JP2004208928A - 浴槽 - Google Patents

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Eisuke Tadaoka
英介 唯岡
Mitsuru Iwai
満 岩井
Kenichi Miyazaki
謙一 宮崎
Makoto Okada
誠 岡田
Yashio Suzuki
弥志雄 鈴木
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Abstract

【課題】浴室使用後の浴槽の水抜きのあと、浴槽底面部や段部(ステップ部)、あるいは浴槽上縁面部上の残水が速やかに(自然に)排水され、翌朝は、その表面は「乾燥状態」となっている浴槽を提供する。
【解決手段】表面が、(a)面積が0.1〜20cmで撥水性を示す部分及び(b)この撥水性を示す部分の周りに連続して配される親水性を示す部分を有し、排水勾配を有してなる底面または上縁面表面を有する浴槽。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用後はその表面が乾きやすい浴槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
量産性、意匠性・美感性(加飾性)、使用感、耐久性などの種々の利点から、浴槽は、近年では撥水性の高いFRP(繊維強化プラスチック)などのプラスチック成形品であることが多い。
このような浴槽における滑り止めや転倒防止のために、浴槽の底面部又は段部の表面に、大きめの凸部や凹部を形成させたり、微少凹凸粗面を形成させる方法は従来から知られている。また、大きいパターン部を複数設けるとともに、その大きいパターン部内で上方へ突出する小突起を複数設け、各小突起の端部を水の流通可能に開放させる方法も提案されている(特開平10−14802号公報)。
しかし、浴槽の上縁面部(平面部)は、ここに人が載ることは稀なので、ふき取り・清掃のしやすさを配慮してか、滑り止めや転倒防止に注意を払うことはなく、通常は、鏡面のような滑らかな平面か、略平面に形成されることが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
浴槽がFRPなどの撥水性の高いプラスチック成形品の場合、浴室使用後の浴槽の水抜きのあとに、浴槽の底面部や段部(ステップ部)にて大きめ又は厚めの水滴(水溜まりに近いもの)が残りやすく、蒸発・乾燥しにくい。入浴翌日も、殆どそのままに水滴が残っていて、感じのよいものではなく、また衛生的でもない。
また、浴槽出入り時、あるいは湯水混合栓もしくはシャワー使用時に湯水が浴槽上縁面部に掛かると、そこでも大きめ又は厚めの水滴(水溜まりに近いもの)となって残りやすく、蒸発・乾燥しにくい。入浴翌日も、殆どそのままに残っていて、感じのよいものではなく、また衛生的でもない。
本発明は、浴室使用後の浴槽の水抜きのあと、浴槽底面部や段部(ステップ部)、あるいは浴槽上縁面部上の残水が速やかに(自然に)排水され、翌朝は、その表面は「乾燥状態」となっている浴槽を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは種々検討した結果、浴室使用後の浴槽の水抜きのあとで湯水が残りやすい箇所、すなわち、浴槽上縁面部、浴槽底面部又は段部における排水性を向上させることに着想し、本発明を完成した。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−54295号公報(第4、6頁、第9〜12図)
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のものに関する。
1. 表面が、(a)面積が0.1〜20cmで撥水性を示す部分及び(b)この撥水性を示す部分の周りに連続して配される親水性を示す部分を有し、排水勾配を有してなる底面または上縁面表面を有する浴槽。
2. 親水性を示す部分が、排水口に連続して至るように配されている項1記載の浴槽
3.撥水性を示す部分の表面は、水の接触角が60度以上である項1または2記載の浴槽。
4.親水性を示す部分の表面は、水の接触角が60度未満である項1〜3のいずれか記載の浴槽。
5.親水性を示す部分内に、撥水性を示す部分1個を取り囲むように、しかも親水性を示す部分のみで閉じた曲線(撥水性を有する部分を内側に含まない)を作らないよう線を引いた場合に、その線に属する点から囲んだ撥水性を示す部分までの最短距離が10mm以下になるように線が引けるように親水性部分と撥水性部分を配する項1〜4のいずれかに記載の浴槽。
6.親水性を有する部分が、親水性処理を施した部分である項1〜5のいずれかに記載の浴槽。
7.親水性処理が、親水性膜を形成することである項6に記載の浴槽。
8.親水性処理が、幅0.1〜1.5mmで、深さ0.5〜1.5mmの連続した溝を隣接させて複数施すことである項6記載の浴槽。
9.親水性処理が、高さが0.5〜1.5mm、上から平面的に見たときの面積が床の総面積の10〜20%の尖った凸部を隣接するように施すことである項6記載の浴槽。
10.親水性処理が、表面の平均粗さRaが100μm以下で、凹凸の平均間隔Smと最大高さRyとの比Sm/Ryが5以下であるように表面に凹凸を施すことである項6記載の浴槽。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る一実施例の浴槽の平面図であり、図2はその排水口部分拡大断面図である。
浴槽1は、隣接する洗い場パンと一体に成形されていてもよい。
【0008】
浴槽1には、排水のための排水口凹部2が形成されている。
浴槽1は、上記排水口部3が最も低くなるように排水勾配が取られており、浴槽排水時には、湯水が浴槽1の底面部の水が排水勾配に沿って流れ、排水口部3に集水されるようになっている。
【0009】
本発明における浴槽の素材は、無機質材料とすることもできるが、通常は、成形が容易であること、量産性に富むことから、ガラス繊維強化プラスチック製が好ましく、その樹脂材料としては、不飽和ポリエステル樹脂が一般的である。
本発明おける排水勾配は、排水時に、湯水が、排水口又は排水溝に向って流れるようにするための傾斜であり、排水口又は排水溝に向って1/20〜1/100の範囲内の下り勾配を有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る浴槽は、その表面に、撥水性を示す部分を有する。
本発明おいて、撥水性とは、水の接触角が60度以上のことをいう。水の接触角を計るときは、接触角測定器の水平台に測定物を載せ、横方向から光を当てて投影拡大し、測定物と液滴との境界を含む面(水平面台と平行とみなす)を基準にして、その基準と液滴端部を通る液滴への接線(最大角のもの)のなす角度を読み取る。浴槽のように大きな測定物は、小片に切断して測定すればよい。上記の角度は、水平台面と上記接線のなす角度としても良い。
【0011】
撥水性を示す部分は、前記したガラス繊維強化プラスチック製の浴槽である場合、特別な処理をすることなく、その素材の性質をそのまま利用すればよい。表面を特に撥水性にする処理を施してもよいが、それには、フッ素樹脂などを塗装する方法などがある。
撥水性を示す部分は、表面の平均粗さRaが100μmを超えるか、凹凸の平均間隔Smと最大高さRyとの比Sm/Ryが5を超える物はすべて含まれる。尚、表面の平均粗さRa、凹凸の平均間隔Sm及び最大高さRyは、レーザ顕微鏡〔例えば、(株)キーエンス製のレーザ顕微鏡VK−8500シリーズ〕を用いて測定できる。
【0012】
本発明における浴槽の表面には、親水性を示す部分を有する。
本発明おいて、親水性とは、水の接触角が60度未満のことをいう。水の接触角を測るときは、上記と同様に製品表面を水平にして行い、このとき、その基準面は、上記したとおりである。また、親水性の尺度として、水の接触角を測る場合、(1)単に表面に水滴を静置して測定する方法、(2)水滴を約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法、(3)水滴を落とした後、水をおしなべて、その再凝集の状態を見る方法がある。(1)の場合、表面に水滴を落とした結果、水の接触角が60度未満であれば、本発明における親水性といえる。(2)の場合も、水の接触角が60度未満であれば、本発明における親水性といえる。(3)の場合、再凝縮した水の接触角が60度未満であれば、本発明における親水性であり、再凝縮しない場合も本発明における親水性といえる。
表面を親水性にするために、多くの場合、親水性処理が必要である。それには、親水性膜を形成する方法、表面形状を調整する方法などがある。
【0013】
親水性膜を形成する方法としては、表面に親水性の物質を塗装する方法が一般的である。親水性の物質としては、ポリシラザンや、酸化チタンを含む光触媒など、表面エネルギーが高く、結果として、水との接触角が60度以下になる物質であれば特に限定されない。因みに、FRPは水との接触角が70〜80度であるが、ポリシラザンを塗装した場合は約40度、光触媒を塗装した場合は約10度にすることができる。水の凝縮が観察されない。その他親水性の物質としては、親水性塗料がある。
【0014】
表面形状を調整する方法としては、表面の凹凸形状によって、擬似的に親水化する方法である。
【0015】
表面の凹凸形状によって、擬似的に親水化する方法の一つは、幅0.1〜1.5mmで、深さ0.5〜1.5mmの連続した溝を隣接させて複数施し、表面積を増大させることである。例えば、図8、9に示すように、表面に略V字形の連続した溝を隣接させて複数施す。この溝の上に水が落ちると、水は、その凝集作用によって溝内に吸引されて溝に入り込み、この後、溝の堰により再凝集が妨げられるとともにV字形の表面に対する真の接触角が大きくてもその表面が水平面に対してすでに大きな角度を有するため水平面に対する見かけの接触角が小さくなり、全体として、擬似的な接触角が小さくなる。従って、溝を複数隣接させた表面は、結果的に親水性を示す。尚、溝形状はV字形に限定されず、溝内の水の凝集作用を利用するものであればよい。
【0016】
表面の凹凸形状によって、擬似的に親水化する方法のもう一つは、高さが0.5〜1.5mmの尖った凸部を隣接するように、上から平面的に見たときの面積で浴槽底面部の総面積の少なくとも10〜20%にわたって施し、表面積を増大させる方法である。例えば、図5、6、7に示すように、略V字形の溝が格子状に施こされる。この擬似親水化表面に落ちた水は、溝内の水の凝集作用によって吸引され、表面は、結果的に親水性を示す。詳しくは後述するが、従来の浴槽底面に残る水玉の占める面積は、浴槽底面の面積の10〜20%であることから、尖った凸部は、浴槽底面の面積の少なくとも10〜20%であることが好ましい。
この溝の上に水が落ちると、水はその凝集作用によって溝内に吸引されて溝に入り込み、この後溝が連続していることで、多くの水が溝内に留まることと、尖った凸部による妨害により再凝集が妨げられるとともに、とがった凸部の表面に対する真の接触角が大きくても、その表面が水平面に対して、すでに大きな角度を有するため水平面に対する見かけの接触角が小さくなり、全体として擬似的な接触角が小さくなる。
【0017】
表面の凹凸形状によって、擬似的に親水化する方法のさらにもう一つは、表面の平均粗さRaが100μm以下で、凹凸の平均間隔Smと最大高さRyとの比Sm/Ryが5以下であるように表面に凹凸を施し、表面積を増大させることである。
このような凹凸形状を施す方法としては、浴槽表面の凹凸形状を施したい部分をサンドペーパー等を用いてサンディングする方法がある。浴槽を金型成形するに際し、金型として、浴槽の凹凸形状を施す部分に対応した金型表面にサンドブラストをかけたり、エッチング処理をした金型を使用する方法などがある。
FRPで鏡面の場合は、例えば、Ra=0.051μm、Ry=0.31μm、Sm=9.97μm、Sm/Ry=32.2であり、水を表面に流すと、凝縮する現象が観察される。一方、FRPの表面を粒度20μmのサンドペーパーでサンディングした場合、例えば、Ra=0.328μm、Ry=2.89μm、Sm=13.899μm、Sm/Ry=4.8とすることができ、水を表面に流すと、水が広がった状態が保たれ、凝縮しないことが観察される。また、金型表面にエッチング処理を施した金型で防水パンを成形した場合、その表面は、例えば、Ra=1.523μm、Ry=8.72μm、Sm=38.579μm、Sm/Ry=4.4とすることができ、これにより水が広がった状態が保たれ、凝縮しないことが観察される。
従来の岩肌調といわれているものは、平均粗さRaは1.77μm、最大高さRyは10.05μm、凹凸の平均間隔Smは97.95μm、Sm/Ryは9.7であり、上記の凹凸と区別され、また、この岩肌調といわれているものには、親水性化の機能はない。
【0018】
成形品の表面形状を調整する方法としては、直接成形品を加工する方法を採用しても良く、量産性の観点から、好ましくは、浴槽作製の材料であるSMC等の材料を加圧成形、射出成形又はRIM成形等で成形するための金型を用意し、予め成形品の溝に対応する部分の金型表面に機械加工、エッチング処理、サンドブラスト処理等の処理を施しておき、この金型を用いて成形することにより成形品に上記の溝を形成する方法がより好ましい。
【0019】
本発明において、撥水性を示す部分(以下、H部という)と親水性を示す部分(以下、S部という)を有する。
パネル表面のH部とS部の分布は、H部が面積で0.1〜20cmであるように施されることが好ましい。H部の面積が大きすぎると、この中に、接触角の大きな水玉が残りやすくなり、乾かなくなる。S部は、個々のH部を囲むように設けられる。S部内に、H部1個を取り囲むように、しかもS部内のみで閉じた曲線(撥水性部分を内側に含まない曲線)を作らないよう線を引いた場合に、その線に属する点から囲んだ撥水性を示す部分までの最短距離が1mm以上10mm以下になるように線が引けるようにS部とH部を配することが好ましい。H部の面積を一定とすると、上記の最短距離が小さいほど、H部に対するS部の面積が小さくなる。この最短距離は、1.5mm以上3mm以下の範囲にすることがより好ましい。なお、この最短距離は、上記の曲線は、撥水性を有する部分の間に1本の曲線が通るように引くべきであり、この場合、撥水性を有する部分への最短距離は、各撥水性を有する部分について、測定する。
上記の最短距離は、いわば、H部の幅に相当するものである。
【0020】
H部とS部は、隣接しており、S部は排水口又は排水溝に連続して致るように配される。図面を用いて説明すると、S部が排水口または排水溝に連続して配され、このように配することで、S部が勾配の上流から下流まで連続し、水玉ができにくくなる。
【0021】
【作用】
浴槽は、排水勾配を有するので、浴槽中の湯水の大部分は、すなわち、重力の働きで、排水口に向けて流れ落ちる。このとき残った湯水は、例えば、従来の滑らかな表面又は岩肌調の表面などでは、接触角70〜80度の水玉が多数残るように、水の表面張力により凝縮する。水玉が占める面積は、浴槽底面部面積の十数%程度である。この水玉は、水の量に対し表面積が小さいため、8時間程度では自然乾燥することなく、翌朝になっても残ってしまう。
一方、排水勾配を有する浴槽が、親水性である場合、浴室使用中の湯水の大部分は、重力の働きで、排水口に向けて流れ落ちるが、残った湯水は、浴槽が、親水性であるため水で良く濡れることになり、水の表面積が多くなり、撥水性である場合に比べて、乾き易くなる。
しかし、本発明のように、H部の周りに又はH部に隣接してS部を配することにより、浴室使用中の湯水の大部分は、上記と同様、重力の働きで、排水口又は排水溝に向けて流れ落ちるが、残った湯水は、S部では、接触角の大きな水玉にはならず、良く濡れた状態になる。一方、H部上に残った湯水は、使用直後では、S部の水と繋がっており、H部の撥水性により、H部の撥水性も作用して、S部に移動する。このような作用は、H部とS部との接触角の差が大きいほど発現しやすく、20度以上の差があることが好ましい。これにより、S部に残存又は誘導された水は、S部に薄く広がるため(接触角が小さいので)、体積に対して、表面積が大きく、従って、本発明のように、H部の周りに又はH部に隣接してS部を配する方が、自然乾燥しやすい。
H部とS部は、H部がS部を取り囲むように隣接して、しかも、S部が連続して防水パン全面に適当に配されると、特に、水玉ができにくくなるので乾燥効果が優れる。
さらに、S部が排水口に連続して至るように配されると、一部の水が排水口に導かれて排水される排水効果も期待できるため、乾燥効果を高めることができる。
以上の機序により、本発明に係る浴槽は、使用後に早く乾きやすい。なお、H部に水玉が残ることがあるかもしれないが、H部の面積を小さくしてあるので、蒸発により十分早く乾く。
H部とS部との高さ関係は、H部がS部より高い場合は、上記のようなH部からS部への移動があるが、S部がH部より高い場合も、H部からS部への移動があるが、H部が低いため、H部に水が貯まることがある。
そこで、H部に貯まる残水が2cc以下になるように、H部の面積と高さを確保されていることが好ましい。2ccとは、未使用時の浴室の一般的な環境条件である温度15.3℃、湿度66%で8時間で自然乾燥する残水量である。
本発明おいて、親水性とは、水を表面に流した後、表面張力によって、再度凝縮しようとする現象を防止する手段であるといえる。
【0022】
本発明のような表面テクスチュアを有する浴槽は、防水パンの表面凹凸模様に対応する型(金属製)を用いて、シートモールディングコンパウンド(SMC)を成形して製造することができる。また、同様にして成形した防止パンに処理を施すことにより本発明に係る防水パンを作製することができる。
【0023】
【実施例】
実施例1
図1に示した浴槽を作製した。そのA−A断面図は図2に示す通りである。表面テクスチュアは図3及び図4に示すものとした。
図3は、表面テクスチュアを示す部分斜視図、図4はそのB−B断面図である。
本実施例における浴槽は、親水性を示す部分5に対応する部分の金型表面を所定のエッチングが施された金型を用いてシートモールディングコンパウンド(SMC)成形することにより作製したものである。
本実施例における浴槽において、撥水性を示す部分4は、対角線寸法の長い方が13mm、短い方が6.8mmの菱形状をしており、長辺側が排水勾配の方へ向いていて、その表面は鏡面である。一方、親水性を示す部分7は、撥水性を示す部分6の周囲に幅3mmで設けられ、表面の平均粗さRaは13.48μm、最大高さRyは97.91μm、凹凸の平均間隔Smは14.15μm、Sm/Ryは0.14のシボ部である。尚、撥水性を示す部分4は浴槽1底面部全体に等間隔に配置されている。また、撥水性を示す部分4は、の最大高さに対して約0.1mm低く構成されている。
本実施例における接触角は、撥水性を示す部分4は約70度であり、親水性を示す部分5は約15度である。尚、測定は、水滴約10μLを約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法を用いた。
上記の金型は次のように表面処理された。すなわち、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分は、エッチングされないようにマスキングし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分のみをシボ模様にするように対応させた版を用いて、Ryが約100μmになるようにエッチング処理を施した。この結果、金型表面は、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分が凸、成形品の親水性を有する部分に対応する部分が凹に形成された。この金型を用いて成形すると、成形品表面には親水性を有する部分にシボ模様が施され、撥水性を有する部分が親水性を有する部分よりも約0.1mm低くなった。
また、浴槽の底面部分の排水勾配は、1/70である。
このような浴槽1を作製し、浴槽1を所定の配置に固定し、シャワーを用いて、浴槽1底面部に放水し、水を流した後、室温15℃、湿度66%の雰囲気に放置して、浴槽底面が完全に乾燥するまでの時間を測定した。
その結果、放水直後には、排水口3への水の流れが途切れ、床全体に水が薄く水膜状に広がり、約1.5時間後、撥水性を示す部分4の水は親水性を示す部分5に吸収され、さらに約5時間後、親水性を示す部分4の水がすべて乾燥した。
【0024】
実施例2
実施例1におけるのと同様の浴槽を作製した。ただし、表面テクスチュアを図5〜7に示すものとした。
図5は、浴槽の部分平面図、図6はそのC−C断面図、図7はそのD−D断面図である。
本実施例における浴槽において、撥水性を示す部分4は、対角線寸法の長い方が13mm、短い方が6.8mmの菱形状であって、長辺側が流し溝へ向いている。その表面は鏡面である。一方、親水性を示す部分5は、撥水性を示す部分4の周囲に幅3mmで設けられ、高さが1.4mmの尖った凸部6がピッチ1.4mmで隣接され、結果的に、表面にV字形の溝7が、排水勾配方向とこれに直交する方向の二方向に設けられている。撥水性を示す部分4の表面と凸部6の先端が同一平面高さになるようにしてある。
本実施例における接触角は、撥水性を示す部分4は約70度であり、親水性を示す部分5は約20度である。尚、測定は、水滴約10μLを約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法を用いた。
本実施例で使用した金型は次のように表面処理された。すなわち、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分は、エッチングされないようにマスキングし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分のみを格子状の模様に対応させた版を用いて、エッチング処理を施した。この結果、金型表面は、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分が凸、成形品の親水性を有する部分に対応する部分が凹に形成された。この金型を用いて成形すると、成形品の親水性を有する部分に尖った凸部が施され、撥水性を有する部分が親水性を有する部分の尖った凸部よりも低くなる(図11及び12に示す状態)。次いで、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分のマスクをはずし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分をエッチングされないようにマスキングしてから成形品の撥水性を有する部分に対応する部分を、特に版を用いずに、成形品の親水性を有する部分に対応する部分の凹部と同一深さになるまで、エッチング処理を施した。この金型を用いて成形すると、成形品の親水性を有する部分に尖った凸部が施され、撥水性を有する部分と親水性を有する部分の凸部の先端が同一平面高さになる。尚、このときの撥水性を有する部分は模様のない平坦な面になる。
本実施例における浴槽1を所定の配置に固定し、シャワーを用いて、浴槽1底面部に放水し、水を流した後、室温15℃、湿度66%の雰囲気に放置して、乾燥するまでの時間を測定した。
その結果、放水直後には、排水口3への水の流れが途切れ、浴槽底面部全体に水が薄く水膜状に広がり、約1.5時間後、撥水性を示す部分4の水はV字形の溝7に吸収され、さらに約5時間後、溝7の水がすべて乾燥した。
【0025】
実施例3
実施例1におけるのと同様の浴槽を作製した。ただし、表面テクスチュアを図8〜9に示すものとした。
図8は、浴槽の部分平面図、図9はそのE−E断面図である。
本実施例における浴槽において、表面テクスチュアに撥水性を有する部分6は、対角線寸法の長い方が13mm、短い方が6.8mmの菱形状であって、長辺側が排水口3へ向いている。その表面は鏡面である。一方、親水性を有する部分5は、撥水性を示す部分4の周囲に幅3mmで設けられ、幅1mm、深さ0.5mm、ピッチ1mmのV字形の溝8が隣接して複数本、排水口3に向かって施されている。
本実施例における接触角は、撥水性を示す部分4は約70度であり、親水性を示す部分5は約20度である。尚、測定は、水滴約10μLを約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法を用いた。
本実施例で使用した金型は次のように表面処理された。すなわち、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分は、エッチングされないようにマスキングし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分のみを線状の模様に対応した版を用いて、エッチング処理を施すと、金型表面は、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分が凸、親水性を有する部分が凹に形成される。
続いて、親水性を有する部分をエッチングされないようにマスキングし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分を、特に版を用いずに、上記の凹部と同一深さまで、エッチング処理を施した。この金型を用いて成形すると、成形品の親水性を有する部分に隣接したV字形の溝が施され、撥水性を有する部分と親水性を有する部分の凸部の先端が同一平面高さになる。尚、このときの撥水性を有する部分は模様のない平坦な面になる。
本実施例における浴槽1を所定の配置に固定し、シャワーを用いて、浴槽1底面に放水し、水を流した後、室温15℃、湿度66%の雰囲気に放置して、乾燥するまでの時間を測定した。
その結果、放水直後には、排水口3への水の流れが途切れ、床全体に水が薄く水膜状に広がり、約1.5時間後、撥水性を示す部分4の水はV字形の溝7に吸収され、さらに約5時間後、溝7の水がすべて乾燥した。
【0026】
実施例4
実施例1におけるのと同様の浴槽を作製した。ただし、表面テクスチュアを図10に示すものであり、この部分は下記に示す方法により形成した。
図10は、浴槽の部分平面図である。
本実施例における浴槽において、撥水性を示す部分4は、対角線寸法の長い方が13mm、短い方が6.8mmの菱形状であって、長い方が排水勾配のほうへ向いている。その表面は鏡面である。一方、親水性を示す部分5は、撥水性を示す部分4の周囲に幅3mmで設けられ、表面には親水性膜として次のような処方でポリシラザンがコーティングされている。
予め脱脂処理したFRP製の浴槽に、5%のシランカップリング剤A−1100(イソプロピルアルコール溶液)(日本ユニカー株式会社製)をスプレーコートで塗布し、100℃の乾燥炉内で10分乾燥させた。次いで、5%のポリシラザンNL−110(キリレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)をスプレーコートで塗布し、140℃の乾燥炉内で60分乾燥(架橋)させた。その後、0.02%の水酸化ナトリウム水溶液で処理した。尚、撥水性を示す部分6は、マスキング等によりコーティングされない処置を施した。
本実施例における接触角は、撥水性を示す部分4は約70度であり、親水性を示す部分5は約20度である。尚、測定は、水滴約10μLを約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法を用いた。
本実施例における浴槽1を作製し、浴槽1を所定の配置に固定し、シャワーを用いて、浴槽1全体に放水し、水を流した後、室温15℃、湿度66%の雰囲気に放置して、乾燥するまでの時間を測定した。
その結果、放水直後には、排水口3への水の流れが途切れ、床全体に水が薄く水膜状に広がり、約1時間後、撥水性を示す部分4の水は親水性膜によって親水性を有する部分5にさらに広がり、約4時間後、親水性膜の水がすべて乾燥した。
【0027】
実施例5
実施例1におけるのと同様の浴槽を作製した。ただし、表面テクスチュアを図5、11、12に示すものとした。
図5は、浴槽の部分平面図、図11はそのC−C断面図、図12はそのD−D断面図である。
本実施例における浴槽において、撥水性を示す部分4は、対角線寸法の長い方が13mm、短い方が6.8mmの菱形状であって、長辺側が流し溝へ向いている。その表面は鏡面である。一方、親水性を示す部分5は、撥水性を示す部分4の周囲に幅3mmで設けられ、高さが1.4mmの尖った凸部6がピッチ1.4mmで隣接され、結果的に、表面にV字形の溝7が、流し溝5方向とこれに直交する方向の二方向に設けられている。撥水性を示す部分4はとがった凸部6の先端よりも低く形成されている。
本実施例における接触角は、撥水性を示す部分4は約70度であり、親水性を示す部分5は約20度である。尚、測定は、水滴約10μLを約300mmの高さから表面に自然落下させて測定する方法を用いた。
本実施例で使用した金型は次のように表面処理された。すなわち、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分は、エッチングされないようにマスキングし、成形品の親水性を有する部分に対応する部分のみを格子状の模様に対応した版を用いて、エッチング処理を施すと、金型表面は、成形品の撥水性を有する部分に対応する部分が凸、成形品の親水性を有する部分に対応する部分が凹に形成される。この金型を用いて成形すると、成形品の親水性を有する部分に尖った凸部が施され、撥水性を有する部分は親水性を有する部分の尖った凸部よりも低くなる。
本実施例における浴槽1を所定の配置に固定し、シャワーを用いて、浴槽1全体に放水し、水を流した後、室温15℃、湿度66%の雰囲気に放置して、乾燥するまでの時間を測定した。
その結果、放水直後には、排水口3への水の流れが途切れ、床全体に水が薄く水膜状に広がり、約3時間後、撥水性を示す部分4の水はV字形の溝7に吸収され、さらに約6時間後、溝7の水がすべて乾燥した。
【0028】
以上の各実施例で示した表面形状は、適宜組みあわせることができる。
【0029】
比較例
50mm×50mmの凸部と、その周囲に幅9mmの凹部を備えた浴槽を作製し比較した。凸部は、滑り止め用の凹凸が施され、その平均粗さRaは1.77μm、最大高さRyは10.05μm、凹凸の平均間隔Smは97.95μm、Sm/Ryは9.7である。一方、凹部は鏡面状に仕上げられている。尚、この凸部と凹部が浴槽底面部に施されている。このような浴槽を用い、実施例と同じ試験を行った。
その結果、直後から水が凝縮しはじめ、凸部、凹部に拘わらず、水玉状に複数の箇所で残存し、約8時間経過しても乾燥しなかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係る浴槽によれば、使用後は、水が膜状に濡れ広がるため、速やかに乾燥する。また、細く深い溝を形成する必要がないので、汚れの堆積が少なく、清掃もし易すくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における浴槽の平面図である。
【図2】図1の排水口部拡大図である。
【図3】本発明の一実施例における浴槽の部分平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の一実施例における浴槽の部分平面図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】図5のD−D断面図である。
【図8】本発明の一実施例における浴槽の部分平面図である。
【図9】図8のE−E断面図である。
【図10】本発明の一実施例における浴槽の部分平面図である。
【符号の説明】
1:浴槽
2:浴槽底面部
3:排水口
4:撥水性を有する部分
5:親水性を有する部分
6:尖った凸部
7:V字型の溝(1)
8:V字型の溝(2)

Claims (10)

  1. 表面が、(a)面積が0.1〜20cmで撥水性を示す部分及び(b)この撥水性を示す部分の周りに連続して配される親水性を示す部分を有し、排水勾配を有してなる底面または上縁面表面を有する浴槽。
  2. 親水性を示す部分が、排水口に連続して至るように配されている請求項1記載の浴槽
  3. 撥水性を示す部分の表面は、水の接触角が60度以上である請求項1または2記載の浴槽。
  4. 親水性を示す部分の表面は、水の接触角が60度未満である請求項1〜3いずれか記載の浴槽。
  5. 親水性を示す部分内に、撥水性を示す部分1個を取り囲むように、しかも親水性を示す部分のみで閉じた曲線(撥水性を有する部分を内側に含まない)を作らないよう線を引いた場合に、その線に属する点から囲んだ撥水性を示す部分までの最短距離が0.5mm以上10mm以下になるように線が引けるように親水性を示す部分と撥水性を示す部分を配する請求項1〜4のいずれかに記載の浴槽。
  6. 親水性を有する部分が、親水性処理を施した部分である請求項1〜5のいずれかに記載の浴槽。
  7. 親水性処理が、親水性膜を形成することである請求項6に記載の浴槽。
  8. 親水性処理が、幅0.1〜1.5mmで、深さ0.5〜1.5mmの連続した溝を隣接させて複数施すことである請求項6記載の浴槽。
  9. 親水性処理が、高さが0.5〜1.5mm、上から平面的に見たときの面積が床の総面積の10〜20%の尖った凸部を隣接するように施すことである請求項6記載の浴槽。
  10. 親水性処理が、表面の平均粗さRaが100μm以下で、凹凸の平均間隔Smと最大高さRyとの比Sm/Ryが5以下であるように表面に凹凸を施すことである請求項6記載の浴槽。
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