JP2004202995A - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粘着テープで成形型間の間隙を封止するテープモールド法におけるテープシワの発生を抑制することができるプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】2個の成形型11,12の側面に粘着テープ13を巻いてこれらの成形型11,12を粘着テープで固定し、そのキャビティ14に原料組成物20を注入し、原料組成物20を硬化させてプラスチックレンズを得る際に、粘着テープ13として、JIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値が、原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において5mm引張ったときの荷重が3kg以下の伸びやすい特性のものを用いる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関し、特に、注型重合法により、プラスチックレンズを成形するプラスチックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学性能に優れたプラスチックレンズを製造する場合、通常は注型重合法が用いられる。注型重合法として成形型間の隙間を粘着テープで封止するテープモールド法が、特許技術文献1〜4等に示されている。
【0003】
図3を参照してテープモールド法について説明する。図3(a)に示すように、成形型組立工程で、レンズ注型重合型300を組み立てる。所定の間隔で対向配置した2個のガラス製成形型301、302の側面に粘着テープ303を1周より少し多く巻いて成形型301,302間の隙間を粘着テープ303で封止する。これによって、これらの成形型301,302の相互の位置を粘着テープ303で固定すると共に、2個の成形型301,302と粘着テープ303で囲まれたレンズを成形するキャビティ304を有するレンズ注型重合型300を作製する。
【0004】
次に、図3(b)に示すように、注入工程で、粘着テープ303をキャビティに注入できる隙間が空くまで引き剥がし、この隙間からキャビティ304中に原料組成物310を注入し、再び粘着テープ303で隙間を封止する。
【0005】
次に、図3(c)に示すように、キャビティ304中の原料組成物310を紫外線又は熱により重合硬化させてプラスチックレンズ311を得る。
【0006】
その後、粘着テープ303を剥がし、成形型301,302をプラスチックレンズ311から分離し、図3(d)に示すような所定のプラスチックレンズ311を取り出すことができる。
【0007】
ところが、重合硬化に際して原料組成物310は体積が収縮する。特に、近年の高屈折率用の原料組成物は、重合収縮率が大きい。そのため、成形型301,302の間隔が狭くなろうとする力が粘着テープ303に伝わり、粘着テープ303はキャビティ304の厚み方向に押しつぶされ、図3(c)に示されるような部分的に凹んだテープシワ306が発生する。このテープシワ306の発生はプラスチックレンズ311の側面であるコバが厚いほど深く目立つものとなる。そしてこのテープシワ306は、図3(d)のレンズの側面図に示すように、重合硬化したプラスチックレンズ311外周の側面にそのまま転写される。プラスチックレンズ外周の側面に生じたテープシワ306は外観や外径精度を損ねるため、切削加工や研削加工などによって外周部を削除すると共に、見栄えを良くする外周整形工程が設けられている。
【0008】
【特許技術文献1】
特開平11−99527号公報
【特許技術文献2】
特開平6−346034号公報
【特許技術文献3】
特公平5−64564号公報
【特許技術文献4】
特公平3−8246号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このため、現在の注型重合法で用いている成形型301,302の外径寸法はプラスチックレンズの仕上り外径寸法より約5mm程度大きくなっている。その結果、外周整形で削られる原料が無駄になり、製造コストの上昇を招いていると共に、プラスチック廃棄物を発生させているという問題がある。
【0010】
しかも、外周整形工程という工程が必要であり、工程増加と外周整形工程での傷などの不良発生により歩留まりが低下するという問題がある。
【0011】
これらの問題は、テープモールド法におけるテープシワの発生が原因であり、テープシワの発生を抑制することができれば解決する。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、テープモールド法におけるテープシワの発生を抑制することができるプラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、テープモールド法で成形型の固定に用いている粘着テープとして、原料組成物の重合収縮が最も大きい時の温度下で伸び易い特性、具体的には、粘着テープのJIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値が、原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において5mm引張ったときの荷重が3kg以下である粘着テープを用いることにより、側面にほとんどテープシワが生じていないプラスチックレンズを成形できることを見い出した。
【0014】
即ち、原料組成物の重合により原料組成物の体積収縮が最も速く進行しているときに、キャビティを構成している伸び易い特性を有する粘着テープが、キャビティの中の原料組成物の径方向の体積収縮によりレンズの中心側へ均一に引き寄せられて亀甲括弧(〔)状に変形しつつ、この柔軟なテープの変形のために厚み方向の体積収縮によるおしつぶすような力を均一に吸収できるため、部分的な凹みを生じさせず、滑らかな側面を有するプラスチックレンズを成形できるものと考えられる。
【0015】
従って、請求項1記載の発明は、所定の間隔で対向配置した2個の成形型の側面に粘着テープを巻いてこれらの成形型を前記粘着テープで固定し、前記2個の成形型と前記粘着テープで囲まれたレンズを成形するキャビティを形成する成形型組立工程と、前記キャビティに原料組成物を注入する注入工程と、前記原料組成物を硬化させてプラスチックレンズを得る硬化工程とを有するプラスチックレンズの製造方法において、前記粘着テープのJIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値が、前記原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において5mm引張ったときの荷重が3kg以下であることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、テープモールド法において、原料組成物の重合反応が最も活発になっている温度で伸び易い特性を有する粘着テープを用いて側面にテープシワがほとんどないプラスチックレンズを製造することができる。
【0018】
伸び易い特性を有する粘着テープとしては、粘着テープのJIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値が、原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において5mm引張ったときの荷重が3kg以下、好ましくは2.5kg以下、特に好ましくは2.0kg以下である。
【0019】
原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度は、プラスチック原料の成分やその組成比率、触媒の種類及び量、加熱温度パターンまたは紫外線照射の波長や強さによって大きく異なる。
【0020】
図2に示すグラフは、実線が加熱温度パターンの一例であり、破線が重合収縮量の相対変化を示している。加熱温度パターンは、例えば0〜40℃で4〜24時間、その温度から100〜130℃まで3〜7時間で上昇させ、その温度を1〜3時間維持し、3〜5時間かけて常温に冷却し、全体で15〜24時間の重合時間を要するというパターンが一般的である。
【0021】
重合収縮量の変化のパターンは、原料組成物によって大きく異なる。例えば▲1▼に示すものは、120℃付近で重合収縮率が最大となり、▲2▼で示すものは70℃付近で重合収縮率が最大となり、▲3▼で示すものは40℃付近で重合収縮率が最大となる。従って、原料組成物の単位時間当たりの収縮量が最大時の温度は、予め測定しておくことが好ましい。
【0022】
粘着テープの引張強さ及び伸びの測定方法として、JIS Z 0237に次のように記載されている。試験片は、テープ又はシートの幅25mm以上の場合には、幅25mmに切断し、幅25mm未満の場合には原幅のまま、長さ約150mmのものとし、各3枚採る。引張試験機はJIS B 7721に規定する引張試験機又はこれと同等の引張試験機を用いる。試験方法は、引張試験機のつかみ間隔又は試験片の表線間隔を100mmとし、300±30mm/minの速さで引張り、試験片が切断するまでの荷重及び伸びを測定する。
【0023】
本発明における粘着テープの引張強さ及び伸びの測定方法では、試料の前処理と試験片の採取はJIS Z 0237に準じて行い、引張試験機による引張試験は任意の温度で行い、5mm引張った(伸びた)ときの荷重を測定する。そのときの荷重が3kg以下であれば伸び易い特性を有することになり、テープモールド法でのテープシワの発生を抑制することができる。
【0024】
粘着テープの伸び易さは、テープ基材の材料の特性や厚み、温度等によって変化するが、上記温度で上記引張強さ及び伸びの測定値を有すれば、粘着テープの厚みや材質を問わない。
【0025】
このように、原料組成物の重合反応が最も活発になっている温度で伸び易い特性を有する粘着テープを用いることによりテープシワの発生を抑制することができる理由については明確ではないが、次のように考えることができる。
【0026】
テープモールド法で形成されるレンズ形状のキャビティは径方向が長く、厚み方向が短い。原料組成物の重合収縮が生じると、径方向の収縮量が大きく、キャビティを構成する粘着テープは中心側へ吸引される。この場合、粘着テープが伸び易いため、粘着テープは亀甲括弧(〔)状に湾曲しながら均一に引き寄せられる。厚み方向の収縮が起き、成形型間の間隔が狭くなろうとする力が粘着テープに伝わっても、湾曲した伸び易いテープは、柔軟に均一に変形して吸収できる。
従来用いていた剛性な粘着テープでは上下方向の力でつぶされて部分的な凹みが生じるのと対照的である。なお、粘着テープを2重に巻いている部分でごくわずかにテープシワの発生が見られる場合がある。粘着テープを2重に巻いている部分で剛性が高まった結果と考えられる。
【0027】
粘着テープの特性として、上記伸び易い特性以外の特性はテープモールド法に要求される特性を備えていることが好ましい。例えば、粘着テープの保持力は、JIS Z 0237の粘着テープの保持力の試験方法により130℃においても1440分超の保持力を有することが好ましい。また、粘着剤は、原料組成物に溶け出したり、重合を阻害しないものが選定される。
【0028】
粘着テープは、テープ基材に粘着剤層が形成されている構造を有する。テープ基材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリカーボネート類などを例示することができる。粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系等が使用されている。
【0029】
テープ基材の厚さは、成形型組立工程で十分に成形型を固定できることが求められため、10μm以上、好ましくは20μm以上、最適には30μm以上であることが好ましく、最大限の厚さは2000μm程度である。
【0030】
このような粘着テープを用いるテープモールド法によるプラスチックレンズの製造方法について説明する。
【0031】
なお、得られるプラスチックレンズには、両面が成形型で転写され、両面が成形型の転写で最終の光学面に形成されたフィニッシュレンズと、片面が最終の光学面に成形型で転写され、反対面がその後の研磨等により形状が作られるやや厚手のセミフィニッシュレンズとがある。また、プラスチックレンズには凸レンズと凹レンズとがある。本発明においては、いずれに対しても適用可能である。
【0032】
まず、図1(a)に示すように、成形型組立工程でレンズ注型重合型10を作製する。例えばガラス製の凸面形成用の第1成形型11、凹面形成用の第2成形型12を準備する。これらの成形型11,12の外径は、プラスチックレンズの仕上り外径寸法よりも径方向の収縮量を考慮してやや大きくなっている。これらの成形型11、12を所定の間隙をもって対向させた状態で、これらの成形型11、12の側面に粘着テープ13を1周より少し多く巻き付け、これらの成形型11,12を粘着テープ13で固定すると共に、成形型11、12間の間隙を閉塞して2個の成形型11,12と粘着テープ13で囲まれたレンズを成形するキャビティ14を形成する。このとき用いる粘着テープ13は、キャビティ14に注入する原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において上記伸び易い特性を有するものを選定する。
【0033】
次に、図1(b)に示すように、注入工程で、粘着テープ13をキャビティ14に注入できる隙間が空くまで引き剥がし、この隙間からキャビティ14中に原料組成物20を注入し、再び粘着テープ13で隙間を封止する。
【0034】
原料組成物としては、特に制限されず、例えばジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)を挙げることができる。特に近年の高屈折率用のものは重合収縮率が大きく、しかも高価であるため、本発明のプラスチックレンズの製造方法による原料組成物の節減の効果が大きい。高屈折率用の原料組成物としては、2個以上のイソシアナート基を有するポリイソシアナートと2個以上の活性水素を有する化合物とを主成分とする重合性モノマーを主成分とするものを例示することができる。
【0035】
重合性モノマーを構成する2個以上のイソシアナート基を有するポリイソシアナートとしては、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート、テトラクロロ−m−キシリレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、2,5−ビス(イソシアナートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、3,9−ビス(イソシアナートメチル)トリシクロ[5.2.1.02、6]−デカン、4,8−ビス(イソシアナートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、4,9−ビス(イソシアナートメチル)トリシクロ[5.2.1、02、6]−デカン、ダイマー酸ジイソシアナート等のポリイソシアナート化合物及びそれらの化合物のアロファネート変性体、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(α,α−ジメチルイソシアナトメチル)ベンゼン、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートのビウレット化反応物、ヘキサメチレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンのアダクト生成物、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソシアヌレート変性体等が挙げられ、これらの化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのポリイソシアナート中でもキシリレンジイソシアナートが好ましい。
【0036】
また、重合性モノマーを構成する2個以上の活性水素を有する化合物としては、例えば2個以上の水酸基を有するポリオール、2個以上のチオール基を有するポリチオール、または1分子中に水酸基とチオール基を各々1個以上有する化合物を挙げることができる。
【0037】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1'−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。
【0038】
また、ポリチオールとしては、特に制限されないが、例えば下記式(1)で示される4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタンジチオール、下記式(2)で示されるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、及び下記一般式(3)で示されるテトラチオールを例示することができる。
【0039】
【化1】
Figure 2004202995
【0040】
この一般式(3)で示されるテトラチオールの具体例としては、例えば次のような構造式の化合物(A)〜(G)を挙げることができる。
【0041】
【化2】
Figure 2004202995
【0042】
その他のポリチオールとしては、例えば、ジ(2−メルカプトエチル)エーテル、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、1,2−ジメルカプトベンゼン、4−メチル−1,2−ジメルカプトベンゼン、3,6−ジクロロ−1,2−ジメルカプトベンゼン、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ジメルカプトベンゼン、O−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、p−キシリレンジチオール、及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0043】
また、1分子中に水酸基とチオール基を各々1個以上有する化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4'−メルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタン等が挙げられる。
【0044】
ポリイソシアナート化合物と活性水素の混合割合は、イソシアナート基(NCO)と活性水素(H)の割合がNCO/H(モル比)=0.5〜3.0、特に0.5〜1.5の範囲が好ましい。
【0045】
また、重合触媒としては、特に制限されないが、三級アミン、三級ホスフィン、又はルイス酸が好ましく、特に三級アミンとルイス酸の併用触媒又は三級ホスフィンとルイス酸の併用触媒が好ましい。これらの併用触媒は、錯体を形成し、ポットライフが長いという特徴がある。
【0046】
上記重合触媒の使用量は、一般的に重合性モノマーに対して0.0005〜5重量%の範囲である。
【0047】
また、高屈折率用の原料組成物として、分子内に1つ以上のジスルフィド結合(S−S)を有し、且つエポキシ基及び/又はチオエポキシ基を有する化合物を例示することができる。このような化合物としては、例えば、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィドやビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドなどの分子内に1つのジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7−エピチオ−3,4−ジチアヘプタン)スルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルジチオメチル)−2−(2,3−エピチオプロピルジチオエチルチオ)−4−チアヘキサン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルジチオ)プロパンなどの分子内に2つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物が挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
上記分子内に1つ以上のジスルフィド結合(S−S)を有し、且つエポキシ基及び/又はチオエポキシ基を有する化合物には、主に得られる樹脂の屈折率等の光学物性の調整や、耐衝撃性、比重等の諸物性を調整するためや、モノマーの粘度、その他の取扱い性を調整するためなど、樹脂の改良をする目的で、樹脂改質剤を加えることができる。
【0049】
樹脂改質剤としては、上記分子内に2つ以上のエピスルフィド基を有する化合物、チオール化合物、メルカプト有機酸類、有機酸類及び無水物類、アミノ酸、メルカプトアミン類、アミン類、(メタ)アクリレート類等を含むオレフィン類が挙げられる。これらの樹脂改質剤はいずれも単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0050】
硬化触媒としては3級アミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0051】
原料組成物には、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、内部離型剤なとの種々の物質を添加してもよい。
【0052】
次に、図1(c)に示すように、キャビティ14中の原料組成物20を硬化させる硬化工程を行う。熱硬化型の原料組成物20は、例えば図2に示したような加熱温度パターンで加熱する。原料組成物20は加熱により重合し、重合収縮が生じる。この重合収縮が最も激しく起こっているときに、粘着テープ13の引張強さが低下し伸びが大きくなる。その結果、キャビティ14の中の原料組成物20の重合収縮に伴ってキャビティ14を構成している粘着テープ13は重合収縮量が大きい径方向に引張られ、キャビティ14の中心側へ吸引され、図1(c)に示すように、周方向の全周に亘る均一な亀甲括弧(〔)状の湾曲部15が形成される。これにより、原料組成物20の容積収縮を粘着テープ13の変形によって吸収できる。部分的な凹みによるテープシワはほとんど生じない。
【0053】
その後、粘着テープ13を剥がし、成形型11,12をプラスチックレンズ30から分離し、プラスチックレンズ30を取り出すことができる。得られたプラスチックレンズ30の側面には、図1(d)に示すように、粘着テープ13の湾曲部15の形状が転写され、中央部がほぼ平坦で上端と下端にやや尖った突出部分を有するテープシワがない滑らかな側面が得られる。これによって、従来、外周整形工程で削っていた5mm分の外周部分の無駄がなくなる。外周部が厚いレンズの場合、10%強の原料組成物の節減になる。また、外周整形工程が不要になるメリットもある。
【0054】
【実施例】
<実施例>
使用した粘着テープは、テープ基材材料が幅25mm、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートであり、粘着剤層の厚みは28μmである。この粘着テープのJIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値は、120℃において5mm引張ったときの荷重が2.7kgである。また、JIS Z0237に準じた試験方法による1kgのおもりを用いた保持力は試験温度が130℃において1440分超である。
【0055】
ガラス製成形型としては外径75mmの(−)10.00ジオプトリのレンズを作製するために第1成形型11と第2成形型12を各々専用に設計したガラス製成形型を用意した。
【0056】
原料組成物としては、ポリチオール化合物として4−メルカプトメチル−3,6−ジチオ−1,8−オクタンジチオール40gに重合触媒としてジメチルスズジクロライド0.06g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール0.1g、重合触媒N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.04gの順番に混合し、30分ほど十分に攪拌した。この後、ポリイソシアネート化合物として水添ジフェニルメタンジイソシアネート60gを混合し、30分ほど十分に攪拌した後、5mmHgの真空下で60分脱気を行って原料組成物を調製した。
【0057】
この原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度は120℃にあることが確認されている。
【0058】
用意した2枚のガラス製成形型を必要な間隔をとって保持し、成形型の側面に用意した粘着テープ13を一周より少し多く巻き付けた。その後、粘着テープ13をキャビティ14に注入出来る隙間が空くまで引きはがし、この隙間からキャビティ14中に調製した原料組成物を注入した。
【0059】
この原料組成物を、30℃から40℃まで4時間、40℃から120℃まで7時間かけて昇温する加熱炉中で重合を行ない、冷却後成形型と粘着テープを除去しプラスチックレンズを得た。
【0060】
100枚のプラスチックレンズを成形し、外周コバのシワ発生状況を評価した。結果を表1に示す。評価の基準は、
シワがないレンズ・・・・・・・・○
部分的にシワがあるレンズ・・・・△
全周にシワがあるレンズ・・・・・×
とし、目視により各ランクに層別した。
【0061】
<比較例>
使用した粘着テープは、テープ基材材料が幅25mm、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートであり、粘着剤層の厚みは28μmである。120℃における5mm引張ったときの荷重は3.4kgである。
【0062】
粘着テープが異なる以外は、実施例と同じ成形型、原料組成物を用い、同じ重合条件でプラスチックレンズを得た。
【0063】
実施例と同様に、100枚のプラスチックレンズを成形し、外周コバのシワ発生状況を評価した。結果を表1に併記する。
【0064】
【表1】
Figure 2004202995
【0065】
表1の結果より、原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の120℃において5mm引張ったときの荷重が3kg以下の粘着テープを用いることにより、テープシワの発生を顕著に抑制することが認められる。
【0066】
【発明の効果】
本発明のプラスチックレンズの製造方法によれば、テープモールド法によって得られるプラスチックレンズの側面のテープシワの発生を抑制し、原料組成物の節減、工程数の削減が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、本発明のプラスチックレンズの製造方法の工程を示すフローチャートであり、(a)〜(c)は断面図、(d)は側面図である。
【図2】加熱温度パターンと重合収縮量を示すグラフである。
【図3】(a)〜(d)は、従来のプラスチックレンズの製造方法の工程を示すフローチャートであり、(a)〜(c)は断面図、(d)は側面図である。
【符号の説明】
10:レンズ注型重合型、11:第1成形型、12:第2成形型、13:粘着テープ、14:キャビティ、15:湾曲部、20:原料組成物、30:プラスチックレンズ

Claims (1)

  1. 所定の間隔で対向配置した2個の成形型の側面に粘着テープを巻いてこれらの成形型を前記粘着テープで固定し、前記2個の成形型と前記粘着テープで囲まれたレンズを成形するキャビティを形成する成形型組立工程と、前記キャビティに原料組成物を注入する注入工程と、前記原料組成物を硬化させてプラスチックレンズを得る硬化工程とを有するプラスチックレンズの製造方法において、
    前記粘着テープのJIS Z 0237に準じた引張強さ及び伸びの測定値が、前記原料組成物の単位時間当たりの重合収縮量が最大時の温度において5mm引張ったときの荷重が3kg以下であることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
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