JP2004209830A - 伸縮性皮革加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】柔軟性に富み、伸長回復性および通気性を有する伸縮性皮革加工品の製造方法を提供する。特に、全方向に伸縮性が優れたものである。このような伸縮性皮革加工品が得られ、伸びを有する天然皮革に適した伸縮性接着基材を提供する。
【解決手段】接着基材において、ポリウレタン弾性糸を用いて伸縮性布帛と成し、ホットメルト性接着剤を部分的に塗工するため、伸びのある天然皮革と高伸度の方向に整合せしめてボンデイング加工が良好に行え、得られた最終製品は、弾性回復に優れ、風合いが柔軟で、且つ通気性を有し、表面質感が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】接着基材において、ポリウレタン弾性糸を用いて伸縮性布帛と成し、ホットメルト性接着剤を部分的に塗工するため、伸びのある天然皮革と高伸度の方向に整合せしめてボンデイング加工が良好に行え、得られた最終製品は、弾性回復に優れ、風合いが柔軟で、且つ通気性を有し、表面質感が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革のボンデイング加工品を作る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から布地や他の皮革を裏貼りした皮革材は一般に知られている。登録実案3043008号公報に、縦・横全方向の伸縮性がよい皮革の裏面に、横方向もしくは縦方向の伸縮性が大きく縦方向もしくは横方向の伸縮性が小さい若しくは殆どない布地を貼り合わせた皮革材が開示されている。
この方法では、横方向の伸びまたは縦方向の伸びを有する1ウエイ方向のみ伸びる生地であるから、獣皮のコラーゲン繊維が、皮の部分によって密度やからみ合いの程度、角度に差があり、高密度な繊維の流れはおよそ背骨の方向に並行してカーブして首や尻尾の近くでは背骨に垂直になって、その方向の抗張力が強い性質があって、最大伸び方向に整合、不整合の部分が生じてしまう。この結果、皮革材に多くのロスが発生して、快適性が乏しいものになる問題があった。
また、伸縮性に追従しない接着剤や塗工の方法では、皮革材が硬化して、縦・横全方向の伸縮性がかえって阻害され、全くストレッチ性の無い部分や通気性が全く無い問題があった。
さらに、皮革の厚さについても、漉きの厚さが厚いほど抗張力が強く、薄くなるにつれて柔らかくなるが強力が比例的に減少する。現状0.5〜0.6mm厚以上であり、布地または他の皮革を裏貼りすれば、当然厚みが増し、使用制約や硬くなるため、衣料ガーメント、インテリヤ、車両用椅子等の皮革材はほとんど見当らなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革をボンデイング加工して、すべての伸縮性布帛の伸びが全体として伸長性を有する天然皮革に整合し、結果として伸縮性皮革加工品に高快適性と高品質を提供することを目的とする。
【0004】
【発明が解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の伸縮性皮革加工品の製造方法は、
(a)少なくとも縦方向および/または横方向に伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を含有してなる伸縮性布帛に、伸縮性を妨げない接着剤で、通気性を有する塗工を施してなる接着基材を提供する、
(b)縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を提供する、
(c)少なくとも天然皮革の選択された面積部分と接着基材が共に、両者がより高伸度の方向に整合するように重ね合わせる、
(d)接着基材と伸長性を有する天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する方法、
を特徴とする。
【0005】
また、本発明の方法においては、伸縮性布帛が織物または編物からなり、全方向および/または縦・横方向に伸長率40%以上を有すること、接着基材と天然皮革がより高伸度の方向に整合する角度が天然皮革の背骨に対して60〜120度の範囲に重ね合わせること、接着剤がホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系、またはラテックス等で、塗工が全面でなく点または線状であり、且つ塗工量が15g/m2以上を有すること、および予め接着剤を離型紙に塗工したものを伸縮性布帛とアイロン接着し、そのうえに最終製品の各パーツを型入れして天然皮革のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせた後、プレスアイロン加工、裁断・縫製すること等が好ましい条件である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の伸縮性皮革加工品の製造方法を具体的に説明するが、これらの実例は例を挙げて説明するためで、発明の範囲を限定するものでなく、請求項により規定する。
【0007】
<弾性糸の材料>
本発明の伸縮性布帛に用いられる弾性糸としては、ゴム状弾性を発現できる合成および天然の樹脂材料やゴム材料が使用できる。
具体的には、ポリウレタン弾性糸、エーテル・エステル系弾性糸、ポリアミド系弾性糸が使用できる。天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからの糸条の材料いわゆる糸ゴムも使用できる。
【0008】
特に、本発明の目的に適した交織、交編材料として、ポリウレタン弾性糸が挙げられる。ポリウレタン弾性糸は、高伸長、・高弾性回復性がある。
さらに、本発明の交撚材料としては、ポリウレタン弾性糸を綿糸、合成繊維フィラメント糸およびそれらの仮撚加工した伸縮加工糸でカバー撚糸した被覆弾性糸であってもよい。
【0009】
<ポリウレタン弾性糸の製法>
かかるポリウレタン弾性糸は、長鎖ジオールとジイソシアネートでプレポリマーをつくり鎖伸長剤でつないでソフトセグメント(ジオールの部分)とハードセグメントとが交互に並んだ長鎖状高分子である。
本発明においては、エーテル系ポリウレタンでは長鎖ジオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGと略称)のようなポリエーテルジオールが好ましい。短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタジオール、ヘキサンジオール等が用いられ、ジイソシアネートとしては、4,4‘−ジフェニールメタンジイソシアネート(MDI)が最も多く使用される。鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミンがポリウレタンウレアを形成させるために好適である。ポリウレタンウレアの最終的な分子量を調節するために反応混合物に鎖伸長剤を含有させることが好ましい。
また、ポリエーテルエステル系ポリウレタンではハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用して、鎖伸長剤は使われない。
【0010】
本発明で使用するポリウレタン重合体にはベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の耐候剤、ヒンダードフェニール系等の酸化防止剤、酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料、硫酸バリワム、酸化亜鉛、酸化セシウム、銀イオン等を含有する機能性添加剤を含有させることも好ましい。
本発明では、前記ポリウレタン重合体を溶媒に溶解させてポリウレタン溶液とするのが好ましい。
ポリウレタン溶液を調整するための溶媒として、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を使用することが好ましい。特にDMAcが好ましく用いられる。
かかるポリウレタン溶液を、乾式紡糸法、溶融紡糸法等により紡出し、後加工で利用し易くするために、粘着防止剤や平滑促進剤等の添加物を含む鉱物系またはシリコーン系、さらには、これらの混合物の油剤を、糸条の表面に適宜付着させた後、巻き取り機で巻き取ることによって得ることができる。
ポリウレタン溶液の濃度は、紡糸性等の観点から、溶液の全重量を基準として、30〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは35〜38重量%の範囲である。
本発明においては、最終製品に所望のストレッチ性および弾性回復性を付与する観点から、強度、耐摩耗性に優れたポリウレタン弾性糸を用いるのが好ましい。
【0011】
このようにして得られたポリウレタン弾性糸の太さは、22〜2500デシテックスの範囲が好ましく、33〜1240デシテックスの範囲がより好ましい。また、ポリウレタン重合体のタイプは酸化チタン、酸化鉄等の添加物を含有した表面摩擦係数が高いものがより好ましい。かかる添加剤の含有量は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0012】
<伸縮性加工糸の加工>
本発明の合成繊維フィラメント糸としては、熱セット性または伸長回復性を向上させるために、熱可塑性合成繊維からなる糸条を用いるのが好ましい。例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリロニトリル、ビニロン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン等のフィラメント糸が好ましく、特に、ポリエステル(以下、ポリマー別に、PET、PBT、PTTと略す)、ナイロン(以下、同様に、N6、N66)アクリロニトリル、ポリプロピレン等のフィラメント糸が好ましい。
そしてこれらの伸縮性加工糸としては、通常の嵩高加工糸に用いられている仮ヨリ式加工法、押し込み式加工法および擦過式加工法等や原糸メーカーによるPOY−DTY、UY−DTYおよびワンステップ高速紡糸延伸仮より式加工法からの各種伸縮性加工糸が好ましい。特に、ポリエステル(2ndヒーター)、ナイロンの仮ヨリ加工糸、POY−DTY等がより好ましい。
伸縮性加工糸の太さは、総繊度33〜990デシテックスの範囲が好ましく、44〜470デシテックスの範囲がより好ましい。
【0013】
<被覆弾性糸の撚糸加工>
本発明の被覆弾性糸としては、弾性糸が芯成分で、伸縮性加工糸または紡績糸が鞘成分であるものが使用される。
弾性糸として、前記ポリウレタン弾性糸であり、伸縮性加工糸として、ポリエステル、ナイロン糸等の仮ヨリ加工糸またはPOY−DTYを用いることが好ましい。これらは、通常市販のカバーリング撚糸機を用い、芯成分となる弾性糸にドラフトなる延伸をかけ、この弾性糸の周りを伸縮性加工糸で一重もしくはさらに二重に巻回されて被覆して得ることができる。また、リング撚糸機もしくは意匠撚糸機を用いて、伸縮性加工糸と1本または2本と合撚することも好ましく行はれる。
ドラフト倍率(伸長された長さ/原長)は2倍以上に伸長するのが好ましく、より好ましくは2.5〜4倍の範囲である。2倍に満たない伸長では、カバーリング通過性が不足して十分な被覆がなされない。さらに、一重巻きの場合の撚数は相手素材の太さ、フィラメント数に応じて、適宜選択するとよいが、300〜1,000T/Mの範囲が好ましい。二重巻きの場合は、下撚/上撚の撚数で旋回トルクのバランスをとり、旋回力をよりゼロに近い撚数を設定することが望ましく、下撚数に対する上撚数の比率は約50〜95%程度で好適なトルクバランスを得ることができる。
また、通常のリング精紡機でコアヤーンをまたは前述のリング撚糸機もしくは意匠撚糸機で伸縮性加工糸と同様に被覆弾性糸を作ることも好ましい。
【0014】
<伸縮性布帛の設計>
本発明の伸縮性布帛としては、構成糸の一部がポリウレタン弾性糸または伸縮性を有する合成繊維フィラメント糸、あるいは前述の被覆弾性糸から構成された織物または編物が使用され、縦・横の一方の伸長率が40%以上必要である。
織物としては、経糸および緯糸の両方、あるいは経糸または緯糸にポリウレタン弾性糸の被覆弾性糸を使用する。経糸および緯糸に被覆弾性糸を使用した場合、2ウエイストレッチ織物を得るので好ましい。経糸または緯糸のみに被覆弾性糸を使用し、且つこれに対抗する方向に前記伸縮性加工糸を使用した場合にも、経方向または緯方向のストレッチ性が異なるものとなるが、2ウエイストレッチ織物となる。具体的には、
織物では、経糸の太さ55〜168デシテックス、フィラメント数11〜144フィラメント、緯糸の太さ84〜200デシテックス、フィラメント数20〜500フィラメントで、経密度50〜85本/in、緯密度55〜75本/inの平織または綾織によって、厚さ0.4〜0.8mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は16重量%以下であることがより好ましい。また、ポリエステルと綿、ポリエステルとレーヨン等の混紡糸の太さ、織物もほぼ同様に扱うこともできる。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常44〜78デシテックスの範囲で、伸箱性加工糸も単繊度0.5デシテックス以上を使用することにより、中厚地資材となりより好ましい。
【0015】
また、編物としては、丸編もしくは経編にポリウレタン弾性糸または伸縮性加工糸を有する合成繊維フィラメント糸またはこれらの被覆弾性糸を使用する。
経編にポリウレタン弾性糸を使用した場合、経緯目に連続する編目に用いることにより2ウエイストレッチ編物を得ることができ好ましい。また、丸編目において、全編目にポリウレタン弾性糸を使用した場合、2ウエイストレッチ丸編物を得ることができる。また、1コース毎にポリウレタン弾性糸または被覆弾性糸を交編した場合には、低伸度の2ウエイストレッチ丸編物となる。具体的には、
丸編物では、糸の太さ55〜300デシテックス、フィラメント数11〜144フィラメントで、編機ゲージ18〜36針/inで編成されたコース密度50〜65C/in、ウエール密度45〜75w/inの両面編または天竺編によって、厚さ0.3〜0.8mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は16重量%以下であることがより好ましい。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常22〜78デシテックスの範囲で、伸縮性加工糸も0.5デシテックス以上であるが、0.5デシテックス以下の単繊度を使用することにより、資材の風合になりより好ましい。
【0016】
次に、経編物では、合成繊維フィラメント糸の太さ33〜840デシテックス、フィラメント数6〜144フィラメントで、編機ゲージ9〜36針/inで編成されたコース密度41〜64c/in、ウエール密度55〜80w/inのハーフトリコット、緯糸挿入鎖編トリコット組織、または6コースチュール、6コースパワーネット組織のラッセル編によって、厚さ0.2〜0.7mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は最大で35重量%であることが好ましく、さらにポリウレタン弾性糸25重量%以下であることがより好ましい。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常22〜480デシテックスの範囲で、伸縮性加工糸も通常単繊度1.5デシテックス以上を使用することにより、資材の風合いになりより好ましい。
【0017】
<接着基材の製法>
本発明の接着基材としては、前記伸縮性布帛に伸縮性を妨げない十分に弾性のある接着剤であれば、通気性を有する塗工を施すことによって使用可能なものが得られる。例えば、ホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系またはラテックス、感圧接着剤、反応性接着剤、膠等を用いることができる。
塗工方法は、多孔性や呼吸性を適度に保有する不連続な塗布、例えば、点状または規則的な直線の組み合わせ、または蜘蛛の巣状に不規則な波形を描くことで、いずれも伸縮性布帛全面に接着するのでなく、点・線状に塗工を施す必要がある。
塗工量は、12g/m2以上であればよい。好ましくは、15〜25g/m2の範囲がよく、12g/m2未満であれば耐久性が十分でなく接着剥離を起こし、一方、25g/m2以上になると多孔性が無くなり、余分な接着剤が溶けて接着基材の裏面までしみ抜ける問題が発生する。従い、接着基材の裏面に離型紙を敷くことにより、ホットロール、またはフラット面を汚すことなく操作できる。時に、伸縮性布帛の裏面には、軽い撥水加工をしておくことが望ましい。
【0018】
また、予め接着剤を離型紙に前項と略同一の塗工を施しておく手法も採用できる。この手法によれば、大小様々な形状をしたパーツを容易に、無駄なく型入れすることができる。この利用は、接着剤を塗工した離型紙に先に各パーツを型入れするか、もしくは塗工した離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで仮接着せしめ、それに各パーツを型入れ・裁断した後、前記天然皮革の小片部分のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせることもできる。
【0019】
さらに、前記接着剤にキチン・キトサン粉末、備長炭粉末、竹炭粉末、またはトルマリン粉末等を単独、または混合することも好ましい。
【0020】
<天然皮革>
本発明に用いる天然皮革としては、縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を提供することにある。
伸長性を有する皮革と言っても、獣皮であるため、全面に一様に、全方向に等伸度を有するものではない。また、一度革を伸ばすと、力を除いた後でも伸びが残る可塑性があり、変形が回復しない。
伸度を有するものとしては、その一例として幼少動物である仔羊革(ラム、シープ)、仔牛・中牛革(カーフ・キップ)、山羊革、比較的伸度を有する牛革(ジャージ種)、カンガルー革、鞣し工程で伸縮加工した牛革(シュリンクレザー)、豚革、または厚さを薄く、例えば、0.3〜0.4mm厚に漉くことによって、用途毎に十分な伸縮性皮革を得ることができる。ただし、あまりに薄く漉いたり、鞣し加工すると、傷ついたり、回復性がなくなり使えない部分が生じる。
また、利用する皮革面では、獣皮の外皮面を銀面(グレーンサイド)、内側面(フレッシュサイド)を順にヌバック、スエード、ベロアと区分するが、内側面ほどコラーゲン繊維の繊維束の粗密度、太繊維、粗交絡等になっていて歪を受け易く、伸ばされ回復性がなく、型崩れし易くなる。
最終製品に最も一般的に使用されている皮革の厚さは、婦人靴では1.2mm、アスレチック用では1.5mm、ブーツでは1.7mm厚みである。バッグでは1.2〜1.7mm、衣料ガーメントのパンツ、ジャンバーおよびコート類での銀付き0.6〜0.9mm、スエードでは0.5〜0.7mmのより軽く、より柔らかく、より薄いもの。婦人手袋では0.5mm前後、インテリヤのソファーでは1.2〜1.6mmおよび車両用椅子では1.2±0.2mmの厚みである。
これらの問題解決に、伸縮性布帛と伸縮性を有する天然皮革をボンデイング加工することによって、伸縮性快適衣料、伸縮性資材および軽量化、補強の意義は大きい。
【0021】
<ボンデイング加工>
本発明の伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革のボンデイング加工した最終製品は、伸長された後、応力を解放すると元の形に回復できる。また、しなやかで、ソフト感のある伸縮性皮革加工品となる。
一般に、皮革の変形歪は試験サンプルが伸長から解放された後、原長に対しての歪である。変形歪は薄く、伸長性のある天然皮革にとっては重要であって、伸長性のない皮革に比べてより大きな伸長応力を受け、歪やすいものとなるからである。それらの皮革は簡単に伸ばされ、型崩れし易いものであり、元の寸法に実質的に回復できない。
【0022】
そこで、本発明の製造方法では、獣皮全体の85%が選択された面積部分になり、伸縮性布帛からなる接着基材と伸長性を有する天然皮革の伸び方向を整合させることができる。また、従前以上に薄く0.3〜0.4mm厚に分割・漉いた場合に有効である。これは次の構成要素から成される。
A、大きな接着基材に丸革をボンデイング加工する方法、
このA法で最も留意する両素材の高伸度方向を整合させるとは、合わせる角度が少なくとも天然皮革の背骨に対して60〜120度の範囲であり、好ましくは75〜105度以内が望ましい。さらに、両者の伸長特性に差違があるため、合致する程度にも若干違いを生じるので、有効に整合させる用件として、皮革のポイントである選択された面積部分で直角±10度の範囲で確度が要求される。
(a)全方向に伸縮性を有する伸縮性布帛に伸縮性を妨げない接着剤で、通気性を有する塗工を施してなる接着基材を少なくとも1枚準備する、
(b)縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を準備する、
(c)(a)の接着基材の高伸度方向と(b)のいずれかである天然皮革の少なくとも1つの高伸度方向が選択された面積部分が皮革全体の51%以上であって、両者がより高伸席の方向に整合するように重ね合わせる、
(d)そして、接着基材と天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する。
(e)最後に、最終製品の各パーツを型入れ・裁断する。
ここで、両素材共に伸長させず、自然な基材の流れで、重ね合わせることが重要である。また、縦・横方向の伸度差の大きい接着基材を天然皮革よりやや大きめに裁断し、バイアス状に重ねあわせることも好ましい。接着基材を伸長させた状態でボンデイング加工すると、皮革の端末部分に折れしわやカールが発生し、皮革の表面には光沢感のない小じわが生じる。
【0023】
B、離型紙に各パーツを型入れ後、小片皮革でボンデイング加工する方法、
このB法では、小さな各パーツから構成される最終製品に有効である。
先ず、小さい各パーツを型入れ・裁断した後、小部分からなる天然皮革にボンデイング加工するには、様々な方向に伸びる方向が分布している皮革に有効で、各パーツを継ぎはぎ状に皮革の各部分の高伸度の方向に整合させる必要がある。その用途のために最大限伸縮性を有効に発揮でき、獣皮欠点をボンデイング加工前に排除することができるため、ほとんどロスがない。
(f)接着剤を塗工した離型紙に先に最終製品の各パーツを型入れするが、もしくは塗工した離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで接着せしめ、その後に各パーツを型入れ・裁断した後、切り離した各パーツを小部分の天然皮革のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせる、
(g)最後に、接着基材と天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する。
ここで、連続した離型紙に各パーツを型入れする方法は、前項A法に準じた整合をする必要がある。
【0024】
<接着プレス機>
本発明で使用するボンデイング加工用の接着プレス機は、革の艶出し、平滑さの付与および型押しに使用するプレスアイロン、接着プレス機等であればよい。タイプは、ローラー型、またはフラット型のいずれでもよい。接着する条件である温度、圧力、時間をセットするダイアルが設置され、事前に条件出し試験をして選び出す。通常、ホットメルト性樹脂であれば、120℃前後が適温で接着基材サイドから加熱し、地の目に逆らわず、中心から端に伸ばすようにかけるとよい。送り速度は、低速度2.6〜5m/分が好ましい。圧力はローラー型で3.5kg/cm2、フラット型で1.5kg/cm2付近であればよい。
【0025】
<最終製品>
本発明のボンデイング加工による表面が皮革で、伸縮特性を利用できる皮革製品であれば、各種の製品に適用できる。
より具体的には、以下に列挙する各用途および製品が挙げられる。
A)靴;
高級婦人用&メンズ用甲革、ブーツ、スニーカー、各競技用運動靴、
B)衣料;
コート(オーバー、七分)、ジャケット、ジャンバー、ブレザー、ドレス、カーディガン、パンツ、スカート、ライダースーツ、
C)家具、車両;
椅子、ソファー〈住宅、商業〉、自動車内装、航空機内装
D)バッグ;
ハンドバック、カバン、革袋
E)服飾資材;
帽子、服装ベルト、服装用手袋、防寒用手袋、作業用手袋(製菓・ベーカリー、溶接、消防)、スポーツ用手袋(ゴルフ、野球、乗馬、ドライバー、ホッケー、アスレチック)、小物
F)その他伸縮性を有する皮革製品;
水着、ボタン、ボール(サッカー、バスケット、ラグビー、バレー)
【0026】
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
<ボンデイング加工工程>
図1は、本発明の実施形態を表すボンデイング加工装置の一例を示す斜視図である。
図1において、接着基材1は、先ず、戴置用フラットゾーン10にあるメットコンベア7上に移動し、予め用意された天然皮革2を接着基材1上に自然な状態で戴置させる。さらに、天然皮革2の大きさによって、前後・左右の間隔や伸縮性方向を吟味しながら位置取り、皺の無い状態にする。次いで、プレスアイロンボックス機20(2点鎖線)内に導かれ、ホットロール5に接着基材1が接圧されるように1〜2個からなる反転ロール3,4を介して、接着剤12(図示せず)を天然皮革2に溶着せしめた後、フェルトベルト8で出口に移動し、最終的に巻取りロール9に巻き取られる。
【0027】
ここで、プレスアイロン機20は、働き幅1800mm、熱源200℃以下、標準圧力30kg/cm2以下、ロールスピード3.5〜12m/分からなる構造を有するのが望ましく、シープ、カーフ類を主体にした伸縮性を有する天然皮革2に接着処理するためには、温度、圧力、時間を与えることが必要である。
本発明のボンデイング加工では、ホットメルト性接着剤をホットロール温度110〜160℃、柔らかくなった接着剤12を天然皮革2に喰いこませる圧力1.5〜3.0kg/cm2の範囲で、処理時間15秒以内の処理で強固な接着を連続に得ることができる。
他の単独の方式においては、前工程として、リードクロス(フェルト)上において、予め接着剤12を塗工した離型紙(図示せず)に最終製品の各パーツを型入れするか、もしくは離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで接着せしめ、その後に各パーツを型入れ・裁断した後、切り離した各パーツを天然皮革2のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせる。後工程として、プレスアイロン機20で重ねられた接着基材1と天然皮革2をアイロン処理する、通常の独立したホットロール型またはフラット型のいずれかの方法も好ましい。
【0028】
図2は、本発明の伸縮性布帛の全方向伸長特性図であり、(a)は弾性糸交編編地、(b)は弾性糸交織織物である。
図2の特性軸Xは、織編地の横方向(ウエール方向)の伸び率(%)を、特性軸Yは、織編地の縦方向(コース方向)の伸び率(%)を示す。
同図(a)において、曲線Iは、弾性糸交編ハーフトリコットであって、全方向伸び率の形状がタテ長の長円を示している。経編地におけるポリウレタン弾性糸がタテ方向に連続した経編目で形成されているため、縦方向(コース方向)が横方向(ウエール方向)よりも伸び率が大きい。最大伸び率は、縦方向200%超であるのに対して、横方向150%である。
曲線IIは、弾性糸交編ダブル丸編地のインターロック組織であって、ヨコ長の長円(Y軸上凹)を示している。丸編地のポリウレタン弾性糸がヨコ方向に連続した緯編目で形成されているため、横方向(ウエール方向)が縦方向(コース方向)よりも伸び率が大きい。最大伸び率は、横方向150%に対して、縦方向100%付近である。
【0029】
一方、同図(b)において、曲線IIIは、ナイロン加工糸使い被覆弾性糸を縦横糸に共用した1/3綾織物であって、全方向伸び率の形状がタテ長の変形長円(60°方向凸)を示している。一般の織物におけるポリウレタン弾性糸は経糸の太さが緯糸の太さより太糸使いが多く、伸び率も縦方向(長さ方向)が横方向(幅方向)よりも大きい。最大伸び率は、縦方向60%に対して、横方向25%付近である。
曲線IVは、綿/レーヨン混紡糸使いで、ポリウレタン弾性糸を当該糸と複合撚糸した後、横糸に打ち込んだ平織物であって、ヨコ長の長円を示している。平織物のポリウレタン被覆弾性糸がヨコ方向にのみ構成されているため、横方向(幅方向)のみ伸びて、縦方向(長さ方向)の伸びは些少の組織伸びである。
最大伸び率は、横方向(幅方向)40%に対して、縦方向(長さ方向)15%程度である。
【0030】
同図(a)と(b)を比較すると、伸びの方向はポリウレタン弾性糸の交編または交織によって特定されるが、相対的伸び率は、圧倒的に編物が大きく変形し、織物は小さい。そこで、取り扱い作業性の面では織物が皮革に整合しやすく、薄地感の伸縮性皮革加工品を得やすい。編物は伸び変形が大きいので、接着基材までの加工管理が難度高く、両耳の折れしわ、あたり欠点に留意する必要がある。
【0031】
図3は、本発明の接着基材および離型紙の塗工を示す正面図であり、(a)はドット、(b)はクロスおよび(c)は蛛の巣状である。
図3(a)において、接着基材1の表面に接着剤12(黒点)がタテ、ヨコに規則的に配置されたドットタイプの塗布形状である。
接着剤12は、前述のとおり、ホットメルト性接着剤やラテックス、感圧接着剤、反応性接着剤、膠等が使用できる。本発明では、伸縮性を有する天然皮革との接着剥離がなくて、強い接着力を有し、作業性の良い、汚れ防止に最も適したホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系が好ましい。
ドットタイプとしては、天然皮革2が比較的厚手で、伸縮性の少ないものに、大粒で粗い形状がよい。例えば、塗工量20g/m2以上がよく、より好ましくは25〜30g/m2の範囲で、1cm2に30個塗布がよい。一方、薄くて、よく伸長性のある天然皮革2には、小粒で細い形状がよい。例えば、塗工量20g/m2未満で、1cm2に150〜180個塗布がよい。または、ランダムパウダーであってもよい。
図3(b)および(c)においては、本発明の変化形が示されている。
同図(b)において、接着基材1の表面に接着剤12(実線)が左右斜め方向にクロスした線状に塗工されている。他の線状塗工には、クロスの線状が直角のもの、単にタテ方向のみ、またはヨコ方向のみのものであってもよく、さらにバーコードのように太さの違いのものであっても良い。
同図(c)において、接着基材1の表面に接着剤12(曲線)が無秩序に塗工されている。この無秩序は、複数の曲線が同一に描かれていてもよいし、重複してもよい。なお、(b)および(c)の塗工量は、前記(a)と同様であればよい。
本発明における塗工は、いずれも点または線状の形状を成し、接着面が接着基材1の全面でなく、部分接着である必要がある。
【0032】
<伸縮性皮革加工品>
図4は、本発明の型入れ法の一例を示す婦人ブレザーの正面図であり、(a)は前身頃、(b)は後身頃、(c)は衿と見返し上下および(d)は袖とポケットである。
図4では、婦人ブレザーの1着に要する天然皮革2の面積は、約400デシ(DS)とされる。例えば、ピッグスキン丸革4枚(a)、(b)、(c)および(d)で平均120デシ(DS)を使用して、前身頃、後身頃と他のパーツにまとめた形で型入れする。
同図(a)には、1枚目のピッグスキンの背骨を対象に、前身頃A1と前身頃A2を頭から尻に向かって、左右対象に配置する。同様に前脇B1を前身頃A1の外側に、前脇B2を前身頃A2の外側に配置したものである。
同図(b)には、2枚目のピッグスキンに(a)と同様に後身頃C1、C2の外側に後脇D1、D2を配置する。
同図(c)には、3枚目のピッグスキンに(a)と同様に頭部付近に表衿H1、裏衿H2、H3を横長に配置する。見返し上I1、I2を左右対称に、その外側に見返し下I3、I4を配置する。
同図(d)には、4枚目のピッグスキンに(c)と同様に袖E1、E2を左右対称に、その外側に内袖F1、F2をそれぞれ配置する。ポケットG1、G2の2枚を袖E1、E2の尻部に近い所に配置する。
【0033】
ここで、革衣料は、数枚の皮革を組み合わせて作るため、色合わせが必要である。また、皮革では、銀面の不揃い、キズ、シボ、光沢のムラがあるため、避けて歩留まりのよい型入れすることが重要である。また、2枚漉き、3枚漉きのスエード面はバフイング加工で調整するとよい。
革服のデザインを考える基本は、素材となる天然皮革の性状を理解することが最も必要である。天然皮革の項で記述したとおり、天然皮革は、一枚一枚面積が異なり、さらに部位により性状が異なっている。天然皮革の部位による性状の差異、型紙の使用部分を考えると、切り替えが必要となる。パターンの中で切り替えをどこに使うか、どう生かすか、すなわち美的で、かつ機能的な切り替えが重要である。また、高級品には、柔らかくて軽い山羊革、シープ・ラム革、仔・中牛革が用いられ、一部豚革、鹿革等が用いられる。これらの特徴をさらに進化させたより薄く、より快適に、を満たす本発明の伸縮性皮革品がより望ましい。
【0034】
図5は、本発明の他の型入れ法を示す靴甲部品と伸びの方向を示した正面図である。
図5では、左半分に靴甲の各パーツを配置し、右半分に天然皮革の部位別伸び方向を矢印で示めした。
同図において、右半分は、天然皮革2の伸び方向(矢印;←−→)を大略的に示すと胴周りイ、前後の足周りロ、ハの3方向から成る。この伸び方向に靴の伸縮性を必要とする甲部材J(点線)を整合させたものである。左半分は、靴甲部品の各パーツを網羅させて配置したものである。例えば、婦人用カジュアル靴(デザイン右半分と異なる)の前面甲材J、外側甲材K、内側甲材L、かかと材M、爪先材Nおよび舌部材Oがあり、各パーツの配置は、パーツの持つ伸びの方向が必要なものから整合させながら配置したものである。なお、比較的パーツのサイズが小さいものまたは伸びの不要なものは、例えば、こしかわ材M、爪先材N等であり、伸び方向を考慮しながら隙間を埋める。
【0035】
ここで、革靴は、1枚の皮革で数足の婦人用パンプスや紳士靴が作れるから同一品質を作るために、各パーツの配置が重要になる。特に、顧客にとって美しさと履き良さが持続することが大切である。伸びを必要とする靴の部位は、爪先材Nと前面甲材J、次いで外側甲材K、内側甲材Lであり、反対に不必要な部位は、こしかわ材M、舌部材Oである。従来、革靴用の皮革において、伸びや強さを計っても靴作りに最適が、履き良いか、長持ちするか、という試験はしていない。多くは、先達諸賢の経験や履き良い靴の市場での評判の良いもの、売れ行きの長さから得られる蓄積によって皮革の良さが判定されてきた。
【0036】
本発明では、革靴のユース別(カジュアルシューズ、ドレスシューズ、スポーツシューズ)に必要な材質を選択したうえで、婦人ドレスおよび紳士靴の銀面革には、従来皮革に近い比較的硬めの低伸度の材質を用い、前面甲材Jに伸縮性を持たせて「ヒールから爪先の硬い方向に」型入れして、靴の長さ方向に安定、横方向に柔軟でストレッチ性を有し、釣込み作業、踏付部位の応力緩和を容易にすべく、履き心地の良い、足に対して疲労、痛みの無い健康に配慮を施している。特に、婦人靴に苦情が多い魚の目、外反母趾、アキレス腱等に対応できる。スポーツシューズおよびスニーカーのスエード革(漉き革)には、こしかわ材Mを除いて他の部位は、柔らかい靴が作れる本発明の伸縮性皮革が好ましく適用される。
【0037】
図6は、本発明の実施例を示す伸縮性皮革に負荷を繰返した伸びのヒステリシス曲線図であり、(a)は本発明の伸縮性皮革加工品、(b)は従来の皮革である。
図6の特性軸Xは、皮革の伸び(歪)の大きさを、特性軸Yは応力(負荷)の大きさを示す。負荷の大きさは、靴を履いた時に相当する足の圧力1.5kg/cm2に近似させた。
同図(a)において、本発明の伸縮性皮革加工品(シープ革と弾性糸交編ハーフトリコットをボンデイング加工)の応力〜伸び特性は、右上がりのA曲線(実線、O→A)を示す。また、同一測定条件で、負荷を繰り返した(3回)伸びのヒステリシス曲線は、第1回目の応力線(実線、O→A1)、除重線(点線、A1→C1)、第2回目の応力線(点線、C1→A2)、除重線(点線、A2→C2)、第3回目の応力線(点線、C2→A3)、除重線(点線、A3→C3)に沿ってヒステリシス曲線となる。
同図(b)において、伸長性を有する天然皮革(シープ革)の応力〜伸び特性は、急激な右上がりのB曲線(実線、O→B)を示した。(a)と同一のヒステリシス曲線は、第1回目の応力線(実線、O→B1)、除重線(点線、B1→D1)、第2回目の応力線(点線、D1→B2)、除重線(点線、B2→D2)、第3回目の応力線(点線、D2→B3)、除重線(点線、B3→D3)であった。
ここで、(a)と(b)を観察比較すると、本発明の伸縮性皮革加工品は天然皮革に比べ、全体に応力が小さい。また、除重後の歪(回復しない弛み量;ここでは、O→C1〜O→C3、O→D1〜O→D3の大きさ)も少なく、回復性のよいことが判る。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を具体的に示すが、この発明は下記実施例に限定されない。なお、性能評価は次の方法で行った。
<性能評価試験>
(1)伸縮性布帛、天然皮革の共通特性は、下記のJIS規格に準処して実施した。
【0039】
(2)高伸度方向に整合する角度
接着基材の縦方向または横方向のいずれか高伸度の方向に整合する角度とは、伸びを有する天然皮革の背骨に対する角度で表す。
A、全くよく整合する角度;直角
B、不整合な角度;ゼロ度(伸縮性皮革が伸度ゼロになる)
(3)繰り返しヒステリシス曲線
繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪は、衣料のバギング試験の意である。L−1061(B−2法;定伸長法)。
バギングとは、織物衣料または革衣料の特定部分に力が加わり、繊維、糸または皮革が伸長して、その部分が突出し、膨れた状態で固定される現象。例えば、ひじ抜け、膝抜けなど。
(4)耐・水洗濯性
水洗濯後に皮革が硬化、寸法変化(面積)が15%以上生じるまでの洗濯回数で示した。(L−1089に準処)
【0040】
【実施例1】
ナイロン糸56デシテックス−17フィラメント(カネボウ合繊(株)製;N6タイプ、トリコット用原糸)とポリウレタン弾性糸33デシテックスT−127c(東レ・デユポン(株)製;“ライクラ”)を用いて、ハーフトリコット編成し、液流染色して仕上げ幅120cmの伸縮性布帛を得た。生地特性は、目付84g/m2、厚さ0.31mm、最大伸び率100%(タテ)×75%(ヨコ)、伸長弾性率96%(ヨコ、除重1時間後、以下同じ)、混用率89%(N)×11%(PU)であった。得られた生地に、スパイラルヘッド塗布による蜘蛛の巣状に、塗工量30g/m2のポリアミド系ホットメルト性接着剤(日本リルサン(株)−プラーテボン社製;“プラタシド”H005)で接着基材を製作した。
天然皮革は、「衣料用および服飾手袋用皮革」として兵皮連/北摂地区皮工協組(川西市)にて、加脂を軽減したクロム塩併用のコンビネーション鞣し牛革(ジャージイ種)で、最大伸び率20%(タテ)×30%(ヨコ)、伸長弾性率77%(ヨコ)、丸革面積250デシ、厚さ0.6mmを入手した。
次いで、図1に例示した連続式皮革ボンデイング加工装置を用いて、一旦ネットコンベア上に静止した接着基材(タテ伸び>ヨコ伸び)上に、数枚の天然皮革の銀面内側(フレッシュサイド)を伸長させることなく直角に戴置させ、さらに両者が高伸度の方向に整合するように前後・左右や伸縮性方向を考慮して、幾枚かは位置の調整、表面や両耳の皺伸ばし手作業を済ませた。ネットコンベアを作動してプレスアイロンボックスで加圧式(5.5kg/cm2)加熱ロール120℃に導き、処理時間15秒間のボンデイング加工を行った。
【0041】
得られた伸縮性皮革加工品は、厚さ0.83mm、伸び率17%(タテ)×26%(ヨコ)、伸長弾性率89%(ヨコ)および繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪6%(3回)であった。さらに、剥離接着力2.8kgf/25mm、耐ドライクリーニング性も良好であった。
【0042】
【比較例1】
実施例1において、接着基材に対して天然皮革をゼロ度(整合しない)に戴置した以外は、実施例1と同様にしてボンデイング加工を行った。
得られた伸縮性皮革加工品は、伸び率2%(タテ)×5%(ヨコ)、繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪21%も大で元の天然皮革と全く変化なく、望ましい物性は得られなかった。
【0043】
【比較例2】
実施例1において、伸縮性布帛の生地に対して、エチレンー酢酸ビニル系ホットメルト性接着剤(日東化成工業(株)製;“ナイメルト”)で塗工をロールコーテイング法による塗工量10g/m2で全面接着した以外は、実施例1と同様にしてボンデイング加工を行った。
得られた伸縮性皮革加工品は、伸長弾性率85%(ヨコ)と良好ながらも、剥離接着力0.3kgf/25mmと弱くほとんど実用性に劣り、通気性が全くないものであった。
【0044】
【実施例2】
ポリエステル84デシテックス24フィラメントの仮より加工糸(東レ(株)製;織物用DTY1ヒーター)を経糸に、芯糸にポリウレタン弾性糸44デシテックスT−127(前出;“ライクラ”)、カバー糸にポリエステル84デシテックス24フィラメント(東レ(株)製;ニット用DTY1ヒーター)のシングルカバーリング撚糸で、ドラフト倍率3.5倍、撚数500回/M(撚り方向Sより)のポリエステル被覆弾性糸を緯糸として、1/3綾織を製織した後、高圧液流染色(125℃)を実施して伸縮性布帛を得た。生地特性は、目付105g/m2、厚さ0.35mm、最大伸び率18%(タテ)×34%(ヨコ)、伸長弾性率98%(ヨコ)、混用率97%(PET)×3%(PU)であった。得られた生地に、乾式ドットコーテイングタイプ、塗工量25g/m2で、ポリエステル系ホットメルト性接着剤(東洋紡(株)製;“バイロン”GM900)で接着基材を製作した。
天然皮革は、実施例1と同様に{衣料用皮革}を各タンナーで、特に分割機で銀面0.3〜0.6mm厚に分割したクロム鞣しの仔羊革(シープ)、仔牛革(カーフ)、山羊革(ゴート)および豚革(ピッグ)等を入手し、表1に示した。
次いで、タンナー併設のロールアイロン機(北村機械工業(株)製:Hydraulicthrough feed type ironing machine)を使用して、接着基材を天然皮革の大きさに切断したものを平台上で最高伸度方向に整合された天然皮革の背骨に対して直角に近い状態に準備しておき、ホットロール温度125℃、加圧ロール3.8kgf/cm2、処理時間20秒間のボンデイング加工を行った。
【0045】
得られた伸縮性皮革加工品は、表1に各皮革別に特性値を示した。
【表1】
この結果、従来の厚さ(約0.7mm)以下の漉きであれば、丸革でさらに軽量、高伸長の方向が得られ有益なものとなる。
【0046】
【実施例3および比較例3】
綿/レーヨン混紡糸(混用率65%/35%)綿番手24/2(東レ(株)製;織物用)を経糸に、緯糸として当該糸2本とポリウレタン弾性糸235デシテックスT−127(東レ・デユポン(株)製;“ライクラ”)、ドラフト倍率3、1倍、撚り数400回/m(撚り方向Sより)リング撚糸機で交撚した被覆弾性糸を用いて、平織を製織した後、常圧染色(98℃×45分)で黒色に染色した高弾性・ハイストレッチ性を有する横伸びの伸縮性布帛を得た。生地の特性値は、目付370g/m2、厚さ0.7mm、最大伸び率45%(ヨコ)、伸長弾性率98%(ヨコ)、混用率62%(C)32%(R)6%(PU)であった。また、前工程として、塗布は、離型紙(幅120cm)にロールコート法ドットタイプ、塗工量30g/m2で、ポリエステル系ホットメルト性接着剤(東亜合成化学工業(株)製;“アロンメルトPES”120H)を接着製作した。この塗工した離型紙を得られた生地に、一旦アイロンで接着せしめ、接着基材を長さ方向1,5mに4枚裁断して準備した。
天然皮革は、{靴甲用皮革}を東京都台東区内の協粗資材連傘下から中牛革(キップ)のアニリン仕上げ銀付き革およびエナメル基(キップ)を購入し、皮革特性を表2に示した。
次いで、単独のプレスアイロン機で、実施例3−1は、接着基材の横伸び方向をアニリン仕上げ銀付き革の最大伸び方向に対してバイヤス状に整合(背骨に対して60度)させ、比較例3−1は、整合しないゼロ度に近い方向に重ねた。さらに、実施例3−2は、接着基材の横伸び方向をエナメル仕上げ革の最大伸び方向に対して実施例3−1と同一のバイヤス状に整合(背骨に対して120度)させ、比較例3−2は、整合しないゼロ度に近い方向に重ねた。ボンデイング加工条件は実施例2と同一で製作した。
【0047】
得られた伸縮性皮革加工品は、表2に示した。
【表2】
この結果から明らかなように、天然皮革の比較的低伸度の丸革では、実施例3−1および3−2で靴甲用に有用であったが、比較例3−1および3−2共に伸縮性が得られていない。
【0048】
【実施例4】
実施例1で得た伸縮性皮革加工品に適度な撥水加工を施して、図4の手法に準じて婦人用スラックス(Mサイズ)の型入れ、裁断、縫製して最終製品を製作した。
得られたスラックス製品は、左右の前身頃、後身頃が各1枚革からの型入れで切り替えなく、しかも伸縮性がややヨコ方向>タテ方向であり、着用感は軽快で、着用後のバギング現象(膝抜け、臀部;1昼夜吊り下げ後)は認められなく、美的で高機能のものであった。
【0049】
【実施例5】
実施例3で得た伸縮性皮革加工品を用いて、図5に準じて婦人用ドレスシューズを型入れ(デザイン異なる)、裁断し、その後の靴工程である各パーツの接着加工、釣り込み作業工程を経て数足製作した。
得られた婦人ドレスシューズは、アニリン仕上げ革、エナメル革共に、表面光沢感がよく、当初からの履きずれも無く、履き心地が良かった。
【0050】
【実施例6】
ナイロン糸44デシテックス13フィラメント(東レ(株)製;トリコット用原糸)とポリウレタン弾性糸22デシテックスT−127(前出;“ライクラ“)を用いて、弾性糸交編(プレーテイング編)天竺編(通称;ベア天)を編成し、開反して常圧染色(96℃×45分、黒色)・仕上げセット(160℃)で片面軽撥水加工してハイストレッチ性を有する伸縮性布帛を得た。生地の特性は、厚さ0.3mm、最大伸び率100%(タテ)×150%(ヨコ)、伸長弾性率96%(ヨコ)、混用率86%(N)14%(PU)であった。
また、離型紙に、散粉塗布機のスプレーヘッドからランダムパウダー状に、塗工量15g/m2のポリアミド系ホットメルト性接着剤(前出;”プラタシド“H103)で準備した。
天然皮革は、中牛革銀面(ジャージイ種)、スエード面の仔羊革(シープ)および山羊革(ゴート)を薄く漉く(厚さ0.3mm)工程で発生する表面疵部分および衣料裁断くずを採用した。
次いで、小片からなる天然皮革(中牛革)との重ね合わせの前に、離型紙と伸縮性布帛を仮接着に必要な最低温度100℃でアイロン接着して、離型紙に装飾婦人用手袋(グラブタイプ)の各左右のパーツ(例、胴、親指、甲等の16部品)を型入れ、荒く裁断した後、小片同士の接着基材と天然皮革を個々により高伸度の方向を実質的に合致させて、リードクロス(フェルト)に載せ実施例2と同一条件のプレスアイロンに導入してボンデイング加工した。
【0051】
最終的には、手袋製作の工程順に、a、左右両方の革を背中合わせに重ねて、刃型で打ち抜く。b、甲飾りを付ける。c、親指をとりつける。マチをつける。d,指1本ずつ袋に縫っていく。(裏側)e、4本筒のパイプに手袋をかぶせ、もう一方の細い筒で押して表に返す。f、指を1本ずつ、指型にはめて形を整える。g,金属の手型にはめ40〜50℃に加温し、全体の形を整える。h,縫い目を叩いて平たくし、その後、和紙を当て80℃前後の温度でアイロンを掛けた。
同様に、スポーツ用手袋(仔羊革、山羊革)を製作した。
得られた最終製品である装飾婦人用手袋は、適度な厚さで、従来に無い着脱が容易で、各指の動きがスムースであった。スポーツ用手袋も機能性が十分であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明にかかる伸縮性皮革加工品のボンデイング加工方法は、第1に、伸縮性を有する接着基材に、ポリウレタン弾性糸を用いたことによって、合体した天然皮革に弾性回復性を付与することができる。第2に、伸縮性布帛が2ウエイストレッチ性を有することによって、元来縦・横あるいは全方向に伸縮性のある天然皮革と高伸度の方向に整合し、重ね合わせるだけで合体した天然皮革の面積部分の85%以上が有効なる伸びを有し、ソフト風合いに仕上げることができる。第3に、各製造工程で工夫を凝らしており、天然皮革を薄く漉く、例えば、厚さ0.3〜0.4mmにしても接着基材と合体することで十分な引裂き強力を有し、部分接着の塗工を施して通気性を、接着剤にホットメルト性接着剤を適用して、離型紙に事前に型入れし、あるいは小片パーツにも任意にデザインでき、ロスを軽減等が挙げられる。
したがって、本発明の最終製品は、弾性回復性に優れ、且つ柔軟性および通気性を有し、従来伸長回復性のない天然皮革に新機能を付与した画期的なものとして、基靴にはコンフォート性を、衣料アパレルにはひじ抜け、膝抜けのない高級服として、さらに、カーシートその他多方面に利用できることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表すボンデイング加工装置の斜視図
【図2】伸縮性布帛の全方向伸長特性図(a)、(b)
【図3】塗工形態を例示する接着基材および離型紙の正面図(a)、(b)および(c)
【図4】実施形態を表す婦人ブレザーの型入れ法の正面図(a)、(b)、(c)および(d)
【図5】他の実施形態を表す靴甲部品の型入れ法と伸びの方向を示す正面図
【図6】伸縮性皮革に負荷を繰返した伸びのヒステリシス曲線図(a)、(b)
【符号の説明】
1;接着基材
2;天然皮革
5;ホットロール
12;接着剤
20;プレスアイロンボックス機
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革のボンデイング加工品を作る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から布地や他の皮革を裏貼りした皮革材は一般に知られている。登録実案3043008号公報に、縦・横全方向の伸縮性がよい皮革の裏面に、横方向もしくは縦方向の伸縮性が大きく縦方向もしくは横方向の伸縮性が小さい若しくは殆どない布地を貼り合わせた皮革材が開示されている。
この方法では、横方向の伸びまたは縦方向の伸びを有する1ウエイ方向のみ伸びる生地であるから、獣皮のコラーゲン繊維が、皮の部分によって密度やからみ合いの程度、角度に差があり、高密度な繊維の流れはおよそ背骨の方向に並行してカーブして首や尻尾の近くでは背骨に垂直になって、その方向の抗張力が強い性質があって、最大伸び方向に整合、不整合の部分が生じてしまう。この結果、皮革材に多くのロスが発生して、快適性が乏しいものになる問題があった。
また、伸縮性に追従しない接着剤や塗工の方法では、皮革材が硬化して、縦・横全方向の伸縮性がかえって阻害され、全くストレッチ性の無い部分や通気性が全く無い問題があった。
さらに、皮革の厚さについても、漉きの厚さが厚いほど抗張力が強く、薄くなるにつれて柔らかくなるが強力が比例的に減少する。現状0.5〜0.6mm厚以上であり、布地または他の皮革を裏貼りすれば、当然厚みが増し、使用制約や硬くなるため、衣料ガーメント、インテリヤ、車両用椅子等の皮革材はほとんど見当らなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革をボンデイング加工して、すべての伸縮性布帛の伸びが全体として伸長性を有する天然皮革に整合し、結果として伸縮性皮革加工品に高快適性と高品質を提供することを目的とする。
【0004】
【発明が解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の伸縮性皮革加工品の製造方法は、
(a)少なくとも縦方向および/または横方向に伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を含有してなる伸縮性布帛に、伸縮性を妨げない接着剤で、通気性を有する塗工を施してなる接着基材を提供する、
(b)縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を提供する、
(c)少なくとも天然皮革の選択された面積部分と接着基材が共に、両者がより高伸度の方向に整合するように重ね合わせる、
(d)接着基材と伸長性を有する天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する方法、
を特徴とする。
【0005】
また、本発明の方法においては、伸縮性布帛が織物または編物からなり、全方向および/または縦・横方向に伸長率40%以上を有すること、接着基材と天然皮革がより高伸度の方向に整合する角度が天然皮革の背骨に対して60〜120度の範囲に重ね合わせること、接着剤がホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系、またはラテックス等で、塗工が全面でなく点または線状であり、且つ塗工量が15g/m2以上を有すること、および予め接着剤を離型紙に塗工したものを伸縮性布帛とアイロン接着し、そのうえに最終製品の各パーツを型入れして天然皮革のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせた後、プレスアイロン加工、裁断・縫製すること等が好ましい条件である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の伸縮性皮革加工品の製造方法を具体的に説明するが、これらの実例は例を挙げて説明するためで、発明の範囲を限定するものでなく、請求項により規定する。
【0007】
<弾性糸の材料>
本発明の伸縮性布帛に用いられる弾性糸としては、ゴム状弾性を発現できる合成および天然の樹脂材料やゴム材料が使用できる。
具体的には、ポリウレタン弾性糸、エーテル・エステル系弾性糸、ポリアミド系弾性糸が使用できる。天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからの糸条の材料いわゆる糸ゴムも使用できる。
【0008】
特に、本発明の目的に適した交織、交編材料として、ポリウレタン弾性糸が挙げられる。ポリウレタン弾性糸は、高伸長、・高弾性回復性がある。
さらに、本発明の交撚材料としては、ポリウレタン弾性糸を綿糸、合成繊維フィラメント糸およびそれらの仮撚加工した伸縮加工糸でカバー撚糸した被覆弾性糸であってもよい。
【0009】
<ポリウレタン弾性糸の製法>
かかるポリウレタン弾性糸は、長鎖ジオールとジイソシアネートでプレポリマーをつくり鎖伸長剤でつないでソフトセグメント(ジオールの部分)とハードセグメントとが交互に並んだ長鎖状高分子である。
本発明においては、エーテル系ポリウレタンでは長鎖ジオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGと略称)のようなポリエーテルジオールが好ましい。短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタジオール、ヘキサンジオール等が用いられ、ジイソシアネートとしては、4,4‘−ジフェニールメタンジイソシアネート(MDI)が最も多く使用される。鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミンがポリウレタンウレアを形成させるために好適である。ポリウレタンウレアの最終的な分子量を調節するために反応混合物に鎖伸長剤を含有させることが好ましい。
また、ポリエーテルエステル系ポリウレタンではハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用して、鎖伸長剤は使われない。
【0010】
本発明で使用するポリウレタン重合体にはベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の耐候剤、ヒンダードフェニール系等の酸化防止剤、酸化チタン、酸化鉄等の各種顔料、硫酸バリワム、酸化亜鉛、酸化セシウム、銀イオン等を含有する機能性添加剤を含有させることも好ましい。
本発明では、前記ポリウレタン重合体を溶媒に溶解させてポリウレタン溶液とするのが好ましい。
ポリウレタン溶液を調整するための溶媒として、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を使用することが好ましい。特にDMAcが好ましく用いられる。
かかるポリウレタン溶液を、乾式紡糸法、溶融紡糸法等により紡出し、後加工で利用し易くするために、粘着防止剤や平滑促進剤等の添加物を含む鉱物系またはシリコーン系、さらには、これらの混合物の油剤を、糸条の表面に適宜付着させた後、巻き取り機で巻き取ることによって得ることができる。
ポリウレタン溶液の濃度は、紡糸性等の観点から、溶液の全重量を基準として、30〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは35〜38重量%の範囲である。
本発明においては、最終製品に所望のストレッチ性および弾性回復性を付与する観点から、強度、耐摩耗性に優れたポリウレタン弾性糸を用いるのが好ましい。
【0011】
このようにして得られたポリウレタン弾性糸の太さは、22〜2500デシテックスの範囲が好ましく、33〜1240デシテックスの範囲がより好ましい。また、ポリウレタン重合体のタイプは酸化チタン、酸化鉄等の添加物を含有した表面摩擦係数が高いものがより好ましい。かかる添加剤の含有量は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0012】
<伸縮性加工糸の加工>
本発明の合成繊維フィラメント糸としては、熱セット性または伸長回復性を向上させるために、熱可塑性合成繊維からなる糸条を用いるのが好ましい。例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリロニトリル、ビニロン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン等のフィラメント糸が好ましく、特に、ポリエステル(以下、ポリマー別に、PET、PBT、PTTと略す)、ナイロン(以下、同様に、N6、N66)アクリロニトリル、ポリプロピレン等のフィラメント糸が好ましい。
そしてこれらの伸縮性加工糸としては、通常の嵩高加工糸に用いられている仮ヨリ式加工法、押し込み式加工法および擦過式加工法等や原糸メーカーによるPOY−DTY、UY−DTYおよびワンステップ高速紡糸延伸仮より式加工法からの各種伸縮性加工糸が好ましい。特に、ポリエステル(2ndヒーター)、ナイロンの仮ヨリ加工糸、POY−DTY等がより好ましい。
伸縮性加工糸の太さは、総繊度33〜990デシテックスの範囲が好ましく、44〜470デシテックスの範囲がより好ましい。
【0013】
<被覆弾性糸の撚糸加工>
本発明の被覆弾性糸としては、弾性糸が芯成分で、伸縮性加工糸または紡績糸が鞘成分であるものが使用される。
弾性糸として、前記ポリウレタン弾性糸であり、伸縮性加工糸として、ポリエステル、ナイロン糸等の仮ヨリ加工糸またはPOY−DTYを用いることが好ましい。これらは、通常市販のカバーリング撚糸機を用い、芯成分となる弾性糸にドラフトなる延伸をかけ、この弾性糸の周りを伸縮性加工糸で一重もしくはさらに二重に巻回されて被覆して得ることができる。また、リング撚糸機もしくは意匠撚糸機を用いて、伸縮性加工糸と1本または2本と合撚することも好ましく行はれる。
ドラフト倍率(伸長された長さ/原長)は2倍以上に伸長するのが好ましく、より好ましくは2.5〜4倍の範囲である。2倍に満たない伸長では、カバーリング通過性が不足して十分な被覆がなされない。さらに、一重巻きの場合の撚数は相手素材の太さ、フィラメント数に応じて、適宜選択するとよいが、300〜1,000T/Mの範囲が好ましい。二重巻きの場合は、下撚/上撚の撚数で旋回トルクのバランスをとり、旋回力をよりゼロに近い撚数を設定することが望ましく、下撚数に対する上撚数の比率は約50〜95%程度で好適なトルクバランスを得ることができる。
また、通常のリング精紡機でコアヤーンをまたは前述のリング撚糸機もしくは意匠撚糸機で伸縮性加工糸と同様に被覆弾性糸を作ることも好ましい。
【0014】
<伸縮性布帛の設計>
本発明の伸縮性布帛としては、構成糸の一部がポリウレタン弾性糸または伸縮性を有する合成繊維フィラメント糸、あるいは前述の被覆弾性糸から構成された織物または編物が使用され、縦・横の一方の伸長率が40%以上必要である。
織物としては、経糸および緯糸の両方、あるいは経糸または緯糸にポリウレタン弾性糸の被覆弾性糸を使用する。経糸および緯糸に被覆弾性糸を使用した場合、2ウエイストレッチ織物を得るので好ましい。経糸または緯糸のみに被覆弾性糸を使用し、且つこれに対抗する方向に前記伸縮性加工糸を使用した場合にも、経方向または緯方向のストレッチ性が異なるものとなるが、2ウエイストレッチ織物となる。具体的には、
織物では、経糸の太さ55〜168デシテックス、フィラメント数11〜144フィラメント、緯糸の太さ84〜200デシテックス、フィラメント数20〜500フィラメントで、経密度50〜85本/in、緯密度55〜75本/inの平織または綾織によって、厚さ0.4〜0.8mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は16重量%以下であることがより好ましい。また、ポリエステルと綿、ポリエステルとレーヨン等の混紡糸の太さ、織物もほぼ同様に扱うこともできる。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常44〜78デシテックスの範囲で、伸箱性加工糸も単繊度0.5デシテックス以上を使用することにより、中厚地資材となりより好ましい。
【0015】
また、編物としては、丸編もしくは経編にポリウレタン弾性糸または伸縮性加工糸を有する合成繊維フィラメント糸またはこれらの被覆弾性糸を使用する。
経編にポリウレタン弾性糸を使用した場合、経緯目に連続する編目に用いることにより2ウエイストレッチ編物を得ることができ好ましい。また、丸編目において、全編目にポリウレタン弾性糸を使用した場合、2ウエイストレッチ丸編物を得ることができる。また、1コース毎にポリウレタン弾性糸または被覆弾性糸を交編した場合には、低伸度の2ウエイストレッチ丸編物となる。具体的には、
丸編物では、糸の太さ55〜300デシテックス、フィラメント数11〜144フィラメントで、編機ゲージ18〜36針/inで編成されたコース密度50〜65C/in、ウエール密度45〜75w/inの両面編または天竺編によって、厚さ0.3〜0.8mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は16重量%以下であることがより好ましい。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常22〜78デシテックスの範囲で、伸縮性加工糸も0.5デシテックス以上であるが、0.5デシテックス以下の単繊度を使用することにより、資材の風合になりより好ましい。
【0016】
次に、経編物では、合成繊維フィラメント糸の太さ33〜840デシテックス、フィラメント数6〜144フィラメントで、編機ゲージ9〜36針/inで編成されたコース密度41〜64c/in、ウエール密度55〜80w/inのハーフトリコット、緯糸挿入鎖編トリコット組織、または6コースチュール、6コースパワーネット組織のラッセル編によって、厚さ0.2〜0.7mmを得ることができる。ポリウレタン弾性糸の使用量は最大で35重量%であることが好ましく、さらにポリウレタン弾性糸25重量%以下であることがより好ましい。
ここで、被覆弾性糸の芯糸の太さは、通常22〜480デシテックスの範囲で、伸縮性加工糸も通常単繊度1.5デシテックス以上を使用することにより、資材の風合いになりより好ましい。
【0017】
<接着基材の製法>
本発明の接着基材としては、前記伸縮性布帛に伸縮性を妨げない十分に弾性のある接着剤であれば、通気性を有する塗工を施すことによって使用可能なものが得られる。例えば、ホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系またはラテックス、感圧接着剤、反応性接着剤、膠等を用いることができる。
塗工方法は、多孔性や呼吸性を適度に保有する不連続な塗布、例えば、点状または規則的な直線の組み合わせ、または蜘蛛の巣状に不規則な波形を描くことで、いずれも伸縮性布帛全面に接着するのでなく、点・線状に塗工を施す必要がある。
塗工量は、12g/m2以上であればよい。好ましくは、15〜25g/m2の範囲がよく、12g/m2未満であれば耐久性が十分でなく接着剥離を起こし、一方、25g/m2以上になると多孔性が無くなり、余分な接着剤が溶けて接着基材の裏面までしみ抜ける問題が発生する。従い、接着基材の裏面に離型紙を敷くことにより、ホットロール、またはフラット面を汚すことなく操作できる。時に、伸縮性布帛の裏面には、軽い撥水加工をしておくことが望ましい。
【0018】
また、予め接着剤を離型紙に前項と略同一の塗工を施しておく手法も採用できる。この手法によれば、大小様々な形状をしたパーツを容易に、無駄なく型入れすることができる。この利用は、接着剤を塗工した離型紙に先に各パーツを型入れするか、もしくは塗工した離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで仮接着せしめ、それに各パーツを型入れ・裁断した後、前記天然皮革の小片部分のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせることもできる。
【0019】
さらに、前記接着剤にキチン・キトサン粉末、備長炭粉末、竹炭粉末、またはトルマリン粉末等を単独、または混合することも好ましい。
【0020】
<天然皮革>
本発明に用いる天然皮革としては、縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を提供することにある。
伸長性を有する皮革と言っても、獣皮であるため、全面に一様に、全方向に等伸度を有するものではない。また、一度革を伸ばすと、力を除いた後でも伸びが残る可塑性があり、変形が回復しない。
伸度を有するものとしては、その一例として幼少動物である仔羊革(ラム、シープ)、仔牛・中牛革(カーフ・キップ)、山羊革、比較的伸度を有する牛革(ジャージ種)、カンガルー革、鞣し工程で伸縮加工した牛革(シュリンクレザー)、豚革、または厚さを薄く、例えば、0.3〜0.4mm厚に漉くことによって、用途毎に十分な伸縮性皮革を得ることができる。ただし、あまりに薄く漉いたり、鞣し加工すると、傷ついたり、回復性がなくなり使えない部分が生じる。
また、利用する皮革面では、獣皮の外皮面を銀面(グレーンサイド)、内側面(フレッシュサイド)を順にヌバック、スエード、ベロアと区分するが、内側面ほどコラーゲン繊維の繊維束の粗密度、太繊維、粗交絡等になっていて歪を受け易く、伸ばされ回復性がなく、型崩れし易くなる。
最終製品に最も一般的に使用されている皮革の厚さは、婦人靴では1.2mm、アスレチック用では1.5mm、ブーツでは1.7mm厚みである。バッグでは1.2〜1.7mm、衣料ガーメントのパンツ、ジャンバーおよびコート類での銀付き0.6〜0.9mm、スエードでは0.5〜0.7mmのより軽く、より柔らかく、より薄いもの。婦人手袋では0.5mm前後、インテリヤのソファーでは1.2〜1.6mmおよび車両用椅子では1.2±0.2mmの厚みである。
これらの問題解決に、伸縮性布帛と伸縮性を有する天然皮革をボンデイング加工することによって、伸縮性快適衣料、伸縮性資材および軽量化、補強の意義は大きい。
【0021】
<ボンデイング加工>
本発明の伸縮性布帛と伸長性を有する天然皮革のボンデイング加工した最終製品は、伸長された後、応力を解放すると元の形に回復できる。また、しなやかで、ソフト感のある伸縮性皮革加工品となる。
一般に、皮革の変形歪は試験サンプルが伸長から解放された後、原長に対しての歪である。変形歪は薄く、伸長性のある天然皮革にとっては重要であって、伸長性のない皮革に比べてより大きな伸長応力を受け、歪やすいものとなるからである。それらの皮革は簡単に伸ばされ、型崩れし易いものであり、元の寸法に実質的に回復できない。
【0022】
そこで、本発明の製造方法では、獣皮全体の85%が選択された面積部分になり、伸縮性布帛からなる接着基材と伸長性を有する天然皮革の伸び方向を整合させることができる。また、従前以上に薄く0.3〜0.4mm厚に分割・漉いた場合に有効である。これは次の構成要素から成される。
A、大きな接着基材に丸革をボンデイング加工する方法、
このA法で最も留意する両素材の高伸度方向を整合させるとは、合わせる角度が少なくとも天然皮革の背骨に対して60〜120度の範囲であり、好ましくは75〜105度以内が望ましい。さらに、両者の伸長特性に差違があるため、合致する程度にも若干違いを生じるので、有効に整合させる用件として、皮革のポイントである選択された面積部分で直角±10度の範囲で確度が要求される。
(a)全方向に伸縮性を有する伸縮性布帛に伸縮性を妨げない接着剤で、通気性を有する塗工を施してなる接着基材を少なくとも1枚準備する、
(b)縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を準備する、
(c)(a)の接着基材の高伸度方向と(b)のいずれかである天然皮革の少なくとも1つの高伸度方向が選択された面積部分が皮革全体の51%以上であって、両者がより高伸席の方向に整合するように重ね合わせる、
(d)そして、接着基材と天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する。
(e)最後に、最終製品の各パーツを型入れ・裁断する。
ここで、両素材共に伸長させず、自然な基材の流れで、重ね合わせることが重要である。また、縦・横方向の伸度差の大きい接着基材を天然皮革よりやや大きめに裁断し、バイアス状に重ねあわせることも好ましい。接着基材を伸長させた状態でボンデイング加工すると、皮革の端末部分に折れしわやカールが発生し、皮革の表面には光沢感のない小じわが生じる。
【0023】
B、離型紙に各パーツを型入れ後、小片皮革でボンデイング加工する方法、
このB法では、小さな各パーツから構成される最終製品に有効である。
先ず、小さい各パーツを型入れ・裁断した後、小部分からなる天然皮革にボンデイング加工するには、様々な方向に伸びる方向が分布している皮革に有効で、各パーツを継ぎはぎ状に皮革の各部分の高伸度の方向に整合させる必要がある。その用途のために最大限伸縮性を有効に発揮でき、獣皮欠点をボンデイング加工前に排除することができるため、ほとんどロスがない。
(f)接着剤を塗工した離型紙に先に最終製品の各パーツを型入れするが、もしくは塗工した離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで接着せしめ、その後に各パーツを型入れ・裁断した後、切り離した各パーツを小部分の天然皮革のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせる、
(g)最後に、接着基材と天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する。
ここで、連続した離型紙に各パーツを型入れする方法は、前項A法に準じた整合をする必要がある。
【0024】
<接着プレス機>
本発明で使用するボンデイング加工用の接着プレス機は、革の艶出し、平滑さの付与および型押しに使用するプレスアイロン、接着プレス機等であればよい。タイプは、ローラー型、またはフラット型のいずれでもよい。接着する条件である温度、圧力、時間をセットするダイアルが設置され、事前に条件出し試験をして選び出す。通常、ホットメルト性樹脂であれば、120℃前後が適温で接着基材サイドから加熱し、地の目に逆らわず、中心から端に伸ばすようにかけるとよい。送り速度は、低速度2.6〜5m/分が好ましい。圧力はローラー型で3.5kg/cm2、フラット型で1.5kg/cm2付近であればよい。
【0025】
<最終製品>
本発明のボンデイング加工による表面が皮革で、伸縮特性を利用できる皮革製品であれば、各種の製品に適用できる。
より具体的には、以下に列挙する各用途および製品が挙げられる。
A)靴;
高級婦人用&メンズ用甲革、ブーツ、スニーカー、各競技用運動靴、
B)衣料;
コート(オーバー、七分)、ジャケット、ジャンバー、ブレザー、ドレス、カーディガン、パンツ、スカート、ライダースーツ、
C)家具、車両;
椅子、ソファー〈住宅、商業〉、自動車内装、航空機内装
D)バッグ;
ハンドバック、カバン、革袋
E)服飾資材;
帽子、服装ベルト、服装用手袋、防寒用手袋、作業用手袋(製菓・ベーカリー、溶接、消防)、スポーツ用手袋(ゴルフ、野球、乗馬、ドライバー、ホッケー、アスレチック)、小物
F)その他伸縮性を有する皮革製品;
水着、ボタン、ボール(サッカー、バスケット、ラグビー、バレー)
【0026】
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
<ボンデイング加工工程>
図1は、本発明の実施形態を表すボンデイング加工装置の一例を示す斜視図である。
図1において、接着基材1は、先ず、戴置用フラットゾーン10にあるメットコンベア7上に移動し、予め用意された天然皮革2を接着基材1上に自然な状態で戴置させる。さらに、天然皮革2の大きさによって、前後・左右の間隔や伸縮性方向を吟味しながら位置取り、皺の無い状態にする。次いで、プレスアイロンボックス機20(2点鎖線)内に導かれ、ホットロール5に接着基材1が接圧されるように1〜2個からなる反転ロール3,4を介して、接着剤12(図示せず)を天然皮革2に溶着せしめた後、フェルトベルト8で出口に移動し、最終的に巻取りロール9に巻き取られる。
【0027】
ここで、プレスアイロン機20は、働き幅1800mm、熱源200℃以下、標準圧力30kg/cm2以下、ロールスピード3.5〜12m/分からなる構造を有するのが望ましく、シープ、カーフ類を主体にした伸縮性を有する天然皮革2に接着処理するためには、温度、圧力、時間を与えることが必要である。
本発明のボンデイング加工では、ホットメルト性接着剤をホットロール温度110〜160℃、柔らかくなった接着剤12を天然皮革2に喰いこませる圧力1.5〜3.0kg/cm2の範囲で、処理時間15秒以内の処理で強固な接着を連続に得ることができる。
他の単独の方式においては、前工程として、リードクロス(フェルト)上において、予め接着剤12を塗工した離型紙(図示せず)に最終製品の各パーツを型入れするか、もしくは離型紙を伸縮性布帛に一旦アイロンで接着せしめ、その後に各パーツを型入れ・裁断した後、切り離した各パーツを天然皮革2のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせる。後工程として、プレスアイロン機20で重ねられた接着基材1と天然皮革2をアイロン処理する、通常の独立したホットロール型またはフラット型のいずれかの方法も好ましい。
【0028】
図2は、本発明の伸縮性布帛の全方向伸長特性図であり、(a)は弾性糸交編編地、(b)は弾性糸交織織物である。
図2の特性軸Xは、織編地の横方向(ウエール方向)の伸び率(%)を、特性軸Yは、織編地の縦方向(コース方向)の伸び率(%)を示す。
同図(a)において、曲線Iは、弾性糸交編ハーフトリコットであって、全方向伸び率の形状がタテ長の長円を示している。経編地におけるポリウレタン弾性糸がタテ方向に連続した経編目で形成されているため、縦方向(コース方向)が横方向(ウエール方向)よりも伸び率が大きい。最大伸び率は、縦方向200%超であるのに対して、横方向150%である。
曲線IIは、弾性糸交編ダブル丸編地のインターロック組織であって、ヨコ長の長円(Y軸上凹)を示している。丸編地のポリウレタン弾性糸がヨコ方向に連続した緯編目で形成されているため、横方向(ウエール方向)が縦方向(コース方向)よりも伸び率が大きい。最大伸び率は、横方向150%に対して、縦方向100%付近である。
【0029】
一方、同図(b)において、曲線IIIは、ナイロン加工糸使い被覆弾性糸を縦横糸に共用した1/3綾織物であって、全方向伸び率の形状がタテ長の変形長円(60°方向凸)を示している。一般の織物におけるポリウレタン弾性糸は経糸の太さが緯糸の太さより太糸使いが多く、伸び率も縦方向(長さ方向)が横方向(幅方向)よりも大きい。最大伸び率は、縦方向60%に対して、横方向25%付近である。
曲線IVは、綿/レーヨン混紡糸使いで、ポリウレタン弾性糸を当該糸と複合撚糸した後、横糸に打ち込んだ平織物であって、ヨコ長の長円を示している。平織物のポリウレタン被覆弾性糸がヨコ方向にのみ構成されているため、横方向(幅方向)のみ伸びて、縦方向(長さ方向)の伸びは些少の組織伸びである。
最大伸び率は、横方向(幅方向)40%に対して、縦方向(長さ方向)15%程度である。
【0030】
同図(a)と(b)を比較すると、伸びの方向はポリウレタン弾性糸の交編または交織によって特定されるが、相対的伸び率は、圧倒的に編物が大きく変形し、織物は小さい。そこで、取り扱い作業性の面では織物が皮革に整合しやすく、薄地感の伸縮性皮革加工品を得やすい。編物は伸び変形が大きいので、接着基材までの加工管理が難度高く、両耳の折れしわ、あたり欠点に留意する必要がある。
【0031】
図3は、本発明の接着基材および離型紙の塗工を示す正面図であり、(a)はドット、(b)はクロスおよび(c)は蛛の巣状である。
図3(a)において、接着基材1の表面に接着剤12(黒点)がタテ、ヨコに規則的に配置されたドットタイプの塗布形状である。
接着剤12は、前述のとおり、ホットメルト性接着剤やラテックス、感圧接着剤、反応性接着剤、膠等が使用できる。本発明では、伸縮性を有する天然皮革との接着剥離がなくて、強い接着力を有し、作業性の良い、汚れ防止に最も適したホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系が好ましい。
ドットタイプとしては、天然皮革2が比較的厚手で、伸縮性の少ないものに、大粒で粗い形状がよい。例えば、塗工量20g/m2以上がよく、より好ましくは25〜30g/m2の範囲で、1cm2に30個塗布がよい。一方、薄くて、よく伸長性のある天然皮革2には、小粒で細い形状がよい。例えば、塗工量20g/m2未満で、1cm2に150〜180個塗布がよい。または、ランダムパウダーであってもよい。
図3(b)および(c)においては、本発明の変化形が示されている。
同図(b)において、接着基材1の表面に接着剤12(実線)が左右斜め方向にクロスした線状に塗工されている。他の線状塗工には、クロスの線状が直角のもの、単にタテ方向のみ、またはヨコ方向のみのものであってもよく、さらにバーコードのように太さの違いのものであっても良い。
同図(c)において、接着基材1の表面に接着剤12(曲線)が無秩序に塗工されている。この無秩序は、複数の曲線が同一に描かれていてもよいし、重複してもよい。なお、(b)および(c)の塗工量は、前記(a)と同様であればよい。
本発明における塗工は、いずれも点または線状の形状を成し、接着面が接着基材1の全面でなく、部分接着である必要がある。
【0032】
<伸縮性皮革加工品>
図4は、本発明の型入れ法の一例を示す婦人ブレザーの正面図であり、(a)は前身頃、(b)は後身頃、(c)は衿と見返し上下および(d)は袖とポケットである。
図4では、婦人ブレザーの1着に要する天然皮革2の面積は、約400デシ(DS)とされる。例えば、ピッグスキン丸革4枚(a)、(b)、(c)および(d)で平均120デシ(DS)を使用して、前身頃、後身頃と他のパーツにまとめた形で型入れする。
同図(a)には、1枚目のピッグスキンの背骨を対象に、前身頃A1と前身頃A2を頭から尻に向かって、左右対象に配置する。同様に前脇B1を前身頃A1の外側に、前脇B2を前身頃A2の外側に配置したものである。
同図(b)には、2枚目のピッグスキンに(a)と同様に後身頃C1、C2の外側に後脇D1、D2を配置する。
同図(c)には、3枚目のピッグスキンに(a)と同様に頭部付近に表衿H1、裏衿H2、H3を横長に配置する。見返し上I1、I2を左右対称に、その外側に見返し下I3、I4を配置する。
同図(d)には、4枚目のピッグスキンに(c)と同様に袖E1、E2を左右対称に、その外側に内袖F1、F2をそれぞれ配置する。ポケットG1、G2の2枚を袖E1、E2の尻部に近い所に配置する。
【0033】
ここで、革衣料は、数枚の皮革を組み合わせて作るため、色合わせが必要である。また、皮革では、銀面の不揃い、キズ、シボ、光沢のムラがあるため、避けて歩留まりのよい型入れすることが重要である。また、2枚漉き、3枚漉きのスエード面はバフイング加工で調整するとよい。
革服のデザインを考える基本は、素材となる天然皮革の性状を理解することが最も必要である。天然皮革の項で記述したとおり、天然皮革は、一枚一枚面積が異なり、さらに部位により性状が異なっている。天然皮革の部位による性状の差異、型紙の使用部分を考えると、切り替えが必要となる。パターンの中で切り替えをどこに使うか、どう生かすか、すなわち美的で、かつ機能的な切り替えが重要である。また、高級品には、柔らかくて軽い山羊革、シープ・ラム革、仔・中牛革が用いられ、一部豚革、鹿革等が用いられる。これらの特徴をさらに進化させたより薄く、より快適に、を満たす本発明の伸縮性皮革品がより望ましい。
【0034】
図5は、本発明の他の型入れ法を示す靴甲部品と伸びの方向を示した正面図である。
図5では、左半分に靴甲の各パーツを配置し、右半分に天然皮革の部位別伸び方向を矢印で示めした。
同図において、右半分は、天然皮革2の伸び方向(矢印;←−→)を大略的に示すと胴周りイ、前後の足周りロ、ハの3方向から成る。この伸び方向に靴の伸縮性を必要とする甲部材J(点線)を整合させたものである。左半分は、靴甲部品の各パーツを網羅させて配置したものである。例えば、婦人用カジュアル靴(デザイン右半分と異なる)の前面甲材J、外側甲材K、内側甲材L、かかと材M、爪先材Nおよび舌部材Oがあり、各パーツの配置は、パーツの持つ伸びの方向が必要なものから整合させながら配置したものである。なお、比較的パーツのサイズが小さいものまたは伸びの不要なものは、例えば、こしかわ材M、爪先材N等であり、伸び方向を考慮しながら隙間を埋める。
【0035】
ここで、革靴は、1枚の皮革で数足の婦人用パンプスや紳士靴が作れるから同一品質を作るために、各パーツの配置が重要になる。特に、顧客にとって美しさと履き良さが持続することが大切である。伸びを必要とする靴の部位は、爪先材Nと前面甲材J、次いで外側甲材K、内側甲材Lであり、反対に不必要な部位は、こしかわ材M、舌部材Oである。従来、革靴用の皮革において、伸びや強さを計っても靴作りに最適が、履き良いか、長持ちするか、という試験はしていない。多くは、先達諸賢の経験や履き良い靴の市場での評判の良いもの、売れ行きの長さから得られる蓄積によって皮革の良さが判定されてきた。
【0036】
本発明では、革靴のユース別(カジュアルシューズ、ドレスシューズ、スポーツシューズ)に必要な材質を選択したうえで、婦人ドレスおよび紳士靴の銀面革には、従来皮革に近い比較的硬めの低伸度の材質を用い、前面甲材Jに伸縮性を持たせて「ヒールから爪先の硬い方向に」型入れして、靴の長さ方向に安定、横方向に柔軟でストレッチ性を有し、釣込み作業、踏付部位の応力緩和を容易にすべく、履き心地の良い、足に対して疲労、痛みの無い健康に配慮を施している。特に、婦人靴に苦情が多い魚の目、外反母趾、アキレス腱等に対応できる。スポーツシューズおよびスニーカーのスエード革(漉き革)には、こしかわ材Mを除いて他の部位は、柔らかい靴が作れる本発明の伸縮性皮革が好ましく適用される。
【0037】
図6は、本発明の実施例を示す伸縮性皮革に負荷を繰返した伸びのヒステリシス曲線図であり、(a)は本発明の伸縮性皮革加工品、(b)は従来の皮革である。
図6の特性軸Xは、皮革の伸び(歪)の大きさを、特性軸Yは応力(負荷)の大きさを示す。負荷の大きさは、靴を履いた時に相当する足の圧力1.5kg/cm2に近似させた。
同図(a)において、本発明の伸縮性皮革加工品(シープ革と弾性糸交編ハーフトリコットをボンデイング加工)の応力〜伸び特性は、右上がりのA曲線(実線、O→A)を示す。また、同一測定条件で、負荷を繰り返した(3回)伸びのヒステリシス曲線は、第1回目の応力線(実線、O→A1)、除重線(点線、A1→C1)、第2回目の応力線(点線、C1→A2)、除重線(点線、A2→C2)、第3回目の応力線(点線、C2→A3)、除重線(点線、A3→C3)に沿ってヒステリシス曲線となる。
同図(b)において、伸長性を有する天然皮革(シープ革)の応力〜伸び特性は、急激な右上がりのB曲線(実線、O→B)を示した。(a)と同一のヒステリシス曲線は、第1回目の応力線(実線、O→B1)、除重線(点線、B1→D1)、第2回目の応力線(点線、D1→B2)、除重線(点線、B2→D2)、第3回目の応力線(点線、D2→B3)、除重線(点線、B3→D3)であった。
ここで、(a)と(b)を観察比較すると、本発明の伸縮性皮革加工品は天然皮革に比べ、全体に応力が小さい。また、除重後の歪(回復しない弛み量;ここでは、O→C1〜O→C3、O→D1〜O→D3の大きさ)も少なく、回復性のよいことが判る。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を具体的に示すが、この発明は下記実施例に限定されない。なお、性能評価は次の方法で行った。
<性能評価試験>
(1)伸縮性布帛、天然皮革の共通特性は、下記のJIS規格に準処して実施した。
【0039】
(2)高伸度方向に整合する角度
接着基材の縦方向または横方向のいずれか高伸度の方向に整合する角度とは、伸びを有する天然皮革の背骨に対する角度で表す。
A、全くよく整合する角度;直角
B、不整合な角度;ゼロ度(伸縮性皮革が伸度ゼロになる)
(3)繰り返しヒステリシス曲線
繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪は、衣料のバギング試験の意である。L−1061(B−2法;定伸長法)。
バギングとは、織物衣料または革衣料の特定部分に力が加わり、繊維、糸または皮革が伸長して、その部分が突出し、膨れた状態で固定される現象。例えば、ひじ抜け、膝抜けなど。
(4)耐・水洗濯性
水洗濯後に皮革が硬化、寸法変化(面積)が15%以上生じるまでの洗濯回数で示した。(L−1089に準処)
【0040】
【実施例1】
ナイロン糸56デシテックス−17フィラメント(カネボウ合繊(株)製;N6タイプ、トリコット用原糸)とポリウレタン弾性糸33デシテックスT−127c(東レ・デユポン(株)製;“ライクラ”)を用いて、ハーフトリコット編成し、液流染色して仕上げ幅120cmの伸縮性布帛を得た。生地特性は、目付84g/m2、厚さ0.31mm、最大伸び率100%(タテ)×75%(ヨコ)、伸長弾性率96%(ヨコ、除重1時間後、以下同じ)、混用率89%(N)×11%(PU)であった。得られた生地に、スパイラルヘッド塗布による蜘蛛の巣状に、塗工量30g/m2のポリアミド系ホットメルト性接着剤(日本リルサン(株)−プラーテボン社製;“プラタシド”H005)で接着基材を製作した。
天然皮革は、「衣料用および服飾手袋用皮革」として兵皮連/北摂地区皮工協組(川西市)にて、加脂を軽減したクロム塩併用のコンビネーション鞣し牛革(ジャージイ種)で、最大伸び率20%(タテ)×30%(ヨコ)、伸長弾性率77%(ヨコ)、丸革面積250デシ、厚さ0.6mmを入手した。
次いで、図1に例示した連続式皮革ボンデイング加工装置を用いて、一旦ネットコンベア上に静止した接着基材(タテ伸び>ヨコ伸び)上に、数枚の天然皮革の銀面内側(フレッシュサイド)を伸長させることなく直角に戴置させ、さらに両者が高伸度の方向に整合するように前後・左右や伸縮性方向を考慮して、幾枚かは位置の調整、表面や両耳の皺伸ばし手作業を済ませた。ネットコンベアを作動してプレスアイロンボックスで加圧式(5.5kg/cm2)加熱ロール120℃に導き、処理時間15秒間のボンデイング加工を行った。
【0041】
得られた伸縮性皮革加工品は、厚さ0.83mm、伸び率17%(タテ)×26%(ヨコ)、伸長弾性率89%(ヨコ)および繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪6%(3回)であった。さらに、剥離接着力2.8kgf/25mm、耐ドライクリーニング性も良好であった。
【0042】
【比較例1】
実施例1において、接着基材に対して天然皮革をゼロ度(整合しない)に戴置した以外は、実施例1と同様にしてボンデイング加工を行った。
得られた伸縮性皮革加工品は、伸び率2%(タテ)×5%(ヨコ)、繰り返しヒステリシス曲線の除重後の歪21%も大で元の天然皮革と全く変化なく、望ましい物性は得られなかった。
【0043】
【比較例2】
実施例1において、伸縮性布帛の生地に対して、エチレンー酢酸ビニル系ホットメルト性接着剤(日東化成工業(株)製;“ナイメルト”)で塗工をロールコーテイング法による塗工量10g/m2で全面接着した以外は、実施例1と同様にしてボンデイング加工を行った。
得られた伸縮性皮革加工品は、伸長弾性率85%(ヨコ)と良好ながらも、剥離接着力0.3kgf/25mmと弱くほとんど実用性に劣り、通気性が全くないものであった。
【0044】
【実施例2】
ポリエステル84デシテックス24フィラメントの仮より加工糸(東レ(株)製;織物用DTY1ヒーター)を経糸に、芯糸にポリウレタン弾性糸44デシテックスT−127(前出;“ライクラ”)、カバー糸にポリエステル84デシテックス24フィラメント(東レ(株)製;ニット用DTY1ヒーター)のシングルカバーリング撚糸で、ドラフト倍率3.5倍、撚数500回/M(撚り方向Sより)のポリエステル被覆弾性糸を緯糸として、1/3綾織を製織した後、高圧液流染色(125℃)を実施して伸縮性布帛を得た。生地特性は、目付105g/m2、厚さ0.35mm、最大伸び率18%(タテ)×34%(ヨコ)、伸長弾性率98%(ヨコ)、混用率97%(PET)×3%(PU)であった。得られた生地に、乾式ドットコーテイングタイプ、塗工量25g/m2で、ポリエステル系ホットメルト性接着剤(東洋紡(株)製;“バイロン”GM900)で接着基材を製作した。
天然皮革は、実施例1と同様に{衣料用皮革}を各タンナーで、特に分割機で銀面0.3〜0.6mm厚に分割したクロム鞣しの仔羊革(シープ)、仔牛革(カーフ)、山羊革(ゴート)および豚革(ピッグ)等を入手し、表1に示した。
次いで、タンナー併設のロールアイロン機(北村機械工業(株)製:Hydraulicthrough feed type ironing machine)を使用して、接着基材を天然皮革の大きさに切断したものを平台上で最高伸度方向に整合された天然皮革の背骨に対して直角に近い状態に準備しておき、ホットロール温度125℃、加圧ロール3.8kgf/cm2、処理時間20秒間のボンデイング加工を行った。
【0045】
得られた伸縮性皮革加工品は、表1に各皮革別に特性値を示した。
【表1】
この結果、従来の厚さ(約0.7mm)以下の漉きであれば、丸革でさらに軽量、高伸長の方向が得られ有益なものとなる。
【0046】
【実施例3および比較例3】
綿/レーヨン混紡糸(混用率65%/35%)綿番手24/2(東レ(株)製;織物用)を経糸に、緯糸として当該糸2本とポリウレタン弾性糸235デシテックスT−127(東レ・デユポン(株)製;“ライクラ”)、ドラフト倍率3、1倍、撚り数400回/m(撚り方向Sより)リング撚糸機で交撚した被覆弾性糸を用いて、平織を製織した後、常圧染色(98℃×45分)で黒色に染色した高弾性・ハイストレッチ性を有する横伸びの伸縮性布帛を得た。生地の特性値は、目付370g/m2、厚さ0.7mm、最大伸び率45%(ヨコ)、伸長弾性率98%(ヨコ)、混用率62%(C)32%(R)6%(PU)であった。また、前工程として、塗布は、離型紙(幅120cm)にロールコート法ドットタイプ、塗工量30g/m2で、ポリエステル系ホットメルト性接着剤(東亜合成化学工業(株)製;“アロンメルトPES”120H)を接着製作した。この塗工した離型紙を得られた生地に、一旦アイロンで接着せしめ、接着基材を長さ方向1,5mに4枚裁断して準備した。
天然皮革は、{靴甲用皮革}を東京都台東区内の協粗資材連傘下から中牛革(キップ)のアニリン仕上げ銀付き革およびエナメル基(キップ)を購入し、皮革特性を表2に示した。
次いで、単独のプレスアイロン機で、実施例3−1は、接着基材の横伸び方向をアニリン仕上げ銀付き革の最大伸び方向に対してバイヤス状に整合(背骨に対して60度)させ、比較例3−1は、整合しないゼロ度に近い方向に重ねた。さらに、実施例3−2は、接着基材の横伸び方向をエナメル仕上げ革の最大伸び方向に対して実施例3−1と同一のバイヤス状に整合(背骨に対して120度)させ、比較例3−2は、整合しないゼロ度に近い方向に重ねた。ボンデイング加工条件は実施例2と同一で製作した。
【0047】
得られた伸縮性皮革加工品は、表2に示した。
【表2】
この結果から明らかなように、天然皮革の比較的低伸度の丸革では、実施例3−1および3−2で靴甲用に有用であったが、比較例3−1および3−2共に伸縮性が得られていない。
【0048】
【実施例4】
実施例1で得た伸縮性皮革加工品に適度な撥水加工を施して、図4の手法に準じて婦人用スラックス(Mサイズ)の型入れ、裁断、縫製して最終製品を製作した。
得られたスラックス製品は、左右の前身頃、後身頃が各1枚革からの型入れで切り替えなく、しかも伸縮性がややヨコ方向>タテ方向であり、着用感は軽快で、着用後のバギング現象(膝抜け、臀部;1昼夜吊り下げ後)は認められなく、美的で高機能のものであった。
【0049】
【実施例5】
実施例3で得た伸縮性皮革加工品を用いて、図5に準じて婦人用ドレスシューズを型入れ(デザイン異なる)、裁断し、その後の靴工程である各パーツの接着加工、釣り込み作業工程を経て数足製作した。
得られた婦人ドレスシューズは、アニリン仕上げ革、エナメル革共に、表面光沢感がよく、当初からの履きずれも無く、履き心地が良かった。
【0050】
【実施例6】
ナイロン糸44デシテックス13フィラメント(東レ(株)製;トリコット用原糸)とポリウレタン弾性糸22デシテックスT−127(前出;“ライクラ“)を用いて、弾性糸交編(プレーテイング編)天竺編(通称;ベア天)を編成し、開反して常圧染色(96℃×45分、黒色)・仕上げセット(160℃)で片面軽撥水加工してハイストレッチ性を有する伸縮性布帛を得た。生地の特性は、厚さ0.3mm、最大伸び率100%(タテ)×150%(ヨコ)、伸長弾性率96%(ヨコ)、混用率86%(N)14%(PU)であった。
また、離型紙に、散粉塗布機のスプレーヘッドからランダムパウダー状に、塗工量15g/m2のポリアミド系ホットメルト性接着剤(前出;”プラタシド“H103)で準備した。
天然皮革は、中牛革銀面(ジャージイ種)、スエード面の仔羊革(シープ)および山羊革(ゴート)を薄く漉く(厚さ0.3mm)工程で発生する表面疵部分および衣料裁断くずを採用した。
次いで、小片からなる天然皮革(中牛革)との重ね合わせの前に、離型紙と伸縮性布帛を仮接着に必要な最低温度100℃でアイロン接着して、離型紙に装飾婦人用手袋(グラブタイプ)の各左右のパーツ(例、胴、親指、甲等の16部品)を型入れ、荒く裁断した後、小片同士の接着基材と天然皮革を個々により高伸度の方向を実質的に合致させて、リードクロス(フェルト)に載せ実施例2と同一条件のプレスアイロンに導入してボンデイング加工した。
【0051】
最終的には、手袋製作の工程順に、a、左右両方の革を背中合わせに重ねて、刃型で打ち抜く。b、甲飾りを付ける。c、親指をとりつける。マチをつける。d,指1本ずつ袋に縫っていく。(裏側)e、4本筒のパイプに手袋をかぶせ、もう一方の細い筒で押して表に返す。f、指を1本ずつ、指型にはめて形を整える。g,金属の手型にはめ40〜50℃に加温し、全体の形を整える。h,縫い目を叩いて平たくし、その後、和紙を当て80℃前後の温度でアイロンを掛けた。
同様に、スポーツ用手袋(仔羊革、山羊革)を製作した。
得られた最終製品である装飾婦人用手袋は、適度な厚さで、従来に無い着脱が容易で、各指の動きがスムースであった。スポーツ用手袋も機能性が十分であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明にかかる伸縮性皮革加工品のボンデイング加工方法は、第1に、伸縮性を有する接着基材に、ポリウレタン弾性糸を用いたことによって、合体した天然皮革に弾性回復性を付与することができる。第2に、伸縮性布帛が2ウエイストレッチ性を有することによって、元来縦・横あるいは全方向に伸縮性のある天然皮革と高伸度の方向に整合し、重ね合わせるだけで合体した天然皮革の面積部分の85%以上が有効なる伸びを有し、ソフト風合いに仕上げることができる。第3に、各製造工程で工夫を凝らしており、天然皮革を薄く漉く、例えば、厚さ0.3〜0.4mmにしても接着基材と合体することで十分な引裂き強力を有し、部分接着の塗工を施して通気性を、接着剤にホットメルト性接着剤を適用して、離型紙に事前に型入れし、あるいは小片パーツにも任意にデザインでき、ロスを軽減等が挙げられる。
したがって、本発明の最終製品は、弾性回復性に優れ、且つ柔軟性および通気性を有し、従来伸長回復性のない天然皮革に新機能を付与した画期的なものとして、基靴にはコンフォート性を、衣料アパレルにはひじ抜け、膝抜けのない高級服として、さらに、カーシートその他多方面に利用できることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表すボンデイング加工装置の斜視図
【図2】伸縮性布帛の全方向伸長特性図(a)、(b)
【図3】塗工形態を例示する接着基材および離型紙の正面図(a)、(b)および(c)
【図4】実施形態を表す婦人ブレザーの型入れ法の正面図(a)、(b)、(c)および(d)
【図5】他の実施形態を表す靴甲部品の型入れ法と伸びの方向を示す正面図
【図6】伸縮性皮革に負荷を繰返した伸びのヒステリシス曲線図(a)、(b)
【符号の説明】
1;接着基材
2;天然皮革
5;ホットロール
12;接着剤
20;プレスアイロンボックス機
Claims (5)
- 伸縮性布帛と天然皮革のボンデイング加工品を製造する次の構成を包含する方法。
(a)少なくとも縦方向および/または横方向に伸縮性を有するポリウレタン弾性糸を含有してなる伸縮性布帛に、伸縮性を妨げない接着剤で、通気性を有する塗工を施してなる接着基材を提供する、
(b)縦・横あるいは全方向に伸長性のある天然皮革を提供する、
(c)少なくとも天然皮革の選択された面積部分と接着基材が共に、両者がより高伸度の方向に整合するように重ね合わせる、
(d)接着基材と天然皮革をプレスアイロンでボンデイング加工する。 - 前記伸縮性布帛が、織物または編物からなり、全方向および/または縦・横方向に伸長率40%以上を有する方法。
- 前記両者がより高伸度の方向に整合する角度が、天然皮革の背骨に対して60〜120度の範囲に重ね合わせる方法。
- 前記接着剤が、ホットメルト性接着剤のポリアミド系、ポリエステル系、またはラテックス等で、塗工が全面でなく点または線状であり、且つ塗工量が15g/m2以上を有する方法。
- 予め接着剤を離型紙に塗工したものを伸縮性布帛とアイロン接着した後、そのうえに最終製品の各パーツを型入れし、荒く裁断した後、前記天然皮革のより高伸度の方向性をよく選択しながら、任意な場所に重ね合わせた後、プレスアイロンでボンデイング加工する方法、
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