JP2004203965A - セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法、表面鹸化セルロースエステルフイルム、及びそれを用いた光学フイルム - Google Patents

セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法、表面鹸化セルロースエステルフイルム、及びそれを用いた光学フイルム Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースエステルフイルムを安定に且つ、全面を均一に鹸化するアルカリ鹸化処理方法を提供すること。また、表面欠陥のない光学フィルムに適した表面鹸化セルロースエステルフイルムを提供すること。さらに、上記光学フィルムを付設した鮮明な画像表示を可能とする画像表示装置を提供すること。
【解決手段】アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程と、該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程とを少なくとも含んでおり、アルカリ鹸化溶液を洗い落とす工程に用いるアルカリ希釈液又は中和液中の炭酸イオン濃度が3500mg/L以下(とりわけ、上記に加えて多価金属イオン濃度が500mg/L以下で塩素イオン濃度が300mg/L)以下であることを特徴とするセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法、表面鹸化セルロースエステルフイルム及びそれを用いた光学フイルムに関する。特に本発明は、画像表示装置に有用な偏光、反射、光学補償等の機能を有する光学フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
パソコン、テレビ、携帯電話や各種計器類等に装着されている各種ディスプレイは、その表面のガラスやプラスチック板等の透明保護基板を通して文字や図形等の視覚情報が観察されるようになっている。又、最近では機器類のディスプレイの多くは液晶表示装置になってきている。液晶表示装置は、液晶セル、偏光板、および光学補償シート(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、2枚の偏光板を液晶セルの両側に取り付け、1枚または2枚の光学補償シートを液晶セルと偏光板との間に配置する。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、1枚の光学補償シート、そして1枚の偏光板からなる。
【0003】
液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための2枚の基板、および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなり、液晶セルは、棒状液晶分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferro-electric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反射型については、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
偏光板は、一般に、偏光膜とその両側に設けられた2枚の透明保護膜とからなる。偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または2色性染料の水溶液を含浸させ、さらにこのフイルムを一軸延伸することより得られる。保護膜にセルロースエステルフィルムを用いた偏光板は、優れた光学特性を有し、広い波長範囲で高い透過率、偏光度を示し、明るさ、コントラストに優れていることから各種画像表示用の偏光板としても多用されている。
【0004】
光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置に用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折フイルムが、従来より使用されていた。
延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学異方層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学異方層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定化することにより形成する。
光学補償シートに液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることの出来なかった光学特性を実現することが可能となった。
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような液晶セルの表示モードの違いに応じて設計する。光学補償シートには液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの種々の表示モードに対応する様々な光学特性を有する光学補償シートを作りだすことができる。
【0005】
ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートには、種々の表示モードに対応するものが提案されている。例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特許文献1〜4に記載がある。また、IPSモードまたは、FLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特許文献5に記載がある。さらに、OCBモードまたは、HANモードの液晶セル用光学補償シートは、特許文献6及び7に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特許文献8に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許文献9に記載がある。
【0006】
液晶性分子を用いた光学補償シートと偏光膜とを積層して楕円偏光板を形成すれば、光学補償シートを、偏光板の一方の透明保護膜としても機能させることができる。その様な楕円偏光板は、透明保護膜、偏光膜、透明支持体、そして液晶性分子から形成された光学異方層が、この順で積層された層構成を有する。液晶表示装置には薄型で軽量である特性を求められるため、構成要素の1つを兼用(偏光板の透明保護膜と光学補償シート)することによって削減できれば、装置をさらに薄く軽量にすることが可能となる。また、液晶表示装置の構成要素を1つ削減することによって、構成要素の貼り付け工程も1つ削減され、装置を組み立てる際に故障等が生じる可能性も低くなり好ましい。液晶性分子を用いた光学補償シートの透明支持体と偏光板の一方の保護膜を共通化した一体型楕円偏光板については、例えば、特許文献10〜12に記載がある。
【0007】
このような偏光板、光学補償シート等の光学的機能性を有するシート状材料は光学フイルムと呼ばれているが、光学フイルムの透明支持体として、優れた光透過性、光学的な無配向性で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温湿度変化に対する寸法変化が少ない等の特性を有するセルロースアセテートフイルムに代表されるセルロースエステルフイルムが用いられる。
【0008】
透明支持体のセルロースエステルフイルムに偏光膜や光学補償層が接着層や配向膜(通常はポリビニルアルコール)を介して設けられるが、これら接着層や配向膜との密着性を持たせるための1つの手段として、セルロースエステルフイルムをアルカリ水溶液に浸漬処理してその表面を鹸化し親水化する方法(例えば、特許文献13〜16)が知られている。
【0009】
しかしながら、これらの処理液はアルカリ剤のみの水溶液で処理するため、疎水的なフイルム表面を均一に鹸化することが困難であった。また、浸漬による鹸化浴処理においては、セルロースエステルフイルムの両面が同時に親水化してしまうため、片面にポリビニルアルコールなどの親水性層を塗設した後にロール状に巻き取ると、表裏が接着してしまう問題が発生する。鹸化浴処理にて、片面のみを処理する手段としては、目的としない面をラミネートなどの防水加工を施して鹸化処理する方法が挙げられるが、煩雑な工程が増えるばかりでなく、不要な廃棄物が発生するなど、生産性、環境保全の観点で好ましくなかった。
【0010】
一方、アルカリ水溶液に、ポリマーフイルムを溶解したり膨潤させたりしない有機溶媒を含有させたアルカリ鹸化溶液を用いてその液に浸漬処理する方法(特許文献17)、アルカリ水溶液、或いは有機溶媒を含有させたアルカリ鹸化溶液をフイルム面上に塗布して少なくとも片面を鹸化処理する方法(特許文献18)が提案されている。
アルカリ鹸化溶液中に有機溶媒を含ませることによって、アルカリ水溶液よりも鹸化反応活性を高められる。但し、その反面、反応活性が高められたことや有機溶媒の種類或いは含有量によっては処理するフイルム中に含有される添加物質やフイルム混在物質が多量に溶出したり、濃縮したアルカリ剤が付着して、フイルムのヘイズ上昇、密着不良、異物欠陥や配向欠陥の発生など光学フイルムとしての品質を低下させることが問題である。
一方、さらに、最近の画像表示装置の大画面化、モバイル化等の急速な進展による生産量の増大と、製造コストの削減等のために、長尺状のフイルムを連続してより安定に生産することが望まれている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−214116号公報
【特許文献2】
米国特許5583679号公報
【特許文献3】
米国特許5646703号公報
【特許文献4】
ドイツ特許3911620A1号公報
【特許文献5】
特開平10−54982号公報
【特許文献6】
米国特許5805253号公報
【特許文献7】
国際特許出願WO96/37804号公報
【特許文献8】
特開平9−26572号公報
【特許文献9】
特許公報第2866372号
【特許文献10】
特開平7−191217号公報
【特許文献11】
特開平8−21996号公報
【特許文献12】
特開平8−94838号公報
【特許文献13】
特開平7−151914公報の段落番号[0008]
【特許文献14】
特開平8−94838号公報の段落番号[0033]
【特許文献15】
特開2001−166146号公報の段落番号[0083]
【特許文献16】
特開2001−188130号公報の段落番号[0042]
【特許文献17】
特開2002−82226公報の段落番号[0034])
【特許文献18】
WO02/46809号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化処理方法には、未だ十分に要望に応えた方法がなく、長尺フイルムを安定に生産性良く作製する方法が望まれている。
したがって、本発明の目的は、セルロースエステルフイルムを安定に且つ、全面を均一に鹸化するアルカリ鹸化処理方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、画像表示装置において表示欠陥のない大きい面積の光学シートを提供することであり、これを容易に製造するための表面鹸化セルロースエステルフイルムを提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、セルロースエステルフイルムを支持体とする光学シートを付設した鮮明な画像表示を可能とする液晶表示装置及び画像表示装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、下記(1)〜(6)のアルカリ鹸化方法、下記(7)の表面鹸化セルロースエステルフイルム、及び下記(8)の光学フイルムによって達成される。
(1)アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程と、該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程とを少なくとも含むアルカリ鹸化方法において、アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程に用いるアルカリ希釈液又は中和液中の炭酸イオン濃度が3500mg/L以下であることを特徴とするセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法。
(2)該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液又は中和液中の多価金属イオン濃度が500mg/L以下であって、かつ塩素イオン濃度が300mg/L以下であることを特徴とする上記(1)に記載のアルカリ鹸化方法。
【0014】
(3)該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液又は中和液中に界面活性剤を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のアルカリ鹸化方法。
(4)該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液の溶媒が水又は、水及び有機溶剤からなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
【0015】
(5)該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液中に消泡剤を含むことを特徴とする上記1)〜(4)のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
【0016】
(6)該アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程がセルロースエステルフイルムにアルカリ鹸化溶液を塗布する工程であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
【0017】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法により作製されて得られることを特徴とする表面鹸化セルロースエステルフイルム。
【0018】
(8)上記(7)に記載の表面鹸化セルロースエステルフイルムを用いたことを特徴とする光学フイルム。
【0019】
上記(1)〜(6)のいずれかの方法でアルカリ鹸化した表面鹸化セルロースエステルフイルム(7)は、その上に配向膜を形成し、次いで配向膜の上に液晶性分子を塗布し、液晶性分子の配向を固定化して光学異方層を形成することにより光学補償シートを製造できる。
また、偏光膜およびその両面に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の一方が、セルロースエステルフイルム上に、配向膜、および液晶性分子の配向を固定した光学異方層がこの順に設けられている光学補償シートからなる場合、セルロースエステルフイルムとして、その配向膜を形成する側の表面を上記(1)〜(7)のいずれかの方法でアルカリ鹸化したセルロースエステルフイルム(8)を有利に用いることができる。
さらにそのセルロースエステルフイルムを用いて層間密着性や表示面均一性に優れた光学フイルムを作製することができる。
【0020】
本発明のアルカリ鹸化方法は、濃縮したアルカリ剤やフイルム添加物質などの抽出素材を含んだアルカリ鹸化溶液を洗い落とす工程のアルカリ希釈液または、アルカリ中和液の炭酸イオン濃度及び多価金属イオン濃度、塩化物イオン濃度を所定の範囲とすることにより、フイルムのヘイズ上昇、密着不良、異物欠陥や配向欠陥の発生などを伴わない均一なアルカリ鹸化処理が実現できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の態様について詳細に説明する。
[ポリマーフイルム]
ポリマーフイルムは、光透過率が80%以上であることが好ましい。ポリマーフイルムとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。
ポリマーフイルムは、エステル結合あるいはアミド結合のような加水分解できる結合(鹸化処理の対象となる結合)を含む。とくに、エステル結合を含むポリマーフィルムが好ましく、エステル結合がポリマーの側鎖に存在していることがさらに好ましい。エステル結合が側鎖に存在しているポリマーとしては、セルロースエステルが挙げられ、その中でセルロースアシレートが最も好ましい。セルロースアシレートフイルムが本発明の主な対象とする支持体である。
【0022】
以下セルロースアシレートについて詳しく説明する。原料のセルロースとしては、綿花リンターや木材パルプなどがあるが、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用できるし、混合して使用することもしてもよい。これらのセルロースから得られる本発明に用いるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基のアシル基置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものである。
【0023】
式(I):2.6≦SA'+SB'≦3.0
式(II):2.0≦SA'≦3.0
式(III): 0≦SB'≦0.8
【0024】
ここで、SA'はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、SB'はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、以下の記載のおいてSAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。置換度は、セルロースの水酸基に置換するアセチル基及び炭素原子数数3〜22のアシル基の結合度を測定し、計算によって得られる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
【0025】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA'+SB')は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB')は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフイルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフイルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0026】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。セルロースアシレートは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル基、ブタノイル基、ケプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso-ブタノイル基、t-ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいSBは、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t-ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などである。
【0027】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法等がある。具体的には、例えば、特開平6−32801号、同7−70202号、同10−45804号、同10−511728号、特開2001−200901号等に記載の方法が挙げられる。
【0028】
本発明に使用するセルロースアシレートの(粘度平均)重合度は200〜700が好ましく、特に250〜550のものが好ましい。
一般的にセルローストリアセテートを含むセルロースアシレートフイルムなどの繊維又は成型品の機械的強度がタフであるためには重合度が200以上あることが必要とされており、祖父江寛、右田伸彦編「セルロースハンドブック」朝倉書房(1958)や、丸沢廣、宇田和夫編「プラスチック材料講座17」日刊工業新聞社(1970)に記載されている。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどにより求められる多分散性指数 Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)は小さいこと(すなわち、分子量分布が狭いこと)が好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましい。
【0029】
本発明に使用するセルロースアシレートフィルムは、使用する目的や用途によって、上記のセルロースアシレートとともに、後述するように他の化合物を含有しても良い。
【0030】
ポリマーフイルムを光学補償シートに用いる場合、ポリマーフイルムは、高いレターデーション値を有することが好ましい。フイルムの面内のレターデーション(Reレターデーション)値および厚み方向のレターデーション(Rthレターデーション)値は、それぞれ、下記式(I)および(II)で定義される。
(I) Re=|nx−ny|×d
(II) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
式(I)および(II)において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フイルムの厚み方向の屈折率、dは、単位をnmとするフイルムの厚みである。
ポリマーフイルムのReレターデーション値は1乃至200nmであり、Rthレターデーション値は70〜400nmであることが好ましい。Reレターデーション値は20乃至200nmであることがより好ましい。具体的な値は、測定光の入射方向をフイルム膜面の鉛直方向に対して傾斜させた測定結果より外挿して求める。測定は、エリプソメーター(例えば、M−150、日本分光(株)製)を用いて実施できる。測定波長としては、632.8nm(He−Neレーザー)を採用する。
【0031】
ポリマーフイルムのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であるが、また光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。セルロースアシレートフイルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許0911656A2号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物が挙げられる。その中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
【0032】
本発明に用いるセルロースアシレート組成物には、更に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤、帯電防止剤等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、添加した素材の機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いることが好ましい。
【0033】
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法で製膜することが好ましい。
用いる溶媒としては、従来公知の溶媒が挙げられ、低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745の12頁〜16頁に詳細の化合物が挙げられる。
【0034】
その中でも、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0035】
本発明に用いるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮とろ過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0036】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類)については、前記の公技番号 2001−1745の25頁〜30頁に詳細に記載された内容が挙げられる。流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延しても良い。
【0037】
ポリマーフイルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%であることが好ましい。
ポリマーフイルムの厚さは、15〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがさらに好ましい。
【0038】
[アルカリ鹸化処理方法]
本発明のセルロースエステルフイルムの表面処理方法はアルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程及び、アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程を少なくとも含むことからなり、セルロースエステルフイルムをその表面が室温以上の温度でアルカリ鹸化溶液を用いて鹸化処理する工程、セルロースエステルフイルムの温度を室温以上に維持する工程、そして、アルカリ鹸化溶液をセルロースエステルフイルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程は従来公知のいずれの方法のものをもちいてよく、浸漬方法、吹き付け方法、塗布方法等が挙げられる。特に、フィルムの片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。塗布の方法としては、後に述べるように従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0039】
アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程は、フイルムの温度を室温以上に維持して、鹸化反応を進行させた後、濃縮したアルカリ剤やフイルム添加物質などの抽出素材を含んだアルカリ鹸化溶液を希釈あるいは中和して鹸化反応を減速あるいは停止し、さらに多量の洗浄液にて洗い落とす工程である。この工程におけるアルカリ鹸化溶液の希釈あるいは中和工程は、濃縮したアルカリ剤やフイルム添加物質などの抽出素材をフイルム表面に沈殿付着させない為に極めて重要であり、このアルカリ希釈液およびアルカリ中和液の炭酸イオン濃度を3500mg/L以下とすることにより効果的にフイルム表面に沈殿物を付着させないことができる。より好ましくは1000mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下である。炭酸イオン濃度を3500mg/Lとすることによって、鹸化処理したセルロースエステルフイルムに配向膜を塗設し、ラビング処理を行った後、液晶性分子による光学異方層を設置する際に異物欠陥や配向欠陥を低減することができる。
高濃度のアルカリ鹸化溶液は環境雰囲気のCO2を吸収しやすく、pHを下げるとともに、沈殿物を発生させる原因となる。環境雰囲気のCO2の吸収を抑制するために、アルカリ鹸化溶液の塗布コーターを半密閉構造としたり、乾燥空気、不活性ガスやアルカリ鹸化溶液の有機溶剤飽和蒸気で覆うようにすることがより好ましい。
【0040】
また、アルカリ希釈液およびアルカリ中和液の塩化物イオン及びカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの多価金属イオンを各々300mg/L以下及び500mg/L以下とすることにより、濃縮したアルカリ剤やフイルム添加物質などの抽出素材をフイルム表面に析出させず、鹸化処理したセルロースエステルフイルムに配向膜を塗設し、ラビング処理を行った後、液晶性分子による光学異方層を設置した際の光学異方層の密着不良を低減することができる。
アルカリ希釈液あるいは中和液には、後述するように水あるいは水及び有機溶剤からなる液を用いることが好ましいが、用いる水は純水が好ましく、純水として、液中のカルシウム濃度は、0.001〜100mg/Lであることが好ましく、0.001〜50mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。マグネシウム濃度は、0.001〜50mg/Lであることが好ましく、0.001〜30mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。カルシウムやマグネシウム以外の多価の金属イオン、例えばBe,Sr,Ba,Al,Sn,Pb,Ti,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu(II),Co,Zn,も含まれないことが好ましい。多価金属イオンの濃度は0.002〜150mg/Lであることが好ましい。一方、アルカリ鹸化溶液に塩化物イオンや炭酸イオンなどのアニオンも含まないことが好ましい。塩化物イオン濃度は0.001〜100mg/Lであることが好ましく、0.001〜50mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。また、炭酸イオンも含まれないことが好ましい。炭酸イオン濃度は0.001〜500mg/Lであることが好ましく、0.001〜100mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜20mg/Lであるのが特に好ましい。以上の各イオン種とも濃度が低いほど好ましく、下限の0.001mg/Lとは、測定限界以下であることを意味している。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
【0041】
セルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法は、セルロースエステルフイルムを予め室温以上に加熱する工程、セルロースエステルフイルムにアルカリ鹸化溶液を塗布する工程、セルロースエステルフイルムの温度を室温以上に維持する工程、そして、アルカリ鹸化溶液をセルロースエステルフイルムから洗い落とす工程によりを実施することが好ましく、セルロースエステルフイルムを搬送しながら、これらの工程及びさらに、その他の工程を実施することが好ましい。
セルロースエステルフイルムをその表面が室温以上の温度でアルカリ鹸化溶液により鹸化処理には、塗布する前に予め室温以上に加熱する工程、アルカリ液を予め加温しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め室温以上に加熱する工程と組み合わせることが好ましい。
【0042】
セルロースエステルフイルムを予め室温以上に加熱する工程では、熱風の衝突(吹き付け)による直接加熱、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、あるいは赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。特に加熱ロールによる接触伝熱は、熱伝達効率が高く小さな設置面積で行える点、搬送開始時のフイルム温度の立上りが速い点で好ましい。一般の2重ジャケットロールや電磁誘導ロール(トクデン社製)が利用できる。加熱後のフイルム表面温度は、25〜150℃であることが好ましく、25〜100℃がさらに好ましく、40〜80℃が最も好ましい。
【0043】
セルロースエステルフイルムにアルカリ鹸化溶液を塗布する工程では、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology,Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ鹸化溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1〜100cc/m2が好ましく、1〜50cc/m2がより好ましい。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーターが特に好ましい。
また、アルカリ鹸化溶液を塗布し、セルロースエステルフイルムを鹸化処理したのち、アルカリ鹸化溶液をセルロースエステルフイルムから容易に洗い落とすために、アルカリ鹸化溶液はセルロースエステルフイルムの下面に塗布することが好ましい。
塗布量の変動をセルロースエステルフイルムの幅方向および塗布時間に対して30%未満に抑制することが好ましい。また、連続塗布方式を採用することもできる。
【0044】
本発明のアルカリ鹸化方法はアルカリ鹸化溶液を塗布した後、鹸化反応が終了するまで、セルロースエステルフイルムの温度を室温以上に保つ。本発明において、室温とは20℃である。
加熱手段は、セルロースエステルフイルムの片面がアルカリ鹸化溶液により濡れている状態であることを考慮して選択する。塗布の反対面への熱風の衝突(吹き付け)、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒーターによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。赤外線ヒーターは、非接触、かつ空気の流れを伴わずに加熱できるため、アルカリ鹸化溶液塗布面への影響を最小にできるため好ましい。赤外線ヒーターは、電気式、ガス式、オイル式あるいはスチーム式の遠赤外セラミックヒーターが利用できる。市販の赤外線ヒーター(例えば(株)ノリタケカンパニーリミテド製)を用いてもよい。熱媒体が、オイルまたはスチームを用いるオイル式またはスチーム式の赤外ヒーターは、有機溶剤が共存する雰囲気における防爆の観点で好ましい。セルロースエステルフイルムの温度は、アルカリ鹸化溶液塗布前に加熱した温度と同じでも異なっていてもよい。また、鹸化反応中に温度を連続的、または段階的に変更してもよい。フイルム温度は、20℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、更に好ましくは35℃〜80℃である。フイルム温度の検出には、一般に市販されている非接触式の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段に対してフィードバック制御を行ってもよい。
アルカリ鹸化溶液を塗布してから洗い落とすまでに上記温度範囲に保持する時間は、後述する搬送速度にもよるが、1秒〜5分に保つことが好ましく、2〜100秒間保つことがより好ましく、3〜50秒間保つことが特に好ましい。
【0045】
セルロースエステルフイルムを搬送しながら各工程処理を実施し、アルカリ鹸化処理を行うことが好ましいが、セルロースエステルフイルムの搬送速度は、上記アルカリ鹸化溶液の組成と塗布方式の組み合わせによって決定する。一般に、10〜500m/分が好ましく、20〜300m/分がさらに好ましい。
【0046】
また、セルロースエステルフイルムを予め室温以上に加熱する工程、あるいは、セルロースエステルフイルムにアルカリ鹸化溶液を塗布する工程の前に、粉塵を除去するため、並びに膜表面の濡れ性をより均一にするために除電処理、除塵処理あるいは、ウエット処理を実施することもできるこれらの方法は一般に知られている方法を用いることができ、除電方法としては、特開昭62−131500号に記載の方法、や除塵方法としては特開平2−43157号に記載の方法を挙げることができる。
【0047】
フイルムの温度を室温以上に維持して、鹸化反応を進行させた後、アルカリ鹸化溶液とセルロースエステルフイルムとの鹸化反応を減速あるいは停止するには、大きく3つの方法がある。一つ目は、塗布されたアルカリ鹸化溶液を希釈してアルカリ濃度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、二つ目は、アルカリ鹸化溶液が塗布されたセルロースエステルフイルムの温度を下げ、反応速度を低下させる方法であり、三つ目は、酸性の液によって中和する方法である。
アルカリ希釈液を用いる方法とアルカリ中和液を用いる方法は既に記載したようにアルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程の一部でもある。
【0048】
塗布されたアルカリ鹸化溶液を希釈するためには、希釈液を塗布する方法、希釈液を吹き付ける方法、希釈液の入った容器にセルロースエステルフイルムごと浸漬する方法が採用できる。希釈液を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフイルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい方法である。希釈液を塗布する方法は、必要最小限の希釈液量を用いて実施できるために最も好ましい。
【0049】
希釈液の塗布は、既にアルカリ鹸化溶液が塗布されたセルロースエステルフイルム上に希釈液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and DryingTechnology, Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ鹸化溶液と希釈液とを速やかに混合してアルカリ濃度を低下させるためには、希釈液が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0050】
アルカリ希釈液は、アルカリ濃度を低下させること、フイルム添加物質などの抽出素材をフイルムに付着させないことが目的であるため、アルカリ鹸化溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒でなければならない。よって、水または水と有機溶剤との混合液を用いることが好ましく、二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。後述するアルカリ鹸化溶液に用いた有機溶剤が優位に用いることができる。好ましい溶剤は水である。
また、アルカリ希釈液には、フイルム添加物質などの抽出素材をフイルムに付着させないために界面活性剤を含ませることが好ましい。界面活性剤としては特に限定はないが、後述するアルカリ鹸化溶液に用いる界面活性剤を有利に利用できる。さらに、アルカリ希釈液には、後述する消泡剤を含ませることがフィルム表面への微小な気泡の付着を無くし、アルカリ鹸化溶液およびアルカリ希釈液の洗浄がムラ無く均一に行うことができるため、好ましい。
【0051】
希釈液の塗布量は、アルカリ鹸化溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ鹸化溶液と希釈液との混合が発生し、この混合した液が再塗布される。したがって、この場合は希釈液の塗布量によって希釈率を特定することができないため、希釈液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいても、塗布量は、元のアルカリ濃度を1.5〜10倍に希釈することが好ましく、2〜5倍に希釈することがさらに好ましい。
【0052】
アルカリによる鹸化反応を迅速に停止するため、酸を用いることもできる。少ない量で中和するため、強酸を用いることが好ましい。さらに、水洗の容易さを考慮すると、アルカリと中和反応後に生成する塩が水に対する溶解度が高い酸を選定することが好ましい。塩酸、硝酸、リン酸、クロム酸、スルホン酸、メタンスルホン酸が特に好ましい。
また、アルカリ鹸化液中の炭酸イオン濃度や塩化物イオン濃度が高い場合には、急激な中和反応により沈殿が生じることあり、その場合にはアルカリ中和液中に緩衝性の弱酸を添加することが好ましい。このような弱酸としてはPergamonPress社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ASIDS IN AQUEOUS SOLUTIONに記載のソルビットやサッカロース、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フラクトース、リボース、マンノース及びL−アスコルビン酸などの糖類の他、アルコール類、アルデヒド類、フェノール性水酸基を有する化合物やオキシム類、核酸関連物質などが挙げられる。
【0053】
塗布されたアルカリ鹸化溶液を酸で中和するためには、酸溶液(アルカリ中和液)を塗布する方法、酸溶液を吹き付ける方法、あるいは酸溶液の入った容器にセルロースエステルフイルムごと浸漬する方法が採用できる。酸溶液を塗布する方法と吹き付ける方法がセルロースエステルフイルムを連続搬送しながら実施する上で好ましい。酸溶液を塗布する方法は、必要最小限の酸溶液を用いて実施できるために最も好ましい。
【0054】
アルカリ中和液の塗布は、既にアルカリ鹸化溶液が塗布されたセルロースエステルフイルム上に酸溶液を再度適用できる連続塗布可能な方式であることが望ましい。塗布は、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター(細い金属線を巻いたロッド)が好ましく利用できる。塗布方式に関しては、各種文献(例えば、Modern Coating and Drying Technology, Edward Cohen and Edgar B. Gutoff, Edits., VCH Publishers, Inc, 1992)に記載されている。アルカリ鹸化溶液と中和液とを速やかに混合してアルカリ性を低下させるためには、中和液が塗布される微小領域(塗布ビードと呼ぶこともある)において、流れが層流であるダイコーターよりも、流れが一様とならないロールコーターやロッドコーターが好ましい。
【0055】
アルカリ中和液の塗布量は、アルカリの種類とアルカリ鹸化溶液の濃度に応じて決定する。塗布ビードにおける流れが層流であるダイコーターの場合、中和液の塗布量は、元のアルカリ塗布量の0.1〜5倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることがさらに好ましい。ロールコーターやロッドコーターの場合は、塗布ビード内の流動が一様でないため、アルカリ鹸化溶液と中和液との混合が発生し、混合した液が再塗布される。したがって、この場合は中和液の塗布量によって中和率を特定することができないため、中和液塗布後のアルカリ濃度を測定する必要がある。ロールコーターやロッドコーターにおいては、酸溶液塗布後のpHが4〜9になる様に酸溶液の塗布量を決定することが好ましく、6〜8になるように決定することがさらに好ましい。
【0056】
アルカリ中和液は、アルカリ性を低下させること、フイルム添加物質などの抽出素材をフイルムに付着させないことが目的であるため、中和反応で生じる塩アルカリ鹸化溶液中のアルカリ剤を溶解する溶媒でなければならない。よって、水または水と有機溶剤との混合液を用いることが好ましく、二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。後述するアルカリ鹸化溶液に用いた有機溶剤が有意に用いることができる。好ましい溶剤は水である。
また、アルカリ中和液には、フイルム添加物質などの抽出素材をフイルムに付着させないために界面活性剤を含ませることが好ましい。界面活性剤としては特に限定はないが、後述するアルカリ鹸化溶液に用いる界面活性剤を有利に利用できる。さらに、アルカリ中和液には、後述する緩衝剤を含ませることが洗浄効率を高めるために好ましい。
【0057】
セルロースエステルフイルムの温度を降下させて、鹸化反応を停止することもできる。反応を促進させるために室温以上に保たれた状態から、充分に温度低下させることによって実質的に鹸化反応を停止させる。セルロースエステルフイルムの温度を低下させる手段は、セルロースエステルフイルムの片面が濡れていることを考慮して決定する。塗布の反対面への冷風の衝突、あるいは、冷却ロールによる接触伝熱等が好ましく採用できる。冷却後のフイルム温度は、5℃〜60℃であることが好ましく、10℃〜50℃であることがさらに好ましく、15℃〜30℃であることが最も好ましい。フイルム温度は、非接触式の赤外線温度計で測定することが好ましい。冷却手段に対してフィーッドバック制御を行い、冷却温度を調節することもできる。
【0058】
[洗浄工程]
洗浄工程は、アルカリ鹸化溶液と、アルカリ希釈液もしくはアルカリ中和液とを除去するために実施する。これらの中のアルカリ剤、酸、塩、フイルム添加物質などの抽出素材が残っていると、鹸化反応が進行したり、後に塗布する配向膜ならびに液晶性分子層の塗膜形成や液晶分子の配向に影響を及ぼす。
洗浄は、洗浄水を塗布する方法、洗浄水を吹き付ける方法、あるいは、洗浄水の入った容器にセルロースエステルフイルムごと浸漬する方法で実施できる。洗浄水を塗布する方法と吹き付ける方法が、セルロースエステルフイルムを連続搬送しながら実施するために好ましい。洗浄水を吹き付ける方法では、噴流によってセルロースエステルフイルム上の洗浄水とアルカリ性塗布液との乱流混合が得られるために、特に好ましい。
【0059】
水の吹きつけ方法は、塗布ヘッド(例、ファウンテンコーター、フロッグマウスコーター)を用いる方法、あるいは、空気の加湿や塗装、タンクの自動洗浄に利用されるスプレーノズルを用いる方法で実施できる。塗布方式に関しては、「コーティングのすべて」荒木正義編集、(株)加工技術研究会(1999年)に記載がある。円錐状あるいは扇状のスプレーノズルをセルロースエステルフイルムの幅方向に配列して、全幅に水流が衝突するように配置することができる。市販のスプレーノズル(例えば、(株)いけうち製、スプレーイングシステムズ社製)を用いてもよい。
【0060】
水の吹き付け速度は、大きい方が高い乱流混合が得られる。ただし、速度が大きいと、連続搬送するセルロースエステルフイルムの搬送安定性を損なう場合もある。吹き付けの衝突速度は、50〜1000cm/秒が好ましく、100〜700cm/秒がさらに好ましく、100〜500cm/秒が最も好ましい。
【0061】
単位時間当たりの水吹き付け量の変動は、搬送されるセルロースエステルフイルムの長手方向及び幅方向とも30%未満に制御することが好ましい。ただし、セルロースエステルフイルムの幅方向の両端では、アルカリ鹸化溶液の塗布量や中和に使用した酸溶液の塗布量が多いことがしばしば発生する。塗布量が多い部分の洗浄性を確保するために、幅方向両端の水吹き付け量を増やすこともできる。塗布ヘッドを用いる場合は、両端の流量が多くなるように水が吐出するスリットのクリアランスを広く設定する。また、局所的に両端に水膜を供給するために幅が狭いコーターを別途、設置してもよい。幅が狭いコーターは、複数設置することもできる。スプレーノズルを用いる場合も、両端に局所的に水吹き付けるためのノズルを設置することができる。
【0062】
水洗で一定量の水を用いる場合、一度に全量適用するよりも数回に分割して適用する回分式洗浄方法が好ましい。すなわち、水の量を幾つかに分けて、セルロースエステルフイルムの搬送方向にタンデムに設置した複数の水洗手段に供給する。一つの水洗手段と次の水洗手段との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散によるアルカリ性塗布液の希釈を進行させる。さらに好ましくは、搬送されるセルロースエステルフイルムに傾斜を設けるなどして、フイルム上の水がフイルム面に沿って流れる様にすれば、拡散に加えて、流動による混合希釈が得られる。最も好ましい方法としては、水洗手段と水洗手段の間にセルロースエステルフイルム上の水膜を除去する水切り手段を設けることで、更に水洗希釈効率を高められる。具体的な水切り手段としては、ブレードコーターに用いられるブレード、エアナイフコーターに用いられるエアナイフ、ロッドコーターに用いられるロッド、ロールコーターに用いられるロールが挙げられる。
タンデムに配置された水洗手段の数は、多いほうが有利である。ただし、設置スペースならびに設備コストの観点から、通常は2〜10段、好ましくは2〜5段が使用される。
【0063】
水切り手段後の水膜厚みは、薄い方が好ましいが、用いる水切り手段の種類によって最低水膜厚みが制限される。ブレード、ロッド、ロールなど、物理的に固体をセルロースエステルフイルムに接触させる方法においては、例え固体がゴムなどの硬度の低い弾性体であったとしても、フイルム表面にキズを付けたり、弾性体が磨り減ったりするので有限の水膜を潤滑流体として残す必要がある。通常は、数μm以上、好ましくは10μm以上の水膜を潤滑流体として残存させる。
【0064】
極限まで水膜厚みを減少させられる水切り手段としては、エアナイフが好ましい。充分な風量と風圧を設定することにより、水膜厚みをゼロに近づけることが出来る。ただし、エアの吹出し量が大きすぎると、搬送フィルムのばたつきや片側への片寄りなど、セルロースエステルフイルムの搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。セルロースエステルフイルム上の元の水膜厚み、フイルムの搬送速度にもよるが、通常は10〜500m/秒、好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に水膜除去を行うためには、セルロースエステルフイルムの幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になるようにエアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送するセルロースエステルフイルム表面とエアナイフ吹出し口の間隙は、狭い方が水切り能が増すが、セルロースエステルフイルムと接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。通常は、10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって、エアナイフを設置する。さらに、エアナイフと対向するように、セルロースエステルフイルムの水洗面と反対側にバックアップロールを設置することで、間隙の設定が安定するとともに、フイルムのバタツキやシワ、変形などの影響を緩和することができるので好ましい。
【0065】
洗浄水には、純水を用いることが好ましい。本発明に用いられる純水とは、比電気抵抗が少なくとも0.1MΩ・cm以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1mg/L未満、クロルイオン、硝酸イオンなどのアニオンは0.1mg/L未満であることが好ましい。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、あるいはそれらの組み合わせによって得ることができる。
【0066】
洗浄水の温度は、高い方が洗浄能力が上がる。しかし、搬送されるセルロースエステルフイルム上に水を吹き付ける方法においては、空気と接触する水の面積が大きく、高温ほど蒸発が著しくなるため、周囲の湿度が増し、結露する危険性が高くなる。このため、洗浄水の温度は、通常は5〜90℃、好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは25℃〜60℃の範囲で設定する。
【0067】
アルカリ鹸化溶液の成分、または鹸化反応の生成物が水に容易に溶けない場合、水洗工程の前または後に水に不溶な成分を除去するための溶剤洗浄工程を付加しても良い。溶剤洗浄工程は、上に述べた水洗方法、水切り手段を利用することができる。用いる有機溶剤については、後述のアルカリ鹸化溶液に使用できる溶剤のほか、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載の溶剤を使用することができる。
【0068】
洗浄工程の次に乾燥工程を実施することもできる。通常は、エアナイフなどの水切り手段で充分に水膜を除去できることが多く、乾燥工程は必要でないことあるが、セルロースエステルフイルムをロール状に巻き取る前に、好ましい含水率に調整するために加熱乾燥してもよい。逆に、設定された湿度を有する風で調湿することもできる。乾燥風の温度は30〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
【0069】
本発明のアルカリ鹸化方法は上述した鹸化処理工程の後に連続して機能層の塗設を行うことができる。塗布により片面に鹸化処理を実施し、その上に機能層の塗設を行うことにより、機能層を設けた後にフイルムをロール状に巻き取っても、機能層面とフイルムの反対面との間で貼りついたりすることを防止することができる。
【0070】
[アルカリ鹸化溶液]
アルカリ鹸化溶液は、水または有機溶剤と水との混合液にアルカリを溶解して調製できる。好ましい有機溶媒は、炭素原子数8以下のアルコール、炭素原子数が6以下のケトン、炭素原子数が6以下のエステル、炭素原子数が8以下の多価アルコールから選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である。
【0071】
有機溶剤については、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)に記載があり、有機溶剤の具体例としては、一価アルコール(例、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、メトキシメトキシエタノール、フッ素化アルコールなど)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、多価アルコール(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)およびエーテル(例、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)が挙げられる。
特に好ましいものは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンである。
【0072】
有機溶剤は、セルロースエステルフイルムを溶解したり膨潤したりしないことが必要である。また、アルカリ鹸化溶液の塗布が容易になるように、表面張力が適度に低い有機溶剤を選択することも望ましく、アルカリ鹸化溶液の表面張力は45mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは20〜40mN/mであり、特に好ましくは20〜35mN/mである。
また、有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、溶媒濃度が高すぎるとセルロースエステルフイルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、適切に選択する。
水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、更に好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、フィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理される。
また、これらの有機溶剤はアルカリ希釈液及びアルカリ中和液にも有利に用いることができる。その際の水と有機溶媒の混合比は、50/50〜100/0質量比が好ましい。より好ましくは70/30〜97/3質量比であり、更に好ましくは80/20〜95/5質量比である。
【0073】
アルカリ鹸化溶液のアルカリ剤は、無機アルカリ剤および有機アルカリ剤のいずれも使用できる。低い濃度で鹸化反応をおこすためには強アルカリが好ましい。アルカリ金属の水酸化物(例、NaOH、KOH、LiOH)、アルカリ土類金属の水酸化物、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化アンモニウム、アミン(例、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシド、パーフルオロトリブチルアミン、トリエチルアミン)、および錯塩の遊離塩基(例、[Pt(NH36](OH)4)が好ましく、アルカリ金属の水酸化物がさらに好ましく、NaOHおよびKOHが最も好ましい。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもできる。
【0074】
アルカリ鹸化溶液のアルカリ剤の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間で鹸化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ鹸化溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もある。アルカリ鹸化溶液の濃度は0.1〜5規定(N)であることが好ましく、0.5〜5Nであることがさらに好ましく、0.5〜3Nであることが最も好ましい。
【0075】
鹸化反応に必要なアルカリ塗布量は、セルロースエステルフイルムの単位面積当りの鹸化反応サイト数に配向膜との密着を発現させるために必要な鹸化深さを乗じた総鹸化サイト数(=理論アルカリ塗布量)が目安となる。鹸化反応の進行にともなってアルカリが消費され反応速度が低下するため、実際には上述の理論アルカリ塗布量の数倍を塗布することが好ましい。具体的には、理論アルカリ塗布量の2〜20倍であることが好ましく、2〜5倍であることがさらに好ましい。
【0076】
アルカリ鹸化溶液の温度は、反応温度(=セルロースエステルフイルムの温度)に等しいことが望ましい。使用する有機溶媒の種類によっては、反応温度がアルカリ鹸化溶液の沸点を越える場合もある。安定な塗布を行うためには、アルカリ鹸化溶液の沸点よりも低い温度であることが好ましく、沸点よりも5℃低い温度であることがさらに好ましく、沸点よりも10℃低い温度であることが最も好ましい。
【0077】
本発明のアルカリ鹸化方法は、搬送速度に応じて安定な塗布操作が行えるように、アルカリ鹸化溶液の粘度は0.8〜20mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1〜15mPa・sである。且つ、アルカリ鹸化溶液の表面張力は前述した通りとすることが好ましく、この範囲において、フィルム表面への濡れ性、フィルム表面に塗布した溶液の保持性、鹸化処理後のフィルム表面からのアルカリ液の除去性が充分に行われる。
【0078】
また、本発明のアルカリ鹸化方法においてアルカリ鹸化溶液の密度は、0.65〜1.05g/cm3であることが好ましく、0.70〜1.00g/cm3であることがより好ましい、0.75〜0.95g/cm3であることが特に好ましい。0.65g/cm3以下では搬送による風圧による風ムラが生じ、処理の均一性が損なわれる。また、1.05g/cm3以上では、自重により搬送方向に平行な塗布スジが発生しこれもまた処理の均一性が損なわれ、配向膜の厚みムラの原因となる。さらに、本発明のアルカリ鹸化方法のアルカリ鹸化溶液の電気伝導度は後述する洗浄工程での負荷を最小限にするために1〜100mS/cmであることが好ましく、2〜50mS/cmであることがより好ましく、3〜20mS/cmであることが特に好ましい。電気伝導度が1mS/cmよりも小さいと残存する不純物のために輝点故障(異物欠陥)が多く発生したり、光学補償層の密着不良が生じやすくなる。
また、アルカリ鹸化溶液の液特性として、測定波長400nmにおける液の吸光度は2.0未満であることが好ましい。塗布時にセルロースエステルフイルム中の添加剤を抽出して液の吸光度が上がらないように送液系やコーターの大きさを決定する必要がある。吸光度の高い液を用いると液中に溶け出したセルロースエステルフイルムの添加剤がセルロースエステルフイルム上に付着して輝点故障(異物欠陥)の発生原因となる。アルカリ鹸化溶液の吸光度の制御には活性炭を用い、溶出成分を吸着、除去する方法が利用できる。活性炭は、鹸化溶液中の着色成分を除去する機能を有すれば良く、その形態、材質等に制限はない。活性炭を直接アルカリ鹸化溶液槽に入れる方法であったり、鹸化溶液槽と活性炭を充填した浄化装置間に鹸化溶液を循環させる方法であっても構わない。
【0079】
[界面活性剤]
アルカリ鹸化溶液、アルカリ希釈液及びアルカリ中和液には界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を添加することによって、たとえ有機溶媒がフイルム含有物質を抽出したとしてもアルカリ鹸化溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても抽出物質が析出、固体化を防ぐことができる。
界面活性剤の濃度については、セルロースエステルフイルムからアルカリ鹸化溶液中に抽出された疎水性添加物を安定に分散できる濃度を設定するのがよい。アルカリ鹸化溶液に使用する有機溶剤がセルロースエステルフイルムを溶解したり膨潤したりしないとすると、フイルムより抽出される添加物はフイルム表面近傍からのみである。疎水性添加物の抽出量は、本発明で塗布する1〜50cc/m2のアルカリ鹸化溶液塗布量中に、最大でも1質量%と見積もれる。界面活性剤の濃度は、この抽出量の10倍である10質量%添加すれば、充分な分散特性が得られることが分かった。
一方、界面活性剤の種類によっては、水洗工程で充分洗い落とされずに残留すると、後にセルロースエステルフイルム上に配向膜を塗布する際に、フイルムと配向膜との結合(密着)に支障をきたす場合がある。また、液晶性分子を塗布する際にも液晶性分子の配向を妨げることがあるため、必要以上に添加することは好ましくない。界面活性剤の添加濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。
【0080】
本発明のアルカリ鹸化方法に好ましく用いられる界面活性剤については、本発明のアルカリ鹸化液に溶解または分散可能なものであれば特に制限はない。非イオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤)、イオン性界面活性剤(アニオン、カチオン、両性界面活性剤)等のいずれをも好適に用いることができる。界面活性剤の中でも、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤が溶解性と鹸化性能の観点から好ましく用いられる。
【0081】
これらの界面活性剤は、1種類を単独で添加しても異なるイオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤を1種類以上、またはイオン性と非イオン性を組み合わせて添加してもよい。
【0082】
以下、本発明に使用しうる界面活性剤について順次説明する。
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が好適に挙げられる。
【0083】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0084】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
【0085】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0086】
これらの具体例を示すと、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の重量平均分子量は、300〜50,000が好ましく、500〜5,000が特に好ましい。
【0087】
本発明において、前記ノニオン性界面活性剤の中でも、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1): R1−O(CH2CHR2O)l−(CH2CHR3O)m−(CH2CHR4O)n−R5
一般式(1)中、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基を表す。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基等が挙げられ、前記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基等が挙げられ、前記アルキニル基の具体例としては、アセチル基、プロピニル基等が挙げられ、前記アリール基の具体例としては、フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
l,m,nは0以上の整数を表す。但し、l,m,nの総てが0であることはない。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のホモポリマー、エチレングリコール、プロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。前記共重合体の比率は、10/90〜90/10がアルカリ水溶液への溶解性の点から好ましい。また、共重合体の中でもグラフトポリマー、ブロックポリマーが、アルカリ鹸化溶液に対する溶解性とアルカリ鹸化処理の容易性の点から好ましい。
【0088】
(フッ素系界面活性剤)
フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有する界面活性剤を指す。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型、パーフルオロアルキルベタイン等の両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタン等の非イオン型が挙げられる。
以上の界面活性剤のうち、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等のポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらもまた前記界面活性剤に包含される。前記界面活性剤は、一種単独で使用してもよいし、併用により効果を損なわない限りにおいては、2種以上を併用してもよい。
【0089】
以上の界面活性剤の中で、カチオン性界面活性剤としての前記第4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての前記各種のポリエチレングリコール誘導体類、前記各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類も好ましく用いられる。
アルカリ鹸化溶液には、ノニオン活性剤とアニオン活性剤又はノニオン活性剤とカチオン活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
【0090】
これらの界面活性剤のアルカリ鹸化溶液に対する添加量は、好ましくは、0.001〜20質量%であり、より好ましくは、0.01〜10質量%であり、特に好ましくは、0.03〜3質量%である。添加量が、0.001質量%より少ない場合には、界面活性剤の添加効果が得難く、20質量%よりも多い場合には、鹸化性が低下する傾向がある。
【0091】
[消泡剤]
アルカリ鹸化溶液及びアルカリ希釈液には消泡剤を含有させることが好ましい。この添加剤は、アルカリ鹸化溶液中には、好ましくは0.001〜5質量%、特に好ましくは0.005〜3質量%の濃度で含有させることができる。
一方、アルカリ希釈液中には、好ましくは0.001〜2質量%、特に好ましくは0.005〜0.5質量%の濃度で含有させることができる。
この範囲において、フィルム表面への微小な気泡の付着も無くなり、アルカリ処理による鹸化がムラ無く均一に進行する。
【0092】
消泡剤としては、ヒマシ油、亜麻仁油等の油脂系、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸系、天然ワックス等の脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール等のアルコール系、ジ−t−アミルフェノキシエタノール、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系、トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等の燐酸エステル系、ジアミルアミン等のアミン系、ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミド等のアミド系、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、羊毛オレイン酸のカルシウム塩等の金属石鹸系、ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、フロロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドとの共重合体等のシリコーンオイル、及びその溶液型、エマルジョン型、ペースト型シリコーンオイル等のシリコーン系の消泡剤が挙げられる。
【0093】
本発明に用いるアルカリ鹸化溶液には、アルカリ鹸化溶液への界面活性剤、消泡剤の溶解助剤として、上記した有機溶剤以外の有機溶媒を添加することができる。好ましくは水への溶解度を持つ溶媒であれば特に制限はない。例えば、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミン、フッ化アルコール(例えば、Cn2n+1(CH2kOH(nは3〜8の整数、kは1又は2の整数)、1,2,2,3,3−ヘプタフロロプロパノール、ヘキサフロロブタンジオール、パーフロロシクロヘキサノール等)等を挙げることができる。これらの有機溶剤の含有量は使用液の総重量に対して0.1〜5質量%が好ましい。
【0094】
[防黴剤/防菌剤]
本発明に用いるアルカリ鹸化溶液には、更に、防黴剤及び/又は防菌剤を含有させることが好ましい。本発明において使用される防黴剤及び防菌剤は、アルカリ鹸化に悪影響を及ぼさないものであれば何でもよいが、具体的にはチアゾリルベンズイミダゾール系化合物、イソチアゾロン系化合物、クロロフェノール系化合物、ブロモフェノール系化合物、チオシアン酸やイソチアン酸系化合物、酸アジド系化合物、ダイアジンやトリアジン系化合物、チオ尿素系化合物、アルキルグアニジン化合物、4級アンモニウム塩、有機スズや有機亜鉛化合物、シクロヘキシルフェノール系化合物、イミダゾール及びベンズイミダゾール系化合物、スルファミド系化合物、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムなどの活性ハロゲン系化合物、キレート剤、亜硫酸化合物、ペニシリンに代表される抗生物質など種々の防バクテリア剤や防黴剤などがある。その他L.E.West,"Water Quality Criteria"Phot.Sci.and Eng.,Vol9 No.6(1965)記載の殺菌剤、特開昭57−8542号、同58−105145号、同59−126533号、同55−111942号、同57−157244号公報記載の各種防黴剤、「防菌防黴の化学」堀口博著・三共出版(昭57)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防黴学会・技報堂(昭61)に記載されているような化学物質などを用いることができ、以下に具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
上記した防黴剤及び/又は防菌剤の添加量は、アルカリ水溶液中に0.01〜50g/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05〜20g/Lである。
【0095】
[その他の添加剤]
尚、本発明に用いるアルカリ鹸化溶液には、他の添加剤を併用しても良い。例えば、アルカリ液安定化剤(酸化防止剤等)等が挙げられる。尚、本発明においてアルカリ鹸化溶液の添加剤は、これらに限定されるものではない。
【0096】
[水]
また、アルカリ鹸化溶液に用いる水としては、日本国水道法(昭和32年法律第177号)及びそれに基づく水質基準に関する省令(昭和53年8月31日厚生省令第56号)、同国温泉法(昭和23年7月10日法律第125号及びその別表)、及び、WHO規定水道水基準によって規定される水中の混入の状態に於ける各元素やミネラル等への影響、等に基づくものが好ましい。
【0097】
本発明の効果の達成をより確実にするために、上述した水を用いることが好ましく、アルカリ鹸化溶液のカルシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。マグネシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。カルシウムやマグネシウムの他、多価の金属イオンも含まれないことが好ましい。多価金属イオンの濃度は0.002〜1000mg/Lであることが好ましい。一方、アルカリ鹸化溶液に塩化物イオンや炭酸イオンなどのアニオンも含まないことが好ましい。塩化物イオン濃度は0.001〜500mg/Lであることが好ましく、0.001〜300mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜100mg/Lであるのが特に好ましい。また、炭酸イオンも含まれないことが好ましい。炭酸イオン濃度は0.001〜3500mg/Lであることが好ましく、0.001〜1000mg/Lであるのが更に好ましく、0.001〜200mg/Lであるのが特に好ましい。以上の各イオン種とも濃度が低いほど好ましく、下限の0.001mg/Lとは、測定限界以下であることを意味している。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
【0098】
[光学補償シート]
鹸化処理したセルロースエステルフイルムは、光学補償シートの透明支持体として好ましく用いられる。
光学補償シートは、アルカリ鹸化溶液を塗布することにより鹸化したセルロースエステルフイルム、配向膜形成用樹脂層、および液晶性分子の配向を固定化した光学異方層が、この順に積層された層構成を有する。
配向膜の形成においては、セルロースエステルフイルムを加熱する工程、セルロースエステルフイルムの配向膜側の表面にアルカリ鹸化溶液を塗布する工程、アルカリ鹸化溶液塗布面の温度を維持する工程、反応を停止する工程、アルカリ鹸化溶液を洗浄してフイルムの表面から除去する工程に次いで、配向膜を塗布して乾燥する工程を付加することもできる。さらに、配向膜を塗布、乾燥後に配向膜表面をラビング処理し、液晶性分子層を塗布、乾燥して、最終的な光学補償シートまで完成することもできる。
セルロースエステルフイルムの鹸化処理のみならず、配向膜、液晶性分子層を一貫して形成することにより、高い生産性が得られる。さらに、鹸化処理から配向膜塗布までの時間経過がないこと、活性化した鹸化面の劣化が少ないこと、鹸化処理の水洗工程が湿式の除塵と兼ねられること、複数回の送り出し、巻取りに伴うロール末端部のロスが発生しないことが、一貫形成の利点として挙げられる。
【0099】
光学補償シートは、鹸化処理したセルロースエステルフイルムからなる透明支持体、その上に設けられた配向膜および配向膜上に形成された円盤状構造単位を有する光学異方層からなる。配向膜は架橋されたポリマーからなるラビング処理された膜であることが好ましい。
光学異方層に用いられる円盤状構造単位を有する化合物としては、低分子量の円盤状液晶性化合物(モノマー)または重合性円盤状液晶性化合物の重合により得られるポリマーを用いることができる。円盤状化合物(ディスコティック化合物)は、一般に、ディスコティック液晶相(即ち、ディスコティックネマチック相)を有する化合物とディスコティック液晶相を持たない化合物に大別することができる。円盤状化合物は、一般に負の複屈折を有し、本発明に係る光学異方層は、ディスコティック化合物のこの負の複屈折性を有する。光学異方層は、ディスコティック化合物の負の複屈折性を利用したものである。
【0100】
[配向膜]
光学異方層の配向膜は、架橋されたポリマーからなる膜をラビング処理して形成することが好ましい。配向膜は、架橋された2種のポリマーからなることがさらに好ましい。2種のポリマーの一方は、それ自体架橋可能なポリマーまたは、架橋剤により架橋されるポリマーである。配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はpH変化により、ポリマー間で反応させて形成するか、あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0101】
ポリマーの架橋は、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。配向膜を透明支持体上に塗設した後から、光学補償シートを得るまでのいずれかの段階で架橋させる処理を行なってもよい。配向膜上に形成される円盤状構造を有する化合物(光学異方層)の配向を考慮すると、円盤状構造を有する化合物を配向させた後に最終の架橋を行なうことも好ましい。すなわち、透明支持体上にポリマーおよびポリマーを架橋することができる架橋剤を含む塗布液を塗布した場合、加熱乾燥した後、ラビング処理を行なって配向膜を形成し、次いでこの配向膜上に円盤状構造単位を有する化合物を含む塗布液を塗布し、ディスコティックネマチック相形成温度以上に加熱した後、冷却して光学異方層を形成する。
【0102】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ゼラチン、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが好ましく、ポリビルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが特に好ましましく、重合度の異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
【0103】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、85〜95%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。共重合変性の場合の導入基の例には、COONa、Si(OX)3 、N(CH33 ・Cl、C919COO、SO3 、Na、C1225が含まれる?(Xは、プロトンまたはカチオンである)。連鎖移動変性基の場合の導入基の例には、COONa、SH、C1225が含まれる。ブロック重合変性の場合の導入基の例には、COOH、CONH2、COOR、C65 が含まれる(Rは、アルキル基である)。
これらの中でも鹸化度が85〜95%である未変性ポリビニルアルコールまたはアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0104】
変性ポリビニルアルコールは、下記一般式(2)で表される化合物とポリビニルアルコールとの反応性生物であることが好ましい。
一般式(2)
【0105】
【化1】
Figure 2004203965
【0106】
一般式(2)において、R11 は、無置換のアルキル基、アクリロリル置換アルキル基、メタクリロイル置換アルキル基またはエポキシ基置換アルキル基であり、Wは、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、Xは、活性エステル、酸無水物または酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群であり、pは、0または1であり、nは0〜4の整数である。
【0107】
変性ポリビニールアルコールは、下記一般式(3)で表される化合物とポリビニルアルコールとの反応生成物であることがさらに好ましい。
一般式(3)
【0108】
【化2】
Figure 2004203965
【0109】
一般式(3)において、X1は活性エステル、酸無水物または酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群であり、そして、mは2〜24の整数である。
【0110】
一般式(2)および一般式(3)で表される化合物と反応させるポリビニルアルコールは、変性ポリビニルアルコール(共重合変性、連鎖移動変性、ブロック重合変性)であってもよい。ポリビニルアルコールの合成方法、可視吸収スペクトル測定および変性基の導入率の決定方法は、特開平8−33891号公報に詳しく記載がある。
【0111】
ポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド(例、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド)、N−メチロール化合物(例、ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン)、ジオキサン誘導体(例、2,3−ジヒドロキシジオキサン)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物(例、カルベニウム、2−ナフタレンスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−クロロピリジニウム、1−モルホリノカルボニル−3−(スルホナトアミノメチル))、活性ビニル化合物(例、1、3、5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン、N’−メチレンビス−[β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド])、活性ハロゲン化合物(例、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン)、イソオキサゾール類およびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0112】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
【0113】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である架橋剤を含む上記ポリマーを透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0114】
配向膜は、透明支持体上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物の配向方向を規定するために設けられる。
【0115】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0116】
[光学異方層]
光学補償シートの光学異方層は、配向膜上に形成される。光学異方層は、円盤状構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であることが好ましい。光学異方層は、低分子量の液晶性円盤状化合物(モノマー)の層または重合性の液晶性円盤状化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層である。円盤状(ディスコティック)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990年)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基がその直鎖として放射線状に置換された構造である。円盤状化合物には、液晶性を示すディスコティック液晶が含まれる。円盤状化合物から形成した光学異方層には、熱や光で反応する基を有する低分子ディスコティック液晶を反応させて重合または架橋することにより、高分子量化して液晶性を失ったものも含まれる。円盤状化合物については、特開平8−50206号公報に記載がある。
【0117】
光学異方層は、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であって、そしてディスコティック構造単位の面が、透明支持体面に対して傾き、且つ該ディスコティック構造単位の面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向に変化していることが好ましい。
【0118】
ディスコティック構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方層の深さ方向でかつ光学異方層の配向膜底面からの距離の増加と共に増加または減少している。上記傾斜角は、距離の増加と共に増加することが好ましい。更に、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、および増加および減少を含む間欠的変化等を挙げることができる。間欠的変化は、厚み方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。傾斜角は、変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していることが好ましい。さらに、傾斜角は全体として増加していることが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
【0119】
上記光学異方層は、一般にディスコティック化合物および他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、上記光学異方層は、ディスコティック化合物および他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
【0120】
支持体側のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいはディスコティック化合物と共に使用する他の化合物(例、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマー)を選択することにより調整することができる。更に、傾斜角の変化の程度も上記選択により調整することができる。
【0121】
可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーとしては、ディスコティック化合物と適度の相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の量にて使用される。
【0122】
ポリマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーも使用することができる。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。上記ポリマーは、液晶性ディスコティック化合物の配向を阻害しないように、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%の量にて使用される。
【0123】
[偏光板]
偏光板は、ポリマーフイルム上に配向膜および液晶性分子の配向を固定化した光学異方層を設けた光学補償シート、偏光膜、透明保護膜がこの順に積層された層構成を有する。透明保護膜には、通常のセルロースアセテートフイルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、2色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
ポリマーフイルムの遅相軸と偏光膜の透過軸の関係は、適用される液晶表示装置の種類により異なる。TN、MVA、およびOCBの場合は、実質的に平行になるように配置する。反射型液晶表示装置の場合は、実質的に45度となるように配置することが好ましい。
【0124】
[液晶表示装置]
光学補償シートまたは偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。
TN、MVA、およびOCBモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる。液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、1枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置する。
OCBモードの液晶表示装置の場合、光学補償シートは、ポリマーフィルム上に円盤状化合物、もしくは棒状液晶化合物を含む光学異方層を有していても良い。光学異方層は、円盤状化合物(もしくは棒状液晶化合物)を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。
円盤状化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、円盤状化合物には、多様な配向形態がある。従って、円盤状化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。円盤状化合物を用いた光学補償シートについては、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、西独特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。
【0125】
偏光板では、液晶セルと偏光膜との間に配置される透明保護膜として、前記のポリマーフイルムを用いることができる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)透明保護膜のみ上記のポリマーフイルムを用いるか、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光膜との間の)2枚の透明保護膜に、上記のポリマーフイルムを用いる。
液晶セルはOCBモード、またはTNモードであることが好ましい。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速い利点がある。TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0126】
【実施例】
以下の実施例によって、本発明の具体的態様と効果をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(セルロースエステルフイルムCF−1の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0127】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液A組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルローストリアセテート(置換度2.83、6位のアシル化
置換度0.93、2,3位の置換度合計1.90、粘度平均重合
度320、含水率0.4%、6質量%メチレンクロライド溶液の
粘度305mPa・s) 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 60質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0128】
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を分散、混合し、マット剤溶液を調製した。
【0129】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶媒) 12質量部
セルロースアセテート溶液A 10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0130】
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0131】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション上昇剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のレターデーション上昇剤 19.8質量部
下記のUV吸収剤(A) 0.07質量部
下記のUV吸収剤(B) 0.13質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.5質量部
メタノール(第2溶媒) 9.0質量部
セルロースアセテート溶液A 12.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0132】
【化3】
Figure 2004203965
【0133】
【化4】
Figure 2004203965
【0134】
上記セルロースアセテート溶液Aを95質量部、マット剤溶液を1質量部、レターデーション上昇剤溶液4質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.9%であった。残留溶剤量30%でフイルムをバンドから剥離し、130℃の条件で、残留溶剤量が15質量%のフイルムをテンターを用いて30%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま140℃で30秒間保持した。その後、クリップを外して140℃で乾燥させセルロースアセテートフイルムCF−1を作製した。出来あがったセルロースアセテートフイルムの膜厚は80μmであった。
【0135】
(アルカリ鹸化溶液(S−1)及びアルカリ希釈液(SK−1)の調整)
下記処方のアルカリ鹸化溶液(1.0N)及びアルカリ希釈液を調整した。
【0136】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ鹸化水溶液(S−1)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
KOH 560質量部
イソプロパノール 6080質量部
ジエチレングリコール 1680質量部
下記の非イオン性界面活性剤 100質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 2質量部
水 1578質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0137】
【化5】
Figure 2004203965
【0138】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ希釈液(SK−1)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
イソプロパノール 500質量部
ジエチレングリコール 200質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 1質量部
純水 9299質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0139】
(鹸化処理フイルムKF−1の作製)
セルロースアセテートフイルムCF−1を60℃に加熱した誘電式加熱ロールを通過させ、30℃まで昇温した後に、30℃に保温したアルカリ鹸化水溶液(S−1)をロッドコーターを用いて15cc/m2塗布した。110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテッド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に10秒滞留させた(フィルムの温度は30〜50℃)後に、同じくロッドコーターを用いてアルカリ希釈液を20cc/m2塗布し、アルカリを洗い落とした。この時、フイルム温度は40〜55℃に維持されており、アルカリ希釈液塗布後の塗膜のKOH濃度は0.4規定となった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返し、アルカリ剤を洗い落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、アルカリ鹸化処理フイルムKF−1を作製した。
【0140】
アルカリ希釈液SK−1の炭酸イオン濃度は750mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は30mg/Lであり、塩化物イオン濃度は18mg/Lであった。
【0141】
(配向膜の形成)
鹸化処理フイルムKF−1の鹸化処理面に下記の配向膜塗布液をロッドコーターで30cc/m2塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の熱風で150秒間、乾燥した後に搬送方向に直角に配置したベルベット布ラビングロールを用いて、ラビング処理を行って配向膜を形成した。
【0142】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
変性ポリビニルアルコール 100質量部
水 1800質量部
メタノール 600質量部
グルタルアルデヒド 2.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0143】
【化6】
Figure 2004203965
【0144】
(光学補償シート(KHF−1)の作製)
上記、KF−1に形成した配向膜の上に、下記処方のディスコティック化合物溶液を#4のワイヤーバーで塗布した。続けて塗布部に直結する130℃の熱風ゾーンで2分間加熱し、円盤状化合物を配向させた。最後に80℃の雰囲気下のもと、膜面温度が約100℃の状態で120W/cm高圧水銀灯を用いて、0.4秒間UV照射しディスコティック化合物を重合させ、光学異方層を形成し、光学補償シートKHF−1を作製した。
【0145】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ディスコティック化合物溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック化合物 2735質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパン
トリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製) 80質量部
多官能アクリレートモノマー
(NKエステル A−TMMT 新中村化学工業製) 190質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 60質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 15質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 90質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 30質量部
メチルエチルケトン 6800質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0146】
光学補償フイルムKHF−1の波長633nmで測定した光学異方層のReレターデーション値は38nmであった。また、円盤面と第1透明支持体(上記支持体 KF-1)面との間の角度(傾斜角)は平均で35°であった。
【0147】
【化7】
Figure 2004203965
【0148】
(アルカリ希釈液(SK−2〜SK−9)の調整)
アルカリ希釈液SK−1の純水を半導体デバイス工場レベルの超純水、及び市水又は井水とを混合した水に変えて、表1に示すようにアルカリ希釈液のイオン量を変える以外はアルカリ希釈液SK−1と同様にアルカリ希釈液SK−2〜SK−9を調整した。
【0149】
【表1】
Figure 2004203965
【0150】
(光学補償シート(KHF−2〜KHF−9)の作製)
アルカリ鹸化処理フイルムKF−1と同様にしてアルカリ鹸化処理フイルム(KF−2〜KF−9)を作製し、さらに光学補償フイルム(KHF−2〜KHF−9)を作製した。
【0151】
(鹸化処理フイルムの評価方法)
得られた鹸化処理フイルムKF−1〜KF−9について、日本電色(株)社製NDH−300A型光学試験機を用いてヘイズの測定を行った。結果を表2に示す。
【0152】
(光学補償シートの評価方法)
<異物欠陥>
得られた、光学補償シートKHF−1〜KHF−9を、クロスニコルス配置した2枚の偏光板の間に挟み、透過光が異物によりムラとなる異物欠陥を目視で観察した。17インチ画面内に何箇所、輝点があるかをカウントした。表2に評価結果を示す。
<密着性>
また、各光学補償シートを30cm×25cmに裁断し、温度が25℃で相対湿度が60%の条件下で1日放置した後、光学異方層側に幅1.2cm、長さ10cmのセロテープ(ニチバン社製No.405)を100枚貼り付け、1枚ずつ1秒間ではがし取り、フイルムと配向膜の間で剥離する状態を検査した。100枚のセロテープの内、何枚に塗布層間の破壊が発生するかによって、相対的な密着性の優劣を評価した。表2に評価結果を示す。
【0153】
【表2】
Figure 2004203965
【0154】
表2に示されるように、本発明の好ましいアルカリ希釈液SK−1〜SK−6は、アルカリ鹸化処理の水洗の際にアルカリ剤や脂肪酸塩などが鹸化フイルムに付着することなく、十分に低いヘイズレベルの鹸化処理フイルムが得られることがわかる。また、異物欠陥や密着不良が見られない良好な光学補償シートKHF−1〜KHF−6を得ることができる。一方、比較試料のアルカリ希釈液SK−7によってアルカリ希釈された後水洗されて得られた鹸化処理フイルムのヘイズは高く、その光学補償シートは異物欠陥、密着不良が発生し光学補償シートとして不適であることが分かる。また、本発明例であるが、多価金属イオン濃度が好ましい範囲を超えているSK−8,又は塩化物イオン濃度が濃度が好ましい範囲を超えているSK−9によってアルカリ希釈された後水洗されて得られた鹸化処理フイルムのヘイズ、異物欠陥及び密着性は、SK−1〜SK−6よりは劣っており、本発明例の中でも、炭酸イオン濃度が3500mg/L以下であることに加えて多価金属イオン濃度及び塩化物イオン濃度がともに低いことが特に好ましいことが示されている。)
【0155】
[実施例2]
(アルカリ鹸化溶液(S−2)及びアルカリ中和液(ST−10)の調整)
下記処方のアルカリ鹸化水溶液(1.7N)及びアルカリ中和液を調整した。
【0156】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ鹸化水溶液(S−2)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
NaOH 680質量部
下記のアニオン型界面活性剤: 110質量部
消泡剤:プルロニックTR701(旭電化工業(株) 1質量部
純水 9209質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0157】
【化8】
Figure 2004203965
【0158】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ中和液(ST−10)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸 800質量部
L−アスパラギン酸 199質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 1質量部
純水 9000質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0159】
(鹸化フイルム(KF−10)の作成)
セルローストリアセテートフイルムとしてフジタックTD80UF(富士写真フイルム(株)製)を用い、これに100℃の熱風を衝突させ、45℃まで加熱した後、30℃に保温したアルカリ鹸化溶液(S−2)をロッドコーターを用いて、8cc/m2塗布し10秒間経過後、再びロッドコーターを用いてアルカリ中和液(ST−10)を20cc/m2 塗布した。この時のフイルム維持温度は45℃であった。次いで、エクストルージョン型コーターを用いて1000cc/m2 の純水を塗布し、水洗を行い、5秒間経過後に100m/秒の風をエアナイフより水塗布面に衝突させた。このエクストルージョンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを2回繰り返した後に80℃の乾燥ゾーンに10秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理フイルムKF−10を作製した。この鹸化処理フイルムに対する水の接触角は47度、この鹸化フイルムの表面自由エネルギーは68mN/mであった。
【0160】
このアルカリ中和液(ST−10)の炭酸イオン濃度は860mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は2.3mg/Lであり、塩化物イオン濃度は1.1mg/Lであった。
【0161】
(光学補償シート(KHF−10)の作製、評価)
実施例1に記載の光学補償フイルムKHF−1と同様にして、光学補償フイルム(KHF−10を作製した。
性能を評価した結果光学補償フイルムKHF−1と同様に優れた性能を示した。
【0162】
[実施例3]
(偏光板(HB−1〜HB−10)の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1、2で作成した光学補償シート(KHF−1〜KHF−10)を偏光膜の片側に、もう一方には市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)に実施例1と同様に鹸化処理を行い貼り付けた後、80℃で10分間乾燥させた。
偏光膜の透過軸と光学補償シートの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアセテートフイルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−1〜HB−10)を作製した。
【0163】
(TN型液晶表示装置の組み上げ、評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記に作製した偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置し液晶表示装置を組み上げた。
【0164】
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
結果を表3に示すが、本発明よりも高い炭酸イオン濃度、多価金属イオン濃度、塩化物イオン濃度のアルカリ希釈液を使用した光学補償フイルムを用いた偏光板HB−7〜HB−9を用いた液晶表示装置では液晶画面の全面が曇って、輝度が低下したが、本発明のHB−1、HB−2、HB−3、HB−4、HB−5、HB−6及びHB−10においては、高い輝度が得られた。
【0165】
【表3】
Figure 2004203965
【0166】
[実施例4]
(垂直配向型液晶表示装置の組み上げ、評価)
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記実施例3で作製した偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸が上下方向に、バックライト側の偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロス二コル配置として液晶表示装置を組み上げた。
【0167】
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
本発明のアルカリ鹸化水溶液を使用した光学補償フイルムを用いた偏光板を用いた液晶表示装置においては、高い輝度を有し、描画ムラのない良好な液晶表示装置が得られた。
【0168】
[実施例5]
(ベンド配向型液晶表示装置の組み上げ、評価)
ベンド配向型液晶セルを作製し、作製したベンド配向セルを挟むように、上記実施例3で作製した偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。
液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方層のラビング方向とが反平行になるように配置した。
【0169】
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
本発明のアルカリ鹸化水溶液を使用した光学補償フイルムを用いた偏光板を用いた液晶表示装置においては、高い輝度を有し、描画ムラのない良好な液晶表示装置が得られた。
【0170】
[実施例6]
(鹸化フイルム(KF−11)の作製、偏光板保護フイルム作製)
特開2002−182033号公報の実施例1の記載にしたがって、反射防止膜を設けたセルロースアシレートフイルムを作製した。次に、このセルロースアシレートフイルムの防汚層の表面にポリエチレンテレフタレートフイルム(SAT−106TS、(株)サンエイ化研製)を貼り合わせた。このフイルムを、浸漬処理装置として電子製版システム用のマスターエッチングプロセッサー:E−380IIを用いて、この装置に下記内容のアルカリ鹸化溶液(S−1)を入れて液温50℃に設定した。フイルムの浸漬時間が30秒間になるようにして浸漬した後、アルカリ希釈液(SK−11)に浸漬してアルカリ鹸化溶液を希釈した。次いで、アルカリ中和液(ST−12)に10秒間浸漬した後、純水槽に浸漬して充分に洗浄した。さらにこのフイルムを100℃で乾燥させて鹸化セルロースアシレートフィルム(KF−11)を8000m(10000m2)作製した。ポリエチレンテレフタレートフイルムを、セルローストリアセテートフイルムから取り除き、第1偏光板保護フイルムを作製した。
【0171】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ希釈液(SK−11)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
非イオン性界面活性剤 (S−1で使用の活性剤) 30質量部
消泡剤サーフィノールDF110D(日信化学工業(株)製) 1質量部
純水 9769質量部
―――――――――――――――――――― ――――――――――――
【0172】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ中和液(ST−12)処方
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
L−アスパラギン酸 100質量部
純水 9900質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0173】
アルカリ希釈液SK−11を300L調整した時の炭酸イオン濃度は330mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は44mg/Lであり、塩化物イオン濃度は12mg/Lであった。処理終了後の炭酸イオン濃度は3030mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は227mg/Lであり、塩化物イオン濃度は32mg/Lであった。
【0174】
アルカリ中和ST−12を300L調整した時の炭酸イオン濃度は360mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は52mg/Lであり、塩化物イオン濃度は18mg/Lであった。処理終了後の炭酸イオン濃度は1420mg/Lであり、カルシウム、マグネシウムを含む多価金属イオン濃度の総和は118mg/Lであり、塩化物イオン濃度は25mg/Lであった。
【0175】
アルカリ鹸化水溶液の鹸化処理前と10000m2処理後の400nmの吸光度を測定した結果、処理前は0.00であり処理後は1.88であった。
【0176】
(偏光板の作製)
厚さ25μmのポリビニルアルコールフイルム(クラレ(株)製)を、ヨウ素7質量部およびヨウ化カリウム100質量部を水1000質量部に溶解した水溶液に5分間浸漬し、フイルムにヨウ素を吸着させた。次いで、フイルムを40℃の4質量%ホウ酸水溶液中で、4.0倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に第1偏光板保護フイルムの鹸化処理面を貼り合わせ、もう一方に実施例1で作成した光学補償シート(KHF−1)に鹸化処理を行い、そのセルロースアシレートフイルム面を貼り付けた後、80℃で10分間乾燥させ、偏光板(HB−11)を作製した。
【0177】
(偏光板の評価)
上記のようにして偏光板を各100枚作製し、それぞれ、アクリル系接着剤を用いてガラス板に貼り合わせ、恒温恒湿槽にて温度が70℃で湿度が90%RHの雰囲気と温度が25℃で湿度が90%RHの雰囲気に12時間ずつ交互に設定変更し、のべ1200時間放置して耐久性試験を行った。偏光板とガラス板の間の剥がれ、泡の発生状況を調べところ、偏光板100枚全てにおいて剥がれ、泡の発生が認められなかった。
また、実施例3と同様に新たに、TN型液晶表示装置を組み上げ、作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。全画面にムラ等の視覚上の欠陥は全く見られなかった。
【0178】
【発明の効果】
炭酸イオン濃度が3500mg/L以下のアルカリ鹸化溶液除去用希釈液又は中和液を使用する本発明のセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化方法によれば、フイルム表面の均一性と平面性に優れた鹸化を行なうことができ、しかも片面を選択的にアルカリ鹸化することができる。さらに、上記炭酸イオン濃度が低いことに加えて、多価金属イオン濃度が500mg/L以下で塩素イオン濃度が300mg/L以下であれば、上記の効果は一層顕著となる。
このアルカリ鹸化フィルムは、表示欠陥のない大きい面積の液晶表示装置用光学補償シートなどの光学フィルムに容易に組み込むことができる。また、光学補償フィルムの透明支持体と配向膜との密着性に優れた透明支持体用セルロースエステルフイルムが得られる。

Claims (8)

  1. アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程と、該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程とを少なくとも含むアルカリ鹸化方法において、アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程に用いるアルカリ希釈液又は中和液中の炭酸イオン濃度が3500mg/L以下であることを特徴とするセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法。
  2. 該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液又は中和液中の多価金属イオン濃度が500mg/L以下であって、かつ塩素イオン濃度が300mg/L以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ鹸化方法。
  3. 該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液または、中和液中に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ鹸化方法。
  4. 該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液又は中和液の溶媒が水又は、水及び有機溶剤からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
  5. 該アルカリ鹸化溶液をフイルムから洗い落とす工程のアルカリ希釈液中に消泡剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
  6. 該アルカリ鹸化溶液を用いてセルロースエステルフイルムを処理する工程がセルロースエステルフイルムにアルカリ鹸化溶液を塗布する工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ鹸化方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のセルロースエステルフイルムのアルカリ鹸化方法により作製されて得られることを特徴とする表面鹸化セルロースエステルフイルム。
  8. 請求項7に記載の表面鹸化セルロースエステルフイルムを用いたことを特徴とする光学フイルム。
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