JP2008266062A - 複層ガラス - Google Patents

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貴彦 秋山
Yoshiharu Harada
芳春 原田
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洋常 大久保
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Abstract

【課題】窓ガラスとしての眺望を妨げぬようにスペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしても、また、共鳴用部材の加工を容易にするとともに意匠上の配慮から貫通孔のピッチを大きくして孔数を少なく(孔径を大きく)しても、既往の共鳴周波数計算式で表されるパラメータを選択して算出される従来の共鳴器を備えた複層ガラスと同等の遮音性能が得られる複層ガラスを提供する。
【解決手段】複層ガラス10は、複層ガラス10の中空層内にスペーサ12に平行にスペーサ12と所定距離の位置に共鳴用部材14が配設され、共鳴用部材14、スペーサ12および2枚の板ガラス18、18で画する空洞部が形成され、共鳴用部材14には中空層と空洞部とを連通する複数個の貫通孔16、16…が形成されており、該貫通孔16は一端または両端の開口部が、該開口部以外のストレート孔部よりも径が大きい拡径開口部となっている。
【選択図】図1

Description

本発明は複層ガラスに係り、特に遮音性能を高めるために共鳴用部材を介装した複層ガラスに関する。
複層ガラスにおける遮音性能の良否は、コインシデンス効果と共鳴透過現象との如何に依存するとされている。このうち、コインシデンス効果による遮音性能の低下は、使用する板ガラスの密度や縦弾性係数のほか、その時々の気温等にも関係するとされており、単板ガラスのみならず複層ガラスにも発生する共通の現象である。
一方、低音域での共鳴透過現象は、等間隔で隔置された2枚の板ガラスが共鳴することにより発生する複層ガラスに特有の現象である。
従来から使用されている一般的な複層ガラスにおいては、スペーサ部材の両側面と板ガラスとの間には一次シールが、2枚の板ガラス端縁とスペーサ部材の外側面とを覆って二次シールが設けられている。
しかし、この構成では、複層ガラスの中空層の大きさ、該中空層に封入された気体の種類、板ガラスの厚さ等の制限により、160〜500Hzの音域で共鳴透過現象による遮音性能の低下という不具合が生じやすい。また、2枚の板ガラスの板厚が同一または近似である場合、コインシデンス効果が顕著に生じ、高音域から中音域にかけても遮音性能が低下するという不具合が生じやすい。
上記欠点の対処法として、共鳴器を備えた複層ガラスが特許文献1に提案されている。この複層ガラスは、複層ガラスの少なくとも1辺において、スペーサ部材に平行にスペーサ部材と所定距離の位置に共鳴用部材(棒状部材)が配設されている。この共鳴用部材とスペーサ部材と2枚の板ガラスとによって空洞部が画成されるとともに、中空層と空洞部とを連通する複数個の貫通孔が共鳴用部材に形成されることにより、共鳴用部材と空洞部とによって共鳴器が形成されている。この共鳴器によって、共鳴透過による低周波数域での遮音欠損を改善することができる。
特開2004−205992号公報
しかしながら、特許文献1の複層ガラスにおいても、遮音性能を向上するには、スペーサと共鳴用部材との有効空隙(スペーサと共鳴用部材との間隔)を拡大せざるを得ず、この複層ガラスを窓ガラスとして使用した場合、共鳴用部材が窓の額縁より大きく内側に露出し、窓ガラスとしての透視性や眺望を妨げるという欠点があった。また、遮音性能を向上する他の手段として、共鳴用部材に形成される貫通孔の孔径を小さく(貫通孔のピッチを小さくして孔数を多く)する手段があるが、これでは共鳴用部材の加工に手間がかかるという問題があり、かつ孔数が多くて外観上目立つため意匠的にも好ましくなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、窓ガラスとしての眺望を妨げぬようにスペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしても、また、共鳴用部材の加工を容易にするとともに意匠上の配慮から貫通孔のピッチを大きくして孔数を少なく(孔径を大きく)しても、優れた遮音性能が得られる複層ガラスを提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、少なくとも2枚の板ガラスを、その周縁に配設したスペーサを介して隔置することにより、前記板ガラス間に中空層を形成してなる複層ガラスにおいて、前記複層ガラスの少なくとも1辺において、前記中空層内には前記スペーサに平行に該スペーサと所定距離の位置に共鳴用部材が配設され、該共鳴用部材、前記スペーサおよび2枚の板ガラスで画する空洞部が形成され、前記共鳴用部材の少なくとも1つには前記中空層と前記空洞部とを連通する複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔の一端または両端の開口部が、該開口部以外のストレート孔部よりも径が大きい拡径開口部とされていることを特徴とする複層ガラスを提供する。
本願の発明者は、既往の共鳴周波数計算式で表されるパラメータの最適化によらない共鳴用部材の貫通孔の形状と共鳴用部材の配置に関し、請求項1に記載の如く、貫通孔の一端または両端の開口部の形状を拡径開口部とする新たな構造を実験により見出した。この新たな構造により、従来の複層ガラスよりも遮音性能が高くなる。その際の評価量は、JIS A 4706に規定された遮音等級のT−3等級(35等級)に対する不足量(dB)であり、不足量が少ないほど遮音性能が高いと評価した。この拡径開口部を設ける新たな技術により、従来採られた小孔径化によることなく遮音性能を向上させることができる。これにより、小孔径化による共鳴用部材の多孔加工のコストを低減でき、かつ、孔数増加による外観意匠の低下を抑制できる。また、窓ガラスとしての眺望を妨げぬようにスペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしても、既往の共鳴周波数計算式で表されるパラメータを選択して算出される従来の共鳴器を備えた複層ガラスと同等の遮音性能が得られることを実験により確認した。また、前記有効空隙を小さくして眺望を改善することは、共鳴用部材が目立たなくなることと等しいので、複層ガラスの外観意匠が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記複層ガラスの隣り合う2辺にのみ、前記拡径開口部を有する貫通孔が形成された共鳴用部材が配置されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、複層ガラスの隣り合う2辺にのみ、拡径開口部を有する貫通孔が形成された共鳴用部材が配設されるのが好ましい。すなわち、拡径開口部を有する貫通孔が形成された共鳴用部材の配置を非対象のL型にすると、遮音性能が一層高くなることが実験により判明した。
本発明の複層ガラスによれば、貫通孔の一端または両端の開口部を拡径開口部としたので、窓ガラスとしての眺望を妨げぬようにスペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしても、また、共鳴用部材の加工を容易にするとともに意匠上の配慮から貫通孔のピッチを大きくして孔数を少なく(孔径を大きく)しても、優れた遮音性能を得ることができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る複層ガラスの好ましい実施の形態を詳説する。
図1は実施の形態に係る複層ガラス10の一例を示した組立斜視図であり、図2は図1の複層ガラス10の縦断面図である。また、図3は複層ガラス10を構成するスペーサ12と共鳴用部材14とを含む複層ガラス10の辺部の拡大断面図である。更に、図4、図5には、共鳴用部材14の貫通孔16に形成された拡径開口部16A、16Bの好ましい例がそれぞれ示されている。
図1、図2に示すように、共鳴用部材14は複層ガラス10の4辺においてスペーサ12と有効空隙(所定距離の間隔)をもって平行に配設されている。なお、符号15は、共鳴用部材14の端部を支持する透明樹脂製のサポータであり、複層ガラス10の4隅部においてスペーサ12に固定されている。
図3に示すように、複層ガラス10は、2枚の板ガラス18、18を、スペーサ12によって、板ガラス18、18とスペーサ12との間に一次シール20を介して所定の間隔に保持し、板ガラス18、18の周縁部内部とスペーサ12の外周面とで形成された凹部に二次シール22を配して周縁部がシールされている。
板ガラス18としては、建築用に一般的に使用されるソーダライムシリカガラス(例えば、旭硝子社製フロート板ガラス、商品名:AS)が代表的であるが、これに限られずその他の組成の板ガラスも使用できる。同様に、通常のフロート板ガラス以外にも、強化ガラスや網入り板ガラス、型板ガラス、合わせガラスも使用でき、片側の板ガラス18を合わせガラスとし、他方を単板の板ガラスとする等、種類や厚さの異なる板ガラスを組み合わせて使用することもできる。また、板ガラスの外側にフィルムや樹脂等が接着された複層ガラスは、安全面に優れ、複層ガラスとしての機能向上に寄与できる。更に、無機質の板ガラスのみならず有機質の板状体、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂等も使用できる。なお、製造上および市場の観点から、板ガラスの厚さは2〜30mm、板ガラス相互の間隔が4〜30mmであることが好ましいが、本発明の複層ガラスは、この範囲に限定されるものではない。
スペーサ12は、板ガラス18、18の相互の間隔が所定値に確保できれば材質、形状は限定されないが、図3のような断面矩形状が好ましい。なお、図3では省略したが、スペーサ12の中空部分に乾燥剤を充填したものでは、スペーサ12の中空層側に貫通孔を所定間隔で複数個設ければよい。
一次シール20としては、主に耐透湿性および粘着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリイソブチレンが好適に使用できる。二次シール22としては、主に接着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリスルフィド、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂が好適に使用できる。
なお、複層ガラス10としては、2枚の板ガラス18、18をその間に設けたスペーサ12で所定間隔を隔てて重ね合わせ、単一の中空層24を有する構成に限られるものではなく、3枚以上の板ガラス18、18…を隣り合う板ガラス18、18間にスペーサ12を設けて所定間隔を隔てて重ね合わせ、複数の中空層24、24…を有する構成であってもよい。
中空層24内にはスペーサ12に平行にスペーサ12と有効空隙Hの間隔を隔てて棒状の共鳴用部材14が配設され、共鳴用部材14、スペーサ12および2枚の板ガラス18、18によって空洞部26が画成される。共鳴用部材14は略矩形断面の角材または板材である。また、共鳴用部材14は複層ガラス10の4辺全周に沿って設けてもよいし1辺にのみ、または2辺(図6参照)に沿って設けてもよい。
共鳴用部材14は所定の厚さLを有しており、また、共鳴用部材14には中空層24と空洞部26とを連通する直径dの複数個の貫通孔16、16…が所定の間隔(ピッチ)P毎に形成されている(図4、図5参照)。共鳴用部材14は、不図示の窓用額縁より内側に露出することがあるため、窓ガラスとしての透視性や眺望を妨げないように外観上透明材料で形成することが好ましく、スペーサ12と共鳴用部材14との有効空隙Hは遮音性能と外観上の観点から15〜50mmとすることが好ましいが、有効空隙Hは小さいほどよい。また、所望の共鳴周波数、例えば160〜630Hzを有する共鳴器が構成できれば、種々の寸法の共鳴用部材14を使用可能であるが、外観上および製造上の観点から厚さLは2〜20mm、孔ピッチPは10〜200mm程度とするのが好ましい。
優れた遮音性能を得るには、直径dは1.0〜2.5mmであることが好ましく、厚さLが5mmの条件下では1.5〜2.0mmであることが特に好ましい。
図4、図5は、共鳴用部材14に形成された貫通孔16の一例を示す模式図であり、図4、図5のいずれも、(A)は共鳴用部材14の部分上面図を示し、(B)は(A)のア−ア線に沿う共鳴用部材5の縦断面図を示している。なお、(A)に示した共鳴用部材14の上面とは、複層ガラス10の中空層24に向いた面を指している。
貫通孔16の一端に形成された拡径開口部16A、16Bの径Dは、ストレート孔部である貫通孔16の直径dよりも大きく、かつ貫通孔16と同心に形成されている。図4(B)に示す拡径開口部16Aの縦断面は、共鳴用部材14の表面側から内部側に向かって直線状の輪郭を描く、いわゆる皿孔状の形状となっている。図5(B)に示す拡径開口部16Bの縦断面は、共鳴用部材14の表面側から内部側に向かって円弧状の輪郭を描く形状となっている。拡径開口部の深さlは、共鳴用棒材の厚さLの50%以下、すなわちLが5mmの場合にはlは2.5mm以下とするのが望ましい。これは、拡径開口部が貫通孔全体に占める割合がこれより大きくなると、共鳴器の共鳴周波数に及ぼす拡径開口部の影響が無視できなくなるためである。拡径開口部16A、16Bの縦断面形状は、図4、図5の如くストレート孔部から外側に向って拡径する形状であるが、この形状に限定されず、本発明の効果を奏する限りにおいて、各種の設計変更が可能である。例えば、最も極端な例として、拡径開口部以外のストレート孔部と同様に、拡径開口部もストレート孔形状として、D>dを満たすように設定してもよい。
なお、図4、図5では、貫通孔16の中空層24側の一端のみを拡径開口部16A、16Bとしたが、空洞部26側の一端のみに拡径開口部16A、16Bを形成してもよく、両端に拡径開口部16A、16Bを形成してもよい。また、拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14は、図6のように、複層ガラス10の隣り合う2辺にのみ設けるのがより好ましい。すなわち、矩形の複層ガラス10の4辺のうち、互いに対向する2辺においては一方の辺にのみ、拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14、14を設けるのがより好ましい。図6によれば、複層ガラス10の互いに対向する上辺、下辺のうち、下辺にのみ拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14が配設され、同じく、複層ガラス10の互いに対向する左辺、右辺のうち、右辺にのみ拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14が配設されている。
拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14が配設されない複層ガラス10の他の辺には、ストレート孔部のみからなる貫通孔16が形成された共鳴用部材14を配設してもよいし、共鳴用部材14を全く配設しなくてもよいが、ストレート孔部のみからなる貫通孔16が形成された共鳴用部材14を配設するのが遮音性の観点から特に好ましい。
共鳴用部材14の材質としては、各種の材料が使用できるが、硬質樹脂、ゴム、金属材料等が、吸音性が少なくて好ましい。また、共鳴用部材14の表面、すなわち、共鳴用部材14の上下面および貫通孔16の周壁面は、平滑に仕上げてあることが、吸音性が少なくて好ましい。
共鳴用部材14の幅は、板ガラス18、18の相互の間隔W(図3参照)と略等しい。共鳴用部材14は、図示しない接着等の固定手段により板ガラス18、18に固定されている。共鳴用部材14の固定手段としては、接着等による固定のほか、有効空隙Hの距離だけスペーサ12から離間させて空洞部26を確保したまま、共鳴用部材14とスペーサ12とをサポータ15または他の連結部材を介して一体化した構造とするなど、各種の設計変更が可能である。
この共鳴用部材14と空洞部26とによって共鳴器が形成される。以下、この共鳴器の原理を説明する。
共鳴用部材14に中空層24側から音波が入射すると、特定の周波数で貫通孔16内の空気が激しく振動する。このとき、貫通孔16内の空気と、貫通孔16の周壁面との摩擦によって音響エネルギーが熱エネルギーに変換されて吸音効果が得られる。
所定の厚さLの共鳴用部材14に連続的に貫通孔16が配されている構成は、ヘルムホルツ共鳴器が連続的に並んでいる構成と等価であると考えられる。この場合、一般に、該共鳴器は貫通孔16の数が多い程(ただし、貫通孔16、16…のピッチPは制限されるが)、その吸音効果は大きい。
共鳴器の共鳴周波数(fr)は、複層ガラスの構成に応じて求められる。すなわち、気体の音速C、スペーサ12と共鳴用部材14との有効空隙H、共鳴用部材14の厚さL、貫通孔16の直径d、貫通孔相互のピッチPおよび板ガラス18、18の内のり寸法W等のパラメータを下記(1)式に代入することによりfrが算出される。

また一般に、複層ガラス10の構成によってfrmd(複層ガラス10が持つ固有の共鳴透過周波数)が求められる。すなわち、気体中の音速C、気体の密度ρ、ガラスの面密度mおよび板ガラス18、18の内のり寸法W等のパラメータを下記(2)式に代入することによりfrmdが算出される。

このように、複層ガラスの構成における各値を任意に設定することにより、所望のfr(共鳴器の共鳴周波数)と、frmd(複層ガラスの共鳴透過周波数)とを合わせることができる。なお、特許文献1に開示されているように、frをfrmdより1/3〜2/3オクターブバンド高音域側へずらした設定とすることにより、共鳴透過による低周波数域での遮音欠損を単一周波数帯域のみならず、欠損帯域全体に渡り改善させることができ、低周波数帯域での遮音効果低下が問題となる複層ガラスにおいて、低周波数帯域の特定の狭い帯域で遮音効果を高めるだけでなくより広い周波数範囲で遮音効果を高めることができる。したがって、本発明に係る複層ガラスの好ましい実施の形態においても、frをfrmdより1/3〜2/3オクターブバンド高音域側へずらした設定とするのが好ましい。
後述する実施例の欄において、拡径開口部16A、16Bが形成された貫通孔16を有する共鳴用部材14の効果を述べるが、その前に本発明の他の実施の形態について述べる。
他の実施の形態として、中空層24に六フッ化硫黄ガス、アルゴンガスまたはクリプトンガスを封入した複層ガラスが挙げられる。通常の複層ガラスは、中空層に乾燥空気または窒素ガスが封入される構成が一般的であるが、これの代わりに、断熱性能を上げることを主たる目的で上記ガスを封入すると、媒体間の音速及び音響インピーダンスの変化による波動的エネルギー損失を生じ、遮音性能が向上する効果が得られる。
なお、窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、アルゴンガス、クリプトンガスの0℃、1気圧での密度ρは、それぞれ、1.25kg/m、6.6kg/m、1.78kg/m、3.74kg/mであり、音速Cは、それぞれ、337m/秒、130m/秒、308m/秒、212m/秒であり、その結果frmd(8mmおよび4mmのフロート板ガラス2枚を10mmの間隔を隔てて形成した複層ガラスの共鳴透過周波数)は、それぞれ、216Hz、192Hz、236Hz、235Hzと算出される。
また、他の実施の形態として、貫通孔16の少なくとも一方の開口部には音響抵抗材(不図示)が配されてなる構成が挙げられる。このような構成であれば、音響抵抗材が貫通孔16の前後での気体の摩擦運動を促進し、広い周波数範囲の吸音の効果が得られる。なお、音響抵抗材とは、気体振動(空気振動)により自ら励振されやすい物質であり、たとえば、グラスウール、ロックウール等の繊維材、フィルム等の膜状材、等が挙げられる。
矩形で、縦1480mm、横1230mm、厚さ8mm及び4mmの板ガラス18、18(旭硝子社製フロート板ガラス、商品名:AS)各1枚を10mmの間隔を隔てて、複層ガラスを製作し、図1〜3に示される構成と同様の共鳴器を複層ガラス10の4辺の端縁部分に設けた。共鳴用部材14の厚さLは5mmとし、貫通孔16の直径d、貫通孔16相互のピッチP、スペーサ12と共鳴用部材14との間隔(有効空隙)Hは、図7の表に示す通りに設定した。共鳴用部材14の材質は、アクリル系樹脂を使用した。
図7は、4辺に沿って共鳴用部材が配置された複層ガラスの遮音性能を、拡径開口部(端加工)有無により比較確認した結果を示した表である。比較例1a、1b、比較例2a、2b、比較例3a、3bは拡径開口部(端加工)無しの共鳴用部材が配置された複層ガラスであり、実施例1a、1b、1b’、実施例2a、2bが4辺に配置された共鳴用部材の全てに拡径開口部(端加工)が設けられた複層ガラスである。実施例Aは、複層ガラスの4辺のうち、一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材の中空層側の全ての開口部に皿孔状の拡径開口部(端加工)が設けられ、他の一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材には拡径開口部(端加工)が設けられていない複層ガラスである。
一般に、遮音性能評価基準としては、JIS A 4706の遮音等級線T−1〜4(25〜40等級)が用いられる。すなわち、音響透過損失曲線が遮音等級線T−1〜4の各等級線を上回れば、その等級として評価される。遮音等級の判定基準としては、各周波数帯域の測定点(16点)全てが、該当する遮音等級線を上回ること、又は、各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合に、その遮音等級とされる。本例では、各周波数帯域でT−3等級(35等級)の遮音等級線を下回る値の合計をT−3不足量(dB)として図7の表に示し、不足量が少ないほど遮音性能が高いと評価した(比較例)。
比較例1a、1bはいずれも、貫通孔16の直径dが2mm、スペーサ12と共鳴用部材14との間隔(有効空隙)Hが20mmであり、貫通孔16相互のピッチPのみが異なる。ピッチPが異なることにより、(1)式によるfr(共鳴器の共鳴周波数)が(2)式によるfrmd(複層ガラスの共鳴透過周波数)に対して、比較例1aでは2/3オクターブ・バンド、比較例1bでは1/3オクターブバンド各々ずれる(fr>frmd)設計となっている。ここで、frmdは238Hzであり、frは、比較例1aでは383Hz、比較例1bでは300Hzとなる。
同様に、比較例2a、2bはいずれも、貫通孔16の直径dが2mm、スペーサ12と共鳴用部材14との間隔(有効空隙)Hが15mmであり、貫通孔16相互のピッチPのみが異なり、frは、比較例2aでは383Hz、比較例2bでは300Hzとなる。また、比較例3a、3bはいずれも、貫通孔16の直径dが1.5mm、スペーサ12と共鳴用部材14との間隔(有効空隙)Hが15mmであり、貫通孔16相互のピッチPのみが異なり、frは、比較例3aでは383Hz、比較例3bでは300Hzとなる。
(拡径開口部の有無による効果)
実施例1aは、比較例1aにおいて、複層ガラス10の4辺に配置された共鳴用部材14の貫通孔16の中空層24側の全ての開口部を皿孔状の拡径開口部としたものであり、拡径開口部の直径Dが2.6mm、深さlが0.3mmである。同様に、実施例1bは、比較例1bにおいて、複層ガラス10の4辺に配置された共鳴用部材14の貫通孔16の中空層24側の全ての開口部を皿孔状の拡径開口部としたものであり、拡径開口部の直径Dが2.3mm、深さlが0.15mmである。また、実施例1b’は、比較例1bにおいて、複層ガラス10の4辺に配置された共鳴用部材14の貫通孔16のスペーサ12側の全ての開口部を皿孔状の拡径開口部としたものであり、拡径開口部の直径Dが2.3mm、深さlが0.15mmである。
比較例1aと実施例1a、比較例1bと実施例1b、比較例1bと実施例1b’との比較から、共鳴用部材14の貫通孔16を拡径化構造にすることにより、遮音性能が高くなることが確認された。なお、実施例1b、実施例1b’では、T−3不足量が3dB以下となっており、遮音等級はT−3を満たすものとみなされる。
実施例2aは、比較例2aにおいて、複層ガラス10の4辺に配置された共鳴用部材14の貫通孔16の中空層24側の全ての開口部を皿孔状の拡径開口部としたものであり、拡径開口部の直径Dが2.6mm、深さlが0.3mmである。同様に、実施例2bは、比較例2bにおいて、複層ガラス10の4辺に配置された共鳴用部材14の貫通孔16の中空層24側の全ての開口部を皿孔状の拡径開口部としたものであり、拡径開口部の直径Dが2.6mm、深さlが0.3mmである。
比較例2aと実施例2a、比較例2bと実施例2bとの比較からも、共鳴用部材14の貫通孔16を拡径化構造にすることにより、遮音性能が高くなることが確認された。
(貫通孔の拡径化と有効空隙H)
比較例1aと実施例2a、比較例1bと実施例2bとの比較から、貫通孔16を拡径化構造にすることにより、孔径dを同一としたままでスペーサ12と共鳴用部材14との有効空隙H(共鳴用部材の位置)を20mmから15mmにしても、優れた遮音性能が得られることが判明した。
(貫通孔の拡径化と孔径d)
比較例3aと実施例2a、比較例3bと実施例2bとの比較から、貫通孔16を拡径化構造にすることにより、スペーサ12と共鳴用部材14との有効空隙H(共鳴用部材の間隔)が同一であっても孔径dを1.5mmから2mmへ大きくでき、結果として孔ピッチPを39mmまたは64mmから65mmまたは107mmへ大きくできるので孔数を減らせることが判明した。
(拡径開口部を有する貫通孔の配置)
実施例Aは、貫通孔の孔径dを2mmに設定するとともにスペーサ12と共鳴用部材14との有効空隙H(共鳴用部材の位置)を20mmに設定し、かつ、複層ガラス10の4辺のうち、一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材14の中空層24側の全ての開口部を、拡径開口部の直径Dが2.6mm、深さlが0.3mmの皿孔状の拡径開口部とし、他の一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材14には拡径開口部(端加工)を設けていないものである。
実施例1a、1b、1b’と実施例Aとの比較から、複層ガラス10の4辺のうち、一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材14に拡径開口部(端加工)が設けられ(L型2辺の共鳴用部材14にのみ拡径開口部(端加工)が設けられている)、他の一対の隣り合う2辺に沿って配置された共鳴用部材14には拡径開口部(端加工)が設けられていない方が、遮音性能が高いことが判明した。なお、実施例Aでは、T−3不足量が3dB以下となっており、遮音等級はT−3を満たすものとみなされる。
以上の実験結果に基づき、拡径開口部が形成された共鳴用部材を有する複層ガラスは、従来のヘルムホルツ共鳴器を持った複層ガラス(比較例1a、1b、比較例2a、2b、比較例3a、3b)に拡径開口部構造という僅かの変更を加えるのみで、充分な遮音効果が得られるため、外観上好ましくない方向への修正を共鳴用部材に加えないでよい。また、異なるガラス構成品で同等の遮音等級の複層ガラスを揃えることに際しても、一般には遮音に不利なより薄いガラス構成を使用できることにつながる。したがって、サッシや窓などの建築空間に全く変更を加えることなく、優れた遮音性能が得られる技術であり、人口密度の高い都市空間において極めて有益である。
また、共鳴用部材に設けられた貫通孔の孔径を同じくしたままで、スペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしたり、または、スペーサと共鳴用部材との有効空隙を小さくしたままで、貫通孔のピッチを大きく(孔数を少なく)したりして、意匠性の点で不利にならないように既往の共鳴周波数計算式で表されるパラメータを選択しても、優れた遮音性能が得られる複層ガラスを提供することができる。
実施の形態に係る複層ガラスの一例を示した組立斜視図 図1に示した複層ガラスの縦断面図 複層ガラスを構成するスペーサと共鳴用部材とを含む複層ガラスの辺部の拡大断面図 共鳴用部材の貫通孔に形成された拡径開口部の好ましい例を示した説明図 共鳴用部材の貫通孔に形成された拡径開口部の好ましい例を示した説明図 共鳴用部材を複層ガラスの2辺に沿って設けた複層ガラスの要部斜視図 拡径開口部有無の複層ガラスの遮音性能を比較確認した表
符号の説明
10…複層ガラス、12…スペーサ、14…共鳴用部材、15…サポータ、16…貫通孔、16A、16B…拡径開口部、18…板ガラス、20…一次シール、22…二次シール、24…中空層、26…空洞部

Claims (2)

  1. 少なくとも2枚の板ガラスを、その周縁に配設したスペーサを介して隔置することにより、前記板ガラス間に中空層を形成してなる複層ガラスにおいて、
    前記複層ガラスの少なくとも1辺において、前記中空層内には前記スペーサに平行に該スペーサと所定距離の位置に共鳴用部材が配設され、該共鳴用部材、前記スペーサおよび2枚の板ガラスで画する空洞部が形成され、
    前記共鳴用部材の少なくとも1つには前記中空層と前記空洞部とを連通する複数個の貫通孔が形成されており、該貫通孔の一端または両端の開口部が、該開口部以外のストレート孔部よりも径が大きい拡径開口部とされていることを特徴とする複層ガラス。
  2. 前記複層ガラスの隣り合う2辺にのみ、前記拡径開口部を有する貫通孔が形成された共鳴用部材が配設されている請求項1に記載の複層ガラス。
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