JP2004206945A - リチウム電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】暗電流を抑制でき、このため充電・放電効率に優れ、かつ充放電時間を短縮することが可能なリチウム電池を提供する。
【解決手段】電解質層と、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池であって、前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であるリチウム電池。
【選択図】 図1
【解決手段】電解質層と、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池であって、前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であるリチウム電池。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、負極活物質として、チタン系コア・シェル粒子を用いたリチウム電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
リチウム電池は、他の電池に比べて大きなエネルギー密度を持ち、軽い、あるいは長時間使用できるという特徴を生かして携帯電話、PHS、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として開発が進められている。このようなリチウム電池は、一般に、リチウム含有遷移金属酸化物などを正極活物質とする正極と、炭素質負極材料(負極活物質)を主要構成成分とする負極と、非水電解液とから構成される。正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極材料としては炭素質材料が、非水電解液としてはリチウム塩が非水溶媒に溶解されたものが広く知られている。
【0003】
リチウム電池の作動原理は、充電時には、外部から電流を強制的に流すことによって正極の結晶の中にあったリチウム原子をリチウムイオンとして電解液中に放出させ、同時に電解液中のリチウムイオンを負極の結晶の中に挿入し、放電時にはこの逆反応で、負極中のリチウム原子が正極中にもどり、負極で発生する電子が外部回路で仕事をして正極にもどることから成り立っている。
【0004】
このようなリチウム電池の電池性能をさらに向上させるために、前記した各構成要素に対する研究が活発に行われている。
たとえば、負極材料(負極活物質)として、従来は、炭素質材料が用いられていたが、過放電あるいは過充電した場合に放電特性あるいは充電特性にからなずしも満足するものではなく、このためグレーツェル等は負極活物質として酸化チタン微結晶、チタン化合物微結晶を用いることを提案している。(Electrochemical and Solid-State Letters, 5 (2)A39-A42(2002))しかしながら、負極活物質として酸化チタン等の微結晶を用いると充電あるいは放電の可逆性は向上するものの、充電容量あるいは放電容量が小さく、かつ充電等に長時間を必要とする問題があった。
【0005】
本発明者等は、このような負極活物質として酸化チタン等を用いる場合の問題点を解消すべく鋭意検討した結果、酸化チタン微結晶をB、Al等の酸化物で被覆することによって充電容量、放電容量が向上するとともに充電時間が短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、暗電流を抑制でき、このため充電・放電効率に優れ、かつ充放電時間を短縮することが可能なリチウム電池を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るリチウム電池は、
電解質層と、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池であって、
前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であることを特徴としている。
【0008】
前記コア粒子が球状または柱状であって、平均短径(D)が2〜40nmの範囲にあり、平均長さ(L)が5〜1000nmの範囲にあり、該粒子のアスペクト比(L)/(D)が1〜200の範囲にあるか、あるいは、前記コア粒子が管状酸化チタンであって、外径が5〜40nmの範囲にあり、内径が4〜20nmの範囲にあり、管の厚みが0.5〜10nmの範囲にあり、長さが20〜1000nmの範囲にあり、管の長さ(LP)と管の外径(DP)とのアスペクト比(LP/DP)が10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0009】
【発明の具体的な説明】
以下、本発明に係るリチウム電池について具体的に説明する。
[リチウム電池]
本発明に係るリチウム電池は、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極がそれぞれ、集電体を対向するように配置してなり、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とを有する。
【0010】
前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であることを特徴とするものである。このようなリチウム電池(リチウムイオン電池ともいう)は、充放電可能な二次電池であっても、一次電池であってもよい。
電池の形状としては、円筒状、角状、平板状、コイン状、ボタン状など公知の形状が挙げられる。
【0011】
このようなリチウム電池としては、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明に係るリチウム電池の一実施例を示す概略図であり、電解質層と、電解質層中の積層する正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質(酸化チタン(コア・シェル)からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池である。
【0012】
すなわち、負極集電体に負極活物質層を有する負極と、正極集電体に正極活物質を有する正極とを、セパレータを介して巻回し、得られた巻回体の上下に絶縁板(インシュレーター)を載置した状態で電池缶に収納してなるものである。前記電池缶には、蓋がガスケットを介してかしめることにより取り付けられている。また必要に応じて図1に示すような安全弁・ポリスイッチが設けられることもある。それぞれ負極リードおよび正極リードを介して負極あるいは正極と電気的に接続され、電池の負極あるいは正極として機能するように構成されている。
【0013】
電解質、液体またはゲル状の場合は電池缶内に充満され、前記した正極・負極が電解液(ゲル状電解質)に浸積されるように構成される。また固体電解質の場合、セパレートとともにあるいはセパレータの代わりに正極との負極間に載置され、ともに巻回して巻回体として、電池缶に収容される。
[電解質層]
本発明のリチウム電池に用いる電解質層には、液状の電解液として非水電解液あるいは固体電解質が好適に用いられる。
【0014】
非水電解液としては、リチウム塩が非水溶媒に含有された非水電解液であって、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。
具体的に、非水溶媒としては、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとビニレンカーボネートとの混合溶媒を使用することが好ましい。
【0015】
このような構成の非水電解液をリチウム電池の非水電解液とすれば、電池性能(サイクル特性、レート特性および初期特性)に優れたリチウム電池を得ることができる。なお、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートは、誘電率が高いことから、イオン伝導を確実に起こすことができ、さらに、非水溶媒にビニレンカーボネートを含有させることにより、充電時において、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートの分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を負極上に形成できるので、充電を十分に行うことができる。
【0016】
エチレンカーボネートの量は、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。エチレンカーボネートの量が上記範囲にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を調製することができる。また、このようなエチレンカーボネートの含有量の範囲にあれば、電解液の粘度が高くなりすぎることもなく、取り扱い性にも優れている。
【0017】
γ−ブチロラクトンの量は、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。γ−ブチロラクトンの量が前記範囲にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を得ることができる。また、γ−ブチロラクトンは、凝固点が低く、このため、低温(たとえば氷点下)においても、非水電解液の粘度上昇が起こりにくいという優れて特性を有している。また、このような範囲にあれば、充電時に負極上でγ−ブチロラクトンが分解するのを確実に抑制できるので、特に、充電を十分に行うことができる。
【0018】
プロピレンカーボネートは、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。プロピレンカーボネートの量が前記範囲内にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を得ることができる。プロピレンカーボネートは、凝固点が約−49℃であることから、その量が10重量%以上であることによって、低温(氷点下)においても、非水電解液の粘度上昇が起こりにくく、イオン伝導を確実にすることができる。一方、50重量%以下であることによって、充電時に負極上でプロピレンカーボネートが分解するのを確実に抑制できるので、特に、充電を十分に行うことができる。
【0019】
ビニレンカーボネートは、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して1重量%〜10重量%、好ましくは2〜8重量%であることが望ましい。ビニレンカーボネートの量が前記範囲内にあれば、充電時において、非水溶媒の分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を、負極上に形成できるので、充電を十分に行うことができ、特にリチウム電池の初期特性を向上できる。なお、ビニレンカーボネート自身が重合しやすいため前記上限を越えると重合してしまうことがある。
【0020】
非水溶媒として上記の混合溶媒を含有する非水電解液は、上記溶媒がいずれも高沸点溶媒であるので、高温下に晒されても非水電解液の揮発を抑制できる。
なお、本発明では、これら混合溶媒とともに、必要に応じて、低粘度溶媒等の他の有機溶媒が添加されてもよい。このような他の有機溶媒としては、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル;γ−バレロラクトン等の環状エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル;テトラヒドロフランまたはその誘導体、1,3-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。これらの必要に応じて添加可能な他の有機溶媒は、非水溶媒の全重量に対して0.1重量%〜30.0重量%であることが好ましい。
【0021】
リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等が挙げられ、これらのリチウム塩を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0022】
特に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)は、前記例示した他のフッ素系リチウム塩と比較して電解液中に存在する水分との反応性が低いので、安全性に優れ、特に、電池性能(サイクル特性、レート特性(高率放電特性)および初期特性)に優れたリチウム電池が得ることが可能となる。
非水電解液におけるリチウム塩の濃度としては、0.1〜3.0モル/l、好ましくは0.2〜2モル/lが望ましく、特に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を使用する場合、その濃度は、1.5〜2.4モル/lの範囲にあることが望ましい。このような濃度範囲にあれば、イオン伝導性が高く、また、リチウム塩が電解液中で析出することもない、高い電池性能を有するリチウム電池を得ることができる。とくに、このような濃度範囲にある電解液を使用すると、特にレート特性に優れたリチウム電池とすることができる。
【0023】
固体電解質としては、例えばリチウムイオンを含む酸化物系急冷ガラス、硫化物ベースのオキシスルフィド系超イオン伝導ガラスなどのガラス系固体電解質、ポリエーテルなどの高分子に、Li塩が溶解・分散した高分子固体電解質などが挙げられる。
ポリエーテルとしては、例えば以下に示すものが知られている。
【0024】
【化1】
【0025】
また高分子固体電解質は、溶媒成分を含むゲル状であってもよい。
[正極]
本発明に用いる正極は、正極集電体(1)上に正極活物質層が形成されている。
正極集電体(1)としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に制限はなく従来公知の正極集電体を用いることができる。例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。また、これら以外に、ニッケル酸リチウム、クロム酸リチウム、パラジン酸リチウム、マンガン酸リチウム等、導電性高分子としてポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ-p-フェニレン等、さらに単体硫黄、チオール化合物等の硫黄化合物、およびこれらの混合物からなる集電体を使用することも可能である。
【0026】
正極集電体(1)の形状については、使用される電池の形状等よって適宜選択され、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔を使用することが好ましい。さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極活物質と正極集電体(1)との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0027】
[正極活物質]
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属硫化物等が用いられ、このようなリチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、一般式LixMA2、LixM1-yNyA2(M、NはIからVIII族の金属、Aは酸素、硫黄などのカルコゲン化合物を示し、0.1≦x≦1、0≦y<1である)等で表される、例えばリチウム−コバルト系複合酸化物やリチウム−マンガン系複合酸化物等の金属化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、前記リチウム含有遷移金属酸化物に加えて他の正極活物質を含有してもよく、他の正極活物質としては、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩、CuO、Cu2O、Ag2O、CuS、CuSO4等のI族金属化合物、TiS2、SiO2、SnO等のIV族金属化合物、VOx(V2O5、V6O12、VO、V2O3、VO2等の酸化バナジウムあるいはそれらの混合物)、Nb2O5、Bi2O3、Sb2O3等のV族金属化合物、CrO3、Cr2O3、MoO3、MoS2、WO3、SeO2等のVI族金属化合物、MnO2、Mn2O3等のVII族金属化合物、Fe2O3、FeO、Fe3O4、Ni2O3、NiO、Co2O3、CoO等のVIII族金属化合物、さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
正極活物質は通常、粉体であり、その平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、リチウム電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0030】
正極活物質とともに、導電剤、結着剤およびフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、導電剤としては、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極の総重量に対して1重量%〜50重量%が好ましく、特に2重量%〜30重量%が好ましい。
【0031】
結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。結着剤の添加量は、正極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0032】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極活物質重量に対して30重量%以下が好ましい。
これらの混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に制限されるものではなく、具体的には、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいはアトライター、ビーズミル、ミキサーなどの湿式混合機を採用することが可能である。
【0033】
正極は、前記正極活物質、導電剤および結着剤を、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶剤に混合させた後、得られた混合液を集電体上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコーダー等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
[負極]
本発明に用いる負極は、負極集電体(2)上に負極活物質層が形成されている。
[負極集電体(2)]
負極集電体(2)としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に制限はなく従来公知の負極集電体を用いることができる。例えば、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0035】
負極集電体(2)の形状についても正極集電体(1)と同様にフォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みについては特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、負極としては、負極の還元雰囲気下で安定であり、かつ電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、およびそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。また、前期同様、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより負極材料と負極集電体(2)との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0036】
本発明では負極活物質として、酸化チタンからなるコア粒子とこれを被覆するIIIa、IIIb族から選ばれる元素の1種または2種以上からなる酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子が使用される。
酸化チタンからなるコア粒子は、電気的には半導体的性質を有し、結晶構造の面からは構造中にLi化合物等を取り込むことができ(インターカレーションということがある:電池としては充電機能)、特に低電圧でインターカレーションを起こすことができるので、負極として好適である。
【0037】
このようなコアとして用いられる酸化チタン粒子としては結晶性の酸化チタン、例えばアナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタンは好適に用いることができ、特にアナタース型酸化チタンは好適に用いることができる。
上記コア粒子は、IIIa、IIIb族から選ばれる元素の1種または2種以上からなる酸化物からなるシェルで被覆されている。
【0038】
具体的には、B、Al、Ga、In、Sc、Y、ランタニド元素およびアクチニド元素の酸化物、複合酸化物、酸化物の混合物等で被覆されている。なかでもB、Al、Yの酸化物、複合酸化物、酸化物の混合物は充電および放電の可逆性の向上、充電容量、放電容量の向上、紫外線遮蔽効果による耐久性に優れている。
このようなコア・シェル粒子を含んでいると、充放電の可逆性が高く、たとえ過充電されても、高い可逆性を有しており、充放電損失が少ないという優れた特性を有している。
【0039】
このようなコア・シェル粒子における被覆量は粒子全体の酸化物換算で0.01〜10重量%、さらには0.1〜5重量%の範囲にあることが好ましい。
コア・シェル粒子における被覆量が酸化物換算で0.01重量%未満の場合は、被覆量が少ないために充電および放電の可逆性の向上、充電容量、放電容量の向上、紫外線遮蔽効果による耐久性向上効果等が充分得られないことがある。
【0040】
コア・シェル粒子における被覆量が酸化物換算で10重量%を越えると、被覆物質が絶縁性を有しているため、全体として導電性が低下し、このため充電電圧を高くする必要が生じることがある。
本発明ではコア粒子として、球状または柱状であって、平均短径(D)が2〜40nm、さらには5〜30nmの範囲にあり、平均長さ(L)が5〜1000nm、さらには10〜500nmの範囲にあり、該粒子のアスペクト比(L)/(D)が1〜200、さらには2〜100の範囲にあることが好ましい。
【0041】
なお短径、外径、長さ等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について各値を測定し、この平均値として算出する。
平均短径(D)が2nm未満の場合は、結晶構造の歪みが大きくなり放電・充電特性の不可逆性度合いが高くなり、充放電におけるロスが大きくなることがある。
【0042】
平均短径(D)が40nmを越えると、Liイオンの迅速な取り込みが困難であり、充電に長時間を要するようになる。
平均長さ(L)が5nm未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0043】
平均長さ(L)が1000nmを越えると、得られる負極活物質層の細孔構造あるいは強度の再現性が低下し、基材との密着性が低下し、リチウム電池の充電・放電性能が変動する傾向がある。
コア粒子のアスペクト比(L)/(D)が200を越えると、負極集電体(2)との密着性が低下する。
【0044】
コア粒子の形状に、最終的に得られるシェル部を形成したコア-シェル粒子の形状は左右され、コア粒子が球状だと、得られるコア-シェル粒子の形状も球状となり、コア粒子が柱状だとコア-シェル粒子の形状も柱状になる。
このようなコア・シェル粒子は、コア粒子に前記酸化物を被覆することによって得られる。
【0045】
コア粒子そのものは従来公知の製造方法によって得られ、例えば、ゾル・ゲル法等で得られた含水チタン酸ゲルまたはゾルに、必要に応じて酸またはアルカリを添加した後、加熱・熟成することによって得ることができる。なお、コア粒子の酸化チタンは完全に酸化物なっているものであっても、一部が還元状態にある低次酸化物であってもよい。酸化チタンコアの還元は予めしておいてもよく、またシェル層形成してから還元してもよい。還元は還元ガスを使用して行う。また還元ガスはシェル層を通過できるので、シェル層を形成してからコア粒子を還元することも可能である。
【0046】
ついで、酸化チタンコア粒子にシェルを形成する。例えば、酸化チタン粒子を前記元素の化合物の溶液に分散させ、酸化チタン粒子に前記化合物を吸収させるか、必要に応じて加水分解して酸化チタン粒子表面に析出させた後、必要に応じてオートクレーブにて水熱処理し、ついで乾燥し、焼成することによって形成することができる。あるいは前記元素の塩化物、炭酸塩、アルコキシドなどを用い、CVD法によって形成することもできる。
【0047】
また、本発明では、コア-シェル粒子として、コア粒子が、管状酸化チタンであり、かかる管状酸化チタン粒子の表面にをシェル部で被覆したものを使用することもできる。
コア粒子として使用される管状酸化チタンは、外径が5〜40nmの範囲にあり、内径が4〜20nmの範囲にあり、管の厚みが0.5〜10nmの範囲にあり、長さが20〜1000nmの範囲にあり、管の長さ(LP)と管の外径(DP)とのアスペクト比(LP/DP)が10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0048】
ここで、外径、内径、長さ等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について各値を測定し、この平均値としてもとめる。また、内径は、外径を求める線の内側に認められるコントラストの境をなす線より求めることができる。
管状酸化チタンの外径が5nm未満の場合は、管状酸化チタンの内径も小さく、管状酸化チタン内部の電解質の拡散が不充分となり、管状酸化チタンを用いる効果が充分得られない。
【0049】
管状酸化チタンの外径が40nmを越えると、管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の比表面積が低下するとともに、負極活物質層中の管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の含有量が低下し、充電・放電速度および充電・放電容量が低下する傾向にあり、コア粒子に管状酸化チタンを用いる効果が得られない。
【0050】
管状酸化チタンの内径が4nm未満の場合は、前記したように管状酸化チタン内部の電解質の拡散が不充分となり、管状酸化チタンを用いる効果が充分得られない。
管状酸化チタンの内径が20nmを越えると、やはり前記したように管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の比表面積が低下するとともに、負極活物質層中の管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の含有量が低下し、充電・放電速度および充電・放電容量が低下する傾向にあり、コア粒子に管状酸化チタンを用いる効果が得られない。
【0051】
管状酸化チタンの管の厚みが0.5nm未満の場合は、充電・放電容量が低下する。
管状酸化チタンの管の厚みが10nmを越えると、Liイオンのインターカレーション速度が低下、即ち充電速度が低下する傾向にある。
管状酸化チタンの長さ(LP)が20nm未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0052】
管状酸化チタンの長さ(LP)が1000nmを越えると、得られる負極活物質層の細孔構造あるいは強度の再現性が低下し、基材との密着性が低下し、リチウム電池の充電・放電性能が変動する傾向がある。
管の長さ(LP)と管の外径(DP)との比(LP/DP)が10未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0053】
管の長さ(LP)と管の外径(DP)との比(LP/DP)が200を越えると、負極集電体(2)との密着性が低下することがある。
コア粒子が管状酸化チタンであるコア・シェル粒子の製造方法は、コア粒子に前記したように前記酸化物を被覆することによって得られる。
先ず、コア粒子としての管状酸化チタンは従来公知の製造方法によって得られ、前記サイズを有する管状酸化チタンを用いる。例えば、特開平10−152323号公報に開示されたナノチューブ状結晶性チタニアは好適に用いることができる。なお、管状酸化チタンは還元されて低次酸化物となっていてもよい。
【0054】
ついで、管状酸化チタンコア粒子にシェルを形成する方法は、前記と同様にして、管状酸化チタン粒子を前記元素の化合物の溶液に分散させ、酸化チタン粒子に前記化合物を吸収させるか、必要に応じて加水分解して管状酸化チタン粒子表面に析出させた後、必要に応じてオートクレーブにて水熱処理し、ついで乾燥し、焼成することによって形成することができる。あるいは前記元素の塩化物、炭酸塩、アルコキシドなどを用い、CVD法によって形成することもできる。
【0055】
このようなシェル部を構成すると、そのままの形状(すなわち管状粒子)が得られるが、シェル層の厚さを厚くすると、内管が閉塞され円柱状粒子となることもあるが、本発明で、いずれも使用することが可能である。
本発明のように、コア粒子として、管状酸化チタンを使用することによって、従来の球状あるいは柱状のコア粒子を使用する場合にくらべて、比表面積は、容量が増加し、かつ内部の空洞(ポアー)を速やかに電解質が拡散できるので、充電・放電速度を高めることができる。
【0056】
本発明では、負極活物質とともに、前記したような導電剤、結着剤およびフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。これらの添加量も前記と同様である。このような負極は、前記負極活物質、導電剤および結着剤を、N−メチルピロリドン、トルエン等の有機溶剤に混合させた後、得られた混合液を集電体上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。
【0057】
[セパレータ]
リチウム電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。
本発明で使用されるセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0058】
このようなリチウム電池用セパレータの空孔率は、強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
[リチウム電池の作成]
本発明に係るリチウム電池は、非水電解液をリチウム電池用セパレータを介して前記正極と前記負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。
【0059】
また、前記正極と前記負極とがリチウム電池用セパレータを介して積層された後に巻回されてなるリチウム電池においては、非水電解液は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましく、例えば、円筒型電池、角型電池、偏平型電池などとされる。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
【0060】
また電解質がゲル状の固体電解質の場合も非水電解液と同様に注液することも可能である。また、固体電解質(ゲル状を含め)の場合、予めシート状の成形体を作成したり、ゲル状の場合はセパレータまたは集電体の表面に塗工し、セパレータとともにあるいはセパレータの代わりに巻回して、電池内に載置してもよい。液状の電解液にゲル化剤を添加し、封入後、加熱等してゲル化させて形成してもよい。
【0061】
外装材としては、例えば、ニッケルメッキした鉄、ステンレススチール、アルミニウム、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合フィルム等が挙げられ、リチウム電池の軽量化の観点から、金属樹脂複合フィルムが特に好ましい。金属箔の具体例としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼、チタン、金、銀等、ピンホールのない箔であれば限定されないが、好ましくは軽量かつ安価なアルミニウム箔が好ましい。また、電池外部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム等の突き刺し強度に優れた樹脂フィルムを、電池内部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム,ナイロンフィルム等の、熱融着可能であり、かつ耐溶剤性を有するフィルムが好ましい。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、負極集電体上に、特定のコア・シェル粒子からなる負極活物質層が形成されているので、充電・放電容量が大きく、かつ充電・放電速度が速く、充電・放電の可逆性、特に過充電、過放電(一定レベルより放電しすぎると可逆性がなくなり充電容量等が低下する)があった場合でも安定した可逆性に優れたリチウム電池を提供することができる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに実施例により限定されるものではない。
【0064】
【実施例1】
酸化チタンコア・シェル粒子 (A) の調製
50gの水素化チタンを10Lの純水に懸濁し、濃度5%過酸化水素液4000gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液に濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行い、酸化物としての濃度が10重量%の酸化チタン粒子(A)の分散液を調製した。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。平均短径、平均長さは表1に示す。
【0065】
別途、t-ブトキシアルミニウム5gをt-ブチルアルコール50ccに溶解してシェル形成用化合物の溶液を調製した。
ついで、上記酸化チタン粒子(A)の分散液をロータリーエバポレーターに採り、これにt-ブチルアルコール2Lを添加し、共沸させて水を除いた後、温度60℃でシェル形成用化合物の溶液を添加し、3時間加熱処理した。ついで、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(A)を調製した。
[リチウム電池(A)の作製]
正極の作成
LiCoO2(正極活物質)90重量%,アセチレンブラック(導電剤)5重量%およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5重量%の混合物と、有機溶剤であるN−メチルピロリドンとを混練することによって得たペーストを、正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ15μm)上に塗布した後、乾燥することによって、厚さが80μmの正極を作製した。
【0066】
負極の作成
上記で得た酸化チタンコア・シェル粒子(A)(負極材料)を95重量%およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5重量%の混合物と、有機溶剤であるN−メチルピロリドンとを混練することによって得たペーストを、負極集電体である銅箔(厚さ10μm)上に塗布した後、乾燥することによって、厚さが70μmの負極を作製した。
【0067】
非水電解液の調製
エチレンカーボネート50重量%と1,2-ジメトキシエチレン50重量%とを混合して非水溶媒を調製した。これにLi(CF3SO2)2を添加して濃度が1M/Lの非水電解液を調製した。
リチウム電池 (A) の作成
ポリプロピレン不織布(リチウム電池用セパレータ)を介して正極と負極とを積層させたものに対して上記で得た非水電解液を充分含浸させた後、ステンレス製の外装材で封止することによって、コイン型リチウム電池(A)(直径20mm,厚さ3.2mm)を作製した。
【0068】
[電池特性の測定]
室温(25℃)において、上記で得たリチウム電池(A)に対して、4.1V、5時間率(0.2It)、7時間の定電流定電圧充電を行った後、5時間率(0.2It)、1時間率(1.0It)、0.5時間率(2.0It)および0.33時間率(3.0It)の各電流密度で、終止電圧2.7Vまで放電した(各電流密度における放電容量を、C0.2,C1.0,C2.0,C3.0とする)。5時間率(0.2It)の電流密度で放電した場合の放電容量に対する、各電流密度(1.0It、2.0Itおよび3.0It)で放電した場合の放電容量の割合を算出することにより、リチウム電池のレート特性(高率放電特性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0069】
また、リチウム電池(A)に対して、4.1V,2時間率(0.5It),3時間の定電流定電圧充電を行い、引き続き、2時間率(0.5It)の電流密度で、終止電圧2.7Vまで放電するサイクルを30サイクル行った後に、リチウム電池の内部抵抗(1kHz)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0070】
比較例1を基準として、
内部抵抗が比較例1の50%未満 :3
内部抵抗が比較例1の50〜75% :2
内部抵抗が比較例1の±25% :1
内部抵抗が比較例1の125%以上 :0
【0071】
【実施例2】
酸化チタンコア・シェル粒子 (B) の調製
実施例1と同様にして得た濃度10重量%の酸化チタン粒子(A)の分散液100gにシェル形成用化合物としてAl2O3としての濃度が1重量%の硝酸アルミニウム水溶液11gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを8.5に調整して硝酸アルミニウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(B)を調製した。
【0072】
[リチウム電池(B)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(B)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(B)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0073】
【実施例3】
酸化チタンコア・シェル粒子 (C) の調製
実施例1と同様にして得た濃度10重量%のチタニアコロイド粒子(A)の分散液100gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液20gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(C)を調製した。
【0074】
[リチウム電池(C)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(C)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(C)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0075】
【実施例4】
酸化チタンコア・シェル粒子 (D) の調製
183gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の90%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化物としての濃度が10重量%の酸化チタン粒子(D)の分散液を調製した。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。平均短径、平均長さは表1に示す。
【0076】
次に、上記で得られた酸化チタン粒子(D)の分散液に、シェル形成用化合物としてAl2O3としての濃度が1重量%の硝酸アルミニウム水溶液550gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを8.5に調整して硝酸アルミニウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(D)を調製した。
【0077】
[リチウム電池(D)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(D)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(D)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0078】
【実施例5】
管状酸化チタンコア・シェル粒子 (E) の調製
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0079】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5重量%であった。
ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。ついで、230℃で5時間水熱処理して酸化チタン粒子(T-1)分散液を調製した。
【0080】
ついで、酸化チタン粒子(T-1)分散液に、濃度40重量%のKOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が10となるように添加し、150℃で2時間水熱処理した。
得られた管状酸化チタン粒子粒子は純水にて充分洗浄した。このときのK2O残存量は0.9重量%であった。純水で洗浄した後、管状酸化チタン粒子の水分散液(TiO2としての濃度5重量%)とし、これに管状酸化チタン粒子と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを添加し、60℃で24時間処理してアルカリの除去等高純度化を行い、ついで乾燥して管状酸化チタン粒子(PT-1)を調製した。管状酸化チタン粒子(PT-1)の各性状は表1に示す。
【0081】
ついで、濃度10重量%の管状酸化チタン粒子(PT-1)の分散液を調製し、分散液1000gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液1000gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を調製した。
【0082】
[リチウム電池(E)の作製]
実施例1において、負極の作成に管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(E)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0083】
【実施例6】
還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子 (F) の調製
実施例5と同様にして管状酸化チタン粒子(PT-1)を調製し、これを、400℃に調節した電気炉に窒素で希釈したアンモニアガス(NH3:10容積%)を2時間供給して還元型管状酸化チタン粒子(PT-2)を調製した。
【0084】
ついで、濃度10重量%の還元型管状酸化チタン粒子(PT-2)の分散液を調製し、分散液1000gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液1000gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(F)を調製した。
【0085】
[リチウム電池(F)の作製]
実施例1において、負極の作成に還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(F)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(F)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0086】
【実施例7】
還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子 (G) の調製
実施例5と同様にして管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を調製した。これを、400℃に調節した電気炉に窒素で希釈したアンモニアガス(NH3:10容積%)を2時間供給して還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(G)を調製した。
【0087】
[リチウム電池(G)の作製]
実施例1において、負極の作成に還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(G)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(G)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0088】
【比較例1】
[リチウム電池(H)の作製]
負極の作成
実施例1において、酸化チタンコア・シェル粒子(A)の代わりに酸化チタン粒子(A)(すなわち、シェルを形成していないもの)を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0089】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(H)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0090】
【比較例2】
[リチウム電池(I)の作製]
負極の作成
実施例5において、管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)の代わりに管状酸化チタン粒子(PT-1)を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0091】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(I)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0092】
【比較例3】
[リチウム電池(J)の作製]
負極の作成
実施例1において、酸化チタンコア・シェル粒子(A)の代わりに人造黒鉛を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0093】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(J)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るリチウムイオン電池の一実施例の概略断面図を示す。
【発明の技術分野】
本発明は、負極活物質として、チタン系コア・シェル粒子を用いたリチウム電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
リチウム電池は、他の電池に比べて大きなエネルギー密度を持ち、軽い、あるいは長時間使用できるという特徴を生かして携帯電話、PHS、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として開発が進められている。このようなリチウム電池は、一般に、リチウム含有遷移金属酸化物などを正極活物質とする正極と、炭素質負極材料(負極活物質)を主要構成成分とする負極と、非水電解液とから構成される。正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極材料としては炭素質材料が、非水電解液としてはリチウム塩が非水溶媒に溶解されたものが広く知られている。
【0003】
リチウム電池の作動原理は、充電時には、外部から電流を強制的に流すことによって正極の結晶の中にあったリチウム原子をリチウムイオンとして電解液中に放出させ、同時に電解液中のリチウムイオンを負極の結晶の中に挿入し、放電時にはこの逆反応で、負極中のリチウム原子が正極中にもどり、負極で発生する電子が外部回路で仕事をして正極にもどることから成り立っている。
【0004】
このようなリチウム電池の電池性能をさらに向上させるために、前記した各構成要素に対する研究が活発に行われている。
たとえば、負極材料(負極活物質)として、従来は、炭素質材料が用いられていたが、過放電あるいは過充電した場合に放電特性あるいは充電特性にからなずしも満足するものではなく、このためグレーツェル等は負極活物質として酸化チタン微結晶、チタン化合物微結晶を用いることを提案している。(Electrochemical and Solid-State Letters, 5 (2)A39-A42(2002))しかしながら、負極活物質として酸化チタン等の微結晶を用いると充電あるいは放電の可逆性は向上するものの、充電容量あるいは放電容量が小さく、かつ充電等に長時間を必要とする問題があった。
【0005】
本発明者等は、このような負極活物質として酸化チタン等を用いる場合の問題点を解消すべく鋭意検討した結果、酸化チタン微結晶をB、Al等の酸化物で被覆することによって充電容量、放電容量が向上するとともに充電時間が短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、暗電流を抑制でき、このため充電・放電効率に優れ、かつ充放電時間を短縮することが可能なリチウム電池を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るリチウム電池は、
電解質層と、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池であって、
前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であることを特徴としている。
【0008】
前記コア粒子が球状または柱状であって、平均短径(D)が2〜40nmの範囲にあり、平均長さ(L)が5〜1000nmの範囲にあり、該粒子のアスペクト比(L)/(D)が1〜200の範囲にあるか、あるいは、前記コア粒子が管状酸化チタンであって、外径が5〜40nmの範囲にあり、内径が4〜20nmの範囲にあり、管の厚みが0.5〜10nmの範囲にあり、長さが20〜1000nmの範囲にあり、管の長さ(LP)と管の外径(DP)とのアスペクト比(LP/DP)が10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0009】
【発明の具体的な説明】
以下、本発明に係るリチウム電池について具体的に説明する。
[リチウム電池]
本発明に係るリチウム電池は、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極がそれぞれ、集電体を対向するように配置してなり、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とを有する。
【0010】
前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であることを特徴とするものである。このようなリチウム電池(リチウムイオン電池ともいう)は、充放電可能な二次電池であっても、一次電池であってもよい。
電池の形状としては、円筒状、角状、平板状、コイン状、ボタン状など公知の形状が挙げられる。
【0011】
このようなリチウム電池としては、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明に係るリチウム電池の一実施例を示す概略図であり、電解質層と、電解質層中の積層する正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質(酸化チタン(コア・シェル)からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池である。
【0012】
すなわち、負極集電体に負極活物質層を有する負極と、正極集電体に正極活物質を有する正極とを、セパレータを介して巻回し、得られた巻回体の上下に絶縁板(インシュレーター)を載置した状態で電池缶に収納してなるものである。前記電池缶には、蓋がガスケットを介してかしめることにより取り付けられている。また必要に応じて図1に示すような安全弁・ポリスイッチが設けられることもある。それぞれ負極リードおよび正極リードを介して負極あるいは正極と電気的に接続され、電池の負極あるいは正極として機能するように構成されている。
【0013】
電解質、液体またはゲル状の場合は電池缶内に充満され、前記した正極・負極が電解液(ゲル状電解質)に浸積されるように構成される。また固体電解質の場合、セパレートとともにあるいはセパレータの代わりに正極との負極間に載置され、ともに巻回して巻回体として、電池缶に収容される。
[電解質層]
本発明のリチウム電池に用いる電解質層には、液状の電解液として非水電解液あるいは固体電解質が好適に用いられる。
【0014】
非水電解液としては、リチウム塩が非水溶媒に含有された非水電解液であって、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。
具体的に、非水溶媒としては、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとビニレンカーボネートとの混合溶媒を使用することが好ましい。
【0015】
このような構成の非水電解液をリチウム電池の非水電解液とすれば、電池性能(サイクル特性、レート特性および初期特性)に優れたリチウム電池を得ることができる。なお、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートは、誘電率が高いことから、イオン伝導を確実に起こすことができ、さらに、非水溶媒にビニレンカーボネートを含有させることにより、充電時において、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートの分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を負極上に形成できるので、充電を十分に行うことができる。
【0016】
エチレンカーボネートの量は、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。エチレンカーボネートの量が上記範囲にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を調製することができる。また、このようなエチレンカーボネートの含有量の範囲にあれば、電解液の粘度が高くなりすぎることもなく、取り扱い性にも優れている。
【0017】
γ−ブチロラクトンの量は、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。γ−ブチロラクトンの量が前記範囲にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を得ることができる。また、γ−ブチロラクトンは、凝固点が低く、このため、低温(たとえば氷点下)においても、非水電解液の粘度上昇が起こりにくいという優れて特性を有している。また、このような範囲にあれば、充電時に負極上でγ−ブチロラクトンが分解するのを確実に抑制できるので、特に、充電を十分に行うことができる。
【0018】
プロピレンカーボネートは、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して10重量%〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることが望ましい。プロピレンカーボネートの量が前記範囲内にあれば、イオン伝導性に優れた電解液を得ることができる。プロピレンカーボネートは、凝固点が約−49℃であることから、その量が10重量%以上であることによって、低温(氷点下)においても、非水電解液の粘度上昇が起こりにくく、イオン伝導を確実にすることができる。一方、50重量%以下であることによって、充電時に負極上でプロピレンカーボネートが分解するのを確実に抑制できるので、特に、充電を十分に行うことができる。
【0019】
ビニレンカーボネートは、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートの全重量に対して1重量%〜10重量%、好ましくは2〜8重量%であることが望ましい。ビニレンカーボネートの量が前記範囲内にあれば、充電時において、非水溶媒の分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を、負極上に形成できるので、充電を十分に行うことができ、特にリチウム電池の初期特性を向上できる。なお、ビニレンカーボネート自身が重合しやすいため前記上限を越えると重合してしまうことがある。
【0020】
非水溶媒として上記の混合溶媒を含有する非水電解液は、上記溶媒がいずれも高沸点溶媒であるので、高温下に晒されても非水電解液の揮発を抑制できる。
なお、本発明では、これら混合溶媒とともに、必要に応じて、低粘度溶媒等の他の有機溶媒が添加されてもよい。このような他の有機溶媒としては、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル;γ−バレロラクトン等の環状エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル;テトラヒドロフランまたはその誘導体、1,3-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。これらの必要に応じて添加可能な他の有機溶媒は、非水溶媒の全重量に対して0.1重量%〜30.0重量%であることが好ましい。
【0021】
リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等が挙げられ、これらのリチウム塩を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0022】
特に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)は、前記例示した他のフッ素系リチウム塩と比較して電解液中に存在する水分との反応性が低いので、安全性に優れ、特に、電池性能(サイクル特性、レート特性(高率放電特性)および初期特性)に優れたリチウム電池が得ることが可能となる。
非水電解液におけるリチウム塩の濃度としては、0.1〜3.0モル/l、好ましくは0.2〜2モル/lが望ましく、特に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を使用する場合、その濃度は、1.5〜2.4モル/lの範囲にあることが望ましい。このような濃度範囲にあれば、イオン伝導性が高く、また、リチウム塩が電解液中で析出することもない、高い電池性能を有するリチウム電池を得ることができる。とくに、このような濃度範囲にある電解液を使用すると、特にレート特性に優れたリチウム電池とすることができる。
【0023】
固体電解質としては、例えばリチウムイオンを含む酸化物系急冷ガラス、硫化物ベースのオキシスルフィド系超イオン伝導ガラスなどのガラス系固体電解質、ポリエーテルなどの高分子に、Li塩が溶解・分散した高分子固体電解質などが挙げられる。
ポリエーテルとしては、例えば以下に示すものが知られている。
【0024】
【化1】
【0025】
また高分子固体電解質は、溶媒成分を含むゲル状であってもよい。
[正極]
本発明に用いる正極は、正極集電体(1)上に正極活物質層が形成されている。
正極集電体(1)としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に制限はなく従来公知の正極集電体を用いることができる。例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。また、これら以外に、ニッケル酸リチウム、クロム酸リチウム、パラジン酸リチウム、マンガン酸リチウム等、導電性高分子としてポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ-p-フェニレン等、さらに単体硫黄、チオール化合物等の硫黄化合物、およびこれらの混合物からなる集電体を使用することも可能である。
【0026】
正極集電体(1)の形状については、使用される電池の形状等よって適宜選択され、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔を使用することが好ましい。さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極活物質と正極集電体(1)との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0027】
[正極活物質]
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属硫化物等が用いられ、このようなリチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、一般式LixMA2、LixM1-yNyA2(M、NはIからVIII族の金属、Aは酸素、硫黄などのカルコゲン化合物を示し、0.1≦x≦1、0≦y<1である)等で表される、例えばリチウム−コバルト系複合酸化物やリチウム−マンガン系複合酸化物等の金属化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、前記リチウム含有遷移金属酸化物に加えて他の正極活物質を含有してもよく、他の正極活物質としては、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩、CuO、Cu2O、Ag2O、CuS、CuSO4等のI族金属化合物、TiS2、SiO2、SnO等のIV族金属化合物、VOx(V2O5、V6O12、VO、V2O3、VO2等の酸化バナジウムあるいはそれらの混合物)、Nb2O5、Bi2O3、Sb2O3等のV族金属化合物、CrO3、Cr2O3、MoO3、MoS2、WO3、SeO2等のVI族金属化合物、MnO2、Mn2O3等のVII族金属化合物、Fe2O3、FeO、Fe3O4、Ni2O3、NiO、Co2O3、CoO等のVIII族金属化合物、さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
正極活物質は通常、粉体であり、その平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、リチウム電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0030】
正極活物質とともに、導電剤、結着剤およびフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、導電剤としては、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極の総重量に対して1重量%〜50重量%が好ましく、特に2重量%〜30重量%が好ましい。
【0031】
結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。結着剤の添加量は、正極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0032】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極活物質重量に対して30重量%以下が好ましい。
これらの混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に制限されるものではなく、具体的には、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいはアトライター、ビーズミル、ミキサーなどの湿式混合機を採用することが可能である。
【0033】
正極は、前記正極活物質、導電剤および結着剤を、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶剤に混合させた後、得られた混合液を集電体上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコーダー等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
[負極]
本発明に用いる負極は、負極集電体(2)上に負極活物質層が形成されている。
[負極集電体(2)]
負極集電体(2)としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば特に制限はなく従来公知の負極集電体を用いることができる。例えば、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0035】
負極集電体(2)の形状についても正極集電体(1)と同様にフォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みについては特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、負極としては、負極の還元雰囲気下で安定であり、かつ電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、およびそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。また、前期同様、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより負極材料と負極集電体(2)との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
【0036】
本発明では負極活物質として、酸化チタンからなるコア粒子とこれを被覆するIIIa、IIIb族から選ばれる元素の1種または2種以上からなる酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子が使用される。
酸化チタンからなるコア粒子は、電気的には半導体的性質を有し、結晶構造の面からは構造中にLi化合物等を取り込むことができ(インターカレーションということがある:電池としては充電機能)、特に低電圧でインターカレーションを起こすことができるので、負極として好適である。
【0037】
このようなコアとして用いられる酸化チタン粒子としては結晶性の酸化チタン、例えばアナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタンは好適に用いることができ、特にアナタース型酸化チタンは好適に用いることができる。
上記コア粒子は、IIIa、IIIb族から選ばれる元素の1種または2種以上からなる酸化物からなるシェルで被覆されている。
【0038】
具体的には、B、Al、Ga、In、Sc、Y、ランタニド元素およびアクチニド元素の酸化物、複合酸化物、酸化物の混合物等で被覆されている。なかでもB、Al、Yの酸化物、複合酸化物、酸化物の混合物は充電および放電の可逆性の向上、充電容量、放電容量の向上、紫外線遮蔽効果による耐久性に優れている。
このようなコア・シェル粒子を含んでいると、充放電の可逆性が高く、たとえ過充電されても、高い可逆性を有しており、充放電損失が少ないという優れた特性を有している。
【0039】
このようなコア・シェル粒子における被覆量は粒子全体の酸化物換算で0.01〜10重量%、さらには0.1〜5重量%の範囲にあることが好ましい。
コア・シェル粒子における被覆量が酸化物換算で0.01重量%未満の場合は、被覆量が少ないために充電および放電の可逆性の向上、充電容量、放電容量の向上、紫外線遮蔽効果による耐久性向上効果等が充分得られないことがある。
【0040】
コア・シェル粒子における被覆量が酸化物換算で10重量%を越えると、被覆物質が絶縁性を有しているため、全体として導電性が低下し、このため充電電圧を高くする必要が生じることがある。
本発明ではコア粒子として、球状または柱状であって、平均短径(D)が2〜40nm、さらには5〜30nmの範囲にあり、平均長さ(L)が5〜1000nm、さらには10〜500nmの範囲にあり、該粒子のアスペクト比(L)/(D)が1〜200、さらには2〜100の範囲にあることが好ましい。
【0041】
なお短径、外径、長さ等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について各値を測定し、この平均値として算出する。
平均短径(D)が2nm未満の場合は、結晶構造の歪みが大きくなり放電・充電特性の不可逆性度合いが高くなり、充放電におけるロスが大きくなることがある。
【0042】
平均短径(D)が40nmを越えると、Liイオンの迅速な取り込みが困難であり、充電に長時間を要するようになる。
平均長さ(L)が5nm未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0043】
平均長さ(L)が1000nmを越えると、得られる負極活物質層の細孔構造あるいは強度の再現性が低下し、基材との密着性が低下し、リチウム電池の充電・放電性能が変動する傾向がある。
コア粒子のアスペクト比(L)/(D)が200を越えると、負極集電体(2)との密着性が低下する。
【0044】
コア粒子の形状に、最終的に得られるシェル部を形成したコア-シェル粒子の形状は左右され、コア粒子が球状だと、得られるコア-シェル粒子の形状も球状となり、コア粒子が柱状だとコア-シェル粒子の形状も柱状になる。
このようなコア・シェル粒子は、コア粒子に前記酸化物を被覆することによって得られる。
【0045】
コア粒子そのものは従来公知の製造方法によって得られ、例えば、ゾル・ゲル法等で得られた含水チタン酸ゲルまたはゾルに、必要に応じて酸またはアルカリを添加した後、加熱・熟成することによって得ることができる。なお、コア粒子の酸化チタンは完全に酸化物なっているものであっても、一部が還元状態にある低次酸化物であってもよい。酸化チタンコアの還元は予めしておいてもよく、またシェル層形成してから還元してもよい。還元は還元ガスを使用して行う。また還元ガスはシェル層を通過できるので、シェル層を形成してからコア粒子を還元することも可能である。
【0046】
ついで、酸化チタンコア粒子にシェルを形成する。例えば、酸化チタン粒子を前記元素の化合物の溶液に分散させ、酸化チタン粒子に前記化合物を吸収させるか、必要に応じて加水分解して酸化チタン粒子表面に析出させた後、必要に応じてオートクレーブにて水熱処理し、ついで乾燥し、焼成することによって形成することができる。あるいは前記元素の塩化物、炭酸塩、アルコキシドなどを用い、CVD法によって形成することもできる。
【0047】
また、本発明では、コア-シェル粒子として、コア粒子が、管状酸化チタンであり、かかる管状酸化チタン粒子の表面にをシェル部で被覆したものを使用することもできる。
コア粒子として使用される管状酸化チタンは、外径が5〜40nmの範囲にあり、内径が4〜20nmの範囲にあり、管の厚みが0.5〜10nmの範囲にあり、長さが20〜1000nmの範囲にあり、管の長さ(LP)と管の外径(DP)とのアスペクト比(LP/DP)が10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0048】
ここで、外径、内径、長さ等は透過型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について各値を測定し、この平均値としてもとめる。また、内径は、外径を求める線の内側に認められるコントラストの境をなす線より求めることができる。
管状酸化チタンの外径が5nm未満の場合は、管状酸化チタンの内径も小さく、管状酸化チタン内部の電解質の拡散が不充分となり、管状酸化チタンを用いる効果が充分得られない。
【0049】
管状酸化チタンの外径が40nmを越えると、管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の比表面積が低下するとともに、負極活物質層中の管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の含有量が低下し、充電・放電速度および充電・放電容量が低下する傾向にあり、コア粒子に管状酸化チタンを用いる効果が得られない。
【0050】
管状酸化チタンの内径が4nm未満の場合は、前記したように管状酸化チタン内部の電解質の拡散が不充分となり、管状酸化チタンを用いる効果が充分得られない。
管状酸化チタンの内径が20nmを越えると、やはり前記したように管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の比表面積が低下するとともに、負極活物質層中の管状酸化チタンからなるコア・シェル粒子の含有量が低下し、充電・放電速度および充電・放電容量が低下する傾向にあり、コア粒子に管状酸化チタンを用いる効果が得られない。
【0051】
管状酸化チタンの管の厚みが0.5nm未満の場合は、充電・放電容量が低下する。
管状酸化チタンの管の厚みが10nmを越えると、Liイオンのインターカレーション速度が低下、即ち充電速度が低下する傾向にある。
管状酸化チタンの長さ(LP)が20nm未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0052】
管状酸化チタンの長さ(LP)が1000nmを越えると、得られる負極活物質層の細孔構造あるいは強度の再現性が低下し、基材との密着性が低下し、リチウム電池の充電・放電性能が変動する傾向がある。
管の長さ(LP)と管の外径(DP)との比(LP/DP)が10未満の場合は、得られる負極活物質層が緻密になり、電解質の拡散が遅くなるとともに充電・放電特性の可逆性が得られないことがある。
【0053】
管の長さ(LP)と管の外径(DP)との比(LP/DP)が200を越えると、負極集電体(2)との密着性が低下することがある。
コア粒子が管状酸化チタンであるコア・シェル粒子の製造方法は、コア粒子に前記したように前記酸化物を被覆することによって得られる。
先ず、コア粒子としての管状酸化チタンは従来公知の製造方法によって得られ、前記サイズを有する管状酸化チタンを用いる。例えば、特開平10−152323号公報に開示されたナノチューブ状結晶性チタニアは好適に用いることができる。なお、管状酸化チタンは還元されて低次酸化物となっていてもよい。
【0054】
ついで、管状酸化チタンコア粒子にシェルを形成する方法は、前記と同様にして、管状酸化チタン粒子を前記元素の化合物の溶液に分散させ、酸化チタン粒子に前記化合物を吸収させるか、必要に応じて加水分解して管状酸化チタン粒子表面に析出させた後、必要に応じてオートクレーブにて水熱処理し、ついで乾燥し、焼成することによって形成することができる。あるいは前記元素の塩化物、炭酸塩、アルコキシドなどを用い、CVD法によって形成することもできる。
【0055】
このようなシェル部を構成すると、そのままの形状(すなわち管状粒子)が得られるが、シェル層の厚さを厚くすると、内管が閉塞され円柱状粒子となることもあるが、本発明で、いずれも使用することが可能である。
本発明のように、コア粒子として、管状酸化チタンを使用することによって、従来の球状あるいは柱状のコア粒子を使用する場合にくらべて、比表面積は、容量が増加し、かつ内部の空洞(ポアー)を速やかに電解質が拡散できるので、充電・放電速度を高めることができる。
【0056】
本発明では、負極活物質とともに、前記したような導電剤、結着剤およびフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。これらの添加量も前記と同様である。このような負極は、前記負極活物質、導電剤および結着剤を、N−メチルピロリドン、トルエン等の有機溶剤に混合させた後、得られた混合液を集電体上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。
【0057】
[セパレータ]
リチウム電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。
本発明で使用されるセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0058】
このようなリチウム電池用セパレータの空孔率は、強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
[リチウム電池の作成]
本発明に係るリチウム電池は、非水電解液をリチウム電池用セパレータを介して前記正極と前記負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。
【0059】
また、前記正極と前記負極とがリチウム電池用セパレータを介して積層された後に巻回されてなるリチウム電池においては、非水電解液は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましく、例えば、円筒型電池、角型電池、偏平型電池などとされる。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
【0060】
また電解質がゲル状の固体電解質の場合も非水電解液と同様に注液することも可能である。また、固体電解質(ゲル状を含め)の場合、予めシート状の成形体を作成したり、ゲル状の場合はセパレータまたは集電体の表面に塗工し、セパレータとともにあるいはセパレータの代わりに巻回して、電池内に載置してもよい。液状の電解液にゲル化剤を添加し、封入後、加熱等してゲル化させて形成してもよい。
【0061】
外装材としては、例えば、ニッケルメッキした鉄、ステンレススチール、アルミニウム、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合フィルム等が挙げられ、リチウム電池の軽量化の観点から、金属樹脂複合フィルムが特に好ましい。金属箔の具体例としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼、チタン、金、銀等、ピンホールのない箔であれば限定されないが、好ましくは軽量かつ安価なアルミニウム箔が好ましい。また、電池外部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム等の突き刺し強度に優れた樹脂フィルムを、電池内部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム,ナイロンフィルム等の、熱融着可能であり、かつ耐溶剤性を有するフィルムが好ましい。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、負極集電体上に、特定のコア・シェル粒子からなる負極活物質層が形成されているので、充電・放電容量が大きく、かつ充電・放電速度が速く、充電・放電の可逆性、特に過充電、過放電(一定レベルより放電しすぎると可逆性がなくなり充電容量等が低下する)があった場合でも安定した可逆性に優れたリチウム電池を提供することができる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに実施例により限定されるものではない。
【0064】
【実施例1】
酸化チタンコア・シェル粒子 (A) の調製
50gの水素化チタンを10Lの純水に懸濁し、濃度5%過酸化水素液4000gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液に濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行い、酸化物としての濃度が10重量%の酸化チタン粒子(A)の分散液を調製した。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。平均短径、平均長さは表1に示す。
【0065】
別途、t-ブトキシアルミニウム5gをt-ブチルアルコール50ccに溶解してシェル形成用化合物の溶液を調製した。
ついで、上記酸化チタン粒子(A)の分散液をロータリーエバポレーターに採り、これにt-ブチルアルコール2Lを添加し、共沸させて水を除いた後、温度60℃でシェル形成用化合物の溶液を添加し、3時間加熱処理した。ついで、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(A)を調製した。
[リチウム電池(A)の作製]
正極の作成
LiCoO2(正極活物質)90重量%,アセチレンブラック(導電剤)5重量%およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5重量%の混合物と、有機溶剤であるN−メチルピロリドンとを混練することによって得たペーストを、正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ15μm)上に塗布した後、乾燥することによって、厚さが80μmの正極を作製した。
【0066】
負極の作成
上記で得た酸化チタンコア・シェル粒子(A)(負極材料)を95重量%およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5重量%の混合物と、有機溶剤であるN−メチルピロリドンとを混練することによって得たペーストを、負極集電体である銅箔(厚さ10μm)上に塗布した後、乾燥することによって、厚さが70μmの負極を作製した。
【0067】
非水電解液の調製
エチレンカーボネート50重量%と1,2-ジメトキシエチレン50重量%とを混合して非水溶媒を調製した。これにLi(CF3SO2)2を添加して濃度が1M/Lの非水電解液を調製した。
リチウム電池 (A) の作成
ポリプロピレン不織布(リチウム電池用セパレータ)を介して正極と負極とを積層させたものに対して上記で得た非水電解液を充分含浸させた後、ステンレス製の外装材で封止することによって、コイン型リチウム電池(A)(直径20mm,厚さ3.2mm)を作製した。
【0068】
[電池特性の測定]
室温(25℃)において、上記で得たリチウム電池(A)に対して、4.1V、5時間率(0.2It)、7時間の定電流定電圧充電を行った後、5時間率(0.2It)、1時間率(1.0It)、0.5時間率(2.0It)および0.33時間率(3.0It)の各電流密度で、終止電圧2.7Vまで放電した(各電流密度における放電容量を、C0.2,C1.0,C2.0,C3.0とする)。5時間率(0.2It)の電流密度で放電した場合の放電容量に対する、各電流密度(1.0It、2.0Itおよび3.0It)で放電した場合の放電容量の割合を算出することにより、リチウム電池のレート特性(高率放電特性)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0069】
また、リチウム電池(A)に対して、4.1V,2時間率(0.5It),3時間の定電流定電圧充電を行い、引き続き、2時間率(0.5It)の電流密度で、終止電圧2.7Vまで放電するサイクルを30サイクル行った後に、リチウム電池の内部抵抗(1kHz)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0070】
比較例1を基準として、
内部抵抗が比較例1の50%未満 :3
内部抵抗が比較例1の50〜75% :2
内部抵抗が比較例1の±25% :1
内部抵抗が比較例1の125%以上 :0
【0071】
【実施例2】
酸化チタンコア・シェル粒子 (B) の調製
実施例1と同様にして得た濃度10重量%の酸化チタン粒子(A)の分散液100gにシェル形成用化合物としてAl2O3としての濃度が1重量%の硝酸アルミニウム水溶液11gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを8.5に調整して硝酸アルミニウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(B)を調製した。
【0072】
[リチウム電池(B)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(B)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(B)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0073】
【実施例3】
酸化チタンコア・シェル粒子 (C) の調製
実施例1と同様にして得た濃度10重量%のチタニアコロイド粒子(A)の分散液100gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液20gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(C)を調製した。
【0074】
[リチウム電池(C)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(C)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(C)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0075】
【実施例4】
酸化チタンコア・シェル粒子 (D) の調製
183gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の90%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行って酸化物としての濃度が10重量%の酸化チタン粒子(D)の分散液を調製した。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。平均短径、平均長さは表1に示す。
【0076】
次に、上記で得られた酸化チタン粒子(D)の分散液に、シェル形成用化合物としてAl2O3としての濃度が1重量%の硝酸アルミニウム水溶液550gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを8.5に調整して硝酸アルミニウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して酸化チタンコア・シェル粒子(D)を調製した。
【0077】
[リチウム電池(D)の作製]
実施例1において、負極の作成に酸化チタンコア・シェル粒子(D)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(D)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0078】
【実施例5】
管状酸化チタンコア・シェル粒子 (E) の調製
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0079】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5重量%であった。
ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。ついで、230℃で5時間水熱処理して酸化チタン粒子(T-1)分散液を調製した。
【0080】
ついで、酸化チタン粒子(T-1)分散液に、濃度40重量%のKOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が10となるように添加し、150℃で2時間水熱処理した。
得られた管状酸化チタン粒子粒子は純水にて充分洗浄した。このときのK2O残存量は0.9重量%であった。純水で洗浄した後、管状酸化チタン粒子の水分散液(TiO2としての濃度5重量%)とし、これに管状酸化チタン粒子と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを添加し、60℃で24時間処理してアルカリの除去等高純度化を行い、ついで乾燥して管状酸化チタン粒子(PT-1)を調製した。管状酸化チタン粒子(PT-1)の各性状は表1に示す。
【0081】
ついで、濃度10重量%の管状酸化チタン粒子(PT-1)の分散液を調製し、分散液1000gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液1000gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を調製した。
【0082】
[リチウム電池(E)の作製]
実施例1において、負極の作成に管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(E)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0083】
【実施例6】
還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子 (F) の調製
実施例5と同様にして管状酸化チタン粒子(PT-1)を調製し、これを、400℃に調節した電気炉に窒素で希釈したアンモニアガス(NH3:10容積%)を2時間供給して還元型管状酸化チタン粒子(PT-2)を調製した。
【0084】
ついで、濃度10重量%の還元型管状酸化チタン粒子(PT-2)の分散液を調製し、分散液1000gにシェル形成用化合物としてY2O3としての濃度が1重量%の硝酸イットリウム水溶液1000gを加え、ついで濃度15重量%のアンモニア水を加えてpHを7.0に調整して硝酸イットリウムの加水分解を行った。ついで、80℃で20分間加熱熟成し、両イオン交換樹脂にてアンモニウムイオンや硝酸イオン等を除去し、洗浄、乾燥して還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(F)を調製した。
【0085】
[リチウム電池(F)の作製]
実施例1において、負極の作成に還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(F)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(F)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0086】
【実施例7】
還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子 (G) の調製
実施例5と同様にして管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)を調製した。これを、400℃に調節した電気炉に窒素で希釈したアンモニアガス(NH3:10容積%)を2時間供給して還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(G)を調製した。
【0087】
[リチウム電池(G)の作製]
実施例1において、負極の作成に還元型管状酸化チタンコア・シェル粒子(G)を用いた以外は同様にしてリチウム電池(G)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0088】
【比較例1】
[リチウム電池(H)の作製]
負極の作成
実施例1において、酸化チタンコア・シェル粒子(A)の代わりに酸化チタン粒子(A)(すなわち、シェルを形成していないもの)を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0089】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(H)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0090】
【比較例2】
[リチウム電池(I)の作製]
負極の作成
実施例5において、管状酸化チタンコア・シェル粒子(E)の代わりに管状酸化チタン粒子(PT-1)を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0091】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(I)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0092】
【比較例3】
[リチウム電池(J)の作製]
負極の作成
実施例1において、酸化チタンコア・シェル粒子(A)の代わりに人造黒鉛を用いた以外は同様にして、厚さが70μmの負極を作製した。
【0093】
ついで、この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウム電池(J)を作成し、電池特性を測定し、結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るリチウムイオン電池の一実施例の概略断面図を示す。
Claims (3)
- 電解質層と、正極集電体(1)上に形成された正極活物質層からなる正極と、電解質層中の積層する負極集電体(2)上に形成された負極活物質層からなる負極と、該正極と該負極とを隔絶するセパレータ(多孔質膜)とからなるリチウム電池であって、
前記負極活物質が、酸化チタンからなるコア粒子と、IIIa、IIIb族から選ばれる1種以上から元素の酸化物のシェルからなるコア・シェル粒子であることを特徴とするリチウム電池。 - 前記コア粒子が球状または柱状であって、平均短径(D)が2〜40nmの範囲にあり、平均長さ(L)が5〜1000nmの範囲にあり、該粒子のアスペクト比(L)/(D)が1〜200の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池。
- 前記コア粒子が管状酸化チタンであって、外径が5〜40nmの範囲にあり、内径が4〜20nmの範囲にあり、管の厚みが0.5〜10nmの範囲にあり、長さが20〜1000nmの範囲にあり、管の長さ(LP)と管の外径(DP)とのアスペクト比(LP/DP)が10〜200の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池。
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