JP2004215331A - ブラシレスdcモータの制御方法およびその装置 - Google Patents

ブラシレスdcモータの制御方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ロータの位置検出を得るために、誘起電圧と比較する基準電圧をリニア的に可変し、通電相タイミングを大きく変えて弱め界磁制御の効果を十分に発揮可能とする。
【解決手段】ブラシレスDCモータ6を制御するインバータ回路3の出力が飽和状態である場合、ステータ巻線の誘起電圧(仮想中性点電圧)と比較する基準電圧をリニア的に増減する。この場合、制御回路15にて所定デューテ比のPWM信号がローパスフィルタ回路12に出力され、ローパスフィルタ回路12からは所定差分電圧量が出力される。この所定差分電圧により、分圧回路10の出力(基準電圧)が基準電圧生成部13でリニア的に増減され、この2つの新たな基準電圧を用いて、仮想中性点回路11からのモータ仮想中性点電圧(モータ誘起電圧波形)と比較され、この比較結果が位置信号とされる。その誘起電圧と基準電圧との交点による通電位相を大きく早めて、弱め界磁制御を可能としている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機や冷蔵庫のコンプレッサなどに用いられる三相モータ(ブラシレスDCモータ;IPMモータ)をインバータ制御する制御技術に係り、さらに詳しく言えば、単相交流電源によって三相モータを可変速で駆動するブラシレスDCモータの制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスDCモータの制御装置においては、直流電圧を電力変換手段(例えばインバータ手段)で任意の交流電圧に変換してモータに印加する。そのため制御装置は、例えば図7に示すように、単相交流電源から図示しない所定のコンバータを介して得た直流電源1による直流電圧を平滑コンデンサ2で平滑化してインバータ回路3に供給する。
【0003】
制御回路(マイクロコンピュータ)4は、ベースアンプ(ドライバ)回路5を介してインバータ回路3を構成する上下アームの複数スイッチング素子のスイチング信号(PWM信号)を出力する。これにより、直流電圧が三相の交流電圧に変換され、負荷としての三相四極のブラシレスDCモータ6に印加される。
【0004】
このとき、ロータの位置を検出してステータの巻線電流を切り替え、例えば120度通電方式などによって通電を切り替えるが、位置検出回路7にて非通電相に発生する誘起電圧波形と基準電圧と比較し、その交点(ゼロクロス点)を検出してロータの位置検出の信号を得ている。制御回路4は、その位置検出信号に基づいてインバータ回路3の各スイッチング素子を駆動し、これによりステータの巻線電流が切り替えられる。
【0005】
また、モータ制御としてPWM制御方式を採用している場合には、制御回路4は、モータ回転数を目標回転数とするためのPWM波形を所定デューティ比として生成し、このPWM波形を通電切替信号に重畳した駆動信号を出力し、インバータ回路3の各スイッチング素子を所定にオン,オフして矩形波電圧を発生させてブラシレスDCモータ6を回転制御する。
【0006】
さらに、位置検出回路7からの位置検出信号により、ブラシレスDCモータ6の現回転数を検出して目標回転数と比較し、その比較結果を生成PWM波形にフィードバックしてインバータ回路3の矩形波電圧を制御し、ブラシレスDCモータ6の回転数を目標回転数に制御する。
【0007】
上記制御方式にあっては、例えば相通電を行わない区間が60度であるとき、この区間の中心に誘起電圧のゼロクロス点が来るように構成した場合、通電位相タイミングが前後に30度の範囲でしか制御することができない。また、弱め界磁制御を適用しようとすると、その弱め界磁による進み位相角が小さく、つまり通電相タイミングをそれほど早くできず、最大回転数アップ(高回転数領域の拡大)が難しい。
【0008】
一方、モータの各相分圧電圧と比較用電圧(基準電圧)とを比較してゼロクロス点を得て、正確なロータ位置を可能とする方法が下記の特許文献1により提案されている。
【0009】
この特許文献1においては、各相ごとのゼロクロス点を検出するための比較用電圧にそれぞれ他相の分圧電圧を加味して基準電圧を移相している。このようにして基準電圧が移相されることにより、誘起電圧の波形にゼロクロス点付近で平らな平坦部分がある場合でも、その平坦部分を避けて正確なゼロクロス点が得られ、正確なロータ位置検出を可能としている。
【0010】
なお、特許文献1によれば、通常の比較用電圧のほかに、高い比較用電圧と低い比較用電圧とを交互に切り替えためのスイッチング素子(図14)およびその駆動制御を行うための構成を設けなければならないなどの不都合が解消され、また、ゼロクロス点が速まるように(つまり、弱め界磁による進み位相角が大きくなるように)、基準電圧(比較用電圧)を切り替えれば、弱め界磁制御の効果が発揮される。
【0011】
【特許文献1】
特開2001―231285号公報(図1および図14)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に弱め界磁制御を適用して最大回転数をアップしようとする場合、複数の比較用電圧を発生する回路をより多く設ける必要があるばかりでなく、発生する比較用電圧の数を多くしたとしても、その比較用電圧をリニア的に可変することが難しく、そのため弱め界磁制御を適切に行うことが困難である。
【0013】
また、それら比較用電圧が階段状であることから、比較用電圧の切り替え時における回転がスムーズに行われず、弱め界磁制御の効果が十分に得られないという問題がある。
【0014】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ブラシレスDCモータの非通電相の誘起電圧波形と比較する基準電圧をリニア的に可変させてゼロクロス点を得ることにより、ブラシレスDCモータの通電相タイミングを大きく変えることができ、リラクタンストルクおよび弱め界磁制御の効果を十分に得られるようにすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載されているように、交流電源から変換された直流電源をインバータ手段を介してブラシレスDCモータに通電するとともに、上記ブラシレスDCモータの各巻線に発生する誘起電圧と所定の基準電圧とを比較してゼロクロス点を得、上記ゼロクロス点によりロータ位置を検出し、該位置検出に基づいて上記インバータ手段を制御して上記ブラシレスDCモータの通電を切り替えて回転制御を行うブラシレスDCモータの制御方法において、上記基準電圧を増減する所定差分電圧量をリニア的に発生する手段を備え、現回転数(実働回転数)が目標回転数より小さいときにはその差分電圧量を大きくし、上記現回転数が目標回転数より大きいときにはその差分電圧量を小さくするようにしており、上記誘起電圧の波形が上昇時である場合には、上記基準電圧からその差分電圧量を減算した新たな基準電圧を用い、上記誘起電圧の波形が下降時である場合には、上記基準電圧にその差分電圧量を加算した新たな基準電圧を用いてロータ位置を検出し、該位置検出により通電位相タイミングを得るようにしたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、請求項2に記載されているように、交流電源から変換された直流電源をインバータ回路を介してブラシレスDCモータに通電するとともに、上記ブラシレスDCモータの各巻線に発生する誘起電圧に対応する仮想中性点電圧と所定の基準電圧とを比較してゼロクロス点を得、上記ゼロクロス点によりロータ位置を検出し、該位置検出に基づいて上記インバータ回路を制御して上記ブラシレスDCモータの通電を切り替えて回転制御を行うブラシレスDCモータの制御装置において、上記基準電圧を得るために上記直流電源の電圧を抵抗で分圧する分圧回路と、上記仮想中性点電圧を得るために上記ブラシレスDCモータのステータ巻線の結線と並列に接続した抵抗からなる仮想中性点発生回路と、所定デューティ比のPWM信号を入力して上記基準電圧の所定差分電圧量を得るためのローパスフィルタ回路と、上記所定差分電圧量を上記基準電圧に加減算して新たな基準電圧を得るための加算回路および減算回路を含む基準電圧生成部と、上記仮想中性点電圧と新たな基準電圧とをそれぞれ比較するとともに、1つの比較結果を選択し、これを位置信号として出力する信号選択回路と、上記インバータ回路を駆動するための信号を出力する一方、上記所定デューティ比のPWM信号を上記ローパスフィルタ回路に出力し、上記信号選択回路に選択信号を出力するとともに、上記信号選択回路からの出力位置信号によるロータ位置検出により、上記ブラシレスDCモータの通電を行う弱め界磁制御を可能とする制御回路とを備え、上記制御回路からのPWM信号のデューティ比を可変するようにしたことを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明において、上記制御回路として上記ローパスフィルタ回路の機能に代わるD/A変換機能のポートを備えた制御回路を用い、この制御回路によって上記PWM信号に相当するアナログ電圧を出力するようにすれば、上記ローパスフィルタ回路を省くことができ、回路構成の簡素化が図られる。
【0018】
また、上記インバータ回路から上記ブラシレスDCモータに供給する出力が飽和状態になったときに、上記差分電圧量を加減算した新たな基準電圧を用いて得られた位置信号により、上記ブラシレスDCモータの通電を行い、弱め界磁制御を行うようにすることが好ましく、これによれば、弱め界磁制御によりブラシレスDCモータの最大回転数がアップが図られる。
【0019】
また、上記仮想中性点電圧の波形が上昇時(位置検出が立ち上がり時)である場合には、上記基準電圧発生回路の加算回路で得られている基準電圧を用いて位置信号を得、上記仮想中性点電圧の波形が下降時(位置検出が立ち上がり時)である場合には、上記基準電圧発生回路の減算回路で得られている基準電圧を用いて位置信号を得るようにするとよい。これにより、誘起電圧波形が上昇する場合と、その誘起電圧波形が下降する場合のいずれでも、仮想中性点電圧と基準電圧との交点であるゼロクロス点が確実に早められ、弱め界磁が適切に行われる。
【0020】
また、上記ブラシレスDCモータの回転数を上昇させて目標回転数とする場合には、上記差分電圧量をリニア的に大きくして、通電位相タイミングを順次早くし、しかる後、上記ブラシレスDCモータの回転数を下降させて目標回転数とする場合には、上記差分電圧量をリニア的に小さくして通電位相タイミングを順次遅くするとよい。これにより、弱め界磁制御においてブラシレスDCモータの回転数上昇あるいは回転数下降が適切に行われる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1ないし図6を参照して詳しく説明する。なお、図中、図7と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0022】
本発明によるブラシレスDCモータの制御装置は、ロータ位置検出用の誘起電圧の波形と比較する基準電圧のレベルをリニア的に変化させるために、その基準電圧(一定の電圧)にPWM出力(所定差分電圧量)を加算あるいは減算し、これら演算結果により得た電圧(つまり、基準電圧に対して上下方向にリニア的に変化する新たな基準電圧)と誘起電圧波形と比較し、この比較結果によりロータの位置検出(ゼロクロス点)の位置信号を得、通電位相タイミングを大きい方向に早めるようにしている。
【0023】
そのために、この制御装置には、図1に示すように、上記基準電圧を得るために直流電源1の電圧を抵抗Ra,Rbで分圧する分圧回路10と、モータの仮想中性点電圧を得るためにステータ巻線のスター結線と並列に接続した抵抗Rc,Rd,Reおよび出力調整用の抵抗Rfからなる仮想中性点発生回路11と、所定デューティ比のPWM信号により一定の電圧(通常の基準電圧)の所定差分電圧量を得るためのローパスフィルタ(2次型の)回路12と、上記所定差分電圧量を通常の基準電圧に加減算して新たな基準電圧を得るための加算回路13aおよび減算回路13bを含む基準電圧生成部13と、モータの仮想中性点電圧(非通電相に発生する誘起電圧に対応する電圧)と新たな基準電圧とをそれぞれ比較するとともに、1つの比較結果を選択し、これを位置信号として出力する信号選択回路14と、上記所定差分電圧量に相当する所定デューティ比のPWM信号をローパスフィルタ12に出力し、選択信号を信号選択回路12に出力する制御回路(マイクロコンピュータ)15とが備えられている。
【0024】
ローパスフィルタ(2次型の)回路12は、図2に例示するように、オペアンプ12aの他に、抵抗R1,R2やコンデンサC1,C2を用いた一般的な回路構成であり、入力PWMのデューティ比に応じたアナログ電圧を出力する。また、基準電圧生成部13は、図3に例示するように、オペアンプ13aa,13baおよび抵抗R3,…,R10を用いた加算回路13aおよび減算回路13bから構成されている。
【0025】
加算回路13aは、分圧回路12の出力一定電圧(通常時の基準電圧)が抵抗R3を介してオペアンプ13aaの非反転入力端子に入力されるとともに、ローパスフィルタ回路12のPWM出力(差分電圧量に相当するデューティ比)が抵抗R4を介してその非反転入力端子に入力される非反転増幅回路(増幅度1)によって構成されており、その一定電圧に差分電圧量を加算してこれを新たな基準電圧として出力する。
【0026】
減算回路13bは、分圧回路10の出力一定電圧(通常の基準電圧)が抵抗R7を介してオペアンプ11baの非反転入力端子に入力されるとともに、ローパスフィルタ回路12の差分電圧量が抵抗R8を介してそのオペアンプ11baの反転入力端子に入力される差動増幅回路(増幅度1)によって構成されており、その一定電圧から差分電圧量を減じてこれを新たな基準電圧として出力する。
【0027】
信号選択回路14は、仮想中性点発生回路11からの仮想中性点電圧と加算回路13aaからの基準電圧とを比較するコンパレータ14aと、その仮想中性点電圧と減算回路13bからの基準電圧とを比較する14bと、制御回路15からの選択信号によりそれら比較結果の何れか一方を選択して出力するための論理回路14cとからなる。
【0028】
論理回路14cは、制御回路15からの選択信号を反転するインバータ14caと、コンパレータ14aの出力とインバータ14cの出力(反転選択信号)との論理をとるNANDゲート14cbと、コンパレータ14bの出力とその選択信号との論理をとるNANDゲート14ccと、それらNANDゲート14cb,14ccの出力の論理をとるNANDゲート14cdとからなる。
【0029】
制御回路15は、図7に示す制御回路4の機能も備え、例えばPWM制御によってブラシレスDCモータ6を回転制御する一方、そのPWM制御のデューティ比が100%になると、所定差分電圧量に相当するPWM信号をローパスフィルタ回路12に出力するとともに、選択信号を信号選択回路14に出力する。なお、所定差分電圧量に相当するPWM信号とブラシレスDCモータ6のPWM制御とは同じデューテ比でないものとする。
【0030】
次に、上記構成の制御装置の動作を図5のフローチャートおよび図6の波形図を参照して説明する。なお、制御回路12はブラシレスDCモータ6を起動し、しかる後PWM制御によってそのブラシレスDCモータ6を回転制御しているものとする。
【0031】
まず、現回転数(実働回転数)fと目標回転数Fとを比較する(ステップST1)。なお、実働回転数fは従来同様にロータの位置検出をもとにして算出するが、このロータの位置検出は、仮想中性点発生回路11の出力(誘起電圧波形)と分圧回路10の出力(基準電圧)とを比較し、この比較結果をもってロータ位置検出を行えばよい。
【0032】
実働回転数fが目標回転数Fより低い場合、ステップST1からステップST2に進み、現インバータ電圧が最大値より低いか否かを判断する。つまり、PWM制御におけるPWMデューティ比が100%になっているか否かを判断する。PWMデューティ比が100%に達していなければ(すなわち、インバータ回路3の出力が飽和状態になっていなければ)、PWMデューティ比を高くしてインバータ電圧を上げ(ステップST3)、ブラシレスDCモータ6の回転数を上げる。
【0033】
そして、PWMデューティ比が100%に達しても、実働回転数fが目標回転数Fより低い状態にある場合には、ステップST2からステップST4に進み、基準値補正分(所定差分電圧量)に相当するPWM信号(所定デューティ比)をローパスフィルタ回路12に出力するとともに、誘起電圧波形の立ち上がり(位置検出の立ち上がり)時に“H”レベル、誘起電圧波形の立ち下がり(位置検出の立ち下がり)時に“L”レベルの選択信号を出力する。
【0034】
PWM信号のデューティ比は、実働回転数fが目標回転数Fに達するまで、順次高くし、弱め界磁制御による回転数をアップ可能とする。図6に示すように、基準電圧生成部13の加算回路13aaからは通常の基準電圧より高い値の基準電圧が出力され、しかも実働回転数fが目標回転数Fに達するまで、その基準電圧がリニア的に高くされる。また、減算回路13bからは通常の基準電圧より低い値の基準電圧が出力され、しかも実働回転数fが目標回転数Fに達するまで、その基準電圧がリニア的に低くされる。
【0035】
信号選択回路14において、基準電圧生成部13からの2つの基準電圧と仮想中性点電圧とがそれぞれ比較され、これら比較結果のゼロクロス点の位置信号が得られる。図6の波線矢印および実線矢印の先の交点に示すように、誘起電圧の立ち上がり波形時(位置検出の立ち上がり時)には、加算回路13aからの基準電圧を用いて得たゼロクス点の位置信号が出力され、つまり電圧位相が通常の基準電圧を用いた場合の位相よりも進んだ位相の位置信号が出力される。
【0036】
また、誘起電圧の立ち下がり波形時(位置検出の立ち上がり時)には、減算回路13bからの基準電圧を用いて得られたゼロクロス点の検出信号が出力され、つまりその立ち上がりと同じく電圧位相が通常の基準電圧を用いた場合の位相よりも進んだ位相の位置信号が出力される。
【0037】
そして、実働回転数fが目標回転数Fに達するまで、基準電圧を補正する差分電圧量がリニア的に大きくなり、つまりより高い値になった準電圧とより低い値になった基準電圧が得られるた、電圧位相の進みがリニア的に大きくなり、弱め界磁制御による実働回転数fが目標回転数Fまでアップされる。
【0038】
上記実働回転数fが目標回転数Fに達すれば、PWM信号のデューティ比アップを停止し、差分電圧量の上昇を停止する。しかる後、目標回転数Fが変わり、実回転数fよりも低くなったときにはステップST1からステップST5に進み、その差分電圧量(基準値補正分)が0よりも高いか否か、すなわちローパスフィルタ回路12に出力するPWMデューティ比が0%より大きいか否かを判断する。
【0039】
上記PWMデューティ比が0%より大きいときには、差分電圧量をリニア的に小さくするようにPWMデューティ比を小さくする(ステップST6)。また、PWMデューティ比の信号をローパスフィルタ回路12に出力するとともに、選択信号を上述した回転数の上昇時と同様に信号選択回路14に出力する。
【0040】
すると、弱め界磁による進み位相角が小さくなって回転数が下がることになるため、PWMデューティ比が0%になっても、実働回転数fが目標回転数Fよりも高ければ、ステップST1,ST5を経てステップST7に進み、インバータ電圧を下げる。このことは、上述した回転数を上昇する場合と逆に、インバータ回路3を駆動するためのPWM制御のPWMデューティ比を100%から下げることを意味し、これにより回転数を目標回転数Fまで低下させることができる。
【0041】
このように、ブラシレスDCモータ6をPWM制御しているとき、PWMデューティ比が100%に達しても(すなわち、インバータ回路3の出力が飽和状態になっても)、弱め界磁のための進み位相角が大きくなり、モータ最大回転数がアップし、ひいては弱め界磁制御の効果が十分に発揮され、IPMモータであればリラクタンストルクの効果が期待できる。
【0042】
また、ハードウェア的には、ローパスフィルタ回路12,基準電圧生成部13および信号選択回路14を追加すればよく、しかもオペアンプ、抵抗、コンデンサや論理ゲートなどの安価な電子部品で済ませられ、つまり低コストで済む。
【0043】
さらに、制御回路15のマイクロコンピュータとして、D/A変換ポートを有しているマイクロコンピュータを用い、上記PWM信号に相当するアナログ電圧を出力するようにすれば、ローパスフィルタ回路12が省け、回路構成の簡素化が図れる。
【0044】
さらにまた、上記ブラシレスDCモータ6は空気調和機あるいは冷蔵庫のコンプレッサ,ファンモータに適用するとよい。これにより、コンプレッサ、ファンモータの低コスト、最大回転数アップ、ひいては空気調和機や冷蔵庫の定格効率のアップが実現できる。
【0045】
なお、ブラシレスDCモータ6の回転数を上昇させ、あるいは下降させる場合に、制御回路15からローパスフィルタ回路12に出力するPWMデューティ比の変化率(差分電圧量の変化率(上昇変化率あるいは下降変化率))を実働回転数fと目標回転数Fとの差が大きいほど大きくし、その差が小さいほど小さくすることが好ましく、これにより、ブラシレスDCモータ6の回転数を速やかに目標回転数とすることができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の制御方法によれば、ブラシレスDCモータの各巻線に発生する誘起電圧と基準電圧との比較(ゼロクロス点)によりロータ位置を検出し、この位置検出をもとにしてブラシレスDCモータを制御するにあたって、上記ゼロクスロ点を早めるために、上記基準電圧を増減する所定差分電圧量をリニア的に発生する手段を備え、現回転数(実働回転数)が目標回転数より小さいときには、その差分電圧量を大きくし、現回転数が目標回転数より大きいときには、その差分電圧量を小さくするようにしており、上記誘起電圧の波形が上昇時である場合には、上記基準電圧からその差分電圧量を減算した新たな基準電圧を用い、誘起電圧の波形が下降時である場合には、上記基準電圧にその差分電圧量を加算した基準電圧を用いてロータ位置を検出し、この位置検出により通電位相タイミングを得ていることから、位置検出により弱め界磁制御による進み位相角が大きい方向に変えられ、つまりブラシレスDCモータ(IPMモータ)の通電相タイミングを大きい方向に早めることができ、リラクタンストルクおよび弱め界磁制御の効果を十分に得ることができる。
【0047】
また、本発明の制御装置によれば、一定電圧(基準電圧)を得るための分圧回路と、モータの仮想中性点電圧を得るための仮想中性点発生回路と、所定デューティ比のPWM信号を入力して上記基準電圧の所定差分電圧量を得るためのローパスフィルタ回路と、その所定差分電圧量を加味して新たな基準電圧を得るための加算回路および減算回路を含む基準電圧生成部と、仮想中性点電圧(誘起電圧に対応する電圧)と、それら新たな基準電圧とにより位置信号を出力する信号選択回路と、ブラシレスDCモータを制御する一方、少なくとも上記所定差分電圧量に相当する所定デューティ比のPWM信号をローパスフィルタ回路に出力し、位置信号によりロータ位置を検出して弱め界磁制御を可能とする制御回路とを備え、そのPWM信号のデューティ比を可変していることから、上述したブラシレスDCモータの制御方法と同じ効果を奏し、ハードウエア的には分圧回路および仮想中性点発生回路については従前の回路を用いればよく、ローパスフィルタ回路,加算回路および減算回路の基準電圧発生回路および信号選択回路を新たなに付加するだけで済み、当該制御装置を低コストで実現することができる。
【0048】
さらに、上記位置信号を得るための付加回路がオペアンプ,抵抗,コンデンサおよびロジック回路で構成できるため、当該付加回路を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるブラシレスDCモータの制御装置を示す概略的なブロック線図。
【図2】上記制御装置におけるローパスフィルタ回路を示す概略的な回路図。
【図3】上記制御装置における基準電圧生成部の加算回路および減算回路を示す概略的な回路図。
【図4】上記制御装置における信号選択回路を示す概略的な回路図。
【図5】上記制御装置の動作を説明するための概略的なフローチャート。
【図6】上記制御装置の動作を説明するための概略的な波形図。
【図7】従来のブラシレスDCモータの制御装置を示す概略的なブロック線図。
【符号の説明】
1 直流電源
3 インバータ回路
4,15 制御回路(マイクロコンピュータ)
6 ブラシレスDCモータ
10 分圧回路
11 仮想中性点発生回路
12 ローパスフィルタ回路
12a,13aa,13ba オペアンプ
13 基準電圧生成部
13a 加算回路
13b 減算回路
14 信号選択回路
14a,14b コンパレータ
14c 論理回路
14ca インバータ
14cb,14cc,14cd NANDゲート
C1,C2 コンデンサ
Ra〜Rf,R1〜R10 抵抗

Claims (6)

  1. 交流電源から変換された直流電源をインバータ手段を介してブラシレスDCモータに通電するとともに、上記ブラシレスDCモータの各巻線に発生する誘起電圧と所定の基準電圧とを比較してゼロクロス点を得、上記ゼロクロス点によりロータ位置を検出し、該位置検出に基づいて上記インバータ手段を制御して上記ブラシレスDCモータの通電を切り替えて回転制御を行うブラシレスDCモータの制御方法において、
    上記基準電圧を増減する所定差分電圧量をリニア的に発生する手段を備え、現回転数(実働回転数)が目標回転数より小さいときにはその差分電圧量を大きくし、上記現回転数が目標回転数より大きいときにはその差分電圧量を小さくするようにしており、上記誘起電圧の波形が上昇時である場合には、上記基準電圧からその差分電圧量を減算した新たな基準電圧を用い、上記誘起電圧の波形が下降時である場合には、上記基準電圧にその差分電圧量を加算した新たな基準電圧を用いてロータ位置を検出し、該位置検出により通電位相タイミングを得るようにしたことを特徴とするブラシレスDCモータの制御方法。
  2. 交流電源から変換された直流電源をインバータ回路を介してブラシレスDCモータに通電するとともに、上記ブラシレスDCモータの各巻線に発生する誘起電圧に対応する仮想中性点電圧と所定の基準電圧とを比較してゼロクロス点を得、上記ゼロクロス点によりロータ位置を検出し、該位置検出に基づいて上記インバータ回路を制御して上記ブラシレスDCモータの通電を切り替えて回転制御を行うブラシレスDCモータの制御装置において、
    上記基準電圧を得るために上記直流電源の電圧を抵抗で分圧する分圧回路と、
    上記仮想中性点電圧を得るために上記ブラシレスDCモータのステータ巻線の結線と並列に接続した抵抗からなる仮想中性点発生回路と、
    所定デューティ比のPWM信号を入力して上記基準電圧の所定差分電圧量を得るためのローパスフィルタ回路と、
    上記所定差分電圧量を上記基準電圧に加減算して新たな基準電圧を得るための加算回路および減算回路を含む基準電圧生成部と、
    上記仮想中性点電圧と新たな基準電圧とをそれぞれ比較するとともに、1つの比較結果を選択し、これを位置信号として出力する信号選択回路と、
    上記インバータ回路を駆動するための信号を出力する一方、上記所定デューティ比のPWM信号を上記ローパスフィルタ回路に出力し、上記信号選択回路に選択信号を出力するとともに、上記信号選択回路からの出力位置信号によるロータ位置検出により、上記ブラシレスDCモータの通電を行う弱め界磁制御を可能とする制御回路とを備え、上記制御回路からのPWM信号のデューティ比を可変するようにしたことを特徴とするブラシレスDCモータの制御装置。
  3. 上記制御回路として、上記ローパスフィルタ回路の機能に代わるD/A変換機能のポートを備えた制御回路を用い、該制御回路によって上記PWM信号に相当するアナログ電圧を出力するようにし、上記ローパスフィルタ回路を省いてなる請求項2に記載のブラシレスDCモータの制御装置。
  4. 上記インバータ回路から上記ブラシレスDCモータに供給される出力が飽和状態になったときに、上記差分電圧量を加減算した新たな基準電圧を用いて得られた位置信号により、上記ブラシレスDCモータの通電を行い、弱め界磁制御を行うようにした請求項2または3に記載のブラシレスDCモータの制御装置。
  5. 上記仮想中性点電圧の波形が上昇時(位置検出が立ち上がり時)である場合には、上記基準電圧発生回路の加算回路で得られている基準電圧を用いて位置信号を得、上記仮想中性点電圧の波形が下降時(位置検出が立ち上がり時)である場合には、上記基準電圧発生回路の減算回路で得られている基準電圧を用いて位置信号を得るようにした請求項2,3または4に記載のブラシレスDCモータの制御装置。
  6. 上記ブラシレスDCモータの回転数を上昇させて目標回転数とする場合には、上記差分電圧量をリニア的に大きくして通電位相タイミングを順次早くし、しかる後、上記ブラシレスDCモータの回転数を下降させて目標回転数とする場合には、上記差分電圧量をリニア的に小さくして通電位相タイミングを順次遅くするようにした請求項2,3,4または5に記載のブラシレスDCモータの制御装置。
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