JP2004216282A - フッ化物イオンの除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】中性付近のpHの水中に微量濃度で存在するフッ化物イオンを効率的に除去し、その濃度を環境規制値以下に低減可能な方法を提供する。
【解決手段】3価のランタン又はセリウムイオンをpHが2〜7において巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂に吸着・担持した樹脂を充填したカラムに問題の微量濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を通液させることによる。
【選択図】 図4
【解決手段】3価のランタン又はセリウムイオンをpHが2〜7において巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂に吸着・担持した樹脂を充填したカラムに問題の微量濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を通液させることによる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液中からフッ化物イオンを効果的に吸着・分離・除去する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水中のフッ化物イオンは濃度が1.0−1.5 ppm程度の少量である場合は8歳以下の子供の歯の成育に良好な効果をもたらすが、2.0 ppm以上の濃度のフッ化物イオンを含む水を長期間に渡り飲用すると骨粗しょう症などの形で健康に大きな被害をもたらす。このため、例えば平成16年1月より我が国のフッ化物イオンの排出規制値は従来の15ppmから8ppmに強化される。
【0003】
現在フッ化物イオンは水酸化カルシウム等のカルシウム化合物と反応させて水に難溶なフッ化カルシウムとして沈澱・分離することにより除去されている。しかしこの方法ではフッ化物イオンの濃度を最大5ppm、実際には15〜20ppm程度にしか低減できず、上記の規制値をクリアーすることは困難である。
【0004】
フッ化物イオンは陰イオンであり、陰イオン交換樹脂による吸着・除去が考えられるが、陰イオンの中で最も陰イオン交換されにくいイオンであり、硫酸イオンや塩化物イオン、あるいは水酸イオンなど他の陰イオンが存在する水溶液中からフッ化物イオンのみを選択的に吸着・除去することは困難である。
このためジルコニウムや希土類等の金属イオンを吸着・担持したキレート樹脂やシリカゲル等の無機の吸着剤を用いて吸着・除去することが行われてきた。しかしながらこのような吸着剤を用いた場合は、フッ化物イオンの吸着が起こるpHは2〜5の弱酸性領域であり、中性付近のpHの水からの除去は困難である。またキレート樹脂やジルコニウムは高価であり、実用には適していない。徳永等はランタンを担持したシリカゲルを用いたpHが7の水からのフッ化物イオンの吸着を報告しているが(S.A.Wasay, S.Tokunaga, S.Park; Water Environ. Res., 63, 295−300 (1996))、シリカゲルへのランタンの吸着は小さく、効果的な吸着・除去剤とは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は中性近くのpHの水中からのより高度なフッ化物イオンの除去方法を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリスチレンを高分子母体とし、巨大網目構造を有するスルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂であるRohm and Haas社製のAmberlite 200CT樹脂に3価の希土類金属イオンの1種であるランタンイオンを吸着・担持させることにより調製された吸着剤が、中性付近のpHの水中からフッ化物イオンを効果的に吸着・除去することを見出した。これらの研究成果に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明者らは以前の研究においてミカンのジュースカスを燐酸でエステル化したすることにより鉄(III)イオンに対して高い吸着能を有する吸着ゲルの開発に成功した(Geosystem Eng., vol.5 No.2, 31−35 (2002))。
【0008】
さらにこのゲルに鉄(III)イオンを担持することにより調製される吸着ゲルは砒素、セレン、アンチモン等のオキソ酸の陰イオンとして存在している重金属に対して高い吸着能を有することを見出した(Designed Monomers & Polymers, vol.5, No.4, 401−414 (2002))。
【0009】
鉄(III)イオンを担持した燐酸エステル化処理したミカンジュースカスの吸着ゲルを用いて同様にフッ化物イオンの吸着を行ったが良好な吸着は得られなかった。
【0010】
しかしながら後述の比較例において詳細を述べるように、同じ燐酸エステル化処理したミカンジュースカスにセリウム(IV)イオンやランタン(III)イオンを吸着・担持することにより調製した吸着ゲルはフッ化物イオンに対して高い吸着挙動を示した。
この場合、セリウム(IV)イオンを吸着・担持した吸着ゲルはpHが3の弱酸性水溶液から高い吸着を達成したが、ランタン(III)イオンを吸着・担持した吸着ゲルはpHが4〜7の広い領域において高い吸着を達成した。
【0011】
飲用に供するための水中から微量のフッ化物イオンを吸着・除去するには、水中に微小な固体粒子が懸濁しているような場合を除いて、フッ化物イオンに対して高い選択性を有する吸着剤を充填したカラムにフッ化物イオンを含む水を通液する方法が最適である。
先に述べたミカンジュースカスを原料とする吸着剤は攪拌タンクを用いて、フッ化物イオンを含む水と共に攪拌・混合することにより、吸着・除去を行うには適しているが、カラムに充填するのには不適である。
【0012】
本発明はカラムに充填するのに適した強固な高分子構造を有する巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を用いた、中性付近のpHの水からのフッ化物イオンの効果的な除去方法を提供する。
【発明の実施の形態】
【0013】
高い酸解離定数を持つスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂はpHが1程度の酸性の強い水中からでもランタン等の3価の希土類金属イオンを強力に吸着する。これに対して先に述べた燐酸エステル化処理したミカンジュースカスの吸着ゲルではpHが4以上でないと十分な吸着は達成できない。
【0014】
強酸性陽イオン交換樹脂に吸着・担持された3価の希土類金属イオンを介してフッ化物イオンがさらに吸着される。このためフッ化物イオンを吸着・除去するためには、強酸性陽イオン交換樹脂に前以てランタン等の3価の希土類金属イオンを吸着・担持しておくことが必要である。
【0015】
吸着・担持するpHは1以上のpHであれば良いが、高いpHでは希土類金属イオンが水酸化物の沈澱を生じる。このため、pHが1〜7、好ましくは2〜6の希土類金属イオン水溶液を用いて吸着・担持を行うのが最適である。
【0016】
吸着・担持する方法としては、樹脂をカラムに充填し、これに希土類金属イオンを含む、上記のpHの希土類金属イオン水溶液を通液する方法、あるいは上記のpHの希土類金属イオン水溶液の入った容器に樹脂を入れて攪拌・混合する方法とがある。
【0017】
後者の場合において、吸着・担持に要する時間は2時間以上、好ましくは3時間以上で十分である。
【0018】
吸着・担持する3価の希土類金属イオンとしては実施例において詳細に述べるように、軽希土であるランタン又はセリウムイオンが好ましい事が研究の結果明らかとなった。また価格の面からも他の希土類金属イオンよりもこれらのイオンを用いる方が経済的に有利である。
【0019】
イオン交換樹脂として利用される高分子としては巨大網目構造の樹脂とゲル型の樹脂とがある。同じポリスチレンの高分子でも、このような構造の相違によって吸着、イオン交換の性質が大きく異なることは周知の事実である。フッ化物イオンの吸着においては、実施例において詳細に述べるように、巨大網目構造の樹脂を使用することが好ましいことが研究の結果明らかとなった。
【0020】
後述の実施例において示すように3価のランタンやセリウムイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに処理水を通液することにより、微量のフッ化物イオンが除去された清澄な水が得られる。一方、このような樹脂をタンクに入れ、処理水と共に攪拌・混合するバッチ操作によってもフッ化物イオンの除去は可能である。
【0021】
以下に本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。なお本発明は、以下の例に限定されるものではない。
実施例1 3価のランタン、又はセリウムイオンの吸着・担持方法
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11を乾燥重量で25 mg取り、1mMの濃度のランタンイオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、ランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。
吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図1に示す。ここで吸着百分率とは次式で定義される百分率である。
吸着百分率=(吸着前の濃度−吸着後の濃度)/吸着前の濃度 X 100
弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11ではpHが2以上でないと吸着が起こらないのに対して、強酸性陽イオン交換樹脂では、Amberlite 200CTでもAmberlite IR124でも、いずれにおいてもpHが1程度の酸性水溶液からでも100%の吸着が起こる。3価のセリウムイオンの場合も同様であった。
したがって吸着・担持を行うには水溶液のpHを1以上にすれば良いことが分かる。
【0022】
実施例2 3価のランタン、又はセリウムイオンの吸着・担持に要する接触時間
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124を乾燥重量で25mg取り、1mMの濃度のランタンイオンを含む水溶液15 mlと共に30℃で様々な時間振り混ぜることによってランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。吸着百分率と振り混ぜ時間との関係を図2に示す。いずれの樹脂においても100分以上振り混ぜると100%の吸着が起こることが分かる。3価のセリウムイオンの場合も同様であった。
したがって十分な吸着・担持を行うためには2時間程度以上振り混ぜればよいことが分かる。
【0023】
実施例3 ランタンイオンのイオン交換樹脂への飽和吸着量
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11を乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のランタンイオンを含む水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、ランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。
樹脂の乾燥重量1kg当りのランタンの吸着モル数と吸着後に水溶液中に残存しているランタンの濃度との関係を図3に示す。図3よりいずれのイオン交換樹脂においても、吸着モル数はランタンの濃度と共に増加するが、ランタンの濃度がある値以上になると、それ以上の吸着は起こらずある一定値漸近するというLangmuir型の吸着に従っているということが分かる。この一定値よりAmberlite 200CT、Amberlite IR124およびDIAION WK11樹脂におけるランタンイオンの飽和吸着量はそれぞれ1.41、2.21および1.41 mol/kgであると算出された。
【0024】
実施例4 ランタンイオンをイオン交換樹脂に吸着・担持させる時のpHとフッ化物イオンの吸着との関係
pHが3.0、又は6.0、又は8.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、あるいは未吸着の同樹脂を乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図4に示す。
【0025】
図4よりランタンイオンを吸着・担持していない樹脂ではフッ化物イオンは殆ど吸着されないことが分かる。またpHが3.0でランタンイオンを吸着・担持した樹脂ではpHが6.0あるいは8.0において吸着・担持した樹脂と比較して、より広い範囲のpHにおいて、より多くのフッ化物イオンを吸着していることが分かる。すなわちpHが3.0でランタンイオンを吸着・担持した樹脂ではpHが3〜8の弱酸性から中性の広範なpHの領域において90%以上のフッ化物イオンを吸着・除去することが可能である。
【0026】
実施例5 3価のセリウムイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂によるフッ化物イオンの除去
pHが3.0において3価のセリウムイオン、又はイットリウムイオン、又は鉄イオン、又はアルミニウムイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図5に示す。
図5より3価のセリウムイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂は、図4に示したランタンイオンを吸着・担持させたイオン交換樹脂と同様に、pHが3〜7の広範な領域にわたり、90%以上のフッ化物イオンを吸着・除去していることが分かる。
【0027】
これに対して、同じ希土類金属イオンでもイットリウムイオンを吸着・担持した樹脂では60%程度の除去しか達成できない。またアルミニウムイオンや鉄イオンを吸着・担持した樹脂では20%程度の除去しか達成できない。
【0028】
実施例6 ランタンイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂のフッ化物イオンに対しての交換容量
pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のフッ化物イオンを含むpHが6の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合の樹脂の乾燥重量1kg当りのフッ化物イオンの吸着量と、吸着後に水溶液中に残存するフッ化物イオンの濃度との関係を図6に示す。
【0029】
図6よりフッ化物イオンの吸着量はフッ化物イオンの濃度の増加と共に増加していくが、ある程度以上の濃度に達するとそれ以上の吸着は起こらず、一定値に漸近していくことが分かる。この一定値より本樹脂のフッ化物イオンに対しての飽和吸着量、すなわちフッ化物イオンに対しての交換容量が1.34 mol/kgであると算出された。
【0030】
実施例7 共存する硫酸イオンの効果
pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンと様々な濃度の硫酸イオンとを含むpHが3.8の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と共存する硫酸イオンの濃度との関係を図7に示す。図7よりフッ化物イオンの吸着は共存する硫酸イオンには殆ど影響されないことが分かる。
【0031】
実施例8 充填カラムによるフッ化物イオンの除去
乾燥重量で2.0gのRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTをガラス製のカラムに充填した後、pHが6.0で1.16 mMの濃度のランタンイオンを含む水溶液をペリスタティックポンプを用いて6.0 ml/hの流量で6時間通液することによりランタンイオンの吸着・担持を行った。さらにpHが6.0のランタンイオンを含まないイオン交換水を5時間通液して吸着されずにカラム内に残存しているランタンイオンの除去を行った。
その後にpHが6.0で5.9 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を6.6 ml/hの流量で通液した。この場合のカラムの出口と入口におけるフッ化物イオンの濃度の比とベッド体積の関係を図8に示す。ここでベッド体積とは、ある時間までにカラムに通液したフッ化物イオン水溶液の全体積を充填した樹脂の体積(0.4 ml)で割ったものである。
【0032】
図8よりベッド体積が50の時点までは出口におけるフッ化物イオンの濃度はイオンクロマトグラフィーによる検出限界以下となり、フッ化物イオンはほぼ完全に除去できることが分かる。
【0033】
【比較例】
比較例1 巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂以外のイオン交換体にランタンイオンを吸着・担持した場合のフッ化物イオンの吸着
Rohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11、又はホルムアルデヒドで架橋したペクチン酸のゲル(以後CPAゲルと略)、又は燐酸で処理することによりその内部に含まれているセルロースやヘミセルロースの部分を燐酸エステル化することにより調製されたゲル(以後POJRゲルと略)にpHが6のランタンイオン水溶液を用いてランタンイオンを飽和吸着させた。
ランタンイオンを飽和吸着させたこれらのイオン交換体を乾燥重量でそれぞれ25mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることによりフッ化物イオンの吸着を行った。
【0034】
図9にフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後の水溶液のpHとの関係を示す。同じ強酸性の陽イオン交換樹脂でも、ゲル型のAmberlite IR124に担持させたものは、巨大網目構造の樹脂であるAmberlite 200CTとは大きく異なり、フッ化物イオンの吸着は大きくなく、しかもpHの増加と共に吸着は減少している。
【0035】
弱酸性の陽イオン交換樹脂DIAION WA11にランタンイオンを吸着・担持させたものではpHが2〜4の弱酸性領域において90%程度の吸着を示しているが、中性付近の水中からはフッ化物イオンの吸着・除去は困難である。
ランタンイオンを吸着・担持させたCPAゲルでもpHが3付近で吸着が最大となるが、中性付近の水中からはフッ化物イオンの吸着・除去は困難である。
POJRゲルにランタンイオンを吸着・担持させたものではpHが5〜8の中性付近の領域においてフッ化物イオンの吸着は最大となるが、吸着百分率は80%程度に過ぎない。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、3価のランタン又はセリウムイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることにより、中性付近の水中からのフッ化物イオンを極めて効果的に吸着・除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)、又は弱酸性陽イオン交換樹脂であるDIAION WK11樹脂(△)と1mMの濃度のランタンイオンを含む様々なpHの水溶液15mlとを30℃で24時間振り混ぜた場合のランタンイオンの各樹脂への吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
【図2】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)と1mMの濃度のランタンイオンをpHが6.0の水溶液15mlとを30℃で振り混ぜることによりランタンイオンの吸着を行った場合の各樹脂への吸着百分率(縦軸、%)と振り混ぜ時間(横軸、分)との関係を示す。
【図3】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)、又は弱酸性陽イオン交換樹脂であるDIAION WK11樹脂(△)と様々な濃度のフッ化物イオンを含む水溶液とを振り混ぜてフッ化物イオンの吸着を行った場合の乾燥ゲル1kg当りのフッ化物イオンの吸着量(縦軸、mol/kg−乾燥樹脂)と吸着後の水溶液中のフッ化物イオンの濃度(横軸、mM (M=mol/dm3))との関係を示す。図中のqmaxは各樹脂に対するフッ化物イオンの飽和吸着量、すなわち交換容量を示す。
【図4】3.0、又は6.0、又は8.0のpHにおいて巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂にランタンイオンを飽和吸着・担持させた樹脂、またはランタンイオンが未吸着のAmberlite 200CT樹脂、をそれぞれ25mg取って、15ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液15mlと30℃で24時間振り混ぜた時のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
◇:pHが3.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
▲:pHが6.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
△:pHが8.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
×:ランタンイオンを担持してないAmberlite 200CT樹脂
【図5】pHが3.0において3価のセリウムイオン、又はイットリウムイオン、又は鉄イオン、又はアルミニウムイオンを飽和吸着・担持させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜた時のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
◆:3価のセリウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
□:3価のイットリウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
▲:3価の鉄イオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
×:3価のアルミニウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
【図6】pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のフッ化物イオンを含むpHが6の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った場合の樹脂の乾燥重量1kg当りのフッ化物イオンの吸着量(縦軸、mol/kg−乾燥樹脂)と、吸着後に水溶液中に残存するフッ化物イオンの濃度(横軸、mM (M=mol/dm3))との関係を示す。図中のqmaxはフッ化物イオンの飽和吸着量、すなわち交換容量を示す。
【図7】pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンと様々な濃度の硫酸イオンとを含むpHが3.8の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った場合のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と共存する硫酸イオンの濃度(横軸、ppm)との関係を示す。
【図8】ランタンイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT樹脂を充填したカラムにpHが6.0で5.9 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を6.6 ml/hの流量で通液した場合のカラムの出口と入口におけるフッ化物イオンの濃度の比(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。
【図9】ゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11、又はCPAゲル、又はPOJRゲルにpHが6のランタンイオン水溶液を用いてランタンイオンを飽和吸着させることにより調製した4種類のイオン交換体を乾燥重量でそれぞれ25mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることによりフッ化物イオンの吸着を行った場合のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液中からフッ化物イオンを効果的に吸着・分離・除去する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水中のフッ化物イオンは濃度が1.0−1.5 ppm程度の少量である場合は8歳以下の子供の歯の成育に良好な効果をもたらすが、2.0 ppm以上の濃度のフッ化物イオンを含む水を長期間に渡り飲用すると骨粗しょう症などの形で健康に大きな被害をもたらす。このため、例えば平成16年1月より我が国のフッ化物イオンの排出規制値は従来の15ppmから8ppmに強化される。
【0003】
現在フッ化物イオンは水酸化カルシウム等のカルシウム化合物と反応させて水に難溶なフッ化カルシウムとして沈澱・分離することにより除去されている。しかしこの方法ではフッ化物イオンの濃度を最大5ppm、実際には15〜20ppm程度にしか低減できず、上記の規制値をクリアーすることは困難である。
【0004】
フッ化物イオンは陰イオンであり、陰イオン交換樹脂による吸着・除去が考えられるが、陰イオンの中で最も陰イオン交換されにくいイオンであり、硫酸イオンや塩化物イオン、あるいは水酸イオンなど他の陰イオンが存在する水溶液中からフッ化物イオンのみを選択的に吸着・除去することは困難である。
このためジルコニウムや希土類等の金属イオンを吸着・担持したキレート樹脂やシリカゲル等の無機の吸着剤を用いて吸着・除去することが行われてきた。しかしながらこのような吸着剤を用いた場合は、フッ化物イオンの吸着が起こるpHは2〜5の弱酸性領域であり、中性付近のpHの水からの除去は困難である。またキレート樹脂やジルコニウムは高価であり、実用には適していない。徳永等はランタンを担持したシリカゲルを用いたpHが7の水からのフッ化物イオンの吸着を報告しているが(S.A.Wasay, S.Tokunaga, S.Park; Water Environ. Res., 63, 295−300 (1996))、シリカゲルへのランタンの吸着は小さく、効果的な吸着・除去剤とは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は中性近くのpHの水中からのより高度なフッ化物イオンの除去方法を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリスチレンを高分子母体とし、巨大網目構造を有するスルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂であるRohm and Haas社製のAmberlite 200CT樹脂に3価の希土類金属イオンの1種であるランタンイオンを吸着・担持させることにより調製された吸着剤が、中性付近のpHの水中からフッ化物イオンを効果的に吸着・除去することを見出した。これらの研究成果に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明者らは以前の研究においてミカンのジュースカスを燐酸でエステル化したすることにより鉄(III)イオンに対して高い吸着能を有する吸着ゲルの開発に成功した(Geosystem Eng., vol.5 No.2, 31−35 (2002))。
【0008】
さらにこのゲルに鉄(III)イオンを担持することにより調製される吸着ゲルは砒素、セレン、アンチモン等のオキソ酸の陰イオンとして存在している重金属に対して高い吸着能を有することを見出した(Designed Monomers & Polymers, vol.5, No.4, 401−414 (2002))。
【0009】
鉄(III)イオンを担持した燐酸エステル化処理したミカンジュースカスの吸着ゲルを用いて同様にフッ化物イオンの吸着を行ったが良好な吸着は得られなかった。
【0010】
しかしながら後述の比較例において詳細を述べるように、同じ燐酸エステル化処理したミカンジュースカスにセリウム(IV)イオンやランタン(III)イオンを吸着・担持することにより調製した吸着ゲルはフッ化物イオンに対して高い吸着挙動を示した。
この場合、セリウム(IV)イオンを吸着・担持した吸着ゲルはpHが3の弱酸性水溶液から高い吸着を達成したが、ランタン(III)イオンを吸着・担持した吸着ゲルはpHが4〜7の広い領域において高い吸着を達成した。
【0011】
飲用に供するための水中から微量のフッ化物イオンを吸着・除去するには、水中に微小な固体粒子が懸濁しているような場合を除いて、フッ化物イオンに対して高い選択性を有する吸着剤を充填したカラムにフッ化物イオンを含む水を通液する方法が最適である。
先に述べたミカンジュースカスを原料とする吸着剤は攪拌タンクを用いて、フッ化物イオンを含む水と共に攪拌・混合することにより、吸着・除去を行うには適しているが、カラムに充填するのには不適である。
【0012】
本発明はカラムに充填するのに適した強固な高分子構造を有する巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を用いた、中性付近のpHの水からのフッ化物イオンの効果的な除去方法を提供する。
【発明の実施の形態】
【0013】
高い酸解離定数を持つスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂はpHが1程度の酸性の強い水中からでもランタン等の3価の希土類金属イオンを強力に吸着する。これに対して先に述べた燐酸エステル化処理したミカンジュースカスの吸着ゲルではpHが4以上でないと十分な吸着は達成できない。
【0014】
強酸性陽イオン交換樹脂に吸着・担持された3価の希土類金属イオンを介してフッ化物イオンがさらに吸着される。このためフッ化物イオンを吸着・除去するためには、強酸性陽イオン交換樹脂に前以てランタン等の3価の希土類金属イオンを吸着・担持しておくことが必要である。
【0015】
吸着・担持するpHは1以上のpHであれば良いが、高いpHでは希土類金属イオンが水酸化物の沈澱を生じる。このため、pHが1〜7、好ましくは2〜6の希土類金属イオン水溶液を用いて吸着・担持を行うのが最適である。
【0016】
吸着・担持する方法としては、樹脂をカラムに充填し、これに希土類金属イオンを含む、上記のpHの希土類金属イオン水溶液を通液する方法、あるいは上記のpHの希土類金属イオン水溶液の入った容器に樹脂を入れて攪拌・混合する方法とがある。
【0017】
後者の場合において、吸着・担持に要する時間は2時間以上、好ましくは3時間以上で十分である。
【0018】
吸着・担持する3価の希土類金属イオンとしては実施例において詳細に述べるように、軽希土であるランタン又はセリウムイオンが好ましい事が研究の結果明らかとなった。また価格の面からも他の希土類金属イオンよりもこれらのイオンを用いる方が経済的に有利である。
【0019】
イオン交換樹脂として利用される高分子としては巨大網目構造の樹脂とゲル型の樹脂とがある。同じポリスチレンの高分子でも、このような構造の相違によって吸着、イオン交換の性質が大きく異なることは周知の事実である。フッ化物イオンの吸着においては、実施例において詳細に述べるように、巨大網目構造の樹脂を使用することが好ましいことが研究の結果明らかとなった。
【0020】
後述の実施例において示すように3価のランタンやセリウムイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに処理水を通液することにより、微量のフッ化物イオンが除去された清澄な水が得られる。一方、このような樹脂をタンクに入れ、処理水と共に攪拌・混合するバッチ操作によってもフッ化物イオンの除去は可能である。
【0021】
以下に本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。なお本発明は、以下の例に限定されるものではない。
実施例1 3価のランタン、又はセリウムイオンの吸着・担持方法
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11を乾燥重量で25 mg取り、1mMの濃度のランタンイオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、ランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。
吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図1に示す。ここで吸着百分率とは次式で定義される百分率である。
吸着百分率=(吸着前の濃度−吸着後の濃度)/吸着前の濃度 X 100
弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11ではpHが2以上でないと吸着が起こらないのに対して、強酸性陽イオン交換樹脂では、Amberlite 200CTでもAmberlite IR124でも、いずれにおいてもpHが1程度の酸性水溶液からでも100%の吸着が起こる。3価のセリウムイオンの場合も同様であった。
したがって吸着・担持を行うには水溶液のpHを1以上にすれば良いことが分かる。
【0022】
実施例2 3価のランタン、又はセリウムイオンの吸着・担持に要する接触時間
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124を乾燥重量で25mg取り、1mMの濃度のランタンイオンを含む水溶液15 mlと共に30℃で様々な時間振り混ぜることによってランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。吸着百分率と振り混ぜ時間との関係を図2に示す。いずれの樹脂においても100分以上振り混ぜると100%の吸着が起こることが分かる。3価のセリウムイオンの場合も同様であった。
したがって十分な吸着・担持を行うためには2時間程度以上振り混ぜればよいことが分かる。
【0023】
実施例3 ランタンイオンのイオン交換樹脂への飽和吸着量
Rohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、又は同じくRohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11を乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のランタンイオンを含む水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、ランタンイオンをこれらのイオン交換樹脂に吸着・担持させた。
樹脂の乾燥重量1kg当りのランタンの吸着モル数と吸着後に水溶液中に残存しているランタンの濃度との関係を図3に示す。図3よりいずれのイオン交換樹脂においても、吸着モル数はランタンの濃度と共に増加するが、ランタンの濃度がある値以上になると、それ以上の吸着は起こらずある一定値漸近するというLangmuir型の吸着に従っているということが分かる。この一定値よりAmberlite 200CT、Amberlite IR124およびDIAION WK11樹脂におけるランタンイオンの飽和吸着量はそれぞれ1.41、2.21および1.41 mol/kgであると算出された。
【0024】
実施例4 ランタンイオンをイオン交換樹脂に吸着・担持させる時のpHとフッ化物イオンの吸着との関係
pHが3.0、又は6.0、又は8.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT、あるいは未吸着の同樹脂を乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図4に示す。
【0025】
図4よりランタンイオンを吸着・担持していない樹脂ではフッ化物イオンは殆ど吸着されないことが分かる。またpHが3.0でランタンイオンを吸着・担持した樹脂ではpHが6.0あるいは8.0において吸着・担持した樹脂と比較して、より広い範囲のpHにおいて、より多くのフッ化物イオンを吸着していることが分かる。すなわちpHが3.0でランタンイオンを吸着・担持した樹脂ではpHが3〜8の弱酸性から中性の広範なpHの領域において90%以上のフッ化物イオンを吸着・除去することが可能である。
【0026】
実施例5 3価のセリウムイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂によるフッ化物イオンの除去
pHが3.0において3価のセリウムイオン、又はイットリウムイオン、又は鉄イオン、又はアルミニウムイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後のpHとの関係を図5に示す。
図5より3価のセリウムイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂は、図4に示したランタンイオンを吸着・担持させたイオン交換樹脂と同様に、pHが3〜7の広範な領域にわたり、90%以上のフッ化物イオンを吸着・除去していることが分かる。
【0027】
これに対して、同じ希土類金属イオンでもイットリウムイオンを吸着・担持した樹脂では60%程度の除去しか達成できない。またアルミニウムイオンや鉄イオンを吸着・担持した樹脂では20%程度の除去しか達成できない。
【0028】
実施例6 ランタンイオンを吸着・担持したイオン交換樹脂のフッ化物イオンに対しての交換容量
pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のフッ化物イオンを含むpHが6の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合の樹脂の乾燥重量1kg当りのフッ化物イオンの吸着量と、吸着後に水溶液中に残存するフッ化物イオンの濃度との関係を図6に示す。
【0029】
図6よりフッ化物イオンの吸着量はフッ化物イオンの濃度の増加と共に増加していくが、ある程度以上の濃度に達するとそれ以上の吸着は起こらず、一定値に漸近していくことが分かる。この一定値より本樹脂のフッ化物イオンに対しての飽和吸着量、すなわちフッ化物イオンに対しての交換容量が1.34 mol/kgであると算出された。
【0030】
実施例7 共存する硫酸イオンの効果
pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させたRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンと様々な濃度の硫酸イオンとを含むpHが3.8の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った。この場合のフッ化物イオンの吸着百分率と共存する硫酸イオンの濃度との関係を図7に示す。図7よりフッ化物イオンの吸着は共存する硫酸イオンには殆ど影響されないことが分かる。
【0031】
実施例8 充填カラムによるフッ化物イオンの除去
乾燥重量で2.0gのRohm and Haas社製の巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTをガラス製のカラムに充填した後、pHが6.0で1.16 mMの濃度のランタンイオンを含む水溶液をペリスタティックポンプを用いて6.0 ml/hの流量で6時間通液することによりランタンイオンの吸着・担持を行った。さらにpHが6.0のランタンイオンを含まないイオン交換水を5時間通液して吸着されずにカラム内に残存しているランタンイオンの除去を行った。
その後にpHが6.0で5.9 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を6.6 ml/hの流量で通液した。この場合のカラムの出口と入口におけるフッ化物イオンの濃度の比とベッド体積の関係を図8に示す。ここでベッド体積とは、ある時間までにカラムに通液したフッ化物イオン水溶液の全体積を充填した樹脂の体積(0.4 ml)で割ったものである。
【0032】
図8よりベッド体積が50の時点までは出口におけるフッ化物イオンの濃度はイオンクロマトグラフィーによる検出限界以下となり、フッ化物イオンはほぼ完全に除去できることが分かる。
【0033】
【比較例】
比較例1 巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂以外のイオン交換体にランタンイオンを吸着・担持した場合のフッ化物イオンの吸着
Rohm and Haas社製のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は三菱化学(株)製の弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11、又はホルムアルデヒドで架橋したペクチン酸のゲル(以後CPAゲルと略)、又は燐酸で処理することによりその内部に含まれているセルロースやヘミセルロースの部分を燐酸エステル化することにより調製されたゲル(以後POJRゲルと略)にpHが6のランタンイオン水溶液を用いてランタンイオンを飽和吸着させた。
ランタンイオンを飽和吸着させたこれらのイオン交換体を乾燥重量でそれぞれ25mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることによりフッ化物イオンの吸着を行った。
【0034】
図9にフッ化物イオンの吸着百分率と吸着後の水溶液のpHとの関係を示す。同じ強酸性の陽イオン交換樹脂でも、ゲル型のAmberlite IR124に担持させたものは、巨大網目構造の樹脂であるAmberlite 200CTとは大きく異なり、フッ化物イオンの吸着は大きくなく、しかもpHの増加と共に吸着は減少している。
【0035】
弱酸性の陽イオン交換樹脂DIAION WA11にランタンイオンを吸着・担持させたものではpHが2〜4の弱酸性領域において90%程度の吸着を示しているが、中性付近の水中からはフッ化物イオンの吸着・除去は困難である。
ランタンイオンを吸着・担持させたCPAゲルでもpHが3付近で吸着が最大となるが、中性付近の水中からはフッ化物イオンの吸着・除去は困難である。
POJRゲルにランタンイオンを吸着・担持させたものではpHが5〜8の中性付近の領域においてフッ化物イオンの吸着は最大となるが、吸着百分率は80%程度に過ぎない。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、3価のランタン又はセリウムイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることにより、中性付近の水中からのフッ化物イオンを極めて効果的に吸着・除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)、又は弱酸性陽イオン交換樹脂であるDIAION WK11樹脂(△)と1mMの濃度のランタンイオンを含む様々なpHの水溶液15mlとを30℃で24時間振り混ぜた場合のランタンイオンの各樹脂への吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
【図2】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)と1mMの濃度のランタンイオンをpHが6.0の水溶液15mlとを30℃で振り混ぜることによりランタンイオンの吸着を行った場合の各樹脂への吸着百分率(縦軸、%)と振り混ぜ時間(横軸、分)との関係を示す。
【図3】25mgの巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂(◆)、又はゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite IR124樹脂(◇)、又は弱酸性陽イオン交換樹脂であるDIAION WK11樹脂(△)と様々な濃度のフッ化物イオンを含む水溶液とを振り混ぜてフッ化物イオンの吸着を行った場合の乾燥ゲル1kg当りのフッ化物イオンの吸着量(縦軸、mol/kg−乾燥樹脂)と吸着後の水溶液中のフッ化物イオンの濃度(横軸、mM (M=mol/dm3))との関係を示す。図中のqmaxは各樹脂に対するフッ化物イオンの飽和吸着量、すなわち交換容量を示す。
【図4】3.0、又は6.0、又は8.0のpHにおいて巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であるAmberlite 200CT樹脂にランタンイオンを飽和吸着・担持させた樹脂、またはランタンイオンが未吸着のAmberlite 200CT樹脂、をそれぞれ25mg取って、15ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液15mlと30℃で24時間振り混ぜた時のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
◇:pHが3.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
▲:pHが6.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
△:pHが8.0の水溶液からランタンイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
×:ランタンイオンを担持してないAmberlite 200CT樹脂
【図5】pHが3.0において3価のセリウムイオン、又はイットリウムイオン、又は鉄イオン、又はアルミニウムイオンを飽和吸着・担持させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜた時のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
◆:3価のセリウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
□:3価のイットリウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
▲:3価の鉄イオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
×:3価のアルミニウムイオンを飽和吸着・担持したAmberlite 200CT樹脂
【図6】pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、様々な濃度のフッ化物イオンを含むpHが6の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った場合の樹脂の乾燥重量1kg当りのフッ化物イオンの吸着量(縦軸、mol/kg−乾燥樹脂)と、吸着後に水溶液中に残存するフッ化物イオンの濃度(横軸、mM (M=mol/dm3))との関係を示す。図中のqmaxはフッ化物イオンの飽和吸着量、すなわち交換容量を示す。
【図7】pHが6.0においてランタンイオンを飽和吸着させた巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CTを乾燥重量で25 mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンと様々な濃度の硫酸イオンとを含むpHが3.8の水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることにより、フッ化物イオンの吸着を行った場合のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と共存する硫酸イオンの濃度(横軸、ppm)との関係を示す。
【図8】ランタンイオンを吸着・担持した巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite 200CT樹脂を充填したカラムにpHが6.0で5.9 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む水溶液を6.6 ml/hの流量で通液した場合のカラムの出口と入口におけるフッ化物イオンの濃度の比(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。
【図9】ゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂Amberlite IR124、又は弱酸性陽イオン交換樹脂DIAION WK11、又はCPAゲル、又はPOJRゲルにpHが6のランタンイオン水溶液を用いてランタンイオンを飽和吸着させることにより調製した4種類のイオン交換体を乾燥重量でそれぞれ25mg取り、15 ppmの濃度のフッ化物イオンを含む様々なpHの水溶液15 mlと共に30℃で24時間振り混ぜることによりフッ化物イオンの吸着を行った場合のフッ化物イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。
Claims (4)
- 陽イオン交換樹脂に希土類金属イオンを吸着・担持することにより調製される吸着剤を利用することを特徴とするフッ化物イオンの除去方法。
- 請求項1の陽イオン交換樹脂が巨大網目構造の強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とするフッ化物イオンの除去方法。
- 請求項1の希土類金属イオンが3価のランタンイオン又はセリウムイオンであることを特徴とするフッ化物イオンの除去方法。
- 請求項1の陽イオン交換樹脂に希土類金属イオンを吸着・担持する時のpHが2〜4の弱酸性領域であることを特徴とするフッ化物イオンの除去方法。
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