JP2004212327A - 酸素ポンプ素子およびそれを用いた酸素ポンプ装置 - Google Patents

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祐 福田
Takahiro Umeda
孝裕 梅田
Akihiro Umeda
章広 梅田
Takeshi Nagai
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Abstract

【課題】酸素ポンプ素子の電極膜は、面方向での電気抵抗が高く、電圧降下により、電極膜面全体が酸素イオンの輸送に有効に機能しないものであった。
【解決手段】酸素イオン伝導性基板21の両面に、酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子とこの金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子から構成される電極膜22を設けることにより、金属酸化物粒子が酸素分子との電極反応活性化させることができるとともに、電極膜22の面方向での電圧降下を抑制し、電極膜22の面全体を電極として機能させることができるので、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性が向上し、電極膜22の自己発熱による温度分布を少なくすることができ、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が防止され、優れた耐久性を実現することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸素イオン伝導体を用いた酸素ポンプ素子およびそれを用いた酸素ポンプ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の酸素ポンプ素子および装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。図6はその構成を示したものであり、1は筐体、2はアルミナなどの多孔質基板3に形成された第1電極4と、酸素イオン伝導体の薄膜5と、薄膜5に形成された第2電極6とから構成される酸素ポンプ素子であり、第1電極4は白金微粒子を多孔質基板3に、第2電極6は白金微粒子を酸素イオン伝導体の薄膜5に結合して得られる薄膜を形成した構成としている。7はアルミナ基板などの絶縁性基板8上に導電性ペーストをスクリーン印刷でパターン形成してなるヒータ印刷膜9から構成される加熱手段である。この加熱手段7は、筐体1に内包されておらず大気に解放された状態で配置されている。
【0003】
この構成において、加熱手段7によって酸素ポンプ素子2を酸素ポンプとして作動する温度に加熱し、第1電極4をカソード、第2電極5をアノードとして両電極4、5間に直流電圧を印加すると、矢印で示すように、第1電極4に解離吸着された空気中の酸素は、酸素イオンとして酸素イオン伝導体の薄膜5中を移動し第2電極6に運ばれ、酸素分子となって大気中に放出される。これによって、筐体1に取り付けられた容器内の酸素濃度を減少させることができるというものである。
【0004】
また、従来の酸素ポンプ素子としては、先のものとは別な構成のものも知られている(例えば、特許文献1参照)。図7はその構成を示したものであり、10は酸素イオン伝導体である固体電解質層、11は電極であり、固体電解質層10とともに酸素ポンプ素子を構成している。電極11は固体電解質層10の両面にそれぞれ1層が形成されている。電極11は白金などの粒子を混合したペーストをスクリーン印刷などの方法を用いて塗布し、乾燥、焼成して形成されている。この酸素ポンプ素子は、酸素ポンプ装置に組み込まれ、先の酸素ポンプ装置と同様に作用する。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−23525号公報
【特許文献2】
特開平11−94792号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の白金微粒子による薄膜やスクリーン印刷による焼成膜で構成される電極は、膜の厚さが数十μm前後で、酸素分子との電極反応を活性化するために多孔質構造となっており、電気抵抗が高くなっている。このような電極では、例えば、電極の外周部から直流電圧を印加した場合、電極の中央部は電気抵抗によって電圧が降下するため、酸素分子との電極反応(酸素の解離吸着とイオン化)が低下し、酸素イオンの輸送量が少なくなるという問題があった。特に、酸素ポンプ素子が大きい場合は、電極面積が大きくなるので電圧降下が著しく大きくなり、電極面全体を有効に機能させることができなくなる。また、電圧降下を防止するため、白金微粒子の電極膜を厚くすると電極膜自身の多孔質項構造が失われ、酸素分子との電極反応が低下し、全体として酸素イオンの輸送量が少なくなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の酸素ポンプ装置の構成では、酸素ポンプ素子2と加熱手段7が大気に解放された状態にあるので、加熱手段7からの熱エネルギーは酸素ポンプ素子2だけでなく大気中の空気の加熱にも使われ、その結果、熱効率が悪くなり、酸素ポンプ素子を作動させる温度に昇温させるのに必要な加熱手段7の消費電力が高くなるとともに、前述した電極面の電圧降下の問題と合わせて酸素ポンプ素子の酸素イオンの輸送効率が悪いという課題を有していた。また、図に示すように、加熱手段7は酸素ポンプ素子2の上部に配置されているので、酸素ポンプ素子2の加熱は輻射熱がほとんどで、加熱された空気の対流熱を利用できないという欠点を有する。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電極面の電気抵抗を小さくして印加する電圧の降下を抑制するとともに、酸素分子との電極反応をより高めることにより、電極面全体を有効に機能させる酸素ポンプ素子と、加熱手段からの熱を効率よく酸素ポンプ素子に伝達し、加熱に必要な電力を低減する酸素ポンプ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の酸素ポンプ素子は、酸素イオン伝導性基板と、前記酸素イオン伝導性基板の両面に形成された、主成分が酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と前記金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子から構成される電極膜とからなるものであり、酸素ポンプ装置はこの酸素ポンプ素子を用いたものである。
【0010】
このように、電極膜に酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子とこの金属酸化物粒子より導電性の高い金属粒子が存在することにより、解離吸着作用を有する金属酸化物粒子が酸素分子の原子化反応を活性化するとともに、金属粒子が電極膜の面方向での導電性を高める。このことにより、電極膜に印加された電圧の降下が抑制され、電極膜全体に存在する金属酸化物粒子に電圧を供給することができるので、金属酸化物粒子で原子化された酸素のイオン化反応が活性化され、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を向上させることができる。また、電極膜での電圧降下が抑制できることにより、電極の自己発熱による温度分布を少なくすることができ、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が抑制され、優れた耐久性を実現することができる。同時にこの酸素ポンプ素子を用いて、加熱に必要な電力を低減する酸素ポンプ装置が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、酸素イオン伝導性基板と、前記酸素イオン伝導性基板の両面に形成された、主成分が酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と前記金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子から構成される電極膜とからなる酸素ポンプ素子とすることにより、解離吸着作用を有する金属酸化物粒子が酸素分子の原子化反応を活性化するとともに、金属粒子が電極膜の面方向での導電性を高める。このことにより電極膜に印加された電圧の降下が抑制され、電極膜全体に存在する金属酸化物粒子に電圧を供給することができるので、金属酸化物粒子で原子化された酸素のイオン化反応が活性化され、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を向上させることができる。また、電極膜での電圧降下が抑制できることにより、電極の自己発熱による温度分布を少なくすることができ、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が抑制され、優れた耐久性を実現することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子は、化学式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる請求項1に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、酸素分子の電極反応を高めるとともに高い耐熱性を有するため、優れた酸素イオン伝導性を実現でき、その性能を長期間維持することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、Aサイトにランタン、サマリウムの少なくとも1種と、Bサイトにコバルト、鉄、マンガンの少なくとも1種から構成される請求項2に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、酸素分子の電極反応を一層高めることができるので、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、Aサイトの一部をストロンチウムで置換してなる請求項2または3に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、請求項3に記載の発明と同様、酸素分子の電極反応を一層高めることができるので、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を向上させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子は、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケルのいずれか1種からなる請求項1に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、電気抵抗が低く、耐熱性の高い電極膜を得ることができ、優れた酸素ポンプの性能と耐久性を実現することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、電極膜は、少なくとも酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と前記金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子と金属酸化物からなるバインダーの混合物を焼成して得られる焼成膜で構成される請求項1に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、電極膜は優れた密着性を実現することができるので、ヒートショックなどの耐熱衝撃性に優れた酸素ポンプ素子を提供することができ、かつ長期にわたり酸素ポンプとしての性能を維持することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、金属酸化物からなるバインダーは、主成分が酸化ビスマスからなる請求項6に記載の酸素ポンプ素子とすることにより、電極膜で原子化、イオン化された酸素が酸素イオン伝導性基板への移動の抵抗を低くすることができ、酸素イオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素ポンプ素子と、前記酸素ポンプ素子における酸素イオン伝導性基板の両面の電極を区画する区画手段と、前記酸素ポンプ素子を加熱する少なくとも一つの加熱手段と、前記酸素ポンプ素子と前記区画手段と前記加熱手段を囲むように配置された通気機能を有する断熱材とで構成される酸素ポンプ装置とすることにより、酸素ポンプ素子と加熱手段が大気に直接触れることがないので、加熱手段による酸素ポンプ素子への熱効率が向上し、酸素ポンプ素子の加熱に必要な電力を小さくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。また、酸素ポンプ素子全体を均一に加熱することができるので、酸素ポンプ素子の破損防止効果が一層向上し、電極膜での電圧降下の抑制効果と併せて酸素ポンプ素子の優れた性能を長期にわたり維持することができる。また、酸素ポンプ素子、区画手段、加熱手段が通気機能を有する断熱材で囲まれた簡素な構造とすることができるので、酸素ポンプの小型化が可能となり、機器への実装を容易にすることができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施例1)
図1〜図4は、本発明の実施例1における酸素ポンプ素子とその関連手段を示すものである。
【0021】
図1において、21は酸素イオン伝導性基板であり、イットリウムをドープしたジルコニア(YSZ)系、サマリウムをドープしたセリア系(SDC)、ランタンガレート系の材料が用いられる。22は酸素イオン伝導性基板21の両面に形成した電極膜であり、酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子とこれら粒子間や酸素イオン伝導性基板21との密着性を強固にするための金属酸化物からなるバインダーを混合したペーストを印刷、焼成した多孔質の膜で構成される。電極膜22には、酸素ポンプ駆動電源(図示せず)からの電圧を酸素ポンプ素子に印加するためのリード部材23がそれぞれ接続されている。
【0022】
図2に示すように、電極膜22は、少なくとも酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子24、金属酸化物粒子24よりも導電性の高い金属粒子25、金属酸化物からなり主成分が酸化ビスマスからなるバインダー26で構成され、それらの粒子が分散した状態となっている。
【0023】
以上のように構成された酸素ポンプ素子について、以下その動作、作用を説明する。
【0024】
酸素ポンプ素子を加熱手段によって酸素ポンプとして作動する温度に加熱する。次に酸素ポンプ駆動電源からリード部材23を介して電極膜22の一方をカソード、他方をアノードとして電圧が印加される。酸素イオン伝導性基板21が500〜800℃に昇温すると、カソード側の電極膜22では以下の電極反応が起こると考えられる。カソード側の空間に存在する酸素分子が多孔質の電極膜22の多孔質の膜を拡散し、酸素分子は主として電極膜22に存在する酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子24によって解離吸着され、原子化される。電極膜22は金属酸化物粒子24よりも導電性に優れた金属粒子25を通して駆動電源から電圧が印加されているので、金属酸化物粒子24に吸着している酸素原子および金属酸化物粒子24よりも導電性に優れた金属粒子25に拡散した酸素原子は電子をもらって酸素イオンとして酸素イオン伝導性基板21に取り込まれる。一方、酸素イオンは酸素イオン伝導性基板21中を移動し、アノード側の電極膜22に到達する。電極膜22に到達した酸素イオンはカソード側と逆の電極反応により酸素分子となり、電極膜22の多孔質の膜を拡散し外部空間に放出される。
【0025】
従来例でも述べたように、白金などの金属微粒子を用いたスクリーン印刷などによる電極膜は、膜の厚さが数十μm以下と薄く、かつ酸素分子との電極反応を活性化するために多孔質構造となっている。このため、面方向の電気抵抗が高く、例えば電極膜の外周部から直流電圧を印加した場合、電極膜の中央部は電気抵抗によって電圧が降下し、酸素分子との電極反応が低下して酸素イオンの輸送量が少なくなり、電極面全体が有効に機能しないという問題がある。
【0026】
しかしながら、本実施例の電極膜22は、金属酸化物粒子24よりも導電性の高い金属粒子25を含むことにより、電極膜22の面方向での電気抵抗を低くすることができるので、電極膜22に印加した電圧の降下を抑制することができる。したがって、酸素分子との電極反応が電極膜22の面全体で起きるため、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を高くすることができ、酸素ポンプとしての性能を向上させることができる。また、電極膜22の面方向の電圧降下を抑制できることにより、電極膜22自身の自己発熱による温度分布を少なくすることができるので、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が抑制され、優れた耐久性を実現することができる。また、電極膜22は酸素分子の原子化などの電極反応性を高くする金属酸化物粒子24を含むことにより、酸素分子の原子化反応を活性化することができるので、より高い酸素イオン伝導性を実現することができる。
【0027】
次に、本実施例の具体的効果について図3、図4を用いて説明する。
【0028】
酸素イオン伝導性基板21として、直径21mm、厚さ0.3mmのランタンガレート系固体電解質( (La0.8SrSr0.2)(Ga0.8Mg0.2)O )を用い、この酸素イオン伝導性基板21の両面に、酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子24としてペロブスカイト型複合酸化物(Sm0.5Sr0.5CoO)粒子、この金属酸化物粒子24よりも導電性の高い金属粒子25として金(Au)の微粒子、有機溶剤、金属酸化物からなるバインダー26として酸化ビスマス(Bi)の粒子、セルロース系ビヒクルを用い、これを混合したペーストをスクリーン印刷により印刷膜を形成し、乾燥、焼成することにより直径16mmで膜厚10〜20μmの電極膜22を形成した。このとき、ペロブスカイト型複合酸化物粒子と金微粒子は、1:1の比率とした。
【0029】
図3に示すように、本実施例の酸素ポンプ素子のV−I特性を測定するために、電源27からの直流電圧は、リード部材23介して電極膜22に印加される構成とした。
【0030】
以上のように構成した酸素ポンプ素子について、図3において直流電圧を印加し、V−I特性を評価した。図4は本実施例である酸素ポンプ素子のV−I特性を示し、比較のため、本実施例の電極膜22の代わりにペロブスカイト型複合酸化物(Sm0.5Sr0.5CoO)粒子と酸化ビスマスの粒子からなる電極膜(比較例1)、金の微粒子と酸化ビスマスの粒子からなる電極膜(比較例2)とした構成の酸素ポンプ素子のV−I特性も示している。この図で明らかなように、本実施例の酸素ポンプ素子は、電圧に対して酸素イオンによるイオン電流が比較例1および比較例2の酸素ポンプ素子よりも大きくなっている。この理由は、導電性の高い金微粒子が電極膜22の面方向での電気抵抗を低減し、印加された電圧の降下が抑制されることにより、電極膜22の面全体が有効に機能していること、ペロブスカイト型複合酸化物(Sm0.5Sr0.5CoO)粒子が電極反応を活性化していることの相乗効果によるものと考えられる。
【0031】
金属酸化物粒子24よりも導電性の高い金属粒子25としては、金の他に白金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケルがあげられ、いずれか1種を用いることにより、金とほぼ同等の効果を得ることができるとともに、耐熱性の高い電極膜を得ることができるので、優れた酸素ポンプの性能と耐久性を実現することができる。
【0032】
また、電極膜22を少なくとも酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子24と、金属酸化物粒子24よりも導電性の高い金属粒子25と、金属酸化物からなるバインダー26の混合物を焼成して得られる焼成膜で構成することにより、優れた密着性を実現することができるので、ヒートショックなどの耐熱衝撃性に優れた酸素ポンプ素子を提供することができ、かつ長期にわたり酸素ポンプとしての性能を維持することができる。
【0033】
また、金属酸化物からなるバインダー26として酸化ビスマスを用いることにより、電極膜22で原子化、イオン化された酸素が酸素イオン伝導性基板21への移動の抵抗を低くすることができるので、酸素イオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0034】
また、解離吸着作用を有する金属酸化物粒子24としては、実施例で用いたペロブスカイト型構造を有する複合酸化物が酸素分子との電極反応高めるとともに高い耐熱性を有するため、優れた酸素イオン伝導性を実現できるとともにその性能を長期間維持することができる。
【0035】
特に、ペロブスカイト型複合酸化物の中でもAサイトにランタン、サマリウムの少なくとも1種と、Bサイトにコバルト、鉄、マンガンの少なくとも1種で構成されるもの、また、Aサイトの一部をストロンチウムで置換したものが優れた導電性、酸素との電極反応性を有している。
【0036】
(実施例2)
図5は、本発明の実施例2における酸素ポンプ装置を示すものである。実施例1と同一要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図において、28は酸素ポンプ素子であり、酸素ポンプ素子28は実施例1で述べた構成のものが用いられる。29は酸素イオン伝導性基板21の両面に形成している電極膜22を区画する区画手段であり、電極膜22に対向する開口部を有しており、酸素イオン伝導性基板21とガラスなどの耐熱性を有する接着材料によって接着されている。区画手段29としては、ニッケル、鉄−クロム合金、チタン、金、白金などの金属板もしくは箔、アルミナ、ムライトなどのセラミック板が用いられるが、酸素イオン伝導性基板21との熱膨脹差が少なく、熱歪みが小さいことが要求されることから、ニッケル、鉄−クロム合金の金属箔が適用される。30は酸素ポンプ素子28の下部に設けられ酸素ポンプ素子28を加熱する少なくとも一つの加熱手段であり、加熱手段30に電力を印加する加熱用電源31にリード線32を介して接続されている。加熱手段30としては、鉄−クロム合金、ニッケル−クロム合金などの電熱線や箔が用いられる。
【0038】
33は通気機能を有する断熱材であり、多数の連通孔を有する多孔体で構成され、酸素ポンプ素子28、区画手段29、加熱手段30の周囲を囲むように配置されており、大気からの空気と大気への酸素の流出が可能となるように開口部を設けた筐体34に収納されている。この通気機能を有する断熱材33としては主成分が無機酸化物のシリカ粒子の集合体が用いられる。35は電極膜22に所定の電圧を印加する酸素ポンプ駆動電源である。
【0039】
以上のように構成された酸素ポンプ装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0040】
まず、加熱用電源31によって電力が加熱手段30に印加されると、加熱手段30は酸素ポンプ素子28を加熱する。次に酸素ポンプ素子28に酸素ポンプ駆動電源35からリード部材23を介してそれぞれの電極膜22に所定の電圧が印加される。本実施例の場合、下方の電極膜22をカソード、上方の電極膜22をアノードとしている。この状態で加熱手段30によって酸素ポンプ素子28が500〜800℃に昇温すると、カソード側の空間に存在する酸素分子が電極膜22で解離吸着し、酸素イオンとして酸素イオン伝導性基板21に取り込まれてアノード側の電極膜22に運ばれる。アノード側の電極膜22に到達した酸素イオンは酸素分子となり、電極膜22から外部空間に放出される。カソード側とアノード側の空間は区画手段29で分離されているので、常にカソード側の空間に存在する酸素分子をアノード側の空間に輸送することができる。カソード側の空間の酸素分子がアノード側の空間に輸送されると、カソード側の酸素濃度が減少するが、大気中の酸素分子を含む空気が通気機能を有するカソード側の断熱材33の連通孔を拡散し、カソード側の空間に流入する。一方、アノード側の空間からは電極膜22から放出された酸素分子がアノード側の通気機能を有する断熱材33を拡散し、大気中に流出する。酸素ポンプ素子28が動作している間、図中矢印で示すように酸素分子が輸送され続ける。このとき、カソード側に密閉となるように容器を取り付けると、容器内の酸素濃度を下げることができる。
【0041】
以上のように、通気機能を有する断熱材33が酸素ポンプ素子28と空間を区画する区画手段29と酸素ポンプ素子28を加熱する加熱手段30とを囲むように配置された構成とすることにより、酸素ポンプ素子28と加熱手段30が大気に直接触れることがないので、熱効率が向上し、酸素ポンプ素子28の加熱に必要な電力を小さくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。また、酸素ポンプ素子28全体を均一に加熱することができるとともに、電極膜22の電圧降下の抑制作用により電極膜22の自己発熱による温度分布を抑制することができるので、酸素ポンプ素子28のクラックなどによる破損が防止され、酸素ポンプ装置の耐久性、信頼性を向上させることができる。また、酸素ポンプ素子28、区画手段29、加熱手段30が通気機能を有する断熱材33で囲まれた簡素な構造とすることができるので、酸素ポンプの小型化を図ることができ、機器への実装を容易にすることができる。
【0042】
また、特に本実施例のように通気機能を有する断熱材33を多数の連通孔を有する多孔質体で構成することにより、空気や酸素分子が十分な通気量を確保することができるとともに、酸素ポンプ素子28へ導入する空気は多孔質体の連通孔を通過しながら徐々に加熱されるので、酸素ポンプ素子28の冷却が抑制され、加熱手段30の熱効率をさらに高めることができる。
【0043】
なお、本実施例の酸素ポンプ装置は、食品保存庫などの低酸素雰囲気を必要とする機器や、逆に大気中よりも高い酸素濃度を必要とする機器に適用される。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明の酸素ポンプ素子によれば、電極膜の面全体で酸素分子との電極反応を起こさせることができるので、酸素ポンプ素子の酸素イオン伝導性を向上させることができ、酸素ポンプとしての性能を向上させることができるとともに、電極膜の面での電圧降下を抑制できることにより、電極膜の自己発熱による温度分布を少なくすることができるので、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が抑制され、優れた耐久性を実現することができる。
【0045】
また、酸素ポンプ装置としては加熱手段による酸素ポンプ素子への熱効率を向上させることができるので、酸素ポンプ素子の加熱に必要な電力を小さくすることができ、省エネルギー化を図ることができとともに、酸素ポンプ素子全体を均一に加熱することができるので、酸素ポンプ素子のクラックなどの破損が防止され、酸素ポンプ装置の耐久性、信頼性を向上させることができる。また、酸素ポンプ装置を簡素な構造とすることができるので酸素ポンプの小型化を図ることができ、機器への実装を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施例1における酸素ポンプ素子の平面図
(b)(a)におけるA−A線による断面図
【図2】同酸素ポンプ素子における電極膜の拡大断面図
【図3】同酸素ポンプ素子のV−I特性を測定する回路構成図
【図4】同酸素ポンプ素子のV−I特性を示すグラフ
【図5】本発明の実施例2における酸素ポンプ装置の断面図
【図6】従来の酸素ポンプ装置の断面図
【図7】(a)従来における他の酸素ポンプ素子の断面図
(b)(a)におけるB−B線による断面図
【符号の説明】
21 酸素イオン伝導性基板
22 電極膜
24 酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子
25 導電性の高い金属粒子
26 金属酸化物からなるバインダー
28 酸素ポンプ素子
29 区画手段
30 加熱手段
33 通気機能を有する断熱材

Claims (8)

  1. 酸素イオン伝導性基板と、前記酸素イオン伝導性基板の両面に形成された、主成分が酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と前記金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子から構成される電極膜とからなる酸素ポンプ素子。
  2. 酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子は、化学式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる請求項1に記載の酸素ポンプ素子。
  3. ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、Aサイトにランタン、サマリウムの少なくとも1種と、Bサイトにコバルト、鉄、マンガンの少なくとも1種から構成される請求項2に記載の酸素ポンプ素子。
  4. ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物は、Aサイトの一部をストロンチウムで置換してなる請求項2または3に記載の酸素ポンプ素子。
  5. 金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子は、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケルのいずれか1種からなる請求項1に記載の酸素ポンプ素子。
  6. 電極膜は、少なくとも酸素分子の解離吸着作用を有する金属酸化物粒子と前記金属酸化物粒子よりも導電性の高い金属粒子と金属酸化物からなるバインダーの混合物を焼成して得られる焼成膜で構成される請求項1に記載の酸素ポンプ素子。
  7. 金属酸化物からなるバインダーは、主成分が酸化ビスマスからなる請求項6に記載の酸素ポンプ素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素ポンプ素子と、前記酸素ポンプ素子における酸素イオン伝導性基板の両面の電極を区画する区画手段と、前記酸素ポンプ素子を加熱する少なくとも一つの加熱手段と、前記酸素ポンプ素子と前記区画手段と前記加熱手段を囲むように配置された通気機能を有する断熱材とで構成される酸素ポンプ装置。
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JP2015172213A (ja) * 2014-03-11 2015-10-01 国立大学法人九州大学 電気化学セルおよびその製造方法

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