JP2004209905A - 熱収縮性包装材 - Google Patents

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Abstract

【課題】インキ塗膜層が形成された状態でも、液比重分離法においてPETと精度良く分離することが可能な熱収縮性包装材を提供する。
【解決手段】単層もしくは多層の熱収縮性フィルムと、該熱収縮性フィルムの少なくとも片面上に形成されたインキ塗膜とを含む包装材であって、該包装材の少なくとも一方向における熱収縮率(80℃の温水中10秒間)が20%より大きく、及び、該熱収縮フィルムの厚み(d(μm))と該インキ塗膜の厚み(d(μm))の比が下記式の関係を満たすことを特徴とする包装材。
【数1】
/d=nY
(ここで、Y=(ρ−1.05)/(1.05−ρ)、n>=2であり、ρ(g/cm)は熱収縮性フィルムの温度23℃における密度(JIS K7112に準拠して測定)であって1.05未満であり、及び、ρ(g/cm)はインキ塗膜の乾燥状態での23℃における密度であって1.05より大きい)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、収縮包装、収縮結束包装、及び収縮ラベル等に使用される包装材及び該包装材を装着したプラスチック容器に関し、特に、プラスチック容器のリサイクルに際し、該容器と容易に分離することができる包装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性フィルムは、収縮包装、収縮結束包装、プラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、及びキャップシール等に広く使用されている。その材質としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0003】
清涼飲料水等の容器として利用されるポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと略する)製ボトルの収縮ラベル用としては、ポリスチレン系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる熱収縮性フィルムが使用されている。このPETボトルは使用後に、ポリエチレンテレフタレート樹脂のリサイクルのため回収されてフレークやペレットとして再生される。
【0004】
一般に、廃プラスチックをリサイクルする際、材質の異なるプラスチックを分離する必要がある。分離法としては、プラスチックの比重の差に基く液比重分離法が広く用いられている。この方法により、ポリスチレン系樹脂やポリエステル系樹脂からなる熱収縮性ラベルとPETボトルの粉砕品とを分離しようとした場合、該熱収縮性ラベルとPETボトルは、共に比重が1より大きく共に沈降してしまうので、PETボトルの粉砕品だけを精度良く分離する事は難しい。そこで、PETと分離できるよう、比重が低減された熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルムが知られている(特許文献1)。しかし、該積層フィルムを包装材として用いる際に、その上にインキ塗膜層を形成すると、PETと十分に分離できないという問題があった。インキ塗膜層を薄くすればよいのであるが、実際上、限度がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−202951号(特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記問題を解決し、インキ塗膜層が形成された状態でも、液比重分離法においてPETと精度良く分離することが可能な熱収縮性包装材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は下記のものである。
単層もしくは多層の熱収縮性フィルムと、該熱収縮性フィルムの少なくとも片面上に形成されたインキ塗膜とを含む包装材であって、該包装材の少なくとも一方向における熱収縮率(80℃の温水中10秒間)が20%より大きく、及び、該熱収縮フィルムの厚み(d(μm))と該インキ塗膜の厚み(d(μm))の比が下記式の関係を満たすことを特徴とする包装材。
【数2】
/d=nY
(ここで、Y=(ρ−1.05)/(1.05−ρ)、n>=2であり、ρ(g/cm)は熱収縮性フィルムの温度23℃における密度(JIS K7112に準拠して測定)であって1.05未満であり、及び、ρ(g/cm)はインキ塗膜の乾燥状態での23℃における密度であって1.05より大きい)
上記包装材の好ましい態様は以下のとおりである。
n>=2.5であることを特徴とする上記包装材。
23℃における密度が1.05 g/cm未満であることを特徴とする上記包装材。
熱収縮性フィルムの温度23℃における密度ρ(g/cm)が0.92〜0.99(g/cm)であることを特徴とする上記包装材。
熱収縮フィルムの厚みd(μm)が、30〜80(μm)であることを特徴とする上記包装材。
熱収縮性フィルムが、ポリスチレン樹脂又は環状オレフィン樹脂を主成分とする両外層と、ポリオレフィン樹脂を主成分とする中間層とを含む、少なくとも3層以上の共押出積層熱収縮性フィルムである上記包装材。
ポリスチレン樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブチルアクリレート共重合体又はこれらの混合物から選ばれることを特徴とする上記包装材。
環状オレフィン樹脂が、ガラス転移温度50〜90℃を有するエチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体であることを特徴とする上記包装材。
ポリオレフィン樹脂が、炭素数2〜20のα‐オレフィンの1種又は2種以上からなり、23℃における密度が0.940g/cm未満の(共)重合体であることを特徴とする上記包装材。
又、本発明は上記包装材からなる熱収縮性ラベルが装着されたポリエチレンテレフタレート樹脂製容器にも関し、好ましくは該容器はボトルである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の包装材は、熱収縮性フィルムと、該フィルム上に形成されたインキ塗膜を含む。インキ塗膜は、熱収縮性フィルムの表面及び/又は裏面の、通常、全面にグラビア印刷、バーコータ等の公知の方法により形成されてよい。該インキ塗膜は、乾燥状態で、JIS K7112に準拠して測定される温度23℃における密度(以下、単に「密度」という)が、通常、1.05 g/cmより大きく、例えば当該用途に広く使用されている銀色のインキのそれは1.55 g/cmであり、白色インキのそれは1.40 g/cmである。なお、本発明においてインキ塗膜の密度は、インキをバーコータ(#4番)で熱収縮性フィルム上にベタ印刷して23℃で24時間乾燥させた後、JIS K7112に準拠して包装材の密度を測定し、該密度から熱収縮性フィルムの密度を減じて求めたものである。
【0009】
本発明の包装材は、インキ塗膜の厚み(d(μm))に対する熱収縮フィルムの厚み(d(μm))の比が、下記式を満たすことを特徴とする。
【数3】
/d=nY
上式において、n>=2、好ましくはn>=2.5である。nが上記下限値未満であると、包装材とPETとの分離が不充分となる傾向がある。また、Y=(ρ−1.05)/(1.05−ρ)である。ここで、ρ(g/cm)は熱収縮性フィルムの温度23℃における密度であって1.05(g/cm)未満である。斯かる密度を有する熱収縮性フィルムについては後述する。また、ρ(g/cm)はインキ塗膜の温度23℃における密度であって、上述したように1.05(g/cm)より大きい。上式を満たすように各パラメータを設定することで、PETとの分離が良好な包装材が得られることが見出された。
【0010】
熱収縮性フィルムの厚み(d(μm))は、通常、100μm以下であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。また、強度の点から30μm以上であることが好ましい。インキ塗膜の厚み(d(μm))の上限値は、上式から求められる。下限値については特に限定は無いが、1μm未満とすることは実際上問題がある。通常、d(μm)は1〜10μm、好ましくは2〜7μmである。インキ塗膜が、熱収縮性フィルムの両面に形成される場合には、両方の塗膜の厚みを合わせた合計厚みをdとする。なお、本発明において厚みは、包装材の断面を光学顕微鏡により測定して求めた。
【0011】
本発明の包装材は、少なくとも1軸方向における80℃の温水中10秒間での熱収縮率が20%より大きく、好ましくは25%より大きい。該熱収縮率が20%未満のフィルムは、熱収縮性包装材としては実際上不適切である。
【0012】
本発明の包装材の温度23℃における密度は、好ましくは1.05g/cm未満、より好ましくは、1.03g/cm未満、さらに好ましくは1.00 g/cm未満である。斯かる密度であれば、液比重分離法によりPETと良好に分離することができる。密度の下限値については特に制限は無いが、通常、0.92g/cm程度である。
【0013】
本発明における熱収縮性フィルムは、好ましくは、その密度が0.99 g/cm以下であり、より好ましくは0.96g/cm以下、最も好ましくは0.94g/cm以下である。一方、該密度が0.92g/cm未満では弾性率が不足する場合があるので、0.92g/cm以上であることが好ましい。
【0014】
該熱収縮性フィルムは、JISK7105に準拠して測定される全ヘーズが10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、最も好ましくは5%以下である。全ヘーズが10%を超えるようなフィルムでは、インキ塗膜による明瞭なディスプレイ効果が奏されない。また、該熱収縮性フィルムは、その自然収縮率(例えば30℃、30日)が2%未満であることが、フィルムを保管する上で好ましい。
【0015】
該熱収縮性フィルムを構成する樹脂については、上述の各特性を満たすような種々の樹脂を用いることができ、例えば特開2001−301101号、特開2001−301102号、特開2000−246847号、特開2000−202951号公報に記載された樹脂を用いることができる。好ましくは、特開2000−202951号公報に記載された、ポリスチレン系樹脂又は環状オレフィン系樹脂を主成分とする両外層、及び、該両外層の間にオレフィン系樹脂を主成分とする中間層を含む少なくとも3層以上からなる積層フィルムであって、少なくとも1軸方向へ延伸された熱収縮性積層フィルム(以下、積層フィルムと称する)が使用される。
【0016】
該積層フィルムは、両外層がポリスチレン系樹脂、又は環状オレフィン系樹脂を主成分とし、印刷適性、溶剤シール性、寸法安定性に優れる。また、中間層がオレフィン系樹脂を主成分とする組成物であり、該積層フィルムの密度は0.99g/cm未満である。
【0017】
上記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系単量体の1種又は2種以上から主としてなるポリスチレン系共重合体、該共重合体ブロックとブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン系単量体の1種又は2種以上から主としてなる共役ジエン系共重合体ブロックとのブロック共重合体、また(メタ)アクリル酸エステル系単量体の1種又は2種以上と上記スチレン系単量体とからなるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。また、上記ポリスチレン系共重合体、ブロック共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0018】
上記ブロック共重合体の構造及び各ブロック部分の構造は特に限定されず、ブロック共重合体の構造としては、例えば、直線型、星型等であってよく、また、各ブロック部分の構造としては、例えば、完全対称ブロック、非対称ブロック、テトラブロック、テーパードブロック、ランダムブロック等であってよい。さらに、ブロック共重合体の構造及びブロック部分の構造、分子量、重合方法の異なるブロック共重合体が2種以上配合されているものでもよい。
【0019】
該ブロック共重合体として、スチレン系単量体がスチレンであり、共役ジエン系単量体がブタジエンであるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(以下、「SBS」と略す)が好適に使用される。該樹脂は、共重合の種類、ブロック部分の構造、分子量等の点で異なる非常に多くの種類のものが工業的に生産されており、要求特性に応じて複数の異なったSBSを組み合わせることにより各種のフィルム特性の制御が容易に行える。
【0020】
該SBSとしては、スチレン含有量が50〜95重量%であり、60〜90重量%であるものがより好ましい。スチレン含有量が50重量%未満では、フィルムの透明性や剛性、耐熱融着性が低く、一方、95重量%を超えるとフィルムの耐衝撃性が低く、好ましくない。
【0021】
また、上記スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体における下記一般式〔A〕で示される(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、上記(メタ)アクリレートには、アクリレート及び/又はメタクリレートが包含される。
【化1】
Figure 2004209905
上式中Rは水素又はアルキル基を示し、好ましくはメチル基である。Rは水素又はアルキル基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0022】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体において、最も好適に使用されるスチレン系単量体としてはスチレンであり、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてはブチルアクリレートである。
【0023】
該スチレン−ブチルアクリレート共重合体におけるスチレン含有量は、一般的には50〜98重量%であり、75〜95重量%の範囲が好ましい。スチレン含有量が前記下限値未満では、得られる積層フィルムの剛性が低く、好ましくない。一方、上記上限値を越えると、得られる積層フィルムに低温収縮性を付与することが困難となる。
【0024】
スチレン−ブチルアクリレート共重合体は、優れた低温収縮特性を付与できるが、硬くて脆いため、該樹脂単体での使用は好ましくない。該樹脂にスチレン系単量体と共役ジエン系単量体とからなるブロック共重合体を少なくとも1種以上配合することにより、積層フィルムに耐衝撃性が付与され、好ましい。
【0025】
環状オレフィン系樹脂としては、ガラス転移温度50〜90℃であるものが好ましい。ガラス転移温度が上記下限値未満では得られる積層フィルムの自然収縮(例えば30℃、30日保存後の収縮率)が大きく、寸法安定性に欠けるフィルムとなり易く、一方、90℃を超える場合、低温延伸が困難となり、良好な低温収縮特性が得られにくくなる。
【0026】
該環状オレフィン系重合体の結合形態は、上述した条件を満足すれば特に制限はなく、下記一般式〔B〕で表される環状オレフィンとエチレンとのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素化物、およびこれらの(共)重合体のグラフト変性物などが挙げられる。
【化2】
Figure 2004209905
上式において、R〜R12は、水素原子または炭化水素基であって、互いに同一でも異なっていてもよい。又、RとR10又はR11とR12は一体化して2価の炭化水素基を形成してよい。また、RもしくはR10とR11もしくはR12とは環を形成してもよい。nは0または正の整数であって、nが2以上である場合には、各繰り返し単位におけるR〜Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0027】
環状オレフィンの例としては、ビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体及びテトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体が挙げられる。ビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体の例には、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フエニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどが包含される。
【0028】
テトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体の例には、8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、2,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセンなどが包含される。
【0029】
本発明においては、環状オレフィンとエチレンとのランダム共重合体、例えば、上記一般式〔B〕で表される環状オレフィンの含有量が、共重合体重量の20〜50モル%程度である、該環状オレフィンとエチレンとの共重合体を好適に使用することができる。また、エチレン以外のα−オレフインを含むもの、又、第3成分としてブタジエン、イソプレンなどをさらに含有するものであってもよい。
【0030】
環状オレフィンの含有量により各種のガラス転移温度を有するものがあり、例えば、三井化学(株)製の「アペル」(商品名)、Ticona社製の「Topas」(商品名)、日本ゼオン(株)製の「ゼオノア750R」(商品名)等を挙げることができる。なお、環状オレフィン系重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−272216号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報などに記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
【0031】
さらに、本発明において、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン系ランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体の水添物を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物等の変性剤で変性したグラフト重合体も使用することができる。これらの変性剤は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0032】
積層フィルムの該両外層には、本発明の目的に支障を来たさない範囲で上記の樹脂組成物の他に、汎用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン−α−オレフィン共重合体、さらに脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂及びこれらの水素添加物等を混合して使用してもよい。
【0033】
積層フィルム中間層のオレフィン系樹脂としては、密度が0.940g/cm未満であって、エチレン、プロピレン等の炭素数2〜20のα−オレフィンを1種又は2種以上含む(共)重合体、及び/又はα−オレフィンと共重合可能なα−オレフィン以外の単量体、例えば酢酸ビニルやアクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体等を含む共重合体、又はこれらの混合樹脂が挙げられる。
【0034】
上記オレフィン系樹脂として好ましい重合体は、エチレン、又はプロピレンを主成分とし、それ以外の炭素数2〜8のα−オレフィンを1種又は2種以上含むエチレン系共重合体、又はプロピレン系共重合体であり、より好適に使用される重合体は、メタロセン触媒により重合された共重合体である。メタロセン触媒により重合されたエチレン系共重合体やプロピレン系共重合体からなるフィルムは、チーグラー触媒による共重合体からなるフィルムに比べ、機械的特性や透明性等の点で優れるためである。
【0035】
示差走査熱量計により測定される該オレフィン系樹脂の融点は、好ましくは160℃以下であり、145℃以下がより好ましく、80〜110℃の範囲が最も好ましい。80℃未満では、得られる積層フィルムの剛性が低く、フィルムの腰がなくなり好ましくない。また、160℃を越える場合は積層フィルムの低温延伸が困難となり、良好な低温収縮特性が得られない場合が生じる。
【0036】
該オレフィン系樹脂がエチレン系共重合体の場合、該共重合体のメルトフローインデックス(以下、「MI」と略する。)は、温度190℃、荷重21.18Nで0.5〜20g/10分が好ましく、1〜5g/10分がより好ましい。MIが0.5g/10分未満の場合は、溶融押出時の押出負荷が大きくなる場合があり、また、20g/10分を越えると、延伸安定性が低下する場合がある。
【0037】
また、該オレフィン系樹脂がプロピレン系共重合体の場合、そのMIは温度230℃、荷重21.18Nで0.5〜20g/10分が好ましく、1〜10g/10分がより好ましい。MIが0.5g/10分未満の場合は、溶融押出時の押出負荷が大きくなる場合があり、また、20g/10分を越えると、延伸安定性が低下する場合がある。
【0038】
さらに、該オレフィン系樹脂の融点が120〜160℃である場合、積層フィルムの低温収縮特性を向上させる為に、オレフィン系樹脂に石油系樹脂を添加してもよい。該石油系樹脂としては、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等及びこれらの水素添加物等が挙げられ、耐熱性等の点から水素添加した炭化水素系樹脂の使用が好ましい。市販品としては、例えばアルコン(荒川化学工業(株)製)、クリアロン(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。これらの石油系樹脂の軟化点は、110℃以上が好ましく、120〜150℃がより好ましい。軟化点が、110℃未満では、得られる積層フィルムの自然収縮が大きくなる場合があり、好ましくない。
【0039】
上記オレフィン系樹脂と石油系樹脂とを混合割合は、オレフィン系樹脂/石油系樹脂=95〜60/5〜40重量%が好ましく、90〜70/10〜30重量%がより好ましい。石油系樹脂の配合量が5重量%未満の場合、添加する目的である低温収縮特性の改良効果が発現しにくく、また40重量%を越えると延伸安定性が低下する場合が生じる。
【0040】
上記両外層と中間層との接着性が低い場合、本発明の目的に支障を来たさない範囲で、両外層と中間層との接着性を向上させる樹脂を中間層、又は/及び両外層へ配合しても良く、さらに、該樹脂を主成分とする層を両外層と中間層との間に接着層として設けても良い。このような樹脂としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸無水物及び酢酸ビニルの中から選ばれる1種又は2種以上を含む変成オレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物及び不飽和カルボン酸又はその誘導体で変成した変成物、スチレン−エチレングラフト共重合体、スチレン−エチレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0041】
なお、上記の各樹脂には、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機フィラー等を適宜添加することができる。
【0042】
上記の積層フィルムの製造は、任意の公知の方法で行うことができるが、上記の各層を構成する樹脂組成物を別々の押出機によって溶融し、これをダイ内で積層させて押し出す共押出成形法が好ましい。押出方法としては、Tダイ法、チューブラ法等、任意の方法を採用できる。溶融押出された積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウウェーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、一軸又は二軸に延伸される。
【0043】
延伸温度は、積層フィルムを構成する上記各樹脂の軟化温度や上記積層フィルムに要求される用途によって適宜選択できるが、60〜130℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。60℃未満では、延伸過程における材料の弾性率が高くなり過ぎて、延伸性が低くなり、フィルムの破断を引き起こし、又は、厚み斑が生じるなど、延伸が不安定になり易い。130℃を超えると、所望の収縮特性が得られず、また、延伸過程における材料の弾性率が低過ぎて、材料が自重で垂れ下がって延伸そのものが不可能になる場合がある。
【0044】
延伸倍率は、積層フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて、2〜8倍とするのがよい。本発明における熱収縮性フィルムは、少なくとも一軸延伸されていることが必要であるが、所望により二軸延伸とすることができる。また、一軸延伸の場合でも、フィルムの機械物性改良の目的等で縦方向に1.01〜1.8倍程度の弱延伸を付与することも効果的である。また、延伸した後の積層フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却するのも、収縮性を付与する上で重要である。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。ここで、熱収縮性フィルムの引取り(流れ)方向を「縦」方向、その直行方向を「横」方向と記載する。
(1)密度測定
JIS K7112に準拠して温度23℃において密度勾配管法により、フィルム又は包装材の密度を測定し、水の密度との比にから夫々の密度を算出した。
(2)熱収縮率
包装材を縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、80℃の温水バスに10秒間浸漬し収縮量を測定した。熱収縮率は、横方向について収縮前の原寸に対する収縮量の比(%)で表した。
(3)自然収縮率
包装材を横に1000mmの長さでけがき、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置後、けがき間の長さA(mm)を測定し、下記式より自然収縮率(%)を算出した。
自然収縮率(%)=(1000−A)/1000×100
表2において、自然収縮率が3%以下のものを「A」として、3%を超えるものを「B」として表した。
(4)全ヘ−ズ
熱収縮性フィルムの全ヘーズをJISK7105に準拠して測定し、7%以下のものを「A」、7%を超えるものを「B」とした。
(5)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷した包装材を縦100mm、横298mmの大きさに切り取り、横方向の両端を10mm重ねてテトラヒドロフラン/シクロヘキサン=8/2溶液を用いて、又はヒートシールにより接着し、円筒状とした。この円筒状積層フィルムを、容量1.5リットルの円筒型PETボトルに装着し、蒸気加熱方式で3mの収縮トンネル内を回転させずに、10秒間で通過させた。吹き出し蒸気温度は97℃、トンネル内雰囲気温度は87〜95℃であった。
包装材の被覆後、発生したシワ入り、アバタ、歪みの大きさ及び個数を総合的に評価した。評価基準は、シワ入り、アバタはなく、格子目の歪みも実用上問題なく、かつフィルムの密着性が良好なものを「A」、シワ入り、アバタ、格子目の歪みがあるものを「B」、シワ入り、アバタ、格子目の歪みが目立つか、収縮不足で実用上問題のあるものを「C」とした。
【0046】
実施例1
エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体(密度0.89g/cm、MI=4g/分(230≡、荷重21.18N)、融点130≡)56重量%と軟化点125≡の脂環式飽和炭化水素樹脂14重量%、スチレン30重量%とブタジエン70重量%とからなるブロック共重合体を完全水添したSEBS(密度0.91g/cm、MI5g/10分(230≡、荷重21.18N))30重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(密度1.02g/cm、MI6g/10分(190≡、荷重21.18N))50重量%とスチレン−ブチルアクリレート共重合体(密度1.05g/cm、MI4g/10分(190≡、荷重21.18N))50重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットを両外層を形成するための40mmF単軸押出機に入れて、180≡〜220≡にて溶融混練した。
そして、各層の厚み比が外層:中間層:外層=1:8:1となるように、各押出機の押出量を設定し、230≡に保った3層ダイスより下向きに共押出した。得られた積層体を冷却した後、90≡の温度雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に4.0倍延伸して、厚み60オmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの片面全面に、バーコータを使用して密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23≡で24時間乾燥し、厚み2オmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた、包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離法により分離したところ、包装材とPETが明瞭に分離した。
【0047】
実施例2
実施例1と同様の方法で積層フィルムを成形し、得られた積層フィルムの片面全面に、バーコータを使用して、密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23≡で24時間乾燥し、厚み5オmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた、包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離により分離したところ、包装材とPETが明瞭に分離した。
【0048】
実施例3
ガラス転移温度が70℃である環状オレフィン系重合体(三井化学(株)製、「アペル8008T」)80重量%とメタロセン系エチレン‐α‐オレフィン共重合体(密度0.90g/cm、融点89℃、MI4g/10分(190℃、荷重21.18N))20重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットを表裏層を形成するための40mmφ単軸押出機に入れて180〜230℃にて溶融混練した。また、メタロセン系エチレン−α−オレフィン共重合体(密度0.90g/cm、融点89℃、MI4g/10分(190℃、荷重21.18N))90重量%と低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm、融点128℃、MI2g/10分(190℃、荷重21.18N))10重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットを中間層を形成するための65mmφ単軸押出機に入れて180〜230℃にて溶融混練した。
そして、各層の厚み比が外層:中間層:外層=1:4:1となるように、各押出機の押出量を設定し、230℃に保った3層ダイスより下向きに共押出した。得られた積層体を冷却した後、87℃の温度雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に4.0倍延伸して、厚み60μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの片面に、バーコータを使用して密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23℃で24時間乾燥し、厚み5μmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた、包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離法により分離したところ、包装材とPETが明瞭に分離した。
【0049】
実施例4
実施例3と同様の方法で積層フィルムを成形し、得られた積層フィルムの片面全面に、バーコータを使用して、密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23≡で24時間乾燥し、厚み5オmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた、包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離により分離したところ、包装材とPETが明瞭に分離した。
【0050】
比較例1
実施例1において両外層に用いた混合樹脂ペレット(スチレン−ブタジエンブロック共重合体(密度1.02g/cm、MI6g/10分(190℃、荷重21.18N))50重量%とスチレン−ブチルアクリレート共重合体(密度1.05g/cm、MI4g/10分(190℃、荷重21.18N))50重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。これを65mmφ単軸押出機および両外層を形成するための40mmφ単軸押出機に入れて、180〜220℃にて溶融混練し、各層の厚み比が外層:中間層:外層=1:8:1となるように、各押出機の押出量を設定し、220℃に保った3層ダイスより下向きに共押出し、実質単層フィルムを得た。
得られたフィルムを冷却した後、90℃の温度雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に4.0倍延伸して、厚み60μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの片面に、バーコータを使用して密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23℃で24時間乾燥し、厚み3μmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた、包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離法により分離したところ、包装材とPETが共に沈降し、分離することができなかった。
【0051】
比較例2
実施例3にて中間層に用いた混合樹脂ペレット(メタロセン系エチレン−α−オレフィン共重合体(密度0.90g/cm、融点89℃、MI4g/10分(190℃、荷重21.18N))80重量%と低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm、融点128℃、MI2g/10分(190℃、荷重21.18N))20重量%を同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、ペレットを得た。これを65mmφ単軸押出機および両外層を形成するための40mmφ単軸押出機に入れて、180〜220℃にて溶融混練し、各層の厚み比が外層:中間層:外層=1:8:1となるように、各押出機の押出量を設定し、220℃に保った3層ダイスより下向きに共押出し、実質単層フィルムを得た。
得られたフィルムを冷却した後、87℃の温度雰囲気の三菱重工(株)製テンター延伸設備内で横方向に4.0倍延伸して、厚み60μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの片面に、バーコータを使用して密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23℃で24時間乾燥し、厚み8μmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価を行ったが、包装材にシワ入り、アバタが見られ、また、収縮不足でボトルに密着しなかった。このように、包装材として実用に供することができないので、本包装材についてはPETとの分離試験は行わなかった。
【0052】
比較例3
実施例1と同様の方法で積層フィルムを成形し、得られた積層フィルムの片面全面に、バーコータを使用して、密度1.55g/cmの銀色インキを印刷して23≡で24時間乾燥し、厚み8オmのインキ塗膜を形成した後上記各評価を行った。
収縮仕上がり性評価で得られた包装材を装着したPETボトルを粉砕し、液比重分離により分離したところ、包装材とPETが共に沈降し、分離することができなかった。
【0053】
表1及び表2に各フィルム及び包装材について得られた結果を示す。
【表1】
Figure 2004209905
(上表においてY=(ρ−1.05)/(1.05−ρ)、ρ及びρは温度23℃における密度(g/cm)であり、d及びdは厚み(μm)である。)
【0054】
【表2】
Figure 2004209905
【0055】
【発明の効果】
表1及び2から分かるように、本発明の包装材は、熱収縮率、自然収縮率、仕上がり性に優れ、且つ、液比重分離法でPETボトルの粉砕品と精度良く分離することができる。

Claims (11)

  1. 単層もしくは多層の熱収縮性フィルムと、該熱収縮性フィルムの少なくとも片面上に形成されたインキ塗膜とを含む包装材であって、該包装材の少なくとも一方向における熱収縮率(80℃の温水中10秒間)が20%より大きく、及び、該熱収縮フィルムの厚み(d(μm))と該インキ塗膜の厚み(d(μm))の比が下記式の関係を満たすことを特徴とする包装材。
    【数1】
    /d=nY
    (ここで、Y=(ρ−1.05)/(1.05−ρ)、n>=2であり、ρ(g/cm)は熱収縮性フィルムの温度23℃における密度(JIS K7112に準拠して測定)であって1.05未満であり、及び、ρ(g/cm)はインキ塗膜の乾燥状態での23℃における密度であって1.05より大きい)
  2. n>=2.5であることを特徴とする請求項1記載の包装材。
  3. 23℃における密度が1.05 g/cm未満であることを特徴とする請求項1または2記載の包装材。
  4. 熱収縮性フィルムの温度23℃における密度ρ(g/cm)が0.92〜0.99(g/cm)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の包装材。
  5. 熱収縮フィルムの厚みd(μm)が、30〜80(μm)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の包装材。
  6. 熱収縮性フィルムが、ポリスチレン樹脂又は環状オレフィン樹脂を主成分とする両外層と、ポリオレフィン樹脂を主成分とする中間層とを含む、少なくとも3層以上の共押出積層熱収縮性フィルムである請求項1〜5のいずれか1項記載の包装材。
  7. ポリスチレン樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブチルアクリレート共重合体又はこれらの混合物から選ばれることを特徴とする請求項6記載の包装材。
  8. 環状オレフィン樹脂が、ガラス転移温度50〜90℃を有するエチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体であることを特徴とする請求項6記載の包装材。
  9. ポリオレフィン樹脂が、炭素数2〜20のα‐オレフィンの1種又は2種以上からなり、23℃における密度が0.940g/cm未満の(共)重合体であることを特徴とする請求項6記載の包装材。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項記載の包装材からなる熱収縮性ラベルが装着されたポリエチレンテレフタレート樹脂製容器。
  11. 容器がボトルである請求項10記載のポリエチレンテレフタレート樹脂製容器。
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