JP2004205572A - 偏光板とそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents

偏光板とそれを用いた液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、液晶ディスプレイ等の各種表示装置、具体的には液晶ディスプレイの偏光板保護フィルムにポリエステル樹脂を用いたと同様な耐久性を有し、しかも液晶セルに貼合する際、貼合に失敗してやり直しても液晶セルを損傷することのない偏光板保護フィルムを有する、また、液晶セルに貼合して高温高湿条件下においても保存性のよい偏光板と、液晶表示装置を得る。
【解決手段】片面に平衡含水率が0.5〜3%であるポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルムを有し、反対面にセルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムを有する偏光板であって、前記セルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムが液晶セル側に位置するように保護フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板とそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報産業の著しい発達に伴って、各所で表示装置が活用されるようになっている。特に液晶表示装置の発達はめざましく、様々な機器に搭載されるようになった。一方で小型軽量化への要望が益々強まっており、偏光板等の部材についても薄膜化の要求が強まっている。偏光板は通常2枚の偏光板保護フィルムで偏光子をサンドイッチして作られており、偏光板保護フィルムとしてはトリアセチルセルロースなどのセルロースエステルフィルムが好ましく用いられている。
【0003】
しかしながら、偏光板を薄くするために、保護フィルムであるトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を薄くすると透湿性が悪化したり、寸法安定性が低下するといった問題があり、特に40μm未満の薄膜フィルムでは著しい物性低下が起こるために、偏光板に十分な耐久性を付与することが困難であった。
【0004】
一方で偏光板保護フィルムとしてポリエステルを用いることができることは知られている。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムをもちいることが知られているが、ポリエチレンテレフタレートフィルムは透湿性が低く、TACフィルムと比較して寸法安定性に優れるが、鹸化処理ができないため偏光子との接着性に劣るほか、偏光子との貼合の際に接着剤の乾燥性が著しく悪いという問題があった。特開2002−116320号公報では、ポリエチレンテレフタレートの平衡含水率を上昇させたポリエステル樹脂フィルムにより、偏光子との貼合性を向上させた技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、偏光子の両面に変成ポリエステル樹脂からなる保護フィルムを設けると、液晶セルに貼合する際、貼合に失敗してやり直しをするときに液晶セルに係る負荷が大きく、液晶セルを痛めてしまい場合によっては破壊してしまうという問題が発生することがわかった。さらに、偏光板を液晶セルに貼合した後の高温高湿条件下での長期保存により、同じ条件下での偏光板の保存性が良いにも関わらず、偏光子と液晶セル側に貼合した偏光板保護フィルムであるポリエステル樹脂フィルムとが剥がれるという問題点も発生した。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−116320号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶ディスプレイ等の各種表示装置、具体的には液晶ディスプレイの偏光板保護フィルムにポリエステル樹脂を用いたと同様な耐久性を有し、しかも液晶セルに貼合する際、貼合に失敗してやり直しても液晶セルを損傷することのない偏光板保護フィルムを有する偏光板と、それを用いた液晶表示装置を得ることにある。また、液晶セルに貼合して高温高湿条件下においても保存性のよい偏光板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は、偏光板保護フィルムの片面が平衡含水率0.5〜3%のポリエステル樹脂を主成分とし、他の片面がセルロースエステルフィルムとからなる保護フィルムとし、その面を液晶セルの外側に、かつそのセル側に位置するようにしたことにより、両面がポリエステル樹脂からなる保護フィルムを用いたと同等の耐久性を有し、貼合に失敗してやり直しても液晶セルを損傷することのない偏光板が得られることを見出した。そして、偏光板を液晶セルに貼合した後に高温高湿条件下で長期保存しても、偏光子と液晶セル側に貼り合せた偏光板保護フィルムであるポリエステル樹脂フィルムとが剥離するという問題点を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成されることがわかった。
【0010】
〔1〕 片面に平衡含水率が0.5〜3%であるポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルムを有し、反対面にセルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムを有する偏光板であって、前記セルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムが液晶セル側に位置するように保護フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【0011】
〔2〕 前記ポリエステル樹脂がスルホン酸又はその塩から選ばれる基を有することを特徴とする〔1〕記載の偏光板。
【0012】
〔3〕 前記ポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルムが、複数のフィルムを重ねたものであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の偏光板。
【0013】
〔4〕 液晶セルを挟む偏光板のうち少なくとも一方が〔1〕、〔2〕又は〔3〕に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【0014】
なお、上記ポリエステル樹脂を主成分とするとは、50質量%以上が上記ポリエステル樹脂であることを表すものとする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0016】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、綿花リンター、木材パルプ及びケナフ等由来のセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度(総置換度ともいう)が2.50〜2.90のものが好ましく用いられる。また、アシル基の置換基には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。本発明においてはこれらの範囲に含まれるセルロースエステルを2種類以上混合して使用することも好ましい。
【0017】
本発明においては、平衡含水率0.5〜3%のポリエステル樹脂層は単独でポリエステルフィルムを形成してもよく、平衡含水率0.5%未満のポリエステル樹脂層と積層されていてもよい。
【0018】
ここで平衡含水率とは、試料の中に平衡状態で含まれる水分量を試料質量に対する百分率で表したものである。具体的な求め方としては、ポリエステルフィルムを(或いは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステル樹脂層フィルム)23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量する方法である。
【0019】
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、また初めに芳香族ジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとグリコール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いて製造できる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤等を用いて製造される。
【0020】
本発明においては、始めにジカルボン酸のジアルキルエステルを用いた場合でも、また一旦ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応させるエステル化法を用いた場合でも、原料およびその共重合成分に言及する場合、芳香族ジカルボン酸、グリコール換算の量をいうこととする。
【0021】
上記プロセスにおいて、例えば、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはポリアルキレングリコール等の共重合成分をエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことにより、これらの共重合成分を含んだポリエステル樹脂が得られる。
【0022】
従って、本発明に用いられる平衡含水率0.5〜3%のポリエステル樹脂層を形成するポリエステル樹脂としては具体的には、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により得られたポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂構造中にスルホン酸またはその塩から選ばれる基を有しているポリエステル樹脂が好ましい。
【0023】
これらのスルホン酸基は、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸またはグリコールを所定量テレフタル酸等のジカルボン酸或いはエチレングリコール等のグリコールの共重合成分として混合し、ポリエステルを製造することにより、ポリエステル樹脂中に導入することが出来る。
【0024】
こうして得られるポリエステル樹脂中に含まれる硫黄元素含有量は0.15〜2質量%であることが好ましい。
【0025】
これら硫黄元素含量が2%を越える場合には、スルホン酸基の含有量が多すぎ、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また0.15%未満では、スルホン酸基数が充分な割合で存在せず、本発明の効果を与えない。
【0026】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素は全てがスルホン酸基またはその塩から選ばれる基に由来にする必要はないが、50%以上、好ましくは80%以上がスルホン酸またはその塩としてポリエステル中に含まれるスルホン酸基に由来するものであることが好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素の定量方法は特に限定されないが、例えばICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により定量出来る。具体的には、試料に炭酸ナトリウムを添加して、1000℃で加熱溶融して得られた分解物に水を加えて水溶液とし、これをセイコー電子工業(株)製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析にて求めることが出来る。
【0028】
上記スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は、従って、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により製造される際に用いられる全芳香族ジカルボン酸に対して、1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはグリコールを共重合成分として用いることにより得ることが出来る。また、スルホン酸をポリエステルに導入するには、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を、全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%用いて製造することが原料の入手のしやすさ等から見てより好ましい。
【0029】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、更にポリアルキレングリコールを、生成したポリエステルの全量に対して0.1〜10質量%共重合成分として用いて製造されることが好ましい。
【0030】
これらの成分により、ポリエステル樹脂を偏光板保護フィルム等に用いる際の、偏光子との接着性や貼合の際の接着剤の乾燥性等偏光板保護フィルムとしての特性は大きく改善される。
【0031】
本発明に用いるポリエステル樹脂においては、特にポリエステルの主成分がテレフタル酸およびエチレングリコールを用いて得られるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0032】
本発明においては、後述するが、溶融流延されたフィルムを実質的に一軸で延伸したフィルムが特に好ましく用いられる。このようにして得られたフィルムは特に膜厚5〜200μmであっても、適切な透湿度を有するため、偏光板製造時の接着剤の乾燥性に優れ、偏光子との接着性も良好であった。また本発明のフィルムは膜厚5〜200μmであっても偏光板製造時に皺が入りにくく、偏光子との貼合が容易であった。
【0033】
本発明の偏光板保護フィルムを用いた偏光板は、膜厚5〜200μmの偏光板保護フィルムを用いても、高温高湿条件下での偏光度の低下が著しく少なく、しかも寸法安定性にも優れることが確認された。
【0034】
本発明に用いられるポリエステルの製造に用いられる芳香族ジカルボン酸としては前記テレフタル酸のほか、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などがあり、またこれらの低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を使用することができる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシリレングリコールなどがある。なかでもテレフタル酸とエチレングリコールの反応により得られたポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。
【0035】
主成分がポリエチレンテレフタレートであるとは、ポリエチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上の共重合体、あるいはブレンドされている場合は、ポリエチレンテレフタレートを80質量%以上含有していることをいう。
【0036】
本発明において用いられる、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために用いられるスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)で置換した化合物が用いられる。
【0037】
また、グリコール中にスルホン酸およびその塩から選ばれる基を導入したものを用いてもよいが、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために好ましい化合物として好ましいのは、前記スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸である。
【0038】
これらのスルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸成分が製造時に用いられる全芳香族ジカルボン酸の10モル%を越えると延伸性が劣ったり、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また1モル%未満では、十分な乾燥性が得られない場合がある。
【0039】
更に、本発明に用いられるポリエステルは、ポリアルキレングリコールを共重合成分として含有することが好ましく、前述したように、ポリエステルが、反応生成物のポリエステル全量に対してポリアルキレングリコールを0.1〜10質量%用い製造されることが好ましい。また、更に好ましくは0.2〜8質量%である。ポリアルキレングリコールが0.1質量%未満では十分な乾燥性が得られない場合があり、10質量%を越えるとヤング率が低下し、機械的強度に劣ったものとなる場合がある。
【0040】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いられるが、このうちポリエチレングリコールが好ましく、分子量(数平均分子量)としては特に限定されないが300〜20000が好ましく、さらに好ましくは600〜10000、特に1000〜5000のものが好ましく用いられる。これらの分子量はGPCを用いることにより測定できる。
【0041】
本発明の光学フィルムに用いられるポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
【0042】
上記以外の他の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体として、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を用いることができる。また製造の際、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸及びヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、セバシン酸及びダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステルなどのエステル形成可能な誘導体)を全ジカルボン酸の10モル%以下の量で使用しても良い。
【0043】
本発明で使用することができるグリコールとしてはエチレングリコールおよび前記のグリコールの他、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、p,p′−ジヒドロキシフェニルスルフォン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレン(例、エチレン、プロピレン)グリコール、及びp−フェニレンビス(ジメチロールシクロヘキサン)などを挙げることができ、これらは用いられるグリコールの10モル%以下の量で使用しても良い。
【0044】
本発明に用いられるポリエステルは、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。
【0045】
また、本発明に用いられるポリエステルには、フィルムの耐熱性を向上する目的で、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環又はシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。
【0046】
本発明に用いられるポリエステルの固有粘度(Intrinsic Viscousity)は0.35〜0.65の範囲のものが好ましく用いられる。この範囲以下では得られるフィルムの脆弱性が不充分となる場合があり、この範囲を超えると、溶融押し出し時に溶融粘度が大きすぎて平面性が劣化する場合がある。
【0047】
固有粘度の算出はウベローデ型粘度計を用いて行った。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、これにサンプルを溶かして濃度0.2,0.6,1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製する。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零(C→0)に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0048】
また、本発明に用いられるポリエステルはガラス転移温度(Tg)が55℃以上であることが好ましく、更に60℃以上であることが好ましい。55℃未満では得られたフィルムの高温高湿下での寸法安定性に劣る場合がある。Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められたものである。
【0049】
本発明に用いられるポリエステルには、酸化防止剤が含有されていてもよい。特にポリエステルが、ポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に効果が顕著となる。含有させる酸化防止剤はその種類につき特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができるが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の含有量は、通常、ポリエステルに対して0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、ポリエステルに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、或いは界面活性剤等をフィルム表面に塗布する方法等が一般的である。
【0051】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0053】
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物などが挙げられる。又、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤、特願2000−214134号の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0054】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記に示される化合物が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN 171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN 109、Ciba製)
また本発明において、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記に示される化合物が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
市販されているものとしては、TINUVIN P、TINUVIN 324、TINUVIN 320、TINUVIN 326、TINUVIN 327、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 770、TINUVIN 780、TINUVIN 144、TINUVIN 120、UVITEX OB(日本チバガイギー(株)製)等から適宜選択して使用することもできる。
【0057】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0058】
本発明に用いるポリエステルの合成方法は、特に限定があるわけではなく、前述したように従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤を添加することができる。この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールをエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことが好ましい。また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
【0059】
又、保護フイルム中には、本発明のポリエステル樹脂以外にポリウレタン等の弾性率を向上させうる他のポリマーを含有させてもよい。
【0060】
次に本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明の実質的に一軸で延伸したポリエステルフィルムとは、二軸延伸製膜において、主にどちらか一方向のみを行うことで得られる。即ち本発明においてポリエステルフィルムは、一方向の延伸倍率が1.00〜2.5倍、それと直交する方向の延伸倍率が2.5〜10倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであることが好ましく、より好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍、横方向の延伸倍率が2.5〜7倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであり、さらに好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.1〜1.8倍、横方向の延伸倍率が3.0〜6.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムである。一方向の延伸倍率を大きくすることが好ましく、延伸倍率の比(縦横いずれかの高い方の延伸倍率/縦横いずれかの低い方の延伸倍率)は2以上であることが好ましく、更に4以上であることが好ましく、6以上であることが好ましい。又、未延伸のものに対して延伸後の面積比て4倍以上に延伸されていることが好ましく、更に好ましくは5〜7倍に延伸されていることが好ましい。
【0061】
上記ポリエステルフィルムを得るには、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが、以下の様な方法で行うことができる。この場合、縦方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向)を、横方向とはフィルムの製膜方向と直角方向のことをいう。
【0062】
先ず、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥又は真空乾燥した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸する方法である。
【0063】
次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融点)−20℃の温度範囲内で、横延伸し次いで熱固定する。
【0064】
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると巾方向の物性の分布が低減でき好ましい。さらに横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると巾方向の物性の分布がさらに低減でき好ましい。
【0065】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tm−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0066】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0067】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整して決定すればよい。
【0068】
また、上記フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0069】
カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
【0070】
本発明において、上記のようにして製膜されたポリエステルフィルムの面方向においての屈折率は、横方向の屈折率(nTD)と縦方向の屈折率(nMD)との差の絶対値|nTD−nMD|が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.025以下である。
【0071】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは3〜100μm、好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは膜厚5〜40μm、より好ましくは膜厚10〜35μmである。
【0072】
本発明の偏光板用保護フィルムの面内方向におけるリターデーションR0(nm)は小さいほど良く、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましい。本発明のポリエステルフィルムは従来のポリエステルフィルムと比較してR0を低く抑えることができるため好ましい。
【0073】
また、本発明の偏光板用保護フィルムはフィルム面内の屈折率が最大となる方向とフィルムの幅手方向(フィルムの長尺方向)とのなす角度が0°±15°もしくは90°±15°であることが好ましく、更に0°±10°もしくは90°±10°であることが好ましく、より好ましくは0°±5°もしくは90°±5°であることであり、0°±2°もしくは90°±2°であることが更に好ましい。
【0074】
本発明のポリエステルフィルムは、上記ポリエステルフィルムからなる単独(単層)のフィルムでもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリエステルからなる層を少なくとも1層含む、複数の樹脂フィルムを重ねた多層フィルムとしてもよい。上記ポリエステル層をA、その他の樹脂フィルムをB及びCとすると、例えばA/B、A/B/A、B/A/B、B/A/Cのように構成できる。もちろん4層以上の構成にすることもできる。この様に多層構成にすることで、例えば、強度や水バリアー性の高いフィルムをコア層や外層に積層することにより、複数の機能を同時に付与することができる。
【0075】
上記樹脂フィルムとしては、前述のポリエステルなどが好ましく用いられる。また、滑り性を付与するためマット剤等の微粒子を添加する場合は、最外層のみに添加すれば効果が得られるので、透明性等を劣化させずに機能付与することが可能となる。
【0076】
添加できる微粒子としては特に限定はされないが、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0077】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0078】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0079】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0080】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0081】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0082】
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0083】
多層フィルムを製造する方法としては、共押し出しによる方法、エクストルージョンラミネートによる方法、ドライラミネーションによる方法などを好ましく用いることができる。
【0084】
本発明において、光学フィルムの表面が導電性を有することが好ましく、表面比抵抗(23℃、25%RH)が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。より好ましくは、1×1011Ω/□以下、さらに好ましくは1×1010Ω/□以下である。
【0085】
本発明においては吸湿性物質又は導電性物質を含有させることにより光学フィルムに導電性を付与することができる。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることができる。
【0086】
用いることができる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン酸、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等の様なカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むものが好ましい。
【0087】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族或いは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4アンモニウム塩類、及び脂肪族又は複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類等が好ましい。
【0088】
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が好ましい。
【0089】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、サポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリシドール誘導体(例えば、アルケニルコハク酸ポリセリド、アルキルフェノールポリグリセリド)、多価アルコール脂肪酸エステル類等のアルキルエステル類等が好ましい。
【0090】
導電性ポリマーは、特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよいが、その中でも好ましいのは、アニオン性、カチオン性である。より好ましいのは、アニオン性では、スルホン酸系、カルボン酸系、カチオン性では、3級アミン系、4級アンモニウム系のポリマー又はラテックスである。
【0091】
これらの導電性ポリマーは、例えば、特公昭52−25251号公報、特開昭51−29923号公報、特公昭60−48024号公報記載のアニオン性ポリマー又はラテックス、特公昭57−18176号公報、同57−56059号公報、同58−56856号公報、米国特許4,118,231号明細書等に記載のカチオン性ポリマー又はラテックスを挙げることができる。
【0092】
例えば、特願2000−80043号記載のプラズマ処理で帯電防止層あるいは導電層を設けることもできる。
【0093】
本発明の光学フィルムと偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、十分な接着性を持ち、透明で、偏光機能を阻害しないものが好ましく用いられ、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤などが挙げられる。
【0094】
接着性向上のため、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。さらに接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。下引層としては偏光子との接着性に優れる親水性コロイド層が特に好ましい。
【0095】
例えば、偏光板保護フィルムとして偏光子との接着性を向上させるために特開2000−356714号公報の方法等でプラズマ処理を行うことによって、ポリビニルアルコール系接着剤等を用いた場合の接着性をさらに向上させることができる。本発明の光学フィルムには必要に応じて、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、導電層、光拡散層、易接着層、防汚層を単独であるいは適宜組み合わせて設けることができる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0097】
〔ポリエステル樹脂の合成〕
(ポリエステルA)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール64質量部に酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行なった。得られた生成物に5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度31質量%)35質量部(6.3モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)5.8質量部(5質量%/生成したポリエステル)、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部を添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、40Paで重合を行ない、ポリエステルAを得た。以下に示す方法に従って固有粘度を求めた。その結果、固有粘度は0.50であった。
【0098】
固有粘度についてはウベローデ型粘度計を用いて以下の手順で算出した。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2,0.6,1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零に補外(C→0)し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0099】
(ポリエステルB)
添加量を5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)22質量部(4モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)12.2質量部(10.5質量%/生成したポリエステル)に変更した以外は上記と同様にして、ポリエステルBを得た。前期同様に測定した固有粘度は0.55であった。
【0100】
(ポリエステルC)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部、ジエチレングリコール2質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、80Paで重合を行い、固有粘度0.65のポリエステルCを得た。
【0101】
〔光学フィルムの作製〕
(光学フィルム1)
ポリエステルBのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、85℃で縦方向に1.2倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0102】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で横方向に4.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(光学フィルム1)を作製した。
【0103】
(光学フィルム2)
ポリエステルAのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、90℃で縦方向に4.0倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0104】
ついで一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、100℃で横方向に1.2倍延伸した。さらに、70℃で2秒間熱処理し、第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に2%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(光学フィルム2)を作製した。
【0105】
(光学フィルム3)
ポリエステルAとポリエステルCのペレットを質量比で3:7になるようにタンブラー型混合機で混合し、150℃で8時間真空乾燥した。また、ポリエステルBのペレットも150℃で8時間真空乾燥した。ポリエステルAとポリエステルCの混合物及びポリエステルBを2台の押出機を用いて285℃で溶融押出し、マルチマニホールドダイを用いてシート状に押し出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この時各層の厚みの比は1:1となるようにした。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.05倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0106】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、105℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ30μmのポリエステルフィルム(光学フィルム3)を作製した。
【0107】
(光学フィルム4)
ポリエステルAとポリエステルCのペレットを質量比で1:9になるようにタンブラー型混合機で混合し、150℃で8時間真空乾燥した。また、ポリエステルBのペレットも150℃で8時間真空乾燥した。ポリエステルAとポリエステルCの混合物及びポリエステルBを2台の押出機を用いて285℃で溶融押出し、マルチマニホールドダイを用いてシート状に押し出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この時各層の厚みの比は1:1となるようにした。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.05倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0108】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、105℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ30μmのポリエステルフィルム(光学フィルム4)を作製した。
【0109】
(光学フィルム5)
酢化度61.0%のセルローストリアセテート100質量部とトリフェニルフォスフェート15質量部を塩化メチレン450質量部とメタノール50質量部の混合溶媒に溶解し、35℃のステンレスベルト上に流延し、剥離可能となったところでステンレスベルトから剥がし、ロール搬送装置を用いて搬送しながら、徐々に温度を上げ、最終的に120℃で乾燥し、38μmのセルローストリアセテートフィルム(光学フィルム5)を作製した。
【0110】
〔平衡含水率〕
以上のようにして得られた光学フィルム1〜5について下記の方法で平衡含水率を測定した。
【0111】
光学フィルムサンプルを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、表面の水分をふき取り、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学社製、CA−20型)を用いて温度150℃で水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法により定量した。
【0112】
各光学フィルム1〜5について結果を下記表1に示した。
【0113】
【表1】
Figure 2004205572
【0114】
〔偏光子の作製〕
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し50℃で4倍に延伸し偏光子を作製した。
【0115】
〔偏光板の作製〕
(偏光板1)
光学フィルム1の1方の表面に、春日電機社製コロナ放電処理装置(HFS−202)を用いて、12W・min/m2の条件で易接着処理を施した。
【0116】
前記光学フィルム1の易接着処理を施した面側が偏光子側となるようにして完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として貼り合せた。また光学フィルム5を40℃の2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に60秒間浸せきした後、水洗乾燥した。得られた鹸化処理済み光学フィルム5と前記で作製した偏光子に完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として貼合し偏光板1を作製した。この時、光学フィルムのフィルム面内での屈折率の最大方向が偏光子の偏光軸に平行になるように張り合わせ、偏光板1を作製した。
【0117】
(偏光板2〜7)
偏光板1と同様にして、光学フィルム1に代え、それぞれ2、3、4、5を用いて偏光板2〜7を作製した。なお、偏光板3の作製に際しては、光学フィルム3のポリエステルBの層が偏光子側になる様に貼合した。
【0118】
〔特性評価〕
以上のように作製した偏光板1〜7について、以下の方法で評価を行った。その結果を表2に示した。
【0119】
(リワーク性)
本発明の偏光板をそれぞれ貼合用接着剤を用いて、試験用ガラスセルにローラーにて貼り合わせた。試験用ガラスセルには、無アルカリガラス板(厚み0.7mm、サイズ300mm×220mm)を2μmのスペーサーを介して貼り合せたものを使用した。貼り合せ前に試験用ガラスセルの表面を、メチルアルコールなどを含ませたやわらかい布でよく拭き、その後、空拭きしてよく洗浄した。
【0120】
貼り合せ後、サンプルをオートクレーブに投入(50℃、0.5×106Pa、15分間)した。その後、リワーク性試験を行った。
【0121】
リワ−クの際は、サンプルのコーナー部分にカッターにてきっかけを作り、ガラスセルを割らないように注意しながらゆっくりとガラスセルからサンプルを引き剥がした。この試験を10回行い、その際、全くガラスを割ることなく引き剥がせたものを○、一度でも、ガラスは割れなかったが、偏光板が引き裂かれたものを△、一度でもガラスを割ってしまったものを×とした。
【0122】
(保存性)
〈偏光板の高温高湿下での保存性〉
偏光板サンプルを、80℃、90%RH1000時間処理した後、波長550nmで、1組の偏光板の偏光軸を平行にした場合の透過率(H0)と、直交させた場合での透過率(H90)をそれぞれ測定し、下記式で偏光度を求めた。なお、処理前の偏光板サンプルでの偏光度も同様に求めた。そして、その偏光度の変化率により保存性を表す。
【0123】
偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100
変化率(%)=(1−処理後偏光度/処理前偏光度)×100
○:変化率が0〜3未満
△:変化率が3〜5未満
×:変化率が5以上
〈セル貼合後の偏光板の高温高湿下での保存性〉
上記偏光板1〜7を液晶を挟んだガラス板の上に貼り合わせ液晶セルを形成した後、偏光板同様に偏光度とその変化率を求め評価した。
【0124】
〈接着性〉
ガラスセルに貼合した偏光板サンプルを、80℃、90%RHで1000時間処理した後の偏光子と保護の光学フィルムとの張り合わせ状態を観察し下記の基準でランク付けした。
【0125】
○:剥離なし
△:僅かに剥離認められるが実用上問題ないレベル
×:剥離発生
偏光板と光学フィルムを下記表2の如く組み合わせた特性評価結果を示す。
【0126】
【表2】
Figure 2004205572
【0127】
本発明内のもの(本発明1〜4)は、リワーク性、セル貼合後の保存性、接着性のいずれの特性もよいが、本発明外のもの(比較1〜3)は、少なくともいずれかの特性に問題があることがわかる。
【0128】
【発明の効果】
本発明により、液晶ディスプレイ等の各種表示装置、具体的には液晶ディスプレイの偏光板保護フィルムにポリエステル樹脂を用いたと同様な耐久性を有し、しかも液晶セルに貼合する際、貼合に失敗してやり直しても液晶セルを損傷することのない偏光板保護フィルムを有する偏光板と、それを用いた液晶表示装置を得ることができる。また、液晶セルに貼合して高温高湿条件下においても保存性のよい偏光板を提供することが出来る。

Claims (4)

  1. 片面に平衡含水率が0.5〜3%であるポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルムを有し、反対面にセルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムを有する偏光板であって、前記セルロースエステルフィルムを主成分とする保護フィルムが液晶セル側に位置するように保護フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
  2. 前記ポリエステル樹脂がスルホン酸又はその塩から選ばれる基を有することを特徴とする請求項1記載の偏光板。
  3. 前記ポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルムが、複数のフィルムを重ねたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
  4. 液晶セルを挟む偏光板のうち少なくとも一方が請求項1、2又は3に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
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