JP2004210553A - 複層ガラス - Google Patents

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貴彦 秋山
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Abstract

【課題】所定の共鳴周波数を有する共鳴器を備えた複層ガラスにおける外観の向上を考慮した複層ガラスを提供する。
【解決手段】板ガラスの周縁に配設したスペーサ3により所定間隔を隔てて重ね合わされた2枚の板ガラス2と、該2枚の板ガラス2間に前記スペーサ3と平行に配設された共鳴用棒材5とを備え、該棒材5とスペーサ3間に空洞部7を形成するとともに、前記共鳴用棒材5に前記2枚の板ガラス間の空間4と前記空洞部7とを連通する複数個の貫通孔を設けた複層ガラスにおいて、前記共鳴用棒材5の前記貫通孔の位置に前記空洞部7内に突出する筒状部材6を備えた。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物、車両、船舶及び航空機等に使用する共鳴器を備えた複層ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
複層ガラスにおける遮音性能の良否は、コインシデンス効果と共鳴透過現象との如何に依存するとされている。このうち、コインシデンス効果による遮音性能の低下は、使用する板ガラスの密度や縦弾性係数のほか、その時々の気温等にも関係するとされており、単板ガラスのみならず複層ガラスにも発生する共通の現象である。
【0003】
一方、低音域での共鳴透過現象は、等間隔で隔置された2枚の板ガラスが共鳴することにより発生する複層ガラスに特有の現象である。
【0004】
図3は従来の共鳴用棒材を備えた複層ガラスの部分断面図である。
図示したように、複層ガラス31は、2枚の板ガラス32、32をスペーサ33によって、板ガラス32とスペーサ33との間に一次シール38を介して所定の間隔に保持し、板ガラス32の周縁部内部とスペーサ33の外周面とで形成された凹部に二次シール39を配して周縁部をシールしたものである。
【0005】
スペーサ33の中空層側には貫通孔45が所定間隔で複数個設けられ、スペーサ33の中空部分には乾燥剤44が充填される。
【0006】
中空層34内にはスペーサ33に平行にスペーサ33と所定距離を隔てて棒状の共鳴用棒材35が配設される。共鳴用棒材35、スペーサ33及び板ガラス32、32で空洞部37が形成される。共鳴用棒材35は例えば矩形断面の角材又は板材である。共鳴用棒材35は中空層34と空洞部37とを連通する複数個の貫通孔36が所定ピッチ間隔毎に設けられる。
【0007】
共鳴用棒材35と空洞部37とにより共鳴器が構成される。したがって、空洞部37は複層ガラスに配設される共鳴器の共鳴周波数に対応した容積が必要である。したがって、板ガラス32、32間の幅Wが定まると空洞部37の高さ方向の距離Hが定まり、この共鳴周波数に対応した所定の距離Hを確保しなければならない。また、共鳴周波数設定のパラメータとなる開口長さは、貫通孔36の長さに対応する。したがって、この貫通孔36の長さ(棒材35の厚み)についても、所定の共鳴周波数とするために所定の必要な長さを確保しなければならない。
【0008】
このようにして形成された複層ガラス31は、セッティングブロック41及び固定材43を介して額縁42に取付けられる。
【0009】
共鳴用棒材35は板ガラス32の開口面の縁部に露出して外部から見える。すなわち、この棒材35は額縁42の固定材43よりも板ガラス32の開口面の中央部側に突出して形成されるため、外部から見える。したがって、複層ガラス31の透視性や外観を考慮するとできるだけ固定材43からの突出長さが短いほうが好ましい。しかし、従来の複層ガラス31は、共鳴器を設けていない同一仕様の複層ガラスが持つ固有の共鳴透過周波数に対応する共鳴周波数を有する共鳴器を配設する。この場合、貫通孔36を共鳴用棒材35に設けて遮音性能を高める必要があるため、空洞部37の上下長さHを確保するとともに共鳴用棒材35はある程度の厚みDが必要である。この板ガラス32の端縁から共鳴用棒材35の中空層34側端面までの距離が複層ガラス31の外観を損う要因となっていた。
【0010】
一方、遮音性能を高めるために共鳴作用を利用した複層ガラスが開発されている(例えば特許文献1)。しかし、特許文献1に記載の複層ガラスはガラス板の共鳴振動域における防音性能の低下を抑制するために複層ガラスの内部空間に筒型格子辺からなる組格子を配在してこれに貫通孔を開口させたものであり、複層ガラスの透視性が考慮されてなく、見栄えが悪いものである。
【0011】
また、ヘルムホルツ共鳴器を利用した複層ガラスが特許文献2に開示されている。しかし、この特許文献2の遮音構造は前述の図3に示した従来例と同様に共鳴用棒材に貫通孔を設けこの貫通孔の長さ(棒材の厚さ)により必要な共鳴周波数が得られるように構成している。したがって共鳴器を構成する棒材は所定の厚さが必要になる。このため、この共鳴器を窓ガラスの周縁に設けると、共鳴用の棒材が窓ガラスの内側に大きく露出し、見栄えが悪くなる。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−116286号公報
【特許文献2】
特開2002−356934号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、所定の共鳴周波数を有する共鳴器を備えた複層ガラスにおける外観向上のため、共鳴用棒材の厚みを薄くし、その配設位置を板ガラスの端縁側に近づけることができる複層ガラスの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、板ガラスの周縁に配設したスペーサにより所定間隔を隔てて重ね合わされた少なくとも2枚の板ガラスと、該板ガラス間に中空層を有し、該板ガラス間に前記スペーサの少なくとも1つと平行に配設された共鳴用棒材とを備え、該棒材とスペーサ間に空洞部を形成するとともに、前記共鳴用棒材に前記板ガラス間の中空層と前記空洞部とを連通する複数個の貫通孔を設けた複層ガラスであって、前記共鳴用棒材の前記貫通孔の位置に前記空洞部内に突出する筒状部材を備えたことを特徴とする複層ガラスを提供する。
【0015】
この構成によれば、所定の共鳴周波数を得るために演算で求められた値を基に空洞部の容積に対応した共鳴用棒材とスペーサとの間隔距離や貫通孔の径や長さ等のパラメータが定められて形成された共鳴器において、筒状部材を空洞部内に突出させて、この筒状部材により共鳴周波数に必要な開口長さを確保するため、共鳴用棒材とスペーサとの間隔距離を変えずに共鳴用棒材の厚みをほぼ筒状部材の長さ分薄くしてこの共鳴用棒材の配設位置(板ガラスの端縁から共鳴用棒材の中空層側端面までの距離)を板ガラスの端縁側に近づけることができる。このため、筒状部材を用いない場合に比べ、複層ガラス側縁における共鳴用棒材をより目立たなく配設できるため複層ガラスの外観が向上する。
【0016】
好ましい構成例においては、前記共鳴用棒材及び筒状部材は透明材料からなることを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、窓ガラスの縁部に沿って露出する共鳴用棒材及び筒状部材が透明材料で形成されるため、窓ガラスの透視性を損なわず、また外観上も違和感が少なくなり見栄えがよくなる。
【0018】
好ましい構成例においては、前記スペーサと共鳴用棒材が連結部材を介して一体化されたことを特徴としている。
【0019】
この構成によれば、共鳴用棒材を連結部材とともに押出し成型加工等により一体成形することができ、共鳴用棒材の厚みを極力薄くできるとともに例えばスペーサと接合一体化して2枚の板ガラス間に確実に装着して保持できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る複層ガラスの部分断面図、図2は共鳴用棒材の部分上面図である。
【0021】
複層ガラス1は、2枚の板ガラス2、2をスペーサ3によって、板ガラス2とスペーサ3との間に一次シール8を介して所定の間隔に保持し、板ガラス2の周縁部内部とスペーサ3の外周面とで形成された凹部に二次シール9を配して周縁部をシールしたものである。このようにして形成された複層ガラス1は、セッティングブロック11及び固定材13を介して額縁12に取付けられる。なお、固定材13の代わりに、シリコーン.シーラントのようなコーキング材等を使って額縁42に取付けてもよい。
【0022】
板ガラス2としては、建築用に一般的に使用されるソーダライムシリカガラス(例えば、旭硝子社製、商品名:AS)が代表的であるが、これに限られずその他の組成の板ガラスも使用できる。同様に通常のソーダライムシリカガラス以外にも、強化ガラスや網入り板ガラス、合わせガラスが使用でき、片側の板ガラス2を合わせガラスとし、他方を通常のソーダライムシリカガラスとする等種類や厚さの異なる板ガラスを組み合わせて使用することもできる。また、無機質の板ガラスのみならず有機質の板状体、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂等も使用できる。
【0023】
スペーサ3は、板ガラス2、2の相互の間隔が所定値に確保できれば材質、形状は限定されないが、図示のような断面矩形状が好ましい。このスペーサ3は押出し成型又はプレス成型等を用いて製造される。スペーサ3の中空部分には乾燥剤14が充填され、スペーサ3の中空層側には貫通孔15が所定間隔で複数個設けられる。
【0024】
一次シール8としては主に耐透湿性及び粘着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリイソブチレンが好適に使用できる。二次シール9としては主に接着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリスルフィド、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂が好適に使用できる。
【0025】
なお、複層ガラス1としては、2枚の板ガラス2、2をその間に設けたスペーサ3で所定間隔を隔てて重ね合わせ、単一の中空層4を有する構成に限られるものではなく、3枚以上の板ガラス2、・・・、2を隣り合う板ガラス2、2間にスペーサ3を設けて所定間隔を隔てて重ね合わせ、複数の中空層4を有する構成であってもよい。
【0026】
中空層4内にはスペーサ3に平行にスペーサ3と所定距離Hの間隔を隔てて棒状の共鳴用棒材5が配設される。共鳴用棒材5の幅は、板ガラス2、2の相互の間隔Wと略等しく、片側ないしは両側縁に断面L字状の連結部材10を共鳴用棒材5の全長に亘って連続的あるいは断続的に有し、スペーサ3上に接着剤等を用いて固定され一体化される。共鳴用棒材5、スペーサ3および2枚の板ガラス2あるいは共鳴用棒材5に備わる連結部材10で空洞部7が形成される。共鳴用棒材5は矩形断面の角材又は板材である。この例では共鳴用棒材5と連結部材10は押出し成型加工により一体成形されている。また、共鳴用棒材5は板ガラス2の4辺全周に沿って設けてもよいし1辺にのみ沿って設けてもよい。
【0027】
共鳴用棒材5には中空層4と空洞部7とを連通する直径d、長さLの複数個の筒状部材6が所定ピッチ間隔P毎に空洞部7に突出して設けられる(図2参照)。共鳴用棒材5、筒状部材6及び連結部材10は、額縁12の固定材13よりも板ガラス2の開口面の中央部側に露出する場合、窓ガラスとしての透視性を妨げないために外観上透明材料で形成することが好ましい。
【0028】
また、所望の共鳴周波数を有する共鳴器が構成できれば、種々の寸法の共鳴用棒材5、筒状部材6を使用可能であるが、外観上や製造上の観点から、長さLが2〜20mm、直径dが1〜5mm、ピッチ間隔Pが10〜100mm、スペーサ3と共鳴用棒材5の距離Hが5〜50mm程度とするのが好ましい。
【0029】
共鳴用棒材5の材質としては、各種の材料が使用できるが、硬質樹脂、ゴム、金属材料、等が吸音性が少なくて好ましい。また、共鳴用棒材5の表面、すなわち、共鳴用棒材5の上下面および筒状部材6の周壁面は、平滑に仕上げてあることが、吸音性が少なくて好ましい。
【0030】
この共鳴用棒材5と空洞部7及び筒状部材6により、共鳴器が形成される。この場合、筒状部材の径や間隔及び共鳴用棒材の寸法や組込み位置等のパラメータに応じて共鳴周波数が変わる。この共鳴周波数は演算で求めることができる。したがって、必要な共鳴周波数が設定され、かつあるパラメータ(例えばスペーサと共鳴用棒材5との間隔である距離Hやガラス間の間隔W等)が固定された場合、必要とする共鳴周波数が得られるように他のパラメータ(例えば筒状部材の径や間隔及び長さ)を演算で求めることができる。
【0031】
したがって、本発明の図1と従来の図3を比べた場合、必要な共鳴周波数を得るための空洞部(7,37)の容積が同じでかつ筒状部材6の長さLと貫通孔36の長さD(図3)を例えば5mmとして同じにすれば、空洞部の上下間隔(距離H)がほぼ同じで、本発明の共鳴用棒材5の厚みD(図1)を1mmとし、従来の棒材35の厚みD(図3)より小さくできる。
【0032】
このように、共鳴用棒材5に筒状部材6を備えて共鳴器を形成することにより、共鳴用棒材5を貫通する貫通孔を用いて共鳴器を構成する従来の構成に比べて、同一の共鳴周波数を得る場合に共鳴用棒材5の薄型化を図るとともに共鳴用棒材を極力窓ガラスの端縁に近づけて窓ガラスの縁に沿って現れる共鳴器部分を小さくすることができる。したがって複層ガラス1の中空層4側への共鳴器の露出部分を小さくすることができ、複層ガラス1全体としての外観が向上し、ガラス周辺部の違和感を抑えることができる。
【0033】
なお、共鳴用棒材5はスペーサ3と一体化せずに独立分離した状態で、すなわち連結部材10を備えることなくスペーサ3から所定間隔を隔てて組込んでもよい。
【0034】
本発明の他の実施の形態として、少なくとも1枚の板ガラスが合わせガラスである複層ガラスが挙げられる。このように、合わせガラスが使用されたり、板ガラスの外側にフィルムや樹脂等が接着された複層ガラスは、安全面に優れ、複層ガラスとしての機能向上に寄与できる。
【0035】
本発明のさらに他の実施の形態として、中空層に六フッ化硫黄ガス、アルゴンガスまたはクリプトンガスを封入した複層ガラスが挙げられる。通常の複層ガラスは、中空層に乾燥空気または窒素ガスが封入される構成が一般的であるが、これの代わりに、断熱性能を上げることを主たる目的で上記ガスを封入すると、媒体間の音速の違いによる波動的エネルギー損失を生じ、遮音性能が向上する効果が得られる。
【0036】
本発明のさらに他の実施の形態として、貫通孔の少なくとも一方の開口部には音響抵抗材(不図示)が配されてなる構成が挙げられる。このような構成であれば、音響抵抗材が貫通孔の前後での気体の摩擦運動を促進し、広い周波数範囲の吸音の効果が得られる。
【0037】
なお、音響抵抗材とは、気体振動(空気振動)により自ら励振されやすい物質であり、たとえば、グラスウール、ロックウール等の繊維材、フィルム等の膜状材、等が挙げられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、所定の共鳴周波数を得るために演算で求められた値を基に空洞部の容積に対応した共鳴用棒材とスペーサとの間隔距離や貫通孔の径や長さ等のパラメータが定められて形成された共鳴器において、筒状部材を空洞部内に突出させて、この筒状部材により共鳴周波数に必要な開口長さ(厚さ)を確保するため、共鳴用棒材とスペーサとの間隔距離を変えずに共鳴用棒材の厚みをほぼ筒状部材の長さ分薄くしてこの共鳴用棒材の配設位置を板ガラスの端縁側に近づけることができる。このため、筒状部材を用いない場合に比べ、複層ガラス周縁部における共鳴用棒材をより目立たなく配設できるため複層ガラスの外観が向上する。
【0039】
また、共鳴用棒材及び筒状部材を透明材料とすることにより、窓ガラスの透視性を損なわず、また外観上も違和感が少なくなり見栄えがよくなる。
【0040】
また、スペーサと共鳴用棒材を連結部材を介して一体化することにより、共鳴用棒材を連結部材とともに押出し成型加工等により一体成形することができ、共鳴用棒材の厚みを極力薄くできるとともに例えばスペーサと接合一体化して2枚の板ガラス間に確実に装着して保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複層ガラスの部分断面図。
【図2】共鳴用棒材の部分上面図。
【図3】従来の共鳴用棒材が配設された複層ガラスの部分断面図。
【符号の説明】
1:複層ガラス、2:板ガラス、3:スペーサ、4:中空層、
5:共鳴用棒材、6:筒状部材、7:空洞部、8:一次シール、
9:二次シール、10:連結部材、11:セッティングブロック、
12:額縁、13:固定材、14乾燥剤、15:貫通孔。

Claims (3)

  1. 板ガラスの周縁に配設したスペーサにより所定間隔を隔てて重ね合わされた少なくとも2枚の板ガラスと、
    該板ガラス間に中空層を有し、
    該板ガラス間に前記スペーサの少なくとも1つと平行に配設された共鳴用棒材とを備え、
    該棒材とスペーサ間に空洞部を形成するとともに、
    前記共鳴用棒材に前記板ガラス間の中空層と前記空洞部とを連通する複数個の貫通孔を設けた複層ガラスであって、
    前記共鳴用棒材の前記貫通孔の位置に前記空洞部内に突出する筒状部材を備えたことを特徴とする複層ガラス。
  2. 前記共鳴用棒材及び筒状部材は透明材料からなることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス。
  3. 前記スペーサと共鳴用棒材が連結部材を介して一体化されたことを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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