JP2004207658A - 熱電モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度で、吸熱性に優れる熱電モジュールを提供する。
【解決手段】セラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2にメッキ等により夫々下部電極3及び上部電極4を形成し、下基板1及び上基板2は下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置し、両者の間に銅又は銅合金からなる複数個の導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5を配置する。導電性チップ7は熱電素子5の下端部に接合されており、更に導電性チップ7の下端部は下部電極3に接合されている。また、熱電素子5の上端部は上部電極4に接合されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で1個の上部電極4aに接続されている。また、両端部の熱電素子が接合された下部電極3には夫々リード線8が接続されている熱電モジュール。
【選択図】 図1
【解決手段】セラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2にメッキ等により夫々下部電極3及び上部電極4を形成し、下基板1及び上基板2は下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置し、両者の間に銅又は銅合金からなる複数個の導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5を配置する。導電性チップ7は熱電素子5の下端部に接合されており、更に導電性チップ7の下端部は下部電極3に接合されている。また、熱電素子5の上端部は上部電極4に接合されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で1個の上部電極4aに接続されている。また、両端部の熱電素子が接合された下部電極3には夫々リード線8が接続されている熱電モジュール。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペルチェ効果を利用した熱電モジュールに関し、特に強度及び吸熱性に優れる熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6(a)は従来の一般的な熱電モジュールを示す断面図であり、図6(b)はその斜視図である。図6(a)においては、はんだ等の接合部材部分は省略しており、以下の図も同様である。図6(b)においては、モジュール内部の構造を見やすくするため上基板を省略している。また、各熱電素子のp型及びn型の区別については、図6(b)に「P」及び「N」の符号を付する。図6(a)に示すように、従来の熱電モジュールは、絶縁性の下基板1及び上基板2に夫々下部電極3及び上部電極4を形成し、下部電極3と上部電極4が対向するように下基板1及び上基板2を平行に配置し、両者の間に複数個の熱電素子5を配置して構成されている。図6(b)に示すように、下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する1対の下部電極3上に接合された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bの上部を1個の上部電極4に接合することにより、複数個のp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bとが交互に直列に接続されている。この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3に、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0003】
また、下部電極3及び上部電極4により接続されたp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bに電流を流すと、電流はn型熱電素子5b下側から上部電極4を通ってp型熱電素子5aの下側へ流れる。一方、エネルギーはp型熱電素子5aでは電流と同じ方向に、n型熱電素子5bでは電流と逆の方向へ移動するため、上部電極4側ではエネルギーが不足して温度が下がり(吸熱)下部電極側ではエネルギーが放出されて温度が上がる(放熱)。
【0004】
前記熱電モジュールの吸熱量(Qc)は、下記数式1に示すように、前述したペルチェ効果による熱移動から、熱を輸送するためのジュール熱(電力消費による発熱)及び熱の逆流分を差し引くことにより求められる。数式1において、Kはペルチェ定数、Iは駆動電流、Rは素子の等価抵抗、μはモジュールの熱伝導率、ΔTは吸熱面(上部電極側)と放熱面(下部電極側)の温度差である。
【0005】
【数1】
【0006】
従来の熱電モジュールにおいて、駆動電流及び素子数を変えずに、吸熱性を向上させるためには、熱電素子の厚さを薄くするか、又は熱電素子の総断面積を大きくして素子の等価抵抗を下げなければならなかった。しかしながら、前記熱電素子の厚さを薄くすると、熱電モジュールとして十分な耐久性及び機械的強度が得られないといった問題が生じる。また、熱電素子の断面積を大きくすると、モジュール自体も大きくなり、小型機器への適用が困難になる。
【0007】
そこで、熱電モジュールの信頼性を向上するため、熱電素子の両面にニッケル層及び厚さ10μmの銅又は銅合金層を形成し、応力集中を緩和する方法(特許文献1参照)、熱電素子の両面に熱応力吸収層を設けることで熱応力を軽減する方法(特許文献2参照)及び、熱電素子の両端に形成された電極部のヤング率を低くし、更に電極の厚みを高温側より低温側を薄くすることで内部応力を緩和する方法(特許文献3参照)等が提案されている。図7は特許文献1乃至3で提案されている熱電モジュールを模式的に示す断面図である。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−310765号公報 (第2−3頁、図3)
【特許文献2】
特開平8−321635号公報 (第2−4頁、図1)
【特許文献3】
特開2001−203400号公報 (第2−5頁、図1−4)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1乃至3で提案された熱電モジュールは、図7に示すように、熱電素子5の両面に導電性を有する応力緩和層6を設けている。そのため、熱電素子5と応力緩和層6の接合部に応力が集中し、そこが破壊の起点になり、十分な耐久性が得られないため、更なる耐久向上が求められている。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであって、高強度で、且つ吸熱性に優れる熱電モジュールを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱電モジュールは、1対の基板の間に複数個の熱電素子を配置してなる熱電モジュールにおいて、前記熱電素子のいずれか一方の面にのみ導電性を有するチップが接合され、一方の基板上の電極と前記導電性を有するチップとが接合され、他方の基板上の電極と前記熱電素子とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱電モジュールにおいては、熱電素子に導電性チップを接合することにより、基板間の距離を長くすることができ、耐久性が向上する。更に、前記熱電素子のいずれか一方の面にのみ前記導電性を有するチップを接合しているため、熱電素子、導電性を有するチップ及び電極における接合面が、両面に導電層を設けた従来の熱電モジュールより少なくなり、より一層耐久性を向上することができる。また、接合工程が容易であるため、めっき等により導電層を形成する方法に比べ、製造時間を短縮することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱電モジュールについて添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態を示す断面図である。本発明の第1実施形態の熱電モジュールは、セラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2にメッキ等により夫々下部電極3及び上部電極4が形成され、下基板1及び上基板2は下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置され、両者の間に銅又は銅合金からなる複数個の導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5が配置されている。導電性チップ7は熱電素子5の下端部に接合されており、更に導電性チップ7の下端部は下部電極3に接合されている。また、熱電素子5の上端部は上部電極4に接合されている。即ち、熱電素子5は導電性チップ7を介して、下部電極3と電気的に接続されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する下部電極3a及び下部電極3bに導電性チップ7を介して接続された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で1個の上部電極4aに接続されている。これにより、複数個のp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に直列に接続されている。また、この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3には、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0014】
次に、本実施形態の動作について説明する。本実施形態の熱電モジュールにおいては、リード線8を介して電流を供給すると、下部電極3から導電性チップ7を介してn型熱電素子5bに電流が流れ、更に上部電極3を経由してp型熱電素子5aに流れる。それにより、従来の熱電モジュールと同様に、上基板2側で吸熱し、下基板1側で放熱する。
【0015】
本実施形態の熱電モジュールにおいては、導電チップ7として熱伝導率及び電気伝導度が高い銅又は銅合金を使用しているため、熱電素子5に電流が流れるのを妨げず、更に電気抵抗の増加による吸熱量の低下も防ぐことができる。また、下部電極3と熱電素子5の間に導電チップ7を設けたことにより、熱電素子5と下部電極3との接合部に生じる熱応力を緩和すると共に、下基板1と上基板2との距離を増すことができ、熱輻射による損失を低減して吸熱性を向上することができる。更にまた、導電チップ7を熱電素子5の両面に設けた場合に比べ、熱応力による影響を少なくすることができる。
【0016】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は本発明の第2実施形態を示す断面図である。本発明の第2実施形態の熱電モジュールは、メッキ等により下部電極3及び上部電極4が形成されたセラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2が、下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置され、両者の間に銅又は銅合金からなる導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5が配置されている。導電性チップ7は熱電素子5の上端部に接合しており、更にその上端部で上部電極4と接合している。また、熱電素子5の下端部は下部電極3と接合している。即ち、熱電素子5は導電性チップ7を介して、上部電極4と電気的に接続されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する下部電極3a及び下部電極3bに接続された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で導電性チップ7を介して1個の上部電極4aに接続されている。これにより、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に直列に接続されている。また、この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3には、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0017】
本実施形態の熱電モジュールにおいては、リード線8を介して電流を供給すると、下部電極3からn型熱電素子5bに電流が流れ、更に導電性チップ7及び上部電極3を経由してp型熱電素子5aに流れる。それにより、従来の熱電モジュール及び第1実施形態同様、上基板2側で吸熱し、下基板1側で放熱する。
【0018】
また、本実施形態においても、導電チップ7として銅又は銅合金を使用しており、第1実施例同様、熱電素子5に電流が流れるのを妨げず、更に電気抵抗の増加による吸熱量の低下も防ぐことができる。また、上部電極4と熱電素子5の間に導電チップ7を設けたことにより、熱電素子5と下部電極4との接合部に生じる熱応力を緩和すると共に、下基板1と上基板2との距離を増すことができ、熱輻射によるロスを低減して吸熱性を向上することができる。更にまた、導電チップ7を熱電素子5の両面に設けた場合に比べ、熱応力による影響を少なくすることができ、熱電モジュールの信頼性及び吸熱性を向上することができる。
【0019】
上述した実施形態においては、導電チップ7の材質を銅又は銅合金としたが、それらに限定するものではなく、導電性を有するものであればよい。また、導電チップ7と熱電素子5の接合方法であるが、はんだ接合等の電気的に接続できる一般的な方法を適用することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例の熱電モジュールを作製し、その特性を本発明の範囲から外れる比較例と比較した結果について具体的に説明する。表1には本実施例及び比較例の共通の仕様を示す。また、図3には熱電素子の配置図を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1
熱電素子の下端部に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ1.0mmの銅合金製の導電チップを接合し、図1に示す第1実施形態の構造を有する熱電モジュールを作製した。本実施例においては、本実施例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0023】
実施例2
熱電素子の上端部に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ1.0mmの銅合金製の導電チップを接合し、図2に示す第2実施形態の構造を有する熱電モジュールを作製した。本実施例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0024】
比較例1
図4に示す導電チップを設けない従来タイプの熱電モジュールを作製した。本比較例の熱電モジュールの厚さは1.3mmであった。
【0025】
比較例2
熱電素子の両面に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ0.5mmの銅合金製の導電チップを接合し、図7に示す熱電素子の両側に導電チップを設けた熱電モジュールを作製した。本比較例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0026】
上記実施例及び比較例について、パワーサイクル試験及び衝撃試験を実施した。図4はパワーサイクル試験を模式的に示す断面図であり、図5は衝撃試験を模式的に示す断面図である。パワーサイクル試験は、図4に示すように、熱電モジュール10の放熱側及び吸熱側に厚さ1mmのCuWプレート11a及び11bをはんだにより接合し、ホット側のCuWプレート11aの温度を60゜で保持した状態で、1分間熱電モジュール10に通電して温度差(ΔTmax)をかけた後、4分間通電を止めて温度差をなくした。これを1サイクルとして、2万サイクル行い、試験前後のAC抵抗の変化率を測定した。サンプル数は各22個とし、AC抵抗の変化率が5%以下のものを合格とした。また、衝撃試験は、図5に示すように、熱電モジュール10の放熱側に厚さ3mmのCuWプレート12を、熱電モジュール10の吸熱側13には重さ10gのCuWブロック13を夫々はんだにより接合した後、放熱側のCuWプレート12を試験ステージ14に固定した。MIL−STD(米軍規格;Military Specifications and MilitaryStandards)−883(Method2002)Condition Bに従い、熱電モジュールの直交する3方向(X、Y、Z)に各14710m/sec2(1500G)の加速度を5回ずつ加えた。サンプル数は各22個とし、試験前後のAC抵抗の変化率を測定してAC抵抗の変化率が5%以下のものを合格とした。パワーサイクル試験及び衝撃試験の結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示すように、導電チップを接合していない従来型の熱電モジュールである比較例1の熱電モジュールは、パワーサイクル試験で10個、衝撃試験で15個が不合格であった。また、熱電素子の両側に導電チップを接合した比較例2の熱電モジュールは、パワーサイクル試験で2個、衝撃試験で3個が不合格であった。比較例2の熱電モジュールは、比較例1に比べ不合格数が減少しており、耐久性は向上しているが、全数合格にはならなかった。
【0029】
一方、熱電素子の上端側だけに導電チップを接合した実施例1及び、熱電素子の下端側だけに導電チップを接合した実施例2の熱電モジュールは、パワーサイクル試験及び衝撃試験を行った試料全てにおいて、AC抵抗の変化率が5%以下であり、優れた耐久性を示した。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、熱電素子の片側に導電性を有するチップを接合したことで、基板間の距離が長くなり、機械的強度及び吸熱性を向上させることができる。また、熱電素子と導電性を有するチップの接合面が従来構造の半分になるため、耐久性を向上することができる。更に、めっき等により同等の厚さの金属層を形成する場合に比べ、製造工程が容易で、製造時間も短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【図3】実施例及び比較例の熱電モジュールにおける、熱電素子の配置図である。
【図4】パワーサイクル試験を示す断面図である。
【図5】衝撃試験を示す断面図である。
【図6】(a)は従来の熱電モジュールの断面を示す模式図であり、(b)は従来の熱電モジュールの上基板を除いた部分の斜視図である。
【図7】特許文献1乃至3で提案されている熱電モジュールを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1;下基板 2;上基板 3、3a、3b;下部電極 4、4a、4b;上部電極 5;熱電素子 5a;p型熱電素子 5b;n型熱電素子 6;応力吸収層 7;導電チップ 8;リード線 10;熱電モジュール 11a、11b、12;CuWプレート 13;CuWブロック 14;試験ステージ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペルチェ効果を利用した熱電モジュールに関し、特に強度及び吸熱性に優れる熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6(a)は従来の一般的な熱電モジュールを示す断面図であり、図6(b)はその斜視図である。図6(a)においては、はんだ等の接合部材部分は省略しており、以下の図も同様である。図6(b)においては、モジュール内部の構造を見やすくするため上基板を省略している。また、各熱電素子のp型及びn型の区別については、図6(b)に「P」及び「N」の符号を付する。図6(a)に示すように、従来の熱電モジュールは、絶縁性の下基板1及び上基板2に夫々下部電極3及び上部電極4を形成し、下部電極3と上部電極4が対向するように下基板1及び上基板2を平行に配置し、両者の間に複数個の熱電素子5を配置して構成されている。図6(b)に示すように、下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する1対の下部電極3上に接合された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bの上部を1個の上部電極4に接合することにより、複数個のp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bとが交互に直列に接続されている。この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3に、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0003】
また、下部電極3及び上部電極4により接続されたp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bに電流を流すと、電流はn型熱電素子5b下側から上部電極4を通ってp型熱電素子5aの下側へ流れる。一方、エネルギーはp型熱電素子5aでは電流と同じ方向に、n型熱電素子5bでは電流と逆の方向へ移動するため、上部電極4側ではエネルギーが不足して温度が下がり(吸熱)下部電極側ではエネルギーが放出されて温度が上がる(放熱)。
【0004】
前記熱電モジュールの吸熱量(Qc)は、下記数式1に示すように、前述したペルチェ効果による熱移動から、熱を輸送するためのジュール熱(電力消費による発熱)及び熱の逆流分を差し引くことにより求められる。数式1において、Kはペルチェ定数、Iは駆動電流、Rは素子の等価抵抗、μはモジュールの熱伝導率、ΔTは吸熱面(上部電極側)と放熱面(下部電極側)の温度差である。
【0005】
【数1】
【0006】
従来の熱電モジュールにおいて、駆動電流及び素子数を変えずに、吸熱性を向上させるためには、熱電素子の厚さを薄くするか、又は熱電素子の総断面積を大きくして素子の等価抵抗を下げなければならなかった。しかしながら、前記熱電素子の厚さを薄くすると、熱電モジュールとして十分な耐久性及び機械的強度が得られないといった問題が生じる。また、熱電素子の断面積を大きくすると、モジュール自体も大きくなり、小型機器への適用が困難になる。
【0007】
そこで、熱電モジュールの信頼性を向上するため、熱電素子の両面にニッケル層及び厚さ10μmの銅又は銅合金層を形成し、応力集中を緩和する方法(特許文献1参照)、熱電素子の両面に熱応力吸収層を設けることで熱応力を軽減する方法(特許文献2参照)及び、熱電素子の両端に形成された電極部のヤング率を低くし、更に電極の厚みを高温側より低温側を薄くすることで内部応力を緩和する方法(特許文献3参照)等が提案されている。図7は特許文献1乃至3で提案されている熱電モジュールを模式的に示す断面図である。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−310765号公報 (第2−3頁、図3)
【特許文献2】
特開平8−321635号公報 (第2−4頁、図1)
【特許文献3】
特開2001−203400号公報 (第2−5頁、図1−4)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1乃至3で提案された熱電モジュールは、図7に示すように、熱電素子5の両面に導電性を有する応力緩和層6を設けている。そのため、熱電素子5と応力緩和層6の接合部に応力が集中し、そこが破壊の起点になり、十分な耐久性が得られないため、更なる耐久向上が求められている。
【0010】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであって、高強度で、且つ吸熱性に優れる熱電モジュールを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱電モジュールは、1対の基板の間に複数個の熱電素子を配置してなる熱電モジュールにおいて、前記熱電素子のいずれか一方の面にのみ導電性を有するチップが接合され、一方の基板上の電極と前記導電性を有するチップとが接合され、他方の基板上の電極と前記熱電素子とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱電モジュールにおいては、熱電素子に導電性チップを接合することにより、基板間の距離を長くすることができ、耐久性が向上する。更に、前記熱電素子のいずれか一方の面にのみ前記導電性を有するチップを接合しているため、熱電素子、導電性を有するチップ及び電極における接合面が、両面に導電層を設けた従来の熱電モジュールより少なくなり、より一層耐久性を向上することができる。また、接合工程が容易であるため、めっき等により導電層を形成する方法に比べ、製造時間を短縮することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱電モジュールについて添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態を示す断面図である。本発明の第1実施形態の熱電モジュールは、セラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2にメッキ等により夫々下部電極3及び上部電極4が形成され、下基板1及び上基板2は下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置され、両者の間に銅又は銅合金からなる複数個の導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5が配置されている。導電性チップ7は熱電素子5の下端部に接合されており、更に導電性チップ7の下端部は下部電極3に接合されている。また、熱電素子5の上端部は上部電極4に接合されている。即ち、熱電素子5は導電性チップ7を介して、下部電極3と電気的に接続されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する下部電極3a及び下部電極3bに導電性チップ7を介して接続された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で1個の上部電極4aに接続されている。これにより、複数個のp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に直列に接続されている。また、この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3には、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0014】
次に、本実施形態の動作について説明する。本実施形態の熱電モジュールにおいては、リード線8を介して電流を供給すると、下部電極3から導電性チップ7を介してn型熱電素子5bに電流が流れ、更に上部電極3を経由してp型熱電素子5aに流れる。それにより、従来の熱電モジュールと同様に、上基板2側で吸熱し、下基板1側で放熱する。
【0015】
本実施形態の熱電モジュールにおいては、導電チップ7として熱伝導率及び電気伝導度が高い銅又は銅合金を使用しているため、熱電素子5に電流が流れるのを妨げず、更に電気抵抗の増加による吸熱量の低下も防ぐことができる。また、下部電極3と熱電素子5の間に導電チップ7を設けたことにより、熱電素子5と下部電極3との接合部に生じる熱応力を緩和すると共に、下基板1と上基板2との距離を増すことができ、熱輻射による損失を低減して吸熱性を向上することができる。更にまた、導電チップ7を熱電素子5の両面に設けた場合に比べ、熱応力による影響を少なくすることができる。
【0016】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は本発明の第2実施形態を示す断面図である。本発明の第2実施形態の熱電モジュールは、メッキ等により下部電極3及び上部電極4が形成されたセラミックス等の絶縁性の下基板1及び上基板2が、下部電極3と上部電極4が対向するように平行に配置され、両者の間に銅又は銅合金からなる導電性チップ7及びそれらと接合された複数個の熱電素子5が配置されている。導電性チップ7は熱電素子5の上端部に接合しており、更にその上端部で上部電極4と接合している。また、熱電素子5の下端部は下部電極3と接合している。即ち、熱電素子5は導電性チップ7を介して、上部電極4と電気的に接続されている。下部電極3及び上部電極4には、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に配置され、隣接する下部電極3a及び下部電極3bに接続された熱電素子のうち、隣接するp型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが、その上端部で導電性チップ7を介して1個の上部電極4aに接続されている。これにより、p型熱電素子5a及びn型熱電素子5bが交互に直列に接続されている。また、この直列接続体の両端部の熱電素子が接合された下部電極3には、夫々リード線8がはんだ等により接合されている。
【0017】
本実施形態の熱電モジュールにおいては、リード線8を介して電流を供給すると、下部電極3からn型熱電素子5bに電流が流れ、更に導電性チップ7及び上部電極3を経由してp型熱電素子5aに流れる。それにより、従来の熱電モジュール及び第1実施形態同様、上基板2側で吸熱し、下基板1側で放熱する。
【0018】
また、本実施形態においても、導電チップ7として銅又は銅合金を使用しており、第1実施例同様、熱電素子5に電流が流れるのを妨げず、更に電気抵抗の増加による吸熱量の低下も防ぐことができる。また、上部電極4と熱電素子5の間に導電チップ7を設けたことにより、熱電素子5と下部電極4との接合部に生じる熱応力を緩和すると共に、下基板1と上基板2との距離を増すことができ、熱輻射によるロスを低減して吸熱性を向上することができる。更にまた、導電チップ7を熱電素子5の両面に設けた場合に比べ、熱応力による影響を少なくすることができ、熱電モジュールの信頼性及び吸熱性を向上することができる。
【0019】
上述した実施形態においては、導電チップ7の材質を銅又は銅合金としたが、それらに限定するものではなく、導電性を有するものであればよい。また、導電チップ7と熱電素子5の接合方法であるが、はんだ接合等の電気的に接続できる一般的な方法を適用することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例の熱電モジュールを作製し、その特性を本発明の範囲から外れる比較例と比較した結果について具体的に説明する。表1には本実施例及び比較例の共通の仕様を示す。また、図3には熱電素子の配置図を示す。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1
熱電素子の下端部に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ1.0mmの銅合金製の導電チップを接合し、図1に示す第1実施形態の構造を有する熱電モジュールを作製した。本実施例においては、本実施例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0023】
実施例2
熱電素子の上端部に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ1.0mmの銅合金製の導電チップを接合し、図2に示す第2実施形態の構造を有する熱電モジュールを作製した。本実施例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0024】
比較例1
図4に示す導電チップを設けない従来タイプの熱電モジュールを作製した。本比較例の熱電モジュールの厚さは1.3mmであった。
【0025】
比較例2
熱電素子の両面に、縦1.0mm、横1.0mm、厚さ0.5mmの銅合金製の導電チップを接合し、図7に示す熱電素子の両側に導電チップを設けた熱電モジュールを作製した。本比較例の熱電モジュールの厚さは2.3mmであった。
【0026】
上記実施例及び比較例について、パワーサイクル試験及び衝撃試験を実施した。図4はパワーサイクル試験を模式的に示す断面図であり、図5は衝撃試験を模式的に示す断面図である。パワーサイクル試験は、図4に示すように、熱電モジュール10の放熱側及び吸熱側に厚さ1mmのCuWプレート11a及び11bをはんだにより接合し、ホット側のCuWプレート11aの温度を60゜で保持した状態で、1分間熱電モジュール10に通電して温度差(ΔTmax)をかけた後、4分間通電を止めて温度差をなくした。これを1サイクルとして、2万サイクル行い、試験前後のAC抵抗の変化率を測定した。サンプル数は各22個とし、AC抵抗の変化率が5%以下のものを合格とした。また、衝撃試験は、図5に示すように、熱電モジュール10の放熱側に厚さ3mmのCuWプレート12を、熱電モジュール10の吸熱側13には重さ10gのCuWブロック13を夫々はんだにより接合した後、放熱側のCuWプレート12を試験ステージ14に固定した。MIL−STD(米軍規格;Military Specifications and MilitaryStandards)−883(Method2002)Condition Bに従い、熱電モジュールの直交する3方向(X、Y、Z)に各14710m/sec2(1500G)の加速度を5回ずつ加えた。サンプル数は各22個とし、試験前後のAC抵抗の変化率を測定してAC抵抗の変化率が5%以下のものを合格とした。パワーサイクル試験及び衝撃試験の結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示すように、導電チップを接合していない従来型の熱電モジュールである比較例1の熱電モジュールは、パワーサイクル試験で10個、衝撃試験で15個が不合格であった。また、熱電素子の両側に導電チップを接合した比較例2の熱電モジュールは、パワーサイクル試験で2個、衝撃試験で3個が不合格であった。比較例2の熱電モジュールは、比較例1に比べ不合格数が減少しており、耐久性は向上しているが、全数合格にはならなかった。
【0029】
一方、熱電素子の上端側だけに導電チップを接合した実施例1及び、熱電素子の下端側だけに導電チップを接合した実施例2の熱電モジュールは、パワーサイクル試験及び衝撃試験を行った試料全てにおいて、AC抵抗の変化率が5%以下であり、優れた耐久性を示した。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、熱電素子の片側に導電性を有するチップを接合したことで、基板間の距離が長くなり、機械的強度及び吸熱性を向上させることができる。また、熱電素子と導電性を有するチップの接合面が従来構造の半分になるため、耐久性を向上することができる。更に、めっき等により同等の厚さの金属層を形成する場合に比べ、製造工程が容易で、製造時間も短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【図3】実施例及び比較例の熱電モジュールにおける、熱電素子の配置図である。
【図4】パワーサイクル試験を示す断面図である。
【図5】衝撃試験を示す断面図である。
【図6】(a)は従来の熱電モジュールの断面を示す模式図であり、(b)は従来の熱電モジュールの上基板を除いた部分の斜視図である。
【図7】特許文献1乃至3で提案されている熱電モジュールを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1;下基板 2;上基板 3、3a、3b;下部電極 4、4a、4b;上部電極 5;熱電素子 5a;p型熱電素子 5b;n型熱電素子 6;応力吸収層 7;導電チップ 8;リード線 10;熱電モジュール 11a、11b、12;CuWプレート 13;CuWブロック 14;試験ステージ
Claims (1)
- 1対の基板の間に複数個の熱電素子を配置してなる熱電モジュールにおいて、前記熱電素子のいずれか一方の面にのみ導電性を有するチップが接合され、一方の基板上の電極と前記導電性を有するチップとが接合され、他方の基板上の電極と前記熱電素子とが接合されていることを特徴とする熱電モジュール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002377911A JP2004207658A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 熱電モジュール |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002377911A JP2004207658A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 熱電モジュール |
Publications (1)
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JP2004207658A true JP2004207658A (ja) | 2004-07-22 |
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ID=32814936
Family Applications (1)
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JP2002377911A Pending JP2004207658A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 熱電モジュール |
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JP (1) | JP2004207658A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE112008001912T5 (de) | 2007-07-20 | 2010-06-02 | Universal Entertainment Corporation | Thermoelektrisches Wandlermodul |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002377911A patent/JP2004207658A/ja active Pending
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