JP2004216276A - 中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法と中空糸膜束擬似シート状物及び中空糸膜モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストの低減と品質に優れた製品の製造とその生産性の向上とが実現される、気体、液体等の流体の分離装置に用いられる分離膜モジュールの中空糸膜束擬似シート状物の製造方法を提供すると共に、簡単な構造であり、中空糸膜束を効率よく且つ円滑に取り扱うことを可能にした中空糸膜束擬似シート状物を提供し、更には高品質の各種の形態に作製できる中空糸膜モジュールを提供する。
【解決手段】紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜(11)を、隣接する中空糸膜(11)との間に所定の間隔をもたせて枷枠(9) 上に並列状態で螺旋状に巻き取り、巻き取られた中空糸膜(11)からなる円筒状の中空糸膜束(12)を、枷枠(9) 上にて所要の間隔をもつ枷枠軸(9a)に平行な2本の直線に沿って熱融着させる。そして、中空糸膜束(12)の直線状に融着された2本の熱融着部分(13,13) の間を切断する。枷枠(9) から取り外して単層の中空糸膜束の擬似シート状物(14)を得る。
【選択図】図1
【解決手段】紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜(11)を、隣接する中空糸膜(11)との間に所定の間隔をもたせて枷枠(9) 上に並列状態で螺旋状に巻き取り、巻き取られた中空糸膜(11)からなる円筒状の中空糸膜束(12)を、枷枠(9) 上にて所要の間隔をもつ枷枠軸(9a)に平行な2本の直線に沿って熱融着させる。そして、中空糸膜束(12)の直線状に融着された2本の熱融着部分(13,13) の間を切断する。枷枠(9) から取り外して単層の中空糸膜束の擬似シート状物(14)を得る。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体、液体等の流体の分離装置に用いられる分離膜モジュールの中空糸膜束擬似シート状物の製造方法と中空糸膜束擬似シート状物及び中空糸膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、中空糸膜を用いたモジュールを作製するにあたっては、その前駆体として多数本の中空糸膜を一平面上に均一に並べて、ある一定の幅を有する擬似シート状物を作製し、この擬似シート状物を用いてその両端部を熱可塑性樹脂をもって溶融接着してバンドル状、らせん状又は積層状などの各種の形態に中空糸膜モジュールを製造している。一般に、多数本の中空糸膜を擬似シート状の形態に加工する方法としてラッセル編み加工などが多用されている。
【0003】
この種の擬似シート状物の製造方法の一例として、例えば本出願人が先に提案した特開平10−57782号公報には、紡糸工程で得られた中空繊維をスダレ編み加工によって擬似シート状に加工し、そのスダレ編みシートの長さ方向の両端部に熱可塑性樹脂をもって溶融接着させることによって擬似シート状物とする方法が開示されている。
【0004】
前記スダレ編みシートは、多数本の中空繊維が横糸として所要の間隔をもって平行に配され、その横糸の配列間隔を縦糸を構成するフィラメントによって保持したものである。擬似シート状物としてスダレ編みシートを使用する場合は、連続していない複数本の中空繊維がシートの横糸を形成しているため、その縦糸と平行な両端部を熱可塑性樹脂にて溶融接着させることにより、擬似シート状物の両端部に薄膜状の樹脂接合部を設けている。一方、擬似シート状物として、中空繊維が縦糸と平行な両端部で複数回折り返され、略平行に配されて横糸が構成され、この横糸が縦糸を構成するフィラメントによって相互に保持されたラッセル編みシートを使用する場合には、隣接する横糸同士がつながっているため、一方の端部のみに前記樹脂接合部を設けている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−57782号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示された擬似シート状物の製造方法は、紡糸工程で得られた中空糸膜を擬似シート状に加工し、それをモジュールへと加工する際に取り扱いやすい擬似シート状物を得るための優れた製法である。しかしながら、中空糸膜をスダレ編み加工あるいはラッセル編み加工により擬似シート状に加工するにあたっては、紡糸工程において一度ボビン等に巻き取られた中空糸膜又は中空繊維は、紡糸工程後のスダレ編み工程あるいはラッセル編み工程において、スダレ編み機やラッセル編み機などの加工機にかけ直す必要がある。このため、加工工程が増え、加工時間が遅くなり、加工費等が嵩む。しかも、製造コストが高くなるばかりでなく、生産効率を低下させ、生産性を損なう原因にもつながる。
【0007】
また、機械的強度を高めるために強度保持材料と複合された形態の中空糸膜を使用すると、必然的に曲げ剛性が高くなる。このため、前記ラッセル編み工程において、その中空糸膜を折り返しながら編み込んでいくラッセル編み機にかけることは到底困難となり、多数本の中空繊維からなる中空糸膜束の擬似シート状物を簡単に且つ廉価に製造することができないという問題があった。このように、従来の擬似シート状物の製造方法は、安価な製造コストで製品を精度高く多量生産し、あるいは高速生産するには限界があった。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、製造コストの低減と品質に優れた製品の製造とその生産性の向上とが実現される、気体、液体等の流体の分離装置に用いられる分離膜モジュールの中空糸膜束擬似シート状物の製造方法を提供することを第1の目的とし、簡単な構造であり、中空糸膜束を効率よく且つ円滑に取り扱うことを可能にした中空糸膜束擬似シート状物を提供することを第2の目的とし、更には高品質の各種の形態に作製できる中空糸膜モジュールを提供することを第3の目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
本件請求項1に係る発明は、熱可塑性素材により主に構成される中空糸膜を用いてモジュールの前駆体である擬似シート状物を製造する方法であって、紡糸工程で得られた1本以上の前記中空糸膜を、隣接する中空糸膜との間に所定の間隔をもたせて枷枠上に並列状態で螺旋状に巻き取ること、巻き取られた前記中空糸膜からなる円筒状の中空糸膜束を、枷枠上にて所要の間隔をもつ枷枠軸に平行な2本の直線に沿って熱融着させること、及び前記中空糸膜束の直線状に融着された2本の熱融着部分の間を切断することを含んでなることを特徴とする中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法にある。
【0010】
本発明における中空糸膜束の擬似シート状物とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に一平面状に均一に且つ平行に並列して擬似的なシート状の形態に加工したものをいう。
【0011】
本発明に係る中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法は、上記特許文献1に開示された技術と大きく異なり、紡糸工程で得られた中空糸膜をボビンに巻き取ったのち、このボビンから線状に中空糸膜を一方向に引き出してスダレ編み加工したり、あるいはラッセル編み加工する工程を排除している。すなわち、本発明にあっては、紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜を、隣接する中空糸膜との間に所定の間隔をもって枷枠上に並列状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠を取り除いて後工程に回す。
【0012】
この操作と同時に、新たな枷枠を巻取装置に装着すると共に、この新たな枷枠上に紡糸工程側に連続する次位の中空糸膜の糸端を適宜の保持手段によって保持させる。糸端を保持する間に送り出される中空糸膜は、新たな枷枠との間に配した、例えばダンサーロールにより吸収して、一時的に滞留させる。糸端の保持が終了すると、次位の中空糸膜を新たな枷枠に巻き取り、上記操作を繰り返す。
【0013】
巻取装置から取り外された枷枠上に巻き取られている多数本が並列した中空糸膜からなる円筒状の中空糸膜束を、枷枠上にてその周方向に所要の間隔をもって、枷枠軸に平行な2本の直線に沿って線状又は帯状に加熱及び加圧を行うことにより中空糸膜間を同糸膜をもって熱融着させ、その2本の熱融着部分の間を枷枠軸に平行に切断する。次いで、枷枠から取り外して簡単な構造の単層の中空糸膜束の擬似シート状物を得る。
【0014】
ここで、本発明に適用される枷枠とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に平行に並べて巻き取る巻枠をいい、例えば中央に回転軸を有する矩形状の枠体において対向する平行な枠材に中空糸膜を巻き取る形態、2以上の矩形状枠体の共通の回転軸を挟んで対向する平行な各枠材を拡開し多角形の巻取面を形成して中空糸膜を巻き取る形態が採用される。
【0015】
上記構成は、従来のごとくボビンから線状に中空糸膜を一方向に引き出しながらラッセル編み加工する方法などと比較すると、擬似シート状に加工するにあたり、紡糸機から作られる中空糸膜を一旦ボビンに巻き取り、更にボビンからラッセル編み機などの加工機にかけ直して擬似シート状に加工する必要がなくなるばかりでなく、編み操作が不要となるため、加工工程の削減ができるようになり、それに伴い加工時間を大幅に短縮することができる。しかも、加工時の製造コストを低減することができると共に、中空糸膜を用いたモジュールの品質を低下させることなく、高品質の製品の安定した製造とその生産性の向上とが実現できる。
【0016】
本発明にあって、熱融着を行う際の実質的な加熱温度は、請求項2に係る発明のように前記中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍の加熱温度を中空糸膜の素材の融点よりも高く設定する。このときの加熱温度は中空糸膜の素材の融点よりも1.0〜30℃高い温度に制御することが好ましい。1.0〜30℃に制御すると、前記熱融着部と中空糸膜との接着状態が良好となり、上述の製造方法によって、請求項3に係る発明のような、熱可塑性素材からなる中空糸膜が一平面上に均一に並べられ、その中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍において隣接する中空糸膜間が熱融着により連結された中空糸膜束の擬似シート状物が容易に得られる。
【0017】
また、既述したような作用効果を更に顕著に現出するためには、請求項4に係る発明のごとく、紡糸工程後に中空糸膜を枷枠に巻き取ることによって得られる中空糸膜束の中空糸膜間の距離aと前記中空糸膜の直径Dとを、a≦(D・π−2D)/4、(a≧0)の式を満足させることが好ましい。この関係式をもって巻き取られた枷枠の枠材付近に中空糸膜束の長さ方向に直交するようにして直線状、あるいは帯状に加熱及び加圧を行い、所定のピッチをもって隣接する中空糸膜同士を熱融着させると、モジュール加工時のハンドリング性が極めて良好となる。しかも、中空糸膜束の擬似シート状物の機械的強度の低下がない。
【0018】
前記熱融着部の幅は、請求項5に係る発明のごとく、1mm以上100mm以下であることが好適である。さらに好ましくは、5mm以上50mm以下の熱融着の幅を有することが有効である。熱融着部の幅を設定すると、熱融着による中空糸膜の変形や折損等が発生しにくくなり、熱融着部と中空糸膜とが所定のピッチをもって十分に接着固定され、中空糸膜束の擬似シート状物の形態を安定して保持することができる。
【0019】
また、中空糸膜の破断強度や耐屈曲性を向上させるためには、請求項6に係る発明のごとく、強度保持材料との複合された形態の中空糸膜とすることが好ましい。上述のごとく紡糸工程の後工程であるラッセル編み加工等によって擬似シート状に加工することを排除しているため、本発明の上記方法により製造される擬似シート状物の構成中空糸膜として、従来では曲げ剛性が高いためにラッセル編み加工が困難である強度保持材料との複合中空糸膜を用いても、極端に屈曲させることがなく、所要の強度を確保した状態で安価に且つ容易にモジュール化することができる。
【0020】
前記強度保持材料としては、請求項7に係る発明のごとく、ポリエステルマルチフィラメント単織組紐又はポリエステル繊維などを使用することができる。この複合構造として、請求項8に係る発明のように中空糸のポリエステルマルチフィラメント単織組紐の表面上に中空糸膜原液を塗布した構造のもの、請求項9に係る発明のごとくポリエステル繊維を中空糸膜の膜厚部に補強繊維として埋設させた構造のものなどを使用することができる。
【0021】
また、請求項10に係る発明のように、本発明の中空糸膜束の擬似シート状物を用いてバンドル状、らせん状、又は積層状の各種の中空糸膜モジュールを容易に安定して且つ効率的に作製することができ、良好な生産性が実現できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の代表的な実施形態である中空糸膜束擬似シート状物を製造する一例を概略的に示す説明図、図2は本発明に適用される枷枠に巻き取られた中空糸膜束を熱融着した状態の中空糸膜束擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図、図3は同枷枠から切り離された状態の中空糸膜束擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【0023】
本発明にあっては、上記特許文献1に開示された技術のように紡糸工程においてボビンに巻き取られた中空糸膜がスダレ編み加工又はラッセル編み加工のための後工程に回されたのち、スダレ編みシート又はラッセル編みシートの擬似シート状物に加工し、その擬似シート状物の端部に熱可塑性樹脂を溶融接着させることにより中空糸膜束の擬似シート状物とするのではない。本発明は、上記特許文献1に開示された技術と大きく異なり、紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜11を枷枠9に一平面上に均一に且つ平行状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠9を取り除いて単層の中空糸膜束擬似シート状物14を得るための熱融着及び切断加工を行う後工程に回す。枷枠9の屈曲部分(枠材部分)で中空糸膜束12を熱融着させ、その中空糸膜同士が熱融着した熱融着部13を有する中空糸膜束疑似シート状物14としている。
【0024】
本発明における中空糸膜11の素材は、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリスルホン樹脂などからなる従来から一般的な熱可塑性樹脂材を使用することが可能であり、目的とする中空糸膜モジュールの用途における分離物質の特性、もしくは他に要求される特性に適したものを使用することができる。
【0025】
本発明に適用される熱可塑性中空糸膜束の擬似シート状物の製造装置1は、図1に示すように、製膜口金(紡糸ノズル)2と、同製膜口金2の下方に配された凝固浴3と、同凝固浴3中にあって水平軸線回りに回転自在に支持された第1のローラー4と、同第1ローラー4の回転軸線に平行な回転軸線上にあって、上下に所定の高低差をもってジグザグ状に配された図示せぬ支持部材に回転自在に支持された第2〜第5のローラー5〜8と、全てのローラー4〜8の回転軸線に平行な回転軸線上に回転自在に支持された枷枠9を有する巻取装置10とを備えている。図示例によると、複数の並列するローラー4〜8のうち、前記第1及び第4ローラー4,7は一平面上に平行に並設されている。前記第2、第3及び第5ローラー5,6,8は、前記第1及び第3ローラー4,7よりも高位にあって一平面上に平行に並設されている。
【0026】
以上の構成は、本実施形態の中空糸膜束擬似シート状物の製造装置1の一例を示す構成であり、その構造及びその構成部材等は、図示例に限定されるものではないことは勿論である。前記ローラー4〜8は、繊維束を案内し得る案内部材など、例えば第4ローラー7の代わりにダンサーロールを使用してもよく、案内部材又はそれらを組み合わせた各種の案内部材を使用することができる。
【0027】
本発明は、特に限定されるものではないが、本実施形態にあっては、中空糸膜を簡便に巻き取るために枷枠9を使用する。本発明における枷枠9とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に平行に並べて巻き取る巻枠をいう。枷枠9として、例えば中央に回転軸を有する矩形状の枠体において対向する平行な枠材に中空糸膜を巻き取る形態、2以上の矩形状枠体の共通の回転軸を挟んで対向する平行な各枠材を拡開し多角形の巻取面を形成して中空糸膜を巻き取るなどの様々な形態を使用することができる。
【0028】
中空糸膜束擬似シート状物14を製造するには、所定の温度に保温した製膜口金2から吐出する1本以上の中空糸膜11を凝固浴3中に導いて第1ローラー4の下を潜るようにして巻き掛け、その第1ローラー4の高位にある第2及び第3ローラー5,6の上を跨いだのちに次位の第4ローラー7の下を潜るようにして巻き掛け、次位の第5ローラー8の上を跨ぐようにして枷枠9に巻き取る。この1本以上の中空糸膜11を、隣接する中空糸膜11との間に所定の間隔をもたせて枷枠9上に並列状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠9を取り除いて単層の中空糸膜束擬似シート状物14を得るための熱融着及び切断加工を行う後工程に回す。
【0029】
この操作と同時に、新たな枷枠9を巻取装置10に装着すると共に、この新たな枷枠9上に紡糸工程側に連続する次位の中空糸膜11の糸端を図示せぬ適宜の保持手段によって保持させる。中空糸膜11の糸端を保持する間に送り出される中空糸膜11は、新たな枷枠9との間に配した、例えば上述のダンサーロールにより吸収して、一時的に滞留させる。中空糸膜11の糸端の保持が終了すると、次位の中空糸膜11を新たな枷枠9に巻き取り、上記操作を繰り返す。
【0030】
一方、巻取装置10から取り外された枷枠9を洗浄及び乾燥したのち、この枷枠9上に巻き取られている多数本が並列した中空糸膜11からなる円筒状の中空糸膜束12を、枷枠9上にてその周方向に所要の間隔をもって、枷枠軸9aに平行な2本の直線に沿って直線状又は帯状に加熱及び加圧を行い、中空糸膜11間を同糸膜11をもって熱融着させて、図2に示すように直線状又は帯状の2本の熱融着部13を形成する。図3に示すように2本の前記熱融着部13を残した状態で、同熱融着部分の間を枷枠軸9aに平行に切断することによって、その中空糸膜11同士が熱融着した熱融着部13を有する単層の中空糸膜束疑似シート状物14を得る。
【0031】
なお、前記熱融着部13は、中空糸膜束疑似シート状物14の両端部ともに同一構造からなる。このため、図2及び図3に示すように、片側の中空糸膜束疑似シート状物14のみを示している。また、中空糸膜11の糸端を枷枠9上に保持するには手動によって保持させてもよいが、これを自動化することもできることは勿論である。また、モジュール加工の際には前記熱融着部13を含む中空糸膜束12の端部を切断除去してしまうため、中空糸膜11間を熱融着するときは、その中空糸膜11の中空部分が偏平状に潰され閉鎖されてもよい。図4に中空糸膜モジュールの製造方法の一例を模式的に示している。なお、同図において、符号15はモジュール管体を示し、符号16はポッティング部を示している。
【0032】
本発明では、前記熱融着部13の幅は、1mm以上100mm以下であることが望ましい。さらに好ましくは、5mm以上50mm以下の熱融着幅を有することが有効である。このように熱融着部13の幅を設定すると、熱融着による中空糸膜11の変形や折損等が発生しにくくなり、熱融着部13と中空糸膜11とが所定のピッチをもって十分に接着固定され、擬似シート状物14の形態を安定して保持することができる。
【0033】
また、中空糸膜11は、その破断強度や耐屈曲性を向上させるために強度保持材料との複合構造であってもよい。強度保持材料として、例えばポリエステルマルチフィラメント単織組紐やポリエステル繊維などを使用することができる。この複合構造としては、例えば中空糸のポリエステルマルチフィラメント単織組紐を紡糸ノズル2に供給し、その表面上に中空糸膜原液を塗布した構造のもの、紡糸ノズル2にポリエステル繊維を供給し、中空糸膜11の膜厚部に補強繊維として埋設させた構造のものなどを効果的に使用することができる。
【0034】
更に、上述のように中空糸膜11を枷枠9に巻き取るとき、互いに隣接する中空糸膜11同士の隙間幅は、図5に示すように中空糸膜11間の距離をaとし、中空糸膜の直径をDとしたとき、a≦(D・π−2D)/4、(a≧0)の関係を満足させるように設定することが好ましい。中空糸膜11が加圧され熱融着されるとき、中空糸膜11間の距離aが一定であり、中空糸膜11が偏平状に変形する場合は、中空糸膜11の断面の最大長さは(D・π)/2となり、隣り合う中空糸膜11と重なり合う長さを(D・π)/2の1/4としたとき、中空糸膜11間の距離aは(D・π−2D)/4となる。従って、0≦a≦(D・π−2D)/4の式を満足するとき、中空糸膜11間に十分な接着強度が合理的に得られる。しかも、モジュール加工時のハンドリング性が極めて良好となり、擬似シート状物14の機械的強度の低下がない。
【0035】
一方、枷枠9の形状は、中空糸膜束12が折り返されて巻かれる屈曲部(枷の横幅部分)がコテで熱融着させる際の下敷きとなる部分であることから、中空糸膜束12の巻き取り方向に対して横断する方向に向けて平行に対向して配された一対の板状の鍔部間の幅が10mm以上100mm以下であることが望ましい。枷枠9の寸法については、必要とする中空糸膜束12の擬似シート状物14の寸法に合わせたものを使用すればよいが、その材質は強度や耐熱性を有する、例えばスチール、ステンレス、アルミニウム等の金属製のものが好ましい。
【0036】
また、熱融着を行う図示せぬ加熱圧着器具は、ヒータ、温度制御エア、あるいは熱媒などの従来から一般的な手段を使用することが可能であるが、加熱圧着器具としては、例えば赤外線ヒータや温風ヒータを使用する。より好ましくは、その加熱部分の表面温度が制御可能な構造であることが好ましい。また、レーザー光照射装置を用いて熱融着部を加熱する方法であってもよい。この場合は、狭い範囲を集中して熱融着させることができるため、圧着は不要となる。これらを組み合わせて使用することにより正確な温度制御を行うことが好適である。加熱圧着器具の表面は、中空糸膜の素材が溶融状態を保つ温度、例えば同樹脂の融点以上の温度に予め加熱することにより、同樹脂を10〜30秒程度の時間で溶融状態に加熱することができる。
【0037】
この加熱圧着器具を中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13の形成部位に直交させるようにして押し付けて圧着させるには、加熱圧着器具自体が押し付ける力を有する構造のものが好ましい。加熱圧着器具として、例えば市販されているコテ型のハンドタイプホットシーラーやアイロン等が使用できる。また、加熱圧着器具は流体や電気などによる駆動によって圧着作業が自動的に行える構造のものでもよいことは勿論である。熱融着を行う際の実質的な加熱温度は1.0〜30℃に制御すると、熱融着部13と中空糸膜11との接着状態が良好となるため、中空糸膜11の素材の融点よりも1.0〜30℃高い温度が好ましい。
【0038】
以上の製造方法で得られた中空糸膜束擬似シート状物14を用い、この中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13を両端として簾巻きに巻いてバンドル状とし、これをモジュール管体15にセットしてモジュール化することができる。また、液中の気体を除去する脱気モジュールなどでは、モジュール管体15に充填する中空糸膜11の密度を可能な限り高くした方が有利であることから、中空糸膜束擬似シート状物を用いたバンドル状物をらせん状に巻いて、モジュール管体15にセットしてモジュール化することができる。
【0039】
以下に、本発明の更に具体的な実施例について比較例と共に説明する。
ここで、各実施例及び比較例において説明する中空糸膜束擬似シート状物14の機械的強度は、20mmの幅で熱融着した中空糸膜同士の熱融着部13が外部からの荷重によって破断するときの最小の荷重値であり、図6に示す一般的な測定装置によって測定した値である。同図において、符号16は上部チャックを示し、符号17は下部チャックを示している。図示例によると、中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13の一端を挟持した上部チャック16に対して、同じく反対側の熱融着部13の他端を挟持した下部チャック17を図示の矢印方向に作動させることによって中空糸膜束擬似シート状物14の機械的強度を測定している。モジュール加工時には、中空糸膜束擬似シート状物14に過度なストレスを与えないように取り扱って形態を保つ強度の目安としては、5N以上の機械的強度を有することが望ましい。
【0040】
(実施例1)
ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)11質量部、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー711)7質量部、ポリビニルピロリドン(K−90)9質量部を、N,N−ジメチルアセトアミド73質量部に80℃で加熱攪拌溶解した。この紡糸原液と補強繊維であるポリエステルマルチフィラメント(1100dtex/48fil 、引張破断強度4.7N、引張破断伸度50%)1本を、外径1.6mm、内径0.8mmからなる30℃に保温した二重環状口金から吐出した。その際に、前記補強繊維に張力を0.3Nかけた状態で、各ローラー4〜8に巻き掛けていく方向に対して水平方向90°の角度をもって供給し、製膜口金(紡糸ノズル)2の鞘部から吐出すると共に、N,N−ジメチルアセトアミド30質量部、水30質量部、グリセリン40質量部からなる内部凝固液を前記製膜口金2の芯部から吐出し、口金吐出面から40mm下方に設置した65℃のN,N−ジメチルアセトアミド30質量部、水70質量部からなる凝固浴3中に導入した。そして更に、凝固浴3の凝固浴面から700mm下に設置した第1ローラー4から各ローラー5〜8を介して枷枠9に中空糸膜同士の隙間幅を約0.1mmとして1層巻き取った。
【0041】
得られた中空糸膜の外径は1200μmであった。前記枷枠9を洗浄、乾燥する工程を経たのち、中空糸膜を巻き付ける枷枠9の屈曲部分で150℃に加熱したコテを用いて幅20mmの加熱面で10秒間圧着して熱融着させ、中空糸膜同士が接着した中空糸膜束擬似シート状物14を得た。得られた中空糸膜束擬似シート状物14は、幅260mm、長さ960mm、有効膜長900mmの1層のシート状であり、隣接する中空糸膜同士の隙間幅が約0.05mm、中空糸膜本数が約220本である中空糸膜束擬似シート状物14を2枚得ることができた。その熱融着部13は、隣接する中空糸膜同士が完全に融着しており、機械的強度は6.3Nであってモジュール化に必要な機械的強度を保っていた。
【0042】
(実施例2)
ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)11質量部、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー711)7質量部、ポリビニルピロリドン(ISP社製K−90)9質量部、N,N−ジメチルアセトアミド73質量部に溶解して紡糸原液(原液濃度18%、原液温度60℃)を調整した。この紡糸原液を外径2.2mm、内径1.9mmからなる30℃に保温した二重環状ノズルの鞘部から吐出すると同時にポリエステルマルチフィラメント単織組紐(マルチフィラメント;トータルデシテックス280/24フィラメント、2本合糸×8キャリア+マルチフィラメント;トータルデシテックス280/24フィラメント、2本合糸×8キャリア、計16打ち)に塗布し、空気中に1.2秒間滞在させた。そののち、N,N−ジメチルアセトアミド10質量部、水90質量部からなる凝固浴3中に導入して得られた組紐補強多孔膜を枷枠9に巻き取った以外は、上記実施例1と同じ条件、方法によって中空糸膜束擬似シート状物14を得た。
【0043】
中空糸膜11の外径は1700μmであった。得られた中空糸膜束擬似シート状物14は、幅260mm、長さ960mm、有効膜長900mmの1層のシート状であって、隣接する中空糸膜同士の隙間幅が約0.1mmであり、中空糸膜本数が約120本の中空糸膜束擬似シート状物14を2枚得ることができた。その熱融着部13は、隣接する中空糸膜同士が完全に融着しており、機械的強度は5.8Nであり、モジュール化に必要な機械的強度を保っていた。
【0044】
(比較例1)
枷枠に巻き取る中空糸膜同士の隙間幅を0.5mmとした以外は、上記実施例1と同様の条件、方法によって中空糸膜束擬似シート状物を作製した。中空糸膜同士の熱融着部分には、まばらに隙間が発生し、モジュール化に必要とする機械的強度を十分に確保することができなかった。
【0045】
以上の説明からも明らかなように、本発明によって、従来の方法である枷枠から線状に中空糸膜を引き出しながらラッセル編み加工する方法と比較すると、擬似シート状に加工するにあたり、紡糸機から作られる中空糸膜を一旦ボビンに巻き取り、更にボビンからラッセル編み機などの加工機にかけ直して擬似シート状に加工する必要がなくなるばかりでなく、その加工プロセスを省略することができると共に、加工速度を速くすることができるようになり、それに伴い加工コストを低減することが可能となる。また、中空糸膜を用いたモジュールの品質を低下することなく、、高品質の製品の安定した製造とその生産性の向上とが実現できる。
【0046】
また、上記ラッセル編み加工等によって擬似シート状に加工することを排除しているため、本発明の上記方法により製造される擬似シート状物の構成中空糸膜として、従来では曲げ剛性が高いためにラッセル編み加工が困難である強度保持材料との複合中空糸膜を用いても、極端に屈曲させることがなく、所要の強度を確保した状態で安価に且つ容易にモジュール化することができる。なお、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、それらの実施形態や実施例から当業者が容易に変更可能な技術的な範囲をも当然に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態である中空糸膜束擬似シート状物を製造する一例を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明に適用される枷枠に巻き取られた中空糸膜束を熱融着した状態の擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【図3】同枷枠から切り離された状態の擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【図4】中空糸膜モジュールの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】中空糸膜間の距離aと中空糸膜の直径Dとの寸法関係を説明するための説明図である。
【図6】中空糸膜同士の熱融着部が破断されるときの荷重値を測定する一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 製膜口金(紡糸ノズル)
3 凝固浴
4〜8 ローラー
9 枷枠
9a 枷枠軸
10 巻き取り装置
11 中空糸膜
12 中空糸膜束
13 熱融着部
14 中空糸膜束疑似シート状物
15 モジュール管体
16 ポッティング部
17 上部チャック
18 下部チャック
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体、液体等の流体の分離装置に用いられる分離膜モジュールの中空糸膜束擬似シート状物の製造方法と中空糸膜束擬似シート状物及び中空糸膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、中空糸膜を用いたモジュールを作製するにあたっては、その前駆体として多数本の中空糸膜を一平面上に均一に並べて、ある一定の幅を有する擬似シート状物を作製し、この擬似シート状物を用いてその両端部を熱可塑性樹脂をもって溶融接着してバンドル状、らせん状又は積層状などの各種の形態に中空糸膜モジュールを製造している。一般に、多数本の中空糸膜を擬似シート状の形態に加工する方法としてラッセル編み加工などが多用されている。
【0003】
この種の擬似シート状物の製造方法の一例として、例えば本出願人が先に提案した特開平10−57782号公報には、紡糸工程で得られた中空繊維をスダレ編み加工によって擬似シート状に加工し、そのスダレ編みシートの長さ方向の両端部に熱可塑性樹脂をもって溶融接着させることによって擬似シート状物とする方法が開示されている。
【0004】
前記スダレ編みシートは、多数本の中空繊維が横糸として所要の間隔をもって平行に配され、その横糸の配列間隔を縦糸を構成するフィラメントによって保持したものである。擬似シート状物としてスダレ編みシートを使用する場合は、連続していない複数本の中空繊維がシートの横糸を形成しているため、その縦糸と平行な両端部を熱可塑性樹脂にて溶融接着させることにより、擬似シート状物の両端部に薄膜状の樹脂接合部を設けている。一方、擬似シート状物として、中空繊維が縦糸と平行な両端部で複数回折り返され、略平行に配されて横糸が構成され、この横糸が縦糸を構成するフィラメントによって相互に保持されたラッセル編みシートを使用する場合には、隣接する横糸同士がつながっているため、一方の端部のみに前記樹脂接合部を設けている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−57782号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示された擬似シート状物の製造方法は、紡糸工程で得られた中空糸膜を擬似シート状に加工し、それをモジュールへと加工する際に取り扱いやすい擬似シート状物を得るための優れた製法である。しかしながら、中空糸膜をスダレ編み加工あるいはラッセル編み加工により擬似シート状に加工するにあたっては、紡糸工程において一度ボビン等に巻き取られた中空糸膜又は中空繊維は、紡糸工程後のスダレ編み工程あるいはラッセル編み工程において、スダレ編み機やラッセル編み機などの加工機にかけ直す必要がある。このため、加工工程が増え、加工時間が遅くなり、加工費等が嵩む。しかも、製造コストが高くなるばかりでなく、生産効率を低下させ、生産性を損なう原因にもつながる。
【0007】
また、機械的強度を高めるために強度保持材料と複合された形態の中空糸膜を使用すると、必然的に曲げ剛性が高くなる。このため、前記ラッセル編み工程において、その中空糸膜を折り返しながら編み込んでいくラッセル編み機にかけることは到底困難となり、多数本の中空繊維からなる中空糸膜束の擬似シート状物を簡単に且つ廉価に製造することができないという問題があった。このように、従来の擬似シート状物の製造方法は、安価な製造コストで製品を精度高く多量生産し、あるいは高速生産するには限界があった。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、製造コストの低減と品質に優れた製品の製造とその生産性の向上とが実現される、気体、液体等の流体の分離装置に用いられる分離膜モジュールの中空糸膜束擬似シート状物の製造方法を提供することを第1の目的とし、簡単な構造であり、中空糸膜束を効率よく且つ円滑に取り扱うことを可能にした中空糸膜束擬似シート状物を提供することを第2の目的とし、更には高品質の各種の形態に作製できる中空糸膜モジュールを提供することを第3の目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
本件請求項1に係る発明は、熱可塑性素材により主に構成される中空糸膜を用いてモジュールの前駆体である擬似シート状物を製造する方法であって、紡糸工程で得られた1本以上の前記中空糸膜を、隣接する中空糸膜との間に所定の間隔をもたせて枷枠上に並列状態で螺旋状に巻き取ること、巻き取られた前記中空糸膜からなる円筒状の中空糸膜束を、枷枠上にて所要の間隔をもつ枷枠軸に平行な2本の直線に沿って熱融着させること、及び前記中空糸膜束の直線状に融着された2本の熱融着部分の間を切断することを含んでなることを特徴とする中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法にある。
【0010】
本発明における中空糸膜束の擬似シート状物とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に一平面状に均一に且つ平行に並列して擬似的なシート状の形態に加工したものをいう。
【0011】
本発明に係る中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法は、上記特許文献1に開示された技術と大きく異なり、紡糸工程で得られた中空糸膜をボビンに巻き取ったのち、このボビンから線状に中空糸膜を一方向に引き出してスダレ編み加工したり、あるいはラッセル編み加工する工程を排除している。すなわち、本発明にあっては、紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜を、隣接する中空糸膜との間に所定の間隔をもって枷枠上に並列状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠を取り除いて後工程に回す。
【0012】
この操作と同時に、新たな枷枠を巻取装置に装着すると共に、この新たな枷枠上に紡糸工程側に連続する次位の中空糸膜の糸端を適宜の保持手段によって保持させる。糸端を保持する間に送り出される中空糸膜は、新たな枷枠との間に配した、例えばダンサーロールにより吸収して、一時的に滞留させる。糸端の保持が終了すると、次位の中空糸膜を新たな枷枠に巻き取り、上記操作を繰り返す。
【0013】
巻取装置から取り外された枷枠上に巻き取られている多数本が並列した中空糸膜からなる円筒状の中空糸膜束を、枷枠上にてその周方向に所要の間隔をもって、枷枠軸に平行な2本の直線に沿って線状又は帯状に加熱及び加圧を行うことにより中空糸膜間を同糸膜をもって熱融着させ、その2本の熱融着部分の間を枷枠軸に平行に切断する。次いで、枷枠から取り外して簡単な構造の単層の中空糸膜束の擬似シート状物を得る。
【0014】
ここで、本発明に適用される枷枠とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に平行に並べて巻き取る巻枠をいい、例えば中央に回転軸を有する矩形状の枠体において対向する平行な枠材に中空糸膜を巻き取る形態、2以上の矩形状枠体の共通の回転軸を挟んで対向する平行な各枠材を拡開し多角形の巻取面を形成して中空糸膜を巻き取る形態が採用される。
【0015】
上記構成は、従来のごとくボビンから線状に中空糸膜を一方向に引き出しながらラッセル編み加工する方法などと比較すると、擬似シート状に加工するにあたり、紡糸機から作られる中空糸膜を一旦ボビンに巻き取り、更にボビンからラッセル編み機などの加工機にかけ直して擬似シート状に加工する必要がなくなるばかりでなく、編み操作が不要となるため、加工工程の削減ができるようになり、それに伴い加工時間を大幅に短縮することができる。しかも、加工時の製造コストを低減することができると共に、中空糸膜を用いたモジュールの品質を低下させることなく、高品質の製品の安定した製造とその生産性の向上とが実現できる。
【0016】
本発明にあって、熱融着を行う際の実質的な加熱温度は、請求項2に係る発明のように前記中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍の加熱温度を中空糸膜の素材の融点よりも高く設定する。このときの加熱温度は中空糸膜の素材の融点よりも1.0〜30℃高い温度に制御することが好ましい。1.0〜30℃に制御すると、前記熱融着部と中空糸膜との接着状態が良好となり、上述の製造方法によって、請求項3に係る発明のような、熱可塑性素材からなる中空糸膜が一平面上に均一に並べられ、その中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍において隣接する中空糸膜間が熱融着により連結された中空糸膜束の擬似シート状物が容易に得られる。
【0017】
また、既述したような作用効果を更に顕著に現出するためには、請求項4に係る発明のごとく、紡糸工程後に中空糸膜を枷枠に巻き取ることによって得られる中空糸膜束の中空糸膜間の距離aと前記中空糸膜の直径Dとを、a≦(D・π−2D)/4、(a≧0)の式を満足させることが好ましい。この関係式をもって巻き取られた枷枠の枠材付近に中空糸膜束の長さ方向に直交するようにして直線状、あるいは帯状に加熱及び加圧を行い、所定のピッチをもって隣接する中空糸膜同士を熱融着させると、モジュール加工時のハンドリング性が極めて良好となる。しかも、中空糸膜束の擬似シート状物の機械的強度の低下がない。
【0018】
前記熱融着部の幅は、請求項5に係る発明のごとく、1mm以上100mm以下であることが好適である。さらに好ましくは、5mm以上50mm以下の熱融着の幅を有することが有効である。熱融着部の幅を設定すると、熱融着による中空糸膜の変形や折損等が発生しにくくなり、熱融着部と中空糸膜とが所定のピッチをもって十分に接着固定され、中空糸膜束の擬似シート状物の形態を安定して保持することができる。
【0019】
また、中空糸膜の破断強度や耐屈曲性を向上させるためには、請求項6に係る発明のごとく、強度保持材料との複合された形態の中空糸膜とすることが好ましい。上述のごとく紡糸工程の後工程であるラッセル編み加工等によって擬似シート状に加工することを排除しているため、本発明の上記方法により製造される擬似シート状物の構成中空糸膜として、従来では曲げ剛性が高いためにラッセル編み加工が困難である強度保持材料との複合中空糸膜を用いても、極端に屈曲させることがなく、所要の強度を確保した状態で安価に且つ容易にモジュール化することができる。
【0020】
前記強度保持材料としては、請求項7に係る発明のごとく、ポリエステルマルチフィラメント単織組紐又はポリエステル繊維などを使用することができる。この複合構造として、請求項8に係る発明のように中空糸のポリエステルマルチフィラメント単織組紐の表面上に中空糸膜原液を塗布した構造のもの、請求項9に係る発明のごとくポリエステル繊維を中空糸膜の膜厚部に補強繊維として埋設させた構造のものなどを使用することができる。
【0021】
また、請求項10に係る発明のように、本発明の中空糸膜束の擬似シート状物を用いてバンドル状、らせん状、又は積層状の各種の中空糸膜モジュールを容易に安定して且つ効率的に作製することができ、良好な生産性が実現できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の代表的な実施形態である中空糸膜束擬似シート状物を製造する一例を概略的に示す説明図、図2は本発明に適用される枷枠に巻き取られた中空糸膜束を熱融着した状態の中空糸膜束擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図、図3は同枷枠から切り離された状態の中空糸膜束擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【0023】
本発明にあっては、上記特許文献1に開示された技術のように紡糸工程においてボビンに巻き取られた中空糸膜がスダレ編み加工又はラッセル編み加工のための後工程に回されたのち、スダレ編みシート又はラッセル編みシートの擬似シート状物に加工し、その擬似シート状物の端部に熱可塑性樹脂を溶融接着させることにより中空糸膜束の擬似シート状物とするのではない。本発明は、上記特許文献1に開示された技術と大きく異なり、紡糸工程で得られた1本以上の中空糸膜11を枷枠9に一平面上に均一に且つ平行状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠9を取り除いて単層の中空糸膜束擬似シート状物14を得るための熱融着及び切断加工を行う後工程に回す。枷枠9の屈曲部分(枠材部分)で中空糸膜束12を熱融着させ、その中空糸膜同士が熱融着した熱融着部13を有する中空糸膜束疑似シート状物14としている。
【0024】
本発明における中空糸膜11の素材は、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリスルホン樹脂などからなる従来から一般的な熱可塑性樹脂材を使用することが可能であり、目的とする中空糸膜モジュールの用途における分離物質の特性、もしくは他に要求される特性に適したものを使用することができる。
【0025】
本発明に適用される熱可塑性中空糸膜束の擬似シート状物の製造装置1は、図1に示すように、製膜口金(紡糸ノズル)2と、同製膜口金2の下方に配された凝固浴3と、同凝固浴3中にあって水平軸線回りに回転自在に支持された第1のローラー4と、同第1ローラー4の回転軸線に平行な回転軸線上にあって、上下に所定の高低差をもってジグザグ状に配された図示せぬ支持部材に回転自在に支持された第2〜第5のローラー5〜8と、全てのローラー4〜8の回転軸線に平行な回転軸線上に回転自在に支持された枷枠9を有する巻取装置10とを備えている。図示例によると、複数の並列するローラー4〜8のうち、前記第1及び第4ローラー4,7は一平面上に平行に並設されている。前記第2、第3及び第5ローラー5,6,8は、前記第1及び第3ローラー4,7よりも高位にあって一平面上に平行に並設されている。
【0026】
以上の構成は、本実施形態の中空糸膜束擬似シート状物の製造装置1の一例を示す構成であり、その構造及びその構成部材等は、図示例に限定されるものではないことは勿論である。前記ローラー4〜8は、繊維束を案内し得る案内部材など、例えば第4ローラー7の代わりにダンサーロールを使用してもよく、案内部材又はそれらを組み合わせた各種の案内部材を使用することができる。
【0027】
本発明は、特に限定されるものではないが、本実施形態にあっては、中空糸膜を簡便に巻き取るために枷枠9を使用する。本発明における枷枠9とは、1本以上の中空糸膜を同じ長さ方向に平行に並べて巻き取る巻枠をいう。枷枠9として、例えば中央に回転軸を有する矩形状の枠体において対向する平行な枠材に中空糸膜を巻き取る形態、2以上の矩形状枠体の共通の回転軸を挟んで対向する平行な各枠材を拡開し多角形の巻取面を形成して中空糸膜を巻き取るなどの様々な形態を使用することができる。
【0028】
中空糸膜束擬似シート状物14を製造するには、所定の温度に保温した製膜口金2から吐出する1本以上の中空糸膜11を凝固浴3中に導いて第1ローラー4の下を潜るようにして巻き掛け、その第1ローラー4の高位にある第2及び第3ローラー5,6の上を跨いだのちに次位の第4ローラー7の下を潜るようにして巻き掛け、次位の第5ローラー8の上を跨ぐようにして枷枠9に巻き取る。この1本以上の中空糸膜11を、隣接する中空糸膜11との間に所定の間隔をもたせて枷枠9上に並列状態で螺旋状に一層分巻き取るたびに、その枷枠9を取り除いて単層の中空糸膜束擬似シート状物14を得るための熱融着及び切断加工を行う後工程に回す。
【0029】
この操作と同時に、新たな枷枠9を巻取装置10に装着すると共に、この新たな枷枠9上に紡糸工程側に連続する次位の中空糸膜11の糸端を図示せぬ適宜の保持手段によって保持させる。中空糸膜11の糸端を保持する間に送り出される中空糸膜11は、新たな枷枠9との間に配した、例えば上述のダンサーロールにより吸収して、一時的に滞留させる。中空糸膜11の糸端の保持が終了すると、次位の中空糸膜11を新たな枷枠9に巻き取り、上記操作を繰り返す。
【0030】
一方、巻取装置10から取り外された枷枠9を洗浄及び乾燥したのち、この枷枠9上に巻き取られている多数本が並列した中空糸膜11からなる円筒状の中空糸膜束12を、枷枠9上にてその周方向に所要の間隔をもって、枷枠軸9aに平行な2本の直線に沿って直線状又は帯状に加熱及び加圧を行い、中空糸膜11間を同糸膜11をもって熱融着させて、図2に示すように直線状又は帯状の2本の熱融着部13を形成する。図3に示すように2本の前記熱融着部13を残した状態で、同熱融着部分の間を枷枠軸9aに平行に切断することによって、その中空糸膜11同士が熱融着した熱融着部13を有する単層の中空糸膜束疑似シート状物14を得る。
【0031】
なお、前記熱融着部13は、中空糸膜束疑似シート状物14の両端部ともに同一構造からなる。このため、図2及び図3に示すように、片側の中空糸膜束疑似シート状物14のみを示している。また、中空糸膜11の糸端を枷枠9上に保持するには手動によって保持させてもよいが、これを自動化することもできることは勿論である。また、モジュール加工の際には前記熱融着部13を含む中空糸膜束12の端部を切断除去してしまうため、中空糸膜11間を熱融着するときは、その中空糸膜11の中空部分が偏平状に潰され閉鎖されてもよい。図4に中空糸膜モジュールの製造方法の一例を模式的に示している。なお、同図において、符号15はモジュール管体を示し、符号16はポッティング部を示している。
【0032】
本発明では、前記熱融着部13の幅は、1mm以上100mm以下であることが望ましい。さらに好ましくは、5mm以上50mm以下の熱融着幅を有することが有効である。このように熱融着部13の幅を設定すると、熱融着による中空糸膜11の変形や折損等が発生しにくくなり、熱融着部13と中空糸膜11とが所定のピッチをもって十分に接着固定され、擬似シート状物14の形態を安定して保持することができる。
【0033】
また、中空糸膜11は、その破断強度や耐屈曲性を向上させるために強度保持材料との複合構造であってもよい。強度保持材料として、例えばポリエステルマルチフィラメント単織組紐やポリエステル繊維などを使用することができる。この複合構造としては、例えば中空糸のポリエステルマルチフィラメント単織組紐を紡糸ノズル2に供給し、その表面上に中空糸膜原液を塗布した構造のもの、紡糸ノズル2にポリエステル繊維を供給し、中空糸膜11の膜厚部に補強繊維として埋設させた構造のものなどを効果的に使用することができる。
【0034】
更に、上述のように中空糸膜11を枷枠9に巻き取るとき、互いに隣接する中空糸膜11同士の隙間幅は、図5に示すように中空糸膜11間の距離をaとし、中空糸膜の直径をDとしたとき、a≦(D・π−2D)/4、(a≧0)の関係を満足させるように設定することが好ましい。中空糸膜11が加圧され熱融着されるとき、中空糸膜11間の距離aが一定であり、中空糸膜11が偏平状に変形する場合は、中空糸膜11の断面の最大長さは(D・π)/2となり、隣り合う中空糸膜11と重なり合う長さを(D・π)/2の1/4としたとき、中空糸膜11間の距離aは(D・π−2D)/4となる。従って、0≦a≦(D・π−2D)/4の式を満足するとき、中空糸膜11間に十分な接着強度が合理的に得られる。しかも、モジュール加工時のハンドリング性が極めて良好となり、擬似シート状物14の機械的強度の低下がない。
【0035】
一方、枷枠9の形状は、中空糸膜束12が折り返されて巻かれる屈曲部(枷の横幅部分)がコテで熱融着させる際の下敷きとなる部分であることから、中空糸膜束12の巻き取り方向に対して横断する方向に向けて平行に対向して配された一対の板状の鍔部間の幅が10mm以上100mm以下であることが望ましい。枷枠9の寸法については、必要とする中空糸膜束12の擬似シート状物14の寸法に合わせたものを使用すればよいが、その材質は強度や耐熱性を有する、例えばスチール、ステンレス、アルミニウム等の金属製のものが好ましい。
【0036】
また、熱融着を行う図示せぬ加熱圧着器具は、ヒータ、温度制御エア、あるいは熱媒などの従来から一般的な手段を使用することが可能であるが、加熱圧着器具としては、例えば赤外線ヒータや温風ヒータを使用する。より好ましくは、その加熱部分の表面温度が制御可能な構造であることが好ましい。また、レーザー光照射装置を用いて熱融着部を加熱する方法であってもよい。この場合は、狭い範囲を集中して熱融着させることができるため、圧着は不要となる。これらを組み合わせて使用することにより正確な温度制御を行うことが好適である。加熱圧着器具の表面は、中空糸膜の素材が溶融状態を保つ温度、例えば同樹脂の融点以上の温度に予め加熱することにより、同樹脂を10〜30秒程度の時間で溶融状態に加熱することができる。
【0037】
この加熱圧着器具を中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13の形成部位に直交させるようにして押し付けて圧着させるには、加熱圧着器具自体が押し付ける力を有する構造のものが好ましい。加熱圧着器具として、例えば市販されているコテ型のハンドタイプホットシーラーやアイロン等が使用できる。また、加熱圧着器具は流体や電気などによる駆動によって圧着作業が自動的に行える構造のものでもよいことは勿論である。熱融着を行う際の実質的な加熱温度は1.0〜30℃に制御すると、熱融着部13と中空糸膜11との接着状態が良好となるため、中空糸膜11の素材の融点よりも1.0〜30℃高い温度が好ましい。
【0038】
以上の製造方法で得られた中空糸膜束擬似シート状物14を用い、この中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13を両端として簾巻きに巻いてバンドル状とし、これをモジュール管体15にセットしてモジュール化することができる。また、液中の気体を除去する脱気モジュールなどでは、モジュール管体15に充填する中空糸膜11の密度を可能な限り高くした方が有利であることから、中空糸膜束擬似シート状物を用いたバンドル状物をらせん状に巻いて、モジュール管体15にセットしてモジュール化することができる。
【0039】
以下に、本発明の更に具体的な実施例について比較例と共に説明する。
ここで、各実施例及び比較例において説明する中空糸膜束擬似シート状物14の機械的強度は、20mmの幅で熱融着した中空糸膜同士の熱融着部13が外部からの荷重によって破断するときの最小の荷重値であり、図6に示す一般的な測定装置によって測定した値である。同図において、符号16は上部チャックを示し、符号17は下部チャックを示している。図示例によると、中空糸膜束擬似シート状物14の熱融着部13の一端を挟持した上部チャック16に対して、同じく反対側の熱融着部13の他端を挟持した下部チャック17を図示の矢印方向に作動させることによって中空糸膜束擬似シート状物14の機械的強度を測定している。モジュール加工時には、中空糸膜束擬似シート状物14に過度なストレスを与えないように取り扱って形態を保つ強度の目安としては、5N以上の機械的強度を有することが望ましい。
【0040】
(実施例1)
ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)11質量部、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー711)7質量部、ポリビニルピロリドン(K−90)9質量部を、N,N−ジメチルアセトアミド73質量部に80℃で加熱攪拌溶解した。この紡糸原液と補強繊維であるポリエステルマルチフィラメント(1100dtex/48fil 、引張破断強度4.7N、引張破断伸度50%)1本を、外径1.6mm、内径0.8mmからなる30℃に保温した二重環状口金から吐出した。その際に、前記補強繊維に張力を0.3Nかけた状態で、各ローラー4〜8に巻き掛けていく方向に対して水平方向90°の角度をもって供給し、製膜口金(紡糸ノズル)2の鞘部から吐出すると共に、N,N−ジメチルアセトアミド30質量部、水30質量部、グリセリン40質量部からなる内部凝固液を前記製膜口金2の芯部から吐出し、口金吐出面から40mm下方に設置した65℃のN,N−ジメチルアセトアミド30質量部、水70質量部からなる凝固浴3中に導入した。そして更に、凝固浴3の凝固浴面から700mm下に設置した第1ローラー4から各ローラー5〜8を介して枷枠9に中空糸膜同士の隙間幅を約0.1mmとして1層巻き取った。
【0041】
得られた中空糸膜の外径は1200μmであった。前記枷枠9を洗浄、乾燥する工程を経たのち、中空糸膜を巻き付ける枷枠9の屈曲部分で150℃に加熱したコテを用いて幅20mmの加熱面で10秒間圧着して熱融着させ、中空糸膜同士が接着した中空糸膜束擬似シート状物14を得た。得られた中空糸膜束擬似シート状物14は、幅260mm、長さ960mm、有効膜長900mmの1層のシート状であり、隣接する中空糸膜同士の隙間幅が約0.05mm、中空糸膜本数が約220本である中空糸膜束擬似シート状物14を2枚得ることができた。その熱融着部13は、隣接する中空糸膜同士が完全に融着しており、機械的強度は6.3Nであってモジュール化に必要な機械的強度を保っていた。
【0042】
(実施例2)
ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)11質量部、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー711)7質量部、ポリビニルピロリドン(ISP社製K−90)9質量部、N,N−ジメチルアセトアミド73質量部に溶解して紡糸原液(原液濃度18%、原液温度60℃)を調整した。この紡糸原液を外径2.2mm、内径1.9mmからなる30℃に保温した二重環状ノズルの鞘部から吐出すると同時にポリエステルマルチフィラメント単織組紐(マルチフィラメント;トータルデシテックス280/24フィラメント、2本合糸×8キャリア+マルチフィラメント;トータルデシテックス280/24フィラメント、2本合糸×8キャリア、計16打ち)に塗布し、空気中に1.2秒間滞在させた。そののち、N,N−ジメチルアセトアミド10質量部、水90質量部からなる凝固浴3中に導入して得られた組紐補強多孔膜を枷枠9に巻き取った以外は、上記実施例1と同じ条件、方法によって中空糸膜束擬似シート状物14を得た。
【0043】
中空糸膜11の外径は1700μmであった。得られた中空糸膜束擬似シート状物14は、幅260mm、長さ960mm、有効膜長900mmの1層のシート状であって、隣接する中空糸膜同士の隙間幅が約0.1mmであり、中空糸膜本数が約120本の中空糸膜束擬似シート状物14を2枚得ることができた。その熱融着部13は、隣接する中空糸膜同士が完全に融着しており、機械的強度は5.8Nであり、モジュール化に必要な機械的強度を保っていた。
【0044】
(比較例1)
枷枠に巻き取る中空糸膜同士の隙間幅を0.5mmとした以外は、上記実施例1と同様の条件、方法によって中空糸膜束擬似シート状物を作製した。中空糸膜同士の熱融着部分には、まばらに隙間が発生し、モジュール化に必要とする機械的強度を十分に確保することができなかった。
【0045】
以上の説明からも明らかなように、本発明によって、従来の方法である枷枠から線状に中空糸膜を引き出しながらラッセル編み加工する方法と比較すると、擬似シート状に加工するにあたり、紡糸機から作られる中空糸膜を一旦ボビンに巻き取り、更にボビンからラッセル編み機などの加工機にかけ直して擬似シート状に加工する必要がなくなるばかりでなく、その加工プロセスを省略することができると共に、加工速度を速くすることができるようになり、それに伴い加工コストを低減することが可能となる。また、中空糸膜を用いたモジュールの品質を低下することなく、、高品質の製品の安定した製造とその生産性の向上とが実現できる。
【0046】
また、上記ラッセル編み加工等によって擬似シート状に加工することを排除しているため、本発明の上記方法により製造される擬似シート状物の構成中空糸膜として、従来では曲げ剛性が高いためにラッセル編み加工が困難である強度保持材料との複合中空糸膜を用いても、極端に屈曲させることがなく、所要の強度を確保した状態で安価に且つ容易にモジュール化することができる。なお、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、それらの実施形態や実施例から当業者が容易に変更可能な技術的な範囲をも当然に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態である中空糸膜束擬似シート状物を製造する一例を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明に適用される枷枠に巻き取られた中空糸膜束を熱融着した状態の擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【図3】同枷枠から切り離された状態の擬似シート状物の一例を模式的に示す要部拡大平面図である。
【図4】中空糸膜モジュールの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】中空糸膜間の距離aと中空糸膜の直径Dとの寸法関係を説明するための説明図である。
【図6】中空糸膜同士の熱融着部が破断されるときの荷重値を測定する一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 製膜口金(紡糸ノズル)
3 凝固浴
4〜8 ローラー
9 枷枠
9a 枷枠軸
10 巻き取り装置
11 中空糸膜
12 中空糸膜束
13 熱融着部
14 中空糸膜束疑似シート状物
15 モジュール管体
16 ポッティング部
17 上部チャック
18 下部チャック
Claims (10)
- 熱可塑性素材により主に構成される中空糸膜を用いてモジュールの前駆体である擬似シート状物を製造する方法であって、
紡糸工程で得られた1本以上の前記中空糸膜を、隣接する中空糸膜との間に所定の間隔をもたせて枷枠上に並列状態で螺旋状に巻き取ること、
巻き取られた前記中空糸膜からなる円筒状の中空糸膜束を、枷枠上にて所要の間隔をもつ枷枠軸に平行な2本の直線に沿って熱融着させること、及び
前記中空糸膜束の直線状に融着された2本の熱融着部分の間を切断すること、を含んでなることを特徴とする中空糸膜束の擬似シート状物の製造方法。 - 前記中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍の加熱温度を中空糸膜の素材の融点よりも1.0〜30℃高い温度に制御することを含んでなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 熱可塑性素材からなる中空糸膜が一平面上に均一に並べられ、その中空糸膜束の長さ方向の両端部近傍において隣接する中空糸膜間が熱融着により連結されてなることを特徴とする中空糸膜束の擬似シート状物。
- 前記中空糸膜束の中空糸膜間の距離aと前記中空糸膜の直径Dが、a≦(D・π−2D)/4、(a≧0)の関係を有してなることを特徴とする請求項3記載の擬似シート状物。
- 前記熱融着部の幅が1mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項3又は4記載の擬似シート状物。
- 前記中空糸膜が強度保持材料との複合構造であることを特徴とする請求項4又は5記載の擬似シート状物。
- 前記強度保持材料がポリエステルマルチフィラメント単織組紐又はポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項6記載の擬似シート状物。
- 前記複合構造が中空糸であるポリエステルマルチフィラメント単織組紐の表面上に中空糸膜原液を塗布されてなることを特徴とする請求項6記載の擬似シート状物。
- 前記複合構造が前記中空糸膜の膜厚部に前記強度保持材料を埋設してなることを特徴とする請求項6記載の擬似シート状物。
- 上記請求項3〜6のいずれかに記載の擬似シート状物を用いて作製したことを特徴とするバンドル状、らせん状、又は積層状の各種中空糸膜モジュール。
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