JP4086396B2 - 熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等に使用される熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮包装や収縮結束包装、プラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、キャップシール等に広く使用される熱収縮性フィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」と略する。)系樹脂が最も良く知られている。これは、PVC系樹脂により作られた熱収縮性フィルムが、機械強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用性に優れ、コストも低いからである。
【0003】
しかし、PVC系樹脂は、廃棄後の燃焼時に塩素ガス等の副生成物が発生するという環境問題の観点から、PVC系樹脂以外の材料が要望されている。
【0004】
このような材料の1つとして、ポリスチレン(以下、「PS」と略する。)系樹脂が挙げられる。このPS系樹脂からなる延伸フィルムは、高い透明性や光沢性、剛性を有し、かつ、優れた低温収縮特性を有することから、熱収縮性フィルムとして使用することができる。
【0005】
ところで、廃プラスチックをリサイクルする際に、材質の異なるプラスチックを分離する方法として、水に対する浮力差を利用した液比重分離法が用いられる。この方法を用いて、PS系樹脂からなる熱収縮ラベルを被覆したポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略する。)系樹脂製ボトルの粉砕品を分離しようとした場合、PET系樹脂の比重は、1.3〜1.5と水より重く、また、PS系樹脂の比重は、1.03〜1.06と水より若干重い。このため、PET系樹脂とPS系樹脂が共に水に沈むため、PET系樹脂を高精度で分離することが難しくなる。
【0006】
このため、比重が1.0未満の熱収縮ラベルが求められる。この比重が1.0未満の熱収縮ラベル用の材料としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン(以下、「PO」と略する。)系樹脂による延伸フィルムが挙げられる。しかし、このPO系樹脂かならる延伸フィルムは、フィルムの剛性の不足、低温収縮性の不良、収縮時の収縮不足、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)等の問題が生じやすい。
【0007】
この上記PO系樹脂による延伸フィルムが有する問題点を解消する方法として、特開平8−267679号公報に、環状オレフィン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」と称す。)とからなる中間層と、その両外層にLLDPEを用いた層を積層した積層フィルムが開示されている。この積層フィルムは、高い引張り弾性率を有し、良好な高速包装機械適性を示す。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の積層フィルムは、両外層がLLDPEであると共に、中間層に50〜90重量%のLLDPEが含まれる。したがって、この積層フィルム中のLLDPEの含有割合が高い。このため、この積層フィルムは、十分な剛性を発揮しにくい場合が生じやすいと考えられ、また、該積層フィルムでは自然収縮が大きくなりやすいと考えられる。
【0009】
また、特開平8−267679号公報において、上記積層フィルムの比重について検討されていない。しかし、一般的に、熱収縮性包装用フィルムの表面又は裏面にグラビア印刷法等により印刷を施すと、印刷の分だけ比重は大きくなる。このため、この積層フィルムを熱収縮ラベルとしてPETボトルに使用する場合、リサイクル時に上記液比重分離法で高精度に分別するためには、積層フィルムの印刷後の比重が1.0未満となるように、積層フィルムの組成を決定する必要がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、PO系樹脂を用いた熱収縮性フィルムの剛性を向上させると共に、熱収縮性フィルムの比重を0.96未満とすることにより、熱収縮ラベルの機能を維持し、かつ、リサイクルを可能とし、熱収縮ラベルの粉砕品とPET系樹脂製ボトルの粉砕品を液比重分離法で精度よく分離できるようにすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、密度が0.94g/cm3 未満のポリオレフィン系樹脂からなる層を中間層とし、この表裏面に、下記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物及びエチレンからなる環状オレフィン系重合体、又は、下記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物を開環重合してなる重合体若しくはその水素添加物を主成分とする環状オレフィン系樹脂70〜90重量%と、結晶性ポリオレフィン系樹脂30〜10重量%との組成物からなる表面層及び裏面層を設けて、少なくとも一軸方向に3〜6倍延伸した熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルムを得ることにより上記課題を解決したものである。
【0012】
【化3】
【0013】
なお、式中、R1 〜R12は、水素原子、炭化水素基であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R5 とR10、又は、R11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。また、R3 若しくはR10と、R11若しくはR12とは互いに環を形成してもよい。nは0又は正の整数であって、R5 〜R8 が複数回繰り返される場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
上記表面層及び裏面層では、環状オレフィン系樹脂の含有量を増加させているため、これらの層の強度は増加する。したがって、積層体全体としての剛性も向上する。
【0015】
また、密度が0.94g/cm3 未満のポリオレフィン系樹脂からなる層を表面層及び裏面層とし、この両層間に、下記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物及びエチレンからなる環状オレフィン系重合体、下記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物を開環重合してなる重合体若しくはその水素添加物から選ばれ、又は、これらを主成分とする環状オレフィン系樹脂70〜90重量%と、結晶性ポリオレフィン系樹脂30〜10重量%との組成物からなる表面層及び裏面層を設けて、少なくとも一軸方向に3〜6倍延伸した熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルムを得ることができる。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R1 〜R12は、上記と同様である。)
上記中間層は、環状オレフィン系樹脂の含有量を増加させているため、これらの層の強度は増加する。したがって、積層体全体としての剛性も向上する。
【0018】
さらに、上記熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルムの比重を0.96未満とすることができる。
【0019】
積層フィルムの比重を0.96未満とすることにより、印刷後の該積層フィルムをリサイクル時に液比重分離法で精度よく分別可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルム(以下、「積層フィルム」と称する。)の実施形態を説明する。
【0021】
この発明にかかる第1の実施形態は、ポリオレフィン系樹脂(以下、「第1PO系樹脂」と称する。)から形成される層を中間層とし、この表裏面に、環状ポリオレフィン系樹脂(以下、「環状PO系樹脂」と称する。)及び結晶性ポリオレフィン系樹脂(以下、「第2PO系樹脂」と称する。)の組成物からなる表面層及び裏面層を設けて積層体を形成し、これを延伸したものである。
【0022】
上記第1PO系樹脂は、低密度のポリオレフィン系樹脂である。該樹脂の例としては、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」と略する。)やLLDPE、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのけん化物、アイオノマー樹脂、ポリプロピレン樹脂、プロピレン−ブテン共重合体、又は、これらの混合物等が挙げられる。上記LLDPEは、エチレンとα−オレフィンの共重合体であり、該共重合体に使用されるα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。上記ポリオレフィン系樹脂の中でも、LLDPEが好ましい。
【0023】
上記第1PO系樹脂の密度は、0.94g/cm3 未満がよく、0.90〜0.93g/cm3 が好ましい。密度が0.94g/cm3 以上だと、得られる積層フィルムの比重が0.96以上となる場合が生じやすい。このとき、印刷を施した該フィルムをPETボトルの被覆用として使用した場合、リサイクル時に液比重分離法で精度よく分別しにくくなることがある。また、0.90g/cm3 未満では、得られる積層フィルムの腰がなくなり、好ましくない。
【0024】
また、上記第1PO系樹脂の示差走査熱量計(以下、「DSC」と略する。)により測定される融点は、高くても120℃が好ましく、80〜110℃がより好ましい。120℃を越えると、得られる積層フィルムの低温延伸が困難となる場合があり、良好な低温収縮特性を得られない場合が生じる。
【0025】
さらに、上記第1PO系樹脂のメルトフローインデックス(以下、「MI」と略する。)は、0.5〜5.0g/10分が好ましい。MIが0.5g/10分未満の場合は、溶融押出時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、5.0g/10分を越えると、延伸安定性が低下する場合がある。
【0026】
上記環状PO系樹脂とは、下記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物をモノマーとする重合物である。
【0027】
【化5】
【0028】
なお、上記の化学式中、R1 〜R12は、水素原子、炭化水素基であって、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R5 とR10、又は、R11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。また、R3 若しくはR10と、R11若しくはR12とは互いに環を形成してもよい。nは0又は正の整数であって、R5 〜R8 が複数回繰り返される場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
上記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物の具体例としては、ビシクロ[2.2.1 ]ヘプト−2−エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.16]−3−ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]−4−ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17 ]−5−ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14 ]−4−ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−ウンデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13 ]−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカシエン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.03.13]−3−ペンタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13.6.110.17.112.16.02.7.011.16]−4−エイコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14.7.113.20.115.18.03.8.02.10.012.21 .014.19 ]−5−ペンタコセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]−3−ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.18.03.8.012.17]−5−ヘイエイコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15.8.114.12.118.19.02.11.04.9.012.22.015.20 ]−5−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物等が挙げられる。
【0030】
上記環状PO系樹脂としては、上記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物及びエチレンからなる環状オレフィン系重合体、又は、上記式〔A〕で表される環状オレフィン化合物を開環重合してなる重合体若しくはその水素添加物を主成分とするものが挙げられる。
【0031】
上記環状PO系樹脂は、DSCにより測定されるガラス転移温度が50〜140℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。50℃未満では得られる積層フィルムの自然収縮が大きくなる場合があり、140℃を越える場合は良好な低温収縮特性を得ることが困難となる場合がある。
【0032】
上記第2PO系樹脂とは、結晶性のポリオレフィン系樹脂をいい、例えば、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と略する。)、LDPE、LLDPE、又は、これらの混合物等が挙げられる。
【0033】
この第2PO系樹脂の密度は、0.94〜0.98g/cm3 が好ましい。密度が0.94g/cm3 より小さい場合、得られる積層フィルムは、十分な剛性を得られない場合がある。また、0.98g/cm3 より大きくても良いが、得られる積層フィルムの比重が0.96以上となる場合が生じやすく、印刷を施した後、フィルムの比重を1.0未満とすることが困難となる。
【0034】
また、上記第2PO系樹脂のDSCにより測定される融点は、高くても140℃が好ましく、120〜130℃がより好ましい。140℃を越えると、得られる積層フィルムの低温延伸が困難となる場合があり、均一な延伸を行えない場合がある。
【0035】
さらに、上記第2PO系樹脂のMIは、0.5〜4.0g/10分が好ましい。MIが0.5g/10分未満の場合は、溶融押出時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、4.0g/10分を越えると、延伸安定性が低下する場合がある。
【0036】
上記環状PO系樹脂と第2PO系樹脂の混合比は、重量比で環状PO系樹脂/第2PO系樹脂=70〜90/30〜10がよい。環状PO系樹脂が70重量%未満の場合は、得られる積層フィルムの透明性が低下し、また剛性が低下する場合がある。また、環状PO系樹脂が90重量%を超える場合は、得られる積層フィルムの比重が0.96を超える場合がある。
【0037】
通常、熱収縮性フィルムに要求される透明性としては、全ヘーズで10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。全ヘーズが10%を超えるようなフィルムではクリアーなディスプレー効果が低下してしまい好ましくない。
【0038】
上記の各樹脂には、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機フィラー等を適宜添加することができる。
【0039】
上記積層フィルムの各層の厚みは、(表面層+裏面層)/中間層=1/5〜1/1が好ましく、1/4〜1/2がより好ましい。この値が1/5より小さくなると、剛性が低下する場合があり、また、得られる積層フィルムの自然収縮が大きくなり、寸法安定性に欠けるフィルムとなる場合があり、実用上好ましくない。1/1より大きくなると、得られる積層フィルムの比重が0.96以上となる場合が生じやすい。
【0040】
一般的に、熱収縮性フィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましく、例えば、30℃、30日程度の条件下で2%未満であれば実用上問題を生じない。
【0041】
上記の積層フィルムの製造は、特に限定されるものではなく、例えば、上記の表面層、裏面層及び中間層を別々の押出機によって溶融し、これをダイ内で積層させて押し出す方法が挙げられる。押出方法としては、Tダイ法、チューブラ法等、任意の方法を採用できる。溶融押出された積層樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線、マイクロウウェーブ等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、一軸又は二軸に延伸される。
【0042】
延伸温度は、積層フィルムを構成する上記各樹脂の軟化温度や上記積層フィルムに要求される用途によって変えられるが、60〜120℃がよく、80〜100℃が好ましい。60℃未満では、延伸過程における材料の弾性率が高くなり過ぎ延伸性が低下し、フィルムの破断を引き起こしたり、厚み斑が生じるなど、延伸が不安定になり易い。120℃を超えると、所望の収縮特性が発現しなかったり、延伸過程における材料の弾性率が低下し過ぎ、材料が自重で垂れ下がって延伸そのものが不可能になったりする。
【0043】
延伸倍率は、積層フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて、3〜6倍とするのがよい。さらに、一軸延伸とするか、二軸延伸とするかは、目的の用途によって決定される。また、一軸延伸の場合、横方向(フィルムの流れ方向と直角方向)に3〜6倍の延伸を付与し、縦方向(フィルムの流れ方向)に1.01〜1.8倍程度の弱延伸を付与してもよい。この場合、フィルムの機械物性改良の点で効果的である。
【0044】
また、延伸した後の積層フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却するのも、収縮性を付与し、保持する上で重要である。
【0045】
延伸後の積層フィルムは、80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも、一方向において20%以上である必要がある。20%未満の場合は、熱収縮フィルムとして実用的な機能は発揮しえない場合が生じる。
【0046】
上記の延伸された積層フィルムの片面あるいは両面には、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理が施されてもよく、また、この表面又は裏面にグラビア印刷法等の任意の方法で印刷することができる。このとき、上記積層フィルムの密度の水に対する比、すなわち、比重は、印刷の分だけ比重は大きくなる。上記積層フィルムをPETボトルの被覆材として使用した場合に、リサイクル時に水に対する浮力差を利用した液比重分離法を用いることを考慮すると、印刷処理後の上記積層フィルム全体の比重は、1.0未満がよく、0.90〜0.98が好ましい。これにより、PET樹脂と積層フィルムを構成する樹脂を高精度に分離することが可能となる。
【0047】
この発明にかかる第2の実施形態は、第1PO系樹脂から形成される層を表面層及び裏面層とし、この両層間に、環状PO系樹脂及び第2PO系樹脂の組成物からなる中間層を設けて積層体を形成し、これを延伸したものである。
【0048】
この第2の実施形態の積層フィルムは、上記第1の実施形態の積層フィルムの中間層の構成成分を表面層及び裏面層の構成成分とし、また、表面層及び裏面層の構成成分を中間層の構成成分としたものであり、各層の厚み以外については、上記第1の実施形態の場合と同様である。
【0049】
第2の実施形態の積層フィルムの各層の厚みは、(表面層+裏面層)/中間層=1/1〜5/1が好ましく、2/1〜4/1がより好ましい。この値が5/1より大きくなると、剛性が低下する場合があり、また、得られる積層フィルムの自然収縮が大きくなり、寸法安定性に欠けるフィルムとなる場合があり、実用上好ましくない。1/1より小さくなると、得られる積層フィルムの比重が0.96以上となる場合が生じやすい。
【0050】
【実施例】
以下に、この発明について実施例を用いて説明する。なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。ここで、積層フィルムの引取り(流れ)方向を「縦」方向、その直行方向を「横」方向と記載する。
【0051】
(1)熱収縮率
積層フィルムを、縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、80℃の温水バスに10秒間浸漬し収縮量を測定した。熱収縮率は、横方向について収縮前の原寸に対する収縮量の比(%)で表した。
【0052】
(2)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷した積層フィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向の両端を10mm重ねてヒートシールし、円筒状とした。この円筒状積層フィルムを、容量1.5リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式で3mの収縮トンネル内を回転させずに、10秒間で通過させた。吹き出し蒸気温度は99℃、トンネル内雰囲気温度は90〜94℃であった。
フィルムの被覆後、発生したシワ入り、アバタ、歪みの大きさ及び個数を総合的に評価した。評価基準は、シワ入り、アバタはなく、格子目の歪みも実用上問題なく、かつフィルムの密着性が良好なものを○、シワ入り、アバタ、格子目の歪みは若干あるが、フィルムの密着性は実用上問題のないものを△、シワ入り、アバタ、格子目の歪みが目立つか、収縮不足が目立ち実用上問題のあるものを×とした。
【0053】
(3)自然収縮率
フィルムを縦方向100mm×横方向1,000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比(%)で表した。
【0054】
(4)全ヘーズ
JIS K 7105に準拠し、フィルム厚70μmで測定した。
【0055】
(5)引張弾性率
縦方向において、雰囲気温度23℃、チャック間を300mmとして、幅5mmのフィルム試験片を引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張応力−歪み曲線を作成した。引張弾性率は、引張応力−歪み曲線の始めの直線部分を用いて、次式にって計算した。
E=σ/ε
E:引張弾性率
σ:直線上の2点間の単位面積(引張試験前のサンプルの平均断面積)当たりの応力の差
ε:同じ2点間の歪みの差 。
【0056】
(6)比重
フィルムを2mm×7mmに切り出し、JIS−K7112に準拠して、浮沈法によって測定した。
【0057】
(実施例1)
密度0.904g/cm3 、MI4.0g/10分のLLDPE(宇部興産株式会社製:ユメリット0540F)を、中間層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0058】
また、密度0.960g/cm3 、MI2.0g/10分のHDPE(日本ポリオレフィン株式会社製:ジェイレクスHDKL471A)10重量%と、ガラス転移点が70℃の環状オレフィン−エチレン共重合体(三井化学株式会社製:APL8008T)90重量%の混合組成物を、表面層及び裏面層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0059】
そして、各層の厚みの比が、表面層:中間層:裏面層=1:4:1となるように、各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層ダイスより下向きに共押出した。押し出された溶融積層体をキャストロールで冷却した後、90℃の温度の雰囲気のテンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み70μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
このフィルムの横方向の熱収縮率は36%で、全ヘーズは3.2%、自然収縮率は1.4%であった。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはなく、格子目の歪み等の収縮斑も実用上問題なく、フィルムの密着性も良好であった。
【0061】
(実施例2)
実施例1で使用したLLDPEを、表面層を形成するための押出機、及び、裏面層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0062】
また、実施例1で使用したHDPE30重量%、及び、環状オレフィン−エチレン共重合体70重量%の混合組成物を、中間層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0063】
そして、各層の厚みの比が、表面層:中間層:裏面層=1:1:1となるように、各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層ダイスより下向きに共押出した。押し出された溶融積層体をキャストロールで冷却した後、90℃の温度の雰囲気のテンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み70μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
このフィルムの横方向の熱収縮率は33%で、全ヘーズは4.4%、自然収縮率は1.6%であった。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはなく、格子目の歪み等の収縮斑も実用上問題なく、フィルムの密着性も良好であった。
【0065】
(比較例1)
実施例1で使用したLLDPEのみを押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練し、ダイスより下向きに共押出した。これをキャストロールで冷却した後、90℃の温度の雰囲気のテンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み70μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
このフィルムは、全ヘーズが2.0%と透明性は良好であるが、横方向の熱収縮率が17%と実用的に不足であった。また、引張弾性率が22kgf/mm2 と非常に低く、フィルムの腰が不足しており、自然収縮率も3.1%と大きく、寸法安定性のないものであった。収縮仕上がりの状態は、明らかに収縮不足の部分があった。
【0067】
(比較例2)
実施例1で使用したLLDPEを表面層を形成するための押出機、及び、裏面層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0068】
また、上記LLDPE70重量%、及び、環状オレフィン−エチレン共重合体30重量%の混合組成物を中間層を形成するための押出機に入れて180〜240℃にて溶融混練した。
【0069】
そして、各層の厚みの比が、表面層:中間層:裏面層=1:4:1となるように、各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層ダイスより下向きに共押出した。押し出された溶融積層体をキャストロールで冷却した後、90℃の温度の雰囲気のテンター延伸設備内で横方向に3.0倍延伸して、厚み70μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
このフィルムの横方向の熱収縮率は26%で、全ヘーズは6.5%であった。引張り弾性率が47kgf/mm2 と低く、腰のないフィルムであった。また、自然収縮率が2,4%と悪く、寸法安定に欠けるものであった。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはなかったが、格子目の歪みが若干あった。
【0071】
(比較例3)
実施例1において、中間層を形成する混合組成物をHDPE40重量%、環状オレフィン−エチレン共重合体60重量%とした以外は全く同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0072】
このフィルムの横方向の熱収縮率は31%で、引張り弾性率が65kgf/mm2 であった。また自然収縮率は1.8%と良好であったが、全ヘーズが10.2%と透明性に欠けるものであった。収縮仕上がりの状態は、シワ入りやアバタはなく、格子目の歪み等の収縮斑も実用上問題なく、フィルムの密着性も良好であった。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
この発明によれば、熱収縮性積層フィルムの剛性が向上されると共に、熱収縮性積層フィルムの比重が0.96未満となる。このため、熱収縮性積層フィルムの熱収縮性ラベルとしての機能を維持すると共に、リサイクルを可能とし、熱収縮性積層フィルムの粉砕品とPET系樹脂製ボトルの粉砕品を液比重分離法で精度よく分離することができる。
Claims (3)
- 密度が0.94g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂からなる層を中間層とし、この中間層の表裏面にそれぞれ、下記式〔A〕で表され、ガラス転移温度が50〜140℃である環状オレフィン化合物及びエチレンからなる環状オレフィン系重合体、又は、下記式〔A〕で表され、ガラス転移温度が50〜140℃である環状オレフィン化合物を開環重合してなる重合体若しくはその水素添加物を主成分とする環状オレフィン系樹脂70〜90重量%と、結晶性ポリオレフィン系樹脂30〜10重量%との組成物からなる表面層及び裏面層を設けて積層体を形成し、この積層体を少なくとも一軸方向に3〜6倍延伸した、80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において20%以上である熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルム。
- 密度が0.94g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂からなる層を表面層及び裏面層とし、この両層間に、下記式〔A〕で表され、ガラス転移温度が50〜140℃である環状オレフィン化合物及びエチレンからなる環状オレフィン系重合体、又は、下記式〔A〕で表され、ガラス転移温度が50〜140℃である環状オレフィン化合物を開環重合してなる重合体若しくはその水素添加物を主成分とする環状オレフィン系樹脂70〜90重量%と、結晶性ポリオレフィン系樹脂30〜10重量%との組成物からなる中間層を設けて積層体を形成し、この積層体を少なくとも一軸方向に3〜6倍延伸した、80℃×10秒の熱収縮率が少なくとも一方向において20%以上である熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルム。
- 比重が0.96未満である請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリオレフィン系積層フィルム。
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