JP2004206889A - 難燃性ケーブル - Google Patents

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Hitoshi Yamada
仁 山田
Masami Nishiguchi
雅己 西口
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Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

【課題】難燃性、耐熱性、機械特性に優れ、かつ埋立、燃焼などの廃棄時においては、重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害性ガスの発生がなく、環境問題に対応した難燃性ケーブルを提供する。
【解決手段】絶縁導体を複数本撚り合わせた多芯撚線の外側に被覆層を設けたケーブルであって、少なくとも前記被覆層の最外層が、熱可塑性エステル系エラストマーを含有してなるベース樹脂(A)100質量部に対し、少なくともその25質量%が反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物(B)50〜200質量部及び多官能モノマー(C)0〜20質量部を含有した樹脂組成物を押出成形し、架橋処理した架橋体で構成されている難燃性ケーブル。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブルに関し、さらに詳しくは、ケーブルの端末部分と各種センサーや電極端子等との接続部を気密もしくは水密に保持するためにモールド被覆する樹脂成形体との接着性に優れるばかりでなく、埋立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害ガスの発生がなく、環境問題に対応した難燃性ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタン(以下TPU)、熱可塑性エステル系エラストマー(以下TPEE)等の熱可塑性エラストマーは、優れた機械特性、低温での柔軟性を有することから、その樹脂組成物は自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブル(電線)の絶縁被覆材料として広く用いられている。
自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブルには難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求されている。
このため、これらのケーブルシースに使用される材料としては、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を配合した熱可塑性エラストマー組成物が主として使用されていた。
しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄した場合、埋立てた場合には、材料に配合されている重金属が溶出したり、また燃焼した場合には、難燃剤に含まれるハロゲン化合物から有害ガスが発生することがあり、近年、この問題が議論されている。
このため、環境に影響をおよぼすことが懸念されている有害な重金属の溶出や、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料を用いたシース材料の検討がおこなわれている。
これまで、ノンハロゲン難燃材料に、高度の難燃性を付与する場合、分子中にハロゲン元素を含まない熱可塑性エラストマーなどの樹脂成分100質量部に対して、難燃剤である金属水和物を100質量部以上配合する必要があり、この結果として、傷つきにくさやその他の機械的特性が著しく低下するという問題があった。
また、このようなケーブルにセンサーなどの機器部品や電極端子を接続する場合には、その接続部およびその近傍の周囲を樹脂成形体で気密もしくは水密に被覆して保護する。この樹脂成形体は、例えば射出成形により成形される。
このような樹脂成形体には、成形のしやすさや機械的強度に優れることから、ポリブチレンテレフタレート(以下PBT)樹脂、ポリアミド(以下PA)樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂(以下TPU)が成形体材料としてよく用いられている。さらに接続部樹脂成形体とケーブル(電線)の最外層との間に気密性もしくは水密性を確保するためには、樹脂成形体とケーブル(電線)の最外層が射出成形時の熱と圧力で融着(接着)することが極めて重要である。このため、ケーブル最外層には、それぞれの接続部成形樹脂と融着(接着)しやすいものを選択する方法がある。例えば、PBTに対しては、ハードセグメントにPBTをもつTPEEが挙げられる。これらのケーブル用被覆材料は、所望の特性を得るため種々の系や硬度の中から適宜選択することができるが、従来のケーブルは、接着性の面で十分満足しうるものではなかった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−45399号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、第1に、上記の問題点を解決し、難燃性、耐熱性、機械特性に優れ、かつ埋立、燃焼などの廃棄時においては、重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害性ガスの発生がなく、環境問題に対応した難燃性ケーブルを提供することを目的とする。
さらに本発明は、第2に、上記第1の目的を解決し、かつ、モールド樹脂成形体との接着性に優れるため接続部の水密、気密性が保たれる難燃性ケーブルを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ケーブルの被覆層に、熱可塑性エステル系エラストマーにシランカップリング剤で処理された金属水和物と多官能モノマーを含有した難燃性樹脂組成物を押出成形し、電子線照射せしめたケーブル、及びケーブルの被覆層の最外層には、接続部成形材料と接着力がある熱可塑性エステル系エラストマーに熱可塑性ポリウレタン樹脂をブレンドしたベース樹脂にシランカップリング剤で処理された金属水和物を含有した難燃性樹脂組成物を押出成形し、電子線照射せしめたケーブルが良好な性能を有することを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
(1)絶縁導体を複数本撚り合わせた多芯撚線の外側に被覆層を設けたケーブルであって、少なくとも前記被覆層の最外層が、熱可塑性エステル系エラストマーを含有してなるベース樹脂(A)100質量部に対し、少なくともその25質量%が反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物(B)50〜200質量部及び多官能モノマー(C)0〜20質量部を含有した樹脂組成物を押出成形し、架橋処理した架橋体で構成されていることを特徴とする難燃性ケーブル、
(2)前記ベース樹脂(A)が(a)ポリエステルをハードセグメントとするブロック共重合体及び(b)熱可塑性ポリウレタンを質量比(a):(b)=10:90〜90:10でブレンドしてなり、かつ、前記多官能モノマー(C)がベース樹脂(A)100質量部に対し1〜20質量部含有されていることを特徴とする(1)項記載の難燃性ケーブル、
(3)前記金属水和物(B)50〜200質量部のうち少なくとも25質量部が、前記反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物であることを特徴とする(1)又は(2)項記載の難燃性ケーブル、
(4)前記反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物が、ビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により処理されている水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする(1)、(2)又は(3)項記載の難燃性ケーブル、及び
(5)前記最外層のゲル分率が25〜50質量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載の難燃性ケーブル
を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。図中、1は多芯撚線で、該多芯撚線1は導体(例えば外径0.18mmφの錫メッキ軟銅線を20本撚り合わせて導体径1mmφに仕上げた撚線導体)1aの上に、ポリエチレン樹脂組成物からなる絶縁層1bを設けた絶縁導体を複数本(図1では2本)を撚り合わせた構成となっている。2は多芯撚線1を被覆した被覆層で、該被覆層2は複数層(図1では2a、2bの2層)からなり、内層2aは被覆層2中で最外層2bに接する層である。少なくとも最外層2bが前記樹脂組成物の架橋体で形成されている。3はこのような構造を有するケーブルである。
さらに本発明のケーブルにおいては、多芯撚線上に設けられる被覆層中の最外層に隣接する内層が特定の多官能モノマーを含有する樹脂組成物によって形成されている場合には、架橋度が高く、ケーブルの耐熱性が向上することが確認されている。
【0007】
本発明のケーブルにおいて、絶縁導体を撚り合わせた多芯撚線上に設ける被覆層は2層以上の複数層でもよい。複数層からなる被覆層を形成する場合には、同時押出被覆をすることもできるし、内層を被覆した後に次の外層を順次被覆しても良い。
その際少なくとも、被覆層の最外層は、前述の樹脂組成物で形成されなくてはならない。さらにモールド樹脂成形体との接着性を付与するためには、前記の熱可塑性ポリウレタンを含有する樹脂組成物で形成されることが好ましい。
【0008】
1.内層材料
最外層に接する内層材料については、ケーブルの柔軟性や機械的強度、または難燃性などの要求特性に応じてハロゲンを分子中に含まない種々の材料から適宜選択すれば良いが、内層材料の架橋度が低い場合にはケーブルの耐熱性が損なわれるおそれや、モールド時の高温高圧にケーブルが変形し、モールド樹脂成形体との間に隙間が生じ、接着部での水密、気密性が損なわれるおそれがあるので、内層材料についても十分な架橋度を有する樹脂であることが好ましい。架橋度を得る方法としては、内層材に電子線架橋可能な架橋効率の良い樹脂を用い最外層まで押出成型後、電子線照射により外層ごと架橋せしめても良いし、化学架橋等の処方を施した内層材料を用いて外層材料と同時押出または順次押出被覆を行ってもよい。
また外層材肉厚が薄い場合には燃焼時に内層材料に着火する場合があるため難燃性を付与するために内層材料に難燃剤を添加してもよいが、本発明の目的から、ハロゲン系難燃剤は用いてはならない。ケーブルの機械的強度を保持するためにも、最外層に用いるシランカップリング剤で処理された金属水和物を用いることが望ましい。
【0009】
本発明において被覆層中で最外層に接する内層に用いられる樹脂組成物のベース材料としては、柔軟性や機械的強度、低温柔軟性に優れている、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(以下EMA)、及びエチレン−アクリル酸共重合体(以下EAA)が例として挙げられる。ここでエチレンとプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのαオレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。これらの樹脂は単体で用いても、2種類以上ブレンドしても良い。
【0010】
またさらに、内層材料に多官能モノマーを樹脂100質量部に対し1〜10質量部添加することにより、内層材料の架橋度が上がり、耐熱性に優れたケーブルが得られる。
このような多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを架橋助剤として配合することができる。
【0011】
多官能モノマーの含有量としては、内層の樹脂組成物中、熱可塑性樹脂100質量部に対し好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは3〜10質量部である。多官能モノマーの含有量が1質量部より少ない場合には、内層材料の架橋反応が促進されずケーブルの耐熱性が向上しないおそれがある。一方、20質量部より多い場合には、架橋反応の促進効果にさらなる向上が認められないばかりか、ブリードアウトにより外層材に移行する可能性がある。またコスト的にも望ましくない。
さらに本発明のケーブルにおいては、多芯撚線上に設けられる被覆層中の最外層に隣接する内層が多官能モノマーを含有する樹脂組成物によって形成されている場合には、架橋度が高く、ケーブルの耐加熱変形性が向上しモールド時の高温高圧にもケーブルが変形せずモールド樹脂成形体との間に隙間が生じないために接着部の水密、気密性が向上する。
【0012】
2.外層材料
本発明において被覆層の最外層に用いられる樹脂組成物は、熱可塑性エステル系エラストマーを含有してなる、好ましくは熱可塑性エステル系エラストマーと熱可塑性ポリウレタン樹脂をブレンドして得られる、ベース樹脂(A)を含んでなるものである。
(a)熱可塑性エステル系エラストマー
本発明において被覆層の最外層に用いられる樹脂組成物のベース樹脂(A)に含有される熱可塑性エステル系エラストマー(TPEE)は低温での柔軟性、機械的強度、耐油耐薬品性に優れた樹脂である。
本発明において用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)としては、ポリエステルをハードセグメントとするブロック共重合体が好ましく、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンイソフタレート等の芳香族ポリエステルからなるハードセグメントと、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ポリエーテルからなるソフトセグメントとのブロック共重合体などが挙げられる。
このような熱可塑性エステル系エラストマーとしては、例えば、「ハイトレル」(商品名、東レデュポン社製)、「ペルプレン」(商品名、東洋紡績社製)などが市販されており、市販品の各社グレードから適宜選択して使用することができる。ケーブルの柔軟性やコネクターモールド時の熱と圧力で気密性を保持することを考慮すると、融点は好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃前後で、硬度(JIS K 6253、タイプAデュロメーター、1kgf(9.80665N))は好ましくは95以下、より好ましくは80〜95である。
【0013】
(b)熱可塑性ポリウレタン樹脂
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は低温での柔軟性、機械的強度、耐油耐薬品性に優れた樹脂である。TPUには、ポリエステル系ウレタン樹脂(アジペート系、カプロラクトン系、ポリカーボネイト系)、ポリエーテル系ウレタン樹脂が挙げられ、耐水性、耐カビ性などの点でポリエーテル系ウレタン樹脂が好ましい。また、熱可塑性ポリウレタンの硬さ(タイプAデュロメーター、1kgf(9.80665N))は98以下が好ましい。
本発明において、ケーブル最外層(接着層)は熱可塑性エステル系エラストマー単体よりも熱可塑性ウレタン樹脂をブレンドした場合の方が、モールド成形樹脂に対し接着性が向上するため好ましい。特にTPEEとTPUの質量比が10:90〜90:10の場合には、接着強度の向上が認められるため好ましい。
【0014】
(B)金属水和物
本発明においては、ケーブルに難燃性を付与することを目的として、前記ベース樹脂(A)に所定量の金属水和物(B)を配合する。
本発明において用いられる金属水和物としては、特に限定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの金属水和物においては、水酸化マグネシウムが好ましく、このようなものとしては、例えば、「キスマ5」(商品名、協和化学社製)などの市販品が好ましく、特に「キスマ5A」「キスマ5B」「キスマ5E」「キスマ5J」「キスマ5LH」などの表面処理を施したグレ−ドが好ましい。
金属水和物(B)の含有量は、ベース樹脂(A)100質量部に対して、50〜200質量部であり、好ましくは80〜150質量部である。この(B)の含有量が(A)100質量部に対して50質量部より少ないと、十分な難燃性を得ることができず、JISに規定される水平試験の合格も難しい。一方、この含有量が(A)100質量部に対して200質量部を越えると、引張強度、引張伸びなどの機械特性が著しく低下する。
【0015】
特に、本発明においては、用いる金属水和物の少なくとも25質量%が反応性のシランカップリング剤で表面処理された金属水和物を用いる。金属水和物の少なくとも25質量部が、反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物であることが好ましい。さらに好ましくは反応性のシランカップリング剤で表面処理なされた水酸化マグネシウムを用いた方が良い。それにより、得られるシース材料の引張強度を向上させることができるだけでなく、水酸化マグネシウムを大量に加えても力学的特性の低下しないシース材料を得ることができる。さらにケーブルに傷がつきにくい等の利点が生じる。
またこの反応性シランカップリング剤で表面処理を行った水酸化マグネシウムを用いることにより、ケーブルの低温性を大幅に向上させることが可能である。水酸化マグネシウムの処理に用いる好ましい反応性シランカップリング剤としては、ビニル基等の2重結合を末端に有するシランカップリング剤やアミノ基やエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤が良い。これらのシランカップリング剤とその他のシランカップリング剤を併用させても良いし、このビニル基、エポキシ基、アミノ基を末端に有するシランカップリング剤を併用しても良い。またこれらのシランカップリング剤とステアリン酸等の脂肪族の表面処理剤を併用しても良い。
【0016】
このビニル基、エポキシ基、アミノ基を末端に有するシランカップリング剤としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも力学的強度の面から末端にビニル基、エポキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されている水酸化マグネシウムを用いる方が良い。
【0017】
またこれらのシランカップリング剤で表面処理なされた水酸化マグネシウムは2種類以上混合して使用しても良いし、その他の水酸化マグネシウムと混合して使用しても良い。シランカップリング剤で表面処理なされた水酸化マグネシウムとその他の水酸化マグネシウムを併用する際には少なくとも水酸化マグネシウム中の50質量%をシランカップリング剤で表面処理なされた水酸化マグネシウムを用いた方が良い。
【0018】
反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物を用いることにより、電子線照射時に反応性のシランカップリング剤が反応し、熱可塑性エステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、多官能モノマーと架橋することで金属水和物と表面処理剤を通じて相互作用を有する組成物全体としては機械的強度に優れた架橋物となる。この相互作用により金属水和物を大量に加えた際にも樹脂組成物の高い力学的強度は保持され、さらに耐摩耗性に優れ、傷のつきにくい樹脂組成物が得られる
【0019】
(C)多官能モノマー
多官能モノマーを添加することで、ベース樹脂(A)とシラン処理された金属水和物との間により強固な相互作用を及ぼすことが出来る。ベース樹脂(A)がTPUを含有する場合は、ベース樹脂(A)とシラン処理された金属水和物(B)との間に強固な相互作用を及ぼしケーブルの耐熱性を向上させるために多官能モノマーを添加することが好ましい。
このような多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを架橋助剤として配合することができる。
多官能モノマーの含有量は、ベース樹脂(A)100質量部に対し0〜20質量部であるが、TPUを含有する場合には1〜20質量部が好ましい。本発明において、多官能モノマーの含有量はベース樹脂(A)100質量部に対し1〜10質量部がより好ましく、特に好ましくは3〜10質量部である。多官能モノマーの含有量が1質量部より少ない場合には、架橋反応が促進されずケーブルの耐熱性や機械的強度のさらなる向上が認められない場合がある。一方、20質量部より多い場合には、架橋反応の促進効果にさらなる向上が認められない上にコスト的にも望ましくない。
【0020】
本発明における最外被覆層のゲル分率は25〜50質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。最外被覆層のゲル分率がこの範囲内であると、引張り特性、耐加熱変形、耐熱性、耐摩耗性の面で好ましい。ゲル分率は、特に制限するものではないが、例えば架橋助剤量や照射線量などにより調整することができる。
【0021】
本発明のケーブルにおいて、多芯撚線を被覆後に被覆層を架橋させる方法としては、生産性の点から、従来公知の電子線等電離性放射線の照射による架橋方法が好ましい。電子線の照射量としては、5〜20Mradが適当である。
本発明において、被覆層最外層の肉厚は、十分な難燃性と機械的強度を得るため、また成形体とケーブル被覆材との接着性を十分に保つために0.2mm以上に設定するのが好ましい。また、耐加熱変形性を十分確保するために0.7mm以下の範囲に設定するのが好ましい。
本発明において、ケーブルの被覆層を3層以上の構造とすることもできるが、この場合、少なくとも被覆層の最外層が前記樹脂組成物でなくてはならない。前記内層よりもさらに内側(多芯撚線側)の各層は特に制限はないが、例えば前記内層と接着性のよい熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物で形成することができる。
【0022】
本発明におけるケーブルの被覆層(前記最外層とそれに接する内層)を構成する樹脂組成物には、絶縁電線やケーブルにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、非ハロゲン系難燃剤、分散剤、着色剤、充填剤、滑剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。特に自動車用途では難燃剤を添加することが好ましい。
【0023】
酸化防止剤としては、4, 4' −ジオクチル・ジフェニルアミン、N, N' −ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2, 2, 4−トリメチル−1, 2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1, 3, 5−トリメチル−2, 4, 6−トリス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0024】
金属不活性剤としては、N, N' −ビス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2, 2' −オキサミドビス−(エチル3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
【0025】
難燃剤としては、本発明の目的より非ハロゲン系のリン酸化合物、ポリリン酸酸化物、赤リン化合物などのリン系難燃剤などが挙げられる。このリン系化合物は、1質量部以上添加することで難燃性を著しく向上させ、金属水和物の添加量を低減することができるが、赤リンを使用した場合には、被覆層が赤色化し、自由な着色(特に淡色)が不可能となる。
さらに難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0026】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1〜18、比較例1〜13)
導体(導体径1mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成20本/0.18mmφ)の上に、低密度ポリエチレンを外径1.7mmとなるように押出被覆し、これに加速電圧500keV、照射量20Mradの電子線を照射して架橋ポリエチレン絶縁層を有する絶縁体を得、この絶縁導体を2本撚り合わせた多芯撚線を用意した。
次いで、
▲1▼実施例1〜8及び比較例1〜6については、上記多芯撚線上に、40mmφ押出機(L/D=25)を用い、表中に示す内層用の樹脂組成物を外径が4.2mmφとなるように押出被覆して内層被覆層を形成し、さらに、その上に表中に示した外層樹脂組成物を外径5.0mmφとなるようにダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=180℃、C2=160℃、C1=140℃で押出被覆した。
▲2▼実施例9〜18及び比較例7〜13については、上記多芯撚線上に、40mmφ押出機(L/D=25)を用い、ダイス温度180℃、以下フィーダー側へ、C3=170℃、C2=160℃、C1=140℃の条件により、表中に示す内層用の樹脂組成物を外径が4.2mmφとなるように押出被覆して内層被覆層を形成し、さらに、その上に表中に示した外層樹脂組成物を外径5.0mmφとなるように内層と同条件で押出被覆した。
次いで、押出被覆後さらに加速電圧750keV、表中の照射量の電子線照射を行い被覆層を架橋させて、図1に示すような被覆層が2層からなるケーブルを得た。なお表中、内層及び外層用樹脂組成物の各成分の使用量を質量部で示した。
得られた各ケーブルについて、下記の試験方法で各種の特性を評価し、その結果も表1〜8に示した。
【0027】
1)シース材料の引張り特性
ケーブルよりシース材料(内層及び外層)を円周方向に2分割し絶縁線(多芯撚線)を除去した後、1/8インチダンベルで打ち抜き、ケーブル内部であった面を1000番のヤスリで研磨し平滑にし、定速型引っ張り試験機を用いて、破断時の引っ張り強さ(TS:Tensile Strength)と破断時の伸び(El:Elongation)の測定を行った。
【0028】
2)外層材料のゲル分率
ケーブルより外層材料のみを採取し、TPUを用いた場合には、ジメチルホルムアミド、その他の場合にはキシレンを用い、110℃で24時間抽出した後の不溶分をゲル分率として抽出前の質量に対する百分率で示した。TPUとTPEEとの混和物の場合は、キシレンで抽出した後十分に乾燥し再度ジメチルホルムアミドでそれぞれ110℃×24時間抽出した後の不溶分をゲル分率として抽出前の質量に対する百分率で示した。
3)内層材料のゲル分率
ケーブルより内層材料のみを採取し、キシレンを用い110℃で24時間抽出した後の不溶分をゲル分率として抽出前の質量に対する百分率で示した。
【0029】
4)耐加熱変形性
JIS C 3005に準拠し、導体・絶縁を含むケ−ブルの状態で温度120℃、加重1980gf(19.42N)で測定を行った。数値が小さいほど耐加熱変形性に優れる。
【0030】
5)耐熱性
JASO D 608(自動車規格 規格名:自動車用耐熱低圧電線)に準拠し、ケーブル外径と同径(5mmφ)のマンドレルにケーブルを6ターン以上巻き付け、200℃の雰囲気中に30分放置し、室温まで冷却した後、ケーブル外観の溶融や亀裂の有無を観察した。
【0031】
6)耐摩耗性
JASO D 608に準拠し、ケーブルから長さ約900mmの試料をとり、図2のように、23±5℃の室温でJIS R 6251に規定する150番Gの摩耗テープ5に接するように試料4を固定し450gのおもり7を加え1500mm/minの速さでテープ5を移動し、導体6とテープ5が接触するまでのテープの長さを測定機8により読みとった。1箇所の測定を行った後、試料を25mm移動し、時計方向に90度回転させて固定し、上記の試験を行った。このようにして、1試料に対して8個の測定値を読みとり、平均値を求めた。次に8個の測定値のうち平均値以下の測定値を再平均し、この値を摩耗抵抗値とした。
【0032】
7)難燃性
JASO D 608に準拠し、35mm長炎の内炎がケーブルに接するように10秒間着火し取り外した後に、残炎時間が30秒以内のものを合格とした。
【0033】
8)傷つきにくさ
ケーブル表面を爪で引っ掻き、容易に傷のつくものを×、傷のつきにくいものまたは傷のつかないものを○とした。
【0034】
9)樹脂成形体との接着強度(対PBT)
図3に示すように、▲1▼(a)に示すようにケーブルを半割にした試料15を用意し、プレス機14を用いてPBT板9に230℃で予熱5分、加圧0.2MPa×30秒で5mm幅に貼り付けた後、▲2▼(b)に示すように加圧後の試料15aをPBT板9より引き剥がすのに必要な最大の力(N)を測定した(図中、Wはサンプルの幅(5mm)を示す。)。この測定値を2倍し、cmあたりに換算したものを接着強度(N/cm)とした。
【0035】
10)ヒートサイクル(ヒートショック後の気密性)
図4に示すように、絶縁線11を有するケーブル3の端末にコネクター10をPBT樹脂で射出成形した。作製したサンプルを図5に示すような冷熱サイクルにかけた。500サイクル後に、図6に示すように、コネクター10側を封止したケーブル3について、水槽13内でもう一方の端末12から1kgf/cm(9.8N/cm)の圧縮空気を5分間送り込んだ。その間にコネクター10部分より気泡が生じないものを合格とし、その合格数/試験数を示した。
【0036】
11)樹脂成形体との接着強度(対PA)
板成形樹脂をPAに変更し、9)と同じ試験を行った。
12)樹脂成形体との接着強度(対TPU)
板成形樹脂をTPUに変更し、9)と同じ試験を行った。
【0037】
表中に示す各化合物としては下記のものを使用した。
(A)(a)TPEE:熱可塑性エステル系エラストマー
東レデュポン(株)製 商品名ハイトレル4057
(b)TPU: 熱可塑性ウレタン樹脂
大日精化工業(株)製 商品名レザミンP−2088
(B−1)
製造会社:協和化学社製
商品名:キスマ5LH
種類:ビニルシラン処理水酸化マグネシウム
(B−2)
製造会社:協和化学社製
商品名:キスマ5B
種類:脂肪酸処理水酸化マグネシウム
(C)TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
新中村化学(株)製 商品名オグモントT200
(D)ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドラキシフェニル)プロピオネート)
チバガイキ−(株)製 商品名イルガノックス1010
(E)EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体
三井デュポンポリケミカル(株)製 商品名エバフレックス360
【0038】
【表1】
Figure 2004206889
【0039】
【表2】
Figure 2004206889
【0040】
【表3】
Figure 2004206889
【0041】
【表4】
Figure 2004206889
【0042】
【表5】
Figure 2004206889
【0043】
【表6】
Figure 2004206889
【0044】
【表7】
Figure 2004206889
【0045】
【表8】
Figure 2004206889
【0046】
表1〜8より明らかなように、比較例1〜4、6、9〜11のケーブルは、本発明のケーブルに比べ、引張り特性、耐加熱変形性、耐熱性、耐摩耗性、難燃性または傷つきにくさに劣る。なお、比較例5のケーブルは多官能モノマー(C)が多すぎるためコスト的には望ましくない例である。なお、表5〜8より、比較例7、8、12、13のケーブルは、本発明のケーブルに比べ、樹脂成形体との接着性に劣る。
これに対し、本発明のケーブル(実施例1〜18)はこれらのいずれの性能も良好であることがわかる。
本発明のケーブルは、ケーブルの耐熱性、機械的強度を高める為に反応性のシランカップリング剤で表面処理なされた水酸化マグネシウムを用いたことにより、TPEEと橋渡し結合が行われ、水酸化マグネシウムとTPEEが相互的に結合することにより、多量に水酸化マグネシウムを加えても強度低下が非常に少なく、高度な難燃性に優れ、さらに耐熱性に優れ、しかも傷のつきにくい良好なケーブルであることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明のケーブルは、ノンハロゲン難燃材料で構成されており、機械特性、難燃性、耐熱性、柔軟性に優れるだけでなく、埋立や燃焼などの廃棄時において、有害な重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害ガスの発生がない。
また、本発明のケーブルは、機械特性、難燃性及び耐熱性に優れるとともに、柔軟性に優れ、特に耐傷つき性に優れる。このように本発明のケーブルはノンハロゲン難燃ケーブルとして柔軟性と機械強度を両立することができる優れた特性を有するものである。
またさらに、本発明のケーブルは、コネクター部材をコネクター射出成型時の熱と圧力などにより接着することができ、コネクター部材とケーブル間に優れた気密性・水密性を得ることができる。
以上から、本発明のケーブルは、環境問題を考慮した自動車、ロボット、電子機器用等に使用されるケーブルとして非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーブルの好ましい一実施態様を示す断面図である。
【図2】実施例の耐摩耗性試験方法の説明図である。
【図3】実施例で行った、ケーブルと樹脂成形体との接着強度の測定試験方法の説明図である。(a)、(b)のステップで行った。
【図4】実施例のヒートサイクル試験に用いた、コネクターを成形したケーブル端末を示す正面図である(点線はコネクター内部を示す)。
【図5】実施例のヒートサイクル試験で行った冷熱サイクルを示すグラフである。
【図6】実施例のヒートサイクル試験方法の説明図である。
【符号の説明】
1 多芯撚線
1a 導体
1b 絶縁層
2 被覆層
2a 内層
2b 最外層
3 ケーブル

Claims (5)

  1. 絶縁導体を複数本撚り合わせた多芯撚線の外側に被覆層を設けたケーブルであって、少なくとも前記被覆層の最外層が、熱可塑性エステル系エラストマーを含有してなるベース樹脂(A)100質量部に対し、少なくともその25質量%が反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物(B)50〜200質量部及び多官能モノマー(C)0〜20質量部を含有した樹脂組成物を押出成形し、架橋処理した架橋体で構成されていることを特徴とする難燃性ケーブル。
  2. 前記ベース樹脂(A)が(a)ポリエステルをハードセグメントとするブロック共重合体及び(b)熱可塑性ポリウレタンを質量比(a):(b)=10:90〜90:10でブレンドしてなり、かつ、前記多官能モノマー(C)がベース樹脂(A)100質量部に対し1〜20質量部含有されていることを特徴とする請求項1記載の難燃性ケーブル。
  3. 前記金属水和物(B)50〜200質量部のうち少なくとも25質量部が、前記反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性ケーブル。
  4. 前記反応性のシランカップリング剤で処理された金属水和物が、ビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により処理されている水酸化マグネシウムを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の難燃性ケーブル。
  5. 前記最外層のゲル分率が25〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性ケーブル。
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