JP2004216439A - 熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱炉に装入された鋼材(スラブ)中に散在する低温鋼材(スラブ)を加熱炉より抽出して、熱間圧延する熱延鋼板の製造方法において、装入温度の高い鋼材は仕上圧延目標温度と加熱炉抽出から仕上圧延完了までの温度降下量を基に設定した目標抽出温度で加熱炉より抽出するが、装入温度の低い低温鋼材は前記目標抽出温度より低温で抽出し、熱延ラインに設置した加熱炉以外の加熱装置で仕上目標温度となるように補償的に加熱することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延ラインにおいて、加熱炉で熱消費を低下させて鋼材を加熱する熱延鋼板の製造方法に関し、特に、熱延ラインにおいて加熱炉温度を調整しつつ所定の仕上圧延温度を確保する熱延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の熱間圧延は、例えば図1に示すように、1つあるいは複数の加熱炉2で加熱された鋼材(スラブ)1を粗圧延機3で粗圧延して粗バーとし、仕上圧延機4で仕上圧延した後に、巻取機5で巻取る工程で行われている。熱間圧延において一般的に使用されている加熱炉は図2に示すウォーキングビーム(WB)により鋼材を搬送する連続式加熱炉であり、図中では鋼材がこの加熱炉2の左側から装入されて、予熱帯7、加熱帯8及び均熱帯9を順次通過して加熱終了後に右側から抽出されて次の粗圧延工程(図1の粗圧延機3)に搬送される。
そして、仕上圧延では、粗バー先端が仕上圧延機の第1スタンドに噛込んで仕上圧延された鋼板が巻取機に噛込むまでは低速圧延で通板させる必要があって、仕上圧延機速度パターンが決められる。また、低速圧延では圧延機の負荷制約を緩和するため圧延温度を高く設定する必要がある。
【0003】
熱間圧延では、種々の鋼種、製品寸法の圧延負荷に対応して、それらの圧延材料によって定まる仕上温度を確保するために加熱炉での加熱温度が制御されていて、Ar3変態点以上とするために1000℃以上に鋼材を加熱昇温する。加熱炉から抽出された鋼材は、粗圧延と仕上圧延とを施されるが、圧延時の加工発熱による入熱はあるものの、圧延速度パターンに基づく放熱、デスケーリングによる水冷や圧延ロールとの接触による抜熱により、圧延材の温度は製品となるまでに次第に降下する。
【0004】
温度降下は、50〜200℃程度となり、製品の寸法によって異なるが、薄手材(板厚1mm前後)ほど温度降下が大きくなる。このため薄手材の圧延で良好な材質を得ることができる仕上圧延温度を確保するには、加熱炉の鋼材加熱設定温度を厚手材よりも高温に設定することが要求される。
【0005】
また、ハイテン等の合金成分を含有する鋼材は、硬質であるため高い圧延荷重が生じる。このため、これらの鋼材については、圧延機の負荷制約を緩和するのに圧延温度を高くする必要があるので、加熱炉における鋼材加熱温度を高く設定している。
【0006】
一方、加熱炉への鋼材(スラブ)装入操業は、省エネを目的としてHCR操業(Hot Charge Rolling)が一般的に行われている。
【0007】
HCR操業の下では鋼材の装入温度の変動が大きく低温材が散在する。その原因としては、例えば、次のようなことが原因となる。
【0008】
▲1▼製造された鋼材(スラブ)は製鋼工程での出鋼材順に圧延に供されることはなく、鋼材ヤードに滞留された別タイミングの出鋼材が圧延材の要求に合致する鋼材として選定されて加熱炉に装入される。このため鋼材ヤードにおいて滞留時間が長い鋼材が選定されることもあり、例えば滞留時間が6時間と12時間では温度降下に約100℃の差が生じるので、鋼材ヤードでの滞留時間の長い鋼材は低温材となる。
【0009】
▲2▼鋼材は保温台車で加熱炉に装入されるが、保温台車が不足し、すべての鋼材が保温台車で装入できなく、保温台車を用いないで装入する鋼材が存在する。この鋼材はヤード滞留時間6時間で約150℃の温度降下があり、低温材装入の原因となる。
【0010】
▲3▼鋼材ヤードにおける山積段数は異なっていて、小段数のほうが温度降下が大であり、特に1〜3段積の場合は、それ以上の段積鋼材に比較して滞留時間12時間で約100℃以上の温度降下がある。
【0011】
▲4▼鋼材ヤードにおける山積位置によっても温度降下量が異なる。即ち、山積の中央は冷えにくく、最下段或いは最上段は冷えやすく、1時間当りで中央に比較して約50〜100℃以上温度低下する。
【0012】
▲5▼鋼材ヤードにおいては、圧延、出鋼スケジュールにあわせて鋼材配置替えを行うが、この際にも約100℃の鋼材温度が低下する。
【0013】
低温の鋼材(低温材)をまとめて加熱炉に装入すれば、加熱炉への鋼材の装入温度の変動は避けられるが、製品の納期に対応する必要性等のため、同一圧延単位に組み込み可能な低温材を集中させるには限度がある。また、低温HCR材は散発するので、装入温度を志向した圧延単位編成を実施する場合には、再度鋼材ヤード内にて配置換えを実施する必要があり、ヤード内物流を圧迫するのみならず、平均HCR材温度を悪化させる弊害が生じる。
【0014】
したがって、低温材をまとめて加熱炉に挿入することは困難であるから、HCR操業の下では、低温材を散在させて加熱炉に装入することを避けることはできない。このため、鋼材装入温度にばらつきが生じる。
【0015】
加熱炉操業は、大きな変動なく燃焼を行うことがエネルギー効率上好ましいが、加熱炉に装入する鋼材温度のばらつきや炉抽出温度も製品サイズや品質毎に目標抽出温度が異なるため、装入されたすべての鋼材を目標温度に昇温させようとすると、昇温量最大を必要とする炉内燃料負荷の高い低温材(ネック材)を目標温度に昇温させねばならない。ところが、昇温量がネック材より小さい鋼材は目標温度より不必要に大きく加熱されてしまうこととなり、また、炉温も上昇下降を繰り返すことにより炉体への投入熱量を大きくしてしまう。その結果、加熱エネルギーの大幅なロスが生じる。
【0016】
従来の加熱炉の省エネ化などを狙いとした加熱炉操業方法には、加熱炉の出力変動を行うことなく加熱炉の設定温度を一定にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
この方法では、加熱炉の出力変動を行うと、加熱炉の温度制御は応答性が悪いため、昇温するまでの時間はライン休止としなければならず、生産性を阻害し、また、温度昇降で炉が傷み、炉のメンテナンス費が増加する等の問題が生じることを解消することを目的とするものである。そして、具体的手段として圧延材料に依存しない一定温度にスラブを加熱する工程と、加熱されたスラブを粗圧延して粗バーとする工程と、この粗バーを圧延材料に依存する所定の温度に誘導加熱装置で加熱する工程と、加熱された粗バーを仕上圧延する工程とを備えていることが開示されている。
【0018】
即ち、加熱炉温度を一定にし、スラブ抽出温度も一定にし、圧延材ごとに異なる必要温度は仕上圧延前に誘導加熱装置で加熱昇温させようとするものである。
【0019】
しかしながら、この方法は、加熱炉に装入される鋼材温度のばらつき、特に低温のネック材が散在することに対応するものではなく、かつネック材の散在が原因となる加熱炉のエネルギーロスを防止することを目的とするものではない。
【0020】
【特許文献】
特開平9−308903号公報(第2頁右欄 第27〜31行、第2図)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱延鋼板の製造方法において、加熱炉に装入される装入温度の低いスラブ(鋼材)は、製品寸法、鋼種、表面性状等に依存する加熱抽出温度よりも低い温度で抽出して、近傍の装入温度の高いスラブが過加熱されて予定抽出温度より高い温度で抽出されることを防止することを解決課題とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
熱延鋼板の製造方法においては、加熱炉内に複数のスラブを装入して加熱し、予定抽出温度で抽出するHCR操業が一般的に行われているが、装入スラブに低温スラブが散在し、低温スラブを予定抽出温度に加熱すると近傍の装入温度が高いスラブは予定抽出温度よりも高く加熱されてしまう。
【0023】
そこで、本発明者は装入温度の高いスラブを予定抽出温度で抽出し、装入温度の低いスラブ(ネック材)は予定抽出温度よりも低い温度で抽出し、仕上圧延前に必要温度に補償的に加熱すれば、加熱炉のエネルギーロスを防止し、かつスケール生成を抑制し得ることを見出して本発明を完成した。
【0024】
本発明の要旨は次のとおりである。
【0025】
(1) 加熱炉に装入された鋼材(スラブ)中に散在する低温鋼材(スラブ)を加熱炉より抽出して、熱間圧延する熱延鋼板の製造方法において、装入温度の高い鋼材は目標抽出温度で加熱炉より抽出するが、装入温度の低い低温鋼材は目標抽出温度より低温で抽出し、熱延ラインに設置した加熱炉以外の加熱装置で仕上目標温度となるように補償的に加熱することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
【0026】
(2) 加熱炉以外の加熱装置が、熱延ラインの粗圧延機の前又は後、粗圧延機と仕上圧延機の間、又は仕上圧延機列間に配置されていることを特徴とする上記(1)記載の熱延鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
熱延鋼板の製造方法においては、圧延材であるスラブを加熱炉で加熱するHCR操業が行われている。HCR操業では、複数のスラブを加熱炉に装入するが、その装入スラブ中に低温スラブが散在することが避けられない。
【0028】
図3は、加熱炉へのスラブ装入順本数とスラブの装入温度との関係の例を示す図である。
【0029】
図3のa〜dに示すように、加熱炉への装入スラブ中には低温スラブが散在する。このような低温スラブが散在する原因としては、aは保温台車を使用できなかったこと、bは保温台車を使用できず、かつスラブヤードでの積山段数が少なかったこと、cはスラブヤードでの配置替え時間が長かったこと、dはスラブヤードの積山段数が少なかったこと、及びeはスラブヤードでの滞留時間が長かったことに起因するものと考えられる。
【0030】
加熱炉への装入スラブ中に低温スラブが散在すると、昇温量最大を必要とする低温スラブを熱延に必要な温度まで昇温させねばならない。しかし、その周辺にある装入温度の高いスラブは、必要以上に過加熱されることとなり、エネルギーロスが発生すると共にスケールが生成するという弊害が生じる。
【0031】
本発明者は、現有の加熱燃焼制御システムをベースにして、加熱炉におけるネック材となる低温スラブを必要温度に加熱すると共に、装入温度の高いスラブの過加熱を防止することについて鋭意研究した。その結果、熱延ラインの仕上圧延機前に粗バー加熱装置(BH)を設置して、燃焼ネック材(低温スラブ)については加熱炉抽出温度を下げて抽出し、粗バー加熱装置(BH)により仕上圧延前に必要な温度まで補償的に昇温させ、スラブ昇熱負担を加熱炉と加熱装置とで分担させることにより加熱炉の昇温変動を抑制し、燃料原単位の削減を図れることを見出した。 以下、図を参酌して本発明の加熱炉操業について説明する。
【0032】
図4及び図5は加熱炉内装入スラブの目標抽出温度設定のマクロフロー図である。
【0033】
図4の例は、炉内の燃焼負荷の高いスラブ(ネック材)を判定し、当該ネック材以外で「目標抽出温度」を確保するように加熱し、ネック材については低温抽出して加熱装置(BH)により加熱を行う場合の例である。
【0034】
但し、ネック材の抽出温度がBHによる加熱を実施しても、「仕上圧延目標温度」が確保できないほど低くなるときは、当該ネック材を加熱炉にて「目標抽出温度」を確保するようにし、BHは使用しない。
【0035】
図5の例は、図4と▲1▼〜▲4▼までは同じであるが、▲5▼の代わりに▲6▼を行う例である。
【0036】
但し、ネック材の抽出温度がBHを使用しても「仕上圧延目標温度」が確保できない程低くなるときは、当該ネック材の目標抽出温度を仕上圧延可能な目標温度まで下げる。
【0037】
まず、図4の加熱炉操業のフロー図に従って説明する。
【0038】
▲1▼加熱炉内のスラブの「一次目標抽出温度」を算出する。
【0039】
即ち、装入する各スラブ毎に仕上圧延機出側で少なくともAr3変態点温度以上を確保可能な「仕上圧延目標温度」に、炉抽出から仕上圧延までの温度降下量(加工発熱等も加味した放冷)を下記のように「温度降下量」として加えて、各スラブの「一次目標抽出温度」を算出する。
「一次目標抽出温度」=「仕上圧延目標温度」+「温度降下量」
【0040】
▲2▼「ネック材」を選定する。
・炉内で最も燃焼負荷の高く昇温量最大を必要とする「ネック材」を探す。
【0041】
1)少なくとも炉内全スラブを対象として、装入温度実績、予定在炉時間(=抽出予定時刻−装入時刻実績)を基に各スラブの「仮予測抽出温度」を算出する。
【0042】
なお、装入時刻〜現在迄の炉温は実績温度を使用し、現在〜抽出予定時刻までの炉温は現在の炉温実績をそのまま使用することが好ましい。
【0043】
2)前記1)で算出した各スラブの「仮予測抽出温度」と▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」より下記のように「昇温不足量」を算出する。
昇温不足量:α=「一次目標抽出温度」−「仮予測抽出温度」
ここで、炉内全スラブ中でαの最も大きいものを「ネック材」として選定する。
【0044】
▲3▼「ネック材」に基づく加熱炉温設定パターンを決定する。
【0045】
前記選定した「ネック材」が抽出予定時刻で前記「一次目標抽出温度」に達するように昇温不足量αの値に基づいて下記3つの中から炉温設定パターンを決定する。
【0046】
1)パターン1:α>0のスラブがあるとき
現在の炉温設定では抽出予定時刻において「ネック材」の抽出温度が「「一次目標抽出温度」まで達しないので「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」に達するように炉温設定を上げる。
【0047】
2)パターン2:全てのスラブがα<0のとき
現在の炉温設定では抽出予定時刻において「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」よりも高くなるので、「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」となるように炉温設定を下げる。
【0048】
3)パターン3:「ネック材」がα=0となるとき
現在の炉温設定を維持する。
【0049】
▲4▼前記▲3▼で選択した設定パターンによる加熱炉温を設定した場合の各スラブ抽出温度を算出する。
【0050】
ここで前記▲3▼で選択した設定パターンによる加熱炉温の設定と現在から抽出予定時刻までの在炉時間に基づいて各スラブの抽出温度を算出する。この結果、▲4▼では、「ネック材」については「予測抽出温度」=「一次目標抽出温度」となるが、加熱炉内の「ネック材」前後のスラブの「予測抽出温度」は前記▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」よりも高くなり、過剰に加熱されるため、加熱炉以外の加熱装置BHを用いて「ネック材」を補償的に加熱することで目標抽出温度を「一次目標抽出温度」よりも低温の抽出温度(「二次目標抽出温度」とする)に変更可能かを判断する。
【0051】
▲5▼「ネック材」の「一次目標抽出温度」の設定変更の判断(1)
1)前記▲2▼で選択した「ネック材」を除外した加熱炉内の他のスラブで前記▲2▼〜▲4▼を再度実施する。
この結果、炉温設定を下げてしまうため、最初に選択した「ネック材」は昇温不足となるが、他のスラブの過剰加熱代は緩和される。
【0052】
2)前記1)での炉温設定を変更した場合の最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を「二次目標抽出温度」として算出する。
【0053】
3)前記2)で算出した最初に選択した「ネック材」の「二次目標抽出温度」で抽出した時に、加熱炉以外の加熱装置BHで補償的に加熱したときの仕上圧延予定温度を下記式から算出する。
仕上圧延予定温度=「二次目標抽出温度」−「加熱炉抽出〜仕上圧延までの温度降下量」+BH最大昇温量
4)前記3)の仕上圧延予定温度が前記▲1▼で設定した「仕上圧延目標温度」を確保可能かをチェックし、最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を最終決定する。
【0054】
(a)仕上圧延予定温度≧仕上圧延目標温度のときは、最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を▲5▼−2)で算出した「二次目標抽出温度」に修正する(前記▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」は用いない。)。
【0055】
(b)仕上圧延予定温度<仕上圧延目標温度のときはネック材の抽出温度を▲1▼で決めた「一次目標抽出温度」のままとする(前記▲5▼−2)で算出した「二次目標抽出温度」は用いない。)。
【0056】
5)最初に選択した「ネック材」以外の目標抽出温度は▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」とする。
【0057】
次いで、図4の変形例である図5の加熱炉操業のフロー図に従って説明する。
【0058】
▲1▼〜▲4▼は、図4のフロー図と一緒で、▲5▼のネック材の目標抽出温度の設定方法(1)の代わりに▲6▼のネック材の目標抽出温度の設定方法(2)を行う例であるので、▲6▼について述べる。
【0059】
▲6▼「ネック材」の「一次目標抽出温度」の設定変更の判断方法(2)
1)前記▲2▼で選択した「ネック材」を除外した加熱炉内の他のスラブで前記▲2▼〜▲4▼を再度実施する。
【0060】
この結果、炉温設定を下げてしまうため、最初に選択した「ネック材」は昇温不足となるが、他のスラブの過剰加熱代は緩和される。
【0061】
2)前記1)での炉温設定を変更した場合の最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を「二次目標抽出温度」として算出する。
【0062】
3)前記2)で算出した最初に選択した「ネック材」の「二次目標抽出温度」で抽出した時の仕上圧延予定温度を下式から算出する。
仕上圧延予定温度=「二次目標抽出温度」−「加熱炉抽出〜仕上圧延までの温度降下量」+BH最大昇温量
【0063】
4)前記3)の仕上圧延予定温度が前記▲1▼で設定した「仕上圧延目標温度」を確保可能かをチェックし、最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を最終決定する。
【0064】
(a)仕上圧延予定温度≧仕上圧延目標温度のときは、最初に選択した「ネック材」の目標抽出温度を▲6▼−2)で算出した「二次目標抽出温度」に修正する(前記▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」は用いない。)。
【0065】
(b)仕上圧延予定温度<仕上圧延目標温度のときはネック材の抽出温度を前記「二次目標抽出温度」に変更しBHで温度を補償しても「仕上圧延目標温度」を確保できないため、次式にて「三次目標抽出温度」として算出する。
三次目標抽出温度=「仕上圧延目標温度」+「加熱炉抽出〜仕上圧延の温度降下量」−BH最大昇温量
【0066】
5)ネック材以外の目標温度は▲1▼で算出した「一次目標抽出温度」とする。
【0067】
なお、ネック材の抽出温度変更(「二次目標抽出温度」や「三次目標抽出温度」の設定)タイミングについて過加熱の影響を評価するには、現在炉内にあるスラブに加えて装入端にあるスラブが抽出される時点迄に装入される全スラブについての過加熱代を評価する為のデータ(装入温度、在炉時間等)を基に装入時点で変更を実施することが望ましい。
【0068】
しかし、一般に加熱炉の在炉時間は2時間を超える長時間になるため装入温度等の予測が困難であり、装入温度の精度という観点からも、装入直前に測定した温度を使用するのが望ましい。
【0069】
前記のように一般に熱延鋼板の製造工程においては連続式加熱炉が使用されており、予熱帯、加熱帯、及び均熱帯により構成される。炉温の変更は各加熱帯毎に実施するため過剰加熱の影響はネック材と同一加熱帯内にあるスラブに及ぶ。そこで、加熱炉内で燃焼負荷の高い加熱帯直前にて▲6▼の目標抽出温度変更を実施することで、精度の良い装入温度測定値を使用可能となる
【0070】
次に加熱装置(BH)による昇温加熱について説明する。
【0071】
低温抽出スラブを加熱炉以外の加熱装置(BH)で仕上目標温度に昇温加熱する場合には、図6に示すように、加熱炉2より低温抽出した鋼材(スラブ)1を粗圧延機3で粗バーとなし、粗圧延機3と仕上圧延機4との間に配置した加熱装置(BH)6により、仕上目標温度に加熱昇温する。加熱装置の昇温量が不足するときには、加熱装置を直列に複数台配置すれば、昇温量が確保できる。なお、昇温効率の面からは仕上圧延機前に加熱装置(BH)6を設置することが好ましいが、粗圧延機前後、仕上圧延機間等に設置しても同様の効果を得ることが可能である。また、加熱装置としては粗バーを加熱する能力を有し、加熱量をスラブ(粗バー)毎に調整可能で、かつスラブ(粗バー)内で調整可能な加熱装置であれば使用できる。例えば、誘導加熱装置、ガス加熱装置や通電加熱装置等があるが、誘導加熱装置を用いることが操作性能上から好ましく、通常1台の加熱装置で約50℃の昇温が可能である。
【0072】
また、本発明では、粗圧延機と仕上圧延機間に一般に配置されているシャー、コイルボックス、バー接合装置、デスケーリング装置やエッジ加熱装置等を熱延ラインに任意に配置することができ、これらの装置と加熱装置との位置関係は制限されるものではない。
【0073】
図7(a)、(b)は、加熱炉操業において、全装入スラブ中で装入温度が低く、前記の手順を経て「ネック材」と判断されたスラブ(図中の▲、●)が存在する場合の、従来のスラブ抽出温度と本発明のスラブ抽出温度とを対比して示す模式図である。なお、便宜上「ネック材」(図中の▲、●)以外の他の全てのスラブ(図中の△、○)は同一装入温度であると仮定して1本毎に表示してある。
【0074】
図7(a)は従来のスラブ抽出温度の場合であり、加熱炉への装入スラブ中に低温材(「ネック材」▲)が存在していると、低温材を目標抽出温度まで加熱するため、「ネック材」より装入温度の高いスラブは目標抽出温度以上に過加熱され、特に「ネック材」近傍のスラブ程、過剰な加熱量は大きくなってしまう(△印で示している。)。
【0075】
これに対して、本発明の場合である図7(b)では低温材(「ネック材」)は目標抽出温度よりも低くなる(●印で示している)が、装入温度の高いスラブを目標抽出温度に設定して加熱するので、「ネック材」以外の大多数の装入温度の高いスラブは過加熱されていることがない(○印で示している)。ここで、低温材は、目標抽出温度以下で抽出されるが、抽出後に仕上圧延完了するまでに加熱装置(バーヒーター加熱)により、目標抽出温度に相当し、圧延完了目標温度を確保できる温度まで昇温させる。
【0076】
【実施例】
以下、従来例と本発明例とを比較した実施例を示す。
【0077】
加熱炉に5本(スラブ▲1▼〜▲5▼)のスラブを順次装入し、その内の1本の低温材(スラブ▲3▼)の装入温度を500℃とし、他(スラブ▲1▼、▲2▼、▲4▼、▲5▼)の装入温度を800℃としたときの抽出温度変更試験を行った。
【0078】
加熱炉での目標抽出温度(T)は、圧延材料によって決まる「仕上圧延目標温度(Taim)」に、加熱炉抽出から仕上圧延までの水冷、放冷や加工発熱によって生じる温度降下量(ΔT)を加えた温度(T=Taim+ΔT)となる。本試験では、仕上圧延目標温度(Taim)=850℃、加熱炉以外で加熱をしない場合の前記加熱炉抽出から仕上圧延までの温度降下量温度降下量(ΔT)=350℃を考慮すれば各スラブの目標抽出温度は1200℃となる。
【0079】
従来例の場合の加熱炉操業の結果を表1に示す。最大昇温量となるスラブ(ネック材)▲3▼を1200℃に加熱する設定の加熱炉操業を行うため、ネック材のスラブ▲3▼以外のスラブは過加熱され、特にネック材の最近傍のスラブ▲2▼、▲4▼が1250℃まで加熱された。結果として全スラブの実績抽出温度の平均は1232℃となった。
【0080】
【表1】
【0081】
(発明例1)
これに対して、先ず本発明のうち図4に示す方法の適用例を以下に示す。ここでは加熱炉以外の加熱装置(BH)として最大昇温量が50℃の誘導加熱装置を用いた。
【0082】
本発明例では、「一次目標抽出温度」は従来例の目標抽出温度(T)と同じに設定した場合、現在の炉温設定では「仮予測抽出温度」は1150℃と算出され、スラブ▲3▼が昇温不足量α=50℃「ネック材」として選定される。ここで、α=50>0となるので、現在の炉温設定では抽出予定時刻において「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」まで達しないので「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」に達するように炉温設定を上げるようなパターン(パターン1)に決定する。これによって「ネック材」の目標抽出温度は一次目標抽出温度1200℃となるが、「ネック材」以外のスラブは従来例と同じく1230〜1250℃に過加熱されることになる。
【0083】
そこで、過加熱の原因となる「ネック材」のスラブ▲3▼を除外して「一次目標抽出温度」設定変更の判断を行ったところ、現状の炉温設定で全てのスラブが「α=0」となったため現状の炉温を維持するパターン(パターン3)に決定した。これによって「ネック材」のスラブ▲3▼の予測抽出温度(「二次抽出温度」T2)は1150℃となるが、このままでは「ネック材」のスラブ▲3▼の仕上圧延での「仕上圧延目標温度」が確保できないため、仕上圧延機の入側に設置したBH(誘導加熱装置)を用いて不足分の温度を加熱補償することにした。
【0084】
ここで加熱炉以外に用いた加熱装置(BH)の最大昇温量は50℃であるため、「ネック材」のスラブ▲3▼の目標抽出温度を1150℃とし、このときの「仕上圧延目標温度」(Taim=850℃)を確保するために、BH昇温量を50℃とした。実績抽出温度の平均は1190℃となった。
【0085】
その加熱炉操業の結果を表2に示すが、従来法に対し42℃(=1232−1190)の抽出温度低減ができた。
【0086】
【表2】
【0087】
(発明例2)
次に本発明のうち図5に示す方法を適用する。ここでは加熱炉以外の加熱装置(BH)として最大昇温量が30℃の誘導加熱装置を用いた。さらに試験で使用し加熱炉に装入したスラブ条件は前記(発明例1)と同じ条件であった。
【0088】
「一次目標抽出温度」は前記(発明例1)と同じ目標抽出温度(T)と同じに設定し、現在の炉温設定では「仮予測抽出温度」は1150℃と算出され、スラブ▲3▼が昇温不足量α=50℃「ネック材」として選定される。ここで、α=50>0となるので、現在の炉温設定では抽出予定時刻において「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」まで達しないので「ネック材」の抽出温度が「一次目標抽出温度」に達するように炉温設定を上げるようなパターン(パターン1)に決定する。これによって「ネック材」の目標抽出温度は一次目標抽出温度1200℃となるが、「ネック材」以外のスラブは従来例と同じく1230〜1250℃に過加熱されることになる。
【0089】
そこで、過加熱の原因となる「ネック材」のスラブ▲3▼を除外して「一次目標抽出温度」設定変更の判断を行ったところ、現状の炉温設定で全てのスラブが「α=0」となったため現状の炉温を維持するパターン(パターン3)に決定した。これによって「ネック材」のスラブ▲3▼の抽出予定温度(「二次抽出温度」T2)は1150℃となるが、このままでは「ネック材」のスラブ▲3▼の仕上圧延での「仕上圧延目標温度」が確保できないため、仕上圧延機の入側に設置したBH(誘導加熱装置)を用いて不足分の温度を加熱補償することにした。
【0090】
このときのBH最大昇温量=30℃のため、仕上圧延予定温度は830℃であり、このままBHを用いても「仕上圧延予定温度<仕上圧延目標温度」となって、仕上圧延目標温度(Taim=850℃)が確保できなくなってしまう。
【0091】
そこで、「ネック材」のスラブ▲3▼の「三次目標抽出温度」を下式により算出する。
三次目標抽出温度=仕上圧延目標温度(850℃)+加熱炉抽出〜仕上圧延の温度降下量(350℃)−BH最大昇温量(30℃)=1170℃
【0092】
「ネック材」のスラブ▲3▼の「三次目標抽出温度(T3)」は1170℃となるように加熱炉温度を設定した場合のスラブ▲1▼〜▲5▼までの操業結果を表3に示す。「ネック材」以外のスラブは抽出温度が1200℃以上の過加熱になったものの、全スラブの実績抽出温度の平均は1210℃となり、従来法に対し22℃(=1232−1210)の加熱温度低減ができた。
【0093】
【表3】
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、加熱炉操業において装入温度の高いスラブが予定抽出温度より高く加熱されないので、エネルギーロスを防止することができると共に、加熱、圧延時のスケール生成、成長を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の熱延ラインの概要を示す図である。
【図2】加熱炉に装入されるスラブの搬送の概要を示す図である。
【図3】加熱炉に装入されるスラブの装入順と装入温度との関係を示す図である。
【図4】加熱炉内装入スラブの目標抽出温度設定のマクロフロー図である。
【図5】加熱炉内装入スラブの目標抽出温度設定のマクロフロー図である。
【図6】加熱装置(BH)を配置した熱延ラインの概要を示す図である。
【図7】加熱炉内でのスラブの温度を示す模式図である。
【符号の説明】
1 鋼材
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
5 巻取機
6 加熱装置(BH)
7 予熱帯
8 加熱帯
9 均熱帯
Claims (2)
- 加熱炉に装入された鋼材(スラブ)中に散在する低温鋼材(スラブ)を加熱炉より抽出して、熱間圧延する熱延鋼板の製造方法において、装入温度の高い鋼材は仕上圧延目標温度と加熱炉抽出から仕上圧延完了までの温度降下量を基に設定した目標抽出温度で加熱炉より抽出するが、装入温度の低い低温鋼材は前記目標抽出温度より低温で抽出し、熱延ラインに設置した加熱炉以外の加熱装置で仕上目標温度となるように補償的に加熱することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
- 加熱炉以外の加熱装置が、熱延ラインの粗圧延機の前又は後、粗圧延機と仕上圧延機の間、又は仕上圧延機列間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の熱延鋼板の製造方法。
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