JP2004214282A - 圧電素子 - Google Patents

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JP2004214282A JP2002379592A JP2002379592A JP2004214282A JP 2004214282 A JP2004214282 A JP 2004214282A JP 2002379592 A JP2002379592 A JP 2002379592A JP 2002379592 A JP2002379592 A JP 2002379592A JP 2004214282 A JP2004214282 A JP 2004214282A
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Takatsugi Wada
隆亜 和田
Tamayoshi Kurashima
玲伊 倉島
Masatake Akaike
正剛 赤池
Takehiko Kawasaki
岳彦 川崎
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Abstract

【課題】非加熱成膜・アニールによる圧電性膜でも高配向性を実現し、かつ製造過程での圧電性膜へのダメージを軽減した、高信頼性・高品質な圧電素子を提供する。
【解決手段】Ti、Zr、Zn、Nb、およびMgのうち少なくともいずれか二つの元素、ならびにPbを主成分として含む圧電性膜14を有する圧電素子であって、上記圧電性膜14とその主成分が同一で、かつ圧電性膜14より腐蝕に強いシーズ層13が圧電性膜14と積層された構成である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエーター、センサー、および記録装置の記録ヘッド等に用いられる圧電素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、強誘電体の圧電性、焦電性、および分極反転等の物性を利用した圧電素子、センサー、および不揮発メモリー等のデバイスの研究が盛んである。なかでも圧電素子は、インクジェット方式の記録装置でインクを吐出させる技術に用いられ、高速高密度で高精細高画質の記録を可能とし、記録画像のカラー化や記録装置のコンパクト化にも適している。そのため、圧電素子は、記録装置となるプリンターはもとより、複写機、ファクシミリ、および電卓等にも適用され、近年急速な発展を成し遂げた。
【0003】
一方、圧電素子に対して、将来における更なる高品位・高精細な記録技術への要望が高まってきている。その実現のための一つの方法として、圧電性を有する膜(以下、圧電性膜と称する)を利用した圧電素子が挙げられ、次世代高品位・高精細記録技術への応用が期待されている。
【0004】
圧電素子の変位にとって重要な圧電性膜の作製方法について、種々の検討がなされている。その一つとして、結晶配向の基準となる薄膜を形成し、その薄膜上に結晶成長を行って膜を形成することで、膜全体の結晶性を向上させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、膜厚方向に組成制御することで、内部電荷分布に対向する自発分極が発生することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−290983号公報
【特許文献2】
特開平8−186182号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
圧電性膜は一般に複合酸化物であるため、その特性を最大限に引き出すためには組成の合わせ込みが重要である。組成を合わせ込むためには、温度による原子の再蒸発や基板付着への影響が少ないように、高温を避けた、室温から200℃程度での非加熱成膜を行い、成膜後にアニールする方法が望ましい。
【0007】
また、比較的厚さを要する圧電素子用の膜を形成する場合には、加熱して結晶化させながら成膜する方法よりも、非加熱で成膜を行う方が成膜速度が速いため、量産化を考えると有利である。
【0008】
しかし、非加熱成膜した後にアニールする方法では、成膜時に膜がアモルファスになり、アニール時に結晶核が膜中のいたるところに発生してしまうため、無配向になり、結晶性の高い圧電性膜を得るのは困難である。
【0009】
また、圧電素子を作製するためには、基板上に電極を形成し、その電極上に圧電性膜を成膜するのが一般的であるが、基板を除去する際に強酸・強アルカリの溶液を用いるため、これらの溶液による圧電性膜へのダメージも問題となる。
【0010】
本発明は上記したような従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、非加熱成膜・アニールによる圧電性膜でも高配向性を実現し、かつ製造過程での圧電性膜へのダメージを軽減した、高信頼性・高品質な圧電素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の圧電素子は、Ti、Zr、Zn、Nb、およびMgのうち少なくともいずれか二つの元素、ならびにPbを主成分として含む圧電性膜を有する圧電素子であって、
前記圧電性膜と前記主成分が同一で、かつ該圧電性膜より腐蝕に強いシーズ層が前記圧電性膜と積層された構成である。
【0012】
上記のように構成される本発明では、シーズ層は圧電性膜と主成分が同じであるため、圧電性膜と格子定数のマッチングが取れ、腐蝕に強いシーズ層は配向性が高く、シーズ層が圧電性膜と積層されることで、圧電性膜の結晶配向性がシーズ層に倣って高くなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電素子は、圧電性膜と主成分が同じで、かつ腐蝕に強い層を圧電性膜の結晶配向のためのシーズ層とすることを特徴とする。
【0014】
(第1実施例)
本実施例の圧電性膜について説明する。
【0015】
図1は本実施例の圧電性膜の断面構造を示す模式図である。
【0016】
図1は、基板11上に上部電極12および圧電性膜14が形成され、上部電極12と圧電性膜14の間に圧電性膜14の結晶化の際に結晶配向の基準となるシーズ層13が形成された構成を示す。シーズ層13は、圧電性膜14と主成分が同じで、かつ腐蝕に強い膜である。
【0017】
次に、上記圧電性膜14を用いた圧電素子の構成について説明する。
【0018】
図2は本実施例の圧電素子の一構成例を示す断面模式図である。
【0019】
図2に示すように、本実施例の圧電素子は、下部電極15、圧電性膜14、シーズ層13、および上部電極12が順に形成された構成である。図1に示した圧電性膜14上に下部電極15が形成された後、基板11を溶解等で除去し、続いて、図2に示す素子分離部26を除去することで、複数の圧電素子が作製される。
【0020】
次に、本実施例の圧電素子の製造方法について説明する。
【0021】
基板11となるMgO単結晶基板(以下、MgO基板と称する)上に、密着層となるTi、およびPtをRFスパッタリングにて順に成膜することで、Pt/Ti/MgO基板の積層構造を形成する。なお、PtおよびTiとの積層膜であるPt/Tiは上部電極12を構成する。
【0022】
続いて、Pt膜上に、RFスパッタリングにおいて、室温、表示Arガス圧0.3Paの条件で、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ない、PZT(PbZrxTi1-x3)と主成分が同じシーズ層13を0.1μm形成した。
【0023】
図3はArガス圧と膜組成比の関係を示すグラフである。図3に示すように、形成される膜は、適正なArガス圧ではPbの割合が(Zr+Ti)とほぼ等しい、理想的な組成比になるが、Arガス圧を下げることによりPbの割合が減少する。
【0024】
図4は各成膜条件における膜の組成比および熱リン酸溶解性を示す表である。
図4に示すように、室温、表示Arガス圧0.3Paの条件でシーズ層13を成膜すると、(Zr+Ti)の原子数1.0に対して、Pbの原子数が0.8であり、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ない。また、シーズ層13は熱リン酸に対して溶け難い膜になっている。
【0025】
上述のようにして、シーズ層13を形成した後、スパッタリング装置の成膜室から基板を取り出し、酸素雰囲気、750℃、30minのアニールを行った。
【0026】
ここで、PZT結晶配向のArガス圧依存性について説明する。
【0027】
図5は、Pt(111)のX線ピーク強度に対する、PZT各配向面のX線ピーク強度比を示すグラフである。なお、X線回折パターンの測定に用いたシーズ層は、Arガス圧の条件を0.5〜2.0Paの範囲で変化させ、条件毎に成膜し、その後、酸素雰囲気、750℃、30minのアニールを行ったものである。
【0028】
図5に示すように、成膜時のArガス圧が低く、Pbが(Zr+Ti)より少ない場合、アニール後のPZT(100)およびPZT(200)のX線ピーク強度が非常に強くなる。また、PZT(210)およびPZT(211)のX線ピーク強度は弱くなる。そのため、結晶の優先配向性が大きく上昇していることがわかる。なお、図5に示さないが、PZT(001)およびPZT(002)のX線ピーク強度も強く、PZT(100)(001)およびPZT(200)(002)に優先配向している。
【0029】
シーズ層13のアニールの後、シーズ層13上に、室温、表示Arガス圧3.0Paの条件で、圧電性膜14として、理想的な組成比のPZT膜を3μm形成した。その後、酸素雰囲気、昇降温速度1℃/min、処理温度700℃、5hrのアニールを行い、PZT(001)およびPZT(002)に強く配向したPZT膜を形成した。
【0030】
続いて、PZT膜上に下部電極15をRFスパッタリングにより形成し、厚さ30μmの耐熱性および変形性の優れたガラスを下部電極15にエポキシ系樹脂で接着した。続いて、接着したガラスをラッピング研磨にて5μmに研磨し、薄片化して振動板17を形成し、ユニモルフ構造の圧電素子を作製した。
【0031】
次に、上記圧電素子を用いた液滴吐出装置の一例であるインク吐出用ヘッド(以下、インクジェットヘッドと称する)の構成について説明する。
【0032】
図6はインクジェットヘッドの上部外観を示す模式図である。
【0033】
図6に示すように、インクジェットヘッドは、面方位(100)のシリコン基板(以下、Si基板と称する)18の表面に形成されたインク供給室20、連絡ノズル21、圧力室22および吐出ノズル23と、圧力室22の上に形成された圧電素子24とを有する構成である。インク供給室20、連絡ノズル21、圧力室22および吐出ノズル23は振動板17で覆われている。インク供給室20は、下部電極15に形成された貫通孔19に接続され、貫通孔19を介して図に示さないインクタンクからインクが供給される。圧力室22は、深さ約20μm、上部幅約30μm、長さ約3000μmであり、図の上下方向に1mmピッチで設けられている。
【0034】
上記構成により、インクタンク(不図示)から貫通孔19を介してインク供給室20に供給されたインクは、連絡ノズル21を経由して圧力室22に貯められる。
【0035】
図7は圧電素子部におけるインクジェットヘッドの断面構造を示す模式図である。
【0036】
図7に示すように、圧力室22となる溝が三角形の断面形状でSi基板18の表面に形成されている。圧電素子24の電極間に電圧を印加すると、圧電性膜14が変形して、振動板17を圧力室22の方向に押し、圧力室22に貯められたインクを吐出ノズル23から吐出させる。
【0037】
なお、アクチュエーターが、圧電素子24と、圧力室22とで構成される。このアクチュエーターは、圧電素子24の振動板17が変形することで、圧力室22の体積が変化する。
【0038】
次に、上記構成のインクジェットヘッドの製造方法について説明する。
【0039】
厚さ400μmのSi基板18上に異方性エッチング技術を用いて、インク流路となる連絡ノズル21および吐出ノズル23、ならびにインク供給室20および圧力室22となる溝を形成した。溝が形成されたSi基板18面に上記圧電素子24の振動板17の面を合わせて、Si基板18に圧電素子24をエポキシ系接着剤で接着した。
【0040】
続いて、熱リン酸(H3PO4)で基板11となるMgO基板を完全に溶解した。ここで、図4に示すように、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ない場合には熱リン酸にもほとんど溶解しないため、シーズ層13はストップエッチ層として機能した。
【0041】
その後、ホトリソグラフィー工程でSi基板18に形成された圧力室22を覆うパターンに合わせたレジストパターンを上部電極12となるPt/Ti上に形成し、ドライエッチングにてPt/Tiの溝間部16を除去した。レジストパターンを除去した後、形成されたPt/Tiのパターンに沿って、フッ硝酸によりPZTをエッチングした。このようにして、図7に示した断面構造のインクジェットヘッドを作製した。
【0042】
本実施例では、上述のようにして、圧電性膜14と同じ主成分で、その組成を変化させて理想的な組成からずらすことで、酸・アルカリに溶け難く、高配向性な層を、圧電性膜14の成膜前に形成する。この層を格子定数のマッチングの取れたシーズ層として利用することで、全体的に配向性が高く、理想的な組成の圧電性膜14を形成できる。
【0043】
次に、作製したインクジェットヘッドの電極間に一般的な矩形波を印加したときの振動板17の変位を測定したので、その結果について説明する。
【0044】
図8は圧電素子の電極間に印加した矩形波の波形を示す図である。
【0045】
図8に示すように、矩形波は、電圧Vp−p=30V、周波数1KHz、パルス幅10μsecである。図8に示す矩形波を圧電素子24の電極間に印加し、レーザードップラー変位計により圧力室22の中央部付近の変位を測定した。測定の結果、変位は約0.15μmであった。この変位量はインクジェット用の圧電素子として十分な値である。
【0046】
また、圧力室22にIPA(イソプロピルアルコール)を充填して、圧電素子24を動作させることで、IPAの液滴が吐出することを確認した。
【0047】
(第2実施例)
本実施例では、シーズ層および圧電性膜を連続して形成した後、アニールを行ったことを特徴とする。
【0048】
本実施例における圧電素子の断面構造は、図2と同様なため、圧電素子の構成についての説明を省略する。
【0049】
次に、本実施例における圧電素子の製造方法について説明する。なお、第1実施例と同様の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0050】
まず、Pt(111)/Ti/MgO基板からなる積層構造の上に、第1実施例と同様に、室温、表示Arガス圧0.3Paの条件で、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ないシーズ層13を0.1μm形成する。続いて、プラズマ放電を安定させたまま、成膜条件のうち表示Arガス圧を3.0Paにして、圧電性膜14として、Pbの割合が(Zr+Ti)とほぼ等しいPZT膜を3μm形成した。
【0051】
その後、酸素雰囲気、昇降温速度1℃/min、処理温度700℃、5hrのアニール処理を行い、PZT(001)およびPZT(002)に強く配向したPZT膜を形成した。アニール処理の後、第1実施例と同様に、PZT膜上に下部電極15および振動板17を形成し、圧電素子を作製した。
【0052】
次に、上記圧電素子を用いたインクジェットヘッドを作製したので説明する。
なお、本実施例におけるインクジェットヘッドの構成および製造方法は、第1実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0053】
厚さ400μmのSi基板18上に、第1実施例と同様にして、連絡ノズル21、吐出ノズル23、インク供給室20、および圧力室22となる溝を形成した。溝が形成されたSi基板18面に上記圧電素子24の振動板17の面を合わせて、Si基板18に圧電素子24をエポキシ系接着剤で接着した。
【0054】
続いて、熱リン酸で基板11となるMgO基板を完全に溶解した。ここで、図4に示したように、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ない場合には熱リン酸にほとんど溶解しないため、シーズ層13はストップエッチ層として機能した。
【0055】
その後、第1実施例と同様に、上部電極12およびPZT膜を所定のパターンにエッチングして、図7に示した断面構造のインクジェットヘッドを作製した。
【0056】
本実施例では、上述のように、圧電性膜14と同じ主成分で、その組成を変化させ、原子数において、Pb<(Zr+Ti)の組成にすることで、酸・アルカリに溶け難く、高配向性な層を形成し、この層と連続して圧電性膜14を成膜した後、アニールを行っている。このようにして、高配向性な層を格子定数のマッチングの取れたシーズ層として利用することで、全体的に配向性が高く、理想的な組成の圧電性膜14を形成できる。
【0057】
次に、作製したインクジェットヘッドの電極間に矩形波を印加したときの振動板17の変位を測定したので、その結果について説明する。
【0058】
作製したインクジェットヘッドに図8に示した矩形波を電極間に印加し、レーザードップラー変位計により圧力室22の中央部付近の変位を測定した。測定の結果、変位は約0.10μmであった。この変位量は、第1実施例の場合より小さいが、インクジェット用の圧電素子として十分な値である。また、圧力室22にIPAを充填して、圧電素子24を動作させることで、IPAの液滴が吐出することを確認した。
【0059】
(第3実施例)
本実施例は加熱した基板にシーズ層を形成したことを特長とする。
【0060】
本実施例における圧電素子の断面構造は、図2と同様なため、圧電素子の構成についての説明を省略する。
【0061】
次に、本実施例における圧電素子の製造方法について説明する。なお、第1実施例と同様の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0062】
まず、Pt(111)/Ti/MgO基板からなる積層構造の上に、RFスパッタリングを用いて、基板ヒーター熱電対温度=600℃、表示Arガス圧3.0Paで、シーズ層13を0.01μm形成した。このシーズ層13は、Pbの割合が(Zr+Ti)より少なく、理想的なPZT組成からはずれているが、PZTより腐蝕に強く、また結晶性が非常に高く、PZT(111)に優先配向していた。図4に示すように、上記成膜条件における膜の組成比は、(Zr+Ti)の原子数1.0に対して、Pbの原子数が0.7であった。
【0063】
続いて、プラズマ放電を安定させたまま、基板ヒーターをOFFにしたところ、基板ヒーター熱電対温度は、急激に200℃以下まで下がり、その後緩やかに室温まで下がり続けた。基板温度を下げながら非加熱で圧電性膜14を成膜し、ほぼ理想的な組成比のPZT膜を3μm形成した。その後、PZT膜を、酸素雰囲気中、昇降温速度1℃/min、700℃、5hrのアニール処理を行って結晶化し、PZT(111)に優先配向させた。
【0064】
上記アニール処理の後、第1実施例と同様に、PZT膜上に下部電極15および振動板17を形成し、圧電素子を作製した。
【0065】
次に、上記圧電素子を用いたインクジェットヘッドを作製したので説明する。
なお、本実施例におけるインクジェットヘッドの構成および製造方法は、第1実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0066】
厚さ400μmのSi基板18上に、第1実施例と同様にして、連絡ノズル21、吐出ノズル23、インク供給室20、および圧力室22となる溝を形成した。溝が形成されたSi基板18面に上記圧電素子24の振動板17の面を合わせて、Si基板18に圧電素子24をエポキシ系接着剤で接着した。
【0067】
続いて、熱リン酸で基板11となるMgO基板を完全に溶解した。ここで、図4に示したように、Pbの割合が(Zr+Ti)より少ない場合には熱リン酸にほとんど溶解しないため、シーズ層13はストップエッチ層として機能した。
【0068】
その後、第1実施例と同様に、上部電極12およびPZT膜を所定のパターンにエッチングして、図7に示した断面構造のインクジェットヘッドを作製した。
【0069】
本実施例では、上述のようにして、基板を加熱して、圧電性膜14と同じ主成分で、その組成を変化させ、原子数においてZr+Ti=1.0として、0.7≦Pb<(Zr+Ti)の組成にすることで、酸・アルカリに溶け難く、高配向性な層を形成する。この層を格子定数のマッチングの取れたシーズ層として利用することで、全体的に配向性が高く、理想的な組成の圧電性膜14を形成できる。
【0070】
次に、作製したインクジェットヘッドの電極間に矩形波を印加したときの振動板17の変位を測定したので、その結果について説明する。
【0071】
作製したインクジェットヘッドに図8に示した矩形波を電極間に印加し、レーザードップラー変位計により圧力室22の中央部付近の変位を測定した。測定の結果、変位は約0.13μmであった。この変位量はインクジェット用の圧電素子として十分な値である。また、圧力室22にIPAを充填して、圧電素子24を動作させることで、IPAの液滴の吐出を確認した。
【0072】
なお、本発明におけるシーズ層13の成膜にはあらゆる成膜方法を適用でき、成膜方法として、例えば、RFスパッタリング、イオンビームスパッタリング、イオンプレーティング、EB蒸着、プラズマCVD、MO−CVD、およびレーザーアブレーションがある。いずれの成膜方法も、用いる材料を構成する原子の蒸気圧の違いを利用して、基板温度によって組成比をコントロールし、圧電性膜14と主成分が同じで、かつ腐蝕に強いシーズ層13を形成できる。特に、ガス圧および温度により組成制御の容易なRFスパッタリングが好ましい。
【0073】
また、本発明における圧電性膜14には、圧電性を有し、Pb、Zr、およびTiを主成分とするあらゆる複合酸化物を用いることができる。圧電性膜14は、特に、ABO3型ペロブスカイト構造酸化物であることが望ましく、AサイトはPbの他にLaを含んでもよく、BサイトにはTi、Zr、Zn、Nb、およびMgから選ばれる少なくとも2種類の元素を含む物を用いることができる。
【0074】
その代表例として、例えば、Pb(Zr,Ti)O3、および(Pb,La)(Zr,Ti)O3などがある。特に、Pb(Zr,Ti)O3は圧電性に優れ、材料として好ましい。シーズ層13の膜厚は、圧電性膜14の持つ圧電性を損なわないようにするために、0.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより望ましい。
【0075】
本発明では、上述の第1実施例〜第3実施例のようにして、RFスパッタリングによる成膜中にガス圧や基板温度などの条件を変えることにより、形成する膜の組成を変化させ、酸・アルカリへの溶解度や結晶配向を制御している。特に、ABO3で表わされるPZTなどのペロブスカイト構造の酸化物の場合、Aサイトの原子を減少させた、Bサイトの原子が中心の酸化物では、本来のペロブスカイト構造物よりもはるかに酸・アルカリに溶け難くなり、結晶配向性が高くなった。
【0076】
すなわち、圧電性膜の成膜前に、圧電性膜と同じ組成で、その組成を変化させて理想的な組成からずらすことで、酸・アルカリに溶け難く、高配向性な層を形成でき、この層を格子定数のマッチングの取れたシーズ層として利用することにより、全体的に配向性が高く、組成も理想的な圧電性膜を形成できる。
【0077】
また、上記シーズ層13をMgO基板除去の際にストップエッチ層として活用することで、強力な酸・アルカリによる圧電性膜14へのダメージを軽減できる。
【0078】
(比較例)
本発明と従来技術とを比較するために、比較例として、従来の圧電素子について説明する。
【0079】
まず、従来の圧電性膜について説明する。
【0080】
図9は従来の圧電性膜の断面構造を示す模式図である。
【0081】
図9は、基板11上に上部電極12および圧電性膜28が順に形成された構成を示す。図9に示した構造から、第1実施例と同様に、圧電性膜28上に下部電極15および振動板17を順に形成し、基板11を溶解等で除去することで、圧電素子が作製される。
【0082】
次に、従来の圧電素子の製造方法について説明する。なお、第1実施例と同様の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0083】
まず、Pt(111)/Ti/MgO基板の積層構造の上に、圧電性膜28として、理想的な組成比のPZT膜を3μm形成し、続いて、第1実施例と同様に、酸素雰囲気、昇降温速度1℃/min、処理温度700℃、5hrのアニール処理を行った。このPZT膜のX線回折パターンを測定したところ、完全に無配向であった。
【0084】
続いて、上記アニール処理の後、第1実施例と同様に、PZT膜上に下部電極15および振動板17を形成し、圧電素子を作製した。
【0085】
次に、上記圧電素子を用いたインクジェットヘッドを作製したので説明する。
なお、本実施例におけるインクジェットヘッドの構成および製造方法は、第1実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0086】
厚さ400μmのSi基板18上に、第1実施例と同様にして、連絡ノズル21、吐出ノズル23、インク供給室20、および圧力室22となる溝を形成した。溝が形成されたSi基板18面に上記圧電素子24の振動板17の面を合わせて、Si基板18に圧電素子24をエポキシ系接着剤で接着した。
【0087】
続いて、熱リン酸で基板11となるMgO基板を完全に溶解した。その際、上部電極12のPtに部分的に皺が発生した。その後、第1実施例と同様に、上部電極12およびPZT膜を所定のパターンにエッチングして、インクジェットヘッドを作製した。
【0088】
次に、作製したインクジェットヘッドの電極間に矩形波を印加したときの振動板17の変位を測定したので、その結果について説明する。なお、本実施例におけるインクジェットヘッドの構成および製造方法は、第1実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0089】
作製したインクジェットヘッドに図8に示した矩形波を電極間に印加し、レーザードップラー変位計により圧力室22の中央部付近の変位を測定した。測定の結果、変位は約0.05μmであった。この変位量は、第1実施例〜第3実施例のいずれの実施例と比較してもかなり少ない値であった。また、上部電極12に皺が発生した部分では圧電素子の駆動に問題があった。
【0090】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているので、以下に記載する効果を奏する。
【0091】
本発明によれば、圧電性膜と主成分が同じで、かつ腐蝕に強い層をシーズ層として設ければ、その後に圧電性膜を非加熱で成膜し、アニールすることにより、高配向性で優れた圧電性膜となるため、高性能、高品質な圧電素子を提供できる。
【0092】
また、圧電性膜と主成分が同じで、かつ腐蝕に強い層がストップエッチ層として機能するため、圧電性膜へのエッチングダメージが軽減され、プロセス上の歩留まりが大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の圧電性膜の断面構造を示す模式図である。
【図2】本実施例の圧電素子の一構成例を示す断面模式図である。
【図3】Arガス圧と膜組成比の関係を示すグラフである。
【図4】各成膜条件におけるPZT膜の組成比および熱リン酸溶解性を示す表である。
【図5】Pt(111)のX線ピーク強度に対するPZT各配向面のX線ピーク強度比を示すグラフである。
【図6】インクジェットヘッドの上部外観を示す模式図である。
【図7】圧電素子部におけるインクジェットヘッドの断面構造を示す模式図である。
【図8】圧電素子の電極に印加する矩形波の波形を示す図である。
【図9】従来の圧電性膜の断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
11 基板
12 上部電極
13 シーズ層
14、28 圧電性膜
15 下部電極
16 溝間部
17 振動板
18 Si基板
19 貫通孔
20 インク供給室
21 連絡ノズル
22 圧力室
23 吐出ノズル
24 圧電素子
26 素子分離部

Claims (1)

  1. Ti、Zr、Zn、Nb、およびMgのうち少なくともいずれか二つの元素、ならびにPbを主成分として含む圧電性膜を有する圧電素子であって、
    前記圧電性膜と前記主成分が同一で、かつ該圧電性膜より腐蝕に強いシーズ層が前記圧電性膜と積層された圧電素子。
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