JP2004203240A - サスペンションクロスメンバ - Google Patents

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Abstract

【課題】アッパメンバプレートとロアメンバプレートとが二股に分岐して延びる両端の分岐基端部近傍でそれぞれ乖離して開口し且つ該開口する部分を除き閉断面を形成するよう周縁で接合されて一体に構成され、該開口から挿入されるロアアームの後側アームの支持点が上記分岐基端部より車両前後方向後側に閉断面の内部に位置して設けられたサスペンションクロスメンバにおいて、上記開口の乖離開始点での剥がれを防止したサスペンションクロスメンバを提供する。
【解決手段】アッパメンバプレート(22)とロアメンバプレート(23)との間には、開口(27)の前側アーム側の乖離開始点Gからアッパメンバプレートの内面及びロアメンバプレートの内面に沿って車両前後方向後側に延びるバルクヘッド(40)が介装されており、当該バルクヘッドは、少なくとも上記乖離開始点Gの近傍でそれぞれアッパメンバプレートとロアメンバプレートとに接合されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サスペンションクロスメンバに係り、詳しくは、二股に分岐して延びる両端に一対のロアアームの前側アームと後側アームとがそれぞれ連結される構成のサスペンションクロスメンバの構造に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
モノコック構造からなる車体では、特に入力の大きいフロントサスペンションの配設部位の強度及び剛性を増すため、車両幅方向に渡すようにしてサスペンションクロスメンバを車体下面に配設するようにしている。
サスペンションクロスメンバの左右両端には、車輪(前輪)を支持するロアアームの前側アームと後側アームとがそれぞれ連結されるため、また周辺にトランスミッション等種々の機器が配設されるため、当該左右両端は一般には分岐基端部で二股に分岐した形状を呈しており、分岐した車両前方部分に前側アームが連結部材を介して連結され、車両後方部分に後側アームが連結部材を介して連結されている。
【0003】
そして、サスペンションクロスメンバでは、軽量化等の理由から、通常アッパメンバプレートとロアメンバプレートとを重ね合わせて周縁を接合した閉断面構造が採用されている。
また、最近では、さらなる軽量化等を図るため、両端の二股に分岐した分岐基端部近傍でアッパメンバプレートとロアメンバプレートとを接合せず乖離して開口させ、ロアアームの後側アームについては当該開口から挿入し、閉断面の内部で連結部材を設けずにアッパメンバプレートとロアメンバプレートとで直接挟み込むように連結する構造が採用されつつある。
【0004】
両端が二股に分岐した形状のサスペンションクロスメンバにおいては、車両の制動時等においてロアアームから前側アーム及び後側アームを介して車両後方に向かう入力があると、分岐基端部近傍を中心として車両前方部分や車両後方部分を回転させようとする様々な回転力が作用する。故に、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとを重ね合わせ且つ開口を有する構造では、このように、二股に分岐した車両前方部分と車両後方部分とに分岐基端部近傍を中心とする回転力が作用すると、大きなモーメントの作用する車両前方部分の付け根部位と車両後方部分の付け根部位とが過度の入力により曲げ変形を起こす可能性が高い。
【0005】
そこで、例えば、上記開口を有するサスペンションクロスメンバにおいて、開口の存在により特に曲げ変形が予想される車両後方部分の付け根部位に、補強用のブラケットを接合する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−253218号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に開示されるサスペンションクロスメンバのように、一般にはスペース等の関係からロアアームの前側アームの取付け点は分岐基端部から遠く離れる傾向にあり、これにより特に車両前方部分を回転させようとする回転力が大きく働く傾向にある。車両前方部分に大きな回転力が働くと、開口の乖離開始点にはブラケットを後方に押そうとする力が大きく働く。即ち、ロアアームに車両後方に向かう入力があり、前側アームを介して車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用すると、開口の乖離開始点にはアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合を剥がそうとする大きな力が作用し、開口がさらに広がろうとする。
【0008】
このように、開口を広げるような力が生じると、上記特許文献1に開示のサスペンションクロスメンバでは、ブラケットは、単にロアメンバプレートに接合され、開口の乖離開始点近傍でもロアメンバプレートだけに接合された構造であるため、アッパメンバプレートが自由に開口しようとし、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合が乖離開始点で剥がれ易いという問題がある。
【0009】
この場合、ブラケットをアッパメンバプレート側にも接合することが考えられるが、上記特許文献1に開示のブラケットのように断面コ字状であっても車両幅方向内側にフランジが向いている構造では、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとを重ねた後での接合作業は困難である。
また、上記特許文献1に開示されるように、乖離開始点から急激に開口するようになっていると、車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用したとき、開口縁が変形し易いために乖離開始点がブラケット側に移動し易く、上記問題は顕著である。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとが二股に分岐して延びる両端の分岐基端部近傍でそれぞれ乖離して開口し且つ該開口する部分を除き閉断面を形成するよう周縁で接合されて一体に構成され、該開口から挿入されるロアアームの後側アームの支持点が上記分岐基端部より車両前後方向後側に閉断面の内部に位置して設けられたサスペンションクロスメンバにおいて、上記開口の乖離開始点での剥がれを防止したサスペンションクロスメンバを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1のサスペンションクロスメンバでは、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとが車両前後方向前側の車両前方部分と後側の車両後方部分とに二股に分岐して延びる両端の分岐基端部近傍でそれぞれ乖離して開口し且つ該開口する部分を除き閉断面を形成するよう周縁で接合されて一体に構成され、車輪を支持する一対のロアアームの前側アームの支持点を前記車両前方部分に前記閉断面の外部に位置してそれぞれ有するとともに前記開口から挿入される後側アームの支持点を前記車両後方部分に前記閉断面の内部に位置してそれぞれ有し、車体下面に車両幅方向に延びて取り付けられるサスペンションクロスメンバにおいて、前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとの間には、前記後側アームの支持点よりも車両幅方向内側に設けられ、周縁が前記開口の前記前側アーム側の乖離開始点から前記アッパメンバプレートの内面及び前記ロアメンバプレートの内面に沿い車両前後方向後側に向けて延び且つこれらアッパメンバプレートとロアメンバプレートとに接合されてなるバルクヘッドを備え、該バルクヘッドは、少なくとも前記前側アーム側の乖離開始点の近傍でそれぞれ前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとに接合されることを特徴としている。
【0012】
即ち、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとの間には、二股に分岐する車両後方部分の付け根部位に、開口の前側アーム側の乖離開始点からアッパメンバプレートの内面及びロアメンバプレートの内面に沿って車両前後方向後側に延びるバルクヘッドが介装されており、当該バルクヘッドは、少なくとも前側アーム側の開口の乖離開始点の近傍でそれぞれアッパメンバプレートとロアメンバプレートとに接合されている。
【0013】
従って、ロアアームに車両後方に向かう入力があり、前側アームを介して車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用し、開口の乖離開始点にアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合を剥がそうとする大きな力が作用しても、当該乖離開始点の近傍ではバルクヘッドがそれぞれアッパメンバプレートとロアメンバプレートと接合されているため、乖離開始点においてアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合が剥がれることはない。
【0014】
また、請求項2のサスペンションクロスメンバでは、前記開口は、開口寸法が前記前側アーム側の乖離開始点から徐々に増加していることを特徴としている。
従って、開口が乖離開始点から急激に開口でず、徐々に開口するので、車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用したとき、当該回転力がほぼアッパメンバプレートとロアメンバプレートに沿い伝達されて開口縁が変形し難く、故に乖離開始点がバルクヘッド側に移動し難く、乖離開始点においてアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合がより一層剥がれなくなる。
【0015】
また、請求項3のサスペンションクロスメンバでは、前記バルクヘッドの周縁には、前記前側アーム側の乖離開始点に対応する部位から所定範囲に亘り前記開口側に向けて周縁フランジが立設されており、該周縁フランジがそれぞれ前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとに接合されることを特徴としている。
【0016】
従って、バルクヘッドの周縁に前側アーム側の乖離開始点に対応する部位から所定範囲に亘り開口側に向けて周縁フランジが設けられていると、バルクヘッド自体の剛性が高まりアッパメンバプレートやロアメンバプレートの撓みや凹みが確実に防止されるとともに、バルクヘッドを予めアッパメンバプレートとロアメンバプレートのいずれか一方に接合しておき、後工程でアッパメンバプレートとロアメンバプレートとを重ねた場合であっても、当該重ね合わせた状態でバルクヘッドの周縁フランジが開口側に向けて延びていることになり、開口から容易に他方への接合作業を行うことが可能である。
【0017】
また、請求項4のサスペンションクロスメンバでは、さらに、前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとの間には、一端が前記前側アーム側の乖離開始点の近傍で前記バルクヘッドと接合され、他端が前記アッパメンバプレートの内面及び前記ロアメンバプレートの内面に沿い車両前後方向前方に向けて延び且つこれらアッパメンバプレートとロアメンバプレートと接合されてなるサポート部材を備えることを特徴としている。
【0018】
従って、ロアアームに車両後方に向かう入力があり、前側アームを介して車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用しても、二股に分岐する車両前方部分の付け根部位に、一端がバルクヘッドに接合されるサポート部材を渡すことにより、車両前方部分の回転力がサポート部材を介して圧縮力(突張力)としてバルクヘッドに作用することになり、車両前方部分の回転が抑制されて乖離開始点に掛かる力が緩和され、乖離開始点においてアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合がより一層剥がれなくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るサスペンションクロスメンバの実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1には、本発明に係るサスペンションクロスメンバの上視図が示されており、図2には図1の矢視A方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの車両幅方向左側部分の斜視図が示されている。さらに、図3には図1の矢視B方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの側面図が示され、図4には図1の矢視C方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの内部構造が示されている。
【0020】
サスペンションクロスメンバ1は、フロントサスペンションの配設される部位の車体強度及び車体剛性を増すため、車両幅方向に渡すようにして車体下面(例えば、一対のサイドメンバ下面)に配設される部材である。故に、サスペンションクロスメンバ1の両側には、車両前方側に鋼材からなる支持部材2,3を介して一対の車体連結部材4,5がメンバ本体20に溶接して設けられ、車両後方側に車体連結部材6,7がメンバ本体20に溶接して設けられている。
【0021】
車体連結部材4,5,6,7は例えば金属ワッシャからなり、サスペンションクロスメンバ1は、車体連結部材4,5,6,7にボルトを通すことによって車体下面に取り付けられる。
詳しくは、メンバ本体20は、トランスミッション等種々の機器の配設スペース等の関係から、車両幅方向の左右両端が、車両前方部分30,31と車両後方部分32,33のように二股に分岐しており、車体連結部材4,5の支持部材2,3については車両前方部分30,31に、車体連結部材6,7については車両後方部分32,33の先端にそれぞれ溶接されている。
【0022】
図2、図3に示すように、メンバ本体20は、厚板鋼板からなるアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とから構成されている。詳しくは、メンバ本体20は、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とが周縁フランジ24,25において重ね合わされ、開口27,28の部分を除いて周縁フランジ24,25が互いに溶接され、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とで閉断面を形成するように構成されている。
【0023】
そして、車両前方部分30,31には、車輪WL,WRを支持するロアアーム100,101の前側アーム102,103を連結するアーム連結ブラケット8,9が溶接されている。
また、図2、図3に示すように、車両後方部分32,33には、ロアメンバプレート23上に位置してロアアーム100,101の後側アーム104,105を連結するアーム連結孔10,11が設けられている。つまり、前側アーム102,103のアーム連結ブラケット8,9についてはメンバ本体20の外部に設けられている一方、後側アーム104,105のアーム連結孔10,11については、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23からなる閉断面の内部に設けられている。即ち、後側アーム104,105については、上記開口27,28からアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23からなる閉断面の内部に挿入されてアーム連結孔10,11においてメンバ本体20と連結される。
【0024】
開口27,28は、二股に分岐した車両前方部分30,31と車両後方部分32,33の分岐基端部P近傍(図1中○で囲った範囲)から車両後方部分32,33の先端に向けて周縁フランジ24,25が乖離するようにして形成されている。つまり、メンバ本体20は、分岐基端部P近傍に位置する周縁フランジ24と周縁フランジ25との乖離開始点Gから車両後方部分32,33の先端の車体連結部材6,7近傍までの間において開口している。
【0025】
なお、開口27,28は、乖離開始点Gから徐々に開口寸法が大きくなるように傾斜面を有して開口している。
一方、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23間の後側アーム104,105の連結点であるアーム連結孔10,11よりも車両幅方向内側には、前端41が上記乖離開始点Gに位置し、周縁が当該乖離開始点Gからアッパメンバプレート22の内面及びロアメンバプレート23の内面に沿って車両前後方向後側に向けて延び、後端42がメンバ本体20の後壁35と当接するようにして厚板鋼板製のバルクヘッド40,40がそれぞれ介装されている。
【0026】
つまり、車両後方部分32,33の付け根部位にバルクヘッド40,40が渡されている。
詳しくは、バルクヘッド40には、後端42を除き、乖離開始点Gに対応する前端41からアッパメンバプレート22及びロアメンバプレート23に沿うように連続し且つ開口27,28に向けて周縁フランジ43が形成されており、バルクヘッド40は、前端41に対応する当該周縁フランジ43の先端41aが上記乖離開始点Gに位置するように設けられている。
【0027】
バルクヘッド40の後端42はメンバ本体20の後壁35に溶接され、周縁フランジ43は所定位置においてアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とにそれぞれ溶接されている。詳しくは、周縁フランジ43は、乖離開始点G近傍の傾斜面においてそれぞれアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とに確実に溶接され、後端42においてメンバ本体20の後壁35に確実に溶接され、その他任意位置でアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とに溶接されている。
【0028】
このようにバルクヘッド40が乖離開始点Gからアッパメンバプレート22の内面及びロアメンバプレート23の内面に沿って車両前後方向後側に向けて延び、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23に溶接されていると、分岐基端部P近傍とメンバ本体20の後壁35の内面との間、即ち車両後方部分32,33の付け根部位が補強され、剛性が向上することになり、図1に白抜き矢印で示すように車輪WL,WRから入力Fが作用し、当該入力Fの分力がロアアーム100,101の後側アーム104,105を介して車両後方部分32,33に作用しても、当該車両後方部分32,33の変形が防止される。
【0029】
また、バルクヘッド40の周縁には、乖離開始点Gに対応する前端41からアッパメンバプレート22及びロアメンバプレート23に沿うように連続して周縁フランジ43が形成されているので、バルクヘッド40の剛性が高くなっており、メンバ本体20に車両上下方向で力が作用したとしても、アッパメンバプレート22やロアメンバプレート23が撓んだり凹んだりすることが確実に防止される。
【0030】
さらに、入力Fにより、前側アーム102,103を介して車両前方部分30,31に矢印で示すような分力、即ち回転力F’が分岐基端部P近傍回りで生じると、開口27,28の乖離開始点Gにはバルクヘッド40を後方に押そうとする力が働き、当該乖離開始点G近傍における周縁フランジ24,25の溶接、即ちアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接を剥がそうとする大きな力が作用することになるが、バルクヘッド40は、乖離開始点G近傍においてそれぞれアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とに確実に溶接されているため、開口27,28の拡大が防止され、乖離開始点G近傍における当該アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接が剥がれることがない。
【0031】
特に、開口27,28は、傾斜面を有して開口寸法が乖離開始点Gから徐々に増加しており、車両前方部分30,31に回転力F’が作用したとき、当該回転力F’はほぼアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とに沿い伝達され、開口縁は変形し難く、即ち乖離開始点Gがバルクヘッド40側に移動し難くなっているため、より一層乖離開始点G近傍における当該アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接が剥がれることがない。なお、傾斜面の傾斜角はできるだけ緩やかな方がよいが、スペースの制約を受けるため、適当な角度に設定されている。
【0032】
なお、このように開口27,28が傾斜面を有して徐々に開口していることでバルクヘッド40の前端41は楔状であり、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接を剥がし易い形状とも考えられるが、このように開口27,28が傾斜面を有していることでメンバ本体20自体の剛性及び強度は高く、また上述したように、バルクヘッド40は、乖離開始点G近傍においてそれぞれアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23とに確実に溶接されているため、乖離開始点G近傍における当該アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接が剥がれることはない。
【0033】
ところで、製造工程では、バルクヘッド40は、例えば、アッパメンバプレート22に沿う周縁フランジ43と後端42とが予め溶接されてアッパメンバプレート22に取り付けられ、後工程で、当該バルクヘッド40の取付けらたアッパメンバプレート22にロアメンバプレート23を重ねて周縁フランジ24,25を溶接する際に、同時にロアメンバプレート23に沿う周縁フランジ43についても併せてロアメンバプレート23に溶接される。
【0034】
詳しくは、周縁フランジ43をロアメンバプレート23に溶接する際には、ロアメンバプレート23に沿う周縁フランジ43のうち開口27,28から溶接トーチを挿入可能な先端41a近傍の溶接部位については開口27,28側から溶接を行い、溶接トーチを挿入できない後端42寄りの溶接部位についてはロアメンバプレート23の外側からスロット溶接(或いはプラグ溶接)を行う。
【0035】
即ち、バルクヘッド40は、周縁フランジ43が開口27,28側に向けて延びていることで、アッパメンバプレート22にロアメンバプレート23を重ねた状態であっても、溶接作業が容易であり、これによりバルクヘッド40を乖離開始点G近傍でアッパメンバプレート22のみならずロアメンバプレート23に確実に溶接することができる。このことは、逆にバルクヘッド40をロアメンバプレート23に先付けする場合も同様である。
【0036】
また、アッパメンバプレート22とロアメンバプレート23間には、さらに、図4に示すように前端51が乖離開始点Gの近傍でバルクヘッド40,40と溶接され、周縁がアッパメンバプレート22の内面及びロアメンバプレート23の内面に沿って車両前後方向前側に向けて延び且つ後端52がメンバ本体20の前壁34に溶接されるようにして厚板鋼板製のサポート部材50,50がそれぞれ介装されている。
【0037】
つまり、車両前方部分30,31の付け根部位にサポート部材50,50がバルクヘッド40,40から連続するように渡されている。
なお、サポート部材50についても、予め前端51がバルクヘッド40に溶接されるとともに周縁がアッパメンバプレート22に溶接されて先付けされ、後工程でフランジ53,54がロアメンバプレート23に外側からスロット溶接(或いはプラグ溶接)される。
【0038】
このように、サポート部材50が配設されていると、ロアアーム100,101に上記入力Fがあり、前側アーム102,103を介して車両前方部分30,31に上記回転力F’が生じても、回転力F’がサポート部材50を介して圧縮力(突張力)としてバルクヘッド40に作用することになり、車両前方部分30,31の回転が抑制されて乖離開始点Gに掛かる力が緩和され、乖離開始点Gにおいてアッパメンバプレート22とロアメンバプレート23との溶接がより一層剥がれなくなる。
【0039】
以上で本発明に係るサスペンションクロスメンバの実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、バルクヘッド40とサポート部材50とを別体としているが、可能であればこれらは一体であってもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の請求項1のサスペンションクロスメンバによれば、アッパメンバプレートとロアメンバプレートとの間には、二股に分岐する車両後方部分の付け根部位に、開口の前側アーム側の乖離開始点からアッパメンバプレートの内面及びロアメンバプレートの内面に沿って車両前後方向後側に延びるバルクヘッドが介装されており、当該バルクヘッドは、少なくとも前側アーム側の開口の乖離開始点の近傍でそれぞれアッパメンバプレートとロアメンバプレートとに接合されているので、ロアアームに車両後方に向かう入力があり、前側アームを介して車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用し、開口の乖離開始点にアッパメンバプレートとロアメンバプレートとの接合を剥がそうとする大きな力が作用しても、乖離開始点におけるアッパメンバプレートとロアメンバプレートの接合の剥がれを確実に防止できる。
【0041】
また、請求項2のサスペンションクロスメンバによれば、開口が乖離開始点から急激に開口でず、徐々に開口するので、車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用したとき、当該回転力をほぼアッパメンバプレートとロアメンバプレートに沿い伝達させて開口縁を変形し難く、乖離開始点がバルクヘッド側に移動し難くでき、乖離開始点におけるアッパメンバプレートとロアメンバプレートの接合の剥がれをより一層確実に防止できる。
【0042】
また、請求項3のサスペンションクロスメンバによれば、バルクヘッドの周縁に前側アーム側の乖離開始点に対応する部位から所定範囲に亘り開口側に向けて周縁フランジが設けられているので、バルクヘッド自体の剛性を高めてアッパメンバプレートやロアメンバプレートの撓みや凹みを確実に防止することができるし、バルクヘッドを予めアッパメンバプレートとロアメンバプレートのいずれか一方に接合しておき、後工程でアッパメンバプレートとロアメンバプレートとを重ねた場合であっても、開口から容易に他方への接合作業を行うことができる。
【0043】
また、請求項4のサスペンションクロスメンバによれば、二股に分岐する車両前方部分の付け根部位に、一端がバルクヘッドに接合されるサポート部材を渡すようにしたので、ロアアームに車両後方に向かう入力があり、前側アームを介して車両前方部分を後方へ回転させようとする回転力が作用しても、当該回転力がサポート部材を介して圧縮力(突張力)としてバルクヘッドに作用することになり、車両前方部分の回転が抑制されて乖離開始点に掛かる力が緩和され、乖離開始点におけるアッパメンバプレートとロアメンバプレートの接合の剥がれをより一層確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るサスペンションクロスメンバの上視図である。
【図2】図1の矢視A方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの車両幅方向左側部分の斜視図である。
【図3】図1の矢視B方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの側面図である。
【図4】図1の矢視C方向から視た本発明に係るサスペンションクロスメンバの内部構造図である。
【符号の説明】
1 サスペンションクロスメンバ
8,9 アーム連結ブラケット
10,11 アーム連結孔
20 メンバ本体
22 アッパメンバプレート
23 ロアメンバプレート
24,25 周縁フランジ
27,28 開口
30,31 車両前方部分
32,33 車両後方部分
40 バルクヘッド
41 前端
43 周縁フランジ
41a 先端
50 サポート部材
100,101 ロアアーム
G 乖離開始点
P 分岐基端部

Claims (4)

  1. アッパメンバプレートとロアメンバプレートとが車両前後方向前側の車両前方部分と後側の車両後方部分とに二股に分岐して延びる両端の分岐基端部近傍でそれぞれ乖離して開口し且つ該開口する部分を除き閉断面を形成するよう周縁で接合されて一体に構成され、車輪を支持する一対のロアアームの前側アームの支持点を前記車両前方部分に前記閉断面の外部に位置してそれぞれ有するとともに前記開口から挿入される後側アームの支持点を前記車両後方部分に前記閉断面の内部に位置してそれぞれ有し、車体下面に車両幅方向に延びて取り付けられるサスペンションクロスメンバにおいて、
    前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとの間には、前記後側アームの支持点よりも車両幅方向内側に設けられ、周縁が前記開口の前記前側アーム側の乖離開始点から前記アッパメンバプレートの内面及び前記ロアメンバプレートの内面に沿い車両前後方向後側に向けて延び且つこれらアッパメンバプレートとロアメンバプレートとに接合されてなるバルクヘッドを備え、
    該バルクヘッドは、少なくとも前記前側アーム側の乖離開始点の近傍でそれぞれ前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとに接合されることを特徴とするサスペンションクロスメンバ。
  2. 前記開口は、開口寸法が前記前側アーム側の乖離開始点から徐々に増加していることを特徴とする、請求項1記載のサスペンションクロスメンバ。
  3. 前記バルクヘッドの周縁には、前記前側アーム側の乖離開始点に対応する部位から所定範囲に亘り前記開口側に向けて周縁フランジが立設されており、該周縁フランジがそれぞれ前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとに接合されることを特徴とする、請求項1または2記載のサスペンションクロスメンバ。
  4. さらに、前記アッパメンバプレートと前記ロアメンバプレートとの間には、一端が前記前側アーム側の乖離開始点の近傍で前記バルクヘッドと接合され、他端が前記アッパメンバプレートの内面及び前記ロアメンバプレートの内面に沿い車両前後方向前方に向けて延び且つこれらアッパメンバプレートとロアメンバプレートと接合されてなるサポート部材を備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載のサスペンションクロスメンバ。
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