JP2004204809A - エンジンの触媒劣化診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いを反映してより正確な劣化診断を行うこと。
【解決手段】触媒劣化診断装置は、触媒17の下流側の酸素濃度を検出するO2センサ24と、エンジン1に供給される空気量を検出するための吸気圧センサ22及び回転速度センサ25と、電子制御装置(ECU)30とを備える。ECU30は、運転状態に基づき診断条件成立を判断したとき、燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を計測し、燃料リカバ後の酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を算出する。ECU30は、燃料カット直前の空気量の検出値と、継続時間の計測値とに基づき判定値を設定する。ECU30は、上記上昇勾配を上記判定値と比較して触媒劣化を診断する。
【選択図】 図1
【解決手段】触媒劣化診断装置は、触媒17の下流側の酸素濃度を検出するO2センサ24と、エンジン1に供給される空気量を検出するための吸気圧センサ22及び回転速度センサ25と、電子制御装置(ECU)30とを備える。ECU30は、運転状態に基づき診断条件成立を判断したとき、燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を計測し、燃料リカバ後の酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を算出する。ECU30は、燃料カット直前の空気量の検出値と、継続時間の計測値とに基づき判定値を設定する。ECU30は、上記上昇勾配を上記判定値と比較して触媒劣化を診断する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの排気通路に設けられる触媒の劣化を診断するエンジンの触媒劣化診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の触媒劣化診断装置として、例えば、下記の特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された装置は、触媒の下流側に配設されたリア空燃比センサの出力値に基づいて触媒の劣化を診断する。この装置は、運転状態に基づき診断条件が成立したか否かを判断する診断条件判断手段と、診断条件が成立しているときに、燃料カットからの燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間に基づき触媒の劣化を診断する診断手段とを備える。この診断手段は、燃料カットの継続時間が長いほど、長い時間の判定値を設定し、燃料カットから燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間が上記判定値よりも短いとき、触媒の劣化と診断する。ここでは、燃料カットの継続時間に応じて判定値を設定しているので、その継続時間の違いにより異なる触媒酸素貯蔵量の差を補償し、触媒の劣化を正確に診断するようにしている。
【0003】
この劣化診断の原理を以下に説明する。エンジンで燃料カットが行われると、触媒の持つ酸素貯蔵能力により触媒に多くの酸素が貯蔵される。ここで、触媒の劣化が進行すると、その酸素貯蔵能力が低下し、触媒に貯蔵される酸素量が減少する。このため、触媒の劣化が進行するにしたがい、燃料カットからの燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間が短くなる。この時間を計測して判定値と比較することにより、触媒の劣化を判定することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−328930号公報(第2−8頁,図1〜4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の特許文献1に記載の触媒劣化診断装置は、燃料カットの継続時間に応じて判定値を設定することにより、触媒の酸素貯蔵量の差を補償するようにしている。しかし、触媒による酸素貯蔵量は、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いによっても変わる。これは、供給される空気量の違いにより触媒の温度が変わり、触媒の酸素貯蔵能力が変わるためである。従って、特許文献1に記載の装置では、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いを考慮したより正確な診断を行うことができなかった。
【0006】
また、特許文献1に記載の装置は、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間の計測を、燃料リカバ時から開始している。ところが、燃料リカバ時におけるセンサ出力値は、通常は零に近い値を示すが、この出力値がリア空燃比センサの製品公差により多少ばらつくことがある。そうすると、センサ出力値が設定値に達するまでの時間の計測開始時期にずれが出て、その分だけ計測時間に誤差が生じ、誤って劣化診断が行われるおそれがあった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いを反映してより正確な劣化診断を行うことを可能としたエンジンの触媒劣化診断装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、酸素濃度の検出値に係る上昇勾配をより正確に算出することにより劣化診断の精度を向上させることを可能としたエンジンの触媒劣化診断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの排気通路に設けられる触媒の劣化を診断する触媒劣化診断装置であって、触媒の下流側における酸素濃度を検出するための酸素検出手段と、エンジンに供給される空気量を検出するための空気量検出手段と、エンジンの運転状態に基づき診断条件の成立を判断するための診断条件判断手段と、診断条件の成立が判断されたとき、エンジンの燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を計測するための計時手段と、燃料リカバ後における酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を算出するための上昇勾配算出手段と、燃料カット直前における空気量の検出値と、継続時間の計測値とに基づき判定値を設定するための判定値設定手段と、算出された上昇勾配を設定された判定値と比較することにより触媒の劣化を診断するための診断手段とを備えたことを趣旨とする。
ここで、「燃料カット」とは、エンジンに対する燃料供給を遮断する処理であり、一般には、エンジンが減速されるときに実行される。「燃料リカバ」とは、燃料カットから燃料供給を回復する処理であり、一般には、エンジンが減速から加速へ移行するときに実行される。
【0009】
上記発明の構成によれば、運転時にエンジンに供給される空気量が空気量検出手段により検出される。また、排気通路に設けられた触媒の下流側では、酸素濃度検出手段により酸素濃度が検出される。ここで、診断条件判断手段により、エンジンの運転状態に基づき診断条件の成立が判断されると、エンジンの燃料カットから燃料リカバまでの継続時間が計時手段により計測される。そして、上昇勾配算出手段により、燃料リカバ後において上記検出される酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配が算出される。ここで、燃料カット直前において上記検出された空気量の検出値と、上記継続時間の計測値とに基づいて判定値設定手段により判定値が設定される。そして、診断手段により、上昇勾配が判定値と比較されることにより触媒の劣化が診断される。従って、上昇勾配と比較される判定値が、燃料カットの継続時間と共に、燃料カット直前に触媒に供給された空気量を要素として設定されることから、実際に触媒に貯蔵された酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となる。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上昇勾配算出手段は、燃料リカバ後に、酸素濃度の検出値が所定の低設定値から所定の高設定値に達するまでの上昇時間を計測し、高設定値と低設定値との差を上昇時間の計測値により除算することにより上昇勾配を算出することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、上昇勾配を算出するための上昇時間が、所定の低設定値から所定の高設定値までの間で計測される。従って、請求項1に記載の発明の作用に加え、酸素濃度検出手段の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値と高設定値が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間の計測誤差がなくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエンジンの触媒劣化診断装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に、自動車に搭載されたエンジンシステムの概略構成図を示す。多気筒のエンジン1は周知の構造を有するレシプロタイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6気筒を有する。エンジン1は、吸気通路2を通じて吸入される燃料と空気との可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を動作させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るようになっている。
【0014】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を通じて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)GAを調節するために開閉される。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動する。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0015】
各気筒#1〜#6に対応して設けられた複数の燃料噴射弁(インジェクタ)7は、各気筒#1〜#6の吸気ポートに対して燃料を噴射する。これらインジェクタ7は、一つのデリバリパイプ8に接続される。デリバリパイプ8には、燃料タンク9に内蔵された燃料ポンプ13が燃料パイプ14を介して接続される。燃料パイプ14の途中には、燃料フィルタ15が設けられる。燃料タンク9の中の燃料は、燃料ポンプ13により燃料パイプ14へ吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へ圧送されて各インジェクタ7へ分配される。分配された燃料は、各インジェクタ7が作動することにより、吸気ポートへ噴射され、空気との可燃混合気を形成して各気筒#1〜#6に取り込まれる。
【0016】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、すなわち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配する。各点火プラグ10による点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。つまり、イグナイタ12が制御されることにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ10の点火時期が制御される。
【0017】
排気通路3に設けられた触媒コンバータ16は、エンジン1から排出される排気を浄化するための三元触媒17を内蔵する。周知のように、三元触媒17は、排気中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行う。これにより排気中の有害ガス三成分(CO,HC、NOx)を、無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化する。三元触媒17の持つ排気清浄化特性は、エンジン1における設定空燃比により大きく変わる。すなわち、空燃比が薄いときには、燃焼後の酸素(O2)の量が多くなり、酸化作用が活発に、還元作用が不活発になる。この酸化と還元のバランスがとれたとき(理論空燃比に近付いたとき)、三元触媒17は最も有効に働くことになる。
【0018】
排気通路3において、三元触媒17の上流側にはフロントO2センサ23が、下流側にはリヤO2センサ24がそれぞれ設けられる。フロントO2センサ23は、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力する。リヤO2センサ24は、三元触媒17を通過した排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力するものであり、本発明の酸素濃度検出手段に相当する。
【0019】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ25は、クランクシャフト4の角速度、すなわち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転し外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ25は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴い電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。
【0020】
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ26が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てがそれぞれ燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ26から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力される。
【0021】
エンジン1に設けられ水温センサ27は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この冷却水温THWは、エンジン1の温度状態を反映している。
【0022】
この実施の形態で、前述した各種センサ21〜27は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する。この実施の形態で、吸気量GAは、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と、回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから換算される。従って、この実施の形態で、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25は、エンジン1に供給される空気量(吸気量GA)を検出するための本発明の空気量検出手段を構成する。
【0023】
運転席に設けられた警告ランプ18は、三元触媒17の劣化を運転者に警告するために点灯される。
【0024】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、各種センサ21〜27から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これら入力信号に基づいて空燃比制御を含む燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、各インジェクタ7及びイグナイタ12をそれぞれ制御する。併せて、ECU30は、上記各種信号に基づいて触媒劣化診断処理を実行し、警告ランプ18を制御する。
【0025】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7を制御することにより、燃料噴射量及び燃料噴射タイミングを制御することである。空燃比制御とは、少なくともフロントO2センサ23からの出力電圧Vに基づいて、各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の空燃比を理論空燃比等の所定の空燃比にフィードバック制御することである。この燃料噴射制御は、「燃料カット」の処理を含む。「燃料カット」とは、エンジン1に対する燃料供給を遮断するために各インジェクタ7からの燃料噴射を強制的に停止させる処理である。この実施の形態では、アクセルペダル6の踏み込みが解除されて、スロットルセンサ21によりスロットルバルブ5の全閉が検出されたときに、燃料カットの処理が実行される。「燃料リカバ」とは、燃料カットから燃料供給を回復するために各インジェクタ7からの燃料噴射を再開させる処理である。この実施の形態では、アクセルペダル6が再び踏み込まれて、スロットルセンサ21により全閉以外のスロットル開度TAが検出されたときに、燃料リカバの処理が実行される。この実施の形態では、燃料噴射制御において、燃料カットが実行されるときに、燃料カットフラグXFCが「ON」となり、燃料リカバとなるときに、燃料カットフラグXFCが「ON」から「OFF]に戻る。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。
【0026】
触媒劣化診断処理とは、エンジン1の空燃比が所定の理論空燃比にフィードバック制御されるときに実行されるものであり、吸気圧センサ22、フロントO2センサ23、リヤO2センサ24、回転速度センサ25及び水温センサ27からの各種信号に基づいて三元触媒17の劣化を診断することである。
【0027】
三元触媒17は、それを通過する排気中の酸素濃度Oxが高いときに(排気中の空燃比がリーンとなるときに)排気中の酸素を吸着し、その反対に、排気中の酸素濃度Oxが低いときに(排気中の空燃比がリッチとなるときに)吸着した酸素を放出する酸素貯蔵作用を示す。このため、三元触媒17の上流側では、排気中の酸素濃度Oxが比較的短い周期で高濃度と低濃度との間を変動する。このとき、三元触媒17に劣化がなければ(正常時)、三元触媒17の下流側における排気中の酸素濃度Oxは、同触媒17の酸素貯蔵作用により比較的長い周期で高濃度と低濃度との間を緩やかに変動する。これに対し、三元触媒17に劣化があると(異常時)、同触媒17の酸素貯蔵能力が低下することから、同触媒17の下流側における排気中の酸素濃度Oxは、比較的短い周期で高濃度と低濃度との間を急峻に変動する。
【0028】
ここで、エンジン1の減速時に燃料カットが行われると、エンジン1の各気筒#1〜#6で可燃混合気が燃焼しなくなり、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxが比較的高くなる。このため、ほとんどの酸素が三元触媒17に吸着され、同触媒17の下流側では、酸素濃度Oxがほぼ最低値に近くなる。その後、燃料カットから燃料リカバとなると、三元触媒17に吸着されていた酸素が放出されはじめ、同触媒17の下流側では、排気中の酸素濃度Oxが上昇し始める。このとき、三元触媒17に劣化がなければ、上記したように同触媒17の下流側で酸素濃度Oxが緩やかに変動することから、その立ち上がり時の上昇勾配は相対的に小さくなる。これに対し、三元触媒17に劣化があれば、上記したように同触媒17の下流側で酸素濃度Oxが急峻に変動することから、その立ち上がり時の上昇勾配は相対的に大きくなる。従って、燃料リカバ後におけるリヤO2センサ24の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を所定の判定値と比較することにより、三元触媒17の劣化を診断することができる。この実施の形態では、上記原理に基づいて三元触媒17の劣化を診断する。
【0029】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の診断条件判断手段、計時手段、上昇勾配算出手段、判定値設定手段及び診断手段を構成する。周知のようにECU30は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等を備える。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これら制御プログラムに従い前述した各種制御等を実行する。
【0030】
次に、ECU30が実行する触媒劣化診断処理の内容について説明する。図2に「触媒劣化診断ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0031】
まず、ステップ100で、ECU30は、触媒劣化の診断条件が成立したか否かを判断する。ECU30は、この診断条件成立をエンジン1の運転状態に基づいて判断する。具体的には、ECU30は、エンジン1の暖機が完了したことを診断条件の一つとして、その成立を水温センサ27により検出される冷却水温THWの値に基づいて判断する。併せて、ECU30は、空燃比フィードバック制御が実行中であることを診断条件の一つとして、その成立をフロント及びリヤのO2センサ23,24により検出される酸素濃度Oxの出力電圧Vに基づいて判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理を繰り返す。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ110へ移行する。この実施の形態で、ステップ100の処理を実行するECU30は、本発明の診断条件判断手段に相当する。
【0032】
ステップ110で、ECU30は、燃料カット中であるか否かを判断する。ECU30は、この判断を、上記した燃料カットフラグXFCを参照して行う。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ120へ移行する。この実施の形態で、ステップ110の処理を実行するECU30は、燃料カット判断手段に相当する。
【0033】
ステップ120で、ECU30は、燃料カット開始直前の吸気量GAの値を読み込む。この実施の形態では、上記した燃料噴射制御にて、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから吸気量GAが換算される。ECU30は、この換算された吸気量GAの値を読み込む。
【0034】
ステップ130で、ECU30は、燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を燃料カット継続時間TCとして計測する。この実施の形態で、ステップ130の処理を実行するECU30は、本発明の計時手段に相当する。
【0035】
ステップ140で、ECU30は、燃料カットからの燃料リカバであるか否かを判断する。ECU30は、この判断を、上記した燃料カットフラグXFCを参照して行う。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ150へ移行する。この実施の形態で、ステップ140の処理を実行するECU30は、燃料リカバ判断手段に相当する。
【0036】
ステップ150で、ECU30は、燃料リカバ後にリヤO2センサ24により検出される酸素濃度Oxの出力電圧Vが、所定の低設定値V1から所定の高設定値V2に達するまでの上昇時間T1を計測する。この実施の形態で、ステップ150の処理を実行するECU30は、上昇時間計測手段に相当する。
【0037】
ステップ160で、ECU30は、上記した高設定値V2と低設定値V1との差を、計測された上昇時間T1の計測値により除算することにより上昇勾配VSを算出する。この実施の形態で、ステップ160の処理を実行するECU30は、除算手段に相当する。また、ステップ150,160の処理を実行するECU30は、燃料リカバ後における酸素濃度Oxの検出値につき単位時間当たりの上昇勾配VSを算出するための本発明の上昇勾配算出手段に相当する。
【0038】
ステップ170で、ECU30は、図3に示すような異常判定マップを参照することにより、燃料カット直前における吸気量GAの検出値(換算値)と、燃料カット継続時間TCの計測値とに基づき異常判定値DAを設定する。図3に示すように、異常判定マップは、吸気量GAと燃料カット継続時間TCとの関係をリヤO2センサ24による出力電圧Vの勾配で表したものである。この実施の形態で、ステップ170の処理を実行するECU30は、本発明の判定値設定手段に相当する。
【0039】
その後、ステップ180で、ECU30は、算出された上昇勾配VSの値が設定された異常判定値DAより大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、三元触媒17に異常があるものと判定し、処理をステップ190へ移行する。この実施の形態で、ステップ180の処理を実行するECU30は、本発明の診断手段に相当する。
【0040】
ステップ190で、ECU30は、バックアップRAMに異常コードを記録する。この異常コードは、エンジン1の保守点検時にバックアップRAMから他の記録データとともに読み出されることにより、三元触媒17に異常があることを作業者に知らせることができる。また、ステップ200で、ECU30は、異常を警報するために警告ランプ18を点灯し、その後の処理を一旦終了する。このステップ190,200の処理を実行するECU30は、三元触媒17に異常があることを報知するための異常報知手段に相当する。
【0041】
一方、ステップ180の判断結果が否定である場合、ステップ210で、ECU30は、図4に示すような正常判定マップを参照することにより、燃料カット直前における吸気量GAの検出値(換算値)と、燃料カット継続時間TCの計測値とに基づき正常判定値DNを設定する。図4に示すように、正常判定マップも、吸気量GAと燃料カット継続時間TCとの関係をリヤO2センサ24による出力電圧Vの勾配で表したものである。この実施の形態でも、ステップ210の処理を実行するECU10は、本発明の判定値設定手段に相当する。
【0042】
その後、ステップ220で、ECU30は、算出された上昇勾配VSの値が設定された正常判定値DNより大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、三元触媒17が正常であると判定し、処理をステップ230へ移行する。この実施の形態で、ステップ220の処理を実行するECU30は、本発明の診断手段に相当する。
【0043】
そして、ステップ230で、ECU30は、バックアップRAMに正常コードを記録する。この正常コードは、エンジン1の保守点検時にバックアップRAMから他の記録データとともに読み出されることにより、三元触媒17が正常であることを作業者に知らせることができる。また、ステップ240で、ECU30は、正常であることを知らせるために警告ランプ18を消灯し、その後の処理を一旦終了する。この実施の形態で、ステップ230,240の処理を実行するECU30は、三元触媒17が正常であることを報知するための正常報知手段に相当する。
【0044】
一方、ステップ220の判断結果が否定である場合、ECU30は、異常・正常の判定を保留するために処理をステップ100へ戻す。
【0045】
図5(a)〜(e)に、燃料カットフラグXFC、吸気量GA、燃料カット継続時間TC、正常時及び異常時におけるリヤO2センサ24の出力電圧の挙動をタイムチャートに示す。
【0046】
図5(a)に示すように、燃料カットが開始されて燃料カットフラグXFCが「ON」となると、図5(b)に示すように、吸気量GAが一旦減少する。同時に、図5(c)に示すように、燃料カット継続時間TCの計測が開始される。また、図5(d),(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vも一旦低下する。
【0047】
その後、図5(a)に示すように、燃料リカバとなり燃料カットフラグXFCが「OFF」になると、図5(b)に示すように、その後の吸気量GAが徐々に増加する。同時に、図5(c)に示すように、燃料カット継続時間TCの計測が終了する。また、図5(d),(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vが上昇する。
【0048】
上昇した出力電圧は、低設定値V1から高設定値V2に達するまでの上昇時間T1が計測される。そして、この高設定値V2と低設定値V1との差を上昇時間T1の計測値により除算することにより上昇勾配VSが算出される。正常時には、図5(d)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vの上昇が緩やかとなることから、その上昇勾配VSは相対的に小さくなる。これに対し、異常時には、図5(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vの上昇が急峻となることから、その上昇勾配VSは相対的に大きくなる。
【0049】
以上説明した本実施の形態の触媒劣化診断装置によれば、運転時にエンジン1に供給される空気量GAが、それぞれ検出される吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により換算される。また、三元触媒17の下流側では、排気中の酸素濃度Oxが、リヤO2センサ24により検出される。ここで、ECU30により、エンジン1の運転状態に基づいて劣化診断条件の成立が判断されると、燃料カットから燃料リカバまでの燃料カット継続時間TCがECU30により計測される。そして、燃料リカバ後に、酸素濃度Oxの出力電圧Vにつき単位時間当たりの上昇勾配VSがECU30により算出される。
【0050】
ここで、燃料カット直前に得られた空気量GAの値と、計測された燃料カット継続時間TCの値とに基づき、ECU30により異常判定値DA及び正常判定値DNが設定される。そして、上記算出された上昇勾配VSの値が上記設定された異常判定値DA及び正常判定値DNと比較されることにより、三元触媒17が劣化しているか否か、すなわち異常か正常かが診断される。従って、上昇勾配VSと比較される異常判定値DA及び正常判定値DNが、燃料カット継続時間TCに加えて、燃料カット直前に三元触媒17に供給された吸気量GAを要素として設定されることから、実際に三元触媒17に貯蔵される酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となる。この結果、従来例の触媒劣化診断装置とは異なり、燃料カット直前に三元触媒17に供給された空気量の違いを反映してより正確な劣化診断を行うことができる。
【0051】
また、この実施の形態の触媒劣化診断装置によれば、上昇勾配VSを算出するための上昇時間T1が、所定の低設定値V1から所定の高設定値V2までの間で計測される。従って、リアO2センサ24の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値V1と高設定値V2が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間T1の計測誤差がなくなる。すなわち、従来例の触媒劣化診断装置のように、センサ出力値が設定値に達するまでの時間の計測開始時期にずれが出て、燃料リカバ後の計測時間に誤差が生じるということがなくなる。このため、上昇勾配VSをより正確に算出することができ、三元触媒17の劣化診断の精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、この実施の形態の触媒劣化診断装置では、図3に示す異常判定マップと図4に示す正常判定マップの両方を使用して異常判定と正常判定の両方を行っている。このため、異常判定マップのみ、或いは、正常判定マップのみを使用して判定を行う場合に比べ、異常・正常の判定を精度よく行うことができる。
【0053】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0054】
(1)前記実施の形態では、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25の検出値から読み込まれる吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により吸気量GAを換算した。これに対し、吸気量GAを、エアフローメータ等の吸気量検出手段により直接検出するようにしてもよい。
【0055】
(2)前記実施の形態では、異常判定マップと正常判定マップの両方を使用して異常判定と正常判定の両方を行うようにした。これに対し、異常判定マップのみ、または、正常判定マップのみを使用して判定を行うようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、上昇勾配と比較される判定値が、燃料カットの継続時間と共に、燃料カット直前に触媒に供給された空気量を要素として設定されることから、実際に触媒に貯蔵される酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となり、より正確な劣化診断を行うことができる。
【0057】
請求項2に記載の発明によれば、酸素濃度検出手段の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値と高設定値が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間の計測誤差がなくなる。このため、請求項1に記載の発明の効果に加え、上昇勾配をより正確に算出することができ、劣化診断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】触媒劣化診断ルーチンを示すフローチャート。
【図3】異常判定マップを示すグラフ。
【図4】正常判定マップを示すグラフ。
【図5】(a)〜(e)は各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
3 排気通路
17 三元触媒
22 吸気圧センサ
24 リアO2センサ(酸素濃度検出手段)
25 回転速度センサ(22,25は空気量検出手段を構成する。)
30 ECU(診断条件判断手段,計時手段,上昇勾配算出手段,判定値設定手段,診断手段)
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの排気通路に設けられる触媒の劣化を診断するエンジンの触媒劣化診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の触媒劣化診断装置として、例えば、下記の特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された装置は、触媒の下流側に配設されたリア空燃比センサの出力値に基づいて触媒の劣化を診断する。この装置は、運転状態に基づき診断条件が成立したか否かを判断する診断条件判断手段と、診断条件が成立しているときに、燃料カットからの燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間に基づき触媒の劣化を診断する診断手段とを備える。この診断手段は、燃料カットの継続時間が長いほど、長い時間の判定値を設定し、燃料カットから燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間が上記判定値よりも短いとき、触媒の劣化と診断する。ここでは、燃料カットの継続時間に応じて判定値を設定しているので、その継続時間の違いにより異なる触媒酸素貯蔵量の差を補償し、触媒の劣化を正確に診断するようにしている。
【0003】
この劣化診断の原理を以下に説明する。エンジンで燃料カットが行われると、触媒の持つ酸素貯蔵能力により触媒に多くの酸素が貯蔵される。ここで、触媒の劣化が進行すると、その酸素貯蔵能力が低下し、触媒に貯蔵される酸素量が減少する。このため、触媒の劣化が進行するにしたがい、燃料カットからの燃料リカバ後に、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間が短くなる。この時間を計測して判定値と比較することにより、触媒の劣化を判定することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−328930号公報(第2−8頁,図1〜4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の特許文献1に記載の触媒劣化診断装置は、燃料カットの継続時間に応じて判定値を設定することにより、触媒の酸素貯蔵量の差を補償するようにしている。しかし、触媒による酸素貯蔵量は、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いによっても変わる。これは、供給される空気量の違いにより触媒の温度が変わり、触媒の酸素貯蔵能力が変わるためである。従って、特許文献1に記載の装置では、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いを考慮したより正確な診断を行うことができなかった。
【0006】
また、特許文献1に記載の装置は、リア空燃比センサの出力値が設定値に達するまでの時間の計測を、燃料リカバ時から開始している。ところが、燃料リカバ時におけるセンサ出力値は、通常は零に近い値を示すが、この出力値がリア空燃比センサの製品公差により多少ばらつくことがある。そうすると、センサ出力値が設定値に達するまでの時間の計測開始時期にずれが出て、その分だけ計測時間に誤差が生じ、誤って劣化診断が行われるおそれがあった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、燃料カット直前に触媒に供給された空気量の違いを反映してより正確な劣化診断を行うことを可能としたエンジンの触媒劣化診断装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、酸素濃度の検出値に係る上昇勾配をより正確に算出することにより劣化診断の精度を向上させることを可能としたエンジンの触媒劣化診断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの排気通路に設けられる触媒の劣化を診断する触媒劣化診断装置であって、触媒の下流側における酸素濃度を検出するための酸素検出手段と、エンジンに供給される空気量を検出するための空気量検出手段と、エンジンの運転状態に基づき診断条件の成立を判断するための診断条件判断手段と、診断条件の成立が判断されたとき、エンジンの燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を計測するための計時手段と、燃料リカバ後における酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を算出するための上昇勾配算出手段と、燃料カット直前における空気量の検出値と、継続時間の計測値とに基づき判定値を設定するための判定値設定手段と、算出された上昇勾配を設定された判定値と比較することにより触媒の劣化を診断するための診断手段とを備えたことを趣旨とする。
ここで、「燃料カット」とは、エンジンに対する燃料供給を遮断する処理であり、一般には、エンジンが減速されるときに実行される。「燃料リカバ」とは、燃料カットから燃料供給を回復する処理であり、一般には、エンジンが減速から加速へ移行するときに実行される。
【0009】
上記発明の構成によれば、運転時にエンジンに供給される空気量が空気量検出手段により検出される。また、排気通路に設けられた触媒の下流側では、酸素濃度検出手段により酸素濃度が検出される。ここで、診断条件判断手段により、エンジンの運転状態に基づき診断条件の成立が判断されると、エンジンの燃料カットから燃料リカバまでの継続時間が計時手段により計測される。そして、上昇勾配算出手段により、燃料リカバ後において上記検出される酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配が算出される。ここで、燃料カット直前において上記検出された空気量の検出値と、上記継続時間の計測値とに基づいて判定値設定手段により判定値が設定される。そして、診断手段により、上昇勾配が判定値と比較されることにより触媒の劣化が診断される。従って、上昇勾配と比較される判定値が、燃料カットの継続時間と共に、燃料カット直前に触媒に供給された空気量を要素として設定されることから、実際に触媒に貯蔵された酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となる。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上昇勾配算出手段は、燃料リカバ後に、酸素濃度の検出値が所定の低設定値から所定の高設定値に達するまでの上昇時間を計測し、高設定値と低設定値との差を上昇時間の計測値により除算することにより上昇勾配を算出することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、上昇勾配を算出するための上昇時間が、所定の低設定値から所定の高設定値までの間で計測される。従って、請求項1に記載の発明の作用に加え、酸素濃度検出手段の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値と高設定値が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間の計測誤差がなくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエンジンの触媒劣化診断装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に、自動車に搭載されたエンジンシステムの概略構成図を示す。多気筒のエンジン1は周知の構造を有するレシプロタイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6気筒を有する。エンジン1は、吸気通路2を通じて吸入される燃料と空気との可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気を排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を動作させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るようになっている。
【0014】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を通じて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)GAを調節するために開閉される。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動する。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0015】
各気筒#1〜#6に対応して設けられた複数の燃料噴射弁(インジェクタ)7は、各気筒#1〜#6の吸気ポートに対して燃料を噴射する。これらインジェクタ7は、一つのデリバリパイプ8に接続される。デリバリパイプ8には、燃料タンク9に内蔵された燃料ポンプ13が燃料パイプ14を介して接続される。燃料パイプ14の途中には、燃料フィルタ15が設けられる。燃料タンク9の中の燃料は、燃料ポンプ13により燃料パイプ14へ吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へ圧送されて各インジェクタ7へ分配される。分配された燃料は、各インジェクタ7が作動することにより、吸気ポートへ噴射され、空気との可燃混合気を形成して各気筒#1〜#6に取り込まれる。
【0016】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、すなわち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配する。各点火プラグ10による点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。つまり、イグナイタ12が制御されることにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ10の点火時期が制御される。
【0017】
排気通路3に設けられた触媒コンバータ16は、エンジン1から排出される排気を浄化するための三元触媒17を内蔵する。周知のように、三元触媒17は、排気中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行う。これにより排気中の有害ガス三成分(CO,HC、NOx)を、無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化する。三元触媒17の持つ排気清浄化特性は、エンジン1における設定空燃比により大きく変わる。すなわち、空燃比が薄いときには、燃焼後の酸素(O2)の量が多くなり、酸化作用が活発に、還元作用が不活発になる。この酸化と還元のバランスがとれたとき(理論空燃比に近付いたとき)、三元触媒17は最も有効に働くことになる。
【0018】
排気通路3において、三元触媒17の上流側にはフロントO2センサ23が、下流側にはリヤO2センサ24がそれぞれ設けられる。フロントO2センサ23は、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力する。リヤO2センサ24は、三元触媒17を通過した排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号(出力電圧V)を出力するものであり、本発明の酸素濃度検出手段に相当する。
【0019】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ25は、クランクシャフト4の角速度、すなわち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転し外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ25は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴い電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ25から一つのパルス信号が出力される。
【0020】
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ26が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てがそれぞれ燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ26から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力される。
【0021】
エンジン1に設けられ水温センサ27は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この冷却水温THWは、エンジン1の温度状態を反映している。
【0022】
この実施の形態で、前述した各種センサ21〜27は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段に相当する。この実施の形態で、吸気量GAは、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と、回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから換算される。従って、この実施の形態で、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25は、エンジン1に供給される空気量(吸気量GA)を検出するための本発明の空気量検出手段を構成する。
【0023】
運転席に設けられた警告ランプ18は、三元触媒17の劣化を運転者に警告するために点灯される。
【0024】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、各種センサ21〜27から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これら入力信号に基づいて空燃比制御を含む燃料噴射制御及び点火時期制御等を実行し、各インジェクタ7及びイグナイタ12をそれぞれ制御する。併せて、ECU30は、上記各種信号に基づいて触媒劣化診断処理を実行し、警告ランプ18を制御する。
【0025】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7を制御することにより、燃料噴射量及び燃料噴射タイミングを制御することである。空燃比制御とは、少なくともフロントO2センサ23からの出力電圧Vに基づいて、各インジェクタ7を制御することにより、エンジン1の空燃比を理論空燃比等の所定の空燃比にフィードバック制御することである。この燃料噴射制御は、「燃料カット」の処理を含む。「燃料カット」とは、エンジン1に対する燃料供給を遮断するために各インジェクタ7からの燃料噴射を強制的に停止させる処理である。この実施の形態では、アクセルペダル6の踏み込みが解除されて、スロットルセンサ21によりスロットルバルブ5の全閉が検出されたときに、燃料カットの処理が実行される。「燃料リカバ」とは、燃料カットから燃料供給を回復するために各インジェクタ7からの燃料噴射を再開させる処理である。この実施の形態では、アクセルペダル6が再び踏み込まれて、スロットルセンサ21により全閉以外のスロットル開度TAが検出されたときに、燃料リカバの処理が実行される。この実施の形態では、燃料噴射制御において、燃料カットが実行されるときに、燃料カットフラグXFCが「ON」となり、燃料リカバとなるときに、燃料カットフラグXFCが「ON」から「OFF]に戻る。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。
【0026】
触媒劣化診断処理とは、エンジン1の空燃比が所定の理論空燃比にフィードバック制御されるときに実行されるものであり、吸気圧センサ22、フロントO2センサ23、リヤO2センサ24、回転速度センサ25及び水温センサ27からの各種信号に基づいて三元触媒17の劣化を診断することである。
【0027】
三元触媒17は、それを通過する排気中の酸素濃度Oxが高いときに(排気中の空燃比がリーンとなるときに)排気中の酸素を吸着し、その反対に、排気中の酸素濃度Oxが低いときに(排気中の空燃比がリッチとなるときに)吸着した酸素を放出する酸素貯蔵作用を示す。このため、三元触媒17の上流側では、排気中の酸素濃度Oxが比較的短い周期で高濃度と低濃度との間を変動する。このとき、三元触媒17に劣化がなければ(正常時)、三元触媒17の下流側における排気中の酸素濃度Oxは、同触媒17の酸素貯蔵作用により比較的長い周期で高濃度と低濃度との間を緩やかに変動する。これに対し、三元触媒17に劣化があると(異常時)、同触媒17の酸素貯蔵能力が低下することから、同触媒17の下流側における排気中の酸素濃度Oxは、比較的短い周期で高濃度と低濃度との間を急峻に変動する。
【0028】
ここで、エンジン1の減速時に燃料カットが行われると、エンジン1の各気筒#1〜#6で可燃混合気が燃焼しなくなり、エンジン1から排気通路3へ排出される排気中の酸素濃度Oxが比較的高くなる。このため、ほとんどの酸素が三元触媒17に吸着され、同触媒17の下流側では、酸素濃度Oxがほぼ最低値に近くなる。その後、燃料カットから燃料リカバとなると、三元触媒17に吸着されていた酸素が放出されはじめ、同触媒17の下流側では、排気中の酸素濃度Oxが上昇し始める。このとき、三元触媒17に劣化がなければ、上記したように同触媒17の下流側で酸素濃度Oxが緩やかに変動することから、その立ち上がり時の上昇勾配は相対的に小さくなる。これに対し、三元触媒17に劣化があれば、上記したように同触媒17の下流側で酸素濃度Oxが急峻に変動することから、その立ち上がり時の上昇勾配は相対的に大きくなる。従って、燃料リカバ後におけるリヤO2センサ24の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を所定の判定値と比較することにより、三元触媒17の劣化を診断することができる。この実施の形態では、上記原理に基づいて三元触媒17の劣化を診断する。
【0029】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の診断条件判断手段、計時手段、上昇勾配算出手段、判定値設定手段及び診断手段を構成する。周知のようにECU30は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等を備える。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これら制御プログラムに従い前述した各種制御等を実行する。
【0030】
次に、ECU30が実行する触媒劣化診断処理の内容について説明する。図2に「触媒劣化診断ルーチン」をフローチャートに示す。ECU30は、このルーチンを所定時間毎に周期的に実行する。
【0031】
まず、ステップ100で、ECU30は、触媒劣化の診断条件が成立したか否かを判断する。ECU30は、この診断条件成立をエンジン1の運転状態に基づいて判断する。具体的には、ECU30は、エンジン1の暖機が完了したことを診断条件の一つとして、その成立を水温センサ27により検出される冷却水温THWの値に基づいて判断する。併せて、ECU30は、空燃比フィードバック制御が実行中であることを診断条件の一つとして、その成立をフロント及びリヤのO2センサ23,24により検出される酸素濃度Oxの出力電圧Vに基づいて判断する。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理を繰り返す。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ110へ移行する。この実施の形態で、ステップ100の処理を実行するECU30は、本発明の診断条件判断手段に相当する。
【0032】
ステップ110で、ECU30は、燃料カット中であるか否かを判断する。ECU30は、この判断を、上記した燃料カットフラグXFCを参照して行う。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ120へ移行する。この実施の形態で、ステップ110の処理を実行するECU30は、燃料カット判断手段に相当する。
【0033】
ステップ120で、ECU30は、燃料カット開始直前の吸気量GAの値を読み込む。この実施の形態では、上記した燃料噴射制御にて、吸気圧センサ22により検出される吸気圧PMの値と回転速度センサ25により検出されるエンジン回転速度NEの値とから吸気量GAが換算される。ECU30は、この換算された吸気量GAの値を読み込む。
【0034】
ステップ130で、ECU30は、燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を燃料カット継続時間TCとして計測する。この実施の形態で、ステップ130の処理を実行するECU30は、本発明の計時手段に相当する。
【0035】
ステップ140で、ECU30は、燃料カットからの燃料リカバであるか否かを判断する。ECU30は、この判断を、上記した燃料カットフラグXFCを参照して行う。この判断結果が否定である場合、ECU30は、ステップ100の処理へ戻る。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、処理をステップ150へ移行する。この実施の形態で、ステップ140の処理を実行するECU30は、燃料リカバ判断手段に相当する。
【0036】
ステップ150で、ECU30は、燃料リカバ後にリヤO2センサ24により検出される酸素濃度Oxの出力電圧Vが、所定の低設定値V1から所定の高設定値V2に達するまでの上昇時間T1を計測する。この実施の形態で、ステップ150の処理を実行するECU30は、上昇時間計測手段に相当する。
【0037】
ステップ160で、ECU30は、上記した高設定値V2と低設定値V1との差を、計測された上昇時間T1の計測値により除算することにより上昇勾配VSを算出する。この実施の形態で、ステップ160の処理を実行するECU30は、除算手段に相当する。また、ステップ150,160の処理を実行するECU30は、燃料リカバ後における酸素濃度Oxの検出値につき単位時間当たりの上昇勾配VSを算出するための本発明の上昇勾配算出手段に相当する。
【0038】
ステップ170で、ECU30は、図3に示すような異常判定マップを参照することにより、燃料カット直前における吸気量GAの検出値(換算値)と、燃料カット継続時間TCの計測値とに基づき異常判定値DAを設定する。図3に示すように、異常判定マップは、吸気量GAと燃料カット継続時間TCとの関係をリヤO2センサ24による出力電圧Vの勾配で表したものである。この実施の形態で、ステップ170の処理を実行するECU30は、本発明の判定値設定手段に相当する。
【0039】
その後、ステップ180で、ECU30は、算出された上昇勾配VSの値が設定された異常判定値DAより大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、三元触媒17に異常があるものと判定し、処理をステップ190へ移行する。この実施の形態で、ステップ180の処理を実行するECU30は、本発明の診断手段に相当する。
【0040】
ステップ190で、ECU30は、バックアップRAMに異常コードを記録する。この異常コードは、エンジン1の保守点検時にバックアップRAMから他の記録データとともに読み出されることにより、三元触媒17に異常があることを作業者に知らせることができる。また、ステップ200で、ECU30は、異常を警報するために警告ランプ18を点灯し、その後の処理を一旦終了する。このステップ190,200の処理を実行するECU30は、三元触媒17に異常があることを報知するための異常報知手段に相当する。
【0041】
一方、ステップ180の判断結果が否定である場合、ステップ210で、ECU30は、図4に示すような正常判定マップを参照することにより、燃料カット直前における吸気量GAの検出値(換算値)と、燃料カット継続時間TCの計測値とに基づき正常判定値DNを設定する。図4に示すように、正常判定マップも、吸気量GAと燃料カット継続時間TCとの関係をリヤO2センサ24による出力電圧Vの勾配で表したものである。この実施の形態でも、ステップ210の処理を実行するECU10は、本発明の判定値設定手段に相当する。
【0042】
その後、ステップ220で、ECU30は、算出された上昇勾配VSの値が設定された正常判定値DNより大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定である場合、ECU30は、三元触媒17が正常であると判定し、処理をステップ230へ移行する。この実施の形態で、ステップ220の処理を実行するECU30は、本発明の診断手段に相当する。
【0043】
そして、ステップ230で、ECU30は、バックアップRAMに正常コードを記録する。この正常コードは、エンジン1の保守点検時にバックアップRAMから他の記録データとともに読み出されることにより、三元触媒17が正常であることを作業者に知らせることができる。また、ステップ240で、ECU30は、正常であることを知らせるために警告ランプ18を消灯し、その後の処理を一旦終了する。この実施の形態で、ステップ230,240の処理を実行するECU30は、三元触媒17が正常であることを報知するための正常報知手段に相当する。
【0044】
一方、ステップ220の判断結果が否定である場合、ECU30は、異常・正常の判定を保留するために処理をステップ100へ戻す。
【0045】
図5(a)〜(e)に、燃料カットフラグXFC、吸気量GA、燃料カット継続時間TC、正常時及び異常時におけるリヤO2センサ24の出力電圧の挙動をタイムチャートに示す。
【0046】
図5(a)に示すように、燃料カットが開始されて燃料カットフラグXFCが「ON」となると、図5(b)に示すように、吸気量GAが一旦減少する。同時に、図5(c)に示すように、燃料カット継続時間TCの計測が開始される。また、図5(d),(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vも一旦低下する。
【0047】
その後、図5(a)に示すように、燃料リカバとなり燃料カットフラグXFCが「OFF」になると、図5(b)に示すように、その後の吸気量GAが徐々に増加する。同時に、図5(c)に示すように、燃料カット継続時間TCの計測が終了する。また、図5(d),(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vが上昇する。
【0048】
上昇した出力電圧は、低設定値V1から高設定値V2に達するまでの上昇時間T1が計測される。そして、この高設定値V2と低設定値V1との差を上昇時間T1の計測値により除算することにより上昇勾配VSが算出される。正常時には、図5(d)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vの上昇が緩やかとなることから、その上昇勾配VSは相対的に小さくなる。これに対し、異常時には、図5(e)に示すように、リヤO2センサ24の出力電圧Vの上昇が急峻となることから、その上昇勾配VSは相対的に大きくなる。
【0049】
以上説明した本実施の形態の触媒劣化診断装置によれば、運転時にエンジン1に供給される空気量GAが、それぞれ検出される吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により換算される。また、三元触媒17の下流側では、排気中の酸素濃度Oxが、リヤO2センサ24により検出される。ここで、ECU30により、エンジン1の運転状態に基づいて劣化診断条件の成立が判断されると、燃料カットから燃料リカバまでの燃料カット継続時間TCがECU30により計測される。そして、燃料リカバ後に、酸素濃度Oxの出力電圧Vにつき単位時間当たりの上昇勾配VSがECU30により算出される。
【0050】
ここで、燃料カット直前に得られた空気量GAの値と、計測された燃料カット継続時間TCの値とに基づき、ECU30により異常判定値DA及び正常判定値DNが設定される。そして、上記算出された上昇勾配VSの値が上記設定された異常判定値DA及び正常判定値DNと比較されることにより、三元触媒17が劣化しているか否か、すなわち異常か正常かが診断される。従って、上昇勾配VSと比較される異常判定値DA及び正常判定値DNが、燃料カット継続時間TCに加えて、燃料カット直前に三元触媒17に供給された吸気量GAを要素として設定されることから、実際に三元触媒17に貯蔵される酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となる。この結果、従来例の触媒劣化診断装置とは異なり、燃料カット直前に三元触媒17に供給された空気量の違いを反映してより正確な劣化診断を行うことができる。
【0051】
また、この実施の形態の触媒劣化診断装置によれば、上昇勾配VSを算出するための上昇時間T1が、所定の低設定値V1から所定の高設定値V2までの間で計測される。従って、リアO2センサ24の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値V1と高設定値V2が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間T1の計測誤差がなくなる。すなわち、従来例の触媒劣化診断装置のように、センサ出力値が設定値に達するまでの時間の計測開始時期にずれが出て、燃料リカバ後の計測時間に誤差が生じるということがなくなる。このため、上昇勾配VSをより正確に算出することができ、三元触媒17の劣化診断の精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、この実施の形態の触媒劣化診断装置では、図3に示す異常判定マップと図4に示す正常判定マップの両方を使用して異常判定と正常判定の両方を行っている。このため、異常判定マップのみ、或いは、正常判定マップのみを使用して判定を行う場合に比べ、異常・正常の判定を精度よく行うことができる。
【0053】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0054】
(1)前記実施の形態では、吸気圧センサ22及び回転速度センサ25の検出値から読み込まれる吸気圧PM及びエンジン回転速度NEの値により吸気量GAを換算した。これに対し、吸気量GAを、エアフローメータ等の吸気量検出手段により直接検出するようにしてもよい。
【0055】
(2)前記実施の形態では、異常判定マップと正常判定マップの両方を使用して異常判定と正常判定の両方を行うようにした。これに対し、異常判定マップのみ、または、正常判定マップのみを使用して判定を行うようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、上昇勾配と比較される判定値が、燃料カットの継続時間と共に、燃料カット直前に触媒に供給された空気量を要素として設定されることから、実際に触媒に貯蔵される酸素量の違いを劣化診断に反映させることが可能となり、より正確な劣化診断を行うことができる。
【0057】
請求項2に記載の発明によれば、酸素濃度検出手段の製品公差によりその検出値が多少ばらついても、燃料リカバ後に、低設定値と高設定値が一律の基準となり、計測開始時期にずれがなくなり、その分だけ上昇時間の計測誤差がなくなる。このため、請求項1に記載の発明の効果に加え、上昇勾配をより正確に算出することができ、劣化診断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】触媒劣化診断ルーチンを示すフローチャート。
【図3】異常判定マップを示すグラフ。
【図4】正常判定マップを示すグラフ。
【図5】(a)〜(e)は各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
3 排気通路
17 三元触媒
22 吸気圧センサ
24 リアO2センサ(酸素濃度検出手段)
25 回転速度センサ(22,25は空気量検出手段を構成する。)
30 ECU(診断条件判断手段,計時手段,上昇勾配算出手段,判定値設定手段,診断手段)
Claims (2)
- エンジンの排気通路に設けられる触媒の劣化を診断する触媒劣化診断装置であって、
前記触媒の下流側における酸素濃度を検出するための酸素検出手段と、
前記エンジンに供給される空気量を検出するための空気量検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づき診断条件の成立を判断するための診断条件判断手段と、
前記診断条件の成立が判断されたとき、前記エンジンの燃料カットから燃料リカバまでの継続時間を計測するための計時手段と、
前記燃料リカバ後における前記酸素濃度の検出値につき単位時間当たりの上昇勾配を算出するための上昇勾配算出手段と、
前記燃料カット直前における前記空気量の検出値と、前記継続時間の計測値とに基づき判定値を設定するための判定値設定手段と、
前記算出された上昇勾配を前記設定された判定値と比較することにより前記触媒の劣化を診断するための診断手段と
を備えたことを特徴とするエンジンの触媒劣化診断装置。 - 前記上昇勾配算出手段は、前記燃料リカバ後に、前記酸素濃度の検出値が所定の低設定値から所定の高設定値に達するまでの上昇時間を計測し、前記高設定値と前記低設定値との差を前記上昇時間の計測値により除算することにより前記上昇勾配を算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの触媒劣化診断装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002377185A JP2004204809A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | エンジンの触媒劣化診断装置 |
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Country | Link |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008121465A (ja) * | 2006-11-09 | 2008-05-29 | Toyota Motor Corp | 内燃機関の触媒劣化検出装置 |
KR100962875B1 (ko) | 2008-08-14 | 2010-06-09 | 현대자동차일본기술연구소 | 내연기관용 촉매의 열화 진단 장치 및 방법 |
JP2016148275A (ja) * | 2015-02-12 | 2016-08-18 | マツダ株式会社 | エンジンの制御装置 |
DE102022211614B3 (de) | 2022-11-03 | 2024-05-02 | Audi Aktiengesellschaft | Verfahren zum Betreiben einer Antriebseinrichtung für ein Kraftfahrzeug sowie entsprechende Antriebseinrichtung |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002377185A patent/JP2004204809A/ja active Pending
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