JP2004211850A - 樹脂ブーツ用ブッシュ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂ブーツの円形断面を有する径大側取付部を非円形なアウターケースに対して安定して取り付けることができる樹脂ブーツ用ブッシュを提供する。
【解決手段】円形断面を有する樹脂ブーツ3を非円形なアウターケース14に取り付けるために、アウターケース14と径大側取付部31との間に配される樹脂ブーツ用ブッシュ4であって、前記ブッシュ4はその外周側が略円形状をなし、かつ内周側が前記アウターケース14の外周形状に対応する非円形状をなしており、ブッシュ4の外周上には前記径大側取付部31の内周面35に接触する突条47を全周に設け、前記突条47は、鋸歯形断面を有し、かつ前記鋸歯形断面の斜面49側が前記樹脂ブーツ3の蛇腹部33側に配されている。
【選択図】 図4
【解決手段】円形断面を有する樹脂ブーツ3を非円形なアウターケース14に取り付けるために、アウターケース14と径大側取付部31との間に配される樹脂ブーツ用ブッシュ4であって、前記ブッシュ4はその外周側が略円形状をなし、かつ内周側が前記アウターケース14の外周形状に対応する非円形状をなしており、ブッシュ4の外周上には前記径大側取付部31の内周面35に接触する突条47を全周に設け、前記突条47は、鋸歯形断面を有し、かつ前記鋸歯形断面の斜面49側が前記樹脂ブーツ3の蛇腹部33側に配されている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形断面の樹脂製ブーツを等速ジョイントの非円形なアウターケースに取り付けるための樹脂ブーツ用ブッシュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前輪駆動車などの車両のドライブシャフトには、等速ジョイントが使用されている。この等速ジョイント内部への塵埃や水の侵入防止、及びジョイント内部のグリス等の漏出防止のためのカバー体として、従来より蛇腹状の樹脂ブーツが用いられジョイント内部をシールしている。
【0003】
周方向に凹凸部を交互に有する非円形なアウターケースを備えるトリポートタイプ等の等速ジョイントにおいては、断面略円形を有する樹脂ブーツの径大側取付部をアウターケースに取り付けるために、外周側が略円形状をなし内周側がアウターケース外周の凹凸形状に対応する非円形形状をなしたブッシュをアウターケースと径大側取付部との間に配して用いることがある。
【0004】
上記のブーツとブッシュの組み合わせとして、ブーツの内周側とブッシュの外周側とにそれぞれ複数のリブと溝を設け、この複数のリブと溝とを互いに噛み合わせ一体化することによりブッシュを介してブーツを等速ジョイントに取り付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第6,089,574号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載のブーツ及びブッシュでは、ブーツ内周側及びブッシュ外周側に互いに噛み合う複数のリブと溝とを有することから、そのリブと溝との形状を精度よく成形することが難しいという問題がある。
【0007】
また、このブーツとブッシュでは、所定形状のリブを溝とを有するため、他のブーツやブッシュとの互換性に欠け、製造コストの上昇や部材点数の増加という問題が生じる。
【0008】
さらに、ブーツとブッシュとの組立作業では、ブーツの内周に対してブッシュを挿入する際に、複数のリブと溝とが互いに接触し合うためスムーズな挿入作業が困難であるいう欠点もある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、円形断面を有する樹脂ブーツを等速ジョイントの非円形なアウターケースに対して取り付けるための樹脂ブーツ用ブッシュであり、ブッシュ及びブーツの製造において成形がしやすく、樹脂ブーツとのシール性を確保し、かつブーツ装着時には挿入しやすく、装着後は抜けにくく、さらに部材の共通化をも図ることができる樹脂ブーツ用ブッシュを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の樹脂ブーツ用ブッシュは、周方向に凹凸部を交互に有する非円形なアウターケースに対して、円形断面を有する樹脂ブーツを取り付けるために、前記アウターケースと前記樹脂ブーツの径大側取付部との間に配される樹脂ブーツ用ブッシュであって、前記ブッシュは、その外周側が略円形状をなし、かつ内周側が前記アウターケースの凹凸部を交互に有する外周形状に対応する非円形状をなしており、前記ブッシュの外周上には、前記径大側取付部の内周面に接触する突条を全周に設け、前記突条は、鋸歯形断面を有し、かつ前記鋸歯形断面の斜面側が前記樹脂ブーツの蛇腹部側に配されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の樹脂ブーツ用ブッシュによれば、アウターケースと樹脂ブーツの径大側取付部の間にブッシュを配して径大側取付部外周を締め付け固定することにより、ブッシュ外周上の鋸歯形断面を有する突条が径大側取付部の内周面と全周に渡り接触し、ブッシュと径大側取付部間の密着性を向上してブーツのシール性を確保することができる。
【0012】
また、鋸歯形断面の斜面側が樹脂ブーツの蛇腹部側に配さていることで、樹脂ブーツの装着時にはブーツ内周面が突条に対して抵抗することなく斜面に沿ってスムーズに挿入することができ作業性が向上し、かつ挿入後は突条の先端部が抜けの歯止めとなりブーツが抜けにくくなる。
【0013】
さらに、ブッシュ及び相手側のブーツの嵌合部が簡単な形状によりシール性を得られることから、両者の成形性が容易になると共に、部材の共通化を図ることも可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は樹脂ブーツ3(以下、ブーツという)を樹脂ブーツ用ブッシュ4(以下、ブッシュという)を介してトリポートタイプの等速ジョイント1に取り付けた状態の縦断面図、図2は図1におけるブッシュ4部分の横断面概略図であり、図3はブーツ3装着前のブッシュ4の薄肉部42と径大側取付部31の拡大断面図、図4は図1における薄肉部42の部分拡大断面図である。
【0016】
この等速ジョイント1は、一方のシャフト16にローラ11を持つ3本のトラニオン12を軸直角方向に突設して構成したトリポート13と、他方のシャフト20の端部に設けたアウターケース14とからなり、アウターケース14はその内周にトリポート13と対応する軸方向の3本の摺動溝15を形成するための凹部17と凸部18を交互に有し、ローラ11がこの摺動溝15に嵌め合わされ軸方向の摺動および両シャフトの角度付けを可能にし、エンジンの回転駆動を伝達するように構成されている。
【0017】
ブーツ3は、等速ジョイント1のアウターケース14に取り付けられる円形断面を有する径大側取付部31と、トリポート13側のシャフト16に取り付けられる径小側取付部32と、これら両取付部31,32を連接するテーパ状の蛇腹部33とからなり、これらがポリエステル系熱可塑性エラストマーによりブロー成形によって全体に円形断面かつ略一定厚みに一体成形されたものである。
【0018】
径大側取付部31は、外周にクランプリング28の装着溝34を設け、その内側は平坦な内周面35に形成されている。
【0019】
ブッシュ4は、外周側が径大側取付部31の内周に対応する円形形状であり、内周側はアウターケース14の外周形状に対応する非円形形状をなし、即ちアウターケース14の凹部17に対応する内側への凸状をなす厚肉部41と、凸部18に対応する薄肉部42とを交互に有するリング状に形成されている。
【0020】
図に示すように、ブッシュ4はアウターケース14の凹部17に対して厚肉部41が、凸部18に対して薄肉部42が填め合わされ、その外周にブーツ3の径大側取付部31が嵌合されている。
【0021】
すなわち、ブーツ3は、ブッシュ4がアウターケース14と径大側取付部31との間に配された状態で、径大側取付部31の装着溝34に巻回されたクランプリング28を締め付け固定することによりアウターケース14外周に対して取り付けられ、一方径小側取付部32はシャフト16にクランプリング29により締め付け固定され取り付けられている。
【0022】
図3及び図4に示すように、ブッシュ4の外周上には、径大側取付部31の外周を締め付けることによって径大側取付部31の内周面35に接触する2本の突条47が全周に渡り設けられている。
【0023】
この2本の突条47は、周方向断面が径方向外方に向かいほぼ直立する歯面48と斜面49とからなる鋭角頂点を有する略直角三角形状の鋸歯形状をなすもので、かつ鋸歯形の斜面49側が蛇腹部33側に配されて形成されている。
【0024】
また、ブッシュ4の反蛇腹部側端部の周上には径大側取付部31の位置決めストッパーとしての突起45が、また蛇腹部33側端部にはアウターケース14端部の側面に当接する爪部44が内方に向かって設けられ、ブーツ3及びブッシュ4の装着位置や作業性を向上すると共に装着後のずれを防ぐようになっている。
【0025】
なお、ブッシュ4の内周側にはアウターケース14の周上に設けられたシール用溝19に嵌合する凸条43が設けられ、ブッシュ4の内周側とアウターケース14との間のシール性が確保されている。
【0026】
このブッシュ4は、ブーツ3と同様のポリエステル系、ポリオレフィン系などの熱可塑性エラストマーから、射出成形等の通常の樹脂成形法により成形することができ、凹凸部を交互に有する内周形状のブッシュ4においても成形精度の高い成形品が得られ、相手部材との良好な形状一致性が得られる。また、ブッシュ4の材料としては、ブーツ3とは硬度の異なる樹脂材料を用いてもよい。
【0027】
アウターケース14と径大側取付部31の間にブッシュ4を配した上記構成において、ブッシュ4の硬度がブーツ3と同等或いはそれよりも軟質である場合は、径大側取付部31の外周をクランプリング28により締め付け固定することで、突条47の断面鋸歯形の斜面49側にのみ偏って締め付け荷重がかかるようになり、2本の突条47の斜面49が歯面48側に、すなわち突条47の先端部が反蛇腹部側に向かって圧縮変形される(図5、A部拡大図参照)ように一方向に集中する大きな締め付け圧力が発生することで、2本の突条47と径大側取付部31の内周面35とが全周に渡り高い圧力で密着し、径大側取付部31とブッシュ4との間の良好なシール性を確保することができる。
【0028】
また、クランプリング28による締め付け力を突条47の一方向に集中的に作用させてシール性を得ることができるので、締め付け力を有効に利用することができ過大な締め付け力が不要となり装着作業性を向上することも可能となる。
【0029】
この鋸歯形の突条47は、締め付け圧力が突条47を介してブッシュ4と径大側取付部31の間に均等に発生するように、2本以上の突条を締め付け部の中心に対してブッシュ4の軸方向に対称に設けることがシール性や装着時のバランスを確保する上で好ましい。
【0030】
突条47の鋸歯形断面の斜面49側がブーツ3の蛇腹部33側に配さていることで、ブーツ3の装着時には径大側取付部31の内周面35が突条47の斜面49に沿って滑るようにスムーズに挿入することができ作業性が向上する。
【0031】
また、装着後は突条47の先端部が歯止めの効果を発揮し、ブーツ3の抜けを抑えて装着安定性を向上することができる。
【0032】
また、ブッシュ4の硬度がブーツ3よりも硬い場合は、突条47の鋸歯形断面の先端部分が径大側取付部31の内周面35に対して食い込むように接触し(図6、A部拡大図参照)、径大側取付部31との全周に渡る良好なシール性を確保することができる。
【0033】
この場合も、ブーツ3の装着時には径大側取付部31の内周面35が突条47の斜面49に沿って滑るようにスムーズに挿入することができ、また、装着後は突条47の先端部が内周面35に食い込むことで歯止めとなってブーツ3の抜けを防止することができる。
【0034】
上記ブッシュ4の硬度がブーツ3よりも硬い場合は、1本の突条47をブッシュ4の外周上の全周に設けることで、ブーツ3のシール性と抜け防止の効果を奏することができる。
【0035】
このブッシュ4を用いることで、相手側ブーツ3の径大側取付部31の内周面35が平坦なものでも十分なシール性や装着性を得られるので、径大側取付部31の形状単純化が可能となりブーツ3製造時の成形性を改善することもできる。さらに、ブーツとブッシュとの互換性が得られるようになり、1つのブッシュを共通部材として使用し、部材点数の低減を図ることもできる。
【0036】
なお、上記各実施形態では、ブッシュ4の各薄肉部42に基づいて説明したが、リング状ブッシュの厚肉部やその境界部など他の部位においても上記薄肉部と同様にシール性が確保されるのはもちろんである。
【0037】
また、上記実施形態では、突条47の鋸歯形断面を図面に示すような略直角三角形断面の例に基づいて説明したが、突条断面は先端部が平坦面でなる略台形状のもの、鋸歯形の両側面が斜面で形成されるもの等、を用いることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂ブーツ用ブッシュによれば、等速ジョイントの非円形形状をなすアウターケースに対して、樹脂ブーツの円形断面を有する径大側取付部をその全周に渡り良好なシール性を確保し取り付け、その装着作業性を向上し、ブーツの抜けを防止することができる。また、ブーツやブッシュの成形性がよく製造しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の縦断面図である。
【図2】図1のブッシュ部分の横断面概略図である。
【図3】同実施形態の装着前のブッシュの薄肉部分断面図である。
【図4】図1のブッシュ薄肉部の部分断面図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】図4のA部拡大図である(ブッシュがブーツより硬い場合)。
【符号の説明】
1……等速ジョイント
3……樹脂ブーツ
4……樹脂ブーツ用ブッシュ
14……アウターケース
31……径大側取付部
33……蛇腹部
35……径大側取付部の内周面
47……突条
49……鋸歯形突条の斜面
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形断面の樹脂製ブーツを等速ジョイントの非円形なアウターケースに取り付けるための樹脂ブーツ用ブッシュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前輪駆動車などの車両のドライブシャフトには、等速ジョイントが使用されている。この等速ジョイント内部への塵埃や水の侵入防止、及びジョイント内部のグリス等の漏出防止のためのカバー体として、従来より蛇腹状の樹脂ブーツが用いられジョイント内部をシールしている。
【0003】
周方向に凹凸部を交互に有する非円形なアウターケースを備えるトリポートタイプ等の等速ジョイントにおいては、断面略円形を有する樹脂ブーツの径大側取付部をアウターケースに取り付けるために、外周側が略円形状をなし内周側がアウターケース外周の凹凸形状に対応する非円形形状をなしたブッシュをアウターケースと径大側取付部との間に配して用いることがある。
【0004】
上記のブーツとブッシュの組み合わせとして、ブーツの内周側とブッシュの外周側とにそれぞれ複数のリブと溝を設け、この複数のリブと溝とを互いに噛み合わせ一体化することによりブッシュを介してブーツを等速ジョイントに取り付けるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第6,089,574号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載のブーツ及びブッシュでは、ブーツ内周側及びブッシュ外周側に互いに噛み合う複数のリブと溝とを有することから、そのリブと溝との形状を精度よく成形することが難しいという問題がある。
【0007】
また、このブーツとブッシュでは、所定形状のリブを溝とを有するため、他のブーツやブッシュとの互換性に欠け、製造コストの上昇や部材点数の増加という問題が生じる。
【0008】
さらに、ブーツとブッシュとの組立作業では、ブーツの内周に対してブッシュを挿入する際に、複数のリブと溝とが互いに接触し合うためスムーズな挿入作業が困難であるいう欠点もある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、円形断面を有する樹脂ブーツを等速ジョイントの非円形なアウターケースに対して取り付けるための樹脂ブーツ用ブッシュであり、ブッシュ及びブーツの製造において成形がしやすく、樹脂ブーツとのシール性を確保し、かつブーツ装着時には挿入しやすく、装着後は抜けにくく、さらに部材の共通化をも図ることができる樹脂ブーツ用ブッシュを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の樹脂ブーツ用ブッシュは、周方向に凹凸部を交互に有する非円形なアウターケースに対して、円形断面を有する樹脂ブーツを取り付けるために、前記アウターケースと前記樹脂ブーツの径大側取付部との間に配される樹脂ブーツ用ブッシュであって、前記ブッシュは、その外周側が略円形状をなし、かつ内周側が前記アウターケースの凹凸部を交互に有する外周形状に対応する非円形状をなしており、前記ブッシュの外周上には、前記径大側取付部の内周面に接触する突条を全周に設け、前記突条は、鋸歯形断面を有し、かつ前記鋸歯形断面の斜面側が前記樹脂ブーツの蛇腹部側に配されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の樹脂ブーツ用ブッシュによれば、アウターケースと樹脂ブーツの径大側取付部の間にブッシュを配して径大側取付部外周を締め付け固定することにより、ブッシュ外周上の鋸歯形断面を有する突条が径大側取付部の内周面と全周に渡り接触し、ブッシュと径大側取付部間の密着性を向上してブーツのシール性を確保することができる。
【0012】
また、鋸歯形断面の斜面側が樹脂ブーツの蛇腹部側に配さていることで、樹脂ブーツの装着時にはブーツ内周面が突条に対して抵抗することなく斜面に沿ってスムーズに挿入することができ作業性が向上し、かつ挿入後は突条の先端部が抜けの歯止めとなりブーツが抜けにくくなる。
【0013】
さらに、ブッシュ及び相手側のブーツの嵌合部が簡単な形状によりシール性を得られることから、両者の成形性が容易になると共に、部材の共通化を図ることも可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は樹脂ブーツ3(以下、ブーツという)を樹脂ブーツ用ブッシュ4(以下、ブッシュという)を介してトリポートタイプの等速ジョイント1に取り付けた状態の縦断面図、図2は図1におけるブッシュ4部分の横断面概略図であり、図3はブーツ3装着前のブッシュ4の薄肉部42と径大側取付部31の拡大断面図、図4は図1における薄肉部42の部分拡大断面図である。
【0016】
この等速ジョイント1は、一方のシャフト16にローラ11を持つ3本のトラニオン12を軸直角方向に突設して構成したトリポート13と、他方のシャフト20の端部に設けたアウターケース14とからなり、アウターケース14はその内周にトリポート13と対応する軸方向の3本の摺動溝15を形成するための凹部17と凸部18を交互に有し、ローラ11がこの摺動溝15に嵌め合わされ軸方向の摺動および両シャフトの角度付けを可能にし、エンジンの回転駆動を伝達するように構成されている。
【0017】
ブーツ3は、等速ジョイント1のアウターケース14に取り付けられる円形断面を有する径大側取付部31と、トリポート13側のシャフト16に取り付けられる径小側取付部32と、これら両取付部31,32を連接するテーパ状の蛇腹部33とからなり、これらがポリエステル系熱可塑性エラストマーによりブロー成形によって全体に円形断面かつ略一定厚みに一体成形されたものである。
【0018】
径大側取付部31は、外周にクランプリング28の装着溝34を設け、その内側は平坦な内周面35に形成されている。
【0019】
ブッシュ4は、外周側が径大側取付部31の内周に対応する円形形状であり、内周側はアウターケース14の外周形状に対応する非円形形状をなし、即ちアウターケース14の凹部17に対応する内側への凸状をなす厚肉部41と、凸部18に対応する薄肉部42とを交互に有するリング状に形成されている。
【0020】
図に示すように、ブッシュ4はアウターケース14の凹部17に対して厚肉部41が、凸部18に対して薄肉部42が填め合わされ、その外周にブーツ3の径大側取付部31が嵌合されている。
【0021】
すなわち、ブーツ3は、ブッシュ4がアウターケース14と径大側取付部31との間に配された状態で、径大側取付部31の装着溝34に巻回されたクランプリング28を締め付け固定することによりアウターケース14外周に対して取り付けられ、一方径小側取付部32はシャフト16にクランプリング29により締め付け固定され取り付けられている。
【0022】
図3及び図4に示すように、ブッシュ4の外周上には、径大側取付部31の外周を締め付けることによって径大側取付部31の内周面35に接触する2本の突条47が全周に渡り設けられている。
【0023】
この2本の突条47は、周方向断面が径方向外方に向かいほぼ直立する歯面48と斜面49とからなる鋭角頂点を有する略直角三角形状の鋸歯形状をなすもので、かつ鋸歯形の斜面49側が蛇腹部33側に配されて形成されている。
【0024】
また、ブッシュ4の反蛇腹部側端部の周上には径大側取付部31の位置決めストッパーとしての突起45が、また蛇腹部33側端部にはアウターケース14端部の側面に当接する爪部44が内方に向かって設けられ、ブーツ3及びブッシュ4の装着位置や作業性を向上すると共に装着後のずれを防ぐようになっている。
【0025】
なお、ブッシュ4の内周側にはアウターケース14の周上に設けられたシール用溝19に嵌合する凸条43が設けられ、ブッシュ4の内周側とアウターケース14との間のシール性が確保されている。
【0026】
このブッシュ4は、ブーツ3と同様のポリエステル系、ポリオレフィン系などの熱可塑性エラストマーから、射出成形等の通常の樹脂成形法により成形することができ、凹凸部を交互に有する内周形状のブッシュ4においても成形精度の高い成形品が得られ、相手部材との良好な形状一致性が得られる。また、ブッシュ4の材料としては、ブーツ3とは硬度の異なる樹脂材料を用いてもよい。
【0027】
アウターケース14と径大側取付部31の間にブッシュ4を配した上記構成において、ブッシュ4の硬度がブーツ3と同等或いはそれよりも軟質である場合は、径大側取付部31の外周をクランプリング28により締め付け固定することで、突条47の断面鋸歯形の斜面49側にのみ偏って締め付け荷重がかかるようになり、2本の突条47の斜面49が歯面48側に、すなわち突条47の先端部が反蛇腹部側に向かって圧縮変形される(図5、A部拡大図参照)ように一方向に集中する大きな締め付け圧力が発生することで、2本の突条47と径大側取付部31の内周面35とが全周に渡り高い圧力で密着し、径大側取付部31とブッシュ4との間の良好なシール性を確保することができる。
【0028】
また、クランプリング28による締め付け力を突条47の一方向に集中的に作用させてシール性を得ることができるので、締め付け力を有効に利用することができ過大な締め付け力が不要となり装着作業性を向上することも可能となる。
【0029】
この鋸歯形の突条47は、締め付け圧力が突条47を介してブッシュ4と径大側取付部31の間に均等に発生するように、2本以上の突条を締め付け部の中心に対してブッシュ4の軸方向に対称に設けることがシール性や装着時のバランスを確保する上で好ましい。
【0030】
突条47の鋸歯形断面の斜面49側がブーツ3の蛇腹部33側に配さていることで、ブーツ3の装着時には径大側取付部31の内周面35が突条47の斜面49に沿って滑るようにスムーズに挿入することができ作業性が向上する。
【0031】
また、装着後は突条47の先端部が歯止めの効果を発揮し、ブーツ3の抜けを抑えて装着安定性を向上することができる。
【0032】
また、ブッシュ4の硬度がブーツ3よりも硬い場合は、突条47の鋸歯形断面の先端部分が径大側取付部31の内周面35に対して食い込むように接触し(図6、A部拡大図参照)、径大側取付部31との全周に渡る良好なシール性を確保することができる。
【0033】
この場合も、ブーツ3の装着時には径大側取付部31の内周面35が突条47の斜面49に沿って滑るようにスムーズに挿入することができ、また、装着後は突条47の先端部が内周面35に食い込むことで歯止めとなってブーツ3の抜けを防止することができる。
【0034】
上記ブッシュ4の硬度がブーツ3よりも硬い場合は、1本の突条47をブッシュ4の外周上の全周に設けることで、ブーツ3のシール性と抜け防止の効果を奏することができる。
【0035】
このブッシュ4を用いることで、相手側ブーツ3の径大側取付部31の内周面35が平坦なものでも十分なシール性や装着性を得られるので、径大側取付部31の形状単純化が可能となりブーツ3製造時の成形性を改善することもできる。さらに、ブーツとブッシュとの互換性が得られるようになり、1つのブッシュを共通部材として使用し、部材点数の低減を図ることもできる。
【0036】
なお、上記各実施形態では、ブッシュ4の各薄肉部42に基づいて説明したが、リング状ブッシュの厚肉部やその境界部など他の部位においても上記薄肉部と同様にシール性が確保されるのはもちろんである。
【0037】
また、上記実施形態では、突条47の鋸歯形断面を図面に示すような略直角三角形断面の例に基づいて説明したが、突条断面は先端部が平坦面でなる略台形状のもの、鋸歯形の両側面が斜面で形成されるもの等、を用いることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂ブーツ用ブッシュによれば、等速ジョイントの非円形形状をなすアウターケースに対して、樹脂ブーツの円形断面を有する径大側取付部をその全周に渡り良好なシール性を確保し取り付け、その装着作業性を向上し、ブーツの抜けを防止することができる。また、ブーツやブッシュの成形性がよく製造しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の縦断面図である。
【図2】図1のブッシュ部分の横断面概略図である。
【図3】同実施形態の装着前のブッシュの薄肉部分断面図である。
【図4】図1のブッシュ薄肉部の部分断面図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】図4のA部拡大図である(ブッシュがブーツより硬い場合)。
【符号の説明】
1……等速ジョイント
3……樹脂ブーツ
4……樹脂ブーツ用ブッシュ
14……アウターケース
31……径大側取付部
33……蛇腹部
35……径大側取付部の内周面
47……突条
49……鋸歯形突条の斜面
Claims (1)
- 周方向に凹凸部を交互に有する非円形なアウターケースに対して、円形断面を有する樹脂ブーツを取り付けるために、前記アウターケースと前記樹脂ブーツの径大側取付部との間に配される樹脂ブーツ用ブッシュであって、
前記ブッシュは、その外周側が略円形状をなし、かつ内周側が前記アウターケースの凹凸部を交互に有する外周形状に対応する非円形状をなしており、
前記ブッシュの外周上には、前記径大側取付部の内周面に接触する突条を全周に設け、
前記突条は、鋸歯形断面を有し、かつ前記鋸歯形断面の斜面側が前記樹脂ブーツの蛇腹部側に配されている
ことを特徴とする樹脂ブーツ用ブッシュ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003001522A JP2004211850A (ja) | 2003-01-07 | 2003-01-07 | 樹脂ブーツ用ブッシュ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003001522A JP2004211850A (ja) | 2003-01-07 | 2003-01-07 | 樹脂ブーツ用ブッシュ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004211850A true JP2004211850A (ja) | 2004-07-29 |
Family
ID=32819527
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003001522A Withdrawn JP2004211850A (ja) | 2003-01-07 | 2003-01-07 | 樹脂ブーツ用ブッシュ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004211850A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006057031A1 (ja) * | 2004-11-24 | 2006-06-01 | Toyo Tire & Rubber Co., Ltd. | ジョイントブーツ |
US7264549B2 (en) | 2004-03-31 | 2007-09-04 | Toyo Tire & Rubber Co., Ltd. | Joint boot |
WO2013058059A1 (ja) * | 2011-10-19 | 2013-04-25 | Ntn株式会社 | 等速自在継手 |
JP2022106212A (ja) * | 2021-01-06 | 2022-07-19 | Kyb株式会社 | ステアリング装置 |
-
2003
- 2003-01-07 JP JP2003001522A patent/JP2004211850A/ja not_active Withdrawn
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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Legal Events
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A621 | Written request for application examination |
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A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20070802 |
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