JP2004204815A - エンジンの燃料性状判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状の判定精度を向上させること。
【解決手段】燃料性状判定装置は、燃料タンク9に貯留されエンジン1に供給される燃料の性状を判定する。燃料タンク9に設けられた内圧センサ28は、そのタンク内圧を検出する。エンジン1に設けられた水温センサ27は、エンジン1の温度状態に相当する冷却水温を検出する。電子制御装置(ECU)30は、 エンジン1の始動時に、上記検出されるタンク内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定する。ECU30は、上記設定される参照内圧と始動時に検出される始動時水温とに基づき燃料性状を判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料性状判定装置は、燃料タンク9に貯留されエンジン1に供給される燃料の性状を判定する。燃料タンク9に設けられた内圧センサ28は、そのタンク内圧を検出する。エンジン1に設けられた水温センサ27は、エンジン1の温度状態に相当する冷却水温を検出する。電子制御装置(ECU)30は、 エンジン1の始動時に、上記検出されるタンク内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定する。ECU30は、上記設定される参照内圧と始動時に検出される始動時水温とに基づき燃料性状を判定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンに供給される燃料の性状、特には、燃料の軽質・重質を判定するエンジンの燃料性状判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等のエンジンに供給される燃料には、揮発性の良好な軽質燃料の他に、揮発性の悪い重質燃料もある。このような燃料性状は、使用地域や使用環境によっても異なる。
【0003】
例えば、重質燃料を使用したエンジンでは、始動時に空燃比がリーン化して、始動性及び始動後の回転安定性が悪くなるおそれがある。また、軽質燃料を使用したエンジンでは、始動時に空燃比がリッチ化して、始動性及び始動後の回転安定性が悪くなるおそれがある。そのため、燃料性状はエンジン性能に直接影響する重要なパラメータとなっている。
【0004】
ここで、下記の特許文献1には、エンジンの燃料性状を判定する判定装置が提案され、記載されている。また、特許文献1には、燃料性状の判定結果をエンジンの燃料噴射量や点火時期に反映させるエンジン制御装置が提案され、記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された燃料性状判定装置は、エンジンの運転状態に基づいて燃料性状を判定するものである。この装置は、エンジン始動後、所定時間にわたるエンジンの回転数積算値と燃料噴射量積算値とのそれぞれを算出する積算値算出手段と、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求め、この積算値比と予め設定した判定しきい値との比較により燃料性状を判定する燃料性状判定手段とを備える。この構成により、燃料性状判定を、燃料噴射式の全タイプのエンジンに適用できるようにし、その汎用性を向上させるようにしている。
【0006】
また、特許文献1に記載されたエンジン制御装置は、エンジンの運転状態に基づいてエンジンに供給される燃料の性状を判定し、その燃料性状に応じて燃料噴射量と点火時期との少なくとも一方を補正するものである。この装置は、エンジン始動後、所定時間にわたるエンジンの回転数積算値と燃料噴射量積算値とのそれぞれを算出する積算値算出手段と、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求め、この積算値比と予め設定した判定しきい値との比較により燃料性状を判定する燃料性状判定手段と、燃料の揮発性が低いときには、燃料の揮発性が高いときに対して、燃料噴射量の増量補正と点火時期の進角補正との少なくとも一方を実行する制御手段とを備える。この構成によれば、燃料性状の相違に拘わらず常にエンジンの良好な燃焼性を確保できるようにし、排気エミッションを改善できるようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−214796号公報(第2−9頁,図1〜5)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載の燃料性状判定装置は、燃料性状を判定するために、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求めている。しかし、エンジン回転数積算値は、エンジン回転数を検出することにより求められ、エンジンフリクションの影響を受けることから、エンジンの製品公差や経時変化の影響を受けることになり、常に正確な比を求めることができない。このため、エンジンの製品公差や経時変化が要因となって、燃料性状を精度良く判定することができないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載のエンジン制御装置は、上記と同様の理由で燃料性状の判定精度が阻害されることから、燃料噴射量の増量補正や点火時期の進角補正に誤差が生じ、その分だけ燃料噴射量や点火時期の制御精度が低下するという問題があった。
【0010】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することを可能としたエンジンの燃料性状判定装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、燃料性状の影響を受けない高精度なエンジン制御を実現することを可能としたエンジンの制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定装置であって、燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、エンジンの始動時に、検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、設定される参照内圧と始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段とを備えたことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、エンジンの始動時に、内圧検出手段により検出される燃料タンクの内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として参照内圧設定手段により設定される。ここで、燃料性状が軽質である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧は相対的に高くなる。一方、燃料性状が重質である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧は相対的に低くなる。そして、前記設定される参照内圧と始動時に温度状態検出手段により検出されるエンジンの温度状態とに基づき、燃料性状判定手段により燃料性状が判定される。ここで、エンジンの温度状態に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク周りの温度状態に応じた適正な判定が行われる。従って、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状の判定を行うことが可能となる。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定し、その判定された燃料性状に基づいて燃料の燃焼に関連する手段を制御する制御装置であって、燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、エンジンの始動時に、検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、設定される参照内圧と始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段と、エンジンの運転状態に基づいて燃焼に関連する手段の制御量を算出するための制御量算出手段と、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果と再始動時に検出される温度状態とに基づいて算出された制御量を補正するための制御量補正手段と、補正された制御量に基づいて燃焼に関連する手段を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、エンジンの始動時に、内圧検出手段により検出される燃料タンクの内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として参照内圧設定手段により設定される。ここで、燃料性状が軽質である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧は相対的に高くなる。一方、燃料性状が重質である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧は相対的に低くなる。そして、前記設定される参照内圧と始動時に温度状態検出手段により検出されるエンジンの温度状態とに基づき、燃料性状判定手段により燃料性状が判定される。ここで、エンジンの温度状態に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク周りの温度状態に応じた適正な判定が行われる。従って、燃料タンクに関する参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状の判定を行うことが可能となる。
ここで、制御量算出手段によりエンジンの運転状態に基づいて算出された制御量が、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果と再始動時に検出される温度状態とに基づいて制御量補正手段により補正される。そして、その補正された制御量に基づき燃焼に関連する手段が制御手段により制御される。従って、燃料性状の違いに拘わらず適正な制御量に基づいて燃焼に関連する手段が制御されることになり、燃料の燃焼に関する制御から、燃料性状の違いが除かれる。
【0015】
上記第2の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、燃料性状判定手段は、軽質、中質及び重質に分類された中の一つを燃料性状として判定することと、制御量補正手段は、燃料性状の判定結果が軽質である場合には、中質である場合よりも減量補正し、燃料性状の判定結果が重質である場合には、中質である場合よりも増量補正することとを備えたことを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、蒸発し易い軽質燃料では、制御量が減量補正されることから、例えば、制御量を燃料供給量とした場合、エンジンの空燃比が必要以上にリッチ化することが抑えられる。また、蒸発し難い重質な燃料性状では、制御量が増量補正されることから、例えば、制御量を燃料給料量とした場合、エンジンの空燃比が必要以上にリーン化することが抑えられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエンジンの燃料性状判定装置及びエンジンの燃料供給制御装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に、自動車に搭載されたエンジンシステムの概略構成図を示す。多気筒のエンジン1は周知の構造を有するレシプロタイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6気筒を有する。エンジン1は、吸気通路2を通じて吸入される燃料と空気との可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を動作させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るようになっている。
【0019】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を通じて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)GAを調節するために開閉される。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動する。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0020】
各気筒#1〜#6に対応して設けられた複数の燃料噴射弁(インジェクタ)7は、各気筒#1〜#6の吸気ポートに対して燃料を噴射する。これらインジェクタ7は、一つのデリバリパイプ8に接続される。デリバリパイプ8には、燃料タンク9に内蔵された燃料ポンプ13が燃料パイプ14を介して接続される。燃料パイプ14の途中には、燃料フィルタ15が設けられる。燃料タンク9の中の燃料は、燃料ポンプ13により燃料パイプ14へ吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へ圧送されて各インジェクタ7へ分配される。分配された燃料は、各インジェクタ7が作動することにより、吸気ポートへ噴射され、空気との可燃混合気を形成して各気筒#1〜#6に取り込まれる。この実施の形態で、各インジェクタ7は、本発明の燃料の燃焼に関連する手段(以下「燃焼関連手段」と言う。)に相当する。
【0021】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、すなわち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配する。各点火プラグ10による点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。つまり、イグナイタ12が制御されることにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ10の点火時期が制御される。
【0022】
排気通路3に設けられた触媒コンバータ16は、エンジン1から排出される排気を浄化するための三元触媒17を内蔵する。周知のように、三元触媒17は、排気中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行う。これにより排気中の有害ガス三成分(CO,HC、NOx)を、無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化する。三元触媒17の持つ排気清浄化特性は、エンジン1における設定空燃比により大きく変わる。すなわち、空燃比が薄いときには、燃焼後の酸素(O2)の量が多くなり、酸化作用が活発に、還元作用が不活発になる。この酸化と還元のバランスがとれたとき(理論空燃比に近付いたとき)、三元触媒17は最も有効に働くことになる。
【0023】
排気通路3において、三元触媒17の上流側にはフロントO2センサ23が、下流側にはリヤO2センサ24がそれぞれ設けられる。フロントO2センサ23は、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力する。リヤO2センサ24は、三元触媒17を通過した排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力するものであり、酸素濃度検出手段に相当する。
【0024】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ25は、クランクシャフト4の角速度、すなわち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転し外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ25は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴い電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。
【0025】
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ26が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てがそれぞれ燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ26から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力される。
【0026】
エンジン1に設けられ水温センサ27は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この冷却水温THWは、エンジン1の温度状態を反映している。
【0027】
燃料タンク9に設けられた内圧センサ28は、燃料タンク9の内圧(タンク内圧PT)を検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この内圧センサ28は、本発明の内圧検出手段に相当する。
【0028】
運転席に設けられたイグニションスイッチ29は、エンジン1を始動するために同スイッチ29がオンされたときには始動信号を、エンジン1を停止するために同スイッチ29がオフされたときは停止信号をそれぞれ出力する。
【0029】
この実施の形態で、前述した各種センサ21〜29は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する。この実施の形態で、吸気量GAは、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と、回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから換算される。従って、この実施の形態で、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25は、エンジン1に供給される空気量(吸気量GA)を検出するための空気量検出手段を構成する。
【0030】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、各種センサ21〜29から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これら入力信号に基づいて空燃比制御を含む燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、各インジェクタ7及びイグナイタ12をそれぞれ制御する。併せて、ECU30は、上記各種信号に基づいて燃料性状判定処理を実行し、その判定結果を燃料噴射制御に反映させる。
【0031】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7を制御することにより、燃料噴射量及び燃料噴射タイミングを制御することである。空燃比制御とは、少なくともフロントO2センサ23からの出力電圧Vに基づいて、各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の空燃比を理論空燃比等の所定の空燃比にフィードバック制御することである。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。
【0032】
燃料性状判定処理とは、燃料タンク9に貯留され、エンジン1に供給される燃料の性状を、水温センサ27及び内圧センサ28等からの信号に基づいて判定することである。
【0033】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の参照内圧設定手段、燃料性状判定手段、制御量算出手段、制御量補正手段及び制御手段を構成する。周知のようにECU30は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等を備える。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これら制御プログラムに従い前述した各種制御等を実行する。
【0034】
次に、ECU30が実行する燃料性状判定処理の内容について説明する。図2に「燃料性状判定ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0035】
まず、ステップ100で、ECU30は、エンジン1の始動を待って処理をステップ110へ移行する。ここで、ECU30は、イグニションスイッチ29からの始動信号に基づいてエンジン1の始動を判断する。この実施の形態で、ステップ100の処理を実行するECU30は、始動判断手段に相当する。
【0036】
ステップ110で、ECU30は、水温センサ27から出力される冷却水温THWの値を、始動時水温thw1として読み込む。この実施の形態で、ステップ110の処理を実行するECU30は、始動時水温読込手段に相当する。
【0037】
ステップ120で、ECU30は、燃料性状を判定するための前提条件が成立しているか否かを判断する。前提条件として、エンジン1が暖機終了前であること、タンク内圧PTが計測開始のための設定内圧P1以下であることが挙げられる。ECU30は、この前提条件を水温センサ27及び内圧センサ28からの信号に基づいて判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、処理をステップ110へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ130へ移行する。この実施の形態で、ステップ120の処理を実行するECU30は、前提条件判断手段に相当する。
【0038】
ステップ130で、ECU30は、内圧センサ28によりタンク内圧PTを測定し、検出されるタンク内圧PTが所定の設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する値を参照内圧P2として設定する。図3に重質燃料と軽質燃料につき、エンジン始動後のタンク内圧PTに係る変化をグラフに示す。このグラフからも明らかなように、軽質燃料のタンク内圧PTの立ち上がりは、重質燃料のそれよりも急激となることが分かる。ここで、設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する参照内圧P2の値は、重質燃料より軽質燃料の方で若干高くなる。従って、同一温度条件における参照内圧P2を、同一温度条件における相対的な燃料性状として得ることができる。ただし、同じ燃料性状であっても温度条件が異なれば参照内圧P2も変わることになり、絶対的な燃料性状を得るためには、温度条件をパラメータとして参照内圧P2を補正する必要がある。この実施の形態で、ステップ130の処理を実行するECU30は、本発明の参照内圧設定手段に相当する。
【0039】
ステップ140で、ECU30は、読み込まれた始動時水温thw1に基づいて内圧補正係数Pnを算出する。この実施の形態で、ECU30は、図4に示すような補正係数マップを参照することにより、始動時水温thw1に対する内圧補正係数Pnの値を算出する。この補正係数マップは、始動時水温thw1に対する内圧補正係数Pnの関係が予め実験的に確認されて設定されたものである。このマップから明らかなように、内圧補正係数Pnは、始動時水温thw1が上昇するに連れて小さくなる。この実施の形態で、ステップ140の処理を実行するECU30は、内圧補正係数算出手段に相当する。
【0040】
ステップ150で、ECU30は、参照内圧P2の値と内圧補正係数Pnの値との積を補正後タンク内圧PT1として算出する。この補正後タンク内圧PT1は、相対的な燃料性状を示す参照内圧P2を、燃料タンク9の温度条件を反映した内圧補正係数Pnにより補正したものであることから、絶対的な燃料性状を示すパラメータとして使用することができる。従って、この実施の形態で、ステップ150の処理を実行するECU30は、本発明の燃料性状判定手段に相当する。
【0041】
その後、ステップ160で、ECU30は、エンジン1の再始動を待って処理をステップ170へ移行する。ここで、ECU30は、イグニションスイッチ29から一旦停止信号を入力した後、再び始動信号を入力したときにエンジン1の再始動であると判断する。この実施の形態で、ステップ160の処理を実行するECU30は、再始動判断手段に相当する。
【0042】
ステップ170で、ECU30は、水温センサ27から出力される冷却水温THWの値を、再始動時水温thw2として読み込む。この実施の形態で、ステップ170の処理を実行するECU30は、再始動時水温読込手段に相当する。
【0043】
ステップ180で、ECU30は、図5に示すような補正量マップを参照することにより、補正後タンク内圧PT1及び再始動時水温thw2の値から燃料噴射量に関する噴射補正量Qcoを算出する。図5に示すように、この補正量マップは、再始動時水温thw2と、補正後タンク内圧PT1と、噴射補正量Qcoとの関係を表したものである。この補正量マップにおいて、補正後タンク内圧PT1(P2*Pn)が、「10」から「90」へ向けて高くなるに連れ、噴射補正量Qcoは少なくなる。これは、補正後タンク内圧PT1が低いほど燃料性状が重質で蒸発し難く、補正後タンク内圧PT1が高いほど燃料性状が軽質で蒸発し易いことに対応して、燃料噴射量を増量補正又は減量補正するための設定である。この補正量マップにおいて、再始動時水温thw2が、「−10」から「60」へ向けて高くなるに連れ、噴射補正量Qcoは少なくなる。これは、再始動時水温thw2が低いほど燃料の蒸発が少なく、再始動時水温thw2が高いほど燃料の蒸発が多くなることに対応して、燃料噴射量を増量補正又は減量補正するための設定である。すなわち、この実施の形態で、ECU30は、図5に示すように、軽質、中質及び重質に分類された中の一つを燃料性状として判定している。この実施の形態で、ステップ180の処理を実行するECU30は、噴射補正量算出手段に相当する。
【0044】
その後、ステップ190で、ECU30は、空燃比フィードバック(F/B)制御の実行中であるか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、噴射補正量Qcoの算出を続けるために処理をステップ170へ戻す。この判断結果が肯定である場合、ECU30はその後の処理を一旦終了する。
【0045】
図6に「燃料噴射制御ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0046】
先ず、ステップ200で、ECU30は、エンジン1の運転状態を読み込む。すなわち、ECU30は、各種センサ21〜27により検出される運転状態に関するスロットル開度TA、吸気圧PM、酸素濃度Ox、エンジン回転速度NE、基準位置信号GS及び冷却水温THWの値をそれぞれ読み込む。この実施の形態で、ステップ200の処理を実行するECU30は、運転状態読込手段に相当する。
【0047】
ステップ210で、ECU30は、読み込まれたエンジン運転状態に関する各種パラメータに基づき基本噴射量Qbseを算出する。この実施の形態で、ステップ210の処理を実行するECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて燃焼に関する手段の制御量に相当する基本噴射量Qbseを算出するための本発明の制御量算出手段に相当する。
【0048】
ステップ220で、ECU30は、上記した燃料性状判定ルーチンで算出された噴射補正量Qcoの値を読み込む。
【0049】
ステップ230で、ECU30は、算出された基本噴射量Qbseに噴射補正量Qcoを加算することにより、最終噴射量TAUを算出する。すなわち、ECU30は、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果に相当する補正後タンク内圧PT1と再始動時に検出される温度状態に相当する再始動時水温thw2とに基づいて上記算出された基本噴射量Qbseを補正する。この実施の形態で、このステップ230の処理を実行するECU30は、本発明の制御量補正手段に相当する。この実施の形態では、図5に示すように、噴射補正量Qcoは、燃料性状の判定結果が軽質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも少ない値に設定され、燃料性状の判定結果が重質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも多い値に設定される。これにより、燃料性状の判定結果が軽質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも基本噴射量Qbseを減量補正し、燃料性状の判定結果が重質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも基本噴射量Qbseを増量補正するようになっている。
【0050】
そして、ステップ240で、ECU30は、算出された最終噴射量TAUに基づいて各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の各気筒#1〜#6に対して燃料を噴射する。この実施の形態で、ステップ240の処理を実行するECU30は、補正された最終噴射量TAUに基づいて各インジェクタ7を制御するための本発明の制御手段に相当する。
【0051】
以上説明した本実施の形態の燃料性状判定装置によれば、ECU30は、エンジン1の始動時に、内圧センサ28により検出されるタンク内圧PTが所定の設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する値を参照内圧P2として設定する。ここで、燃料タンク9に貯留された燃料の性状が軽質(軽質燃料)である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧P2は相対的に高くなる。一方、燃料タンク9に貯留された燃料の性状が重質(重質燃料)である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧P2は相対的に低くなる。そして、ECU30は、上記設定される参照内圧P2と、始動時に水温センサ27で検出された始動時水温thw1に応じて求められる内圧補正係数Pnとに基づき、燃料性状の判定結果に相当する補正後タンク内圧PT1を得る。ここで、エンジン1の温度状態に相当する始動時水温thw1に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク9周りの温度状態に応じて適正な燃料性状判定が行われる。従って、燃料タンク9の参照内圧P2や始動時水温thw1というエンジン1の製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジン1の製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。すなわち、燃料性状に相当する補正後タンク内圧PT1を精度良く算出することができる。
【0052】
また、この実施の形態におけるエンジンの制御装置によれば、ECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて基本噴射量Qbseを算出する。また、ECU30は、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果である補正後タンク内圧PT1と再始動時水温thw2とに基づき噴射補正量Qcoを算出する。ECU30は、その基本噴射量Qbseを補正することにより、最終噴射量TAUを得る。そして、ECU30は、その最終噴射量TAUに基づき各インジェクタ7を制御することにより、燃料を噴射してエンジン1の各気筒#1〜#6へ燃料を供給するようにしている。従って、燃料性状の違いに拘わらず適正な最終噴射量TAUが得られて、各インジェクタ7が制御され、燃料燃焼に関する制御としての燃料噴射制御から、燃料性状の違いが除かれる。このため、燃料性状の影響を受けない高精度な燃料噴射制御を実現することができる。
【0053】
詳しくは、この実施の形態では、蒸発し易い軽質燃料では、基本噴射量Qbseが減量補正されるので、エンジン1の空燃比が必要以上にリッチ化することが抑えられる。また、蒸発し難い重質燃料では、基本噴射量Qbseが増量補正されるので、エンジン1の空燃比が必要以上にリーン化することが抑えられる。このため、燃料性状の相違に拘わらず、エンジン1において、空燃比を安定化させることができ、可燃混合気につき良好な燃焼性を確保することができ、排気エミッションを改善することができる。この結果、エンジン1の始動性及び始動後のドライバビリティを安定化させることができる。
【0054】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0055】
(1)前記実施の形態では、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25の検出値から読み込まれる吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により吸気量GAを換算した。これに対し、吸気量GAを、エアフローメータ等の吸気量検出手段により直接検出するようにしてもよい。
【0056】
(2)前記実施の形態では、各インジェクタ7を、燃料の燃焼に関する手段とし、基本噴射量Qbseを制御量として各インジェクタ7を制御するように構成した。これに対し、各点火プラグ10及びイグナイタ12を、燃料の燃焼に関する手段とし、点火時期進角量を制御量として各点火プラグ10及びイグナイタ12を制御するように構成してもよい。
【0057】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化の影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。
【0058】
請求項2又は3に記載の発明によれば、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化の影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。また、燃料性状の違いに拘わらず適正な制御量に基づいて燃焼に関連する手段が制御され、燃料の燃焼に関する制御から燃料性状の違いが除かれる。このため、燃料性状の影響を受けない高精度なエンジン制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】燃料性状判定ルーチンを示すフローチャート。
【図3】エンジン始動後のタンク内圧の変化を示すグラフ。
【図4】補正係数マップを示すグラフ。
【図5】補正量マップを示すグラフ。
【図6】燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
7 インジェクタ(燃焼関連手段)
9 燃料タンク
27 水温センサ(温度状態検出手段)
28 内圧センサ(内圧検出手段)
30 ECU(参照内圧設定手段、燃料性状判定手段、制御量算出手段、制御量補正手段、制御手段)
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンに供給される燃料の性状、特には、燃料の軽質・重質を判定するエンジンの燃料性状判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等のエンジンに供給される燃料には、揮発性の良好な軽質燃料の他に、揮発性の悪い重質燃料もある。このような燃料性状は、使用地域や使用環境によっても異なる。
【0003】
例えば、重質燃料を使用したエンジンでは、始動時に空燃比がリーン化して、始動性及び始動後の回転安定性が悪くなるおそれがある。また、軽質燃料を使用したエンジンでは、始動時に空燃比がリッチ化して、始動性及び始動後の回転安定性が悪くなるおそれがある。そのため、燃料性状はエンジン性能に直接影響する重要なパラメータとなっている。
【0004】
ここで、下記の特許文献1には、エンジンの燃料性状を判定する判定装置が提案され、記載されている。また、特許文献1には、燃料性状の判定結果をエンジンの燃料噴射量や点火時期に反映させるエンジン制御装置が提案され、記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された燃料性状判定装置は、エンジンの運転状態に基づいて燃料性状を判定するものである。この装置は、エンジン始動後、所定時間にわたるエンジンの回転数積算値と燃料噴射量積算値とのそれぞれを算出する積算値算出手段と、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求め、この積算値比と予め設定した判定しきい値との比較により燃料性状を判定する燃料性状判定手段とを備える。この構成により、燃料性状判定を、燃料噴射式の全タイプのエンジンに適用できるようにし、その汎用性を向上させるようにしている。
【0006】
また、特許文献1に記載されたエンジン制御装置は、エンジンの運転状態に基づいてエンジンに供給される燃料の性状を判定し、その燃料性状に応じて燃料噴射量と点火時期との少なくとも一方を補正するものである。この装置は、エンジン始動後、所定時間にわたるエンジンの回転数積算値と燃料噴射量積算値とのそれぞれを算出する積算値算出手段と、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求め、この積算値比と予め設定した判定しきい値との比較により燃料性状を判定する燃料性状判定手段と、燃料の揮発性が低いときには、燃料の揮発性が高いときに対して、燃料噴射量の増量補正と点火時期の進角補正との少なくとも一方を実行する制御手段とを備える。この構成によれば、燃料性状の相違に拘わらず常にエンジンの良好な燃焼性を確保できるようにし、排気エミッションを改善できるようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−214796号公報(第2−9頁,図1〜5)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載の燃料性状判定装置は、燃料性状を判定するために、エンジン回転数積算値と燃料噴射量積算値との比を求めている。しかし、エンジン回転数積算値は、エンジン回転数を検出することにより求められ、エンジンフリクションの影響を受けることから、エンジンの製品公差や経時変化の影響を受けることになり、常に正確な比を求めることができない。このため、エンジンの製品公差や経時変化が要因となって、燃料性状を精度良く判定することができないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載のエンジン制御装置は、上記と同様の理由で燃料性状の判定精度が阻害されることから、燃料噴射量の増量補正や点火時期の進角補正に誤差が生じ、その分だけ燃料噴射量や点火時期の制御精度が低下するという問題があった。
【0010】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することを可能としたエンジンの燃料性状判定装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、燃料性状の影響を受けない高精度なエンジン制御を実現することを可能としたエンジンの制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定装置であって、燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、エンジンの始動時に、検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、設定される参照内圧と始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段とを備えたことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、エンジンの始動時に、内圧検出手段により検出される燃料タンクの内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として参照内圧設定手段により設定される。ここで、燃料性状が軽質である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧は相対的に高くなる。一方、燃料性状が重質である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧は相対的に低くなる。そして、前記設定される参照内圧と始動時に温度状態検出手段により検出されるエンジンの温度状態とに基づき、燃料性状判定手段により燃料性状が判定される。ここで、エンジンの温度状態に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク周りの温度状態に応じた適正な判定が行われる。従って、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状の判定を行うことが可能となる。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定し、その判定された燃料性状に基づいて燃料の燃焼に関連する手段を制御する制御装置であって、燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、エンジンの始動時に、検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、設定される参照内圧と始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段と、エンジンの運転状態に基づいて燃焼に関連する手段の制御量を算出するための制御量算出手段と、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果と再始動時に検出される温度状態とに基づいて算出された制御量を補正するための制御量補正手段と、補正された制御量に基づいて燃焼に関連する手段を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、エンジンの始動時に、内圧検出手段により検出される燃料タンクの内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として参照内圧設定手段により設定される。ここで、燃料性状が軽質である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧は相対的に高くなる。一方、燃料性状が重質である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧は相対的に低くなる。そして、前記設定される参照内圧と始動時に温度状態検出手段により検出されるエンジンの温度状態とに基づき、燃料性状判定手段により燃料性状が判定される。ここで、エンジンの温度状態に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク周りの温度状態に応じた適正な判定が行われる。従って、燃料タンクに関する参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状の判定を行うことが可能となる。
ここで、制御量算出手段によりエンジンの運転状態に基づいて算出された制御量が、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果と再始動時に検出される温度状態とに基づいて制御量補正手段により補正される。そして、その補正された制御量に基づき燃焼に関連する手段が制御手段により制御される。従って、燃料性状の違いに拘わらず適正な制御量に基づいて燃焼に関連する手段が制御されることになり、燃料の燃焼に関する制御から、燃料性状の違いが除かれる。
【0015】
上記第2の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、燃料性状判定手段は、軽質、中質及び重質に分類された中の一つを燃料性状として判定することと、制御量補正手段は、燃料性状の判定結果が軽質である場合には、中質である場合よりも減量補正し、燃料性状の判定結果が重質である場合には、中質である場合よりも増量補正することとを備えたことを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、蒸発し易い軽質燃料では、制御量が減量補正されることから、例えば、制御量を燃料供給量とした場合、エンジンの空燃比が必要以上にリッチ化することが抑えられる。また、蒸発し難い重質な燃料性状では、制御量が増量補正されることから、例えば、制御量を燃料給料量とした場合、エンジンの空燃比が必要以上にリーン化することが抑えられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエンジンの燃料性状判定装置及びエンジンの燃料供給制御装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に、自動車に搭載されたエンジンシステムの概略構成図を示す。多気筒のエンジン1は周知の構造を有するレシプロタイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6気筒を有する。エンジン1は、吸気通路2を通じて吸入される燃料と空気との可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を動作させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るようになっている。
【0019】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を通じて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)GAを調節するために開閉される。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動する。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0020】
各気筒#1〜#6に対応して設けられた複数の燃料噴射弁(インジェクタ)7は、各気筒#1〜#6の吸気ポートに対して燃料を噴射する。これらインジェクタ7は、一つのデリバリパイプ8に接続される。デリバリパイプ8には、燃料タンク9に内蔵された燃料ポンプ13が燃料パイプ14を介して接続される。燃料パイプ14の途中には、燃料フィルタ15が設けられる。燃料タンク9の中の燃料は、燃料ポンプ13により燃料パイプ14へ吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へ圧送されて各インジェクタ7へ分配される。分配された燃料は、各インジェクタ7が作動することにより、吸気ポートへ噴射され、空気との可燃混合気を形成して各気筒#1〜#6に取り込まれる。この実施の形態で、各インジェクタ7は、本発明の燃料の燃焼に関連する手段(以下「燃焼関連手段」と言う。)に相当する。
【0021】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、すなわち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配する。各点火プラグ10による点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。つまり、イグナイタ12が制御されることにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ10の点火時期が制御される。
【0022】
排気通路3に設けられた触媒コンバータ16は、エンジン1から排出される排気を浄化するための三元触媒17を内蔵する。周知のように、三元触媒17は、排気中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行う。これにより排気中の有害ガス三成分(CO,HC、NOx)を、無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化する。三元触媒17の持つ排気清浄化特性は、エンジン1における設定空燃比により大きく変わる。すなわち、空燃比が薄いときには、燃焼後の酸素(O2)の量が多くなり、酸化作用が活発に、還元作用が不活発になる。この酸化と還元のバランスがとれたとき(理論空燃比に近付いたとき)、三元触媒17は最も有効に働くことになる。
【0023】
排気通路3において、三元触媒17の上流側にはフロントO2センサ23が、下流側にはリヤO2センサ24がそれぞれ設けられる。フロントO2センサ23は、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力する。リヤO2センサ24は、三元触媒17を通過した排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力するものであり、酸素濃度検出手段に相当する。
【0024】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ25は、クランクシャフト4の角速度、すなわち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転し外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ25は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴い電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。
【0025】
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ26が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てがそれぞれ燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ26から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力される。
【0026】
エンジン1に設けられ水温センサ27は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この冷却水温THWは、エンジン1の温度状態を反映している。
【0027】
燃料タンク9に設けられた内圧センサ28は、燃料タンク9の内圧(タンク内圧PT)を検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この内圧センサ28は、本発明の内圧検出手段に相当する。
【0028】
運転席に設けられたイグニションスイッチ29は、エンジン1を始動するために同スイッチ29がオンされたときには始動信号を、エンジン1を停止するために同スイッチ29がオフされたときは停止信号をそれぞれ出力する。
【0029】
この実施の形態で、前述した各種センサ21〜29は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する。この実施の形態で、吸気量GAは、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と、回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから換算される。従って、この実施の形態で、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25は、エンジン1に供給される空気量(吸気量GA)を検出するための空気量検出手段を構成する。
【0030】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、各種センサ21〜29から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これら入力信号に基づいて空燃比制御を含む燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、各インジェクタ7及びイグナイタ12をそれぞれ制御する。併せて、ECU30は、上記各種信号に基づいて燃料性状判定処理を実行し、その判定結果を燃料噴射制御に反映させる。
【0031】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7を制御することにより、燃料噴射量及び燃料噴射タイミングを制御することである。空燃比制御とは、少なくともフロントO2センサ23からの出力電圧Vに基づいて、各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の空燃比を理論空燃比等の所定の空燃比にフィードバック制御することである。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。
【0032】
燃料性状判定処理とは、燃料タンク9に貯留され、エンジン1に供給される燃料の性状を、水温センサ27及び内圧センサ28等からの信号に基づいて判定することである。
【0033】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の参照内圧設定手段、燃料性状判定手段、制御量算出手段、制御量補正手段及び制御手段を構成する。周知のようにECU30は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等を備える。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これら制御プログラムに従い前述した各種制御等を実行する。
【0034】
次に、ECU30が実行する燃料性状判定処理の内容について説明する。図2に「燃料性状判定ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0035】
まず、ステップ100で、ECU30は、エンジン1の始動を待って処理をステップ110へ移行する。ここで、ECU30は、イグニションスイッチ29からの始動信号に基づいてエンジン1の始動を判断する。この実施の形態で、ステップ100の処理を実行するECU30は、始動判断手段に相当する。
【0036】
ステップ110で、ECU30は、水温センサ27から出力される冷却水温THWの値を、始動時水温thw1として読み込む。この実施の形態で、ステップ110の処理を実行するECU30は、始動時水温読込手段に相当する。
【0037】
ステップ120で、ECU30は、燃料性状を判定するための前提条件が成立しているか否かを判断する。前提条件として、エンジン1が暖機終了前であること、タンク内圧PTが計測開始のための設定内圧P1以下であることが挙げられる。ECU30は、この前提条件を水温センサ27及び内圧センサ28からの信号に基づいて判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、処理をステップ110へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ130へ移行する。この実施の形態で、ステップ120の処理を実行するECU30は、前提条件判断手段に相当する。
【0038】
ステップ130で、ECU30は、内圧センサ28によりタンク内圧PTを測定し、検出されるタンク内圧PTが所定の設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する値を参照内圧P2として設定する。図3に重質燃料と軽質燃料につき、エンジン始動後のタンク内圧PTに係る変化をグラフに示す。このグラフからも明らかなように、軽質燃料のタンク内圧PTの立ち上がりは、重質燃料のそれよりも急激となることが分かる。ここで、設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する参照内圧P2の値は、重質燃料より軽質燃料の方で若干高くなる。従って、同一温度条件における参照内圧P2を、同一温度条件における相対的な燃料性状として得ることができる。ただし、同じ燃料性状であっても温度条件が異なれば参照内圧P2も変わることになり、絶対的な燃料性状を得るためには、温度条件をパラメータとして参照内圧P2を補正する必要がある。この実施の形態で、ステップ130の処理を実行するECU30は、本発明の参照内圧設定手段に相当する。
【0039】
ステップ140で、ECU30は、読み込まれた始動時水温thw1に基づいて内圧補正係数Pnを算出する。この実施の形態で、ECU30は、図4に示すような補正係数マップを参照することにより、始動時水温thw1に対する内圧補正係数Pnの値を算出する。この補正係数マップは、始動時水温thw1に対する内圧補正係数Pnの関係が予め実験的に確認されて設定されたものである。このマップから明らかなように、内圧補正係数Pnは、始動時水温thw1が上昇するに連れて小さくなる。この実施の形態で、ステップ140の処理を実行するECU30は、内圧補正係数算出手段に相当する。
【0040】
ステップ150で、ECU30は、参照内圧P2の値と内圧補正係数Pnの値との積を補正後タンク内圧PT1として算出する。この補正後タンク内圧PT1は、相対的な燃料性状を示す参照内圧P2を、燃料タンク9の温度条件を反映した内圧補正係数Pnにより補正したものであることから、絶対的な燃料性状を示すパラメータとして使用することができる。従って、この実施の形態で、ステップ150の処理を実行するECU30は、本発明の燃料性状判定手段に相当する。
【0041】
その後、ステップ160で、ECU30は、エンジン1の再始動を待って処理をステップ170へ移行する。ここで、ECU30は、イグニションスイッチ29から一旦停止信号を入力した後、再び始動信号を入力したときにエンジン1の再始動であると判断する。この実施の形態で、ステップ160の処理を実行するECU30は、再始動判断手段に相当する。
【0042】
ステップ170で、ECU30は、水温センサ27から出力される冷却水温THWの値を、再始動時水温thw2として読み込む。この実施の形態で、ステップ170の処理を実行するECU30は、再始動時水温読込手段に相当する。
【0043】
ステップ180で、ECU30は、図5に示すような補正量マップを参照することにより、補正後タンク内圧PT1及び再始動時水温thw2の値から燃料噴射量に関する噴射補正量Qcoを算出する。図5に示すように、この補正量マップは、再始動時水温thw2と、補正後タンク内圧PT1と、噴射補正量Qcoとの関係を表したものである。この補正量マップにおいて、補正後タンク内圧PT1(P2*Pn)が、「10」から「90」へ向けて高くなるに連れ、噴射補正量Qcoは少なくなる。これは、補正後タンク内圧PT1が低いほど燃料性状が重質で蒸発し難く、補正後タンク内圧PT1が高いほど燃料性状が軽質で蒸発し易いことに対応して、燃料噴射量を増量補正又は減量補正するための設定である。この補正量マップにおいて、再始動時水温thw2が、「−10」から「60」へ向けて高くなるに連れ、噴射補正量Qcoは少なくなる。これは、再始動時水温thw2が低いほど燃料の蒸発が少なく、再始動時水温thw2が高いほど燃料の蒸発が多くなることに対応して、燃料噴射量を増量補正又は減量補正するための設定である。すなわち、この実施の形態で、ECU30は、図5に示すように、軽質、中質及び重質に分類された中の一つを燃料性状として判定している。この実施の形態で、ステップ180の処理を実行するECU30は、噴射補正量算出手段に相当する。
【0044】
その後、ステップ190で、ECU30は、空燃比フィードバック(F/B)制御の実行中であるか否かを判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、噴射補正量Qcoの算出を続けるために処理をステップ170へ戻す。この判断結果が肯定である場合、ECU30はその後の処理を一旦終了する。
【0045】
図6に「燃料噴射制御ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定期間毎に周期的に実行する。
【0046】
先ず、ステップ200で、ECU30は、エンジン1の運転状態を読み込む。すなわち、ECU30は、各種センサ21〜27により検出される運転状態に関するスロットル開度TA、吸気圧PM、酸素濃度Ox、エンジン回転速度NE、基準位置信号GS及び冷却水温THWの値をそれぞれ読み込む。この実施の形態で、ステップ200の処理を実行するECU30は、運転状態読込手段に相当する。
【0047】
ステップ210で、ECU30は、読み込まれたエンジン運転状態に関する各種パラメータに基づき基本噴射量Qbseを算出する。この実施の形態で、ステップ210の処理を実行するECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて燃焼に関する手段の制御量に相当する基本噴射量Qbseを算出するための本発明の制御量算出手段に相当する。
【0048】
ステップ220で、ECU30は、上記した燃料性状判定ルーチンで算出された噴射補正量Qcoの値を読み込む。
【0049】
ステップ230で、ECU30は、算出された基本噴射量Qbseに噴射補正量Qcoを加算することにより、最終噴射量TAUを算出する。すなわち、ECU30は、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果に相当する補正後タンク内圧PT1と再始動時に検出される温度状態に相当する再始動時水温thw2とに基づいて上記算出された基本噴射量Qbseを補正する。この実施の形態で、このステップ230の処理を実行するECU30は、本発明の制御量補正手段に相当する。この実施の形態では、図5に示すように、噴射補正量Qcoは、燃料性状の判定結果が軽質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも少ない値に設定され、燃料性状の判定結果が重質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも多い値に設定される。これにより、燃料性状の判定結果が軽質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも基本噴射量Qbseを減量補正し、燃料性状の判定結果が重質燃料である場合には、中質燃料である場合よりも基本噴射量Qbseを増量補正するようになっている。
【0050】
そして、ステップ240で、ECU30は、算出された最終噴射量TAUに基づいて各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の各気筒#1〜#6に対して燃料を噴射する。この実施の形態で、ステップ240の処理を実行するECU30は、補正された最終噴射量TAUに基づいて各インジェクタ7を制御するための本発明の制御手段に相当する。
【0051】
以上説明した本実施の形態の燃料性状判定装置によれば、ECU30は、エンジン1の始動時に、内圧センサ28により検出されるタンク内圧PTが所定の設定内圧P1から所定時間T1だけ経過した後に達する値を参照内圧P2として設定する。ここで、燃料タンク9に貯留された燃料の性状が軽質(軽質燃料)である場合、燃料が相対的に蒸発し易く、設定される参照内圧P2は相対的に高くなる。一方、燃料タンク9に貯留された燃料の性状が重質(重質燃料)である場合、燃料が相対的に蒸発し難く、設定される参照内圧P2は相対的に低くなる。そして、ECU30は、上記設定される参照内圧P2と、始動時に水温センサ27で検出された始動時水温thw1に応じて求められる内圧補正係数Pnとに基づき、燃料性状の判定結果に相当する補正後タンク内圧PT1を得る。ここで、エンジン1の温度状態に相当する始動時水温thw1に基づいて燃料性状が判定されることから、燃料タンク9周りの温度状態に応じて適正な燃料性状判定が行われる。従って、燃料タンク9の参照内圧P2や始動時水温thw1というエンジン1の製品公差や経時変化に影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジン1の製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。すなわち、燃料性状に相当する補正後タンク内圧PT1を精度良く算出することができる。
【0052】
また、この実施の形態におけるエンジンの制御装置によれば、ECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて基本噴射量Qbseを算出する。また、ECU30は、始動時以降の再始動時に、燃料性状の判定結果である補正後タンク内圧PT1と再始動時水温thw2とに基づき噴射補正量Qcoを算出する。ECU30は、その基本噴射量Qbseを補正することにより、最終噴射量TAUを得る。そして、ECU30は、その最終噴射量TAUに基づき各インジェクタ7を制御することにより、燃料を噴射してエンジン1の各気筒#1〜#6へ燃料を供給するようにしている。従って、燃料性状の違いに拘わらず適正な最終噴射量TAUが得られて、各インジェクタ7が制御され、燃料燃焼に関する制御としての燃料噴射制御から、燃料性状の違いが除かれる。このため、燃料性状の影響を受けない高精度な燃料噴射制御を実現することができる。
【0053】
詳しくは、この実施の形態では、蒸発し易い軽質燃料では、基本噴射量Qbseが減量補正されるので、エンジン1の空燃比が必要以上にリッチ化することが抑えられる。また、蒸発し難い重質燃料では、基本噴射量Qbseが増量補正されるので、エンジン1の空燃比が必要以上にリーン化することが抑えられる。このため、燃料性状の相違に拘わらず、エンジン1において、空燃比を安定化させることができ、可燃混合気につき良好な燃焼性を確保することができ、排気エミッションを改善することができる。この結果、エンジン1の始動性及び始動後のドライバビリティを安定化させることができる。
【0054】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0055】
(1)前記実施の形態では、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25の検出値から読み込まれる吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により吸気量GAを換算した。これに対し、吸気量GAを、エアフローメータ等の吸気量検出手段により直接検出するようにしてもよい。
【0056】
(2)前記実施の形態では、各インジェクタ7を、燃料の燃焼に関する手段とし、基本噴射量Qbseを制御量として各インジェクタ7を制御するように構成した。これに対し、各点火プラグ10及びイグナイタ12を、燃料の燃焼に関する手段とし、点火時期進角量を制御量として各点火プラグ10及びイグナイタ12を制御するように構成してもよい。
【0057】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化の影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。
【0058】
請求項2又は3に記載の発明によれば、燃料タンクの参照内圧やエンジン温度状態というエンジンの製品公差や経時変化の影響を受けないパラメータにより燃料性状を判定することが可能となる。このため、エンジンの製品公差や経時変化に拘わらず燃料性状を精度良く判定することができる。また、燃料性状の違いに拘わらず適正な制御量に基づいて燃焼に関連する手段が制御され、燃料の燃焼に関する制御から燃料性状の違いが除かれる。このため、燃料性状の影響を受けない高精度なエンジン制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】燃料性状判定ルーチンを示すフローチャート。
【図3】エンジン始動後のタンク内圧の変化を示すグラフ。
【図4】補正係数マップを示すグラフ。
【図5】補正量マップを示すグラフ。
【図6】燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
7 インジェクタ(燃焼関連手段)
9 燃料タンク
27 水温センサ(温度状態検出手段)
28 内圧センサ(内圧検出手段)
30 ECU(参照内圧設定手段、燃料性状判定手段、制御量算出手段、制御量補正手段、制御手段)
Claims (3)
- 燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定装置であって、
前記燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、
前記エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、
前記エンジンの始動時に、前記検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、
前記設定される参照内圧と前記始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段と
を備えたことを特徴とするエンジンの燃料性状判定装置。 - 燃料タンクに貯留されエンジンに供給される燃料の性状を判定し、その判定された燃料性状に基づいて前記燃料の燃焼に関連する手段を制御する制御装置であって、
前記燃料タンクの内圧を検出するための内圧検出手段と、
前記エンジンの温度状態を検出するための温度状態検出手段と、
前記エンジンの始動時に、前記検出される内圧が所定の設定内圧から所定時間経過後に達する値を参照内圧として設定するための参照内圧設定手段と、
前記設定される参照内圧と前記始動時に検出される温度状態とに基づいて燃料性状を判定するための燃料性状判定手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて前記燃焼に関連する手段の制御量を算出するための制御量算出手段と、
前記始動時以降の再始動時に、前記燃料性状の判定結果と前記再始動時に検出される温度状態とに基づいて前記算出された制御量を補正するための制御量補正手段と、
前記補正された制御量に基づいて前記燃焼に関連する手段を制御するための制御手段と
を備えたことを特徴とするエンジンの制御装置。 - 前記燃料性状判定手段は、軽質、中質及び重質に分類された中の一つを燃料性状として判定することと、
前記制御量補正手段は、前記燃料性状の判定結果が軽質である場合には、中質である場合よりも減量補正し、前記燃料性状の判定結果が重質である場合には、中質である場合よりも増量補正することと
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。
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JP2002377358A JP2004204815A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | エンジンの燃料性状判定装置 |
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KR100747180B1 (ko) | 2005-10-10 | 2007-08-07 | 현대자동차주식회사 | 차량의 저품질 연료 판정 방법 |
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2002
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