する反力トルクに対応させずに差動部11が有段変速状態とされる。例えば、エンジン発進時に要求出力トルクTOUT が前記判定出力トルクT1以上の高トルク領域すなわち要求エンジントルクTE が前記所定値TE1以上の高トルク領域とされる程大きくアクセルペダルが踏込操作されるような車両状態とされると、前記切換制御手段50は差動部11を有段変速状態へ切り換えるので、ハイブリッド制御手段52はエンジン発進を行えない可能性がある。見方を換えれば、大きくアクセルペダルが踏込操作される場合のエンジン発進に際して、第1電動機M1の耐久性の低下を考慮せず差動部11を無段変速状態に維持するか、或いは専らそのエンジン発進の為だけに第1電動機M1を前記所定値TE1以上のエンジントルクTE に対する反力トルクを発生可能なように大型化する必要がある。
そこで、前記切換制御手段50は、前述した機能に加え、車両状態が前記制限領域Dである場合には、例えば差動部11を有段変速状態(ロック状態)へ切り換えるべき車両状態であっても実際の車速Vが所定車速V2以下である場合には、差動部11を無段変速状態(差動状態)から有段変速状態(ロック状態)へ切り換えない。この所定車速V2は、エンジン8の自律回転を維持可能な回転速度例えばアイドル回転速度NIDL に対応する車速Vであって、差動部11が有段変速状態とされたときに車速Vに拘束されるエンジン回転速度NE がアイドル回転速度NIDL を超えるか否かを判定するために予め求められて記憶されている判定車速である。
そして、第1電動機M1の大型化が防止されつつその耐久性の低下が抑制されると共に、差動部11の無段変速状態においてハイブリッド制御手段52によりエンジン発進が適切に実行されるために、前記エンジントルク制限手段80は、前述した機能に加え、実際の車速Vが所定車速V2以下となるエンジン発進時には、前記所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE が出力されないように、そのエンジントルクTE を一時的に低下させて所定値TE1以下に制限する指令をエンジン出力制御装置43に出力して、エンジントルクTE を制限する。
別の見方をすれば、前記制限領域Dは、エンジントルクTE が所定値TE1を超えたことに基づいて切換制御手段50により差動部11が有段変速状態へ切り換えられないように、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が所定値TE1以下に制限される領域でもある。
前記図9の斜線部分に示す制限領域Cは、アクセルペダルがアクセル開度Acc1以上踏込操作されて要求エンジントルクTE が前記所定値TE1を超える高トルク領域であっても、差動部11が無段変速状態に維持されるためにエンジントルクTE が前記所定値TE1を超えないように制限される制限領域でもある。このように、エンジン発進時にアクセルペダルがアクセル開度Acc1以上踏込操作される場合には、エンジントルク制限手段80により図9の破線Aから実線BとされたエンジントルクTE の出力特性に従ってエンジントルクTE が制限される。
図10は、図6、図7の無段制御領域(差動領域)と有段制御領域(ロック領域)とを、車速VとエンジントルクTE とで構成される二次元座標上に置き直した一例である。図10の斜線部分に示すような、車速Vが所定車速V2以下且つ要求エンジントルクTE が前記所定値TE1を超える高トルク領域が、差動部11が無段変速状態に維持されるために、エンジントルクTE が前記所定値TE1を超えないように制限される制限領域Dである。すなわち、エンジン発進が適切に実行されるためには前記切換制御手段50により差動部11が有段変速状態(ロック状態)へ切り換えられ得ないので、この制限領域Dは、エンジントルクTE が前記所定値TE1を超えないように制限される制限領域である。
ところで、前記エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されると、結果として駆動輪38へ伝達されるトルクが減少して加速性能に影響を与える可能性がある。例えば、アクセルペダルが踏み込まれた場合には速やかに要求駆動トルクが充足されて加速性能が向上することが望まれるが、アクセルペダルの踏込みによる差動部11の無段変速状態から有段変速状態への切換えに際して、前記エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されると、アクセルペダルを踏み込んでいるのに所望の加速性能が得られない可能性がある。
そこで、トルクアシスト制御手段82は、前記エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されているときに、その制限されているエンジントルクTE を補うように、第2電動機M2によるトルクアシストを実行する。
具体的には、エンジントルク制限判定手段84は、動力分配機構16の差動状態から切換クラッチC0によるロック状態への切換えに際して、エンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であるか否かを判定する。例えば、エンジントルク制限判定手段84は、切換制御手段50による切換クラッチC0の係合作動期間に、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE を一時的に低下させる指令がエンジン出力制御装置43に出力されているか否かを判定することにより、エンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であるか否かを判定する。
また、エンジントルク制限判定手段84は、エンジン発進時に、エンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であるか否かを判定する。例えば、エンジントルク制限判定手段84は、ハイブリッド制御手段52によるエンジン発進時に、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE を一時的に低下させる指令がエンジン出力制御装置43に出力されているか否かを判定することにより、エンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であるか否かを判定する。
トルクアシスト量算出手段86は、前記トルクアシスト制御手段82によるトルクアシスト量を算出する。具体的には、トルクアシスト量算出手段86は、エンジントルク制限手段80により制限されているエンジントルクTE すなわちトルク規制量を算出し、予め実験的に求められた関係Sからそのトルク規制量に基づいてトルクアシスト量を算出する。
例えば、トルクアシスト量算出手段86は、エンジントルク制限手段80により例えば図9の破線Aから実線BとされたエンジントルクTE の出力特性に従って実際のアクセル開度Accs に対するエンジントルクTE が点aから点bとされるように制限される場合には、点aと点bとにおけるエンジントルク差(=TEa−TE1)を上記トルク規制量Sとして算出する。
図11の(a)は、トルク規制量に対するトルクアシスト量を定めた前記関係Sの一例であり、トルク規制量が増える程トルクアシスト量が増えるように設定されている。また、図11の(a)中の実線Aは、動力分配機構16のロック状態への切換え時にエンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE の制限が実行された場合、すなわちロック時トルク規制時の場合のトルクアシスト量Aa の一例である。また、図11の(a)中の実線Bは、エンジン発進時にエンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE の制限が実行された場合、すなわち発進時トルク規制時の場合のトルクアシスト量Ab の一例である。さらに、停車時或いは車速Vが極めて低い場合に実行されると考えられるエンジン発進時の方が、駆動トルクの不足がより顕著となると考えられることから、本実施例では、発進時トルク規制時(実線B)の方がロック時トルク規制時(実線A)に比較して、同じトルク規制量に対してトルクアシスト量が増えるように設定されている。トルクアシスト量算出手段86は、上記トルクアシスト量Aa とトルクアシスト量Ab とを加算してトルクアシスト量As を算出する。
また、トルクアシスト量算出手段86は、駆動トルクの不足状態やトルクアシスト制御手段82によるトルクアシスト時の変速比γ等の車両状態に基づいて、予め実験的に求められた関係からトルクアシスト時間を算出する。例えば、トルクアシスト量算出手段86は、前記エンジントルク制限判定手段84によりエンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であると判定されている判定期間を、トルクアシスト時間として算出する。
そして、前記トルクアシスト制御手段82は、前記エンジントルク制限判定手段84によりエンジントルク制限手段80によるエンジントルクTE の制限が実行中であると判定された場合には、前記トルクアシスト量算出手段86により算出されたトルクアシスト量As およびトルクアシスト時間となるように、第2電動機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストを実行させる指令をハイブリッド制御手段52に出力する。これにより、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されたとしても駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
ハイブリッド制御手段52によりエンジン8の出力制御が実行されるときに、エンジントルクTE の発生が遅れると、結果として駆動輪38へのトルクの伝達に遅れが生じて加速性能に影響を与える可能性がある。例えば、アクセルペダルが踏み込まれた場合には速やかに要求駆動トルクが充足されて加速性能が向上することが望まれるが、アクセルペダルの踏込みによるモータ走行からエンジン走行への切換えに際して、エンジン始動停止制御手段92によりエンジンが始動させられるまでの間はエンジントルクTE が発生しないためエンジントルクTE の発生が遅れ、駆動トルクの立ち上がりが遅れてアクセルペダルを踏み込んでいるのに所望の加速性能が得られない可能性がある。
また、エンジントルクTE の発生が遅れる場合として、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時の他に、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数が増加する側への切換えが考えられる。これは、作動気筒数切換制御手段90によりエンジン8の作動気筒数が増加させられる側への切換えに際して、燃料供給停止中の気筒が運転状態とさせられるまでの間は作動気筒数の増加分のエンジントルクTE が発生しないため、そのエンジントルクTE の発生が遅れる可能性があるためである。
そこで、前記トルクアシスト制御手段82は、前述した機能に加え、エンジントルクTE の発生が遅れるときに、その発生が遅れているエンジントルクTE を補うように、第2電動機M2によるトルクアシストを実行する。
具体的には、トルクアシスト制御手段82は、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時のエンジントルクTE の発生遅れのときに、第2電動機M2によるトルクアシストを実行する。また、トルクアシスト制御手段82は、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数の増加する側への切換えに伴うエンジントルクTE の発生遅れのときに、第2電動機M2によるトルクアシストを実行する。
エンジントルク発生遅れ判定手段88は、エンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かを判定する。例えば、エンジントルク発生遅れ判定手段88は、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時のエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かを判定する。エンジントルク発生遅れ判定手段88は、ハイブリッド制御手段52により車両状態に基づいてモータ走行からエンジン走行への切換えが判断されたことによってエンジン始動停止制御手段92によりエンジン8の始動が判断されたか否かを判定することにより、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時のエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かを判定する。
また、エンジントルク発生遅れ判定手段88は、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数の増加する側への切換えに伴うエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かを判定する。エンジントルク発生遅れ判定手段88は、ハイブリッド制御手段52により車両状態に基づいてエンジン8の作動気筒数の切換えが判断されたことによって作動気筒数切換制御手段90によりその判断された作動気筒数への切換えが開始されたか否かを判定することにより、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数の増加する側への切換えに伴うエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かを判定する。
前記トルクアシスト量算出手段86は、前述した機能に加え、前記エンジントルク発生遅れ判定手段88によりエンジントルクTE の発生遅れが発生すると判定された場合には、そのエンジントルクTE の発生遅れによる応答が遅れた分のエンジントルクTE すなわちトルク遅れ量を算出し、予め実験的に求められた関係Lからそのトルク遅れ量に基づいてトルクアシスト量を算出する。
例えば、トルクアシスト量算出手段86は、エンジン始動停止制御手段92によりエンジン8の始動が判断されてから実際にエンジン点火するまでの時間Aや作動気筒数切換制御手段90により作動気筒数の切換えが開始されてから燃料供給停止中の気筒が実際に運転状態とされるまでの時間Bなどに基づいて、予め実験的に求められたそれら時間A、Bに対するトルク遅れ量の関係からトルク遅れ量Lを算出する。
図11の(b)は、トルク遅れ量に対するトルクアシスト量を定めた前記関係Lの一例であり、トルク遅れ量が増える程トルクアシスト量が増えるように設定されている。また、図11の(b)中の実線Cは、エンジン始動停止制御手段92によりエンジン8の始動が実行される場合、すなわち始動時トルク遅れ時の場合のトルクアシスト量Ac の一例である。また、図11の(b)中の実線Dは、作動気筒数切換制御手段90により作動気筒数の切換えが実行される場合、すなわち切換え時トルク遅れ時の場合のトルクアシスト量Ad の一例である。さらに、エンジン始動時の方が、駆動トルクの不足がより顕著となると考えられることから、本実施例では、始動時トルク遅れ時(実線C)の方が切換え時トルク遅れ時(実線D)に比較して、同じトルク規制量に対してトルクアシスト量が増えるように設定されている。トルクアシスト量算出手段86は、上記トルクアシスト量Ac とトルクアシスト量Ad とを加算してトルクアシスト量Al を算出する。
また、例えば、トルクアシスト量算出手段86は、前記エンジントルク発生遅れ判定手段88によりエンジントルクTE の発生遅れが発生すると判定されてからエンジン点火や作動気筒数の切換完了により実際にエンジントルクTE が発生するまでの期間を、トルクアシスト時間として算出する。
そして、前記トルクアシスト制御手段82は、前記エンジントルク発生遅れ判定手段88によりエンジントルクTE の発生遅れが発生すると判定された場合には、前記トルクアシスト量算出手段86により算出されたトルクアシスト量トルクアシスト量Al およびトルクアシスト時間となるように、第2電動機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストを実行させる指令をハイブリッド制御手段52に出力する。これにより、エンジントルクTE の発生が遅れたとしても駆動輪38へのトルクの伝達遅れが抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。
ここで、前記トルクアシスト量算出手段86は、前述した機能に加え、前記トルク規制量Sやトルク遅れ量Lに基づいてトルクアシスト量As やトルクアシスト量Al を算出する以外に、例えばアクセル開度の変化率Acc’(=dAcc/dt)に基づいて、そのアクセル開度変化率Acc’が大きくなる程トルクアシスト量が増えるように予め実験的に定められた関係からトルクアシスト量A’を算出する。トルクアシスト量算出手段86は、前記トルクアシスト量As と前記トルクアシスト量Al と前記トルクアシスト量A’とを加算して総トルクアシスト量AALL を算出する。
そして、前記トルクアシスト制御手段82は、前記トルクアシスト量算出手段86により算出された総トルクアシスト量AALL となるように、第2電動機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストを実行させる指令をハイブリッド制御手段52に出力する。
図12は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわちエンジントルクTE が制限されたり、エンジントルクTE の発生が遅れたりするような場合に実行されるトルクアシストの制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
また、図13は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、例えばモータ走行中にアクセルペダルが大きく踏み込まれて車両状態が図6の実線Bの点a→点bに示すように変化したことにより、モータ走行からエンジン走行への切換えと、差動部11の無段変速状態から有段変速状態への切換えと、自動変速部20のダウンシフトとが略同時に判断された場合の例である。
また、図14は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、例えばエンジン走行中にアクセルペダルが大きく踏み込まれて車両状態が図6の実線Bの点b’→点bに示すように変化したことにより、差動部11の無段変速状態(非ロック)から有段変速状態(ロック状態)への切換えが判断された場合の例である。
先ず、前記エンジントルク制限判定手段84に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、切換制御手段50による切換クラッチC0の係合作動期間に、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE を一時的に低下させる指令がエンジン出力制御装置43に出力されて、エンジントルクTE の制限が実行中であるか否かが判定される。図14のt1 時点は、アクセルペダルが大きく踏み込まれたことにより差動部11の無段変速状態(非ロック状態)から切換クラッチC0の係合による有段変速状態(ロック状態)への切換が判断されたことを示している。そして、図14のt3 時点乃至t6 時点に示すように、差動部11のロック状態への切換えに際して、エンジントルクTE の制限が実行されている。
上記S1の判断が否定される場合は前記エンジントルク制限判定手段84に対応するS2において、ハイブリッド制御手段52によるエンジン発進時に、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE を一時的に低下させる指令がエンジン出力制御装置43に出力されて、エンジントルクTE の制限が実行中であるか否かが判定される。
上記S2の判断が否定される場合は前記エンジントルク発生遅れ判定手段88に対応するS3において、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時のエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かが、例えばハイブリッド制御手段52により車両状態に基づいてモータ走行からエンジン走行への切換えが判断されたことによってエンジン始動停止制御手段92によりエンジン8の始動が判断されたか否かにより判定される。図13のt1 時点は、アクセルペダルが大きく踏み込まれたことにより、差動部11の無段変速状態(非ロック状態)から切換クラッチC0の係合による有段変速状態(ロック状態)への切換が判断され、モータ走行からエンジン走行への切換えが判断されたことでエンジン8の始動が判断され、且つ自動変速部20の2速→1速ダウンシフトが判断されたことを示している。
上記S3の判断が否定される場合は前記エンジントルク発生遅れ判定手段88に対応するS4において、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数の増加する側への切換えに伴うエンジントルクTE の発生遅れが発生するか否かが、例えばハイブリッド制御手段52により車両状態に基づいてエンジン8の作動気筒数の切換えが判断されたことによって作動気筒数切換制御手段90によりその判断された作動気筒数への切換えが開始されたか否かにより判定される。
上記S4の判断が否定される場合は前記トルクアシスト制御手段82に対応するS5において、エンジントルクTE の制限やエンジントルクTE の発生遅れによる駆動トルクの不足を補うための第2電動機M2によるトルクアシストが実行されない。
前記S1乃至前記S4のうちいずれか1つでも肯定される場合は前記トルクアシスト量算出手段86に対応するS6において、第2電動機M2によるトルクアシスト量やトルクアシスト時間が算出される。例えば、図11の(a)に示すような関係Sから前記S1やS2にて実行中が判断されたエンジントルクTE の制限においてのトルク規制量Sに基づいてトルクアシスト量As が算出され、エンジントルクTE の制限の実行期間がトルクアシスト時間として算出される。また、図11の(b)に示すような関係Lから前記S3やS4にて判断されたエンジントルクTE の発生遅れにおいてのトルク遅れ量Lに基づいてトルクアシスト量Alが算出され、エンジントルクTE の発生遅れが発生すると判定されてから実際にエンジントルクTE が発生するまでの期間がトルクアシスト時間として算出される。
前記S5或いはS6に続いて前記トルクアシスト量算出手段86に対応するS7において、S6にて算出された前記トルクアシスト量As や前記トルクアシスト量Al 以外に、例えばアクセル開度の変化率Acc’(=dAcc/dt)に基づいて、そのアクセル開度変化率Acc’が大きくなる程トルクアシスト量が増えるように予め実験的に定められた関係からトルクアシスト量A’が算出される。
続いて、前記トルクアシスト量算出手段86に対応するS8において、前記S6にて算出された前記トルクアシスト量As と前記トルクアシスト量Al 、および前記S7にて算出された前記トルクアシスト量A’が加算されて総トルクアシスト量AALL が算出される。
続いて、前記トルクアシスト制御手段82に対応するS9において、前記S8にて算出された総トルクアシスト量AALL となるように、第2電動機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストを実行させる指令がハイブリッド制御手段52に出力される。
図13のt1 時点乃至t2 時点は、無段変速状態(非ロック状態)から切換クラッチC0の係合による有段変速状態(ロック状態)への切換制御、および自動変速部20の2速→1速ダウンシフトの実行に優先して、エンジン8の始動が無段変速状態において実行させられ、第1電動機M1をスタータとして機能させて第1電動機回転速度NM1が速やかに変化させられたことを示している。これにより、エンジン始動時の振動が抑制される。そして、t2 時点に示すように、所定のエンジン回転速度NE ’で点火させられる。
エンジン8の始動後に、t3 時点に示すように切換クラッチC0を係合する指令が油圧制御回路42へ出力され、t3 時点乃至t4 時点に示すように切換クラッチC0が係合されるように油圧が上昇され、t4 時点に示すように切換クラッチC0の係合が完了してエンジン回転速度NE と第1電動機回転速度NM1と伝達部材18の回転速度が同期回転させられる。これにより、自動変速部20からその入力側を見ると、自動変速部20の入力回転速度(=伝達部材18の回転速度)がエンジン回転速度NE に固定される。
続いて、同じt4 時点に示すように、2速→1速ダウンシフトを実行する指令すなわち第1速ギヤ段を成立させるように油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令)が油圧制御回路42に出力される。このとき、差動部11の変速状態の切換えと自動変速部20の変速との2つの制御系を略同時に実行しないので、それらの作動が容易になる。また、自動変速部20の変速時には、エンジン回転速度NE と第1電動機回転速度NM1と伝達部材18の回転速度が同期回転させられているので、車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に決まる伝達部材18の回転速度の変化に合わせ、ロック状態のときには通常は自動変速部20の変速に伴って成り行きで変化するエンジン回転速度NE を第1電動機M1を用いて変化させても良い。これにより、自動変速部20の変速が速やかに実行され得る。このように、アクセルペダルが踏み込まれたことにより変速状態の切換えとエンジン8の始動と自動変速部20の変速との同時切換えが発生した場合に、エンジン8の始動と変速状態の切換えと自動変速部20の変速とのシーケンス制御が実行される。
また、t1 時点にてアクセルペダルが大きく踏み込まれたことによりエンジン8の始動が判断されたが、エンジン8が点火されて実際にエンジントルクTE が発生するのはt2 時点以降であり、エンジントルクTE の発生遅れが生じている。アクセルを踏んでいるのに駆動トルクの立ち上がりが遅れるのは良くないので、これを補うためにt1 時点から第2電動機M2を用いたトルクアシストが実行されている。そして、t3 時点乃至t4 時点における切換クラッチC0によるロック状態への切換えに際して実行されるエンジントルクTE の制限を補うためにt3 時点以降も引き続き第2電動機M2を用いたトルクアシストが実行されている。この図13の実施例では、駆動トルクの不足状態やトルクアシスト時の変速比γ等の車両状態に基づいて、t6 時点までトルクアシストが実行されている。
また、図14においては、t3 時点乃至t6 時点に示すように、エンジントルクTE の制限が実行されていることに合わせて、そのエンジントルクTE の制限を補うために第2電動機M2を用いたトルクアシストが実行されている。
図13はモータ走行からエンジン走行への切換えと、モータ走行中からのロック状態への切換えとが実行される場合であり、図14はエンジン走行中においてロック状態への切換えが実行される場合であるため、図13と図14とを比較すると、明らかに図13の実施例の方がトルクアシスト量が大きく、トルクアシスト時間が長くされている。このように、エンジントルクTE の発生遅れやエンジントルクTE の制限の状態、駆動トルクの不足状態、車速V、変速比γ、アクセル開度変化率Acc’等のトルクアシストが必要とされるときの車両状態によってトルクアシスト量とトルクアシスト時間とが求められる。
上述のように、本実施例によれば、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されているときに、その制限されているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクTE が制限されたとしても駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
また、本実施例によれば、エンジントルクTE に対する反力トルクを受け持つ第1電動機M1を保護するために、エンジントルク制限手段80によりエンジン発進時にエンジントルクTE が制限されたとしても、その制限されているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
また、本実施例によれば、差動部11(動力分配機構16)の差動状態から切換クラッチC0によるロック状態への切換えに際して、エンジントルク制限手段80によりエンジントルクTE が制限されたとしても、その制限されているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、駆動輪38へ伝達されるトルクの減少が抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
また、本実施例によれば、エンジントルクTE の発生が遅れるときに、その発生が遅れているエンジントルクTE を補うように、トルクアシスト制御手段82により第2電動機M2によるトルクアシストが実行されるので、エンジントルクTE の発生が遅れたとしても駆動輪38へのトルクの伝達遅れが抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
また、本実施例によれば、トルクアシスト制御手段82は、エンジン始動停止制御手段92によるエンジン8の始動時のエンジントルクTE の発生遅れのときに、エンジン8の始動に要する時間だけ発生が遅れるエンジントルクTE を補うように、第2電動機によるトルクアシストを実行するので、エンジントルクTE の発生が遅れたとしても駆動輪38へのトルクの伝達遅れが抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
また、本実施例によれば、トルクアシスト制御手段82は、作動気筒数切換制御手段90によるエンジン8の作動気筒数が増加する側への切換えに伴うエンジントルクTE の発生遅れのときに、エンジン8の作動気筒数の切換えに要する時間だけ発生が遅れるエンジントルクTE を補うように、第2電動機によるトルクアシストを実行するので、エンジントルクTE の発生が遅れたとしても駆動輪38へのトルクの伝達遅れが抑制されて、加速性能の悪化が抑制される。これにより、車両の所定の走行状態において、所定のアクセル操作量に対して駆動輪の駆動トルクが同様に得られ、エンジントルクTE が制限されたとしてもアクセル操作量に対して得られる駆動トルクがそれほど変化せず、違和感が発生しない。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図15は、本発明の他の実施例における電子制御装置40の制御機能の要部を説明する機能ブロック図であって、図5に対応する図である。本実施例の車両において、その駆動装置のトランスアクスルハウジング内には、第1軸心上にエンジン8、第1電動機M1、差動機構16、第2電動機M2が備えられ、その第1軸心に平行な第2軸心上に自動変速機20が備えられ、その第1軸心に平行な第3軸心上に差動歯車装置(終減速機)36が備えられ、その差動歯車装置36を介して左右の駆動輪(前輪)38が駆動されるようになっている。本実施例の車両では、左右の後輪39を駆動するための後輪駆動用電動機M3および差動歯車装置37が備えられている。すなわち、本実施例の車両は4輪駆動車両である。上記後輪駆動用電動機M3は、トルクアシストにも利用される。
図16は、図15の実施例における電子制御装置40の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図12に対応する図である。図16において、S11乃至S18は図12のS1乃至S8と同様であるが、S19では、図13、図14に示されるように総アシストトルク量AALL をすべて第2電動機M2のトルクアシストにより実施される他に、第1電動機M1が使用可能であるときはこれが使用或いは併用され、後輪駆動用電動機M3が使用可能であるときはこれが使用或いは併用されることにより、総アシストトルク量AALL のトルクアシストが実行される。走行路が低摩擦路面や悪路であるときは、優先的に後輪駆動用電動機M3が用いられるようにしてもよい。なお、エンジン8に始動用電動機が設けられる場合には、その始動用電動機を用いて上記のトルクアシストが実行されるようにしてもよい。
また、本実施例では、ブレーキペダル、パーキングブレーキレバー、或いはパーキングブレーキペダルが操作されていないときのみにトルクアシストを実行させるためのS20乃至S22が設けられる。すなわち、S20においてブレーキオン状態であるか否かが判断され、そのS20の判断が肯定される場合は制動要求が発生しており発進の意思がないとして電力節約のためにS21において電動機によるトルクアシストが不実施モードに設定され、否定される場合はS22においてトルクアシストが実施モードに設定されて、S16以下が実行される。本実施例では、ブレーキペダル、パーキングブレーキレバー、或いはパーキングブレーキペダルが操作されておらず、制動要求が発生していないときは、図13、図14のタイムチャートに示される制御作動が得られ、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図17は本発明の他の実施例における変速機構70の構成を説明する骨子図、図18はその変速機構70の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図19はその変速機構70の変速作動を説明する共線図である。
変速機構70は、前述の実施例と同様に第1電動機M1、動力分配機構16、および第2電動機M2を備えている差動部11と、その差動部11と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速部72とを備えている。動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有している。自動変速部72は、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26と例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
以上のように構成された変速機構70では、例えば、図18の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第4速ギヤ段(第4変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT )が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、変速機構70では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部72とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部72とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構70は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。
例えば、変速機構70が有段変速機として機能する場合には、図18に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.393」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
しかし、変速機構70が無段変速機として機能する場合には、図18に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部72が有段変速機として機能することにより、自動変速部72の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速部72に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構70全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図19は、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部72から構成される変速機構70において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図19における自動変速部72の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第3キャリヤCA3を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応し且つ相互に連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応する第2リングギヤR2をそれぞれ表している。また、自動変速部72において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速部72の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部72では、図19に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(R2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5(CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第3速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NE と同じ回転速度で第7回転要素RE7に差動部11からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度NE よりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の変速機構70においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と、有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速部72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図20は、手動操作により動力分配機構16の差動状態と非差動状態(ロック状態)すなわち変速機構10の無段変速状態と有段変速状態との切換えを選択するための変速状態手動選択装置としてのシーソー型スイッチ44(以下、スイッチ44と表す)の一例でありユーザにより手動操作可能に車両に備えられている。このスイッチ44は、ユーザが所望する変速状態での車両走行を選択可能とするものであり、無段変速走行に対応するスイッチ44の無段と表示された無段変速走行指令釦或いは有段変速走行に対応する有段と表示された有段変速走行指令釦がユーザにより押されることで、それぞれ無段変速走行すなわち変速機構10を電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態とするか、或いは有段変速走行すなわち変速機構10を有段変速機として作動可能な有段変速状態とするかが選択可能とされる。
前述の実施例では、例えば図6の関係図から車両状態の変化に基づく変速機構10の変速状態の自動切換制御作動を説明したが、その自動切換制御作動に替えて或いは加えて例えばスイッチ44が手動操作されたことにより変速機構10の変速状態が手動切換制御される。つまり、切換制御手段50は、スイッチ44の無段変速状態とするか或いは有段変速状態とするかの選択操作に従って優先的に変速機構10を無段変速状態と有段変速状態とに切り換える。例えば、ユーザは無段変速機のフィーリングや燃費改善効果が得られる走行を所望すれば変速機構10が無段変速状態とされるように手動操作により選択する。またユーザは有段変速機の変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度NE の変化を所望すれば変速機構10が有段変速状態とされるように手動操作により選択する。
また、スイッチ44に無段変速走行或いは有段変速走行の何れも選択されない状態である中立位置が設けられる場合には、スイッチ44がその中立位置の状態であるときすなわちユーザによって所望する変速状態が選択されていないときや所望する変速状態が自動切換のときには、変速機構10の変速状態の自動切換制御作動が実行されればよい。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、トルクアシスト制御手段82は、第2電動機M2を用いてトルクアシストを実行したが、第1電動機M1を用いることができるときは、第2電動機M2に替えて或いは加えて、この第1電動機M1を用いてもよい。例えば、差動部11が切換クラッチC0の係合によるロック状態であるときには第1遊星歯車装置24の3要素が一体回転するので、第1電動機M1を駆動してそのトルクを駆動輪38へ伝達され得て、トルクアシストにこの第1電動機M1を用いることができる。
また、前述の実施例のエンジントルク制限手段80は、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0の摩擦材や油圧アクチュエータのフェイル、その油圧アクチュエータを制御するための油圧制御回路42に含まれる電磁弁のフェイル、或いはそれら油圧アクチュエータや電磁弁等の機能低下や低油温による応答遅れなどが発生したことにより、切換制御手段50により差動部11が無段変速状態(差動状態)から有段変速状態(ロック状態)へ切り換えられ得ない場合に、第1電動機M1の大型化が防止されつつ耐久性の低下が抑制されるために、所定値TE1を超えるようなエンジントルクTE が出力されないようにエンジントルクTE を制限してもよい。このようなエンジントルクTE の制限が実行される場合であっても、本発明は適用され得る。
また、前述の実施例のエンジントルク制限手段80は、切換制御手段50による切換クラッチC0の係合時に、その係合ショックを抑制するため、係合完了に合わせて例えば係合完了直前からエンジントルクTE を低減するようにエンジントルクTE を制限してもよい。このようなエンジントルクTE の制限が実行されるときであっても、本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、エンジン始動停止制御手段92は、エンジン8の始動および停止を行うものであったが、少なくともエンジン8の始動を行うエンジン始動制御手段として機能するものであればよく、エンジン8の停止を行うエンジン停止制御手段がそのエンジン始動制御手段とは別に備えられてもよい。
また、前述の実施例の作動気筒数切換制御手段90はエンジン8の作動気筒数を切り換えるものであるが、その切換えは全気筒作動停止状態(フューエルカット作動状態)と全気筒運転状態との間において、作動気筒数を必要に応じて順次或いは一挙に切り換えるなど種々の態様が可能である。例えば、6気筒を有するエンジン8において、作動気筒数を全気筒作動停止状態から6気筒まで順次増減するように切り換えたり、1気筒と4気筒との間や3気筒と6気筒との間のように一挙に切り換えたりしても良い。また、予め複数の気筒を複数の組に分けてその複数の組の一部乃至全部を作動させたり、片バンク運転と両バンク運転とで気筒の作動を切り換える所謂バンク切換制御であっても良い。作動気筒数の切換えが上記バンク切換制御や一挙に切り換えたりする場合は、速やかにエンジントルクTE を変化させることが可能となる利点がある。特に、作動気筒数の切換えが上記片バンク運転から両バンク運転への切換えであったり1気筒から4気筒への切換えのように一挙に切り換える場合は、速やかに要求出力トルクを充足することが可能となる利点がある。
また、前述の実施例の作動気筒数切換制御手段90は、気筒への燃料供給を停止させてエンジン8の部分気筒運転(フューエルカット作動を含む)を実行したが、この部分気筒運転は単に気筒への燃料供給を停止させるものでも良いし、燃料供給を停止させた気筒内の圧力変化を抑制してエンジン8の引き摺り(エンジン回転抵抗)を抑制するものでも良い。例えば、エンジン8は吸排気弁の作動タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を更に備えて4サイクルエンジンの各行程の少なくとも1行程において弁作動のタイミングが制御されて気筒内の圧力変化が抑制され得る構成とされ、作動気筒数切換制御手段90は部分気筒運転の実行において一部の気筒乃至全気筒への燃料供給を停止させると共に上記可変バルブタイミング機構により気筒内の圧力変化を抑制してすなわちポンピングロスを低減してエンジン8の引き摺りを抑制する。気筒内の圧力変化を抑制するものとして、他に、吸気行程においてスロットル開度を積極的に開くことにより負圧の発生を抑制して気筒内の圧力変化を抑制するものや、エンジン8のクランク軸とピストン間の機械的な連結が切り離され得る構成とされてピストンの往復運動が停止されることにより気筒内の圧力変化を抑制するものなど種々の態様が可能である。
また、前述の実施例では、トルクアシスト制御手段82によるトルクアシストが実行されるときの差動部11のロック状態への切換えとして、切換制御手段50により車両状態に基づいて差動部11がロック状態へ切り換えられる場合を例示したが、この自動切換えだけでなく、例えばスイッチ44が手動操作されたことにより差動部11がロック状態へ手動切換えされる場合であっても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、自動変速部20の変速として、有段変速制御手段54により車両状態に基づいて自動変速部20の変速が実行される場合を例示したが、この自動変速だけでなく、例えば良く知られた自動変速部20の変速比を手動操作によって切り換えられる制御様式である所謂手動変速走行モード(Mモード)を備え、そのMモードにおいて自動変速部20が手動変速されてもよい。
また、前述の図13に示す実施例において、t4 時点にて開始された有段変速制御手段54による自動変速部20の変速の終了時に合わせて、第1電動機M1により逆駆動トルクを加えたり回生制動トルクを発生させたりするなどして、自動変速部20への入力トルクのトルクダウンを実行しても良い。これにより、遅角制御やスロットル制御などのエンジン8のトルクダウンに比較して効果的に自動変速部20の変速ショックが抑制される。
また、前述の実施例の変速機構10、70は、差動部11が無段変速状態と定変速状態とに切り換えられることで電気的な無段変速機として機能する無段変速状態と有段変速機として機能する有段変速状態とに切り換え可能に構成されていたが、有段変速状態に切換可能に構成されない変速機構すなわち差動部11が切換クラッチC0および切換ブレーキB0を備えず電気的な無段変速機(電気的な差動装置)としての機能のみを有する差動部(無段変速部)11であっても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の変速機構10、70は、差動部11(動力分配機構16)が電気的な無段変速機として作動可能な差動状態とそれを非作動とする非差動状態(ロック状態)とに切り換えられることで無段変速状態と有段変速状態とに切り換え可能に構成され、この無段変速状態と有段変速状態との切換えは差動部11が差動状態と非差動状態とに切換えられることによって行われていたが、例えば差動部11が差動状態のままであっても差動部11の変速比を連続的ではなく段階的に変化させることにより有段変速機として機能させられ得る。言い換えれば、差動部11の差動状態/非差動状態と、変速機構10、70の無段変速状態/有段変速状態とは必ずしも一対一の関係にある訳ではないので、差動部11は必ずしも無段変速状態と有段変速状態とに切換可能に構成される必要はなく、変速機構10、70(差動部11、動力分配機構16)が差動状態と非差動状態とに切換え可能に構成されれば本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に連結されることにより、第1電動機M1は第1サンギヤS1に設けられ、第2電動機M2は伝達部材18から駆動輪38に至る動力伝達経路に作動的に連結されてもよい。
また、前述の動力分配機構16には切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられていたが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は必ずしも両方備えられる必要はない。また、上記切換クラッチC0は、サンギヤS1とキャリヤCA1とを選択的に連結するものであったが、サンギヤS1とリングギヤR1との間や、キャリヤCA1とリングギヤR1との間を選択的に連結するものであってもよい。要するに、第1遊星歯車装置24の3要素のうちのいずれか2つを相互に連結するものであればよい。
また、前述の実施例の変速機構10、70では、ニュートラル「N」とする場合には切換クラッチC0が係合されていたが、必ずしも係合される必要はない。
また、前述の実施例では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
また、前述の実施例では、第2電動機M2が伝達部材18に連結されていたが、出力軸22に連結されていてもよいし、自動変速部20、72内の回転部材に連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪38との間の動力伝達経路に、自動変速部20、72が介装されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機、手動操作により変速段が切り換えられる同期噛み合い式の手動変速機等の他の形式の動力伝達装置(変速機)が設けられていてもよい。その無段変速機(CVT)の場合には、動力分配機構16が定変速状態とされることで全体として有段変速状態とされる。有段変速状態とは、電気パスを用いないで専ら機械的伝達経路で動力伝達することである。或いは、上記無段変速機は有段変速機における変速段に対応するように予め複数の固定された変速比が記憶され、その複数の固定された変速比を用いて自動変速部20、72の変速が実行されてもよい。或いは、自動変速部20、72は必ずしも備えられてなくとも本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、自動変速部20、72は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20、72が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20、72とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。
また、前述の実施例のスイッチ44はシーソー型のスイッチであったが、例えば押しボタン式のスイッチ、択一的にのみ押した状態が保持可能な2つの押しボタン式のスイッチ、レバー式スイッチ、スライド式スイッチ等の少なくとも無段変速走行(差動状態)と有段変速走行(非差動状態)とが択一的に切り換えられるスイッチであればよい。また、スイッチ44に中立位置が設けられる場合にその中立位置に替えて、スイッチ44の選択状態を有効或いは無効すなわち中立位置相当が選択可能なスイッチがスイッチ44とは別に設けられてもよい。また、スイッチ44に替えて或いは加えて、手動操作に因らず運転者の音声に反応して少なくとも無段変速走行(差動状態)と有段変速走行(非差動状態)とが択一的に切り換えられる装置や足の操作により切り換えられる装置等であってもよい。
また、前述の実施例のエンジン8には、その吸気弁および/または排気弁が電磁アクチュエータによって開閉作動させられる電磁駆動弁が備えられていてもよい。この場合には、非作動気筒がデコンプ状態とされる利点がある。
また、前述の実施例では、車両の差動機構16に第1電動機M1および第2電動機M2が設けられていたが、それら第1電動機M1および第2電動機M2の少なくとも一方は必ずしも設けられていなくてもよい。必ずしも電気的伝達容量のトルク容量限界に対してだけでなく、差動機構16の機械的伝達容量のトルク容量限界に対しも本発明は適用可能であるからである。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:エンジン
10、70:変速機構(駆動装置)
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
38:駆動輪
40:電子制御装置(制御装置)
80:エンジントルク制限手段
82:トルクアシスト制御手段
90:作動気筒数切換制御手段
92:エンジン始動停止制御手段(エンジン始動制御手段)
C0:切換クラッチ(係合装置)
B0:切換ブレーキ(係合装置)
M1:第1電動機
M2:第2電動機
10、70:変速機構(駆動装置)
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
38:駆動輪
40:電子制御装置(制御装置)
80:エンジントルク制限手段
82:トルクアシスト制御手段
90:作動気筒数切換制御手段
92:エンジン始動停止制御手段(エンジン始動制御手段)
C0:切換クラッチ(係合装置)
B0:切換ブレーキ(係合装置)
M1:第1電動機
M2:第2電動機
Claims (16)
- エンジンと、該エンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記差動機構のトルク容量限界に基づいて前記エンジンの出力トルクを制限するエンジントルク制限手段と、
該エンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、該制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - エンジンと、該エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記エンジンの出力トルクを制限するエンジントルク制限手段と、
該エンジントルク制限手段により前記エンジンの出力トルクが制限されているときに、該制限されている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段と、
を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものである請求項2の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記エンジントルク制限手段は、前記差動機構のトルク容量限界に基づいて前記エンジンの出力トルクを制限するものである請求項2または3の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記差動機構のトルク容量限界は、前記第1電動機のトルク容量限界である請求項4の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記差動機構のトルク容量限界は、前記差動機構の電気的伝達容量の容量限界である請求項4の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記エンジントルク制限手段は、前記エンジンを駆動力源とする車両発進時に、該エンジンの出力トルクを制限するものである請求項1乃至6のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
- 前記差動機構に備えられ、該差動機構を差動作用が働く差動状態と該差動作用しないロック状態とに選択的に切り換えるための係合装置を更に含み、前記エンジントルク制限手段は、前記係合装置による前記差動状態からロック状態への切換えに際して、該エンジンの出力トルクを制限するものである請求項1乃至7のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
- 前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものである請求項1乃至8のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
- エンジンと、該エンジンの出力を伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、該発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - エンジンと、該エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構と、該伝達部材から駆動輪へ動力伝達する動力伝達経路と、車輪に対して出力を伝達可能な第2電動機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
前記エンジンの出力トルクの発生が遅れるときに、該発生が遅れている前記エンジンの出力トルクを補うように、前記第2電動機によるトルクアシストを実行するトルクアシスト制御手段を、含むことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。 - 前記第2電動機は前記動力伝達経路に設けられているものである請求項11の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記エンジンの始動を行うエンジン始動制御手段を更に含み、
前記トルクアシスト制御手段は、前記エンジン始動制御手段による前記エンジンの始動時の該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものである請求項10乃至12のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。 - 前記エンジンはその作動状態が変更可能なものであり、
前記エンジンの作動状態を変更する作動状態変更手段を更に含み、
前記トルクアシスト手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動状態の切換えに伴う該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものである請求項10乃至13のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。 - 前記エンジンはその作動気筒数が切り換えられるものであり、
前記作動状態変更手段は、前記エンジンの作動気筒数を切り換えるものであり、
前記トルクアシスト制御手段は、前記作動状態変更手段による前記エンジンの作動気筒数の切換えに伴う該エンジンの出力トルクの発生遅れのときに、前記トルクアシストを実行するものである請求項14の車両用駆動装置の制御装置。 - 前記トルクアシスト制御手段は、前記車両に対する制動要求が発生しているときには、前記エンジンの出力トルクを補うトルクアシストを実行しないものである請求項10乃至15のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
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