JP2004213745A - 追記型光記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】青色レーザ波長の領域であっても記録再生が容易に行え、転写性のよい浅溝基板でも記録再生が容易に行える層構成を有し、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラ−率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない高密度記録可能な追記型光記録媒体の提供。
【解決手段】基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加により、及び、該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の、有機材料層へ向かう方向への変形により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、追記型(WORM:Write Once Read Many)光記録媒体に係り、特に青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料の大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
【0003】
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
また、従来の追記型光記録媒体では、有機材料の分解・変質による屈折率変化と共に、基板変形によっても記録が行われており、基板は有機材料層側に変形する。
【0004】
青色レーザ対応の有機材料としては、例えば、特許文献1〜5に記載がある。
しかし、これらの公報では、実施例を見ても溶液と薄膜のスペクトルを測定しているのみで、記録再生に関する記載はない。
特許文献6〜8には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は488nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な記録ピットが形成できた旨の記載があるのみである。
特許文献9には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は430nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な変調度が得られた旨の記載があるのみである。
特許文献10〜19には、実施例に記録波長430nm、NA0.65での記録例があるが、最短ピットが0.4μmという低記録密度条件(DVDと同等の記録密度)である。
特許文献20には、記録再生波長は405〜408nmであるが、記録密度に関する具体的な記載がなく、14T−EFM信号の記録という低記録密度条件である。
【0005】
また、従来のCD、DVD系光記録媒体と異なる層構成及び記録方法に関して、以下のような技術が公開されている。
特許文献21には、基板/可飽和吸収色素含有層/反射層という層構成で、可飽和吸収色素の消衰係数(本発明でいう吸収係数)の変化により記録を行う技術が開示されている。
特許文献22には、基板/金属蒸着層/光吸収層/保護シ−トという層構成で、光吸収層によって発生した熱によって、金属蒸着層を変色又は変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献23には、基板/誘電体層/光吸収体を含む記録層/反射層という層構成で、記録層の膜厚を変えることにより溝部の深さを変えて記録を行う技術が開示されている。
この技術は、記録層の膜厚を変化させるという点で本発明と一見類似しているが(本発明は記録層の膜厚変化に主眼を置いたものではないが、結果的にそうなる場合がある)、記録層の膜厚変化は基板の記録層側への変形により行われるため、本発明の変形形態と全く異なる。
【0006】
特許文献24には、基板/光吸収体を含む記録層/金属反射層という層構成で、記録層の膜厚を10〜30%変化させることにより記録を行う技術が開示されている。
この技術も、記録層の膜厚を変化させるという点で本発明と一見類似しているが(本発明は記録層の膜厚変化に主眼を置いたものでないが、結果的にそうなる場合がある)、記録層の膜厚変化は基板の記録層側への変形により行われるため、本発明の変形形態と全く異なる。
また、この技術では、記録層の膜厚変化の誘発は、色素又は高分子と色素の混合体からなる記録層自身の光吸収能により行われるが、本発明で光吸収の役割を担うのは、記録層とは別に設けられた光吸収層又は光吸収機能を有する下引層、上引層である。
更に、上記4つの技術では、記録層中の色素は光吸収機能が必要となるため、主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わるが、本発明では、色素(有機材料)の主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素(有機材料)の選択の自由度が大きいというメリットがある。
【0007】
特許文献25には、基板/有機色素を含有する記録層/金属反射層/保護層という層構成で、基板の溝幅を未記録部に対して20〜40%広くすることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献26には、基板/中間層/金属薄膜という層構成で、金属薄膜が変形しバブルを形成することにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献27には、基板/光吸収層/記録補助層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献28には、基板/光吸収層/多孔質な記録補助層/光反射層、或いは、基板/多孔質な記録補助層/光吸収層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
上記光反射層を凹状に変形させる2つの技術は、層構成の点で本発明と類似するが、記録補助層が高分子から構成されており、記録補助層の変形は高分子の軟化により生じるため、再生劣化や保存安定性に問題がある。
これに対して本発明における変形は、主に有機材料の状態変化(特に、分解・爆発)により生じるため、再生劣化が抑制され、保存安定性が十分確保できる。
また、これらの技術と本発明で用いる光吸収層とでは材料が異なる。
【0008】
特許文献29には、基板/多孔質な光吸収層/光反射層という層構成で、光吸収層を凹状に変形させると共に、光吸収層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献30には、基板/有機色素を含む記録層/記録補助層という層構成で、記録補助層と有機色素が相溶して、有機色素の吸収スペクトルを短波長側へシフトさせることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献31には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
【0009】
特許文献32には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献33には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。
なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
特許文献34には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0010】
上記3つの技術では、記録層と光吸収機能を有する層を分離した構成とする点で本発明と類似するが、記録層(上記3つの技術では、緩衝層、又はバッファ層と呼ばれる)が高分子と色素の混合体から構成される点、及び基板上の金属層が基板とは反対方向へ変形する点が大きく異なる〔この金属層が有機材料層側(反射層側)に変形する様子は、例えば、非特許文献1にも詳しい記載がある〕。
即ち、金属層の光吸収によって金属層が基板とは反対方向に変形し、この変形が高分子の軟化に助けられ、記録層の膜厚が変化することで記録が行われる。
これに対し本発明では、例えば、基板上に設けられた下引層を、有機材料の状態変化(特に、分解・爆発)により基板側へ変形させることで記録が行われる。
また、上記3つの技術では、記録層中の色素に光吸収機能が必要となるため、色素の主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わるが、本発明では、主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素(有機材料)の選択の自由度が大きいというメリットがある。
また、上記3つの技術の光吸収機能を有する層と本発明で用いる光吸収層では材料が異なる。
【0011】
特許文献35〜36には、基板/光吸収層/反射層という層構成で、従来のCD−RやDVD−Rの記録原理に関する規定がされている。
しかし、上記特許には、後述する本発明のように、記録層に要求される記録機能と光吸収機能を分離するため光吸収層と有機材料層の2層構造とする点について記載も示唆もされておらず、当然ながら光吸収層中の色素に光吸収機能が必要となる。そのため色素の主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わることになる。これに対し本発明では、色素(有機材料)の主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素の選択の自由度が非常に大きいというメリットがある。
【0012】
以上のように、上記諸々の従来技術は、青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく、青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機材料が殆んど存在しない。また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
更に、上記従来技術における実施例の多くは、従来のディスク構成(図1参照)での実験であり、また、従来のディスク構成と異なる構成も提案されてはいるが、そこに用いられる色素は従来と同じ光学特性と機能が要求されており、青色レーザ波長領域で、有機材料からなる追記型光記録媒体を容易に実現できる層構成や記録原理、記録方式についての有効な提案はない。
【0013】
また、従来の有機材料を用いた追記型光記録媒体では、変調度と反射率の確保の点から、記録再生波長に対し大きな屈折率と比較的小さな吸収係数(0.05〜0.07程度)を持つ有機材料しか使用することができない。
即ち、有機材料は記録光に対して十分な吸収能を持たないため、有機材料の膜厚を薄膜化することが不可能であり、従って、深い溝を持った基板を使用する必要があった(有機材料は通常スピンコート法によって形成されるため、有機材料を深い溝に埋めて厚膜化していた)。そのため、深い溝を有する基板の形成が非常に難しくなり、光記録媒体としての品質を低下させる要因になっていた。
更に、従来の有機材料を用いた追記型光記録媒体では、記録再生波長近傍に有機材料の主吸収帯が存在するため、有機材料の光学定数の波長依存性が大きくなり(波長によって光学定数が大きく変動する)、レーザの個体差や環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等が大きく変化するという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−181524号公報
【特許文献2】
特開2001−158865号公報
【特許文献3】
特開2000−343824号公報
【特許文献4】
特開2000−343825号公報
【特許文献5】
特開2000−335110号公報
【特許文献6】
特開平11−221964号公報
【特許文献7】
特開平11−334206号公報
【特許文献8】
特開2000−43423号各公報
【特許文献9】
特開平11−58955号公報
【特許文献10】
特開2001−39034号公報
【特許文献11】
特開2000−149320号公報
【特許文献12】
特開2000−113504号公報
【特許文献13】
特開2000−108513号公報
【特許文献14】
特開2000−222772号公報
【特許文献15】
特開2000−218940号公報
【特許文献16】
特開2000−222771号公報
【特許文献17】
特開2000−158818号公報
【特許文献18】
特開2000−280621号公報
【特許文献19】
特開2000−280620号公報
【特許文献20】
特開2001−146074号公報
【特許文献21】
特開平7−304258号公報
【特許文献22】
特開平8−83439号公報
【特許文献23】
特開平8−138245号公報
【特許文献24】
特開平8−297838号公報
【特許文献25】
特開平9−198714号公報
【特許文献26】
特許第2506374号公報
【特許文献27】
特許第2591939号公報
【特許文献28】
特許第2591940号公報
【特許文献29】
特許第2591941号公報
【特許文献30】
特許第2982925号公報
【特許文献31】
特開平9−265660号公報
【特許文献32】
特開平10−134415号公報
【特許文献33】
特開平11−306591号公報
【特許文献34】
特開平10−124926号公報
【特許文献35】
特許第2710040号公報
【特許文献36】
特許第2840643号公報
【非特許文献1】
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.2089−2093「New Recordable Optical Discs with Metal Thin Film an
d Organic Film on Polycarbonat
e」
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、次のような特性を有する光記録媒体の実現を目的とする。
(a) 青色レーザ波長領域(350〜500nm程度)、特に405nm近傍の波長領域であっても記録再生が容易に行える、有機材料層を有する高密
度記録可能な追記型光記録媒体。
(b) 転写性のよい浅溝基板でも記録再生が容易に行える、有機材料層を有す
る追記型光記録媒体。
(c) 記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率とい
ったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、基本的に、従来の記録機能と光吸収機能を有するいわゆる記録層(有機材料層)から、記録機能を有する層(有機材料層)と光吸収機能を有する層(光吸収層)とに分離した2層構成を採用する。この層構成の光記録媒体では、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じさせ、有機材料層の記録再生波長における吸収係数を増加させると共に、有機材料の状態変化に伴う体積減少によって、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層を、有機材料層へ向かう方向に変形させて記録を行うか、或いは、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じさせ、該状態変化による低屈折率部を発生させることにより記録を行う。
【0017】
即ち、上記課題は、次の1)〜14)の発明によって解決される。
1) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加により、及び、該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の、有機材料層へ向かう方向への変形により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じ、該状態変化による低屈折率部の発生により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
3) 低屈折率部が空洞部であることを特徴とする2)記載の追記型光記録媒体。
4) 低屈折率部又は空洞部を形成する光記録媒体構成層が、有機材料層及び/又は基板であることを特徴とする2)又は3)記載の追記型光記録媒体。
5) 基板上に、光吸収層、有機材料層、反射層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
6) 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
7) 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
10) 基板上に、反射層、有機材料層、光吸収層、記録再生波長に対し透明なカバー層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
11) 光吸収層がセラミックス、半金属、金属、又はそれらの混合物からなることを特徴とする1)〜10)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
12) 光吸収層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする11)記載の追記型光記録媒体。
13) 光吸収層が金属微粒子からなることを特徴とする11)記載の追記型光記録媒体。
14) 波長350〜500nmの光により記録再生可能であることを特徴とする1)〜13)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0018】
以下、上記本発明の特徴・利点について詳細に述べる。
なお、本発明では、有機材料層に隣接して上側(基板と反対側)に設けられる層を上引層、有機材料層に隣接して下側(基板側)に設けられる層を下引層と呼ぶことにする。
(1)本発明の層構成と、有機材料の条件について
従来の追記型光記録媒体では、有機材料の分解・変質によって記録再生波長における吸収係数を低下させ、これによる大きな屈折率変化を利用して変調度を発生させていた(図2参照。横軸の下の矢印は記録再生波長を示す)。
これに対し、本発明の追記型光記録媒体では、従来、光吸収機能による熱発生層であり且つ分解・変質に起因した屈折率(複素屈折率の実部)変化による記録層として機能していた有機材料層から、光吸収機能による熱発生層の機能を分離させ、有機材料層とは別の光吸収層を設けた点に特徴がある。
そして、光吸収層又は光吸収層としての機能を有する下引層や上引層で発生する熱によって有機材料に状態変化を起させ、この状態変化により350〜500nm程度の青色レーザ波長領域での有機材料層の吸収係数を増加させ、及び、有機材料の状態変化に伴う体積減少による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の有機材料層へ向かう方向の変形により記録を行う。
【0019】
また、光吸収層又は光吸収層としての機能を有する下引層や上引層で発生する熱によって、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じさせ、該状態変化による低屈折率部の形成により記録を行うことも可能である。
また、光吸収層又は光吸収層としての機能を有する下引層や上引層で発生する熱によって、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じさせ、該状態変化による空洞部の形成により記録を行うことも可能である。
更に、これらの記録原理を組み合わせて使用することも可能である。
なお、「少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じさせる」とは、光吸収層及び/又は有機材料層のみに状態変化を生じさせる場合と、光吸収層及び/又は有機材料層に加えて光記録媒体を構成する他の層(1層のみでも2層以上でもよい)にも状態変化を生じさせる場合の何れでもよく、また状態変化とは、溶融、昇華、分解、爆発、構造変化等を指す。このようにして記録を行う結果、本発明では、基本的に記録前の有機材料層における複素屈折率実部の大小は大きな意味を持たなくなるため、また有機材料層は記録再生波長に対して光吸収能を有する必要がなくなるため、光学定数に関する従来のような厳しい制限が不要になるという顕著な効果を奏する。
【0020】
従って、記録再生が青色レーザ波長領域で行われる場合であっても、有機材料として、赤色レーザ波長領域に大きな吸収帯を有し青色レーザ波長領域に大きな吸収帯を持たず、かつ分解特性の優れた材料、例えばCD−RやDVD−R用の色素を用いることができる。
また、従来は、波長制御のために、複雑な置換基や合成上困難性の高い色素を記録層として用いる必要があったが、本発明の有機材料層ではそのような複雑な波長制御は不必要なため、コストの安い有機材料を選択することが可能となる。更に、本発明において光吸収機能による熱発生層となる光吸収層、下引層又は上引層には、屈折率が正常分散性を示す材料を用いることができるため、また有機材料層には、大きな吸収帯が記録再生波長よりも十分離れて存在する色素などの有機材料を用いることができるため(大きな吸収帯近傍では屈折率が異常分散性を示し、屈折率が波長によって大きく異なるという性質を示すが、大きな吸収帯から十分離れた波長領域では屈折率は正常分散性を示し、屈折率は波長に対し緩やかな変化を示す)、レーザの個体差や、環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等が大きく変化するという従来の問題を大幅に解消することができる。
【0021】
なお、本発明の通常の態様では、有機材料層の有機材料の主吸収帯と記録再生波長の関係を「記録再生波長に対して有機材料の主吸収帯が長波長側に存在する」ように設定するが、これに限定される訳ではなく、有機材料の主吸収帯と記録再生波長の関係は任意に設定することが可能である。
但し、本発明の実施に際しては、光吸収層が存在することから、反射率を高めるため、有機材料の主吸収帯と記録再生波長を遠ざけることが好ましい。この場合、記録再生波長に対して有機材料の主吸収帯が長波長側に存在しても、逆に短波長側に存在してもよい。
上記の説明から分るように、本発明は、赤色領域から青色領域まで、更には青色領域以下も含む広い範囲の記録再生波長に対しても適用することが可能であり、用いられる記録再生波長に合わせて、後述するような公知の有機材料(特に色素)の中から上記条件を満たす材料を適宜選択することにより目的とする光記録媒体を得ることができる。
【0022】
(2) 本発明で用いる記録原理について
上記有機材料層の吸収係数の増加による記録原理を、図3〜図5を参照しつつ説明する。
図3に示すような未記録状態の吸収スペクトルを有する有機材料を選択し、この有機材料を状態変化(特に分解、爆発)させると、分解により有機材料を構成していた分子や分子団の吸収が発生する。この吸収は、通常、分解、爆発前の有機材料の吸収よりも短波長であるため、元の有機材料の大きな吸収帯よりも短波長側での吸収係数が増加する(記録状態の吸収スペクトル参照)。この短波長側の吸収波長の変化の大きい範囲と記録再生波長(例えば図の矢印の位置)とを合わせれば、記録後の記録再生波長における吸収係数を増加させることができるので、これによって変調度を発生させることが可能となる。
【0023】
上記の記録原理についてもう少し詳しく説明すると、本発明で用いる有機材料は、小さな分子や分子団が結合して、或いは、錯体や会合体等を形成して大きな共役系を形成した有機材料であって、分子や分子団が持っていた固有の吸収波長(図4の吸収スペクトルA、Bに相当)よりも長波長側に大きな吸収帯を持ち、個々の分子や分子団が持っていた固有の吸収帯が消滅、又は減衰した吸収スペクトルを持つ(図5の吸収スペクトルCに相当)。
このような有機材料に対し、図5で示すようなλ1を記録再生波長として選択すると、未記録時はλ1での吸収が少なかった状態から、分解、爆発などによって、大きな分子を形成していた分子や分子団が持つ固有の吸収が増加し(図4参照)、λ1での吸収も増加し、吸収係数の変化による記録部が形成できる。
従って、ただ小さな分子や分子団が結合しているだけであって、共役系の広がりが形成されないような分子は、図5のような状態、即ち、分子や分子団が持っていた固有の吸収帯が消滅又は減衰し、新たに大きな鋭い吸収帯が形成されるような状態が実現されないため、記録前後での吸収係数の変化が大きくならず、記録ピットを形成することができない。
【0024】
更に、上記の吸収係数の増加による記録原理と組み合わせるか、或いは独立に用いられる記録原理について説明する。
1つめの記録原理は、有機材料層の状態変化に伴う体積減少によって、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層を有機材料層へ向かう方向に変形させるものであり〔図14(a)〜(c)参照〕、有機材料層の吸収係数の増加と併用して用いることが好ましい。
【0025】
2つめの記録原理は、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって、少なくとも光吸収層と有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じさせ、該状態変化により低屈折率部を発生させるものである〔15(a)〜(c)参照〕。この低屈折率部とは、任意の光記録媒体層を構成する材料の膨張、溶融、分解、昇華、爆発等によって生じ、本発明では密度減少により誘起される低屈折率部の発生や空洞部の発生が好ましい形態として挙げられる。
例えば、基板、光吸収層、有機材料層、反射層が順次積層された光記録媒体では、光吸収層の光吸収機能によって有機材料を分解させ、有機材料層内に空洞部を形成させる(なお、本発明では、空洞部は低屈折率部であると見なす)。
更に、基板には、基板の膨張や基板材料の一部分解等によって、密度減少に伴う低屈折率部を形成させることができるし、基板材料の分解等によって、空洞部を形成させることもできる。
なお、低屈折率部は、光吸収層内に発生しても構わない。
【0026】
このように、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に低屈折率部を形成できるのは、本発明の層構成が有する特有の効果による。即ち、従来の追記型光記録媒体の構成(例えば、基板/有機材料層/反射層)では、有機材料層が光吸収機能を担っていたため、基本的には、有機材料の分解温度以上に有機材料層の温度が上昇しないため(但し、瞬間的にはこの限りではない)、有機材料層内に大きな低屈折率部が形成されることはなく、また、小さな凹凸は発生するものの、基板内に大きな低屈折率部が形成されることはない。なお、従来のCD−RやDVD―Rでも基板が膨張していることは確認されており、理論的には、基板が膨張すれば、その膨張した部分は膨張していない部分と比べて多少の低屈折率化はしている筈である。
これに対し、本発明でいう低屈折率部とは、明らかに目視で分るレベルの低屈折率部を指し、前記従来の低屈折率化した部分とは異なるものである。
具体的には、例えば任意の光記録媒体構成層の記録部断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察した場合、凹凸等の形状変化ではなく、同じ基板内にコントラストが異なって見える部分が発生する程度の低屈折率部を指す(従来のCD−RやDVD―Rでは、記録部の断面をTEMで観察した場合、基板の凹凸等の形状変化は容易に観察できるが、基板は全て同一のコントラストで観察される。即ち、記録部では大きな低屈折率部が発生していない)。
【0027】
一方、本発明の光記録媒体では、記録機能と光吸収機能を分離し、従来の追記型光記録媒体よりも高い光吸収機能を有し、かつ従来よりも高い分解温度や融点等を有する材料を光吸収層として用いることができるため、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層を従来よりも高温にすることが可能となり、低屈折率部を形成させることができるのである。
低屈折率部の形成という記録原理は、勿論、他の記録原理と組み合わせることも可能であり、例えば、前述した有機材料層の吸収係数増加という記録原理と組み合わせることも可能である。
また、低屈折率部や空洞部の形成は、任意の光記録媒体構成層に形成させることが可能であり、1層のみならず、複数の光記録媒体構成層に形成させることができる。
なお、本発明では、例えば、有機材料層の吸収係数の増加により記録を行うか、それとも有機材料層内に空洞部等の低屈折率部を発生させて記録を行うかは、光吸収層や有機材料層の材料や膜厚、或いは記録パワーによって制御することが可能である。
【0028】
ところで、従来の追記型光記録媒体では、有機材料層が記録層と光吸収層の機能を兼用していたため、記録再生波長に対して大きな屈折率nと比較的小さな吸収係数kを有することが有機材料の必須条件であり、そのため有機材料を分解させる温度まで到達させるには、比較的厚い膜厚が必要となっていた(また相変化型の光記録媒体に対し基板の溝深さが非常に深くなっていた)。
しかし、本発明の記録媒体では、光吸収機能と記録機能を分離したため、有機材料層の膜厚は従来に比べて薄くすることが可能となる。
この、有機材料層の薄膜化が可能となったことにより、転写性(成形性)に優れた溝深さの浅い基板を使用することが可能となり、光記録媒体の信号品質が大幅に向上すると共に、従来に比べて基板を容易かつ安価に製造(成形)できる。
また、上記記録原理によるため、再生時に基板の溝形状の影響を受け難く、基板形状のばらつきに対する許容度が大きくなり、従来に比べて基板の製造を容易且つ安価に行うことができる。
【0029】
以上説明した有機材料の吸収係数の増加や、変形形態によって形成された記録ピットは、未記録部と大きく異なる干渉効果や回折効果の変化を生むため、再生レーザを照射することで検出することが可能である。
なお、これらの有機材料の吸収係数の増加や各種変形形態では、下引層、有機材料層、上引層等に用いられる材料の光学定数(複素屈折率)や膜厚、及び変形形状や大きさ(幅や長さ等)、或いは、これらの変形形態の組み合わせによって、記録極性が変化する場合がある。
従って、上記の記録原理を組み合わせて用いる場合は、一般的に、用いる記録原理の記録極性を合わせる必要がある。
【0030】
しかし、記録極性が異なる記録原理同士を組み合せることも可能である。
この記録極性が異なる記録原理同士を組み合せると、例えば2つの異なる記録原理を用いた場合、どちらかの記録原理を主記録原理とし、他方の記録原理を補助的な記録原理となるように設定すれば、記録パワ−の増加によって、主記録原理による記録部の大きさ(長さや幅等)が増加する割合を、補助的な記録原理によって低下させることができ、いわゆる記録パワ−マ−ジンを拡大することが出来るというメリットがある(記録パワ−の変化による記録特性の変化の割合が小さくなる)。
従って、本発明では記録極性を制限するものではない〔High to Low(ハイツーロー)記録でも、Low to High(ローツーハイ)記録でも良い〕。
なお、従来の文献では光吸収層を色々な意味で用いており、光吸収機能及び熱発生機能を分担する層といわゆる記録機能を分担する層を分けたような層構成の媒体も散見されるが、上記本発明のような記録原理を採用するための光吸収層を設けた追記型光記録媒体に関する文献は、本発明者の知る限り皆無である。
【0031】
以下、添付した図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の追記型光記録媒体は、基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有することを特徴とする。
各構成要素について具体的に説明すると、基板の素材としては、熱的、機械的に優れた特性を有し、基板側から(基板を通して)記録再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば、特別な制限はない。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。
基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
【0032】
光を吸収し熱を発生させる光吸収層又は光吸収層として機能する下引層や上引層には、比較的熱伝導率の低い材料が適している。比較的低い熱伝導率の材料を選択する理由は、効率よく(低記録パワーで)有機材料やその他の任意の光記録媒体構成層を状態変化させるためである。
なお、ここで言う比較的熱伝導率が低いとは、記録によって局所的に任意の光記録媒体構成層を状態変化させるだけの温度に達するような熱伝導率であることを意味する。
以上の点から、光吸収層又は光吸収層として機能する下引層や上引層には、SiC等のセラミックス、Si等の半金属、Ge等の金属、又はそれらの混合物を用いることが好ましい。
また、任意の光記録媒体構成層の状態変化を低記録パワーで生じさせるために、光吸収層として、記録波長に対する吸収係数がある程度大きい材料を用いることが好ましい。
【0033】
上記光吸収層の材料となるセラミックスとしては、Al、MgO、BeO、ZrO、UO、ThOなどの単純酸化物系の酸化物;SiO、2MgO・SiO、MgO・SiO、CaO・SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、2MgO・2Al・5SiO、LiO・Al・4SiOなどのケイ酸塩系の酸化物;AlTiO、MgAl、Ca10(PO(OH)、BaTiO、LiNbO、PZT〔Pb(Zr,Ti)O〕、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si、Si6−ZAl8−Z、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、BC、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB、TiB、ZrBなどのホウ化物系の非酸化物;CdS、MoSなどの硫化物系の非酸化物;MoSiなどのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイヤモンド等の炭素系の非酸化物などを用いることができる。
金属としては、Au、Al、Ag、Cu、Pd、Pt、Ti、Ta、C
r、Ni、Fe、及びこれらの合金を用いることができる。
【0034】
また、光吸収層として、記録によって溶解する材料を用いることも可能であり、この場合、光吸収層の溶解によって、光吸収層と光吸収層に隣接する層との界面を変化させることができる。
このような材料としては、例えばTe、Zn、Al、Sb、In、Sn等、或いは、それらを含有する物質を用いることができる。
更に本発明では、光吸収層として金属微粒子を用いることも可能である。
この金属微粒子では、いわゆるプラズモン吸収によって微粒子の粒子径に依存した波長に吸収を持つようになり、このプラズモン吸収波長と記録再生波長を略一致させることで光吸収層としての機能を高めることができる。
金属微粒子の粒子径は、1〜50nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは1〜15nm、更に好ましくは1〜5nmの範囲である。
金属微粒子としては、Ag、Au、Pd、Ptが好ましい。但し、金属微粒子以外に、合金やカルコゲン等の含金属材料の微粒子を用いることも可能である。
光吸収層の厚さは20〜500Åが望ましい。
【0035】
有機材料層に用いられる有機材料としては、いわゆる色素が好ましい。また、下引層や上引層を有機材料層側に変形させるためには、昇華性又は分解・爆発性が高い色素、或いは昇華性又は分解・爆発性の高い置換基が導入された色素が好ましい。
また、下引層や上引層を有機材料層へ向かう方向に変形させるためには、状態変化による体積減少が大きな色素、例えば分解性が高い色素、或いは分解性の高い置換基が導入された色素が好ましい。
また、高い分解・爆発性を確保するには、分子骨格が大きい有機材料が好ましい。更に、構造変化によって体積変化を起こす色素も用いることができる。
本発明では、反射率を確保するために、有機材料の主吸収帯と記録再生波長を十分遠ざけることが好ましい。
記録再生波長が赤色領域にある場合は、有機材料の主吸収帯に対して記録再生波長は短波長側にあっても、長波長側にあってもよい。
【0036】
一方、記録再生波長が青色領域以下にある場合は、有機材料の主吸収帯に対して記録再生波長を長波長側に設定することは、有機材料の分子骨格を小さくしなければいけない(共役系を短くする)ことを意味し、これは分解・爆発性の低下を招く恐れがあり、また溶解性の低下や結晶性の向上によって薄膜の形成が困難になる可能性があるため好ましくない。
従って、十分な分解・爆発性を確保し、かつ良質な薄膜を形成させるために、記録再生波長が青色レーザ波長領域にある場合は、その主吸収帯が記録再生波長よりも長波長側に存在するような有機材料を選択することが好ましい。
上記の要件を満足する色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系各色素、及び金属錯体化合物などが挙げられる。
色素層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、溶剤塗布などの通常の手段によって行なうことができる。塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶剤に溶解して、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法で行なうことができる。
【0037】
用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
色素層の膜厚は、100Å〜10μm、好ましくは100〜2000Åが適当である。
【0038】
光吸収層として機能しない下引層又は上引層としては(下引層又は上引層の一方が光吸収層として機能する場合の、他方の下引層又は上引層を指す)、金属又はセラミックスが好ましい。
この金属又はセラミックスは、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、有機材料層との屈折率差のある材料を用いることが好ましい。
有機材料層を2つの層(下引層と上引層)で挟む構造であって、入射レーザ光に対し手前側の層に光吸収能がある場合(図9や図12)には、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、入射レーザ光に対し奥側の層は金属であることが好ましい。
逆に、有機材料層を2つの層(下引層と上引層)で挟む構造であって、入射レーザ光に対し奥側の層に光吸収能がある場合(図10や図13)には、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、入射レーザ光に対し手前側の層は、記録再生波長に対し吸収係数が小さな(0.02以下程度)セラミックスであることが好ましい。
上記金属としては、Au、Al、Cu、Cr、Ag、Ti及びこれらの合金からなる群より選択される金属が好ましく、上記記録再生波長(ここでは青色領域近傍)に対し吸収係数が小さなセラミックスとしては、前述したセラミックスやZnS・SiO等が好ましい。
これらの材料は、一般に真空蒸着又はスパッタリング法により50〜5000Å、好ましくは50〜3000Åの厚さで形成される。
【0039】
反射層は、記録又は再生時に高反射率を得るためのものであり、簡単に変形しないように、熱伝導率が大きく、反射率が大きい金属、例えばAu、Al、Cu、Cr、Ag、Ti及びこれらの合金からなる群より選択される金属で形成することが好ましい。
膜厚は50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åとする。
反射層の形成には、一般に真空蒸着又はスパッタリング法が用いられる。
【0040】
カバー層は、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合に必要となる。
例えば高NA化すると、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにしている。
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射膜を設け、更にこの上に、光を透過する薄膜である光透過性のカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射膜を設け、その上に記録膜を形成して記録層とし、更にこの上に光透過性を有するカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。
このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成するのが一般的である。
【0041】
続いて、有機材料層の吸収係数を増加させて記録を行う場合、及び任意の光記録媒体構成層に低屈折率部を形成させて記録を行う場合の態様について、図6〜図13を参照しつつ説明する。なお、図6〜図13には基板やカバー層に溝が形成されていないが、実際は基板やカバー層にプレピット部や溝が形成されていても構わない。
図6は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示すものであり、基板上に下引層、有機材料層が順次設けられた構造を有する。この構造では、下引層に光吸収機能を持たせる。
また、この構造では、(1)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させ、かつ該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、下引層の有機材料層へ向かう方向への変形により記録が行なわれるか〔図14(a)〜(c)参照〕、或いは、(2)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって、例えば有機材料層や基板に低屈折率部を形成させることで記録が行なわれる〔図15(a)〜(c)参照。図中の斜線部分は、低屈折率部を示す)。
【0042】
図7は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の他の例を示すものであり、基板上に有機材料層、上引層が順次設けられた構造を有する。この構造では、上引層に光吸収機能を持たせる。
また、この構造では、(1)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させ、かつ該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、上引層の有機材料層へ向かう方向への変形により記録が行なわれるか、或いは、(2)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって、例えば有機材料層や基板に低屈折率部を形成させることで記録が行なわれる。
【0043】
図8は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の更に他の例を示すものであり、基板上に下引層、有機材料層、上引層が順次設けられた構造を有する。この構造では、下引層又は上引層に光吸収機能を持たせる。
また、この構造では、(1)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層又は上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させ、かつ該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、下引層と上引層の少なくとも一方の有機材料層へ向かう方向への変形により記録が行なわれるか〔図14(a)〜(c)参照〕、或いは、(2)基板側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層又は上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって、例えば有機材料層や基板に低屈折率部を形成させることで記録が行なわれる〔図15(a)〜(c)参照。図中の斜線部分は、低屈折率部を示す〕。
図9は、図8の層構成の具体例を示す図であり、基板上に光吸収層として機能する下引層(例えばSiC)、有機材料層、上引層(例えばAg)が順次設けられた構造を有する。
図10は、図8の層構成の他の具体例を示す図であり、基板上に下引層(例えばZnS・SiO)、有機材料層、光吸収層として機能する上引層(例えばSiC)が順次設けられた構造を有する。
【0044】
図11は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の更に他の例を示すものであり、基板上に下引層、有機材料層、上引層、カバー層が順次設けられた構造を有する。この構造では、下引層又は上引層に光吸収機能を持たせる。
また、この構造では、(1)カバー層側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層又は上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させ、かつ該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、下引層と上引層の少なくとも一方の有機材料層へ向かう方向への変形により記録が行なわれるか〔図14(a)〜(c)参照〕、或いは、(2)カバー層側からのレーザ光照射により光吸収機能を有する下引層又は上引層(光吸収層)が発熱し、この熱によって、例えば有機材料層や基板に低屈折率部を形成させることで記録が行なわれる〔図15(a)〜(c)参照。図中の斜線部分は、低屈折率部を示す〕。
図12は、図11の層構成の具体例を示す図であり、基板上に下引層(例えばAg)、有機材料層、光吸収層として機能する上引層(例えばSiC)、カバー層が順次設けられた構造を有する。
図13は、図11の層構成の他の具体例を示す図であり、基板上に光吸収層として機能する下引層(例えばSiC)、有機材料層、上引層(例えばZnS・SiO)、カバー層が順次設けられた構造を有する。
【0045】
本発明では、有機材料層の吸収係数の増加や、任意の光記録媒体構成層の低屈折率部の形成により記録部を形成するが、任意の光記録媒体構成層の変形を併用することも可能である。ここで任意の光記録媒体構成層の変形とは、単に、任意の光記録媒体構成層が変形することだけを意味するものでなく、任意の光記録媒体構成層で発生する各種状態変化(溶融、拡散、構造変化、凝集状態変化等)に伴う微小な変形を含める。また、図14や図15に示す変形形態は本発明の一例を示すものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図15に示した低屈折率部は、全ての層に形成されていてもよいし、例えば2つの層に低屈折率部が形成される場合、一方は低屈折率部であり(空洞化していない部分)、他方は空洞部であってもよい。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
実施例1
案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法により膜厚10nmのSiC層(光吸収層)を設け、その上に下記〔化1〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し、更にその上にスパッタ法で膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した。
なお、レーザ光波長405nmにおける〔化1〕の複素屈折率は、1.485−i0.069であり、従来の追記型光記録媒体に用いる有機材料に要求される複素屈折率に対し、著しく劣ったものである(例えばDVD−Rに用いられている色素の、記録再生波長近傍での複素屈折率は、2.5−i0.10程度である)。
【0048】
【化1】
Figure 2004213745
【0049】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
Figure 2004213745
その結果は、下記〔表1〕に示す通りであり、記録再生波長での吸収係数の増加(Ag反射層を剥がして未記録部と記録部を溶剤で洗い流し、吸収スペクトルを測定した結果、405nm近傍の吸収係数が約2.5倍増加していることが確認できた)、及びSiC層の有機材料層へ向かう方向への変形による記録が行われ(Ag層と色素層を取り除き、AFMによりSiC層の表面を測定した結果、SiC層が有機材料層側へ変形していることが確認できた)、短マーク、長マーク共に、変調度が十分大きく、非常に明瞭な信号が得られた。
【0050】
【表1】
Figure 2004213745
【0051】
比較例1
案内溝(溝深さ150nm)を有するポリカーボネート基板上に下記〔化2〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し(平均膜厚100nm)、更にその上に、スパッタ法により、膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した(従来の層構成を青色領域でも適用した例)。
なお、レーザ光波長405nmにおける〔化2〕の複素屈折率は、2.285−i0.069であり、従来の追記型光記録媒体に用いる有機材料に要求される複素屈折率に対し、比較的近い複素屈折率を有する(例えばDVD−Rに用いられている色素の、記録再生波長近傍での複素屈折率は、2.5−i0.10程度である)。
【化2】
Figure 2004213745
【0052】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
Figure 2004213745
その結果、上記〔表1〕に示す通り、長マークでは、実施例1よりはやや劣るものの、比較的大きな変調度が得られたが、短マークでは、実施例1と異なり、十分な信号が得られず(振幅の小さい信号しか得られず)、またマーク長に拘わらずノイズの多い信号しか得られなかった。また、ジッタ(σ/Tw)の測定が不可能であった。
更に、案内溝(溝深さ150nm)を有するポリカーボネート基板に代えて、実施例1と同様に、案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に〔化2〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し(平均膜厚50nm)、更にその上に、スパッタ法により、膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成し、上記と同様の記録条件で記録を行ったが、良好な記録はできなかった。
【0053】
以上の実施例1と比較例1から、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の有機材料からなる追記型光記録媒体の実現に対し非常に有効であることが確認できた。
また、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に対し非常に有効であることが確認できた。
【0054】
実施例2
案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法により膜厚13nmのSiC層(光吸収層)を設け、その上に下記〔化3〕で示される化合物のCo錯体からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し、更にその上にスパッタ法で膜厚100nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した。
なお、レーザ光波長405nmにおける〔化3〕で示される化合物のCo錯体からなる有機材料の複素屈折率は、従来の追記型光記録媒体に用いる有機材料に要求される複素屈折率に対し、著しく劣ったものである(例えばDVD−Rに用いられている色素の、記録再生波長近傍での複素屈折率は、2.5−i0.10程度である)。
【化3】
Figure 2004213745
【0055】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、下記の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
その結果、図16に示すような、良好なジッタ特性を得ることができた。
Figure 2004213745
この光記録媒体について、7.5mWで記録された部分をFIB(集束イオンビーム加工装置)で断面を切断し、TEMで観察したところ、図17に示すように、色素層内に空洞部が発生していることが確認できた(本発明の記録原理の確認)。
次いで、9.0mWで記録された部分をFIB(集束イオンビーム加工装置)で断面を切断し、TEMで観察したところ、図18に示すように、色素層内に空洞部が発生していると共に、基板内に低屈折率部(密度が低下した部分)が発生していることが確認できた(本発明の記録原理の確認)。
更に、9.5mWで記録された部分をFIB(集束イオンビーム加工装置)で断面を切断し、TEMで観察したところ、図19に示すように、基板内に空洞部が発生していることが確認できた(本発明の記録原理の確認)。
【0056】
実施例3
ポリカーボネート基板上に、前記〔化1〕で示される色素からなる記録層、膜厚150nmのAg反射層を順次積層した従来型の光記録媒体(DVD−R)と、ポリカーボネート基板上に、膜厚10nmのSiC層(光吸収層)、前記〔化1〕で示される色素からなる記録層、膜厚150nmのAg反射層を順次積層した光記録媒体について、各光記録媒体の反射率:Rと吸収率:A(透過率をTとした場合、A=1−T−R)を計算した。なお、〔化1〕で示される色素は、DVD−Rに対応した色素である。
図20は、本発明の記録媒体における青色レーザ波長領域での反射率を計算した結果であり(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)、図21は、従来型の光記録媒体(DVD−R)における赤色レーザ波長領域での反射率を計算した結果である(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)。
図22は、本発明の記録媒体における青色レーザ波長領域での吸収率を計算した結果であり(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)、図23は、従来型の光記録媒体(DVD−R)における赤色レーザ波長領域での吸収率を計算した結果である(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)。
その結果、本発明の光記録媒体は、反射率と吸収率の等高線が波長軸(横軸)に対して平行に広がっており、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化しないことが確かめられた。
一方、従来型の光記録媒体(DVD−R)では、反射率と吸収率の等高線が波長軸(横軸)に対して傾いて広がっており、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化することが確かめられた。
【0057】
以上説明したように、本発明の光記録媒体の層構成によれば、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化しないため、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体を実現できることが確認できた。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、青色レーザ波長対応で高密度化を図ることが可能な有機材料層を有する追記型光記録媒体、転写性のよい浅溝基板が利用可能な有機材料層を有する追記型光記録媒体、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体を容易かつ安価に提供できる。
また、カバー層を有する層構造の場合には、基板よりも非常に薄いカバー層を用いることにより、記録再生を高NA(例えば0.85)レンズを用いて行なうことが出来るので、一層高密度記録が可能な追記型光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光記録媒体の層構成を説明するための図である。
【図2】従来の光記録媒体の記録原理を説明するための図である。
【図3】本発明の光記録媒体の記録原理を説明するための図である。
【図4】本発明の光記録媒体に用いる有機材料層の特性を説明するための図である。
【図5】本発明の光記録媒体に用いる有機材料層の特性を説明するための図である。
【図6】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図7】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図8】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図9】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図10】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図11】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図12】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図13】本発明の光記録媒体の層構成例を示す図である。
【図14】本発明の光記録媒体の記録原理を説明するための図である。
(a) 下引層を有機材料層に向かう方向へ変形させた状態を示す。
(b) 上引層を有機材料層に向かう方向へ変形させた状態を示す。
(c) 下引層及び上引層を有機材料層に向かう方向へ変形させた状態を示す。
【図15】本発明の光記録媒体の記録原理の、他の例を説明するための図である。
(a) 有機材料層に低屈折率部を形成させた状態を示す。
(b) 基板に低屈折率部を形成させた状態を示す。
(c) 有機材料層と基板に低屈折率部を形成させた状態を示す。
【図16】実施例の光記録媒体に対し記録を行った時のジッタ特性を示す図である。
【図17】実施例の光記録媒体に対し、記録部をTEMにより観察した図である。
【図18】実施例の光記録媒体に対し、記録部をTEMにより観察した図である。
【図19】実施例の光記録媒体に対し、記録部をTEMにより観察した図である。
【図20】本発明の光記録媒体について、反射率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図21】従来型の光記録媒体(DVD−R)について、反射率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図22】本発明の光記録媒体について、吸収率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図23】従来型の光記録媒体(DVD−R)について、吸収率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下引層
3 有機材料層
4 上引層
5 カバー層
6 光吸収層
7 反射層

Claims (14)

  1. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加により、及び、該状態変化に伴う有機材料層の体積減少による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の、有機材料層へ向かう方向への変形により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  2. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって、少なくとも光吸収層及び/又は有機材料層を含む光記録媒体構成層に状態変化を生じ、該状態変化による低屈折率部の発生により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  3. 低屈折率部が空洞部であることを特徴とする請求項2記載の追記型光記録媒体。
  4. 低屈折率部又は空洞部を形成する光記録媒体構成層が、有機材料層及び/又は基板であることを特徴とする請求項2又は3記載の追記型光記録媒体。
  5. 基板上に、光吸収層、有機材料層、反射層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  6. 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  7. 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  8. 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  9. 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  10. 基板上に、反射層、有機材料層、光吸収層、記録再生波長に対し透明なカバー層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  11. 光吸収層がセラミックス、半金属、金属、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  12. 光吸収層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項11記載の追記型光記録媒体。
  13. 光吸収層が金属微粒子からなることを特徴とする請求項11記載の追記型光記録媒体。
  14. 波長350〜500nmの光により記録再生可能であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の追記型光記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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