JP2004203772A - アリルハライド誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、飼料添加物、食品添加物などとして用いられるビタミンA誘導体や種々のテルペン化合物の中間体として有用なアリルハライド誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、ハロゲン化水素は最も安価かつ工業的にも取扱い容易なハロゲン化剤として知られているが、下記一般式(1)で示されるアリルアルコール誘導体のハロゲン化水素を用いたハロゲン化による下記一般式(3)で示されるアリルハライド誘導体の合成法は知られていなかった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはアリルハライド誘導体(3)の工業的に有利な製造方法を開発するべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で示されるアリルアルコール誘導体にハロゲン化水素を作用させることによって二重結合の異性化もなくアリルハライド誘導体(3)が合成できることを見出し、本発明に至った。
【0004】
すなわち、本発明は一般式(1)
(式中、Arは置換基を有していてもよいアリール基、波線はE/Z幾何異性体のいずれか一方もしくはそれらの混合物であることを表す。)
で示されるアリルアルコール誘導体と一般式(2)
HX (2)
(式中、Xはハロゲン原子を表す)
で示されるハロゲン化水素とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
(式中、Ar、Xおよび波線は前記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド誘導体の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明における一般式で示される化合物の置換基Arは、置換基を有していてもよいアリール基を示し、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、置換基としては、C1〜C5の直鎖または分枝状のアルキル基、C1〜C5の直鎖または分枝状のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基等が挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル、o−トリル,m−トリル,p−トリル、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル、o−ブロモフェニル、m−ブロモフェニル、p−ブロモフェニル、o−ヨ−ドフェニル、m−ヨ−ドフェニル、p−ヨードフェニル、o−フルオロフェニル、m−フルオロフェニル、p−フルオロフェニル、o−ニトロフェニル、m−ニトロフェニル、p−ニトロフェニル等が挙げられる。
【0006】
また、置換基Xはハロゲン原子を示し、具体的には塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0007】
本発明の原料化合物であるアリルアルコール誘導体(1)は、特開2002−193919号に記載された方法により容易に製造することができる。
【0008】
本発明においては、前記一般式(3)で示されるアリルハライド誘導体は前記一般式(1)で示されるアリルアルコール誘導体にハロゲン化水素を反応させることにより製造することができる。かかるハロゲン化水素としては、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素が挙げられる。使用量としては、アリルアルコール誘導体(1)に対し通常1モル倍以上であり、好ましくは、1〜30モル倍程度である。
【0009】
上記反応に用いるハロゲン化水素としては、ハロゲン化水素水溶液も用いることができる。ハロゲン化水素水溶液としては、塩化水素水溶液(塩酸)、臭化水素水溶液(臭化水素酸)、およびヨウ化水素水溶液(ヨウ化水素酸)が挙げられる。使用量はアリルアルコール誘導体(1)に対して、通常1モル倍以上であり、好ましくは、1〜20モル倍程度である。
【0010】
上記反応には通常、溶媒が用いられ、かかる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶媒、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、 クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒またはN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられ、好ましくは、炭化水素系溶媒が挙げられる。
反応温度は通常、−78℃から溶媒の沸点までの範囲内で任意に選択できるが、二重結合の異性化を抑制するためには40℃以下で行うのが好ましい。反応時間は、反応で用いるハロゲン化水素の種類ならびに反応温度によって異なるが、通常1時間から48時間程度の範囲である。
【0011】
ハロゲン化水素水溶液を用いる場合、相間移動触媒を共存させなくても良いが、二重結合の異性化を抑制するためには相間移動触媒を共存させる方がより好ましい。かかる相間移動触媒としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラデシルアンモニウム、塩化トリデシルメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化テトラドデシルアンモニウム、塩化トリドデシルメチルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリエチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラヘキサデシルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化テトラオクタデシルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化1−メチルピリジニウム、塩化1−ヘキサデシルピリジニウム、塩化1,4―ジメチルピリジニウム、塩化トリメチルシクロプロピルアンモニウム、あるいはこれらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩、硫酸水素塩となった化合物が挙げられる。
【0012】
第四級ホスホニウム塩としては、例えば、塩化トリブチルメチルホスホニウム、塩化トリエチルメチルホスホニウム、塩化メチルトリフェノキシホスホニウム、塩化ブチルトリフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム、塩化テトラオクチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルジメチルエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、あるいはこれらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩となった化合物が挙げられる。
【0013】
スルホニウム塩としては、例えば、塩化ベンジルメチルエチルスルホニウム、塩化ベンジルジメチルスルホニウム、塩化ベンジルジエチルスルホニウム、塩化ジブチルメチルスルホニウム、塩化トリメチルスルホニウム、塩化トリエチルスルホニウム、塩化トリブチルスルホニウム、あるいはこれらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩となった化合物が挙げられる。
【0014】
かかる相間移動触媒の使用量は、アリルアルコール誘導体(1)に対して通常、0.001〜0.3モル倍、好ましくは0.01〜0.2モル倍程度の範囲である。
【0015】
反応後、得られたアリルハライド誘導体(3)は抽出、洗浄、晶析、各種クロマトグラフィーなどにより単離精製することができる。
【0016】
【発明の効果】
かくして本発明の方法によれば安価かつ工業的にも取扱いの容易なハロゲン化剤であるハロゲン化水素を用いてアリルアルコール誘導体(1)からアリルハライド誘導体(3)を効率よく製造することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
Tsはp−トルエンスルホニル基を表す。
【0018】
(製造例1)
室温下、アルコール(I)382mg(1mmol)(trans/cis = 93/7)をトルエン5mlに溶解し、塩化水素(気体)(20mmol)を5mL/minの速度で吹き込んだ。吹込み後そのまま2時間撹拌した。反応後、水に注加し酢酸エチルにて抽出した。得られた有機相は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルクロリド(II)の収率は86%(trans/cis = 91/9)であった。
【0019】
(製造例2)
室温下、アルコール(I)191mg(0.5mmol) (trans/cis = 93/7)をトルエン3mlに溶解し、塩酸(35%水溶液)(5mmol)を滴下した。50℃まで昇温し同温で7時間撹拌した。反応後、水に注加し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルクロリド(II)の収率は91%(trans/cis = 81/19)であった。
【0020】
(製造例3)
室温下、アルコール(I)204mg(0.5mmol) (trans/cis = 89/11)をヘキサン10mlに溶解し、塩酸(35%水溶液)(5mmol)を滴下した。その後、35℃まで昇温し同温で10時間撹拌した。反応後、水に注加し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機相は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルクロリド(II)の収率は91%(trans/cis = 87/13)であった。
【0021】
(製造例4)
室温下、アルコール(I)204mg(0.5mmol) (trans/cis = 89/11)をトルエン3.5mlに溶解し、塩酸(35%水溶液)(5mmol)を滴下した。その後、35℃まで昇温し同温で9.5時間撹拌した。反応後、水に注加し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機相は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルクロリド(II)の収率は79%(trans/cis = 84/16)であった。
【0022】
(製造例5)
室温下、アルコール(I)204mg(0.5mmol) (trans/cis = 89/11)とヨウ化テトラブチルアンモニウム18.5mg(0.05mmol)をトルエン3.5mlに溶解し、塩酸(35%水溶液)(5mmol)を滴下した。その後、35℃まで昇温し同温で7時間撹拌した。反応後、水に注加し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機相は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルクロリド(II)の収率は72%(trans/cis = 90/10)であった。
【0023】
(製造例6)
ヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.05mmol)を臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム(0.06mmol)に代えた以外は実施例(4)と同様に反応を行い、アリルクロリド(II)を収率68%(trans/cis = 91/9)で得た。
【0024】
(製造例7)
室温下、アルコール(I)204mg(0.5mmol) (trans/cis = 89/11)をトルエン3.5mlに溶解し、臭化水素酸(48%水溶液)(5mmol)を滴下した。35℃まで昇温し同温で5時間撹拌した。反応後、水に注加し、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィーにて定量したところアリルブロミド(III)の収率は85%(trans/cis = 90/10)であった。
Claims (7)
- 一般式(2)で示されるハロゲン化水素が塩化水素又は臭化水素である請求項1に記載のアリルハライド誘導体の製造方法。
- 一般式(2)で示されるハロゲン化水素がハロゲン化水素水溶液である請求項1に記載のアリルハライド誘導体の製造方法。
- ハロゲン化水素水溶液が塩化水素水溶液又は臭化水素水溶液である請求項3に記載のアリルハライド誘導体の製造方法。
- 一般式(1)で示されるアリルアルコール誘導体とハロゲン化水素水溶液との反応において、相間移動触媒の存在下に反応させる請求項3又は4に記載の製造方法。
- 炭化水素系溶媒を用いて反応させる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 40℃以下の温度で反応させる請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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